説明

卵の処理装置

【課題】 何らかのトラブルが発生した場合でも装置全体を停止させることなく効率的な処理を行なうことができ、また、例えば、下流側の処理工程で段取り変更を行なう必要が生じた場合でも、操業を継続しながら段取り変更も実施することのできる卵の処理装置を提供する。
【解決手段】 制御手段40は、一部の分配コンベアへ卵Eを移載させず、卵Eを移載させるべき残りの他の分配コンベアが複数の場合、搬送されてくる各バケットBを無端搬送コンベア20の搬送方向最上流側の移載手段から順に下流側の移載手段に割り付け、最下流側の移載手段に割り付けられたバケットBの直後のバケットBを、再び最上流側の移載手段に割り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵の処理装置に関するものであり、さらに詳しくは、例えば、何らかのトラブルが発生した場合や、また、例えば、下流側の処理工程で段取り変更の必要が生じた場合であっても装置全体を停止させることなく効率的な処理を行なうことができる卵の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所定のコンベアにより一列12個を一単位として卵を所定方向に搬送し、前記所定のコンベアの排出端において移し替え機により前記12個の卵を受け取るとともに、略平行に配置された単列の2基の分配コンベアへ交互に振り分けて移載し、前記各分配コンベアへ交互に移載された卵を、当該各分配コンベアにより充填本体部に送り込む卵の処理装置は公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−205707号公報(第2−3頁、第11図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載されている卵の処理装置においては、次のような問題があった。すなわち、前記卵の処理装置には、2基の分配コンベアが設けられている。ところが、前記2基の分配コンベアは1つの駆動機構により駆動されている。
【0005】
そのため、2つの分配コンベアのうち、いずれか一方の分配コンベアに何らかのトラブルが発生した場合には、トラブルの発生していない他方の分配コンベアも停止せざるを得なくなる。
【0006】
特に、鶏舎と処理装置が直結している、いわゆるインライン方式の卵の処理形態においては、分配コンベアが停止することは装置全体が停止することを意味し、卵の処理装置の処理能力が著しく損なわれてしまい、卵の選別、充填等の処理を効率的に行なうことができなかった。
【0007】
他方、前記特許文献1に記載されている卵の処理装置は、所定のコンベアにより一列12個を一単位として搬送されてくる卵を、1基の移し替え機により2基の分配コンベアへ交互に振り分けて各分配コンベアへ移載する構成である。
【0008】
例えば、前記卵の処理装置の充填本体部のうち、Mサイズの卵を選別集合させる一の充填本体部において、一方の分配コンベアから前記一の充填本体部へ選別放出されるMサイズの卵を詰める包装容器のみを他の包装容器に変更するという段取り変更が生じることが想定される。しかしながら、前記卵の処理装置においては、当該充填本体部に卵が送り込まれないよう、それに対応する一方の分配コンベアのみに卵の移載させないようにすることは機構上困難であり、上述の段取り変更時には装置全体を停止せざるを得なかった。
【0009】
したがって、本発明は、前記問題点を解決することを課題としてなされたものであり、その目的とするところは、何らかのトラブルが発生した場合でも装置全体を停止させることなく効率的な処理を行なうことができ、また、例えば、下流側の処理工程で段取り変更を行なう必要が生じた場合でも、操業を継続しながら段取り変更も実施することのできる卵の処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の卵の処理装置における発明では、卵を鉛直に収容し、搬送幅方向にN個の収容座を有するバケットが搬送方向に多数設けられている無端搬送コンベアと、前記無端搬送コンベアの搬送経路の所定位置の下方に無端搬送コンベアの搬送方向と直交する方向に配置され、単列状に収容座が形成されている単列コンベアと、1列N個を一単位として各バケット内の卵を下方の単列コンベアへ移載する移載手段とを含む卵の処理装置であって、前記単列コンベアは、互いに平行となるよう複数配置され、前記移載手段は、無端搬送コンベアの搬送方向に沿って、各単列コンベアに対応して複数設けられており、さらに、前記複数の単列コンベアに対応する各移載手段について、順次搬送されてくるバケットのうち、いずれのバケット内の卵を対応する単列コンベアに移載するかの割り付けを行なう制御手段を備え、前記制御手段は、前記複数の単列コンベアのうち、一部の単列コンベアへ卵を移載させない場合、無端搬送コンベアにより搬送されてくる各バケット内の卵を残りの単列コンベアへ移載させるべく、前記残りの単列コンベアに対応する各移載手段について、順次搬送されてくるバケットの前記割り付けを変更することを特徴としたものである。
