説明

印刷装置

【課題】用紙ジャム発生時における用紙の破損を防ぎ、障害の低減を図る。
【解決手段】印刷ヘッドと、印刷ヘッドを搭載し、媒体の幅方向に移動可能なキャリッジと、キャリッジを移動範囲内で幅方向に往復移動させるキャリッジ駆動部と、キャリッジの位置を検出する検出部と、キャリッジの位置を検出部からの出力に応じて監視し、移動範囲内の第1位置において前記キャリッジが移動不能であると判断した場合、キャリッジ駆動部によってキャリッジの移動方向を反転させ、さらに、移動方向が反転した後のキャリッジが移動範囲内の第2位置において移動不能であると判断した場合、キャリッジ駆動部によってキャリッジの移動方向を再度反転させて、第1位置と第2位置の間にキャリッジを停止させた後エラー出力する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、例えばインクジェットプリンターは、圧電振動子や発熱素子によりインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させる記録ヘッドをキャリッジに搭載し、印刷用紙の幅方向(主走査方向)に移動させつつ、記録ヘッドからインク滴を吐出することで印刷を行う。記録ヘッドを搭載したキャリッジの駆動制御には、キャリッジ駆動用のキャリッジモーターと、エンコーダーとが使用される。キャリッジモーターを駆動した時に、エンコーダー出力をカウントするとともに2つのエンコーダー出力の位相関係や周期を監視することにより、キャリッジの位置や状態を把握し、キャリッジの位置や状態に対応して必要な制御、例えば、記録ヘッドのノズルからのインク滴の吐出、などが行われる。このような印刷装置は、例えば、特許文献1,2,3などに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−52374号公報
【特許文献2】特開2004−9710号公報
【特許文献3】特開2004−58616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような印刷装置では、キャリッジと印刷用紙(以下、単に用紙ともいう)とが干渉しあう用紙ジャムが発生するおそれがある。用紙ジャムが発生しているときにキャリッジを駆動すると、キャリッジがジャム状態の用紙と干渉し、エンコーダー出力が乱れ、用紙ジャムの進行に伴ってキャリッジが駆動不能になることがある。このようにキャリッジが移動不能になった場合、キャリッジをエラー発生時の位置に放置すると、ジャム状態の用紙を取り除く際にキャリッジがじゃまになり、用紙の取り除き作業が困難になる。この場合、無理に用紙を取り除くと、用紙が破損するおそれがあり、また、破れた用紙が装置内に飛散することによる2次的、3次的障害を起こすおそれがある。そこで、キャリッジが移動不能になった場合、キャリッジの移動を反転させて、安全な位置に退避させることが考えられる。
【0005】
しかしながら、キャリッジの移動を反転させ、退避させる途中において別の用紙ジャムにて移動不能になる可能性がある。この場合においても、そこでキャリッジを停止させると、上記と同様に無理に用紙を取り除く際に、用紙の破損や障害を起こすおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、用紙ジャム発生時における用紙の破損を防ぎ、障害の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを搭載し、媒体の幅方向に移動可能なキャリッジと、前記キャリッジを移動範囲内で前記幅方向に往復移動させるキャリッジ駆動部と、前記キャリッジの位置を検出する検出部と、前記キャリッジの位置を前記検出部からの出力に応じて監視し、前記移動範囲内の第1位置において前記キャリッジが移動不能であると判断した場合、前記キャリッジ駆動部によって前記キャリッジの移動方向を反転させ、さらに、移動方向が反転した後の前記キャリッジが前記移動範囲内の第2位置において移動不能であると判断した場合、前記キャリッジ駆動部によって前記キャリッジの移動方向を再度反転させて、前記第1位置と前記第2位置の間に前記キャリッジを停止させた後エラー出力する制御部と、を備えたことを特徴とする印刷装置である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態におけるインクジェットプリンターの概略構成図である。
