説明

印刷装置

【課題】遮光用インクを吐出可能な印刷装置の印刷ヘッドを小型化する。
【解決手段】印刷ヘッド250を印刷媒体に対して相対的に主走査方向または副走査方向に走査して印刷を行う印刷装置であって、印刷ヘッド250は、カラーインクを吐出するノズルが副走査方向に複数配列されたカラーインクノズル列244〜247と、遮光用インクを吐出するノズルが副走査方向に複数配列された第1の遮光用インクノズル列248と、遮光用インクを吐出するノズルが副走査方向に複数配列された、第1の遮光用インクノズル列248とは異なる第2の遮光用インクノズル列249とを備え、第1の遮光用インクノズル列248は、カラーインクノズル列244〜247と主走査方向に重なる位置に配設され、第2の遮光用インクノズル列249は、カラーインクノズル列244〜247と主走査方向に重ならない位置に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、詳しくは、印刷媒体に対して印刷ヘッドを主走査方向および副走査方向に相対的に走査して印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透光性や光散乱性を有する印刷媒体に印刷をする場合に、印刷画像領域の透光性および光散乱性を抑制し印刷画像の視認性を高めるために、遮光用インクを用いて印刷を行う方法が知られている。遮光用インクを用いた印刷を行う印刷装置に関する技術としては、例えば下記特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−05878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術による印刷装置は、インクを吐出するノズル列を副走査方向に3列備える印刷ヘッドを有する。このような印刷ヘッドを、より小型化するよう技術の改良が求められていた。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、遮光用インクを吐出可能な印刷装置の印刷ヘッドを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために、以下の形態または適用例を取ることが可能である。
【0007】
[適用例1]
印刷ヘッドを印刷媒体に対して相対的に主走査方向または副走査方向に走査して印刷を行う印刷装置であって、前記印刷ヘッドは、カラーインクを吐出するノズルが前記副走査方向に複数配列されたカラーインクノズル列と、遮光用インクを吐出するノズルが前記副走査方向に複数配列された第1の遮光用インクノズル列と、遮光用インクを吐出するノズルが前記副走査方向に複数配列された、前記第1の遮光用インクノズル列とは異なる第2の遮光用インクノズル列とを備え、前記第1の遮光用インクノズル列は、前記カラーインクノズル列と前記主走査方向に重なる位置に配設され、前記第2の遮光用インクノズル列は、前記カラーインクノズル列と前記主走査方向に重ならない位置に配設された印刷装置。
【0008】
この印刷装置によると、印刷ヘッドは、遮光用インクを吐出するノズルからなる2つの遮光用インクノズル列のうち、第1の遮光用インクノズル列はカラーインクノズル列と主走査方向に重なる位置に配設されているので、カラーインクノズル列を副走査方向に挟んだ2カ所に遮光用インクノズル列を備える構造の印刷ヘッドを備える印刷装置と比較して、印刷ヘッドの構造を小型化することができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載の印刷装置であって、当該印刷装置は、第1の印刷モードまたは第2の印刷モードのいずれか一方によって印刷を行い、前記第1の印刷モードによる印刷は、前記カラーインクノズル列に含まれるノズルを用いた前記カラーインクの吐出と、前記第2の遮光用インクノズル列に含まれるノズルを用いた前記遮光用インクの吐出とによる印刷であり、前記第2の印刷モードによる印刷は、前記カラーインクノズル列に含まれる所定数のノズルからなる第1のノズル群を用いた前記カラーインクの吐出と、前記第1の遮光用インクノズル列に含まれるノズルのうち前記第1のノズル群と前記主走査方向に重ならない位置で、かつ、前記第1のノズル群より前記第2の遮光用インクノズル列と前記副走査方向に遠い側に配置される所定数のノズルからなる第2のノズル群を用いた前記遮光用インクの吐出とによる印刷である印刷装置。
この印刷装置によると、第1の印刷モードと第2の印刷モードとの2種類の印刷モードによって印刷を行うことができる。
【0010】
[適用例3]
適用例2記載の印刷装置であって、前記第2の遮光用インクノズル列は前記第1の遮光用インクノズル列と比べて、前記副走査方向における前記印刷媒体に対する相対的な前記印刷ヘッドの進行方向前方側に配設された印刷装置。
【0011】
この印刷装置によると、第1の印刷モードとして、所定の印刷領域に対して、第2の遮光用インクノズル列によって遮光用インクを付与した後に、同一領域にカラーインクノズル列によってカラーインクを付与することができる。また、第2の印刷モードとして、所定の印刷領域に対して、第1のノズル群によってカラーインクを付与した後に、同一領域に第2のノズル群によって遮光用インクを付与することができる。
【0012】
[適用例4]
適用例3記載の印刷装置であって、前記第1の印刷モードによる印刷は、前記第2の遮光用インクノズル列に含まれるノズルから前記遮光用インクを印刷媒体に吐出して遮光用インク層を形成後、前記カラーインクノズル列に含まれるノズルから前記カラーインクを前記印刷媒体に吐出してカラーインク層を前記遮光用インク層に積層して形成し、前記第2の印刷モードによる印刷は、前記第1のノズル群のノズルから前記カラーインクを印刷媒体に吐出してカラーインク層を形成後、前記第2のノズル群のノズルから前記遮光用インクを前記印刷媒体に吐出して遮光用インク層を前記カラーインク層に積層して形成する印刷装置。
【0013】
この印刷装置によると、印刷媒体が透光性や光散乱性を有していた場合に、第1の印刷モードによって印刷を行い印刷面から印刷画像を視認することによって印刷画像自体の透光性や光散乱性を抑制することができる。また、印刷媒体が透光性を有していた場合に、第2の印刷モードによって印刷を行い印刷面とは反対側から印刷画像を視認することによって印刷画像自体の透光性を抑制することができる。
【0014】
[適用例5]
適用例2に記載の印刷装置であって、前記第2の遮光用インクノズル列は前記第1の遮光用インクノズル列と比べて、前記副走査方向における前記印刷媒体に対する相対的な前記印刷ヘッドの進行方向後方側に配設される印刷装置。
【0015】
