説明

印刷装置

【課題】インク温度を適温にするための時間を短縮できる印刷装置を提供する。
【解決手段】両面印刷装置1は、インク50を加熱器28により加熱しつつ循環させる加熱循環経路C1−C2、または、インクを冷却器29により冷却しつつ循環させる冷却循環経路C1−C3の何れかに切り替える電磁弁27を有する循環部19と、周辺温度Taを計測して出力する周辺温度センサ7と、画像印刷終了後、周辺温度センサ7から入力された周辺温度Taに基づいて、電磁弁27を制御して、インク50の循環経路を設定する制御部8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを冷却及び加熱する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを吐出させるインクジェットヘッドを備えた印刷装置が知られている。このような印刷装置では、インクの粘度がインクの吐出に大きな影響を与える。
【0003】
そこで、特許文献1には、使用環境温度に応じてユーザが画像の濃度を設定可能な印刷装置が開示されている。また、特許文献2には、インクを循環させてリフレッシュさせる印刷装置が開示されている。
【0004】
しかしながら、上述した特許文献の技術では、充分にインクの粘度を制御しているとは言い難い。そこで、インクの供給経路の途中にヒータやファン等のインクの温度を調整する手段を設けることが提案されている。これにより、この印刷装置は、インクを適温に調整して、インクの粘度を適切に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−276486号公報
【特許文献2】特開2006−88575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した技術では、画像印刷が終了して、ヒータやファンを停止すると、インクが短時間で室温になる。このため、次の画像印刷を開始する際に、インク温度を適温にするための時間が長くなるといった課題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、インク温度を適温にするための時間を短縮できる印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、インクを加熱手段により加熱しつつ循環させる加熱循環経路、または、インクを冷却手段により冷却しつつ循環させる冷却循環経路の何れかに切り替える切替手段を有する循環部と、周辺温度を計測して出力する周辺温度計測手段と、画像印刷終了後、前記周辺温度計測手段から入力された周辺温度に基づいて、前記切替手段を制御して、インクの循環経路を設定する制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記制御部は、画像印刷終了後、前記周辺温度がインクの適温下限温度以下の場合、前記切替手段を加熱循環経路側へと設定し、前記周辺温度がインクの適温上限温度以上の場合、前記切替手段を冷却循環経路側へと設定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、インク温度を計測して出力するインク温度計測手段を更に備え、前記制御部は、画像印刷終了後、前記周辺温度がインクの適温範囲内であり、且つ、前記インク温度計測手段から入力されたインク温度がインクの適温範囲内の閾値温度以上の場合、前記切替手段を冷却循環経路側へと設定し、前記周辺温度がインクの適温範囲内であり、且つ、前記インク温度計測手段から入力されたインク温度がインクの適温範囲内の閾値温度未満の場合、前記切替手段を加熱循環経路側へと設定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記制御部は、前記切替手段を設定した後、前記冷却手段または前記加熱手段を停止することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記加熱循環経路の経路長は、前記冷却循環経路の経路長よりも短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、画像印刷終了後、制御部は、周辺温度に基づいて、切替手段を制御して、インクの循環経路を設定している。これにより、インク温度が、加熱手段の余熱または冷却手段の放熱によって調整される。この結果、請求項1の発明は、インク温度を適温にするための時間を短縮できる。
【0014】
