説明

印刷装置

【課題】ノズル内でのインクの詰まりを抑制しつつ、インクを画像の印刷に有効に利用できること。
【解決手段】ノズルからインクを吐出してシートに画像を印刷する印刷部と、フラッシングの実行条件が成立したか否かを判断する判断部と、判断部によって実行条件が成立したと判断されると、印刷すべき画像がない場合は印刷部にフラッシングを実行させ、印刷すべき画像がある場合は、フラッシングの替わりに、印刷部にその画像を印刷させる制御部(S310)と、を備える印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル内でのインクの詰まりを抑制するためにノズルからインクを吐出するフラッシングを実行する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズルからインクを吐出して画像を印刷するインクジェット方式の印刷装置において、予め決められた周期でのタイミング、電源が入れられたときのタイミング、ユーザの使用状況に応じたタイミングなどで、ノズル内でのインクの詰まりを抑制するためにノズルからインクを吐出するフラッシングを実行することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−66849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フラッシングを実行すると、その分だけ画像の印刷に用いるインクの量が減ってしまうという問題がある。
本明細書では、ノズル内でのインクの詰まりを抑制しつつ、インクを画像の印刷に有効に利用できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される印刷装置は、ノズルからインクを吐出してシートに画像を印刷する印刷部と、フラッシングの実行条件が成立したか否かを判断する判断部と、前記判断部によって前記実行条件が成立したと判断されると、印刷すべき画像がない場合は前記印刷部に前記フラッシングを実行させ、印刷すべき画像がある場合は、前記フラッシングの替わりに、前記印刷部にその画像を印刷させる制御部と、を備える。
【0006】
また、当該印刷装置の動作モードには、印刷すべき画像がある場合はその画像を印刷する通常モードと、印刷すべき画像があっても印刷しない印刷制限モードとがあり、前記制御部は、前記印刷制限モード中であっても、前記判断部によって前記実行条件が成立したと判断されたとき、印刷すべき画像がある場合は、前記フラッシングの替わりに、前記印刷部にその画像を印刷させてもよい。
【0007】
また、前記印刷制限モードは、前記通常モードに比べて前記印刷部に供給する電力が少ない省電力モードであり、前記制御部は、前記省電力モード中であっても、前記判断部によって前記実行条件が成立したと判断されたとき、印刷すべき画像がある場合は、前記省電力モードより多い電力を前記印刷部に供給して前記印刷部にその画像を印刷させてもよい。
【0008】
また、前記印刷部は複数色のインクを用いて画像を印刷するものであり、前記制御部は、前記判断部によって前記実行条件が成立したと判断されたとき、印刷すべき1以上の画像の中に、前記複数色のインクのうち前記フラッシングが実行されるべきインクが印刷に用いられる画像がある場合は、当該画像を前記印刷部に印刷させてもよい。
【0009】
また、前記制御部は、印刷すべき1以上の画像の中に、前記複数色のインクのうち前記フラッシングが実行されるべきインクのみが印刷に用いられる画像がある場合は、当該画像を前記印刷部に印刷させてもよい。
【0010】
また、前記制御部は、印刷すべき1以上の画像の中に、前記複数色のインクのうち前記フラッシングが実行されるべきインクが印刷に用いられる画像がない場合は、前記印刷部に画像を印刷させず、前記フラッシングを実行させてもよい。
【0011】
また、前記制御部は、前記判断部によって前記実行条件が成立したと判断されたとき、印刷すべき画像が複数ある場合は、各前記画像についてその画像の印刷に用いられるインクの量を判断し、印刷に用いられるインクの量が前記フラッシングによって吐出すべき量に最も近い画像を印刷させてもよい。
【0012】
また、前記制御部は、前記フラッシングの替わりに画像を印刷させた場合に、その印刷に用いたインクの量が前記フラッシングによって吐出すべき量に満たない場合は、その印刷の前、及び/又は、その印刷の後に前記フラッシングを実行させてもよい。
【0013】
また、前記制御部は、前記フラッシングの替わりに画像を印刷させる場合に、その印刷に用いるインクの量が前記フラッシングによって吐出すべき量を超える場合は、その印刷を中断させてもよい。
【0014】
また、上記印刷装置は、前記フラッシングの替わりに画像を印刷させるか否かをユーザに選択させる選択部を備え、前記制御部は、前記判断部によって前記実行条件が成立したと判断されたとき、印刷すべき画像があり、且つ、前記選択部によって画像を印刷させるよう選択されている場合は、前記フラッシングの替わりに、前記印刷部にその画像を印刷させてもよい。
