説明

卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するための方法およびそのための組成物

卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するためのスクリーニング方法が提供される。スクリーニング方法は、身体試料における複数のバイオマーカーの発現の検出を含み、バイオマーカーの過剰発現は、卵巣癌を有する可能性が高いことを示す。スクリーニング方法はさらに2段階の解析を含み得る。対象のバイオマーカーとしては、例えば、DNA複製/細胞周期制御、細胞の増殖、アポトーシスからの逸脱、血管新生もしくはリンパ球新生、または、癌細胞の運動性および浸潤の機構における欠陥に関連する遺伝子およびタンパク質が挙げられる。本発明のいくつかの局面において、バイオマーカーの発現は、バイオマーカー特異的な抗体を用いてタンパク質レベルで、または核酸ハイブリダイゼーション技術を用いて核酸レベルで検出される。さらに患者において卵巣癌を検出するための方法が本明細書において開示される。さらに本発明の方法を行うためのキットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、卵巣癌を有する可能性の高い女性を同定するための方法および組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
卵巣癌は、世界規模で女性を冒している雑多な群の疾患に相当する。卵巣癌にはいくつかの形態があり、これらとしては、上皮癌、卵巣の生殖細胞癌、および卵巣基質癌が挙げられる。上皮卵巣癌は、この疾患の最も一般的な形態に相当する。上皮卵巣癌の約5〜10%が、遺伝性の疾患形態に相当し、そして、以下の3つの一般的なパターンが認識されている:卵巣癌のみ;それぞれ、染色体17q21および13q12にあるBRAC1およびBRCA2に関連した卵巣癌および乳癌;ならびに、卵巣癌および結腸癌。卵巣癌についての最も重要な危険因子は、疾患を有する一親等血族(例えば、卵巣癌を有する母親、姉妹、または娘)である。例えば、非特許文献1を参照のこと。2005年には、推定22,000人の卵巣癌の新規症例が診断され、そして、16,000人が卵巣癌により死んでいた。概略的には、American Cancer Societyのウェブサイト(www.cancer.org);National Cancer Instituteのウェブサイト(www.cancer.gov)を参照のこと。卵巣癌は、主に、閉経後の女性を冒す疾患であり、診断時の中央年齢が63歳である。しかし、この疾患は、全ての年齢群の女性を冒し得る。National Cancer Institute Surveillance,Epidemiology,and End 結果s(SEER)Program(www.seer.cancer.gov)。
【0003】
卵巣癌の段階の分類は、卵巣を越えた疾患の拡がりに対する、局在性の程度に基づく。段階1の卵巣癌は、一方または両方の卵巣に限定される。段階2の疾患は、一方または両方の卵巣に腫瘍を含み、骨盤への拡大を伴う。段階3の卵巣癌においては、腫瘍は、一方または両方の卵巣に存在し、骨盤の外側への腹腔内転移および/または局部的なリンパ節転移が顕微鏡により確認される。段階4の卵巣癌は、腹腔を越えた遠隔性の転移により特徴付けられる。卵巣癌は一般に、小さな腫瘍の存在を示す特定の臨床症状がないことから、疾患の進行した段階において診断される。50歳以下の女性について、腫瘍が一方または両方の卵巣に局在するとき、および、疾患の予後が最良であるとき、卵巣癌の40%未満が検出される。50歳以上の女性について、この数値は、15%未満まで落ちる。卵巣癌を罹患した全ての年齢群の女性の約68%が、遠隔性の転移が生じるまで診断されない。概略的には、National Cancer Institute Surveillance,Epidemiology,and End 結果s(SEER)Program(www.seer.cancer.gov)を参照のこと。
【0004】
卵巣癌は、卵巣上皮から腹腔内への局所的な脱殻により拡がり、その後、腹腔への移植性転移と、腸および膀胱への局所的な浸潤が起こる。卵巣癌におけるリンパ節の関与の存在は、診断された卵巣癌の全段階において明白である。陽性のリンパ節の割合は、疾患の進行と共に有意に増加する(すなわち、段階1では24%;段階2では50%、段階3では74%;段階4では73%)。同著。
【0005】
卵巣癌を有する患者の生存は、疾患が診断された段階の関数であり、5年の生存は、疾患の進行と共に減少する。段階1で卵巣癌と診断された女性の90%より多くが、診断後少なくとも5年生存する。疾患が段階4(すなわち、遠隔性の転移)まで診断されないとき、5年生存率は30%未満まで低下する。同著。
【0006】
上皮卵巣癌は、この疾患の最も一般的な形態である。上皮卵巣癌には、4つの主要な組織学的分類が認識されており、これらとしては、重篤、類内膜、明細胞および粘液性のサブタイプが挙げられる。卵巣癌の病理は理解が不十分であるが、卵巣表面上皮から生じるものと考えられる。非特許文献2を参照のこと。卵巣癌の危険性を最大限減らす生活上の要因としては、多産、経口避妊薬の使用および授乳が挙げられ、これらは全て、排卵を防ぐものである。排卵は、上皮に損傷と、その後の修復と、炎症性応答の可能性とをもたらすので、女性の生殖寿命を通してこのプロセスを中断なしに繰り返すことは、細胞の損傷につながり、そして、卵巣癌の危険性を増すようである。例えば、非特許文献3を参照のこと。しかし、卵巣癌には、子宮頚部癌および結腸癌の両方に認められるような、明確に定められた前兆となる病変を経た段階的な進行は認められない。したがって、かなりの研究が、卵巣癌についての分子ベースでの理解と、卵巣癌の種々の組織学的サブタイプ間での基本的な差異を理解することに向けられている。これらの研究は、遺伝子発現解析を利用してこの理解をもたらし、そして、診断用途における評価のための一連の強力なバイオマーカーを同定した。例えば、非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;および非特許文献7を参照のこと。
【0007】
卵巣癌はしばしば、明白な臨床症状の表出、最も特筆すべきは、腹部疼痛、子宮付属器塊、腹部鼓張および尿意促迫の表出により検出される。したがって、卵巣癌の検出は、しばしば、進行した段階で検出され、この進行した段階では、予後および臨床上の結果は乏しい。早期段階(すなわち段階1)での卵巣癌の検出は、標準的な外科手術および化学療法を用いて、約90%の治癒率をもたらす;したがって、処置が最も有効な早期段階において卵巣癌を検出する臨床上の必要性が存在する。残念なことに、早期段階の卵巣癌を検出するための現在のスクリーニング方法は不十分である。卵巣癌のスクリーニングのための現在の実務は、CA125および経膣超音波検査(transvaginal ultrasound)(超音波検査法)を用いる。CA125血清レベルの上昇は、卵巣癌に関連しており、そして、その後の経膣超音波検査の利用は、卵巣癌の存在を検出する助けとなる。卵巣疾患の確認は、側腹切開術のような侵襲性の処置に基づく。しかし、CA125の使用は、限られた感度、限られた特異性、および3%未満の乏しい正の予測価の問題に起因して、一般集団のスクリーニングには役に立たない。非特許文献8。結果として、自覚症状のない患者集団において卵巣癌について広くスクリーニングすることについての勧告には総意はない。National Cancer Instituteのウェブサイト(www.cancer.gov)を参照のこと。危険性の高い患者については、卵巣癌の検出のための広く容認された処置としては、骨盤検査の使用、CA125血清試験の使用および経膣超音波検査(超音波検査法)が挙げられる。非特許文献9。