【0011】
請求項2に記載の卵の処理装置における発明では、請求項1に記載の発明において、前記制御手段は、一部の単列コンベアへ卵を移載させず、卵を移載させるべき残りの単列コンベアが複数の場合、搬送されてくる各バケットを無端搬送コンベアの搬送方向最上流側の移載手段から順に下流側の移載手段に割り付け、最下流側の移載手段に割り付けられたバケットの直後のバケットを、再び最上流側の移載手段に割り付けることを特徴としたものである。
【0012】
請求項3に記載の卵の処理装置における発明では、請求項1に記載の発明において、前記制御手段は、一部の単列コンベアへ卵を移載させず、卵を移載させるべき残りの単列コンベアが複数の場合、搬送されてくる各バケットを無端搬送コンベアの搬送方向最下流側の移載手段から順に上流側の移載手段に割り付け、最上流側の移載手段に割り付けられたバケットの直後のバケットを、再び最下流側の移載手段に割り付けることを特徴としたものである。
【0013】
請求項4に記載の卵の処理装置における発明では、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明において、前記制御手段は、前記無端搬送コンベアの単位時間当たりの搬送処理能力Q1と、前記残りの単列コンベアの単位時間当たりの搬送処理能力の合計Q2との関係がQ1≦Q2となるように、前記無端搬送コンベアおよび前記単列コンベアの少なくとも一方の駆動源を制御することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかる卵の処理装置は、何らかのトラブルにより複数台の分配コンベアのうち、いずれかの分配コンベアを停止させる必要がある場合にも、残りの分配コンベアを停止させる必要はなく、その残りの分配コンベアで充填本体部等の処理工程へ送り込むことができ、卵の選別、充填等の処理を継続することができる。また、例えば、下流側の処理工程で段取り変更を行なう必要が生じた場合でも、操業を継続しながら段取り変更も実施することができる。その結果、卵の選別、充填等の処理能力が低下するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態として、卵の処理装置Tについて添付図面に従って説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態にかかる卵の処理装置Tの概略平面図を示している。図1に示すように、この卵の処理装置Tは、大略、所定のコンベア10の排出端近傍に配置されるとともに、当該所定のコンベア10の搬送方向(Y方向)と同一方向に配置された無端搬送コンベア20と、前記無端搬送コンベア20の搬送方向と直交する方向に設けられるとともに、当該無端搬送コンベア20から移し替えられた卵Eを単列状態でX方向に搬送する複数の分配コンベア31〜34と、前記各分配コンベア31〜34により搬送されて放出される卵Eを性状区分毎、例えば、重量区分毎に選別集合させる選別集合部(図示せず)とから構成されている。
【0017】
前記所定のコンベア10は、卵Eを単位時間当たり例えば、12万卵搬送することのできる搬送処理能力を有し、卵Eの長軸を水平にして例えば、1列12個を一単位としてY方向に搬送する。また、前記所定のコンベア10の搬送経路の途中には、個々の卵Eの重量を測定するロードセル等の計量器11が備えられており、搬送中の卵Eが当該計量器11の上皿(図示せず)上を通過することで当該卵Eの重量データが後述する制御手段40に出力される仕組みになっている。この所定のコンベア10の構成については、例えば、本出願人が特願2006−250801号(未公開)にて提案している技術を採用することができる。
【0018】
