説明

印刷装置

【課題】セキュアプリントを含む親展印刷機能により印刷される印刷データを記憶する記憶領域の空き容量が基準値未満の場合、記憶されている印刷データに記憶期限を設けることで、受信済みの印刷データを可能な限り記憶することが可能となる印刷装置を提供する。
【解決手段】CPU31は、印刷データを受け取ったと判断した場合(S101:Yes)、一旦、該印刷データをRAM33に記憶し、該印刷データは親展印刷データであると判断した場合(S102:Yes)、該親展印刷データをRAM33からHDD35に移動して記憶する(S104)。HDD35の空き容量が閾値N未満の場合(S105:Yes)、CPU31は、それらの親展印刷データの属性データに基づいて親展印刷データをHDD35に記憶できる記憶期限を計算し(S108)、計算された記憶期限をそれぞれの親展印刷データに設定する(S109)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関するものであり、セキュアプリントを含む親展印刷機能を備える印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されたネットワークプリンタは、ホスト装置からネットワーク経由で印刷データを受信すると、記憶部のスプール領域に印刷データをスプールし、スプール領域中の各印刷データのデータサイズを足し合わせ、合計サイズを算出する。そして、合計サイズが予め設定された基準データサイズを超えている場合、印刷管理情報に含まれるスプール日時情報を読み出して、印刷データのうち最先にスプールされた印刷データをスプール領域から削除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−63158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の技術によれば、スプール領域中の各印刷データの合計サイズが基準データサイズを超えた場合、すなわち、スプール領域の空き容量がある基準値未満になった場合、最先にスプールされた印刷データをスプール領域から削除し、空き容量を当該印刷データのサイズ分だけ増加させる。ところが、次に受信する印刷データのサイズが、現在のスプール領域の空き容量で十分記憶できるほど小さいなら、最先にスプールされた印刷データを削除する必要がない。しかしながら、特許文献1の技術によれば、最先にスプールされた印刷データが削除されてしまうので、該印刷データを印刷しようとする場合、もう一度送信する必要があり、ユーザにとって好ましくない。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、受信済み印刷データを可能な限り記憶することが可能となる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の請求項1に記載の印刷装置は,印刷データを受信する受信手段と、前記受信した印刷データを記憶領域に記憶する記憶手段と、ユーザから印刷指示を受け付けたことを契機に、前記記憶領域の印刷データに基づいて、被記録媒体に画像を印刷する印刷手段と、前記記憶領域の空き容量に関連する情報を監視する監視手段と、前記監視手段により、前記記憶領域の空き容量に関連する情報に基づいて、前記記憶領域の空き容量が予め設定された基準値未満と判断された場合、前記印刷データを前記記憶領域に記憶できる記憶期限を設定する記憶期限管理手段と、前記記憶期限管理手段により設定された記憶期限を経過した印刷データがある場合、当該印刷データを前記記憶領域から削除する削除手段とを備える。
【0007】
この印刷装置によれば、記憶領域の空き容量が基準値未満の場合、記憶されている印刷データに記憶期限を設けるので、従来技術に比べて、受信済みの印刷データを可能な限り記憶することができる。また、記憶期限を経過しても印刷が行われていない印刷データを削除することで、不必要な印刷データが未印刷のまま長期間保存されることによる記憶領域にかかる負担を軽減することができる。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の印刷装置は、請求項1に記載の印刷装置であって、前記監視手段により、前記記憶領域の空き容量に関連する情報に基づいて、前記記憶領域の空き容量が前記基準値以上と判断された場合、前記記憶期限管理手段は、前記記憶期限の設定を解除するか、又は、前記記憶期限を延長することを特徴とする。
【0009】