この印刷装置によると、第1の印刷モードとして、所定の印刷領域に対して、カラーインクノズル列によってカラーインクを付与した後に、同一領域に遮光用インクノズル列によって遮光用インクを付与することができる。また、第2の印刷モードとして、所定の印刷領域に対して、第2のノズル群によって遮光用インクを付与した後に、同一領域に第1のノズル群によってカラーインクを付与することができる。
【0016】
[適用例6]
適用例5記載の印刷装置であって、前記第1の印刷モードによる印刷は、前記カラーインクノズル列に含まれるノズルから前記カラーインクを印刷媒体に吐出してカラーインク層を形成後、前記第2の遮光用インクノズル列に含まれるノズルから前記遮光用インクを前記印刷媒体に吐出して遮光用インク層を前記カラーインク層に積層して形成し、前記第2の印刷モードによる印刷は、前記第2のノズル群のノズルから前記遮光用インクを印刷媒体に吐出して遮光用インク層を形成後、前記第1のノズル群のノズルから前記カラーインクを前記印刷媒体に吐出してカラーインク層を前記遮光用インク層に積層して形成する
印刷装置。
【0017】
この印刷装置によると、印刷媒体が透光性を有していた場合に、第1の印刷モードによって印刷を行い印刷面とは反対側から印刷画像を視認することによって印刷画像自体の透光性を抑制することができる。また、印刷媒体が透光性または光散乱性を有していた場合に、第2の印刷モードによって印刷を行い印刷面から印刷画像を視認することによって印刷画像自体の透光性または光散乱性を抑制することができる。
【0018】
[適用例7]
前記遮光用インクは白色インクである適用例1ないし適用例6のいずれか記載の印刷装置。
この印刷装置によると遮光用インクとして白色インクを用いるので印刷画像の明度を確保することができる。
【0019】
[適用例8]
前記遮光用インクは金属光沢を有するメタリックインクである適用例1ないし適用例6のいずれか記載の印刷装置。
この印刷装置によると遮光用インクとしてメタリックインクを用いるので印刷画像に金属光沢の質感を与えることができる。
【0020】
[適用例9]
前記印刷媒体は透光性を有する印刷媒体である適用例1ないし適用例8のいずれか記載の印刷装置。
この印刷装置によると透光性を有する印刷媒体に印刷可能であるので、印刷面から印刷画像を観察する場合の印刷と、印刷面とは反対側から印刷画像を観察する場合の印刷とを行うことができる。
【0021】
[適用例10]
前記印刷媒体は非透光性の印刷媒体である適用例1ないし適用例8のいずれか記載の印刷装置。
この印刷装置によると、非透光性の印刷媒体に印刷を行うことができる。非透光性の印刷媒体として、光散乱性の印刷媒体に印刷を行うことができる。
【0022】
[適用例11]
適用例2ないし適用例10のいずれか記載の印刷装置であって、さらに第3の印刷モードを有し、前記第3の印刷モードによる印刷は、前記カラーインクノズル列および前記第1の遮光用インクノズル列に含まれるノズルのうち、前記第2の印刷モードで用いない前記各ノズル列のノズルを用いた前記カラーインクおよび遮光用インクの吐出による印刷であり当該印刷装置は前記第1の印刷モード、前記第2の印刷モードおよび第3の印刷モードのいずれか1つの印刷モードによる印刷が可能である印刷装置。
この印刷装置によると各ノズルの使用頻度の偏りを抑制することができる。
【0023】
[適用例12]
印刷ヘッドを印刷媒体に対して相対的に主走査方向または副走査方向に走査して印刷を行う印刷装置であって、前記印刷ヘッドは、カラーインクを吐出するノズルを前記副走査方向に複数配列したカラーインクノズル列と、遮光用インクを吐出するノズルを前記副走査方向に複数配列した遮光用インクノズル列とを備え、前記遮光用インクノズル列は、前記カラーインクノズル列と前記主走査方向に重なる位置に配置した前記ノズルと、前記カラーインクノズル列と前記主走査方向に重ならない位置に配置した前記ノズルとを備えた印刷装置。
【0024】
この印刷装置によると、遮光用インクノズル列はカラーインクノズル列と主走査方向に重なる位置に配置したノズルを備えるので、カラーインクノズル列と主走査方向に重ならない位置に配置したノズルのみを備える遮光用インクノズル列とカラーインクノズル列とからなる印刷ヘッドと比較して、印刷ヘッドを小型化することができる。
【0025】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、印刷装置、印刷ヘッド、印刷システムのほか、印刷装置の製造方法、印刷ヘッドの製造方法、上記印刷装置、印刷ヘッドを用いた印刷方法等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】印刷システム10の構成を説明する概略構成図である。
【図2】第1から第3の印刷モードについて説明する説明図である。
【図3】コンピューター100の概略構成図である。
【図4】プリンター200の概略構成を示すブロック図である。
【図5】インク吐出用ヘッドのノズル配置を概略的に示す説明図である。
【図6】各印刷モードにおいて使用するノズルを説明する説明図である。
【図7】印刷処理の流れを示したフローチャートである。
【図8】印刷ヘッド250aを説明する説明図である。
【図9】印刷ヘッド250b,250c,250dを説明する説明図である。
【図10】変形例2を説明する説明図である。
【図11】変形例3を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
(A1)システム構成:
図1は本実施例の実施形態としての印刷システム10の概略構成図である。図示するように、本実施例の印刷システム10は、印刷制御装置としてのコンピューター100と、コンピューター100の制御の下で実際に画像を印刷するプリンター200とから構成されている。印刷システム10は全体が一体となった広義の印刷装置として機能する。
【0028】
本実施例のプリンター200は、カラーインクとして、シアンインク(C)と、マゼンダインク(M)と、イエロインク(Y)と、ブラックインク(K)とを用いて印刷を行う。更に、遮光用インクとして用いる白色インク(W)とが印刷可能に備えられている。遮光用インクとは遮光性を有するインクであり、印刷媒体が透光性を有する場合は、印刷媒体上に形成された印刷画像の透光性を抑制することを目的に用いるインクである。また印刷媒体が非透光性で、例えば光散乱性を有する印刷媒体である場合には、遮光用インクは、印刷媒体上に形成された印刷画像の光散乱性を抑制するために用いるインクである。その他、非透光性の印刷媒体として、地色が赤や青や黒などカラー色である場合や、印刷媒体の地色が白色であってもパールホワイトなどの特殊な質感を有する場合には、遮光用インクは、印刷媒体上に形成された印刷画像に対する印刷媒体そのものの地色や質感による影響を抑制することを目的に用いるインクである。すなわち遮光用インクとは、カラーインクによって形成した印刷画像が印刷媒体の地色(透光性、光散乱性、質感を含む)の影響を受けることを抑制することを目的として印刷媒体に付与するインクである。