【0015】
なお、この発明は、フラッシング制御方法、フラッシング制御プログラム、フラッシング制御プログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記の印刷装置によると、ノズル内でのインクの詰まりを抑制しつつ、インクを画像の印刷に有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1に係るプリンタの電気的構成を示すブロック図。
【図2】印刷部の構成を簡略化して示す模式図。
【図3】省電力モードにおける制御部の処理の流れを示すフローチャート。
【図4】一時復帰処理の流れを示すフローチャート。
【図5】フラッシング印刷処理の流れを示すフローチャート(前半)。
【図6】フラッシング印刷処理の流れを示すフローチャート(後半)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6によって説明する。
(1)プリンタの電気的構成
図1は、実施形態1に係る印刷装置としてのプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。プリンタ1は制御部10、印刷部11、操作部12、記憶部13、インタフェース部14、電源部15、及び、バッテリー16を備えている。
【0019】
制御部10は、CPU10a、ROM10b、RAM10cなどを備えて構成されている。CPU10aはROM10bに記憶されている各種のプログラムを実行することによってプリンタ1の各部を制御する。ROM10bはCPU10aによって実行される制御プログラムや各種のデータなどを記憶している。RAM10cはCPU10aが各種の処理を実行するための主記憶装置として用いられる。制御部10は、判断部、及び制御部の一例である。
【0020】
印刷部11は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のインクを吐出して印刷用紙などのシートにインクジェット方式で画像を印刷する装置である。印刷部11の構成については後述する。印刷部11は印刷部の一例である。
操作部12は、各種のボタンや液晶ディスプレイなどを備えて構成されている。ユーザは操作部12を操作して、各種の設定、後述する動作モードの切り替え、後述するフラッシング印刷を実行するか否かの選択などを行うことができる。
【0021】
記憶部13は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性のメモリを用いて各種のプログラムやデータを記憶する装置である。記憶部13にはパーソナルコンピュータなどの外部装置から受信した画像などが記憶される。
インタフェース部14は例えばUSB(Universal Serial Bus)クライアントインタフェースとして構成されており、USBケーブルを介して外部装置から画像を受信する。なお、プリンタ1はLAN(Local Area Network)やインターネットなどの通信ネットワークを介して外部装置と接続される構成であってもよい。
【0022】
電源部15は外部の商用電源に接続されており、外部の商用電源から供給される電力をプリンタ1の各部に供給する。
バッテリー16は電源部15から供給される電力によって充電される二次電池であり、後述する省電力モード時にプリンタ1の各部に電力を供給する。
【0023】
(2)印刷部の構成
図2は印刷部11の構成を簡略化して示す模式図である。印刷部11は、記録ヘッド21、記録ヘッド搬送部22、図示しないシート搬送部、キャップ23などを備えて構成されている。
【0024】
記録ヘッド21は、C、M、Y、Kの各インクが収容されている複数のインクカートリッジ、各色のインクカートリッジに対応して設けられている複数のノズル、インクカートリッジとノズルとを接続するインク通路、インク通路を圧縮してノズルからインクを吐出させる圧電素子、印刷する画像に応じた駆動信号に従って圧電素子に電圧を印加する駆動回路などを備えて構成されている。
【0025】
記録ヘッド搬送部22は、記録ヘッド21を摺動可能に支持するガイドロッド24、駆動ローラ25、従動ローラ26、駆動ローラ25と従動ローラ26とに掛け回されているタイミングベルト27、駆動ローラ25を回転駆動するステッピングモータ28を備えており、記録ヘッド21をガイドロッド24に平行な主走査方向に往復移動させる。
【0026】
図示しないシート搬送部は、複数のローラやそれらを回転駆動するステッピングモータなどを備えており、紙面に垂直な副走査方向にシート3を搬送する。