この印刷装置によれば、記憶領域の空き容量が基準値以上の場合、印刷データに設けた記憶期限を解除または延長することで、受信済みの印刷データを可能な限り記憶することができる。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の印刷装置は、請求項1または請求項2に記載の印刷装置であって、前記監視手段により、前記記憶領域の空き容量に関連する情報に基づいて、前記記憶領域の空き容量が予め設定された基準値未満であり、且つ、当該空き容量が減少したと判断された場合、前記記憶期限管理手段は、前記記憶期限を短縮することを特徴とする。
【0011】
この印刷装置によれば、記憶領域の空き容量が基準値未満であり、且つ減少した場合、印刷データに設けた記憶期限を短縮することで、速やかに記憶領域の空き容量を確保することができる。さらに、不必要な印刷データが未印刷のまま長期間保存されることによる記憶領域にかかる負担を軽減することができる。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載の印刷装置は、請求項1ないし請求項3のいずれに記載の印刷装置であって、前記印刷データには、当該印刷データの属性を示す属性データを有し、前記記憶期限管理手段は、前記属性データに従って印刷データに記憶期限を設定することを特徴とする。
【0013】
この印刷装置によれば、印刷データの属性データに応じて、適切な記憶期限を設けることで、記憶領域の使用効率を向上することができる。
【0014】
また、本発明の請求項5に記載の印刷装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の印刷装置であって、前記印刷データに対して、前記記憶期限管理手段により記憶期限を設定、解除、延長、短縮のいずれかの処理がされたこと、または、前記削除手段により削除された旨を当該印刷データを送信したユーザに通知する通知手段を有することを特徴とする。
【0015】
この印刷装置によれば、記憶期限を設定などの処理が行われたことをユーザに通知することで、それらの処理に応じた対処をユーザに促すことができる。
【0016】
また、本発明の請求項6に記載の印刷装置は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷装置であって、前記記憶期限管理手段により前記記憶期限が設定された場合、当該記憶期限が設定された印刷データを送信したユーザから新たに送信された印刷データの記憶を拒否する記憶拒否手段を有することを特徴とする。
【0017】
この印刷装置によれば、記憶領域において、新しく受信した印刷データと、既に記憶期限が設定されている印刷データとが同一のユーザから送信された場合、新しく受信した印刷データの記憶を拒否することで、未印刷のまま記憶された印刷データに対する対処をユーザに促すことできる。
【0018】
また、本発明の請求項7に記載の印刷装置は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の印刷装置であって、前記属性データは、前記印刷データのデータ量、前記印刷データの重要度、前記印刷データを受信してからの経過時間のうち、少なくともいずれか1つであることを特徴とする。
【0019】
この印刷装置によれば、印刷データのデータ量、重要度、経過期間のうち、少なくともいずれかに応じて、適切な記憶期限を設けることで、記憶領域の使用効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、セキュアプリントを含む親展印刷機能により印刷される印刷データを記憶する記憶領域の空き容量が基準値未満の場合、記憶されている印刷データに記憶期限を設けることで、受信済みの印刷データを可能な限り記憶することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態にかかるプリンタの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示したプリンタにかかる画像形成部の内部構成を示す概念図である。
【図3】図1に示したプリンタとコンピュータの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態にかかる印刷データの構成を示す図である。
【図5】実施形態にかかる印刷制御処理を示すフローチャートである。
【図6】実施形態にかかる記憶期限を計算する例を示す各種テーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
<プリンタの全体構成>
図1は、本発明の実施の形態にかかるプリンタ(印刷装置)の概略構成を示す斜視図である。プリンタ100は,図1に示すように,用紙(被記録媒体)に画像を形成する画像形成部10を備えている。また,画像形成部10の上側には,液晶ディスプレイからなる表示部や,スタートキー,ストップキー,テンキー等から構成されるボタン群を有する操作パネル40が設けられ,この操作パネル40により動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になっている。