【0029】
本実施例では遮光用インクとして白色インク(W)を採用したが、遮光性を有するインクであれば他の色も利用可能である。例えば、遮光性を有するカラーインク、金属光沢を有するメタリックインク、パール光沢を有する白色インクなどを用いることができる。また遮光性を有していれば半透明色なインクでもよい。なお、本明細書では、「カラーインク」という場合には、ブラックインクも含む意味で用いるが、プリンター200は、カラーインクとして、ブラックインクを含まない構成とすることも差し支えない。この場合、黒色は、シアン、マゼンダ、イエロの各インクを用いた、いわゆるコンポジットブラックとして表現すればよい。
【0030】
このプリンター200に対して、印刷用のデータを用意し供給するコンピューター100の構成について説明する。コンピューター100には、所定のオペレーティングシステムがインストールされており、このオペレーティングシステム下で、アプリケーションプログラム20が動作している。オペレーションシステムには、ビデオドライバー22やプリンタードライバー24が組み込まれている。アプリケーションプログラム20は、例えば、デジタルカメラ120から画像データORGを入力する。すると、アプリケーションプログラム20は、ビデオドライバー22を介して、この画像データORGによって表される画像をディスプレイ121に表示する。また、アプリケーションプログラム20は、プリンタードライバー24を介して、画像データORGをプリンター200に出力する。
【0031】
本実施例において、デジタルカメラ120から入力する画像データORGは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色の色成分からなるデータである。アプリケーションプログラム20は、画像データORG内の任意の領域に対して、R,G,Bの色成分からなる領域(以下、「カラー発色領域」という)を設定する。
【0032】
アプリケーションプログラム20は、デジタルカメラ120から入力した画像データORGに対して、白色インク(W)のデータを付加する。本実施例においては、アプリケーションプログラム20は、印刷媒体における印刷可能な領域全体に遮光用の白色インクを付与する。以下、白色インクを付与する領域を「白色領域」と呼ぶ。すなわち、白色領域の中には、カラー発色領域と重畳する領域が存在する。またカラー発色領域は必ず白色領域と重畳している。なお、本実施例では白色領域は、印刷媒体における印刷可能な領域全体としているが、カラー発色領域と白色領域が同一領域であるとしてもよい。
【0033】
プリンタードライバー24は、アプリケーションプログラム20から画像データORGを受け取って、これをプリンター200に出力しうるデータに変換する。プリンタードライバー24は、色変換を行う色変換モジュール42、色変換モジュール42が色変換の際に参照する色変換テーブルLUT1、色変換後の画像データの多値化を行うハーフトーンモジュール44、多値化後のデータを各色インクのドットデータに変換する印刷制御モジュール45、印刷制御モジュール45に対する設定を行う印刷モード設定部49を備える。印刷制御モジュール45は内部に、白色ドット形成モジュール46、カラードット形成モジュール48を備える。
【0034】
色変換モジュール42は、アプリケーションプログラム20から画像データORGを受け取り、画像データORGに含まれるR,G,Bの各成分データ(以下、RGB成分とも呼ぶ)に基づいて、予め用意された色変換テーブルLUT1を参照して、画像データORG中のカラー発色領域について、そのRGB成分をプリンター200が表現可能な色成分(シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の各色)に変換する。
【0035】
ハーフトーンモジュール44は、色変換モジュール42によって色変換された画像データの階調をドットの分布によって表すハーフトーン処理を行う。本実施例では、このハーフトーン処理として、周知の組織的ディザ法を用いる。なお、ハーフトーン処理としては、組織的ディザ法以外にも、誤差拡散法や濃度パターン法その他のハーフトーン技術を利用することができる。
【0036】
印刷制御モジュール45は、ハーフトーン処理されたデータを用いて、各インクドットの形成をプリンター200に指示する信号に変換する。カラードット形成モジュール48は、ハーフトーン処理された画像、すなわち、カラー発色領域の画像について、上記各色のカラーインクによるドット形成を行う。白色ドット形成モジュール46は、白色領域に白色のドットを形成する。白色領域への白色ドットのドット記録率は予め固定値として白色ドット形成モジュール46に設定されており、その固定値に基づいて白色ドットを形成する。
【0037】
印刷モード設定部49は、印刷処理の開始前に、第1から第3の印刷モードのうちのいずれの印刷モードを実行するのかの指示をユーザーから受け付けるとともに、受け付けた指示に基づいて印刷モードを設定する。ここで、印刷モードについて説明する。図2は、第1から第3の印刷モードについて説明する説明図である。図2(A)は第1の印刷モードで印刷を行った場合の、印刷後の印刷媒体の断面図を模式的に示している。第1の印刷モードは、印刷媒体に透光性を有する透光性印刷媒体を用い、印刷面から印刷画像を観察する場合に用いる印刷モードである。第1の印刷モードでは、透光性印刷媒体に対して、最初に遮光用インクとして白色インクを付与する。白インクは、白色領域すなわち印刷媒体における印刷可能領域全体に付与する。その後、カラー発色領域に各カラーインク(C,M,Y,K)を付与する。
【0038】
図2(B)は第2の印刷モードで印刷を行った場合の、印刷後の印刷媒体の断面図を模式的に示している。第2の印刷モードは、印刷媒体に透光性を有する透光性印刷媒体を用い、印刷面とは反対側の面から印刷画像を観察する場合に用いる印刷モードである。第2の印刷モードでは、透光性印刷媒体に対して、最初にカラー発色領域にカラーインクを付与する。その後、白色領域に白色インクを付与する。
【0039】
図2(C)は第3の印刷モードで印刷を行った場合の、印刷後の印刷媒体の断面図を模式的に示している。第3の印刷モードは、印刷媒体として非透光性の印刷媒体、例えば紙媒体や光散乱性のプラスチックからなる印刷媒体などを用い、印刷面から印刷画像を観察する場合に用いる印刷モードである。第3の印刷モードでは、上述した第1の印刷モードと印刷媒体にインクを付与する順番および領域は同じである。すなわち、非透光性印刷媒体に対して、最初に遮光用インクとして白色インクを白色領域に付与する。その後、カラー発色領域に各カラーインク(C,M,Y,K)を付与する。また、後で説明するように、第3の印刷モードは、白色領域に付与する白色インクのドット記録率が、第1,第2の印刷モードとは異なる。