【0008】
CA125は、上皮細胞表面に通常発現される、十分に特徴付けられた腫瘍マーカーであり、そして、しばしば、正常患者の血清において35U/mLで検出される。CA125の血清レベルの上昇(>35U/mL)は、しばしば、卵巣癌患者の約85%において検出される;卵巣癌患者の残り15%は、CA125の正常な血清レベルを有する。さらに、CA125は、段階1の卵巣癌患者の50%のみにおいて上昇し、それによって、卵巣癌の早期検出における臨床上の有用性を制限している。しかし、CA125の血清レベルの上昇は、治療的介入の後に疾患の再発をモニタリングするために使用され、そして、これは、FDAにより現在承認されているCA125の使用に相当する。さらに、CA125の血清レベルの上昇は、将来的に検出され得る卵巣癌の前兆となる。
【0009】
一般集団における卵巣癌の低い罹患率は、疾患の早期検出を促進するスクリーニング試験の開発にとって、重要な難題をもたらす。卵巣癌のような低い罹患率を有する疾患についてのスクリーニング方法は、しばしば、真の陽性に対する偽陽性の高い割合をもたらし、このようなスクリーニングプログラムの臨床上の有用性を制限する。卵巣癌の可能性についての外科的な調査に関連するかなり大きな危険性を鑑みると、臨床上有用なスクリーニング試験は、実際に卵巣癌を有する全ての女性につき、10以下の女性に手術を行うこと(すなわち、少なくとも10%の正の予測価(PPV))と解釈すべきである。非特許文献10。PPVは、特定の疾患または状態についての罹患率に高度に依存し、そして、疾患の罹患率における差異の結果として劇的に変化する。従って、卵巣癌のような罹患率の低い疾患では、比較的低いPPVのスクリーニング診断試験が、有意な臨床上の有用性を有する。強力な卵巣癌スクリーニングプログラムは、卵巣癌の低い罹患率について調節され、そして、バイオマーカーの性能および臨床上の必要性に対して評価されなければならない。例えば、非特許文献10;非特許文献11;および非特許文献12を参照のこと。卵巣癌の検出(特に、早期検出)のためのバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルを同定しようとする試みにもかかわらず、臨床上の必要性を満たす適切なスクリーニング試験または診断試験は現在のところ存在しない。CA125の検出のような現在利用可能な方法は、容認でいない高い偽陽性率を呈する。
【0010】
National Cancer Instituteからの現在の勧告は、「CA125のような血清マーカー、経膣超音波検査または骨盤検査を用いた卵巣癌のスクリーニングは、卵巣癌からの死亡率の減少をもたらすということを確立する証拠は不十分である」と示している(NC/Summary of Evidence(レベル4、5);2005年2月付け)。現在利用可能なスクリーニング技術での偽陽性の深刻な危険性に鑑みて、NCIは、卵巣癌についての一般的なスクリーニング手順の規則を支持していない。したがって、早期の診断が5年生存率を有意に改善するという事実にもかかわらず、卵巣癌についての標準的なスクリーニング試験は存在しない。
【非特許文献1】Patridgeら(1999)CA−A Cancer Journal for Clinicians 49:297−320
【非特許文献2】Bell(2005)Mod.Pathol.18(補遺2):S19−32
【非特許文献3】Nessら(1999)J.Natl.Cancer Inst.91:1459−1467
【非特許文献4】Onoら(2000)Cancer Res.60:5007−11
【非特許文献5】Welshら(2001)Proc.Natl Acad.Sci.USA 98:1176−1181
【非特許文献6】Donningerら(2004)Oncogene 23:8065−8077
【非特許文献7】Leeら(2004)Int.J.Oncol 24(4):847−851
【非特許文献8】Bast(2003)J Clin Oncol.21(第10補遺):200−205
【非特許文献9】Patridgeら(1999)CA−A Cancer Journal for Clinicians 49:297−320
【非特許文献10】Skatesら(2004)J.Clin.Oncol.22:4059−4066
【非特許文献11】Bastら(2005)Int.J.Gynecol.Cancer 15:274−281
【非特許文献12】Rosenら(2005)Gyn.Oncol.99:267−277
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、卵巣癌を有する女性を特異的に同定し得る、信頼性のある方法および組成物に対するかなりの必要性が当該分野において存在する。特に、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するためのスクリーニング方法が必要とされる。卵巣癌を有する可能性が高いとして同定された女性が、現在その疾患を有するかどうかを確実に決定するためのより積極的な診断方法について選択され得る。さらに、このようなスクリーニング方法は、一般的な女性患者集団において、定期ベースで行われて、予後および疾患の結果が最良である疾患の早期段階において卵巣癌を検出することを容易にし得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するためのスクリーニング方法が提供される。本発明の方法は、一般に、患者の身体試料において、卵巣癌において選択的に過剰発現される複数のバイオマーカーの発現を検出する工程を包含する。これらのバイオマーカーの過剰発現はその患者が卵巣癌を有する可能性が高いということを示す。本発明の方法は、例えば、「2段階」の解析を含み得、ここで、第一のアッセイ段階は、第一のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルの発現を検出するために行われる。第一のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルが過剰発現される場合、第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルの発現を検出するために第二のアッセイ段階が行われる。第一および第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルの過剰発現は、その患者が卵巣癌を有する可能性が高いことを示す。第一のアッセイ段階は、「真の陰性」の女性の大部分を排除することによって、再検討中の患者集団を富化するために設計され得る。第二のアッセイ段階は、代表的には、富化した集団からさらに真の陰性の患者を排除することによって、富化された集団において、現在は卵巣癌を有さない患者を除外するために意図される。これらのアッセイ段階は、両方のアッセイ段階を包含する単一の試験として、または、各試験が1つのアッセイ段階を包含する2つの別個の試験として行われ得る。各解析段階において単一のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルを使用して、感度、特異性、負の予測価(NPV)および正の予測価(PPV)について所望の値が達成され得る。別個のアッセイ段階における特定のバイオマーカーを組み合わせて、所望の感度、特異性、NPVおよびPPVを達成するためのアルゴリズムが開発され得る。