請求項2の発明によれば、画像印刷終了後、制御部は、周辺温度がインクの適温下限温度以下の場合、切替手段を加熱循環経路側に設定している。これにより、周辺温度が低温の場合でも、インクを加熱手段の余熱によって加熱することができる。また、請求項2の発明によれば、画像印刷終了後、制御部は、周辺温度がインクの適温上限温度以上の場合、切替手段を冷却循環経路側に設定している。これにより、周辺温度が高温の場合でも、インクを冷却手段によって冷却することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、画像印刷終了後、制御部は、インク温度が閾値温度以上の場合、切替手段を冷却循環経路側に設定している。これにより、インク温度が適温の範囲内の高温の場合、インクが加熱手段によって加熱されることを抑制できる。また、請求項3の発明によれば、画像印刷終了後、制御部は、インク温度が閾値温度未満の場合、切替手段を加熱循環経路側に設定している。これにより、インク温度が適温の範囲内の低温の場合、インクが冷却手段によって冷却されることを抑制できる。
【0016】
請求項4の発明によれば、冷却手段の停止を切替手段の設定後に実行することによって、周辺温度が適温の範囲よりも高温の場合でも、周辺温度によってインクが加熱されることを抑制できる。換言すると、切替手段の設定よりも先に冷却手段を停止した場合、周辺温度によるインクの加熱が早く開始されるが、冷却手段の停止を遅らせることによって、この加熱を遅らせて、抑制することができる。また、請求項4の発明によれば、加熱手段の停止を切替手段の設定後に実行することによって、周辺温度が適温の範囲よりも低温の場合でも、周辺温度によってインクが冷却されることを抑制できる。換言すると、切替手段の設定よりも先に加熱手段を停止した場合、周辺温度によるインクの冷却が早く開始されるが、加熱手段の停止を遅らせることによって、この冷却を遅らせて、抑制することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、加熱循環経路を冷却循環経路よりも短くすることによって、加熱されたインクが、循環中に放熱することを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態による両面印刷装置の全体概略図である。
【図2】印刷部の概略図である。
【図3】両面印刷装置の制御系を説明するためのブロック図である。
【図4】両面印刷装置による印刷処理を説明するフローチャートである。
【図5】循環停止処理を説明するフローチャートである。
【図6】第2実施形態による循環停止処理を説明するフローチャートである。
【図7】第3実施形態による循環停止処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態によるインクジェット型の両面印刷装置について説明する。図1は、第1実施形態による両面印刷装置の全体概略図である。図2は、印刷部の概略図である。図3は、両面印刷装置の制御系を説明するためのブロック図である。以下の説明において、ユーザが位置する図1の紙面表方向を前方とする。また、図1に示すように、ユーザから視て、上下左右を上下左右方向とする。
【0020】
尚、図1の太線で示す経路が、印刷用紙が搬送される搬送経路である。搬送経路のうち実線で示す経路が通常経路RCである。搬送経路のうち一点鎖線で示す経路が、反転経路RRである。搬送経路のうち二点鎖線で示す経路が、給紙経路RSである。
【0021】
図1に示すように、両面印刷装置1は、給紙部2と、搬送印刷部3と、搬送部4と、排紙部5と、反転部6と、周辺温度センサ7と、制御部8と、各部を収納する筐体9とを備えている。
【0022】
給紙部2は、印刷用紙PAを給紙するものである。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部2は、複数の給紙台11と、複数対の給紙ローラ12とを備えている。給紙ローラ12は、何れかの給紙台11から給紙経路RSに沿って印刷用紙PAを搬送して搬送印刷部3へと給紙する。
【0023】
搬送印刷部3は、印刷用紙PAを搬送しつつ、印刷用紙PAに画像を印刷する。搬送印刷部3は、搬送経路において、給紙部2の下流側に配置されている。搬送印刷部3は、レジストローラ15と、ベルト搬送部16と、印刷部17とを備えている。
【0024】
レジストローラ15は、給紙部2または反転部6から搬送される印刷用紙PAをベルト搬送部16へと搬送する。ベルト搬送部16は、レジストローラ15から搬送された印刷用紙PAを吸引しつつ、搬送部4へと搬送する。
【0025】