前記無端搬送コンベア20は、搬送方向の前後に配置された左右一対のスプロケットと、前記スプロケットに巻回されるエンドレスチェーン(共に図示せず)と、前記エンドレスチェーンに所定ピッチで多数搭載されているとともに、卵Eの長軸を鉛直にして収容する12個の卵収容座が搬送幅方向にそれぞれ摺動自在に取り付けられているバケットBと、前記バケットBがY方向に搬送される過程で当該バケットBの卵収容座ピッチを狭める規制板25と、無端搬送コンベア20の搬送経路の所定の移載位置21〜24において、前記バケットBから後述する分配コンベア31〜34へ卵Eを移載させる移載手段21a〜24aとから構成されている。また、前記無端搬送コンベア20は、卵Eを単位時間当たり例えば、12万卵搬送することのできる搬送処理能力を有している。
【0019】
上述の構成により、前記無端搬送コンベア20は次のように機能する。所定のコンベア10から1列12個を一単位として排出される卵Eを、循環搬送により順次送られてくるバケットBの卵収容座内に長軸を鉛直にして受け取るとともに、Y方向に搬送する。そして、卵Eを収容した前記バケットBがY方向に搬送される過程で、規制板25により当該バケットBの卵収容座ピッチが後述する分配コンベア31〜34の卵収容座ピッチと同ピッチに狭められるとともに、無端搬送コンベア20の搬送経路の所定の移載位置21〜24において、移載手段21a〜24aによりバケットBに収容されている12個の卵Eが、その直下に配置された分配コンベア31〜34に一括移載される。
【0020】
なお、図1に示す無端搬送コンベア20は、当該無端搬送コンベア20に設けられているバケットBを一部省略して示している。また、図中の符号50は、前記所定のコンベア10および無端搬送コンベア20の共通の駆動機構であり、制御手段40から出力される制御信号に基づいて前記所定のコンベア10および無端搬送コンベア20の駆動が制御される。
【0021】
前記バケットBは、卵Eの受け取り時に12個の卵収容座を閉じて当該卵Eの長軸を鉛直にして保持し、卵Eの移載時に12個の卵収容座を開いて当該卵Eを下方に放出するよう構成されている。また、前記バケットBの各卵収容座は、搬送幅方向にそれぞれ摺動自在に取り付けられている。このバケットBの構成については、例えば、本出願人が特願2006−356817号(未公開)の実施例で説明している「卵移送ユニット」を用いることができる。
【0022】
また、前記無端搬送コンベア20に多数(偶数個)搭載されているバケットBのそれぞれには、例えば、B−1からB−nの符号が付されている。さらに、循環搬送する各バケットB−1〜B−nの位置情報は、前記一のシャフト(図示せず)の先端部に設けられたエンコーダ60から発信されるパルス信号を後述する制御手段40が受信し、当該制御手段40内のCPU(図示せず)によりリアルタイムで監視される仕組みになっている。
【0023】
図1に示すように、前記無端搬送コンベア20の一方の側端部(紙面に向かって右側の端部)には、前記バケットBが搬送方向(Y方向)に搬送されるに従って、バケットBを、当該無端搬送コンベア20の他方の側端部(紙面に向かって左側の端部)に寄せながら当該バケットBの卵収容座ピッチを狭めさせる略三角形状の規制板25が設けられている。
【0024】
上述の構成により、バケットBが搬送方向(Y方向)に搬送されるに従って、当該バケットBの一方の端部が前記規制板25の斜辺に当接しながらY方向に進む結果、バケットBが無端搬送コンベア20の他方の側端部、すなわち、分配コンベア31〜34の搬送方向(X方向)とは反対方向に寄せられて前記バケットBの卵収容座ピッチが76.2mmから後述する分配コンベア31〜34の卵収容座ピッチと同ピッチである57.15mmに狭められる。
【0025】
また、エンドレスチェーン(図示せず)の復路の所定位置(前記規制板25が配置されているほぼ直下の位置)には、前記57.15mmに狭められていた卵収容座ピッチを初期のピッチ76.2mmに戻すための要素(図示せず)が設けられている。
【0026】
前記移載手段21a〜24aについて説明する。前記移載手段21a〜24aの機械的な構成としては、例えば、本出願人が特願2006−356817号(未公開)の実施例で説明している「加速兼放出手段」を用いることが好ましい。
【0027】
これによると、無端搬送コンベア20の他方の側端部に寄せられたバケットBと、当該無端搬送コンベア20の一方の側端部とで形成されるスペースが移載手段21a〜24aの作動に利用される。すなわち、各移載手段21a〜24aは、前記スペース内で卵Eが収容されているバケットBを、無端搬送コンベア20の一方の側端部側に加速させるとともに、各分配コンベア31〜34の搬送速度と同期させるよう作動するので、各分配コンベア31〜34の高速化にも対応することができる。