【0013】
本発明の他の局面において、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するためのスクリーニング方法は、患者の身体試料において、卵巣癌において選択的に過剰発現される複数のバイオマーカーの過剰発現が評価される、「単1段階」または「1段階」アッセイを行う工程を包含する。これらのバイオマーカーの過剰発現は、その患者が卵巣癌を有する可能性が高いことを示す。上述の2段階のスクリーニング方法とは対照的に、この単1段階のスクリーニングアッセイは、卵巣癌を有する可能性が高い患者を同定するために、特定のバイオマーカーの過剰発現を検出するための第一のアッセイ段階を行った後に、第二のバイオマーカーがまた過剰発現されているかどうかを評価するための第二のアッセイを行う必要がない。
【0014】
本発明のスクリーニング方法によって、卵巣癌を有する可能性が高いとして同定された患者は、その患者が卵巣癌を有するかどうかを確実に決定するために、さらなる診断試験に供され得る。本明細書において開示される方法に従って、卵巣癌を有する可能性が高いとして分類されたが、現在は疾患を有さないと決定された患者は、一般に、卵巣癌の発症について定期ベースでモニタリングされる。さらに、本発明の方法は、一般的な女性患者集団を、定期ベースで卵巣癌についてスクリーニングするために使用され得る。したがって、本発明のスクリーニングほほ得は、予後が有意に良好である疾患のより早い段階での卵巣癌の診断を可能にし得る。本発明のスクリーニング方法を行うためのキットもまた提供される。
【0015】
バイオマーカーの発現は、タンパク質レベルまたは核酸レベルで評価され得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現は、バイオマーカー特異的な抗体を用いて、タンパク質レベルで検出される。本発明のバイオマーカーの発現はまた、核酸ベースの技術(例えば、ハイブリダイゼーションおよびRT−PCRが挙げられる)によっても検出され得る。バイオマーカーの発現は、種々の身体試料において評価され得、その身体試料としては、血液(全血、血清、血小板を除去した血液など)、リンパ液、腹水、尿、婦人科学液(例えば、卵巣分泌物、卵管分泌物および子宮分泌物、経血など)、生検、および腹腔鏡検査の間に得られる流体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0016】
患者において卵巣癌を診断するための方法もまた、本発明によって包含される。この診断方法は、一般に、身体試料において、卵巣癌において選択的に過剰発現される複数のバイオマーカーの発現を検出する工程を包含する。複数のバイオマーカーの過剰発現は、卵巣癌の存在を示す。本発明の診断方法を行うためのキットもまた提供される。
【0017】
患者において卵巣癌についての特定の治療の効率を評価するための方法もまた本明細書において開示される。本発明はさらに、患者において卵巣癌の退行または進行をモニタリングするための方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、卵巣癌を有する患者を同定するためのスクリーニング方法および組成物を提供する。スクリーニング方法は、一般に、患者からの身体試料(具体的には、血液試料、より具体的には、血清試料)において複数のバイオマーカーの発現を検出する工程を包含する。本発明の実施において使用されるバイオマーカーの過剰発現は、卵巣癌の存在の可能性が高いことを示す。本発明の特定のスクリーニング方法において、卵巣癌を有する可能性が高い患者を同定するために2段階解析が用いられる。第一のアッセイ段階は、患者の身体試料において第一のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルの発現を検出するために行われる。第一のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルが試料中で過剰発現していると決定される場合、第二のアッセイ段階が、第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルの発現を検出するために行われる。第一および第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルの過剰発現は、その患者が卵巣癌を有する可能性が高いことを示す。特定の実施形態において、バイオマーカータンパク質の発現を検出するために抗体が使用される。本発明の他の局面において、バイオマーカーの発現が検出されるとき、解析されるバイオマーカーのサブセットのみの過剰発現が、その患者が卵巣癌を有する可能性が高いことを示すに十分であり得る。
【0019】
本発明は、特定の機構に制限されないが、第一のアッセイ段階は、一般に、さらなる試験から、多数の真の陰性を排除することによって、真の陽性の患者集団を富化する(すなわち、割合ベースで)ように設計される。第一のアッセイ段階は、真の陽性患者集団の所望される富化を達成するために、より高い感度および負の予測価(NPV)を用い得る。第二のアッセイ段階は、代表的に、富化された集団において現在は卵巣癌を有さない患者を除外するため、すなわち、富化された集団からさらに真の陰性を排除することが意図される。第二のアッセイ段階は、真の陽性患者の富化された集団から、さらに陰性を排除するために、適度な感度は維持したまま、より高い特異性および正の予測価(PPV)を用い得る。2段階スクリーニング試験の概念図とこの方法を用いて得られ得る結果を図1に提供する。
【0020】
当業者は、これらのアッセイ段階が、両方のアッセイ段階を包含する単一のスクリーニング試験として、または、各試験が1つのアッセイ段階を包含する2つの別個の試験として行われ得ることを認識する。感度、特異性、NPVおよびPPVについて所望の値を達成するために、単一のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルが、各アッセイ段階において使用され得る。各アッセイ段階および両方のアッセイ段階を含む組み合わせのスクリーニング試験について所望の感度、特異性、NPVおよびPPVを達成するために、特定のバイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせを選択するために、アルゴリズムが開発され得る。