印刷部17は、インク50を循環させつつ、吐出して画像を印刷するものである。印刷部17は、ベルト搬送部16の上方に、ベルト搬送部16と対向するように配置されている。図2において、矢印C0で示す経路は、インクの供給経路である。矢印C1及びC2で示す経路は、インクを加熱しつつ循環させる加熱循環経路C1−C2である。矢印C1及びC3で示す経路は、インクを冷却しつつ循環させる冷却循環経路C1−C3である。図2に示すように、印刷部17は、供給部18と、循環部19と、インクジェットヘッド20とを備えている。
【0026】
供給部18は、循環部19にインク50を供給する。供給部18は、インクボトル22と、供給管23とを備えている。インクボトル22には、供給用のインク50が溜められている。供給管23の一端部は、インクボトル22に接続されている。供給管23の他端部は、下部タンク25に接続されている。
【0027】
循環部19は、インク50を循環させつつ、インク50を加熱または冷却してインク温度Tiを調整する。循環部19は、下部タンク25と、循環ポンプ26と、電磁弁(請求項の切替手段に相当)27と、加熱器28と、冷却器29と、上部タンク30と、インク50の流路を形成する循環管31a〜31fとを備えている。
【0028】
下部タンク25は、インクボトル22から供給管23を介して供給されたインク50を一時的に溜める。また、下部タンク25は、循環管31fを介してインクジェットヘッド20から排出されたインク50を一時的に溜める。下部タンク25は、上部タンク30及びインクジェットヘッド20よりも下方に配置されている。
【0029】
循環ポンプ26は、インク50を循環させるものである。循環ポンプ26は、下部タンク25と電磁弁27とを接続する循環管31aの途中部に設けられている。循環ポンプ26により、下部タンク25に溜められたインク50は、図2に示す加熱循環経路C1−C2、または、冷却循環経路C1−C3を循環して、インクジェットヘッド20に供給される。
【0030】
電磁弁27は、インク50の循環経路を加熱循環経路C1−C2、または、冷却循環経路C1−C3の何れかに切り替えるものである。電磁弁27の一方の送液口は、循環管31bを介して加熱器28に接続されている。電磁弁27の他方の送液口は、循環管31cを介して冷却器29に接続されている。
【0031】
加熱器28は、加熱循環経路C1−C2を循環するインク50を加熱するものである。加熱器28は、循環管31bの下流側端部と後述する循環管31dの加熱側上流管部31dの上流側端部との間に設けられている。
【0032】
冷却器29は、冷却循環経路C1−C3を循環するインク50を冷却するものである。冷却器29は、ヒートシンク29aと、冷却ファン29bとを有する。ヒートシンク29aは、循環管31cの下流側端部と後述する循環管31dの冷却側上流管部31dの上流側端部との間に設けられている。冷却ファン29bは、ヒートシンク29aへと送風するものである。これにより、ヒートシンク29aの放熱性が向上する。
【0033】
上部タンク30は、インクジェットヘッド20に供給するインク50を一時的に溜める。上部タンク30には、インク50とともに空気が充填されている。上部タンク30は、インクジェットヘッド20及び下部タンク25よりも上方に配置されている。これにより、上部タンク30に溜められたインク50は、水頭差によって、インクジェットヘッド20及び下部タンク25へと流れる。
【0034】
循環管31aは、下部タンク25と電磁弁27とを接続する。循環管31bは、電磁弁27の一方の送液口と加熱器28とを接続する。循環管31cは、電磁弁27の他方の送液口と冷却器29とを接続する。
【0035】
循環管31dは、加熱側上流管部31dと、冷却側上流管部31dと、合流管31dとを有する。加熱側上流管部31dの下流端部と冷却側上流管部31dの下流側端部は、合流して合流管31dと連結されている。加熱側上流管部31dの上流側端部は、加熱器28と接続されている。冷却側上流管部31dの上流側端部は、冷却器29のヒートシンク29aに接続されている。合流管31dの下流側端部は、上部タンク30に接続されている。
【0036】
循環管31eは、上部タンク30とインクジェットヘッド20とを接続する。循環管31fは、インクジェットヘッド20と下部タンク25とを接続する。
【0037】
上述したように加熱循環経路C1−C2は循環管31dの加熱側上流管部31dを経由し、冷却循環経路C1−C3は循環管31dの冷却側上流管部31dを経由する。尚、加熱器経路C2の経路長は、冷却器経路C3の経路長よりも短くなるように構成している。このため、加熱循環経路C1−C2は、冷却循環経路C1−C3よりも短くなる。
【0038】