キャップ23は記録ヘッド21の待機位置の下方に設けられている。キャップ23は図示しない昇降機構により上下方向に移動可能に構成されており、待機位置にある記録ヘッド21を下側から覆うことによってノズル内のインクの乾燥を抑制する。
【0027】
(3)プリンタの動作モード
プリンタ1の動作モードには、通常モード、通常モードよりも消費電力が少ない省電力モード、及び、一時復帰モードがある。省電力モードは印刷制限モードの一例である。
通常モードと省電力モードとの切り替えはユーザがプリンタ1の操作部12を操作することによって行われる。一時復帰モードは省電力モードにおいてプリンタ1の各部に省電力モードのときより多い電力を供給する必要が生じたときに遷移するモードである。
【0028】
プリンタ1の動作モードが通常モードに設定されているときは、プリンタ1は印刷すべき画像がある場合はその画像を印刷する。印刷すべき画像とは、ユーザが外部装置で印刷を指示して未だ外部装置からプリンタに送信されていない画像、及び、外部装置からプリンタ1に送信されて未だプリンタ1で印刷されていない画像のことをいう。ユーザが外部装置で印刷を指示して未だ外部装置からプリンタ1に送信されていない画像がある場合、プリンタ1は外部装置から画像の送信を受け付け、外部装置から送信された画像を印刷する。
【0029】
一方、プリンタ1の動作モードが省電力モードに設定されているときは、プリンタ1は印刷すべき画像があってもその画像を印刷しない。例えば、プリンタ1が省電力モードにあるときにユーザが外部装置で印刷を指示しても、プリンタ1は外部装置からの画像の送信を受け付けない。プリンタ1が省電力モードにあるときにユーザが外部装置で画像の印刷を指示した場合は、その画像は送信保留画像として外部装置に記憶される。また、プリンタ1が外部装置から画像を受信した後、その画像を印刷する前にユーザが省電力モードに切り替える場合もある。その場合は、外部装置から受信されて未だ印刷されていない画像の印刷は保留され、印刷保留画像としてプリンタ1に記憶される。
【0030】
(4)フラッシング
フラッシングは、印刷を実行しない状態が継続することによってノズル内でインクが乾燥し、それによってインクの詰まりが発生することを抑制するために、予め決められている実行条件が成立するとインクを強制的に吐出する処理のことをいう。
フラッシングは、例えば記録ヘッド21がキャップ23によって蓋されている状態で行ってもよいし、図2に示すように主走査方向においてシート3の搬送経路から外れた位置でその位置の下方に設けられているインク吸収材29に向けてインクを吐出することによって行ってもよい。
【0031】
本実施形態ではフラッシングの実行条件として「最後にフラッシングが完了してから一定時間が経過したとき」を例に説明する。最後にフラッシングが完了してから一定時間が経過したか否かはインクの色毎に判断される。
なお、フラッシングの実行条件は上述した例に限られるものではなく、適宜に設定可能である。例えば実行条件は「プリンタの電源が投入されたとき」であってもよい。
【0032】
(4−1)省電力モードにおけるフラッシング
前述したようにプリンタ1は省電力モードに設定されているときは印刷を行わないが、例外として、省電力モード中であっても、フラッシングの実行条件が成立したとき、印刷すべき画像がある場合は、フラッシングの替わりに、その画像を印刷する。
【0033】
(4−1−1)省電力モードにおける制御部の処理
図3は、省電力モードにおける制御部10の処理の流れを示すフローチャートである。本処理はユーザが操作部12を操作して省電力モードに切り替えると開始される。
【0034】
S101では、制御部10はプリンタ1の各部に電力を供給する電源をバッテリー16に切り替えることにより、省電力モードに遷移する。
なお、電源をバッテリー16に切り替えるのではなく、電源部15がプリンタ1の各部に供給する電力を通常モードのときより少なくしたり、あるいは電源部15が制御部10以外の各部に供給する電力を遮断したりすることによって消費電力を低減してもよい。
【0035】
S102では、制御部10は最後にフラッシングが完了してからの経過時間をインクの色毎にカウントする変数である経過時間Tcy、Tma、Tye、Tbkに時間ΔTを加算する。ここで、経過時間Tの後ろに付加されている文字列cyはシアン、maはマゼンタ、yeはイエロー、bkはブラックを示し、色を特定しない場合は単に経過時間Tと表記するものとする。他の変数においても同様である。
ΔTは最後に経過時間Tに時間が加算された時から現在までの時間である。経過時間Tは通常モードと共有される変数であり、S102を最初に実行するときは通常モードにおいて最後に経過時間Tに時間が加算された時から現在までの時間がΔTとなる。
【0036】
S103では、制御部10は、フラッシングの実行条件が成立したか否かを判断する。