【0021】
本明細書において上述される2段階解析に加え、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するためのスクリーニング方法は、「1段階」または「2段階」のスクリーニング方法またはアッセイを行う工程を包含し、ここで、患者の身体試料における、卵巣癌において選択的に過剰発現される複数のバイオマーカーの発現が評価される。少なくとも1つのバイオマーカーの過剰発現は、その患者が卵巣癌を有する可能性が高いことを示す。本発明の特定の局面において、単1段階または1段階のスクリーニング方法は、身体試料において、複数のバイオマーカー(例えば、HE4、CA125、グリコデリン(glycodelin)、MMP−7、Muc−1、PAI−1、CTHRC1、インヒビンA、PLAU−R、プロラクチン、KLK−10、KLK−6、SLPIおよびα−1アンチトリプシンが挙げられる)の発現を検出する工程を包含し、ここで、少なくとも1つ、具体的には2つ、より具体的には3つのバイオマーカーの過剰発現は、卵巣癌を有する可能性が高いことを示す。本発明の単1段階スクリーニング方法の特定の実施形態において、グリコデン、HE4およびCA125の発現が評価され、そして、これらのバイオマーカーのうちの少なくとも1つ、2つまたは3つの過剰発現は、卵巣癌を有する可能性が高いことを示す。例えば、表54および実施例4を参照のこと。当業者は、上述の2段階スクリーニング方法とは対照的に、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するために、単1段階のスクリーニングアッセイが、特定のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルの過剰発現を検出するために第一のアッセイ段階を行った後に、第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルもまた過剰発現されているかどうかを評価するために第二のアッセイ段階を行うことを必要としないことを理解する。したがって、「真の陽性」の患者について集団を富化するための第一のアッセイ段階と、この富化された集団から実際には卵巣癌を有さない患者(「偽陽性」)を除外するための第二のアッセイ段階とは、本明細書中に記載される単1段階のスクリーニング方法においては必要とされない。
【0022】
「過剰発現」を構成するに十分な特定のバイオマーカーの発現レベルは、使用される特定のバイオマーカーに依存して変化する。本発明の特定の実施形態において、発現の「閾値レベル」は、特定のバイオマーカーについて確立され、ここで、この値を超える発現レベルは、過剰発現とみなされる。発現の閾値レベルを確立するための種々の統計的方法および数学的方法は当該分野で公知である。特定のバイオマーカーについての閾値発現レベルは、例えば、実施例2および3に記載されるように、受信者動作特性(ROC)プロットからのデータに基づいて、または、正常患者の試料(すなわち、正常な患者集団)からのデータを編集したものに基づいて、選択され得る。例えば、閾値発現レベルは、卵巣癌に冒されていない正常患者からの試料の解析に基づいて、平均発現レベル+2×標準偏差において確立され得る。当業者は、これらの閾値発現レベルが、例えば、感度、特異性、正の予測価(PPV)および負の予測価(NPV)について種々の値を得るために特定のバイオマーカーについてのROCプロットに沿って動かすことによって変えられ得、それによって、アッセイの全体的な性能に影響を及ぼし得ることを理解する。
【0023】
開示される方法に従って卵巣癌を有する可能性が高いとして同定された患者は、その患者が卵巣癌を有するかどうかを確実に決定するためにさらなる診断試験に供され得る。「さらなる診断試験」としては、骨盤検査、経膣超音波検査、CTスキャン、MRI、側腹切開術、腹腔鏡検査および生検が挙げられるがこれらに限定されない。このような診断方法は、当該分野で周知である。さらに、このさらなる診断試験により卵巣癌を有する可能性が高いとして決定されたが、現在は卵巣癌を有さないと分類された患者は、卵巣癌の発症について、定期ベースで密にモニタリングされ得る。このような患者のモニタリングとしては、定期的な骨盤検査、経膣超音波検査、CTスキャンおよびMRIが挙げられ得るがこれらに限定されない。当業者たる医師は、卵巣癌の発症について患者をモニタリングするための適切な技術を理解する。卵巣癌を有する可能性が高い患者を同定し、そしてモニタリングすることによって、本発明のスクリーニング方法は、予後および疾患の結果が大いに改善される、疾患の早期段階(特に、段階1または段階2)での卵巣癌の検出を亜可能にし得る。
【0024】
特定の実施形態において、バイオマーカーの発現をタンパク質レベルで検出するために抗体が使用される。本発明の他の局面においては、バイオマーカーの発現は、核酸レベルで検出される。2段階のスクリーニング方法を含め、本発明のスクリーニング方法を行うためのキットもさらに提供される。
【0025】
「卵巣癌」により、後期予備(post−exploratory)側腹切開術によって、前悪性病理、悪性病理および癌(FIGO段階1〜4)として分類された状態が意図される。卵巣癌の段階分けおよび分類は上に詳細に記載される。「早期段階の卵巣癌」とは、段階1または段階2の癌腫として分類される疾患状態を指す。卵巣癌の早期検出は、5年生存率を有意に増加させる。用語「スクリーニング方法」は、卵巣癌を有する可能性が高い患者を同定し、その結果、このような患者が、その患者が卵巣癌を有するかどうかを確実に決定するためのより積極的な診断方法について選択され得るような戦略をいう。本発明の「スクリーニング方法」または「診断的スクリーニング方法」は、一般に、卵巣癌を有するか、または卵巣癌を有さない患者を確実に診断することは意図されない。むしろ、このような方法は、卵巣癌を有する可能性の高い女性を同定し、その結果、これらの女性が他の方法(例えば、骨盤検査、経膣超音波検査、CTスキャン、MRI、側腹切開術、腹腔鏡検査および組織試料の生検)を用いて確実に診断され得ることが意図される。本発明の方法により卵巣癌を有する可能性が高いとして同定されたが、現在はその疾患を有すると決定されない患者をモニタリングするためのレジメンもまた設けられ得る。
【0026】
本発明のスクリーニング方法は、一件一件ベースで、または、一般の女性集団についての定期的な慣用のスクリーニング試験として行われ得る。いくつかの実施形態において、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するためのスクリーニング方法は、卵巣癌を有する可能性の高い患者の同定のためのPap塗布標本(Pap smear)に匹敵するものとして考えられ得る。本明細書中で使用される場合、「卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定すること」とは、卵巣癌を有する可能性がより高い女性を検出するための方法が意図される。「卵巣癌を有する可能性が高い」とは、本発明の方法に従って、特定のバイオマーカーの過剰発現を示すと決定された患者が、過剰発現を示さない患者よりも卵巣癌を有する可能性が高いことを意味することが意図される。