【0040】
次に、印刷制御装置としてのコンピューター100の具体的な構成について説明する。図3は、コンピューター100の概略構成図である。コンピューター100は、CPU102を中心に、ROM104やRAM106などを、バス116で互いに接続する周知の構成を備えている。
【0041】
コンピューター100には、フレキシブルディスク124やコンパクトディスク126等のデータを読み込むためのディスクコントローラ109や、周辺機器とデータの授受を行うための周辺機器インタフェース108、ディスプレイ121を駆動するためのビデオインターフェース112が接続されている。周辺機器インタフェース108には、プリンター200や、ハードディスク123が接続されている。また、デジタルカメラ120やカラースキャナ122を周辺機器インタフェース108に接続すれば、デジタルカメラ120やカラースキャナ122で取り込んだ画像に対して画像処理を施すことも可能である。また、ネットワークインターフェースカード110を装着すれば、コンピューター100を通信回線300に接続して、通信回線に接続された記憶装置310に記憶されているデータを取得することもできる。コンピューター100は、印刷しようとする画像データを取得すると、上述したプリンタードライバー24の働きにより、プリンター200を制御して、この画像データの印刷を行う。
【0042】
次に、プリンター200の構成について説明する。図4はプリンター200の概略構成を示すブロック図である。この図4に示すように、プリンター200は、紙送りモータ235によって印刷媒体Pを搬送する機構と、キャリッジモータ230によってキャリッジ240をプラテン236の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ240に搭載された印刷ヘッド250を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、これらの紙送りモータ235,キャリッジモータ230、印刷ヘッド250および操作パネル256との信号のやり取りを司る制御回路260とから構成されている。
【0043】
キャリッジ240をプラテン236の軸方向に往復動させる機構は、プラテン236の軸と並行に架設されキャリッジ240を摺動可能に保持する摺動軸233と、キャリッジモータ230との間に無端の駆動ベルト231を張設するプーリ232と、キャリッジ240の原点位置を検出する位置検出センサ234等から構成されている。
【0044】
キャリッジ240には、カラーインクとして、シアンインク(C)と、マゼンタインク(M)と、イエロインク(Y)と、ブラックインク(K)とをそれぞれ収容したカラーインク用カートリッジ241が搭載される。さらに、キャリッジ240には、白色インク(W)を収容した白色インク用カートリッジ242が搭載される。キャリッジ240の下部の印刷ヘッド250には、これらの各色に対応する計5種類のインク吐出用ヘッド244ないし249、すなわち6つのインク吐出用ヘッド(白色インクのインク吐出用ヘッドは2つ)が形成されている。キャリッジ240にこれらのインク用カートリッジ241,242を上方から装着すると、各カートリッジからインク吐出用ヘッド244ないし249へのインクの供給が可能となる。以下、印刷ヘッド250について説明する。
【0045】
図5は印刷ヘッド250を構成するインク吐出用ヘッドのノズル配置を概略的に示す説明図である。白色インク(W)、シアンインク(C)、マゼンタインク(M)、イエロインク(Y)、ブラックインク(K)の各色について、それぞれインク吐出用ヘッドが用意されている。各インク吐出用ヘッドは印刷ヘッド250の下面に配置している。カラーインクであるシアンインク(C)、マゼンタインク(M)、イエロインク(Y)、ブラックインク(K)の各インク吐出用ヘッド244〜247は、各色10個のノズルが副走査方向に配列しており、各ノズルから各色のインク滴を吐出する。本実施例において「副走査方向」は、主走査方向に対して直交した方向である。また以下、「副走査方向の進行方向」と表記した場合には、印刷媒体に対する印刷ヘッド250の副走査方向の相対的な進行方向のベクトル成分を意味する。従って、図5に示した印刷ヘッド250においては、印刷時には、最も下方に示したノズルから印刷媒体Pが通過することとなる。
【0046】
白色インク(W)については、印刷ヘッド250は、インク吐出用ヘッド248とインク吐出用ヘッド249との2つを備える。各インク吐出用ヘッド248,249は、それぞれ10個のノズルが副走査方向に配列しており、各ノズルから白色のインク滴を吐出する。図5に示すように、白色インクのインク吐出用ヘッド248は、カラーインクのインク吐出用ヘッド244〜247と主走査方向に重なる位置(本実施例においては隣接する位置)に配置している。本実施例では、白色のインク吐出用ヘッド248は、カラーインクのインク吐出用ヘッド244〜247と主走査方向に隣接しているが、白色のインク吐出用ヘッド248とカラーインクのインク吐出用ヘッド244〜247との間に他の機能部や付属物もしくはインク吐出用のノズル等が介在していても、白色インクのインク吐出用ヘッド248が、カラーインクのインク吐出用ヘッド244〜247と主走査方向に重なる位置に配置していればよい。
【0047】
インク吐出用ヘッド249は、カラーインクのインク吐出用ヘッド244〜247とは主走査方向に重ならない位置(本実施例においては隣接しない位置)で、かつ、インク吐出用ヘッド248より副走査方向の進行方向前方側に配置している。なお図5では、図示の都合上、各インク吐出用ヘッド244〜249はそれぞれ10個のノズルを備えるとして説明したが、各インク吐出用ヘッドが備えるノズル数は、プリンター200の仕様により決定される。また、白色色インクのインク吐出用ヘッド249はカラーインクのインク吐出用ヘッド244〜247とは主走査方向に重ならない位置に配置されているが、白色インクのインク吐出用ヘッド249の一部が、カラーインクのインク吐出用ヘッド244〜247と主走査方向に重なる態様のインク吐出用ヘッドとしてもよい。
【0048】
図6は、第1〜第3の各印刷モードにおいて使用するノズルについて説明する説明図である。図6(A)には、第1の印刷モードおよび第3の印刷モードで使用するノズルを、黒色に塗りつぶして示している。第1,第3のモードで印刷を実行する場合には、印刷媒体Pに対して白色インク、カラーインクの順に印刷を行う。本実施例において第1,第3の印刷モードで印刷を行う場合、印刷ヘッド250において使用するノズルは、カラーインクの各インク吐出用ヘッド244〜247と、白色インクのインク吐出用ヘッド249とを使用する。