具体的には、制御部10は経過時間Tcy、Tma、Tye、Tbkがいずれも一定時間Ta未満である場合は実行条件が成立していないとしてS104に進む。一方、いずれか1色でも経過時間Tが一定時間Ta以上である場合は、制御部10は実行条件が成立したとし、S107に進んで一時復帰処理を実行する。
【0037】
詳しくは後述するが、一時復帰処理ではプリンタ1の動作モードが一時復帰モードに遷移する。一時復帰モードはプリンタ1に供給される電力が省電力モードのときより多いモードであり、制御部10はその電力を利用してフラッシングを実行する。
【0038】
S104では、制御部10はバッテリー16の残量が閾値d未満であるか否かを判断し、閾値d未満ではない場合はS105に進み、閾値d未満である場合はS107に進んで一時復帰処理を実行する。
ここで、バッテリー16の残量が閾値d未満である場合に一時復帰処理を実行する理由は、前述したように一時復帰モードでは省電力モードのときより多い電力がプリンタ1に供給されるので、その電力を利用してバッテリー16を充電するためである。
【0039】
S105では、制御部10はユーザがプリンタ1の動作モードを通常モードに切り替えたか否かを判断し、切り替えた場合はS106に進み、切り替えていない場合はS102に戻って処理を繰り返す。
S106では、制御部10は電源をバッテリー16から電源部15に切り替えて通常モードに復帰する。
【0040】
(4−1−2)一時復帰処理
図4は、一時復帰処理の流れを示すフローチャートである。
S201では、制御部10は電源をバッテリー16から電源部15に切り替えることにより、一時復帰モードに遷移する。
【0041】
S202では、制御部10は、印刷保留画像がフラッシング印刷の対象として選択されているか否かを判断する。
フラッシング印刷とは、省電力モードのときにフラッシングの実行条件が成立したとき、印刷すべき画像がある場合は、フラッシングの替わりにその画像を印刷することをいう。
ユーザは予め操作部12を操作して印刷保留画像をフラッシング印刷の対象として選択しておくことができる。印刷保留画像がフラッシング印刷の対象として選択されている場合は、後述するS204において印刷保留画像が印刷候補画像群に追加される。
制御部10は印刷保留画像がフラッシング印刷の対象として選択されている場合はS203に進み、選択されていない場合はS205に進む。
【0042】
S203では、制御部10は記憶部13に印刷保留画像があるか否かを判断し、ある場合はS204に進み、ない場合はS205に進む。
S204では、制御部10は印刷保留画像を印刷候補画像群に追加する。印刷候補画像群に追加された画像は、フラッシングの替わりに印刷される画像の候補となる。
【0043】
S205では、制御部10は、送信保留画像がフラッシング印刷の対象として選択されているか否かを判断する。
ユーザは予め操作部12を操作して送信保留画像をフラッシング印刷の対象として選択しておくことができる。送信保留画像がフラッシング印刷の対象として選択されている場合は、後述するS208において送信保留画像が印刷候補画像群に追加される。
制御部10は送信保留画像がフラッシング印刷の対象として選択されている場合はS206に進み、選択されていない場合はS209に進む。
【0044】
S206では、制御部10は外部装置と通信して、プリンタ1への送信が保留されている送信保留画像があるか否かを判断し、送信保留画像がある場合はS207に進み、ない場合はS209に進む。
S207では、制御部10は外部装置から送信保留画像を受信する。
S208では、制御部10は外部装置から受信した送信保留画像を印刷候補画像群に追加する。
【0045】
S209では、制御部10は印刷候補画像群に含まれる画像毎に、印刷に用いるインクの量をインクの色毎に求める。
具体的には、制御部10はシート3に形成するドットの数をカウントすることによってインクの量を求める。インクの量とドットの数とは比例するからである。制御部10は画像に色空間変換処理、ハーフトーン処理などを施して印刷部11がシート3に形成するドットのパターンを表す二値画像をインクの色毎に生成し、生成した二値画像からドットの数をカウントする。なお、外部装置から受信した画像が既に二値画像に変換されているものである場合はその二値画像からドットの数をカウントすればよい。
【0046】
S210では、制御部10はフラッシングの実行条件が成立したか否かを再度判断する。実行条件が成立したか否かをこのタイミングで再度判断するのは次の理由による。
前述したS103でフラッシングの実行条件が成立していないと判断された場合であっても、S104でバッテリー16の残量が閾値d未満であると判断された場合には一時復帰モードに遷移する。この場合、S103の判断が行われたタイミングでは実行条件が成立していなくても、S210が実行されるまでの間に時間が経過しているのでその間に実行条件が成立した可能性があるからである。
制御部10は、実行条件が成立している場合はS211に進み、成立していない場合はS212に進む。