【0027】
「卵巣癌と診断すること」とは、例えば、卵巣癌の存在を診断もしくは検出すること、疾患の進行をモニタリングすること、そして、卵巣癌の指標となる細胞もしくは試料を同定もしくは検出することを含むことが意図される。用語 卵巣癌の診断、検出、および同定は、本明細書中で交換可能に使用される。卵巣癌の確実な診断は、一般に、患者からの組織試料について生検を行うことを含む。
【0028】
本発明の方法は、当該分野で現在公知の推奨されるスクリーニング方法(例えば、CA125レベルの測定)と比較して、卵巣癌を有する可能性のより優れた評価を可能にする。本明細書中で使用される場合、「特異性」とは、予備的な側腹切開術により非悪性であるとして確認された(すなわち、真の陰性の)試料を、本発明の方法が正確に同定し得るレベルをいう。すなわち、特異性は、試験陰性である、疾患の陰性の割合である。臨床研究において、特異性は、真の陰性の数を、真の陰性と偽陽性の合計で割ることによって計算される。「感度」により、側腹切開術によって卵巣癌について陽性と確認された(すなわち、真の陽性の)試料を、本発明の方法が正確に同定し得るレベルが意図される。したがって、感度は、試験陽性である、疾患の陽性の割合である。感度は、臨床研究において、真の陽性の数を、真の陽性と偽陰性の合計で割ることによって計算される。卵巣癌の検出についての開示される方法の感度は、少なくとも約70%であり、具体的には、少なくとも約80%であり、より具体的には、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上である。さらに、本発明の方法の特異性は、少なくとも約%であり、具体的には、少なくとも約80%であり、より具体的には、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上である。
【0029】
用語「正の予測価」すなわち「PPV」は、本発明の方法において陽性の試験結果を有し、実際に卵巣癌を有する患者の割合をいう。PPVは、臨床研究において、真の陽性の数を、真の陽性と偽陽性の合計で割ることによって計算される。PPVは、特定の疾患または状態についての罹患率に高度に依存し、そして、疾患の有病率における差の結果として劇的にシフトする。したがって、卵巣癌のような有病率が低い疾患では、比較的低いPPVを持つスクリーニング試験がなお臨床上有意な有用性を有する。対照的に、高い罹患率を持つ疾患では、臨床上有用であるためには、より高いPPVを必要とする。例えば、Skates et al.(2004)J.Clin.Oncol.22:4059−4066;Bast et al(2005)Int.J.Gynecol.Cancer 15:274−281;Rosen et al.(2005)Gyn.Oncol.99:267−277;およびPepe(2004)The Statistical Evaluation of Medical Tests for Classification and Prediction(Oxford University Press)を参照のこと(これらは全て、その全体が本明細書中に参考として援用される)。卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定する本発明の方法についてのPPVは、一般に、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、本発明の方法のPPVは、少なくとも約10%である。診断用のスクリーニング方法についての少なくとも約10%のPPVは、当該分野で臨床上有用であるとみなされる。Skates et al,上掲を参照のこと。試験の「負の予測価」すなわち「NPV」は、陰性の試験結果を有し、実際に卵巣癌を有さない患者の割合をいう。NPVは、臨床研究において、真の陰性の数を、真の陰性と偽陰性の合計で割ることによって計算される。卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定する本発明の方法についてのNPVは、一般に、少なくとも約80%であり、具体的には少なくとも約90%であり、より具体的には少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.1%、少なくとも約99.2%、少なくとも約99.3%、少なくとも約99.4%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.6%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、少なくとも約99.9%またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、本発明の方法のNPVは、少なくとも約99%である。当業者は、本発明の方法についてのPPVおよびNPVの値が、有病率で調整された集団に基づくものであり、そして、米国の女性集団内での卵巣癌の罹患率を反映するものであることを理解する。
【0030】
「バイオマーカー」は、正常または健康な細胞または組織における発現レベルと比較して、組織または細胞における発現レベルが変化する、任意の遺伝子またはタンパク質である。本発明のバイオマーカーは、卵巣癌選択的である。「卵巣癌において選択的に過剰発現する」により、その関心のあるバイオマーカーが、卵巣癌においては過剰発現するが、非悪性、良性として分類される状態および臨床上の疾患とみなされない他の状態においては過剰発現しないことが意図される。したがって、本発明のバイオマーカーの検出は、卵巣癌を有する可能性が増加したことまたは卵巣癌の存在を示す試料を、正常試料(すなわち、卵巣癌を有さない患者からの試料)および非悪性および良性の増殖を示す試料と区別することを可能にする。本発明のバイオマーカーは、本明細書中で、「卵巣癌バイオマーカー」、「マーカー」または「卵巣癌マーカー」として交換可能に言及され得る。
【0031】