【0024】
<画像形成部の構成>
図2は、図1に示したプリンタ100にかかる画像形成部10の内部構成を示す概念図である。画像形成部10は,図2に示すように,トナー像を形成し,そのトナー像を用紙に転写するプロセス部50と,用紙上の未定着のトナーを定着させる定着装置8と,画像形成前の用紙を載置する給紙トレイ91と,画像形成後の用紙を載置する排紙トレイ92とを備えている。
【0025】
画像形成部10は,給紙トレイ91に載置されている用紙を給紙ローラ71により1枚ずつ取り出し,その用紙をプロセス部50に搬送し,プロセス部50にて形成されたトナー像をその用紙に転写する。その後は,トナー像が転写された用紙を定着装置8に搬送し,トナー像をその用紙に熱定着させる。そして,定着後の用紙を排紙トレイ92に排出する。
【0026】
プロセス部50には,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色に対応するプロセスユニットが配置されている。なお、プロセス部50は、各プロセスユニット50C、50M、50Y、50Kで形成されたトナー画像を用紙上で重ね合わせることでカラー画像を形成する。一方、モノクロ画像を形成する際には、プロセスユニット50K1つでトナー画像を形成して印刷する。
【0027】
<プリンタの電気的構成>
続いて,プリンタ100の電気的構成について説明する。図3は、コンピュータ200と図1に示したプリンタ100の電気的構成を示すブロック図である。プリンタ100は,図3に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33とを備えた制御部30と,NVRAM(不揮発性RAM)34と,ハードディスクドライブ(HDD)35と、ネットワークインターフェイス36とタイマー37を備えている。また,制御部30は,画像形成部10,操作パネル40等と電気的に接続されている。
【0028】
ROM32には,プリンタ100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。
【0029】
RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業や,印刷データの一時的な記憶や、PDL(ページ記述言語)で記述された印刷データを解析しビットマップイメージに展開する作業などを行う作業領域として利用される。
【0030】
HDD35は、大容量の記憶領域を持ち、後述の親展印刷データを記憶する記憶領域として利用される。
【0031】
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,プリンタ100の各構成要素を制御する。
【0032】
ネットワークインターフェイス36は,LANなどの通信回線60に接続され,プリンタ100用のドライバが組み込まれた後述のコンピュータ200などの外部装置との接続を可能にしている。プリンタ100は,ネットワークインターフェイス36を介して後述の親展印刷データを含む印刷データのやりとりを行うことができる。
【0033】
タイマー37は、時刻の計時を行う。
【0034】
<コンピュータの電気的構成>
次に、コンピュータ200の電気的構成について説明する。このコンピュータ200は、通信回線60を介してプリンタ100に接続されている。
【0035】
図3に示すように、コンピュータ200は、CPU21、ROM22、RAM23、ハードディスクドライブ(HDD)24、キーボードやポインティングデバイスからなる操作部25、ディスプレイ等からなる表示部26、ネットワークインターフェイス27等を備えている。ハードディスクドライブ24には、印刷用の印刷データを作成するためのアプリケーションソフトや、印刷データを生成するためのプリンタドライバなどの各種プログラムが記憶されている。また、ネットワークインターフェイス27は、LANなどの通信回線60を介して外部のプリンタ100等に接続され、相互のデータ通信が可能となっている。
【0036】
<印刷データの構成>
図4は、この実施形態で扱う非親展印刷データと親展印刷データとを含む印刷データの構成を示す図である。ここで、親展印刷データとは、ユーザIDとパスワードとが指定された印刷データであって、プリンタ100で受信された後にHDD35に記憶され、プリンタ100でユーザIDとパスワードの認証を行った段階ではじめて印刷される印刷データである。また、非親展印刷データとは印刷データのうち、親展印刷データ以外のデータである。非親展印刷データはプリンタ100で受信された後すぐに印刷される。
【0037】