【図2】印刷中に用紙ジャムが発生した状態を示す図である。
【図3】図2における用紙ジャム発生時のキャリッジの制御を示す図である。
【図4】印刷中に用紙ジャムが発生した別の状態を示す図である。
【図5】図4における用紙ジャム発生時のキャリッジの制御を示す図である。
【図6】本実施形態における用紙ジャムが発生した状態を示す図である。
【図7】本実施形態における用紙ジャムが発生した更に別の状態を示す図である。
【図8】キャリッジモーターに設けられた1対のエンコーダー出力の形態を示す波形図である。
【図9】本実施形態における制御部の制御フローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0011】
印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを搭載し、媒体の幅方向に移動可能なキャリッジと、前記キャリッジを移動範囲内で前記幅方向に往復移動させるキャリッジ駆動部と、前記キャリッジの位置を検出する検出部と、前記キャリッジの位置を前記検出部からの出力に応じて監視し、前記移動範囲内の第1位置において前記キャリッジが移動不能であると判断した場合、前記キャリッジ駆動部によって前記キャリッジの移動方向を反転させ、さらに、移動方向が反転した後の前記キャリッジが前記移動範囲内の第2位置において移動不能であると判断した場合、前記キャリッジ駆動部によって前記キャリッジの移動方向を再度反転させて、前記第1位置と前記第2位置の間に前記キャリッジを停止させた後エラー出力する制御部と、を備えたことを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
【0012】
このような印刷装置によれば、用紙ジャム発生時における用紙の破損を防ぎ、障害の低減を図ることができる。
【0013】
かかる印刷装置であって、前記キャリッジを停止させる位置は、前記第1位置と前記第2位置の中間点であることが望ましい。
このような印刷装置によれば、最も安全な位置にキャリッジを退避させることができる。
【0014】
かかる印刷装置であって、前記制御部は、前記第2位置から前記キャリッジを停止させるまで、前記キャリッジの位置を監視しつつ、間欠的に前記キャリッジを移動させることが望ましい。
このような印刷装置によれば、キャリッジの暴走などの異常の発生を防止できる。
【0015】
かかる印刷装置であって、前記第1位置、前記第2位置、及び、前記キャリッジを停止させる位置は、同じ位置であってもよい。
このような印刷装置によれば、往路及び復路の何れにも移動不能のキャリッジに対して強制的に駆動を継続することによる移動機構の破損を防止できる。
【0016】
かかる印刷装置であって、前記制御部が前記第1位置と前記第2位置の間に前記キャリッジを停止させた後に出力する前記エラーは、通常のエラーよりも程度が重いことを示すものであることが望ましい。
このような印刷装置によれば、ユーザーが媒体を取り除く際により注意を促すことができる。
【0017】
以下の実施形態では、印刷装置としてインクジェトプリンターを例に挙げて説明する。
【0018】
===実施形態===
図1は、本実施形態におけるインクジェットプリンターの概略構成図である。
印刷媒体である用紙12が置かれるプラテン10には、図示しない用紙送り機構が設けられ、用紙12が副走査方向に移動される。プラテン10上には、記録ヘッドH(印刷ヘッドに相当する)を搭載したキャリッジ14が設けられており、キャリッジ14は移動範囲20内において用紙12の幅方向(主走査方向)に往復移動する。この往復移動を可能とするため、キャリッジ14は、キャリッジモーターCMで駆動されるタイミングベルト16に連結具15を介して連結されている。
【0019】
キャリッジ14には記録ヘッドHと共にインクタンク(図示せず)が設けられ、インクタンクには本体側に装着されたインクカートリッジ(図示せず)からインク供給チューブ(図示せず)を介してインクが供給される。そして、記録ヘッドH内の圧電素子または発熱素子によりインク滴がインクノズルから吐出される。
【0020】