【0028】
次に、前記移載手段21a〜24aの作動制御を中心に説明する。図1に示すように、前記移載手段21a〜24aは、後述する制御手段40と電気的に接続されており、制御手段40から出力される制御信号に基づいて順次送られてくるバケットBの卵収容座を開放するよう制御する。
【0029】
具体的に説明すると、図1に示すように、バケットB−1が無端搬送コンベア20の移載位置21、すなわち、分配コンベア31の直上手前に到来すると、制御手段40が移載手段21aに制御信号を出力し、前記移載手段21aがその制御信号に基づいて当該バケットB−1の卵収容座を開くよう制御する。バケットB−2が無端搬送コンベア20の移載位置22、すなわち、分配コンベア32の直上手前に到来すると、制御手段40が移載手段22aに制御信号を出力し、前記移載手段22aがその制御信号に基づいて当該バケットB−2の卵収容座を開くよう制御する。
【0030】
同様に、バケットB−3が無端搬送コンベア20の移載位置23、すなわち、分配コンベア33の直上手前に到来すると、制御手段40が移載手段23aに制御信号を出力し、前記移載手段23aがその制御信号に基づいて当該バケットB−3の卵収容座を開くよう制御する。バケットB−4が無端搬送コンベア20の移載位置24、すなわち、分配コンベア34の直上手前に到来すると、制御手段40が移載手段24aに制御信号を出力し、前記移載手段24aがその制御信号に基づいて当該バケットB−4の卵収容座を開くよう制御する。
【0031】
バケットB−5が無端搬送コンベア20の移載位置21、すなわち、分配コンベア31の直上手前に到来すると、制御手段40が移載手段21aに制御信号を出力し、前記移載手段21aがその制御信号に基づいて当該バケットB−5の卵収容座を開くよう制御する。バケットB−6が無端搬送コンベア20の移載位置22、すなわち、分配コンベア32の直上手前に到来すると、制御手段40が移載手段22aに制御信号を出力し、前記移載手段22aがその制御信号に基づいて当該バケットB−6の卵収容座を開くよう制御する。
【0032】
バケットB−7が無端搬送コンベア20の移載位置23、すなわち、分配コンベア33の直上手前に到来すると、制御手段40が移載手段23aに制御信号を出力し、前記移載手段23aがその制御信号に基づいて当該バケットB−7の卵収容座を開くよう制御する。バケットB−8が無端搬送コンベア20の移載位置24、すなわち、分配コンベア34の直上手前に到来すると、制御手段40が移載手段24aに制御信号を出力し、前記移載手段24aがその制御信号に基づいて当該バケットB−8の卵収容座を開くよう制御する。
【0033】
以下、同様に、バケットB−9は移載手段21aにより卵収容座を開くよう制御され、バケットB−10は移載手段22aにより卵収容座を開くよう制御され、バケットB−11は移載手段23aにより卵収容座を開くよう制御され、バケットB−12は移載手段24aにより卵収容座を開くよう制御される(バケットB−9〜B−12は図示せず。)。
【0034】
このように、無端搬送コンベア20循環搬送により順次送られてくる一のバケットBが当該無端搬送コンベア20の移載位置21、すなわち、分配コンベア31の直上手前に到来すると、移載手段21aにより開放制御され、前記一のバケットBの直後に位置している他の一のバケットBが無端搬送コンベア20の移載位置22、すなわち、分配コンベア32の直上手前に到来すると、移載手段22aにより開放制御される。前記他の一のバケットBの直後に位置しているさらに他の一のバケットBが無端搬送コンベア20の移載位置23、すなわち、分配コンベア33の直上手前に到来すると、移載手段23aにより開放制御され、前記さらに他の一のバケットBの直後に位置している他の一のバケットBが無端搬送コンベア20の移載位置24、すなわち、分配コンベア34の直上手前に到来すると、移載手段24aにより開放制御されるようになっている。
【0035】
前記分配コンベア31〜34について説明する。図1に示すように、各分配コンベア31〜34は、前記所定のコンベア10および無端搬送コンベア20の搬送方向(Y方向)と直交する方向に配置されているとともに、各分配コンベア31〜34は、無端搬送コンベア20の往路の下方に互いに平行に配置されている。
【0036】