インクジェットヘッド20は、循環部19を循環するインク50を印刷用紙PAへ吐出するものである。インクジェットヘッド20は、上部タンク30よりも下方に配置されている。インクジェットヘッド20は、インク50を吐出するための圧力を作用させる圧電部材を有する。インク循環時には、インクジェットヘッド20に溜められたインク50は、循環管31fを介して、下部タンク25へと流れる。インクジェットヘッド20は、インク温度センサ32を有する。
【0039】
インク温度センサ32は、インクジェットヘッド20の内部のインク50のインク温度Tiを計測するものである。インク温度センサ32は、計測したインク温度Tiを制御部8へと出力する。
【0040】
搬送部4は、印刷済みの印刷用紙PAを乾燥しつつ搬送する。搬送部4は、搬送印刷部3の下流側に配置されている。搬送部4は、通常経路RCに沿って配置された複数対の搬送ローラ35を備えている。
【0041】
排紙部5は、印刷済みの印刷用紙PAを排紙して、積層する。排紙部5は、通常経路RCの最も下流側に配置されている。排紙部5は、切替機構37と、2対の排紙ローラ38と、排紙台39とを備えている。切替機構37は、通常経路RCと両面印刷用の反転経路RRとの間で印刷用紙PAの搬送経路を切り替えるものである。排紙ローラ38は、印刷用紙PAを排紙台39へと排紙する。
【0042】
反転部6は、片面が印刷された印刷用紙PAを反転させて搬送印刷部3へと搬送するものである。反転部6は、複数対の反転ローラ41と、フリッパ42と、スイッチバック部43とを備えている。反転ローラ41は、切替機構37を介して、搬送部4から搬送される片面印刷済みの印刷用紙PAをスイッチバック部43へと一度搬送する。また、反転ローラ41は、スイッチバック部43から戻る印刷用紙PAを、フリッパ42を介して、搬送印刷部3へと搬送する。
【0043】
周辺温度センサ7は、周辺温度Taを計測して、制御部8へと出力する。周辺温度Taとは、筐体9の内部の温度のことである。周辺温度センサ7は、筐体9に取り付けられている。
【0044】
制御部8は、両面印刷装置1の制御全般を司るものである。図3に示すように、制御部8は、種々のプログラムを実行するCPU51と、各情報が一時的に記憶されるRAM52と、基本プログラム等が記憶されているROM53と、印刷用プログラム等が記憶されているHDD54と、入出力を行うためのI/Oポート55とを備えている。
【0045】
HDD54には、適温上限温度Tuと、適温下限温度Tdと、閾値温度ThTとが記憶されている。ここで、適温とは、インク50が適度の粘度を持ち、適切なインク50の吐出が保障できる温度のことである。適温上限温度Tuとは、適温の上限温度(例えば、40℃)のことである。即ち、インク温度Tiが、適温上限温度Tuよりも高温になる前に、インク50を冷却する必要がある。適温下限温度Tdとは、適温の下限温度(例えば、20℃)のことである。即ち、インク温度Tiが、適温下限温度Tdよりも低温になる前に、インク50を加熱する必要がある。閾値温度ThTとは、適温の範囲内の所定の温度のことである。尚、本実施形態では、適温の中心温度(例えば、30℃)とする。
【0046】
I/Oポート55には、給紙部2、搬送印刷部3、搬送部4、排紙部5、及び、反転部6が入出力可能に接続されている。また、I/Oポート55には、画像データを入力するためのパーソナルコンピュータ等の外部機器(図示略)が接続されている。これにより、制御部8は、画像データが入力されると、給紙部2、搬送印刷部3、搬送部4、排紙部5、及び、反転部6を制御して、片面印刷または両面印刷を実行する。
【0047】
I/Oポート55には、搬送印刷部3のレジストローラ15、ベルト搬送部16及び印刷部17と、周辺温度センサ7とが接続されている。詳細には、I/Oポート55には、印刷部17のインクジェットヘッド20、循環ポンプ26、電磁弁27、加熱器28、冷却ファン29b、及び、インク温度センサ32が接続されている。
【0048】
これにより、制御部8は、画像印刷を開始する際に、循環ポンプ26を駆動させてインク50を循環させつつ、加熱器28または冷却ファン29bを制御する。この結果、インク温度Tiが適温へと調整される。
【0049】
また、制御部8は、画像印刷する際に、画像データに対応した吐出信号をインクジェットヘッド20へ出力する。この結果、インクジェットヘッド20は、画像データに対応したインク50の液滴を印刷用紙PAへと吐出する。
【0050】
また、制御部8は、画像印刷終了後、周辺温度Taが周辺温度センサ7から入力されると、入力された周辺温度Taに基づいて、電磁弁27を制御する。具体的には、制御部8は、周辺温度Taが適温下限温度Td以下の場合、電磁弁27を加熱循環経路C1−C2側へ設定する。一方、制御部8は、周辺温度Taが適温上限温度Tu以上の場合、電磁弁27を冷却循環経路C1−C3側へ設定する。
【0051】