また、プラテン10の左端には、キャップ22が設けられている。キャップ22は、非印刷状態において記録ヘッドHのインクノズルをキャップし、インクノズル内のインクが乾燥しないように保護する。また、必要に応じてキャップ22に連結されたインク吸引用モーター24によりインクノズル内のインク滴が吸引され、インクノズルがクリーニングされる。一方、プラテン10の右端には、フラッシング孔28が設けられ、所定の時間間隔または所定の印刷量ごとに、プラテン10の右端に移動してきたキャリッジ14の記録ヘッドHがインク滴を吐出し、インクノズル内のインクが硬化するのを防止する。フラッシング孔28に対向して、吸収剤26が設けられ、フラッシング孔28から吐出されたインク滴が吸収されるとともに、インク吸引用モーター24により吸引されたインクも吸収される。
【0021】
マイクロプロセッサなどからなる制御部18は、キャリッジモーターCMに取り付けられた1対のエンコーダー(検出部に相当する)を有する駆動状態検出手段(図示せず)からエンコーダー出力ENCを入力し、エンコーダー出力をカウントするなどによりキャリッジ14の位置を監視する。そして、制御部18は、キャリッジモーターCMに駆動指令CMDRを出力してキャリッジモーターCMを駆動し、キャリッジ14を移動範囲20内で往復移動させる。また、制御部18は、印刷データに基づいて記録ヘッドH内の圧電素子や発熱素子を駆動するヘッド駆動信号HDRを出力すると共に、所定のエラー発生時に対応してエラー信号ERを出力して、図示しない表示パネルやエラーランプにエラー出力させる。
【0022】
図2は、印刷中に用紙ジャムが発生した状態を示す図である。この状態は、キャリッジ14が、キャップ22が設けられた左端から右方向100に移動中に、用紙ジャム12Aなどにより移動不能になる場合である。もし、エンコーダー出力ENCによりキャリッジ14が移動不能になったことを検出した時点でキャリッジモーターCMの駆動を停止し、キャリッジ14の移動を停止してその位置に放置すると、ジャム状態の用紙12を取り除く上でキャリッジ14がじゃまになる。また、無理に用紙12を取り除く用紙12が破損するおそれがある。
【0023】
図3は、図2における用紙ジャム発生時のキャリッジの制御を示す図である。この例ではキャリッジ14が移動不能になると、図3に示されるように、制御部18は、キャリッジモーターCMの駆動を反転(反転駆動)させることにより、その直前の移動方向(右方向)に対して反対の左方向102に、キャリッジ14を低速で移動させ、キャップ22が設けられたプラテン10の左端部に退避させている。そして、制御部18は、キャリッジ14上の記録ヘッドHをキャップ22によりキャップした後、エラーを出力する。この結果、エラー出力に応じて、ユーザーがジャム状態の用紙12を取り除く際に、キャリッジ14が印刷範囲または移動範囲20内に存在しないので、キャリッジ14がじゃまにならない。また、キャリッジ14の記録ヘッドHのノズルがキャップ22によりキャップされるので、ノズル内のインクの乾燥を防止できる。
【0024】
図4は、印刷中に用紙ジャムが発生した別の状態を示す図である。この状態は、キャリッジ14が、フラッシング孔28が設けられた右端から左方向102に移動中に、用紙ジャム12Bなどにより移動不能になる場合である。この場合も、移動不能検出時にキャリッジモーターCMの駆動を停止して、キャリッジ14を用紙ジャム12Bの位置に放置すると、ジャム状態の用紙12を取り除く上でキャリッジ14がじゃまになる。
【0025】
図5は、図4における用紙ジャム発生時のキャリッジの制御を示す図である。この例では図4の用紙ジャム状態になると、図5に示されるように、制御部18は、キャリッジモーターCMの駆動を反転(反転駆動)させることにより、その直前の移動方向(左方向)に対して反対の右方向100に、キャリッジ14を低速で移動させ、フラッシング孔28が設けられたプラテンの右端部に退避させている。そして、制御部18はエラーを出力する。この場合も、キャリッジ14が移動範囲20の外側に退避されるので、ユーザーがジャム状態の用紙12を除去する場合に、キャリッジ14がじゃまになることはない。但し、この場合、キャリッジ14の記録ヘッドHは、キャップ22によりキャッピングされないので、インクノズル内のインクの乾燥を防止することはできない。
【0026】
図6は、本実施形態における用紙ジャムが発生した状態を示す図である。本実施形態では、用紙ジャム12A,12Bが発生している。