図4(A)のように、非親展印刷データは、画像データ及び属性データを含む。また、図4(B)に示すように、本実施形態で扱う親展印刷データは、画像データ、属性データと付加情報データとから構成される。
【0038】
画像データは、プリンタ100によって用紙に印刷される文書や画像の内容についてのデータである。
【0039】
属性データは、図4(C)に示すように、該印刷データのデータ名、データ量と、重要度やデータタイプを含む印刷設定と、受信時刻と、経過時間との各種データを含む。
【0040】
データ量は、印刷データのデータサイズを示す。
【0041】
印刷設定は、コンピュータ200において、ユーザが操作部25から入力した各種の印刷条件を示す情報である。ここで設定可能な印刷条件には、例えば、印刷データの重要度やデータタイプなどの設定項目がある。
【0042】
重要度は、画像データを印刷する優先度を示す設定項目である。画像データは該印刷重要度の高い順に従って、順次に画像形成部10により印刷される。
【0043】
データタイプは、印刷データが非親展印刷データか後述の親展印刷データかを設定する設定項目である。
【0044】
受信時刻は、プリンタ100が印刷データを受信した時刻(年・日・時の情報を含んでもよい)であり、タイマー37によってこの時刻が計測される。
【0045】
経過時間は、プリンタ100が印刷データを受信してから現在に至る、記憶領域に記憶している時間を示すものである。ここで、経過時間はタイマー37により計測した現在時刻から前記の受信時刻を差し引いた時間を示すものであり、常に更新される。
【0046】
付加情報データは、図4(D)のように、親展印刷データのデータ名、ユーザID、パスワード、該印刷データの記憶期限に関するデータである。
【0047】
記憶期限とは、親展印刷データをHDD35に記憶できる期限を示す情報である。プリンタ100は記憶期限に基づいて、該親展印刷データの削除処理を行う。なお、記憶期限は所定の条件を満たすとプリンタ100により設定されるデータなので、プリンタ100による記憶期限の設定がなされる前は、受信した親展印刷データの記憶期限に関するデータの初期状態として「設定なし」が設定されている。
【0048】
<印刷制御処理>
図5は、非親展印刷データと、親展印刷データとを含む印刷データの印刷を行う印刷制御処理を示すフローチャートである。図5に示すように、まず、プリンタ100は、電源が投入されると、待機状態となる。
【0049】
CPU31は、LANなどの通信回線60を介して印刷データを受け取ったか否かを判断する(S101)。印刷データを受け取ったと判断した場合(S101:Yes)、一旦、該印刷データをRAM33に記憶する。
【0050】
そして、該印刷データは親展印刷データか否かを判断する(S102)。ここで、CPU31は、前述の印刷データの属性データの印刷設定により判断する。
【0051】
該印刷データは親展印刷データでない場合(S102:No)、画像形成部10により印刷される。より具体には、CPU31は、PDLで記述された印刷データを解析し、該印刷データの画像データを属性データの印刷設定に基づいてビットマップイメージに展開する。そして、展開したビットマップイメージを用紙に印刷する(S103)。CPU31は、該画像データを印刷した後、該画像データを含む印刷データをRAM33から削除し、待機状態に戻る。
【0052】
一方、CPU31は、該印刷データは親展印刷データであると判断した場合(S102:Yes)、該親展印刷データをRAM33からHDD35に移動して記憶する(S104)。
【0053】
次に、CPU31は、HDD35に十分な空き容量があるかどうかを判断する(S105)。ここで、CPU31は、直接にHDD35の空き容量を計算してもよいし、記憶されている親展印刷データの印刷データの合計データサイズを計算し、HDD35の総容量からこの合計データサイズを引いて求めることも可能である。なお、各画像データに対する合計データサイズを求める際に、各親展印刷データの属性データのデータ量が読み出される。なお、計算された記憶領域の空き容量を記憶するための変数をRAM32またはNVRAM34に用意され、後述のS111の処理を行ってから、当該変数が計算された記憶領域の空き容量として更新される。
【0054】
HDD35の空き容量が予め設定された閾値N以上の場合(S105:No)、待機状態に戻り、ユーザによりプリンタ100の操作パネル40にユーザIDとパスワードが入力されるまで、該親展印刷データは印刷されない。なお、この閾値Nとしては、HDD35の総容量に対して、十分余裕を持って所定の比率を決めればよく、ユーザに設定した値を決めてもよい。
【0055】