【0047】
S211では、制御部10は後述するフラッシング印刷処理を実行する。
S212では、制御部10はバッテリー16の残量が閾値d未満であるか否かを判断し、閾値d未満ではない場合はS213に進み、閾値d未満である場合はS214に進む。なお、バッテリー16の残量が閾値dよりも十分に多くなるまで充電されたらS213に進むようにしてもよい。
【0048】
S213では、制御部10は電源をバッテリー16に切り替えることにより、省電力モードに戻る。
S214では、制御部10は経過時間Tcy、Tma、Tye、Tbkに前回時間を加算した時から現在までの時間ΔTをそれぞれ加算してS205に戻る。
【0049】
(4−1−3)フラッシング印刷処理
図5及び図6は、フラッシング印刷処理の流れを示すフローチャートである。
S301では、制御部10は印刷候補画像群の中から、フラッシングが実行されるべきインクのみが印刷に用いられる画像を検索する。
例えば、黒のインクの経過時間Tbkは一定時間Ta以上であり、シアン、マゼンタ、イエローのインクの経過時間Tcy、Tma、Tyeは一定時間Ta未満であるとすると、制御部10は黒のインクのみを用いて印刷される画像を検索する。
【0050】
S302では、制御部10は、フラッシングが実行されるべきインクのみが印刷に用いられる画像がない場合はS303に進み、ある場合はS307に進む。
【0051】
S303では、制御部10は印刷候補画像群の中から、フラッシングが実行されるべきインクが印刷に用いられる画像を検索する。
例えば、シアン、黒のインクの経過時間Tcy、Tbkは一定時間Ta以上であり、マゼンタ、イエローのインクの経過時間Tma、Tyeは一定時間Ta未満であるとする。この場合、黒及びシアンのインクを用いて印刷される画像がある場合は、制御部10はあると判断する。この場合、黒及びシアンのインクが印刷に用いられれば、それら以外のインクが印刷に用いられてもよい。
【0052】
なお、上記の例では黒及びシアンのインクを用いて印刷される画像がある場合はあると判断するが、黒及びシアンのうちいずれか一方のインクは印刷に用いて他方のインクは印刷に用いない画像がある場合もあると判定するようにしてもよい。一方のインクだけでも印刷に用いたほうがインクを有効に利用できるからである。
【0053】
S304では、制御部10は、フラッシングが実行されるべきインクが印刷に用いられる画像がない場合はS305に進み、ある場合はS307に進む。
S305では、制御部10は、印刷部11を制御して、経過時間Tが一定時間Ta以上である色のインクのフラッシングを実行させる。
S306では、制御部10は、フラッシングを実行したインクの色の各変数を初期化する。具体的には、制御部10は、フラッシングを実行したインクの色の経過時間Tを0(零)に初期化し、フラッシングによって吐出したインクの量を色毎にカウントする変数であるフラッシング量Qを0(零)に初期化する。
【0054】
S307では、制御部10はS302でフラッシングが実行されるべきインクのみが印刷に用いられる画像があると判定された場合は当該画像が複数あるか否かを判定し、一方、S304でフラッシングが実行されるべきインクが印刷に用いられる画像があると判定された場合は当該画像が複数あるか否かを判断する。制御部は、当該画像が一つのみである場合はS308に進み、複数ある場合はS309に進む。
【0055】
S308では、制御部10は該当画像を選択する。
S309では、制御部10は、上述した複数の画像のうち、印刷に用いられるインクの量がフラッシングによって吐出すべき量に最も近い画像を選択する。
例えば、シアン、黒のインクの経過時間Tcy、Tbkは一定時間Ta以上であり、マゼンタ、イエローのインクの経過時間Tma、Tyeは一定時間Ta未満であるとする。この場合、印刷に用いる黒のインクの量をXbk、フラッシングによって吐出すべき黒のインクの量をYbk、印刷に用いるシアンのインクの量をXcy、フラッシングによって吐出すべきシアンのインクの量をYcyとすると、制御部10は、上述した複数の画像のうち、以下の式1によって求められる差分Zが最も小さくなる画像を選択する。
【0056】
差分Z=|Xbk−Ybk|+|Xcy−Ycy| ・・・ 式1
ここで、印刷に用いるインクの量は前述したS209で求めたものを用いることができる。また、フラッシングによって吐出すべき量は予めドット数に換算されているものとする。
【0057】
S310では、制御部10は印刷部11を制御して、選択した画像を印刷させる。
S311では、制御部10は印刷した画像を記憶部13から削除する。
S312では、制御部10は、フラッシング量Qcy、Qma、Qye、Qbkに、S310での印刷に用いられたインクの量をそれぞれ加算する。つまり、制御部10は、印刷に用いられたインクの量をフラッシングによって吐出した量とみなし、フラッシング量Qに加算する。