すなわち、分配コンベア31は、前記無端搬送コンベア20の移載位置21の直下に配置されており、分配コンベア32は、前記無端搬送コンベア20の移載位置22の直下に配置されており、分配コンベア33は、前記無端搬送コンベア20の移載位置23の直下に配置されており、分配コンベア34は、前記無端搬送コンベア20の移載位置24の直下に配置されている。
【0037】
前記各分配コンベア31〜34には、卵Eを1個ずつ収容するカップ(図示せず)が例えば、57.15mmピッチで単列状に形成されている。
【0038】
図1に示すように、各分配コンベア31〜34には、それぞれ駆動機構31a〜34aが設けられており、制御手段40から出力される制御信号に基づいて各分配コンベア31〜34の駆動が制御される。また、各分配コンベア31〜34は、卵Eを単位時間当たり例えば、4万卵搬送することのできる搬送処理能力を有している。通常操業時は、単位時間当たり3万卵の搬送処理能力に基づく搬送速度で制御されるようになっている。これにより、前記所定のコンベア10、無端搬送コンベア20により単位時間当たり12万卵で送られてくる卵Eが、4機の分配コンベア31〜34に移載されて選別集合部(図示せず)に搬送されることになる。
【0039】
また、前記各分配コンベア31〜34は、一の分配コンベアが何らかのトラブル(例えば、駆動機構の過負荷等)により停止した際に、トリップ信号を制御手段40に出力する仕組みになっている。
【0040】
次に、前記制御手段40について説明する。制御手段40は、主にCPU、記憶手段等のハードウェア部分と、卵の処理装置Tの作動プログラム等のソフトウェア部分とで構成されている。
【0041】
前記制御手段40の特徴的な機能について説明する。前記制御手段40は、前述のエンコーダ60から発信されるパルス信号を受信して循環搬送するバケットB−1〜B−nの位置情報を監視する。
【0042】
そして、バケットB−1が無端搬送コンベア20の移載位置21、すなわち、分配コンベア31の直上手前に到来すると、制御手段40が移載手段21aに制御信号を出力し、前記移載手段21aがその制御信号に基づいて当該バケットB−1の卵収容座を開くよう制御する。バケットB−2が無端搬送コンベア20の移載位置22、すなわち、分配コンベア32の直上手前に到来すると、制御手段40が移載手段22aに制御信号を出力し、前記移載手段22aがその制御信号に基づいて当該バケットB−2の卵収容座を開くよう制御する。
【0043】
同様に、バケットB−3が無端搬送コンベア20の移載位置23、すなわち、分配コンベア33の直上手前に到来すると、制御手段40が移載手段23aに制御信号を出力し、前記移載手段23aがその制御信号に基づいて当該バケットB−3の卵収容座を開くよう制御する。バケットB−4が無端搬送コンベア20の移載位置24、すなわち、分配コンベア34の直上手前に到来すると、制御手段40が移載手段24aに制御信号を出力し、前記移載手段24aがその制御信号に基づいて当該バケットB−4の卵収容座を開くよう制御する。
【0044】
以下、同様に、バケットB−5は移載手段21aにより卵収容座を開くよう制御され、バケットB−6は移載手段22aにより卵収容座を開くよう制御され、バケットB−7は移載手段23aにより卵収容座を開くよう制御され、バケットB−8は移載手段24aにより卵収容座を開くよう制御される。
【0045】
このように、制御手段40は、無端搬送コンベア20の循環搬送により順次送られてくる一のバケットBが当該無端搬送コンベア20の移載位置21、すなわち、分配コンベア31の直上手前に到来すると、移載手段21aを制御して当該一のバケットBの卵収容座を開放させ、前記一のバケットBの直後に位置している他の一のバケットBが、無端搬送コンベア20の移載位置22、分配コンベア32の直上手前に到来すると、移載手段22aを制御して当該他の一のバケットBの卵収容座を開放させるよう割り付けを行なう。
【0046】
さらに、前記制御手段40は、前記他の一のバケットBの直後に位置しているさらに他の一のバケットBが、無端搬送コンベア20の移載位置23、すなわち、分配コンベア33の直上手前に到来すると、移載手段23aを制御して当該さらに他の一のバケットBの卵収容座を開放させ、前記さらに他の一のバケットBの直後に位置している他の一のバケットBが、無端搬送コンベア20の移載位置24、すなわち、分配コンベア34の直上手前に到来すると、移載手段24aを制御して当該一のバケットBの卵収容座を開放させるよう割り付けを行なう。