それに対して、HDD35の空き容量が閾値N未満の場合(S105:Yes)、CPU31は、該親展印刷データを送信したユーザと同じユーザが送信した親展印刷データであって、前述の記憶期限が設定された(すなわち、記憶期限に関するデータは「設定なし」の初期状態ではなく、具体的な時間が設定されている。以降同様。)親展印刷データがあるかどうかを付加情報データに基づいて判断する(S106)。
【0056】
CPU31は、新しく受信した親展印刷データと、記憶されている親展印刷データの中で記憶期限が設定されている親展印刷データとが同一のユーザから送信されたと判断した場合(S106:Yes)、ペナルティー処理として、HDD35から新しく受信した親展印刷データを削除する(S107)。
【0057】
一方、CPU31は、該親展印刷データを送信したユーザと同じユーザが送信した親展印刷データがHDD35にない場合、又は親展印刷データを送信したユーザと同じユーザが送信した親展印刷データに記憶期限が設定されていない場合(すなわち、記憶期限に関するデータは初期状態「設定なし」の場合。以降同様)(S106:No)、HDD35に記憶されている親展印刷データの中で、まだ記憶期限が設定されない印刷データに対して、それらの親展印刷データの属性データに基づいて親展印刷データをHDD35に記憶できる記憶期限を計算する(S108)。詳細は後述の「記憶期限の計算」で述べる。
【0058】
次に、それら計算された記憶期限をそれぞれの親展印刷データに設定する(S109)。より具体的には、親展印刷データの付加情報データに含まれる、記憶期限に関するデータに計算された記憶期限の値が書き込まれる。
【0059】
その後、CPU31は、親展印刷データに記憶期限が設定された旨を送信元のコンピュータ200に通知し(S110)、待機状態に戻る。ここで、CPU31は付加情報データからユーザIDを読み出し、このユーザIDに対応付けて予め記憶されているコンピュータ200に対して通知を行う。コンピュータ200のCPU21は通知された旨を表示部26に表示させる。
【0060】
次に、現在の空き容量が前回のS105で計算された空き容量より減少したか否かを判断する(S111)。すなわち、現在の空き容量はRAM32またはNVRAM34に用意されている変数の値より減少したかを判断し、現在の空き容量の値として当該変数に書き換える。S105にて計算された現在の空き容量が前回の空き容量より減少した場合(S111:Yes)、CPU31は、既に記憶期限が設定された親展印刷データ(S109にて新たに記憶期限が設定された親展印刷データを除く)に対して、記憶期限を予め決められた所定時間だけ短縮し(S112)、短縮した旨をコンピュータ200に通知する(S113)。現在の空き容量が前回の空き容量より減少してない場合(S111:No)、待機状態に戻る。コンピュータ200のCPU21は通知された旨を表示部26に表示させる。
【0061】
CPU31は、S101にて印刷データを受け取っていないと判断した場合(S101:No)、S109により設定された記憶期限を経過しても印刷が行われていない親展印刷データがあるか否かを判断する(S201)。より具体的に、CPU31は親展印刷データの属性データの現在の経過時間を取得し、その経過時間と記憶期限とを比較する。
【0062】
CPU31は、記憶期限を経過しても印刷が行われていない親展印刷データがあると判断したら(S201:Yes)、該親展印刷データをHDD35から削除する(S202)。ここで、該親展印刷データが印刷中であれば、印刷の終了後に削除を行ってもよい。
【0063】
その後、CPU31は、親展印刷データが削除された旨をコンピュータ200に通知する(S203)。コンピュータ200のCPU21は通知された旨を表示部26に表示させる。
【0064】
次に、HDD35に親展印刷データの削除によって空き容量が変化したため、CPU31は、再びHDD35に十分な空き容量があるかどうかを判断する(S204)。
【0065】
HDD35の空き容量が閾値N未満の場合(S204:Yes)、すなわち、親展印刷データの削除により空き容量が増加されても、HDD35の総容量に対して、空き容量が十分に余裕を持っていないと判断した場合、既に親展印刷データに設定された記憶期限をそのまま維持し、記憶期限が設定されてない親展印刷データはそのまま記憶し、再び待機状態に戻る。
【0066】
それに対して、親展印刷データの削除により空き容量が閾値N以上になった場合(S204:No)、CPU31は、HDD35に記憶されている親展印刷データの中に、既に記憶期限が設定されている印刷データに対して(S205:Yes)、設定された記憶期限を解除するため、各親展印刷データの付加情報データの記憶期限に関するデータを初期状態の「設定なし」に戻す(S205)。
【0067】
また、その場合、既に親展印刷データに設定された記憶期限を解除するのかわりに、記憶期限を予め決められた所定時間だけ延長してもよい。