また、制御部8は、画像印刷終了後、インク温度Tiがインク温度センサ32から入力されると、入力されたインク温度Tiに基づいて、電磁弁27を制御する。具体的には、制御部8は、インク温度Tiが閾値温度ThT以上の場合は、電磁弁27を冷却循環経路C1−C3側へ設定する。一方、制御部8は、インク温度Tiが閾値温度ThT以下の場合、電磁弁27を加熱循環経路C1−C2側へ設定する。
【0052】
(印刷処理)
次に、上述した第1実施形態による両面印刷装置1の印刷処理について説明する。図4は、両面印刷装置による印刷処理を説明するフローチャートである。図5は、循環停止処理を説明するフローチャートである。尚、図4及び図5において、「S」の後の数字は、ステップ番号を示す。
【0053】
図4に示すように、外部のパーソナルコンピュータ等から画像データが入力されて、印刷処理が開始されると、制御部8は、印刷初期処理を実行する(S1)。この印刷初期処理には、図2に示す印刷部17におけるインク循環及びインク50の温度調整も含まれる。具体的には、制御部8は、インク温度Tiと適温とを比較した判定結果に基づいて、加熱循環経路C1−C2または冷却循環経路C1−C3の何れかの経路に切り替える。この後、制御部8は、循環ポンプ26を起動して、インク50を加熱循環経路C1−C2または冷却循環経路C1−C3で循環させつつ、加熱器28または冷却器29によってインク温度Tiを適温へと調整する。
【0054】
次に、印刷初期動作が正常に実行されて、インク温度Tiが適温になると、インク循環が継続されつつ、画像印刷が開始される(S2)。以下、画像印刷動作について図1を参照して説明する。
【0055】
まず、画像印刷動作が開始されると、未印刷の印刷用紙PAは、給紙経路RSに沿って、何れかの給紙台11から給紙ローラ12により搬送印刷部3へと給紙される。搬送印刷部3では、印刷用紙PAは、レジストローラ15によってベルト搬送部16へ搬送される。そして、印刷用紙PAがベルト搬送部16によって搬送されつつ、画像が印刷部17のインクジェットヘッド20から吐出されたインク50によって印刷用紙PAに印刷される。この後、印刷用紙PAは、ベルト搬送部16により搬送部4へと搬送される。搬送部4では、印刷用紙PAは、搬送ローラ35によって排紙部5の切替機構37へと搬送される。
【0056】
ここで、片面印刷の場合は、印刷用紙PAは、切替機構37によって排紙ローラ38へとガイドされる。この後、印刷用紙PAは、排紙ローラ38によって排紙台39に排紙される。これにより、片面印刷が終了する。
【0057】
一方、両面印刷動作では、印刷用紙PAは、切替機構37によって反転経路RRへとガイドされる。反転部6では、印刷用紙PAは、フリッパ42にガイドされつつ、反転ローラ41によってスイッチバック部43へと一時的に搬入される。この後、スイッチバック部43から戻された印刷用紙PAは、フリッパ42にガイドされつつ、反転ローラ41によって搬送印刷部3へと再給紙される。
【0058】
搬送印刷部3では、印刷用紙PAの未印刷面がインクジェットヘッド20側に向けられた状態で、印刷用紙PAがベルト搬送部16によって搬送される。これにより、画像が、インクジェットヘッド20によって、印刷用紙PAの未印刷面に印刷される。この後、両面印刷された印刷用紙PAは、搬送部4及び排紙部5によって排紙台39まで搬送される。これにより、画像が印刷用紙PAの両面に印刷されて、両面印刷が終了する。
【0059】
この後、制御部8は、所定の枚数の印刷用紙PAに画像が印刷されたと判定すると、画像印刷を終了する(S3)。具体的には、制御部8は、印刷用紙PAの搬送を停止するとともに、インクジェットヘッド20への吐出信号の送信を停止する。
【0060】
次に、制御部8は、次の画像データが有るか否かを判定する(S4)。制御部8は、次の画像データが有ると判定すると(S4:Yes)、インク循環停止処理を実行することなく、印刷処理を終了する。一方、制御部8は、次の画像データが無いと判定すると(S4:No)、図5に示すインク循環を停止するための循環停止処理を実行する(S5)。尚、循環停止処理が開始される時点では、インク温度Tiは、画像印刷直後のため、略適温の範囲内である。
【0061】
図5に示すように、インク循環停止処理を開始すると、制御部8は、加熱器28及び冷却ファン29bを停止する(S11)。これにより、インク50の加熱及び冷却が終了する。尚、加熱器28及び冷却ファン29bの何れか一方は既に停止しているが、この場合は、停止状態が継続することになる。
【0062】
次に、制御部8は、循環ポンプ26を停止する(S12)。この後、インク50は、自然対流で循環する。
【0063】