例えば、キャリッジ14が図の左端から右方向100に移動中に、用紙ジャム12Aによって移動不能になるとする。この場合、図3に示されるように、その直前の移動方向(右方向)に対して反対の左方向102に、キャリッジ14を低速で移動(反転移動)させればよい。しかし、図6では、用紙ジャム12Aの左側に用紙ジャム12Bがあるので、キャリッジ14を移動範囲20の外側に退避させることができず、用紙ジャム12Bによって移動不能となってしまう。キャリッジ14をその位置に放置すると、ジャム状態の用紙12を取り除く上でキャリッジ14がじゃまになる。なお、キャリッジ14が用紙ジャム12Bによって移動不能となった状態で無理に用紙を取り除くと、用紙が破損するおそれがあり、また、破れた紙が例えばセンサ類に入って誤動作を起こすなど2次的、3次的障害が発生するおそれがある。一方、移動不能のキャリッジ14に対して強制的に駆動を継続すると、例えばキャリッジ14の移動機構が破損するおそれがある。
【0027】
また。図6において、キャリッジ14が図の右側から左方向102に移動中の場合、キャリッジ14が、左方向102に移動中に、まず用紙ジャム12Bにより移動不能になる。この場合、図5に示されるように、その直前の移動方向(左方向)に対して反対の左方向100に、キャリッジ14を低速で移動(反転移動)させればよい。しかし、図6では、用紙ジャム12Bの右側に用紙ジャム12Aがあるので、キャリッジ14を移動範囲20の外側に退避させることができず用紙ジャム12Aによって移動不能となってしまう。この場合も、キャリッジ14をその位置に放置すると、ジャム状態の用紙12を取り除く上でキャリッジ14がじゃまになる。また、無理に用紙を取り除いたり強制的に駆動を継続したりすると、上記と同様に障害が起こるおそれがある。
【0028】
そこで、本実施形態の制御部18は、最初の用紙ジャム12A(又は12B)で移動不能となると、キャリッジモーターCMの駆動を反転(反転駆動)させることにより、キャリッジ14をその直前の移動方向と反対方向に低速で移動させる。その後、キャリッジを印刷範囲外に退避させる前に、キャリッジ14が用紙ジャム12B(又は12A)で移動不能となると、再度、キャリッジモーターCMを反転駆動させることにより、キャリッジ14の移動方向を反転させる。そして、用紙ジャム12Aと用紙ジャム12Bの間にキャリッジ14を停止させた後エラーを出力する。本実施形態では、キャリッジ14の停止位置を、用紙ジャム12Aで移動不能となった位置と用紙ジャム12Bで移動不能になった位置の中間点とする。このように停止位置を中間点とすることで、用紙12を取り除く際に、最も安全な位置(障害の発生しにくい位置)にキャリッジ14を退避させることができる。
【0029】
なお、キャリッジ14の暴走によって用紙ジャムが発生したおそれがあり、この場合、キャリッジ14の移動方向を反転した後にもキャリッジ14が暴走するおそれがある。あるいは、キャリッジ14が用紙ジャムに衝突して移動不能となることによりキャリッジ14の移動機構に異常が発生しているおそれがある。そこで、本実施形態では、制御部18は、キャリッジ14の移動方向を再度反転させた後(2回目の反転後)、キャリッジ14の位置を確認しつつ、コマ送りで小刻みに上記中間位置まで移動させる。こうすることで、キャリッジ14が暴走するなどの異常を防止することができる。また、キャリッジ14を中間点に停止させた後に出力するエラーは通常のフェイタルエラー(以下、エラーBとする)よりも程度が重いことを示す深刻エラー(以下、エラーAとする)であることが望ましい。このエラーAを出力することで、ユーザーに注意を促すことができ、用紙12の取り除きの作業をより慎重に行わせることができる。よって、無理に用紙12を取り除くなどによる障害の発生を低減させることができる。
【0030】
このように、本実施形態では、用紙12を取り除く際にキャリッジ14を安全な位置に退避させることができる。よって、用紙12の破損を防ぎ、障害の低減を図ることができる。
【0031】