本発明のバイオマーカーは、遺伝子およびタンパク質を含む。このようなバイオマーカーは、バイオマーカーをコードする核酸配列の全配列もしくは部分配列またはこのような配列の相補体を含むDNAを含む。バイオマーカー核酸はまた、任意の関心のある核酸配列の全配列もしくは部分配列を含むRNAを含む。バイオマーカータンパク質は、本発明のDNAバイオマーカーによってコードされるか、またはこれに対応するタンパク質である。バイオマーカータンパク質は、任意のバイオマーカータンパク質もしくはポリペプチドの全アミノ酸配列もしくは部分アミノ酸配列を含む。バイオマーカー遺伝子およびバイオマーカータンパク質のフラグメントおよび改変体もまた、本発明により企図される。「フラグメント」により、ポリヌクレオチドの一部、またはアミノ酸配列と、したがって、それらによりコードされるタンパク質の一部が意図される。バイオマーカーヌクレオチド配列のフラグメントであるポリヌクレオチドは、一般に、少なくとも10、15、20、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、800、900、1000、1100、1200、1300もしくは1400の連続するヌクレオチド、または、本明細書中に開示される全長バイオマーカーポリヌクレオチド中に存在するヌクレオチド数までのヌクレオチドを含む。バイオマーカーポリヌクレオチドのフラグメントは、一般に、少なくとも15、25、30、50、100、150、200もしくは250の連続するアミノ酸、または、本発明の全長バイオマーカータンパク質中に存在するアミノ酸の総数までのアミノ酸をコードする。「改変体」は、実質的に同様の配列を意味することが意図される。一般に、本発明の特定のバイオマーカーの改変体は、配列アラインメントプログラムにより決定されるとき、そのバイオマーカーに対して、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0032】
本発明のバイオマーカーは、本明細書において上に定義されるように、卵巣癌において選択的に過剰発現する任意の遺伝子またはタンパク質を含み、そして、当該分野で公知のバイオマーカーおよび当該分野で公知ではないバイオマーカーを含み得る。特定の実施形態において、バイオマーカーは、分泌タンパク質、または、膜貫通セグメントおよび細胞外ドメインを有する膜タンパク質をコードすると予測されるタンパク質である。関心のあるバイオマーカーとしては、HE4、CA125、グリコデリン、MMP−7、Muc−1、PAI−1、CTHRC1、インヒビン、PLAU−R、プロラクチン、KLK−10、KLK−6およびSLPI、α−1アンチトリプシン(AAT)、Imp−2、FLJ10546、FLJ23499、MGC13057、SPON1、S100A1、SLC39A4、TACSTD2、MBG2、HETKL27(MAL2)、Cox−1、プロテインキナーゼC−ι、カドヘリン−6、ADPRT、マトリプターゼ(matriptase)、葉酸レセプター(folate receptor)、クラウディン(claudin)4、メゾテリン(mesothelin)、アクアポリン(aquaporin)5、コフィリン(cofilin)1、ゲルソリン、クラステリン(clusterin)、αテトラネクチン、ビトロネクチン、妊娠関連血漿タンパク質A(PAPP−A)、およびフォリスタチン(folistatin)が挙げられる。特に関心のあるバイオマーカーとしては、HE4、CA125、グリコデリン、MMP−7、Muc−1、PAI−1、CTHRC1、インヒビン、PLAU−R、プロラクチン、KLK−10、KLK−6、SLPIおよびα−1 アンチトリプシン(AAT)が挙げられるがこれらに限定されない。より特に関心のあるバイオマーカーとしては、HE4、グリコデリン、MMP−7、SLPI、PLAU−R、Muc−1、インヒビンAおよびPAI−1が挙げられる。
【0033】
HE4は、ヒト精巣上体組織において最初に観察されたタンパク質であり、この「HE4」という名前は、「ヒト精巣上体タンパク質4(Human Epididymis Protein 4)」の略称である。その後の研究から、HE4タンパク質はまた、女性の生殖管および他の上皮組織にも存在することが示されている。HE4遺伝子は、ヒトの染色体20q12−13.1に存在し、そして、20q12染色体領域は、卵巣癌腫において頻繁に増幅されているのが見出されている。研究により、HE4が卵巣癌細胞によって発現されることが示されている。タンパク質は、N末端グリコシル化されており、そして、細胞外に分泌される。例えば、Drapin et al.(2005)Cancer Research 65(6):2162−9;Hellstroem et al.(2003)Cancer Research 63:3695−3700;およびBingle et al.(2002)Oncogene 21:2768−2773を参照のこと。
【0034】
CA−125は、卵巣上皮癌(OEC)を有する患者の大部分の血清中で検出される、高分子量の細胞表面糖タンパク質である。しかし、この疾患の進行した段階においてはその割合は高い(75〜90%)が、これは、段階1の疾患を持つ患者では50%でしか上昇していない。OECについてのマーカーとしてCA−125を用いることは、不確実である。なぜならば、この分子はまた、多数の正常な状態、ならびに、月経、妊娠、子宮内膜症、炎症性疾患および他のタイプの癌を含む病理学的状態においても発現されるからである。閉経後の女性の間で、OECについて改善した感度および特異性が報告されている。例えば、Bast et al.(1998)Int’l J.Biological Markers 13:170−187;およびMoss et al(2005)J.Clin.Pathol.58:308−312を参照のこと。
【0035】
グリコデリンは、主として生殖器軸における細胞の認識および分化において、いくつかの特有の作用を有するリポカリン(lipocalin)スーパーファミリーのメンバーである。以前に、この糖タンパク質は、プロゲステロン関連子宮内膜タンパク質(PAEP)および骨盤タンパク質14(PP−14)と命名されている。この名称変更は、部分的には、グリコデリンが、子宮内膜または骨盤によって合成されないことに起因する。グリコデリンは、SDSゲルにおいて28kDaの分子として羊水から精製され、そして、正常な卵巣によって、および悪性の卵巣腫瘍によって合成されると報告されている。血清においてもその存在が報告されている。一般的には、Seppala et al.(2002)Endocrine Reviews 23:401−430;Pala et al.(1997)J.Chromatography B 704:25−34;Meerit Kamarainen et al.(1996)Amer.J.Pathology 148:1435−1443を参照のこと。
【0036】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーのタンパク質は、胚発生、生殖、および組織の再構築のような正常な生理学的プロセスにおける、ならびに、関節炎および転移のような疾患のプロセスにおける、細胞外マトリックスの分解に関与している。多くのMMPは、細胞外プロテイナーゼにより切断されるときに活性化される、不活性な前タンパク質として分泌される。MMP−7(マトリリシン(matrilysin))遺伝子によりコードされる酵素は、プロテオグリカン、フィブロネクチン、エラスチンおよびカゼインを分解し、そして、保護されたC末端タンパク質ドメインを持たないという点で多くのMMPファミリーと異なる。この酵素は、創傷治癒に関与し、そして、マウスでの研究は、腸粘膜におけるディフェンシンの活性を調節することを示唆している。MMP−7遺伝子は、染色体11q22.3に局在するMMP遺伝子のクラスターの一部である。MMP−7は、正常組織および疾患組織の上皮細胞において発現される。とりわけ、胸部、結腸および前立腺の腫瘍において発現されることが知られる。この遺伝子は、卵巣癌細胞において豊富であるが、正常な卵巣上皮組織においてはIHCによって検出可能ではない。