次に、制御部8は、周辺温度センサ7から入力された周辺温度Taが適温下限温度Td以下か否かを判定する(S13)。制御部8は、周辺温度Taが適温下限温度Td以下と判定すると(S13:Yes)、電磁弁27を加熱循環経路C1−C2側に設定する(S14)。これにより、加熱循環経路C1−C2を自然対流で循環するインク50が、加熱器28の余熱によって加熱される。
【0064】
一方、制御部8は、周辺温度Taが適温下限温度Td以下でないと判定すると(S13:No)、周辺温度Taが適温上限温度Tu以上か否かを判定する(S15)。制御部8は、周辺温度Taが適温上限温度Tu以上と判定すると、電磁弁27を冷却循環経路C1−C3側に設定する(S16)。これにより、冷却循環経路C1−C3を自然対流で循環するインク50が、冷却器29によって放熱されて冷却される。
【0065】
一方、制御部8は、周辺温度Taが適温上限温度Td以上でないと判定すると(S15:No)、インク温度センサ32から入力されたインク温度Tiが閾値温度ThT以上か否かを判定する(S17)。ここで、ステップS17の処理は、ステップS13及びステップS15の判定結果が「No」の場合に実行される。これは、ステップS17の処理が、周辺温度Taが適温の範囲内である場合に実行されることを意味する。
【0066】
制御部8は、インク温度Tiが閾値温度ThT以上と判定すると(S17:Yes)、電磁弁27を冷却循環経路C1−C3へと設定する(S18)。これにより、周辺温度Taが適温の範囲内の場合、自然対流で循環する閾値温度ThTよりも高温のインク50が、加熱器28の余熱によって加熱されることなく、冷却器29によって放熱されて冷却される。
【0067】
一方、制御部8は、インク温度Tiが閾値温度ThT以上でないと判定すると(S17:No)、電磁弁27を加熱循環経路C1−C2に設定する(S19)。これにより、周辺温度Taが適温の範囲内の場合、自然対流で循環する閾値温度ThTよりも低温のインク50が、冷却器29によって放熱されることなく、加熱器28の余熱によって加熱される。
【0068】
制御部8は、上述したステップS14、S16、S18、S19の何れかの処理を実行すると、循環停止処理を終了するとともに、印刷処理を終了する。
【0069】
(印刷装置の効果)
次に上述した第1実施形態による両面印刷装置1の効果について説明する。
【0070】
上述したように両面印刷装置1では、画像印刷終了後、制御部8が周辺温度Taと適温下限温度Td及び適温上限温度Tuとの比較に基づいて、電磁弁27を制御している。これにより、加熱器28の余熱または冷却器29による放熱をインク温度Tiの調整に利用できる。この結果、両面印刷装置1は、次回の印刷開始時に、インク温度Tiを適温に調整するための時間を短縮できる。
【0071】
具体的には、制御部8は、周辺温度Taが適温下限温度Td以下の場合、電磁弁27を加熱循環経路C1−C2側に設定する。これにより、周辺温度Taが低温の場合でも、インク50が加熱器28の余熱によって加熱されるので、略適温の範囲内のインク温度Tiが周辺温度Taと同じ温度になり難い。この結果、両面印刷装置1は、次回の印刷開始時に、インク温度Tiを適温に設定するための時間を短縮することができる。また、両面印刷装置1は、印刷開始時の加熱器28の駆動を低減することによって、消費電力を低減できる。
【0072】
また、制御部8は、周辺温度Taが適温上限温度Tu以上の場合、電磁弁27を冷却循環経路C1−C3側に設定する。これにより、周辺温度Taが高温の場合でも、インク50が冷却器29によって放熱できるので、略適温の範囲内のインク温度Tiが周辺温度Taと同じ温度になり難い。この結果、両面印刷装置1は、次回の印刷開始時に、インク温度Tiを適温に設定するための時間を短縮することができる。また、両面印刷装置1は、印刷開始時の冷却器29の駆動を低減することによって、消費電力を低減できる。
【0073】
更に、制御部8は、周辺温度Taが適温の範囲内である場合、適温の範囲内の閾値温度ThTとインク温度Tiとの比較に基づいて、電磁弁27を制御している。これにより、加熱器28の余熱または冷却器29による放熱を、インク温度Tiの調整に利用できるので、次回の印刷開始時に、インク温度Tiを適温に調整するための時間を短縮できる。
【0074】
具体的には、制御部8は、インク温度Tiが閾値温度ThT以上の場合、電磁弁27を冷却循環経路C1−C3側に設定する。これにより、インク温度Tiが閾値温度ThT以上の場合、インク50が加熱器28の余熱によって加熱されることを抑制できるので、適温の範囲内のインク温度Tiが適温の範囲外になり難い。この結果、次回の印刷開始時に、インク温度Tiを適温に設定するための時間を短縮することができる。
【0075】