図7は、本実施形態における用紙ジャムが発生した更に別の状態を示す図である。この状態では、用紙ジャム12A,12Bにより、キャリッジ14が左方向102及び右方向100のいずれの方向にも移動不能になっている。つまり、用紙ジャム12Aによってキャリッジ14が移動不能となった位置と、用紙ジャム12Bによってキャリッジ14が移動不能になった位置と、中間点とが同じである。この場合、制御部18は、キャリッジ14が用紙ジャム12Aと用紙ジャム12Bに挟まれて両方向に移動不能なので、その位置でキャリッジモーターCMを停止し、エラーを出力する。その結果、キャリッジ14は、エラー検出時点の位置に放置される。この場合は、ユーザーがジャム状態の用紙12を取り除くのにキャリッジ14がじゃまになるが、移動不能のキャリッジ14に対して強制的に駆動を継続することによる移動機構の破損を防止できる。
【0032】
図8(A)〜(D)は、キャリッジモーターに設けられた1対のエンコーダー出力の形態を示す波形図である。図8(A)は、キャリッジモーターCMが一方に回転して、キャリッジ14を右方向に移動させるときのエンコーダー出力波形である。エンコーダーAの出力ENC−AがエンコーダーBの出力ENC−Bよりも位相が進んだ状態であり、キャリッジモーターCMの回転速度が一定であれば、エンコーダー出力の周期も一定になる。図8(B)は、キャリッジモーターCMが逆方向に回転して、キャリッジ14を左方向に移動させるときのエンコーダー出力波形である。この場合は、エンコーダーBの出力ENC−BがエンコーダーAの出力ENC−Aよりも位相が進んだ状態になる。制御部18は、これらのエンコーダー出力を位相状態に応じてカウントし、キャリッジ14の位置を把握し続ける。
【0033】
図8(C)は、キャリッジが移動不能になってロック状態になった時のエンコーダー出力波形である。1対のエンコーダー出力の変化が所定時間T以上にわたり発生しなくなると、キャリッジ14が用紙ジャムなどの原因で移動不能になり、ロック状態になったことが検出される。更に、図8(D)は、キャリッジの移動が不能になると共に一時的に逆方向に移動した時のエンコーダー出力波形である。つまり、用紙ジャムなどによりキャリッジ14の移動が停止し、さらに、ジャム状態の用紙12の圧力によりキャリッジ14が逆方向に移動した場合である。破線の丸で示したように、逆転状態Rが検出される。
【0034】
本実施形態では、制御装置18は、上記の図8(A),(B)の検出出力は正常状態と判断し、一方で、上記の図8(C),(D)の検出出力は用紙ジャム状態と判断し、キャリッジモーターCMを逆方向に低速回転する。
【0035】
図9は、本実施形態における制御部の制御フローチャート図である。
まず、制御部18は、印刷中においてキャリッジモーターCMを駆動して、記録ヘッドHを搭載したキャリッジ14を右方向100または左方向102のいずれかに移動させる(S10)。そして、図8(C),(D)のようなロック状態または逆転状態のエンコーダー出力波形が検出されると(S12:YES)、制御部18は、その位置(第1位置に相当する)でキャリッジモーターCMを反転駆動し、キャリッジ14を直前の移動方向と逆方向に低速で移動(反転)させる(S14)。
【0036】
この場合、図3や図5に示したように反転駆動可能な場合は、制御部18は、エンコーダー出力をカウントして、キャリッジがキャップ22の位置か、フラッシング孔28の位置のいずれか(移動範囲20のいずれか一端の位置)に達するのを監視し、その位置に移動したことを検出すると(S16:YES)、エラーB(通常エラー)を出力する(S18)。なお、キャリッジ14がキャップ22の位置に移動してきた場合は、更に、制御部18は、記録ヘッドHをキャップ22によりキャップした後に、エラーBを出力する。これにより、インクの乾燥を防止することができる。
【0037】
一方、キャリッジ14が移動範囲20の一端に到達することなく(S16:NO)、ロック状態が検出されると(S20:YES)、制御部18は、再度キャリッジモーターCMを反転駆動し、キャリッジ14を直前の移動方向と逆方向に移動させる(S22)。ここでは、制御部18は、キャリッジ14をコマ送りで小刻みに移動させる。こうすることで、キャリッジ14の暴走などの異常を防止することができる。
【0038】