【0068】
その後、CPU31は、親展印刷データに設定された記憶期限を解除した、または延長した旨をコンピュータ200に通知し(S206)、待機状態に戻る。コンピュータ200のCPU21は通知された旨を表示部26に表示させる。
【0069】
一方、CPU31は、HDD35に記憶されている親展印刷データの中に、記憶期限が設定されていない印刷データに対して(S205:No)、そのまま記憶し、待機状態に戻る。
【0070】
CPU31は、S101にて印刷データを受け取っていないと判断し(S101:No)、かつ、S109により設定された記憶期限を経過しても印刷が行われていない親展印刷データがないと判断した場合(S201:No)、ユーザによって、プリンタ100の操作パネル40からユーザID及びパスワードの入力があるか否かを判断する(S301)。ユーザID及びパスワードの入力がない場合(S301:No)、CPU31は待機状態に戻る。
【0071】
一方、CPU31は、ユーザによって、プリンタ100の操作パネル40によりユーザID及びパスワードの入力があると判断した場合(S301:Yes)、HDD35に記憶された各親展印刷データの付加情報データに基づいて、入力したユーザID及びパスワードを照合し(S302)、対応する画像データを画像形成部10により印刷する(S303)。
【0072】
その後、CPU31は、印刷が終了した親展印刷データをHDD35から削除し(S202)、前述のS203〜S207の処理を順次に実行し、待機状態に戻る。
【0073】
<記憶期限の計算>
次に図6を用いて、記憶期限の計算処理について説明する。図5は、図6のS108において、各親展印刷データの属性データに基づいて、各親展印刷データをHDD35に記憶しておく記憶期限を計算する例を示す図である。
【0074】
図6(A)は、現在のHDD35に記憶されている5つの親展印刷データの属性データを示すテーブルである。図6(B)〜(D)は、親展印刷データのデータ量、重要度及び経過時間を組み合わせた条件に基づいて、記憶期限を計算する例である。具体的な計算方法は以下のようになる。
【0075】
I.親展印刷データのデータ量に基づいて、各親展印刷データの記憶期限T1を計算する。この例において、最大記憶時間を180(m)と仮定し、この最大記憶時間から10(KB)のデータサイズにつき10(m)を減算する。例えば、job1において、データサイズは200KBなので、中間記憶期限T1は以上の計算方法により−20(m)になる。なお、最小記憶時間を−60(m)と仮定するので、計算結果が−60(m)以下であれば、全て−60(m)となる(図6(B)参照)。
【0076】
II.親展印刷データの経過時間に基づいて、各親展印刷データの中間記憶期限T2を計算する。この例において、親展印刷データの古いものから順に中間記憶期限を30(m)ずつ増加させる。すなわち、経過時間が少ないほど記憶時間を長くする(図6(C)参照)。例えば、job1からjob5の順に、経過時間短くなっていくので、各ジョブの中間記憶期限T2は以上の計算方法により30、60、90・・・(m)になる。
【0077】
III.IとIIにてそれぞれに計算された中間記憶期限T1とT2を足して、足した中間記憶期限(T1+T2)に親展印刷データの重要度にしたがって重みをつける。その計算結果は最終的に各親展印刷データに設定される最終記憶期限T3とする。この例において、重要度が「高」の場合、重みを1.2にし、重要度が「中」の場合、重みを1.0にし、重要度が「低」の場合、重みを0.5にする。なお、計算結果は全て四捨五入し、最小記憶時間を30(m)と仮定するので、四捨五入した計算結果が30(m)以下であれば、全て30(m)とする(図6(D)参照)。例えば、job1において、重要度は「低」であるため、重みは0.5になる。最終記憶期限T3は以上の計算方法により5(m)になるが、job1の記憶期限は30(m)として計算される。
【0078】
以上のI〜IIIにより、CPU31は、各親展印刷データの属性データに基づいて記憶期限を計算し、計算した最終記憶期限T3をS109により各親展印刷データに記憶期限として設定できる。
【0079】
なお、本実施の形態の例では、複数の属性データに含まれる各種データの組合せで記憶期限を計算したが、いずれか1つのデータに基づいて記憶期限を計算してもよい。例えば、親展印刷データのデータ量に基づいて記憶期限を計算する場合、データサイズが大きいほど記憶期限が短くなり、大きい親展印刷データが未印刷のまま長期間保存されることによる記憶領域にかかる負担を軽減することができる。また、例えば、親展印刷データの経過時間に基づいて記憶期限を計算する場合、経過時間が長いほど記憶期限が短くなり、長期間保存された未印刷の印刷データによる記憶領域にかかる負担を軽減することができる。また、例えば、親展印刷データの重要度に基づいて記憶期限を計算する場合、重要度が高いほど記憶期限が長くなり、重要な印刷データを可能な限り記憶することができる。