また、制御部8は、インク温度Tiが閾値温度ThT未満の場合、電磁弁27を加熱循環経路C1−C2側に設定する。これにより、インク温度Tiが閾値温度ThT未満の場合、インク50が冷却器29によって放熱されることを抑制できるので、適温の範囲内のインク温度Tiが適温の範囲外になり難い。この結果、次回の印刷開始時に、インク温度Tiを適温に設定するための時間を短縮することができる。
【0076】
また、両面印刷装置1では、加熱器経路C2を冷却器経路C3よりも短く構成している。これにより、加熱の必要なインク50が、放熱することを抑制できる。また、冷却の必要なインク50が、長い冷却器経路C3によって、より多く放熱することができる。
【0077】
(第2実施形態)
次に、上述した実施形態の循環停止処理を変更した第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態による循環停止処理を説明するフローチャートである。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。また、上述した実施形態と同様の処理には、同じステップ番号を付けて説明を省略する。
【0078】
図6に示すように第2実施形態による循環停止処理では、制御部8は、最初に、加熱器28を停止する(S21)。ここで、冷却ファン29bが駆動している場合、冷却ファン29bの駆動は継続する。その後、制御部8は、第1実施形態と同様に、ステップS12〜ステップS19の処理を実行する。次に、制御部8は、冷却ファン29bを停止する(S22)。これにより、第2実施形態による循環停止処理が終了する。
【0079】
上述したように第2実施形態による循環停止処理では、電磁弁27を設定した後に、冷却ファン29bを停止している。これにより、周辺温度Taが高い場合でも、冷却器29が周辺温度Taの影響により暖められることを遅らせることができるので、冷却器29によってインク50が温められることを抑制できる。また、消費電力の大きい加熱器28は、循環停止処理の開始と略同時に停止することによって、消費電力を低減できる。
【0080】
(第3実施形態)
次に、上述した実施形態の循環停止処理を変更した第3実施形態について説明する。図7は、第3実施形態による循環停止処理を説明するフローチャートである。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。また、上述した実施形態と同様の処理には、同じステップ番号を付けて説明を省略する。
【0081】
図7に示すように、第3実施形態による循環停止処理では、第2実施形態と同様に、制御部8は、ステップS21、ステップS13〜ステップS19、ステップS22の処理を実行する。尚、循環ポンプ26は、停止せずに上記処理を実行する。次に、制御部8は、循環停止処理が開始してからHDD54に記憶された閾値時間ThMが経過したか否かを判定する(S23)。ここで、閾値時間ThMは、加熱器28の余熱が放熱されて周辺温度Taと略同じ温度になる時間(例えば、数分)である。
【0082】
次に、制御部8は、閾値時間ThMが経過したと判定すると(S23:Yes)、循環ポンプ26を停止する(S24)。これにより、インク50の循環が停止する。この結果、第3実施形態による循環停止処理が終了する。
【0083】
上述したように第3実施形態による循環停止処理では、閾値時間ThMが経過するまで、循環ポンプ26の駆動を継続している。これにより、加熱器28の余熱が残っている状態で、インク50が加熱循環経路C1−C2を循環する場合、より効率よく加熱器28の余熱を利用することができる。
【0084】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。以下、上記実施形態を一部変更した変更形態について説明する。
【0085】
上述した実施形態を構成する各部材の形状、配置、数値、材料等は適宜変更可能である。また、上述した実施形態を組み合わせてもよい。
【0086】
上述した実施形態では、両面印刷装置に本発明を適用したが、片面印刷装置に本発明を適用してもよい。
【0087】
上述した実施形態では、切替手段として電磁弁を適用したが、他の経路を切り替え可能な切替手段を適用してもよい。
【0088】
上述した実施形態では、単色の両面印刷装置に本発明を適用したが、複数色(例えば、4色)印刷の印刷装置に本発明を適用してもよい。ここで、複数色印刷可能な印刷装置に本発明を適用した場合、各色のインク循環経路に電磁弁等の切替手段を設けることが好ましい。この場合、インク温度に基づいて切替手段を切り替える場合、各色のインク温度に基づいて個別に切り替えるように構成してもよく、全色のインク温度の平均に基づいて一斉に切り替えるように構成してもよい。更に、各循環経路を跨ぐように、インク温度を平均化するための熱交換器を設けてもよい。