【0037】
Muc−1(ムチン1、EMA、PEM、エピシアリン(episialin))は、多くの腺および管の上皮細胞、ならびに、いくつかの造血細胞系統によって発現される、大きな細胞表面ムチン糖タンパク質である。機能的には、Muc−1は、細胞の保護および潤滑に関与していると考えられ、そして、細胞接着および/または細胞のシグナル伝達において役割を担い得る。Muc−1遺伝子は、7つのエクソンを含み、いくつかの異なる選択的スプライシング改変体を生成する。Muc−1から発現される主要な形態は、7つ全てのエクソンを使用し、そして、大きな細胞外縦列反復ドメインを持つ1型膜貫通タンパク質である。この縦列反復ドメインは、高度にO−グリコシル化されており、そして、グリコシル化における変化が上皮癌細胞において示されている。Muc−1は、多くのタイプの癌(特に顕著には、進行した乳癌)において上昇していることが見出されている。血清ベースのマーカーとしては無比であるので、特異性はほとんど持たないが、Muc−1は、他のより特異的なマーカーと組み合わせて、診断の補助として利用され得る。
【0038】
PAI−1(すなわち、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター1型)は、セリンまたはシステインプロテイナーゼインヒビターである。PAI−1 mRNAは、2876bpの長さであり、そして、そのコードされるタンパク質は、402アミノ酸長である。分子量の計算値は42,769Daであるが、アフィニティー精製したタンパク質は、SDSゲル電気泳動により決定した場合約50,000Daであると報告されている。PAI−1は、PLAUによる細胞外マトリックスの分解の阻害において役割を担い、そして、推定される非調整c−Myc標的遺伝子(putative unregulated c−Myc target gene)である。PAI−1はまた、血液凝固および組織の再構築の制御においても重要な役割を担う。PAI−1は、プラスミン生成を制限し、そして、線維素溶解のチェック状態を維持するようにはたらく。PAI−1によるプラスミンの阻害を伴ういくつかの生理学的機能としては、排卵、細胞遊走および上皮細胞分化が挙げられる。癌における高いPAI−1レベルは、乳癌および肺癌を含む多くのヒトの癌の生存について乏しい予後を示す。Pappot et al.(2005年11月29日)Lung Cancer[印刷物より前に電子公開された];Chazaud et al.(2002)American Journal of Pathology 160:237−246。
【0039】
三重らせんリピート含有コラーゲン1(Collagen triple helix repeat containing 1)(CTHRC1)は、バルーン損傷した動脈 対 正常な動脈において差次的に発現される配列についてのスクリーニングにおいて同定された。Pyagayらによる研究において、CTHRC1の発現は、正常な動脈においては検出できなかった。しかし、損傷時、CTHRC1は、再構築中の外膜の線維芽細胞によって、および、新生内膜(neointima)の平滑筋細胞によって一過性に発現された。CTHRC1はまた、石灰化しつつあるヒトアテローム硬化プラークのマトリックスにおいても見出されている。CTHRC1は、グリコシル化され、そして、下等脊索動物から哺乳動物まで高度に保存されている28kDaの分泌タンパク質である。12のGly−X−Y反復を持つ短いコラーゲンモチーフは、タンパク質の三量体化を担い、そして、これが、コラゲナーゼによる切断に対し分子を感受性にするようである。Cthrc1 mRNAの発現レベルは、トランスホーミング増殖因子βおよび骨形態発生タンパク質4に応じて増加する。CTHRC1を過剰発現する繊維芽細胞および平滑筋細胞を用いて行った細胞遊走アッセイは、CTHRC1レベルの上昇が、遊走能力の増強と関連していることを実証する。さらに、CTHRC1の過剰発現は、1型コラーゲンのmRNAおよびタンパク質のレベルにおける劇的な減少をもたらした。Pyagayらのデータは、新規分子であるCTHRC1が損傷に応じて動脈壁において一過性に発現され、ここで、コラーゲンマトリックスの蓄積を制限し、そして、細胞の遊走を促進することによって、血管の再構築に寄与し得ることを示す。Pyagay et al.(2005)Circ.Res.96(2):261−8。
【0040】
インヒビンは、トランスホーミング増殖因子βスーパーファミリーに属するタンパク質ホルモンであり、ジスルフィド結合によって結合されるαサブユニットおよびβサブユニットからなるヘテロ二量体である。インヒビンの2つの形態(すなわち、AおよびB)は、αサブユニットに結合されたβサブユニットのタイプ(すなわち、βAまたはβB)が異なる。子を産める年齢の女性において、インヒビンは、卵巣の顆粒膜細胞によって分泌され、血中を循環することが知られる。インヒビンは、月経周期を通じて、および妊娠中に濃度が変化し、そして、下垂体のFSH生成、配偶子形成および妊娠事象に影響を与える。閉経後の女性において、インヒビンは非常に低いレベルまで低下する。最近の刊行物は、インヒビンが卵巣癌の診断マーカーであることを示している。例えば、Robertson et al.(2002)Mol.Cell Endocrinol.191:97−103;El−Shalakany et al.(2004)J.Obstet.Gynaecol.Res.30:155−161を参照のこと。
【0041】
プラスミノーゲンアクチベーターウロキナーゼ−レセプター(PLAU−RまたはUPAR)は、GPI結合により、そのカルボキシ末端で細胞膜に付着した、分子量約60kDaの細胞表面糖タンパク質である。PLAU−Rは、正常なプロセスおよび病理学的プロセスの両方において、基底膜/細胞外マトリックスの再構築に関与する、セリンプロテアーゼウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター(uPA)に対する特異的なレセプターとして機能する。細胞表面から放出された可溶性PLAU−Rは、結腸直腸癌、乳癌および卵巣癌を含む数種類のヒトの癌において、血清濃度が上昇していると報告されている。例えば、Sier et al.(1998)Cancer Res.58:1843−1849;およびBegum et al.(2004)Anticancer Research 24:1981−1986を参照のこと。
【0042】
プロラクチンは、かなりの量が下垂体前葉によって分泌される、198アミノ酸、23kDaのタンパク質ホルモンである。エストロゲンと対照的に、プロラクチンは、乳腺の成長と乳分泌の開始において重要な役割を果たす。さらに、プロラクチンは、細胞増殖および免疫機能においても重要な役割を有すると考えられる。市販のELISAキットを用いた最近の報告は、卵巣癌において血清中のプロラクチンレベルが有意に上昇していたと報告した。一般に、Mor et al.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.102:7677−7682を参照のこと。