【0047】
また、前記制御手段40は、分配コンベア31〜34のうち、例えば、分配コンベア32が何らかのトラブル(例えば、駆動機構の過負荷等)により停止した場合、当該分配コンベア32の駆動機構32aから出力されたトリップ信号を受信すると、卵の処理装置T全体を停止させることなく、卵の処理装置Tを構成する各機器を次のように制御する。
【0048】
制御手段40は、先ず、分配コンベア31、分配コンベア33および分配コンベア34にそれぞれ設けられている駆動機構31a、駆動機構33aおよび駆動機構34aに制御信号を出力し、分配コンベア31、分配コンベア33および分配コンベア34のそれぞれを、単位時間当たり4万卵の搬送処理能力に基づく搬送速度となるよう分配コンベア31、33、34を制御する。
【0049】
すなわち、所定のコンベア10および供給コンベア20の単位時間当たりの搬送処理能力Q1と、分配コンベア31、33および34の単位時間当たりの搬送処理能力の合計Q2との関係がQ1≦Q2となるよう(この例ではQ1=Q2)制御する。
【0050】
そして、前記制御手段40は、所定のコンベア10、無端搬送コンベア20から単位時間当たり12万卵で送られてくる卵Eを、それぞれ単位時間当たり4万卵の搬送処理能力に基づく搬送速度に制御された3機の分配コンベア31、33および34に移載させるよう後述するように割り付けを変更して卵Eの処理を続行する。
【0051】
次に、制御手段40は、移載位置22において卵Eを収容しているバケットB、例えば、バケットB−2が放出動作を行なわないよう移載手段22aに対して電気的にインターロックをかける。
【0052】
そして、前記制御手段40は、エンコーダ60から出力されるパルス信号を受信して、本来、移載位置22で放出されるべき前記バケットB−2の位置情報を追尾しながら、当該バケットB−2が移載位置22を通過し、次の直近下流側の移載位置23、すなわち、分配コンベア33の直上手前に到来すると、移載手段23aを制御して当該バケットB−2の卵収容座を開放させるよう制御する。
【0053】
次に、前記制御手段40は、前記バケットB−2の直後に位置しているバケットB−3が無端搬送コンベア20の搬送方向(Y方向)最下流側の移載位置24、すなわち、分配コンベア34の直上手前に到来すると、移載手段24aを制御して当該バケットB−3の卵収容座を開放させるよう制御する。
【0054】
前記制御手段40は、前記バケットB−3の直後に位置しているバケットB−4が無端搬送コンベア20の搬送方向(Y方向)最上流側の移載位置21、すなわち、分配コンベア31の直上手前に到来すると、移載手段21aを制御して当該バケットB−4の卵収容座を開放させるよう制御する。このように、制御手段40は、最下流側の移載位置24で開放制御されたバケットB−3の直後に位置しているバケットB−4を、再び最上流側の移載位置21で卵収容座を開放させるよう制御する。
【0055】
さらに、制御手段40は、前記バケットB−4の直後に位置しているバケットB−5が移載位置22を通過し、前記移載位置22の直近下流側の放出位置23、すなわち、分配コンベア33の直上手前に到来すると、移載手段23aを制御して当該バケットB−5の卵収容座を開放させるよう制御する。以降、分配コンベア32のトラブルが解消されるまで前述の制御を継続する。
【0056】
前記制御手段40は、前記分配コンベア32のトラブルが解消されると、前述の変更された割り付けを初期の割り付けに戻し、移載手段22aに対するインターロックを電気的に解除するとともに、各分配コンベア31〜34を前述の通常操業時の運転状態(単位時間当たり3万卵の搬送処理能力に基づく搬送速度)に復帰させるよう制御する。
【0057】
上述の構成により、卵の処理装置Tは、仮に、4機の分配コンベア31〜34のうち、一の分配コンベアが何らかのトラブルにより停止した場合でも、所定のコンベア10および無端搬送コンベア20の単位時間当たりの搬送処理能力12万卵を維持したまま、当該所定のコンベア10、無端搬送コンベア20から送られてくる卵Eを、それぞれ単位時間当たり4万卵の搬送処理能力に基づく搬送速度に制御された残りの3機の分配コンベアに移載させるよう割り付けを変更して卵Eの処理を続行するので、装置全体を停止させることなく効率的な卵Eの処理を行なうことができる。
【0058】