【0089】
上述した実施形態では、閾値温度を適温の中心温度に設定したが、閾値温度は適温の中心温度以外の温度でもよい。例えば、閾値温度を適温の中心温度よりも低く設定することにより、インク温度が適温の中心温度よりも低くても、インクが加熱循環経路を循環する。これにより、インクがより長い時間、余熱によって保温されるので、印刷開始時に、より長い時間を必要とするインクの加熱を低減することができる。
【0090】
上述した実施形態では、周辺温度センサを筐体の内部に取り付け、周辺温度を筐体の内部の温度としたが、周辺温度センサを筐体の外部に取り付け、周辺温度を筐体の外部近傍の温度としてもよい。
【0091】
上述した実施形態では、インク温度センサをインクジェットヘッドの内部に設けたが、循環経路の別の個所にインク温度センサを設けてもよい。
【0092】
上述した第2実施形態では、電磁弁(切替手段)の設定後に冷却ファンを停止するように構成したが、電磁弁の設定後に加熱器を設定するように構成してもよい。これにより、周辺温度が適温の範囲より低温の場合でも、周辺温度によってインクが冷却されることを抑制できる。換言すると、電磁弁の設定よりも先に加熱器を停止した場合、周辺温度によるインクの冷却が早く開始されるが、加熱器の停止を遅らせることによって、加熱器の余熱により、この冷却を遅らせて、抑制することができる。更に、電磁弁の設定後に、冷却ファン及び加熱器を停止するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 両面印刷装置
3 搬送印刷部
7 周辺温度センサ
8 制御部
9 筐体
17 印刷部
18 供給部
19 循環部
20 インクジェットヘッド
22 インクボトル
23 供給管
25 下部タンク
26 循環ポンプ
27 電磁弁
28 加熱器
29 冷却器
29a ヒートシンク
29b 冷却ファン
30 上部タンク
31a〜31f 循環管
31d 加熱側上流管部
31d 冷却側上流管部
31d 合流管
32 インク温度センサ
50 インク
C1−C2 加熱循環経路
C1−C3 冷却循環経路
Ta 周辺温度
Tu 適温上限温度
Td 適温下限温度
ThT 閾値温度
Ti インク温度
ThM 閾値時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを加熱手段により加熱しつつ循環させる加熱循環経路、または、インクを冷却手段により冷却しつつ循環させる冷却循環経路の何れかに切り替える切替手段を有する循環部と、
周辺温度を計測して出力する周辺温度計測手段と、
画像印刷終了後、前記周辺温度計測手段から入力された周辺温度に基づいて、前記切替手段を制御して、インクの循環経路を設定する制御部とを備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、画像印刷終了後、
前記周辺温度がインクの適温下限温度以下の場合、前記切替手段を加熱循環経路側へと設定し、
前記周辺温度がインクの適温上限温度以上の場合、前記切替手段を冷却循環経路側へと設定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
インク温度を計測して出力するインク温度計測手段を更に備え、
前記制御部は、画像印刷終了後、
前記周辺温度がインクの適温範囲内であり、且つ、前記インク温度計測手段から入力されたインク温度がインクの適温範囲内の閾値温度以上の場合、前記切替手段を冷却循環経路側へと設定し、
前記周辺温度がインクの適温範囲内であり、且つ、前記インク温度計測手段から入力されたインク温度がインクの適温範囲内の閾値温度未満の場合、前記切替手段を加熱循環経路側へと設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記切替手段を設定した後、前記冷却手段または前記加熱手段を停止することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記加熱循環経路の経路長は、前記冷却循環経路の経路長よりも短いことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−68013(P2011−68013A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220567(P2009−220567)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】