【0058】
S313では、制御部10は経過時間Tが一定時間Ta以上である各色について、その色のフラッシング量Qがフラッシングによって吐出すべき量に達しているか否かを判断する。
制御部10は、経過時間Tが一定時間Ta以上である色の中にフラッシング量Qがフラッシングによって吐出すべき量に達していない色が1色でもある場合は、フラッシングが完了していないとしてS314に進む。一方、経過時間Tが一定時間Ta以上である全ての色のフラッシング量Qがフラッシングによって吐出すべき量に達している場合は、制御部10はフラッシングが完了したとしてS315に進む。
S314では、制御部10は経過時間Tcy、Tma、Tye、Tbkに前回時間を加算した時からの経過時間ΔTをそれぞれ加算してS301に戻る。
【0059】
S315では、制御部10はフラッシング量Qがフラッシングによって吐出すべき量に達した色の各変数を初期化する。
具体的には、制御部10は、フラッシング量Qがフラッシングによって吐出すべき量に達した色の経過時間Tを0(零)に初期化し、フラッシング量Qを0(零)に初期化する。
S316では、制御部10はフラッシング量Qがフラッシングによって吐出すべき量に達していない色の経過時間Tに前回時間を加算した時からの経過時間ΔTをそれぞれ加算する。
S317では、制御部10はフラッシングの実行条件が成立したか否かを再度判断する。制御部10は、いずれの色も経過時間Tが一定時間Ta未満である場合は実行条件が成立していないと判断して一時復帰処理に戻り、いずれか1色でも経過時間Tが一定時間Ta以上である場合は実行条件が成立したとしてS301に戻る。
【0060】
(5)実施形態の効果
以上説明した実施形態1に係るプリンタ1によると、フラッシングの実行条件が成立したと判断されると、印刷すべき画像がない場合は印刷部11にフラッシングを実行させ、印刷すべき画像がある場合は、フラッシングの替わりに、印刷部11にその画像を印刷させる。フラッシングの実行条件が成立すればいずれにせよインクは吐出されるので、フラッシングの実行条件が成立したときに印刷すべき画像がある場合はフラッシングの替わりにその画像を印刷することにより、ノズルのインクの詰まりを抑制しつつ、インクを画像の印刷に有効に利用できる。
【0061】
更に、プリンタ1によると、制御部10は、省電力モード中であっても、フラッシングの実行条件が成立したと判断されたとき、印刷すべき画像がある場合は、フラッシングの替わりにその画像を印刷させる。省電力モード中であってもフラッシングの実行条件が成立すればいずれにせよインクは吐出されるので、フラッシングの替わりにその画像を印刷することにより、ノズルのインクの詰まりを抑制しつつ、インクを画像の印刷に有効に利用できる。
【0062】
更に、プリンタ1によると、フラッシングが実行されるべきインクが印刷に用いられる画像を印刷する。仮にフラッシングが実行されるべきインクが印刷に用いられない画像を印刷したとすると、印刷がフラッシングの替わりをなさない。これに対し、フラッシングが実行されるべきインクが印刷に用いられる画像を印刷すると、印刷がフラッシングの替わりをなすので、ノズルのインクの詰まりを抑制できる。
【0063】
更に、プリンタ1によると、フラッシングが実行されるべきインクのみが印刷に用いられる画像がある場合は、フラッシングが実行されるべきインクのみが印刷に用いられる画像を印刷するので、フラッシングが実行されるべきでないインクが無用に吐出されてしまうことを抑制できる。
【0064】
更に、プリンタ1によると、フラッシングの実行条件が成立したときに印刷すべき画像があっても、フラッシングが実行されるべきインクが印刷に用いられる画像がない場合は画像を印刷させないので、無用な印刷が行われることを抑制できる。
【0065】
更に、プリンタ1によると、フラッシングの実行条件が成立したとき、印刷すべき画像が複数ある場合は、各画像についてその画像の印刷に用いられるインクの量を判断し、印刷に用いられるインクの量がフラッシングによって吐出すべき量に最も近い画像を印刷させるので、印刷に用いたインクの量がフラッシングによって吐出すべき量にあまりにも満たないことによって画像の印刷がフラッシングの替わりをなさないことを低減できる。あるいは、フラッシングによって吐出すべき量よりも必要以上にインクを吐出することによって、フラッシングが不要になったにもかかわらず、本来印刷を制限されるべきである省電力モード中に必要以上に印刷されてしまうことを低減できる。
【0066】
更に、プリンタ1によると、フラッシングの替わりに画像を印刷させた場合に、その印刷に用いたインクの量がフラッシングによって吐出すべき量に満たない場合は、S301に戻ってフラッシング印刷処理を継続させる。言い換えると、プリンタ1は、印刷に用いたインクの量がフラッシングによって吐出すべき量に満たない場合は、フラッシング印刷処理を繰り返すことによってその印刷の後にフラッシングを実行させる。このため、プリンタ1によると、フラッシングによって吐出すべき量を確実に吐出させることができる。