【0049】
カラーインクについては、各インク吐出用ヘッド244〜247が備えるノズル全て(本実施例では10個)を使用して印刷を行う。第1,第3の印刷モードで使用するカラーインクのノズル群をノズルグループG1として図6(A)に示した。一方、白色インクについては、インク吐出用ヘッド249が備えるノズル全て(本実施例では10個)を使用する。第1,第3の印刷モードで使用する白色インクのノズル群をノズルグループG2として図6(A)に示した。
【0050】
上記のようにノズルを使用し印刷ヘッド250を走査して印刷をすることにより、印刷媒体Pに対して最初に白色インクが付与されその後カラーインクが付与される。このようにして、これら第1,第3の印刷モードで印刷を行う。なお、本実施例における第1,第3の印刷モードでは、各インク吐出用ヘッド244〜247,249が備えるノズル全てを使用して印刷するとしたが、各インク吐出用ヘッドが備えるノズルのうちの1以上の任意の数のノズルを用いて印刷を行うとしてもよい。
【0051】
図6(B)には、第2の印刷モードで使用するノズルを、黒色に塗りつぶしたノズルとして示している。第2の印刷モードで印刷を実行する場合には、印刷媒体Pに対してカラーインク、白色インクの順に印刷を行う。本実施例において第2の印刷モードで印刷を行う場合、印刷ヘッド250において使用するノズルは、カラーインクの各インク吐出用ヘッド244〜247と、白色インクのインク吐出用ヘッド248とを使用する。
【0052】
カラーインクについては、各インク吐出用ヘッド244〜247が備える各ノズルの副走査方向の進行方向前方から半数(本実施例では先頭から5個)を用いる。第2の印刷モードで使用するカラーインクのノズル群をノズルグループG3として図6(B)に示した。一方、白色インクについては、インク吐出用ヘッド248が備えるノズルの副走査方向の進行方向後方から半数(本実施例では後から5個)を用いる。第2の印刷モードで使用する白色インクのノズル群をノズルグループG4として図6(B)に示した。
【0053】
上記のようにノズルを使用し印刷ヘッド250を走査して印刷をすることにより、印刷媒体Pに対して最初にカラーインクが付与され、その後白色インクが付与される。このようにして、第2の印刷モードで印刷を行うことができる。なお、本実施例における第2の印刷モードでは各インク吐出用ヘッド244〜247が備える各ノズルの副走査方向の進行方向前方から半数と、インク吐出用ヘッド248が備えるノズルの副走査方向の進行方向後方から半数とを使用して印刷を行うとしたが、各インク吐出用ヘッド244〜247が備えるノズルの副走査方向の最後方のノズルより前方に位置するノズルから任意のノズルをノズルグループG3として使用し、インク吐出用ヘッド248が備えるノズルのうち、ノズルグループG3より副走査方向後方に位置する所定数のノズルをノズルグループG4として使用して印刷をするとしてもよい。
【0054】
図6に示した各ノズルからのインクの吐出には、ピエゾ素子を用いている。ピエゾ素子は、周知のように、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギーの変換を行う素子である。本実施例では、ピエゾ素子に所定の電圧信号(駆動信号)を印加することにより、ノズル内のインク通路の一側壁を変形させることで、インク滴をノズルから吐出させる。なお、本実施例では、このように、ピエゾ素子を用いてインクを吐出させているが、気泡(バブル)をノズル内に発生させることで、インクを吐出させる方式を採用してもよい。
【0055】
以上説明した印刷ヘッド250の制御は、図4に示したプリンター200の制御回路260により行われる。制御回路260は、CPUや、ROM、RAM、PIF(周辺機器インタフェース)等がバスで相互に接続されて構成されており、キャリッジモータ230および紙送りモータ235の動作を制御することによってキャリッジ240の主走査動作および副走査動作の制御を行う。また、PIFを介してコンピューター100から出力された印刷データを受け取ると、キャリッジ240が主走査方向往動あるいは主走査方向復動する際に、印刷データに応じた駆動信号をインク吐出用ヘッド244ないし249に供給することによって、インクの吐出を制御して、所定のラスタの印刷を行う。インクの吐出を伴う往動または復動を印刷媒体Pの主走査方向の終端まで行うと、制御回路260は、印刷媒体Pを副走査方向に搬送し、次のラスタの印刷に備える。この操作を繰り返すことにより、プリンター200は、第1から第3の各印刷モードでの印刷を完了する。
【0056】
なお、本実施例のプリンター200は、印刷媒体Pに向けてインク滴を吐出することにより、インクドットを形成するいわゆるインクジェットプリンターであるものとして説明するが、他の手法を用いて印刷媒体にインクを付与するプリンターとすることも差し支えない。例えば、インク滴を吐出する代わりに、静電気を利用して各色のトナー粉を印刷媒体上に付着させることでインクを付与するプリンターや、熱転写型プリンター、あるいは昇華型プリンターとしても実施することも可能である。
【0057】
(A2)印刷処理:
次に印刷システム10が行う印刷処理について説明する。印刷処理の開始に先立って、アプリケーションプログラム20がディスプレイ121(図1)に表示する印刷設定用画面を用いて、ユーザーが印刷設定を行う。ユーザーは印刷設定として、第1から第3の印刷モードの指定を行う。印刷モードの指定後、ディスプレイ121に表示される印刷開始ボタンをユーザーが操作することによって、印刷システム10が印刷処理を開始する。
【0058】
図7は、印刷システム10が行う印刷処理の流れを示したフローチャートである。印刷処理が開始されると、プリンタードライバー24は、RGB形式の画像データ(以下、単にRGBデータとも呼ぶ)を入力する(ステップS102)。RGBデータを入力すると、プリンタードライバー24は、色変換モジュール42を用いて色変換処理を開始する(ステップS104)。具体的には、入力したRGBデータをCMYK形式の画像データに変換する。CMYK形式の画像データが得られると、コンピューター100は、ハーフトーンモジュール44を用いてプリンター200に転送可能なデータを生成する(ステップS106)。ハーフトーン処理では、カラーインクのみならず、白色インク(W)についても2値化の処理が行われる。本実施例では、白色インクについては、第1の印刷モードまたは第2の印刷モードの場合は、白色領域のドット記録率が一様に80%になるようにハーフトーン処理を行う。第3の印刷モードの場合は、白色インクは、白色領域のドット記録率が一様に70%になるようにハーフトーン処理を行う。第3の印刷モードの場合は、印刷媒体が非透光性であるので、透光性を有する印刷媒体を用いる第1,第2の印刷モードと比較して白色インクのドット記録率が低くても、印刷媒体の地色または質感による影響を抑制することができる。