【0080】
<本実施形態の効果>
以上のように本実施形態によれば、親展印刷データを記憶する記憶領域の空き容量が予め決められた閾値未満の場合、それらの印刷データに記憶期限を設定することで、受信済みの印刷データを可能な限り記憶することができる。
【0081】
また、記憶期限を経過しても印刷が行われていない親展印刷データを削除することで、不必要な印刷データが未印刷のまま長期間保存されることによる記憶領域にかかる負担を軽減することができる。
【0082】
また、記憶領域の空き容量が閾値以上の場合、親展印刷データに設定されている記憶期限を解除または延長することで、受信済みの印刷データを可能な限り記憶することができる。
【0083】
また、記憶領域の空き容量が閾値未満であり、且つ前回のS105にて判断された空き容量より減少した場合、親展印刷データに設定されている記憶期限を短縮することで、不必要な印刷データが未印刷のまま長期間保存されることによる記憶領域にかかる負担を軽減することができる。
【0084】
また、親展印刷データに対して、該印刷データの属性データに応じて、適切な記憶期限を設定することで、記憶領域の使用効率を向上することができる。
【0085】
また、親展印刷データに対して、記憶期限の設定などの処理が行われたことをユーザに通知することで、ユーザがそれらの処理に応じた対処を促すことができる。
【0086】
また、記憶領域において、新しく受信した親展印刷データと、記憶されている親展印刷データの中で記憶期限が設定されている親展印刷データとが同一のユーザから送信された場合、新しく受信した該印刷データをHDD35から削除することで、該ユーザの未印刷のまま長期間保存された先行親展印刷データに対する対処を促すことできる。
【0087】
<他の実施形態>
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,プリンタに限らず,少なくとも印刷機能を備えるものであれば適用可能である。また,プロセス部50の画像形成方式は,電子写真方式に限らず,インクジェット方式であってもよい。
【0088】
また、上記実施形態において、記憶期限の設定、短縮、解除、延長は全ての親展印刷データ(厳密に言うと、全ての記憶期限が設定されたもの又は全ての記憶期限が設定されていないもの)を処理対象としたが、一部の親展印刷データを処理対象にしてもよい。例えば、属性データの経過時間に基づいて、予め決められた時刻より以前の古いデータのみ記憶期限を設定してもよい。
【0089】
また、上記実施形態で記憶期限を設定する印刷データはセキュアプリンタ機能を実現するための親展印刷データであったが、これに限られず、リプリント機能を実現するための親展印刷データであってもよい。リプリント用の印刷データは、印刷した後も削除されずにHDD35に記憶され、操作パネル40を介してユーザから再印刷の指示が入力されると印刷される。なお、リプリント機能による印刷データの場合、最初に送信された付加情報データにはパスワード以外のデータ名、ユーザID、及び記憶期限のみが含まれる。よって、図5のS301にて、ユーザIDのみ入力すれば印刷できる。
【0090】
また、上記実施形態においては、受信した親展印刷データはプリンタ100のHDD35に記憶されるが、HDD35を有しないプリンタ100の場合、親展印刷データをRAM32またはNVRAM34に記憶してもよい。その場合、RAM32またはNVRAM34に親展印刷データを記憶する親展記憶領域を設ければよい。例えば、図5のS101において受信した親展印刷データを一時的にRAM32またはNVRAM34の親展記憶領域以外の非親展記憶領域に記憶させ、S106の判断でNoと判断された場合に親展印刷データを親展記憶領域に移動して記憶する。また、CPU31は、新しく受信した親展印刷データと、記憶されている親展印刷データの中、記憶期限が設定され親展印刷データと同一のユーザから送信されたと判断した場合(S106:Yes)、非親展記憶領域から新しく受信した親展印刷データを削除する。
【0091】
また、図5のS105及びS203の処理において親展印刷データを新たに記憶した場合と親展印刷データを削除した場合にHDD35の空き容量を判断していたが、それに限られず、CPU31は、HDD35の空き容量を常時にチェックしてもよいし、適当な時間間隔を持って定期的にチェックしてもよい。また、空き容量に関連する情報として、空き容量の代わりに、蓄積容量(各画像データに対する合計データサイズ)、あるいは、HDD35の総容量に対する空き容量または蓄積容量の比率を用いてもよい。これら蓄積容量、空き容量または蓄積容量の比率を判断することで、結果的にHDD35の空き容量を判断することになる。