【0067】
また、プリンタ1によると、フラッシングの替わりに画像を印刷させる場合に、フラッシングの替わりに印刷保留画像を印刷させるか、送信保留画像を印刷させるか、あるいはその両方を印刷させるかをユーザが選択できるので、ユーザの選択の自由度を向上させることができる。
【0068】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を説明する。
実施形態1ではS310で画像を印刷するときその画像を最後まで印刷するが、実施形態2では印刷に用いるインクの量がフラッシングによって吐出すべき量を超える場合は、その印刷を中断させる。
【0069】
例えば、経過時間Tが一定時間Ta以上である色が2色ある場合、印刷の途中で先に一方の色のフラッシング量Qがフラッシングによって吐出すべき量に達すると、他方の色のフラッシング量Qがフラッシングによって吐出すべき量に達するまで印刷を継続し、両方の色のフラッシング量Qがフラッシングによって吐出すべき量に達すると、印刷が完了していなくても印刷が中断される。
画像の印刷を中断した場合は、次回フラッシングの替わりに画像を印刷するときに印刷を再開してもよい。あるいは、その後にフラッシングの実行条件が成立することなく通常モードに復帰した場合は通常モードに復帰したときに印刷を再開してもよい。
【0070】
以上説明した実施形態2に係るプリンタ1によると、フラッシングの替わりに画像を印刷させる場合に、その印刷に用いるインクの量がフラッシングによって吐出すべき量を超える場合は、その印刷を中断させる。このため、プリンタ1によると、フラッシングの実行条件が成立したときに、フラッシングによって吐出すべき量よりも必要以上のインクを吐出することによって、フラッシングが不要になったにもかかわらず、本来印刷を制限されるべきである省電力モード中に必要以上に印刷されてしまうことを低減できる。
【0071】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0072】
(1)上記実施形態では、実行条件が成立したとき、印刷すべき画像がある場合は、フラッシングの替わりに画像を印刷する場合を例に説明したが、フラッシングの替わりに画像を印刷するか否かをユーザが選択できるようにしてもよい。
【0073】
(2)上記実施形態では、省電力モード中である場合に、実行条件が成立したとき、印刷すべき画像がある場合は、フラッシングの替わりに画像を印刷する場合を例に説明したが、通常モードのときも、実行条件が成立したとき、印刷すべき画像がある場合は、フラッシングの替わりに画像を印刷するようにしてもよい。
【0074】
(3)上記実施形態では印刷すべき画像があっても印刷しない印刷制限モードとして省電力モードを例に説明したが、印刷制限モードは省電力モード以外であってもよい。
例えば、印刷制限モードは、印刷するシート3の枚数や印刷に用いるインクの量に管理者が上限を設定できるようにし、その上限に達した場合は印刷すべき画像があっても印刷しない印刷禁止モードであってもよい。
【0075】
(4)上記実施形態では複数色のインクを用いて画像を印刷するカラープリンタを例に説明したが、例えば黒のインクのみを用いて印刷するモノクロプリンタであってもよい。
【0076】
(5)上記実施形態ではS313においてフラッシング量Qがフラッシングによって吐出すべき量に達していない色があると判断された場合はS301に戻って再度フラッシングを実行するが、フラッシングによって吐出すべき量に達しない色についてのみ、フラッシングによって吐出すべき量に足りない分のインクをS310での印刷の前にフラッシングによって吐出してもよい。あるいは、S310での印刷の前と印刷の後とに分けて吐出してもよい。
【0077】
(6)上記実施形態では判断部、及び制御部の一例としてCPUを備える制御部10を例に説明したが、判断部、及び制御部はASICによって実現されてもよい。また、判断部、及び制御部はそれぞれ互いに異なるCPUあるいはASICによって実現されてもよい。
【0078】
(7)上記実施形態ではフラッシングの替わりに画像を印刷する場合に印刷保留画像及び送信保留画像の中から印刷する画像を選択する場合を例に説明したが、通常モード時にユーザが特定の画像をフラッシングの替わりに印刷する画像として選択するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1・・・プリンタ、3・・・シート、10・・・制御部、11・・・印刷部、12・・・操作部、13・・・記憶部、14・・・インタフェース部、15・・・電源部、16・・・バッテリー、21・・・記録ヘッド、22・・・記録ヘッド搬送部、23・・・キャップ、24・・・ガイドロッド、25・・・駆動ローラ、26・・・従動ローラ、27・・・タイミングベルト、28・・・ステッピングモータ、29・・・インク吸収材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからインクを吐出してシートに画像を印刷する印刷部と、