【0059】
ハーフトーン処理が終了すると、コンピューター100は、印刷制御モジュール45を用いてプリンター200を制御し、印刷を開始する(ステップS108)。印刷を開始すると、プリンター200は、各インクのドットを形成する処理を行う(ステップS110)。各インクのドットを形成する処理は、印刷媒体Pに画像を形成する全範囲にわたって以下のように行われる。
【0060】
[第1,第3の印刷モード]
第1の印刷モードと第3の印刷モードは、上記説明したように、印刷媒体および白色領域に付与する白色インクのドット記録率が異なる。それ以外の印刷処理の内容は同じである。どちらも、印刷面から印刷画像を観察するための印刷モードである。第1の印刷モードによる印刷処理は、印刷媒体が透光性であり、第3の印刷モードによる印刷処理は、印刷媒体が非透光性である。印刷モード設定部49により印刷処理の開始時に、第1または第3の印刷モードが設定されている場合には、各インクのドットは次のように形成される。
【0061】
第1,第3の印刷モードが指定されていると、制御回路260は、キャリッジの往復運動に合わせて、各インク吐出用ヘッド244〜247,249を制御して、各インクの吐出を行う。一つのラスタについて見れば、(1)最初にノズルグループG2(図6(A))から吐出される白色インクが印刷媒体Pに付与され、(2)次にノズルグループG2(図6(A))から吐出されるカラーインクが付与されることとなる。この結果、印刷媒体Pには、まず白色インクが付与されて白色インク層が形成され、その上に、各色のカラーインク(C,M,Y,K)が付与されて、カラーインク層が形成されることになる。
【0062】
[第2の印刷モード]
第2の印刷モードは、印刷面とは反対側から印刷画像を観察するための印刷モードである。第2の印刷モードによる印刷処理は、印刷媒体が透光性を有する。印刷モード設定部49により印刷処理の開始時に、第2の印刷モードが設定されている場合には、各インクのドットは次のように形成される。
【0063】
第2の印刷モードが指定されていると、制御回路260は、キャリッジの往復運動に合わせて、各インク吐出用ヘッド244〜247,248を制御して、各インクの吐出を行う。一つのラスタについて見れば、(1)最初にノズルグループG3(図6(B))から吐出されるカラーインクが印刷媒体Pに付与され、(2)次に、ノズルグループG4(図6(B))から吐出される白色インクが付与されることとなる。この結果、印刷媒体Pには、まずカラーインク(C,M,Y,K)が付与されてカラーインク層が形成され、その上に、白色インクが付与されて、白色インク層が形成されることになる。
【0064】
以上説明したように、本実施例における印刷システム10が備える印刷ヘッド250は、カラーインクのインク吐出用ヘッド244〜247と主走査方向に重なる位置(本実施例においては隣接する位置)に配置されているインク吐出用ヘッド248と、カラーインクのインク吐出用ヘッド244〜247とは主走査方向に重ならない位置に配置されているインク吐出用ヘッド249を備えている。従って、カラーインクを吐出するインク吐出ヘッドを副走査方向に挟むように2カ所に遮光用インクを吐出するインク吐出用ヘッドを備える構造の印刷ヘッドと比較して構造の小型化が可能である。
【0065】
また、本実施例における印刷システム10は、白色インク層を形成後にカラーインク層を形成する第1,第3の印刷モードでは、ノズルグループG1とノズルグループG2とを用いて印刷を行う。これらの印刷を行う場合には、使用するインク吐出用ヘッド244〜247,249が備えるノズルを全て(本実施例では各10個)を使用して印刷を行う。一方、カラーインク層を形成後に白色インク層を形成する第2の印刷モードでは、印刷システム10は、ノズルグループG3とノズルグループG4とを用いて印刷を行う。この印刷を行う場合には、使用するインク吐出用ヘッド244〜247,248が備えるノズルのそれぞれ半数(本実施例では各5個)を使用して印刷を行う。従って、第1,第3の印刷モードは第2の印刷モードと比較して高速に印刷を行うことができる。これは例えば、第1,第3の印刷モードの方が第2の印刷モードと比較してユーザーによる使用頻度が高い場合に有効である。すなわち、使用頻度の高い印刷モードにおける印刷の高速処理を確保しつつ、印刷ヘッド250を小型に保つことができ、低コスト化を可能にする。
【0066】
また、仮に、第2の印刷モードの方が第1,第3の印刷モードと比較してユーザーによる使用頻度が高い場合には、下記変形例1の図8で説明する印刷ヘッドの構成を採用することにより、使用頻度の高い第2の印刷モードにおける印刷の高速処理を確保しつつ、印刷ヘッドを小型に保つことが可能である。
【0067】
本実施例と特許請求の範囲との対応関係としては、インク吐出用ヘッド244〜247が特許請求の範囲に記載のカラーインクノズル列に対応し、インク吐出用ヘッド248が特許請求の範囲に記載の第1の遮光用インクノズル列に対応し、インク吐出用ヘッド249が特許請求の範囲に記載の第2の遮光用インクノズル列に対応する。また、本実施例における第1,第3の印刷モードによる印刷(図6(A)参照)が特許請求の範囲に記載の第1の印刷モードによる印刷に対応し、本実施例における第2の印刷モードによる印刷(図6(B)参照)が特許請求の範囲に記載の第2の印刷モードによる印刷に対応する。
【0068】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0069】
(B1)変形例1:
上記実施例では、印刷ヘッドは、図5,図6で説明した構成としたが、他の構成を採用することも可能である。図8は、変形例1としての印刷ヘッド250aの構成を説明する説明図である。印刷ヘッド250aは、カラーインクのインク吐出用ヘッド244a〜247aと主走査方向に重ならない白インクのインク吐出用ヘッド249aを、インク吐出用ヘッド244a〜247aより副走査方向の進行方向後方に配置している。そして、第1,第3の印刷モードによって印刷を行う場合は、図8(A)に示したように、カラーインクのノズルグループG1aと白インクのノズルグループG2aとを用いて印刷を行う。一方、第2の印刷モードによって印刷を行う場合には、図8(B)に示したように、カラーインクのノズルグループG3aと白インクのノズルグループG4aとを用いて印刷を行う。従って、第2の印刷モードは第1,第3の印刷モードと比較して高速に印刷を行うことができる。これは例えば、第2の印刷モードの方が第1,第3の印刷モードと比較してユーザーによる使用頻度が高い場合に有効である。すなわち、使用頻度の高い印刷モードにおける印刷の高速処理を確保しつつ、印刷ヘッド250を小型に保つことができ、低コスト化を可能にする。