本実施例では、4機の分配コンベア31〜34のうち、一の分配コンベアが何らかのトラブルにより停止した場合、残りの3機の各分配コンベアを、単位時間当たり4万卵の搬送処理能力に基づく搬送速度となるよう前記各分配コンベアを制御して装置T全体としての単位時間当たりの処理能力12万卵を維持したまま卵Eの処理を続行する例を説明したが、これに限らず、次のように実施してもよい。
【0059】
例えば、4機の分配コンベア31〜34のうち、一の分配コンベアが何らかのトラブルにより停止した場合、残りの3機の各分配コンベアについては、単位時間当たりの搬送処理能力3万卵を維持したままで、前記所定のコンベア10および無端搬送コンベア20の単位時間当たりの搬送処理能力を、9万卵以下に減じるよう所定のコンベア10および無端搬送コンベア20の共通の駆動機構50を制御して卵Eの処理を続行することも可能である。
【0060】
また、仮に、4機の分配コンベア31〜34のうち、2機の分配コンベアが何らかのトラブルにより停止した場合には、残りの2機の各分配コンベアについて、単位時間当たりの搬送処理能力が4万卵となるよう各駆動機構を制御するか、あるいは、各分配コンベアの単位時間当たりの搬送処理能力3万卵を維持したままで、それらを運転条件に応じて適宜制御して卵Eの処理を続行してもよい。
【0061】
つまり、所定のコンベア10および無端搬送コンベア20の単位時間当たりの搬送処理能力Q1と、分配コンベア31、33および34の単位時間当たりの搬送処理能力の合計Q2との関係がQ1≦Q2となるよう制御して卵Eの処理を続行するのである。
【0062】
本実施例では、無端搬送コンベア20の循環搬送により順次送られてくるバケットBのうち、いずれのバケットB内の卵Eを対応する分配コンベア31〜34に移載するかの割り付けを、無端搬送コンベア20の搬送方向(Y方向)最上流側の移載手段21aから順に直近下流側の移載手段22a、23a、24aに割り付ける。
【0063】
そして、4機の分配コンベア31〜34のうち、一部の分配コンベアが停止し、駆動している分配コンベアが複数の場合、前記割り付けを変更し、稼動している移載手段で、無端搬送コンベア20の搬送方向(Y方向)最下流側の一の移載手段に割り付けられた一のバケットBの直後に位置している他の一のバケットBを再び最上流側の他の一の移載手段に割り付ける例を説明した。
【0064】
上述の例に限らず、前記無端搬送コンベア20により順次送られてくる各バケットBを無端搬送コンベア20の搬送方向(Y方向)最下流側の移載手段24aから順に直近上流側の移載手段23a、22a、21aに割り付けるよう設定しておく。
【0065】
そして、4機の分配コンベア31〜34のうち、一部の分配コンベアが停止し、駆動している分配コンベアが複数の場合、前記割り付けを変更し、稼動している移載手段で、無端搬送コンベア20の搬送方向(Y方向)最上流側の一の移載手段に割り付けられた一のバケットBの直後に位置している他の一のバケットBを再び最下流側の他の一の移載手段に割り付けるようにしてもよい。
【0066】
なお、上述した割り付け変更前の、いずれのバケットB内の卵Eを対応する分配コンベア31〜34に移載するかの割り付け設定については、先に述べたように、無端搬送コンベア20の搬送方向(Y方向)最上流側の移載手段21aから順に直近下流側の移載手段22a、23a、24aに割り付ける、あるいは、最下流側の移載手段24aから順に直近上流側の移載手段23a、22a、21aに割り付けてもよいし、各移載手段21a〜24aにランダムに割り付けてもよい。
【0067】
本実施例では、各分配コンベア31〜34に駆動機構31a〜34aを設け、4機の分配コンベア31〜34のうち、一部の分配コンベアが停止し、駆動している複数の分配コンベアで卵Eの処理を続行する例を中心に説明したが、本実施例に限定するものではなく、各分配コンベア31〜34が1機の共通の駆動機構で駆動する構成の卵の処理装置Tであっても本発明を適用することが可能である。
【0068】
例えば、Mサイズの卵Eを選別集合させる一の選別集合部(図示せず)において、分配コンベア31から前記一の選別集合部(図示せず)へ選別放出されるMサイズの卵Eを詰める包装容器のみ他の包装容器に取り替えるという段取り変更の必要が生じる場合がある。
【0069】
このような場合、制御手段40が分配コンベア31へ卵Eが移載されないよう移載手段21aに対して電気的にインターロックをかけるとともに、先に述べた、いずれのバケットB内の卵Eを対応する分配コンベア31〜34に移載するかの「割り付け」を変更することで装置T全体を停止させることなく前記一の選別集合部(図示せず)での段取り変更を実施することが可能となる。