フラッシングの実行条件が成立したか否かを判断する判断部と、
前記判断部によって前記実行条件が成立したと判断されると、印刷すべき画像がない場合は前記印刷部に前記フラッシングを実行させ、印刷すべき画像がある場合は、前記フラッシングの替わりに、前記印刷部にその画像を印刷させる制御部と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
当該印刷装置の動作モードには、印刷すべき画像がある場合はその画像を印刷する通常モードと、印刷すべき画像があっても印刷しない印刷制限モードとがあり、
前記制御部は、前記印刷制限モード中であっても、前記判断部によって前記実行条件が成立したと判断されたとき、印刷すべき画像がある場合は、前記フラッシングの替わりに、前記印刷部にその画像を印刷させる、印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記印刷制限モードは、前記通常モードに比べて前記印刷部に供給する電力が少ない省電力モードであり、
前記制御部は、前記省電力モード中であっても、前記判断部によって前記実行条件が成立したと判断されたとき、印刷すべき画像がある場合は、前記省電力モードより多い電力を前記印刷部に供給して前記印刷部にその画像を印刷させる、印刷装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の印刷装置であって、
前記印刷部は複数色のインクを用いて画像を印刷するものであり、
前記制御部は、前記判断部によって前記実行条件が成立したと判断されたとき、印刷すべき1以上の画像の中に、前記複数色のインクのうち前記フラッシングが実行されるべきインクが印刷に用いられる画像がある場合は、当該画像を前記印刷部に印刷させる、印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、印刷すべき1以上の画像の中に、前記複数色のインクのうち前記フラッシングが実行されるべきインクのみが印刷に用いられる画像がある場合は、当該画像を前記印刷部に印刷させる、印刷装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、印刷すべき1以上の画像の中に、前記複数色のインクのうち前記フラッシングが実行されるべきインクが印刷に用いられる画像がない場合は、前記印刷部に画像を印刷させず、前記フラッシングを実行させる、印刷装置。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記判断部によって前記実行条件が成立したと判断されたとき、印刷すべき画像が複数ある場合は、各前記画像についてその画像の印刷に用いられるインクの量を判断し、印刷に用いられるインクの量が前記フラッシングによって吐出すべき量に最も近い画像を印刷させる、印刷装置。
【請求項8】
請求項2乃至請求項7のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記フラッシングの替わりに画像を印刷させた場合に、その印刷に用いたインクの量が前記フラッシングによって吐出すべき量に満たない場合は、その印刷の前、及び/又は、その印刷の後に前記フラッシングを実行させる、印刷装置。
【請求項9】
請求項2乃至請求項8のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記フラッシングの替わりに画像を印刷させる場合に、その印刷に用いるインクの量が前記フラッシングによって吐出すべき量を超える場合は、その印刷を中断させる、印刷装置。
【請求項10】
請求項2乃至請求項9のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記フラッシングの替わりに画像を印刷させるか否かをユーザに選択させる選択部を備え、
前記制御部は、前記判断部によって前記実行条件が成立したと判断されたとき、印刷すべき画像があり、且つ、前記選択部によって画像を印刷させるよう選択されている場合は、前記フラッシングの替わりに、前記印刷部にその画像を印刷させる、印刷装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−28067(P2013−28067A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165513(P2011−165513)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】