【0070】
その他、図9に示した印刷ヘッドの構成を採用することができる。図9(A)に示した印刷ヘッドは、第1実施例における白インク用のインク吐出用ヘッド248(図6)において、第1〜第3のいずれの印刷モードにおいても使用しないノズルを省いた構成となっている。すなわち、インク吐出用ヘッド248が備えるノズルのうち、副走査方向の進行方向前半分のノズル(本変形例では、副走査方向の進行方向前方から5個のノズル)を省いた構成としている。このような印刷ヘッドの構成を採用することにより、上記実施例に示した効果に加え、さらに印刷ヘッドの構造の簡略化、小型化、低コスト化が可能となる。
【0071】
図9(B)に示した印刷ヘッドは、第1実施例におけるインク吐出用ヘッド248とインク吐出用ヘッド249とを1つのインク吐出用ヘッド248cとして一体化した構成を採用している。このような印刷ヘッドの構成を採用しても。上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0072】
図9(C)に示した印刷ヘッドは、カラーインクのインク吐出用ヘッドを互いに副走査方向にずらして配置し、ノズルが千鳥模様となるような構成を採用している。このような印刷ヘッドの構成を採用しても、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0073】
(B2)変形例2:
上記実施例では、印刷システム10は、第1〜第3の印刷モードによって印刷を行うとしたが、変形例2における印刷システムは、さらに、第4の印刷モードとして、白色インクを白色インク層の形成に使用するのではなく、カラーインクと同時に吐出して、カラーインクと白色インクとで1つのインク層を形成するように印刷をする印刷モードを備える。つまり、白色インクをカラーインクと同等の扱いとして使用する。このように白色インクを使用することで、印刷画像として表現可能な色範囲を与えるいわゆるガマットを拡張することができる。
【0074】
そして、第4の印刷モードにより印刷を行う場合に、図10に示したノズルグループG5とノズルグループG6とを使用して印刷を行う。すなわち、カラーインクの各インク吐出用ヘッド244〜247の副走査方向の進行方向後半数(本変形例では副走査方向進行方向後方から5個)からなるノズルグループG5と、白色インクのインク吐出用ヘッド248の副走査方向の進行方向前半数(本変形例では副走査方向の進行方向前方から5個)のノズルからなるノズルグループG6を用いる。換言すると、インク吐出用ヘッド244〜247,248が備えるノズルのうち、第2の印刷モードで使用しないノズルを使用して印刷を行う。このようなノズルの使用方法を採用することにより、各ノズルにおける使用頻度の差を低減することができる。なお、変形例2における第4の印刷モードは、特許請求の範囲に記載の第3の印刷モードに対応する。
【0075】
(B3)変形例3:
上記実施例では、図2で説明したように、白色インクを付与する白色領域は印刷媒体における印刷可能な全領域としたが、図11(A)〜(C)に示すように、白色領域をカラー発色領域と同一の領域としてもよい。印刷処理おいて、ハーフトーン処理(図7:ステップS106)されたCMYK形式の画像データをカラードット形成モジュール48がカラーインクのドットを形成した際に、白色ドット形成モジュール46が、カラードット形成モジュール48が形成したドットと同一のドットを白インクで形成するように処理することによって本変形例は実現することができる。または、カラー発色領域より白色領域の方が小さいとしてもよい。このようにすることで、ユーザーは白色インクを視認することなく印刷画像を視認することが可能である。すなわち、透光性や光散乱性の印刷媒体の特性を引き出した印刷が可能となる。
【0076】
(B4)変形例4:
上記実施例では、遮光用インクとして白色のインクを用いたが、それに限ることなく、遮光性を有するインクであれば他の色も利用可能である。例えば、遮光性を有するカラーインク、金属光沢を有するメタリックインク、パール光沢を有する白色インクなどを用いることができる。また遮光性を有していれば半透明色なインクを用いることも可能である。このようにしても、上記実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【0077】
(B5)変形例5:
上記実施例では、印刷システム10は第1から第3の印刷モードを有するとしたが、印刷システム10が第1の印刷モードと第2の印刷モードのみを備えるとしてもよい。このようにしても、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0078】
(B6)変形例6:
上記実施例では、白色ドット形成モジュール46およびカラードット形成モジュール48によってカラーインクおよび白色インクによる各一種類の大きさのドットを形成するとしたが、カラーインクおよび白色インクによる各大小2種類のドットや大中小3種類のドットを形成可能としてもよい。すなわち、画像データとして入力した各画素における階調データの大きさに応じて、各画素を3値(ドット無し、大ドット、小ドット)または4値(ドット無し、大ドット、中ドット、小ドット)に分類分けをして、階調値に応じたドットを形成することによって実現することが可能である。このようにすることで、上記実施例による効果に加え、より精細な画像を印刷することができる。
【0079】
(B7)変形例7:
上記実施例ではカラーインクをC,M,Y,Kの4種類としたが、それに限ることなく、濃淡インクを備えるとしてもよい。例えば、濃シアン(C)、淡シアン(LC)、濃マゼンダ(M)、淡マゼンダ(LM)等のインクを備え、画像データの各階調値の大きさに応じて濃インクと淡インクとを使い分けるとしてもよい。このようにすることで、上記実施例による効果に加え、より細かな階調表現によって印刷をすることができる。
【符号の説明】
【0080】
10…印刷システム
20…アプリケーションプログラム
22…ビデオドライバー
24…プリンタードライバー
42…色変換モジュール
44…ハーフトーンモジュール
45…印刷制御モジュール
46…白色ドット形成モジュール
48…カラードット形成モジュール
49…印刷モード設定部
100…コンピューター
102…CPU
104…ROM
106…RAM
108…周辺機器インタフェース
109…ディスクコントローラ
110…ネットワークインターフェースカード
112…ビデオインターフェース