【0070】
さらに、本実施例では、無端搬送コンベア20により搬送される各バケットBが搬送方向(Y方向)へ搬送されるに従って、バケットBの卵収容座ピッチを分配コンベア31〜34の卵収容座ピッチと同ピッチに狭める例を説明したが、例えば、バケットBの卵収容座ピッチと分配コンベア31〜34の卵収容座ピッチとがほぼ等しければ、前記ピッチを変更する手段は必須の構成要素ではない。
【0071】
今回、開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は、上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明にかかる卵の処理装置Tを説明する概略平面図である。
【符号の説明】
【0073】
10 所定のコンベア、20 無端搬送コンベア、21〜24 移載位置、21a〜24a 移載手段、31〜34 分配コンベア、31a〜34a 駆動機構、40 制御手段、50 共通の駆動機構、60 エンコーダ、B バケット、E 卵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵を鉛直に収容し、搬送幅方向にN個の収容座を有するバケットが搬送方向に多数設けられている無端搬送コンベアと、
前記無端搬送コンベアの搬送経路の所定位置の下方に無端搬送コンベアの搬送方向と直交する方向に配置され、単列状に収容座が形成されている単列コンベアと、
1列N個を一単位として各バケット内の卵を下方の単列コンベアへ移載する移載手段とを含む卵の処理装置であって、
前記単列コンベアは、互いに平行となるよう複数配置され、
前記移載手段は、無端搬送コンベアの搬送方向に沿って、各単列コンベアに対応して複数設けられており、
さらに、前記複数の単列コンベアに対応する各移載手段について、順次搬送されてくるバケットのうち、いずれのバケット内の卵を対応する単列コンベアに移載するかの割り付けを行なう制御手段を備え、
前記制御手段は、前記複数の単列コンベアのうち、一部の単列コンベアへ卵を移載させない場合、無端搬送コンベアにより搬送されてくる各バケット内の卵を残りの単列コンベアへ移載させるべく、前記残りの単列コンベアに対応する各移載手段について、順次搬送されてくるバケットの前記割り付けを変更することを特徴とする卵の処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、一部の単列コンベアへ卵を移載させず、卵を移載させるべき残りの単列コンベアが複数の場合、
搬送されてくる各バケットを無端搬送コンベアの搬送方向最上流側の移載手段から順に下流側の移載手段に割り付け、
最下流側の移載手段に割り付けられたバケットの直後のバケットを、再び最上流側の移載手段に割り付けることを特徴とする請求項1に記載の卵の処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、一部の単列コンベアへ卵を移載させず、卵を移載させるべき残りの単列コンベアが複数の場合、
搬送されてくる各バケットを無端搬送コンベアの搬送方向最下流側の移載手段から順に上流側の移載手段に割り付け、
最上流側の移載手段に割り付けられたバケットの直後のバケットを、再び最下流側の移載手段に割り付けることを特徴とする請求項1に記載の卵の処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記無端搬送コンベアの単位時間当たりの搬送処理能力Q1と、
前記残りの単列コンベアの単位時間当たりの搬送処理能力の合計Q2との関係がQ1≦Q2となるように、前記無端搬送コンベアおよび前記単列コンベアの少なくとも一方の駆動源を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の卵の処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−184307(P2008−184307A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21383(P2007−21383)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(597017812)株式会社ナベル (56)
【Fターム(参考)】