そして、ステップS12において移動不能となった位置とステップS20において移動不能になった位置の中間点(すなわち用紙ジャムの中間点)でキャリッジ14を停止させ(S24)、エラーA(深刻エラー)を出力する。これにより、ユーザーに用紙12の取り除きの作業をより慎重に行うように注意を促すことができる。例えば、記録ヘッドHが取り外し可能である場合、エラーAが出力されると、ユーザーは記録ヘッドHをキャリッジ14から取り外した後に用紙12の取り除きの作業を行うようにする。このようにエラーAを出力することで、ユーザーに深刻な状態であると認識させることができ、用紙12が慎重に取り除かれるので、用紙12の破損を防止でき、障害の低減を図ることができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、用紙ジャムよってキャリッジ14が移動不能状態になると、制御部18はキャリッジモーターCMによってキャリッジ14を反転させ、逆方向に低速で移動させている。そして、さらに、反転駆動後にキャリッジ14が移動不能になった場合、再度キャリッジ14を反転させ、最初のジャムで動けなくなった位置と、次のジャムで動けなくなった位置の中間点でキャリッジ14を停止させている。これにより、エラー発生に伴ってジャム状態の用紙12を取り除く作業で、キャリッジ14を最も安全な位置に退避させることができ、用紙12の破損を防ぎ、障害の低減を図ることができる。
【0040】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0041】
例えば、前述の実施形態では、印刷装置の一例としてインクジェットプリンターが説明されている。但し、印刷装置はインクジェットプリンターに限られるものではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を吐出したりする印刷装置であってもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【符号の説明】
【0042】
10 プラテン、12 用紙、14 キャリッジ、
15 連結具、16 タイミングベルト、
18 制御部、20 移動範囲、
22 キャップ部材、24 インク吸引用モーター、
26 吸収剤、28 フラッシング孔、
CM キャリッジモーター、H 記録ヘッド、
ENC エンコーダー出力、CMDR 駆動指令、
ER エラー信号、HDR ヘッド駆動信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを搭載し、媒体の幅方向に移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジを移動範囲内で前記幅方向に往復移動させるキャリッジ駆動部と、
前記キャリッジの位置を検出する検出部と、
前記キャリッジの位置を前記検出部からの出力に応じて監視し、前記移動範囲内の第1位置において前記キャリッジが移動不能であると判断した場合、前記キャリッジ駆動部によって前記キャリッジの移動方向を反転させ、さらに、移動方向が反転した後の前記キャリッジが前記移動範囲内の第2位置において移動不能であると判断した場合、前記キャリッジ駆動部によって前記キャリッジの移動方向を再度反転させて、前記第1位置と前記第2位置の間に前記キャリッジを停止させた後エラー出力する制御部と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記キャリッジを停止させる位置は、前記第1位置と前記第2位置の中間点である、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記第2位置から前記キャリッジを停止させるまで、前記キャリッジの位置を監視しつつ、間欠的に前記キャリッジを移動させる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記第1位置、前記第2位置、及び、前記キャリッジを停止させる位置は、同じ位置である、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の印刷装置であって、
前記制御部が前記第1位置と前記第2位置の間に前記キャリッジを停止させた後に出力する前記エラーは、通常のエラーよりも程度が重いことを示すものである、
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−20407(P2012−20407A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157632(P2010−157632)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】