116…バス
120…デジタルカメラ
121…ディスプレイ
122…カラースキャナ
123…ハードディスク
124…フレキシブルディスク
126…コンパクトディスク
200…プリンター
230…キャリッジモータ
231…駆動ベルト
232…プーリ
233…摺動軸
234…位置検出センサ
235…モータ
236…プラテン
240…キャリッジ
241…カラーインク用カートリッジ
242…白色インク用カートリッジ
244〜249,244a〜249a…インク吐出用ヘッド
250,250a…印刷ヘッド
256…操作パネル
260…制御回路
300…通信回線
310…記憶装置
LUT1…色変換テーブル
P…印刷媒体
G1〜G6…ノズルグループ
G1a〜G4a…ノズルグループ
ORG…画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドを印刷媒体に対して相対的に主走査方向または副走査方向に走査して印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷ヘッドは、
カラーインクを吐出するノズルが前記副走査方向に複数配列されたカラーインクノズル列と、
遮光用インクを吐出するノズルが前記副走査方向に複数配列された第1の遮光用インクノズル列と、
遮光用インクを吐出するノズルが前記副走査方向に複数配列された、前記第1の遮光用インクノズル列とは異なる第2の遮光用インクノズル列と
を備え、
前記第1の遮光用インクノズル列は、前記カラーインクノズル列と前記主走査方向に重なる位置に配設され、
前記第2の遮光用インクノズル列は、前記カラーインクノズル列と前記主走査方向に重ならない位置に配設された
印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置であって、
当該印刷装置は、第1の印刷モードまたは第2の印刷モードのいずれか一方によって印刷を行い、
前記第1の印刷モードによる印刷は、前記カラーインクノズル列に含まれるノズルを用いた前記カラーインクの吐出と、前記第2の遮光用インクノズル列に含まれるノズルを用いた前記遮光用インクの吐出とによる印刷であり、
前記第2の印刷モードによる印刷は、前記カラーインクノズル列に含まれる所定数のノズルからなる第1のノズル群を用いた前記カラーインクの吐出と、前記第1の遮光用インクノズル列に含まれるノズルのうち前記第1のノズル群と前記主走査方向に重ならない位置で、かつ、前記第1のノズル群より前記第2の遮光用インクノズル列と前記副走査方向に遠い側に配置される所定数のノズルからなる第2のノズル群を用いた前記遮光用インクの吐出とによる印刷である
印刷装置。
【請求項3】
請求項2記載の印刷装置であって、
前記第2の遮光用インクノズル列は前記第1の遮光用インクノズル列と比べて、前記副走査方向における前記印刷媒体に対する相対的な前記印刷ヘッドの進行方向前方側に配設された
印刷装置。
【請求項4】
請求項3記載の印刷装置であって、
前記第1の印刷モードによる印刷は、前記第2の遮光用インクノズル列に含まれるノズルから前記遮光用インクを印刷媒体に吐出して遮光用インク層を形成後、前記カラーインクノズル列に含まれるノズルから前記カラーインクを前記印刷媒体に吐出してカラーインク層を前記遮光用インク層に積層して形成し、
前記第2の印刷モードによる印刷は、前記第1のノズル群のノズルから前記カラーインクを印刷媒体に吐出してカラーインク層を形成後、前記第2のノズル群のノズルから前記遮光用インクを前記印刷媒体に吐出して遮光用インク層を前記カラーインク層に積層して形成する
印刷装置。
【請求項5】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記第2の遮光用インクノズル列は前記第1の遮光用インクノズル列と比べて、前記副走査方向における前記印刷媒体に対する相対的な前記印刷ヘッドの進行方向後方側に配設される
印刷装置。
【請求項6】
請求項5記載の印刷装置であって、
前記第1の印刷モードによる印刷は、前記カラーインクノズル列に含まれるノズルから前記カラーインクを印刷媒体に吐出してカラーインク層を形成後、前記第2の遮光用インクノズル列に含まれるノズルから前記遮光用インクを前記印刷媒体に吐出して遮光用インク層を前記カラーインク層に積層して形成し、
前記第2の印刷モードによる印刷は、前記第2のノズル群のノズルから前記遮光用インクを印刷媒体に吐出して遮光用インク層を形成後、前記第1のノズル群のノズルから前記カラーインクを前記印刷媒体に吐出してカラーインク層を前記遮光用インク層に積層して形成する
印刷装置。
【請求項7】
前記遮光用インクは白色インクである請求項1ないし請求項6のいずれか記載の印刷装置。
【請求項8】
前記遮光用インクは金属光沢を有するメタリックインクである請求項1ないし請求項6のいずれか記載の印刷装置。
【請求項9】
前記印刷媒体は透光性を有する印刷媒体である請求項1ないし請求項8のいずれか記載の印刷装置。
【請求項10】
前記印刷媒体は非透光性の印刷媒体である請求項1ないし請求項8のいずれか記載の印刷装置。
【請求項11】
請求項2ないし請求項10のいずれか記載の印刷装置であって、さらに第3の印刷モードを有し、
前記第3の印刷モードによる印刷は、
前記カラーインクノズル列および前記第1の遮光用インクノズル列に含まれるノズルのうち、前記第2の印刷モードで用いない前記各ノズル列のノズルを用いた前記カラーインクおよび遮光用インクの吐出による印刷であり
当該印刷装置は前記第1の印刷モード、前記第2の印刷モードおよび前記第3の印刷モードのいずれか1つの印刷モードによる印刷が可能である
印刷装置。
【請求項12】
印刷ヘッドを印刷媒体に対して相対的に主走査方向または副走査方向に走査して印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷ヘッドは、カラーインクを吐出するノズルを前記副走査方向に複数配列したカラーインクノズル列と、遮光用インクを吐出するノズルを前記副走査方向に複数配列した遮光用インクノズル列とを備え、
前記遮光用インクノズル列は、前記カラーインクノズル列と前記主走査方向に重なる位置に配置した前記ノズルと、前記カラーインクノズル列と前記主走査方向に重ならない位置に配置した前記ノズルとを備えた
印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−71559(P2012−71559A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220112(P2010−220112)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】