【0092】
また、図5のS108の処理において、CPU31は、各親展印刷データの属性データに基づいて記憶期限を計算したが、空き容量の値に応じて記憶期限を計算してもよい。
【0093】
また、図5のS112及びS206の処理において、CPU31は、各親展印刷データに設定されている記憶期限を予め決められた所定時間だけ変更したが、同様に、空き容量の値に応じて記憶期限を再計算して設定してもよい。
【0094】
また、本実施の形態に扱う親展印刷データに関して、属性データと付加情報データをまとめひとつの画像データに関連付けるデータにしてもよい。
【0095】
また、本実施の形態に扱う親展印刷データに関して、画像データをHDD35に、属性データ及び付加情報データをROM32、RAM33、NVRAM34のいずれに記憶してもよい。この場合、画像データと属性データ及び付加情報データを関連つけるテーブルを用意してもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 画像形成部
30 制御部
31 CPU
32 ROM
33 RAM
34 NVRAM
40 操作パネル
36 ネットワークI/F
100 プリンタ
200 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データを受信する受信手段と、
前記受信した印刷データを記憶領域に記憶する記憶手段と、
ユーザから印刷指示を受け付けたことを契機に、前記記憶領域の印刷データに基づいて、被記録媒体に画像を印刷する印刷手段と、前記記憶領域の空き容量に関連する情報を監視する監視手段と、
前記監視手段により、前記記憶領域の空き容量に関連する情報に基づいて、前記記憶領域の空き容量が予め設定された基準値未満と判断された場合、前記印刷データを前記記憶領域に記憶できる記憶期限を設定する記憶期限管理手段と、
前記記憶期限管理手段により設定された記憶期限を経過した印刷データがある場合、当該印刷データを前記記憶領域から削除する削除手段と
を有することを特徴とする印刷装置。

【請求項2】
前記監視手段により、前記記憶領域の空き容量に関連する情報に基づいて、前記記憶領域の空き容量が前記基準値以上と判断された場合、
前記記憶期限管理手段は、前記記憶期限の設定を解除するか、又は、前記記憶期限を延長することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。

【請求項3】
前記監視手段により、前記記憶領域の空き容量に関連する情報に基づいて、前記記憶領域の空き容量が予め設定された基準値未満であり、且つ、当該空き容量が減少したと判断された場合、
前記記憶期限管理手段は、前記記憶期限を短縮することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。

【請求項4】
前記印刷データには、当該印刷データの属性を示す属性データを有し、
前記記憶期限管理手段は、前記属性データに従って印刷データに記憶期限を設定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の印刷装置。

【請求項5】
前記印刷データに対して、前記記憶期限管理手段により記憶期限を設定、解除、延長、短縮のいずれかの処理がされたこと、または、前記削除手段により削除された旨を当該印刷データを送信したユーザに通知する通知手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の印刷装置。

【請求項6】
前記記憶期限管理手段により前記記憶期限が設定された場合、当該記憶期限が設定された印刷データを送信したユーザから新たに送信された印刷データの記憶を拒否する記憶拒否手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷装置。

【請求項7】
前記属性データは、前記印刷データのデータ量、前記印刷データの重要度、前記印刷データを受信してからの経過時間のうち、少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の印刷装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96453(P2012−96453A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246000(P2010−246000)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】