【0043】
カリクレインは、多様な生理学的機能を持つセリンプロテアーゼの下位集団である。これらは、染色体19q13上で一群としてクラスター形成している。多くのカリクレインが、発癌に関与しており、そして、新規の癌および他の疾患のバイオマーカーとしての可能性を有するものもあることを示唆する証拠が増えている。
【0044】
KLK−6は、第19染色体上のクラスターに位置する15のカリクレインサブファミリーのメンバーのうちの1つである。コードされる酵素は、ステロイドホルモンにより調節される。組織培養において、この酵素は、アミロイド前駆体タンパク質からアミロイド形成フラグメントを生成することが見出されており、アルツハイマー病への関与の可能性が示唆されている。KLK−6は、分泌タンパク質として確認されており、卵巣癌患者において上昇していることが見出されている。したがって、この疾患についての血清学マーカーとしての価値を有するという仮説が立てられている。
【0045】
ヒトカリクレイン10遺伝子(KLK−10、正常上皮細胞特異的1遺伝子(NES−1)としても公知)は、カリクレイン遺伝子ファミリーのメンバーである。この遺伝子産物は、その種々の生体液における濃度が、いくつかの疾患状態において変化することが知られる、分泌セリンプロテアーゼである。特に、KLK10は、卵巣の上皮細胞において発現され、その発現は、卵巣癌を有する患者の血清において上昇していると報告されている。したがって、KLK10は、卵巣癌についての血清バイオマーカーとして働き得る。例えば、Liu−Ying et al.(2003)Cancer Res.63:807−811;YousefおよびDiamandis(2003)Thromb Haemost.90:7−16を参照のこと。
【0046】
分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)は、最初に、ヒトの耳下腺分泌において単離されたタンパク質である。その後の研究から、SLPIタンパク質はまた、唾液および多数の粘膜表面(例えば、肺、鼻孔、子宮頚部および精嚢の粘膜表面)にも存在することが示された。
【0047】
SLPIは、好中球エラスターゼ(その存在が慢性炎症性肺疾患において増大しており、肺組織の成分の多くを破壊し得る)の強力なインヒビターであるので、慢性肺疾患に対する防御として作用すると考えられる。SLPIはまた、肥満細胞からのヒスタミンの放出も阻害し、したがって、アレルギー反応においても活性である。胎児の膜および子宮頚部組織の保護もまた、SLPIの機能であると考えられる。
【0048】
SLPIタンパク質をコードする遺伝子は、卵巣癌においてアップレギュレートされていることが分かっており、良性の卵巣嚢を有する患者または正常患者において診られるレベルに対し、悪性の卵巣癌を有する患者の血清中のSLPIレベルの上昇には、有意な差があることが分かっている。SLPIタンパク質は、12kDaの質量を有し、グリコシル化されておらず、疎水性かつカチオン性である。一般的には、Hollander et al.(2003)Cancer Cell International 3:14;Helmig et al.(1995)Eur.J.Obstet.Gynecol.Reprod.Biol.59(1):95−101;Hough et al.(2001)Cancer Research 61:3869−3876;およびTsukishiro et al.(2005)Gynecologic Oncology 96:516−519を参照のこと。
【0049】
α−1アンチトリプシン(AAT)は、肝臓により合成される急性期タンパク質であり、トリプシン、キモトリプシン、プラスミンおよびトロンビンのようなタンパク質分解酵素の主要な血清インヒビターである。炎症反応において、AATの血清濃度は、3〜4倍程度まで上昇し得る。分子は、40〜50kDaのモノマー分子量を持つ、多数の遺伝子改変体として存在する。平均正常血清濃度(mg/ml)は、2.21±0.35および2.14±0.37であると報告されている。卵巣癌のバイオマーカーとしてのAATにおける関心は、社内での2Dゲル電気泳動/質量分析、AATが卵巣癌患者の血清において上昇したことを示す研究から生じた。例えば、Song et al.(1994)J.Affect.Disorders 30:283−288;Ledue et al.(1993)Clin.Chim.Acta.223:73−28を参照のこと。
【0050】
上記のバイオマーカーについて詳細に考察してきたが、当該分野で公知のバイオマーカーおよびまだ同定されていないバイオマーカーを含め、過剰発現が卵巣癌について選択的であるあらゆるバイオマーカーが、本発明の実施のために使用され得る。このようなバイオマーカーとしては、例えば、DNA複製/細胞周期制御、細胞の成長および増殖、アポトーシスからの逸脱、血管新生もしくはリンパ球新生、または、癌細胞の運動性および浸潤の機構における欠陥に関連する遺伝子およびタンパク質が挙げられる。
【0051】
特に関心があるのは、早期段階の卵巣癌において選択的に過剰発現されるバイオマーカーである。「早期段階の卵巣癌において選択的に過剰発現される」とは、関心のあるバイオマーカーが、段階1または段階2の卵巣癌の状態では過剰発現されるが、正常試料または非悪性、良性と分類される状態、および、臨床上の疾患とはみなされない他の状態においては過剰発現されないことを意図する。当業者は、早期段階のバイオマーカーとして、段階1または段階2において最初に過剰発現され、その過剰発現が、疾患の進行した段階にわたって一貫するような、卵巣癌に特異的な遺伝子およびタンパク質、ならびに、段階1または段階2の卵巣癌においてのみ過剰発現するバイオマーカーが挙げられることを理解する。早期段階の卵巣癌において選択的に過剰発現するバイオマーカーの発現の検出は、卵巣癌の早期検出および診断を可能にし得、したがって、患者の予後を改善し得る。
【0052】
本発明の方法は、複数のバイオマーカーの発現を検出する工程を包含する。本明細書中で使用される場合、「複数」のバイオマーカーとは、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のバイオマーカーを指す。特に、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するために、本発明の2段階スクリーニング方法を用いる場合、複数のバイオマーカーは、第1のアッセイ段階の間に少なくとも1種のバイオマーカー、そして第2のアッセイ段階の間に少なくとも1種のさらなるバイオマーカーの検出を指し得る。当業者はまた、本発明の方法に従って卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するために、バイオマーカーパネルが使用され得ることを認識する。バイオマーカーパネルは、任意の数または組み合わせの、関心のあるバイオマーカーを含み得る。いくつかの実施形態において、パネルは、HE4、CA125、グリコデリン、MMP−7、Muc−1、PAI−1、CTHRC1、インヒビン、PLAU−R、プロラクチン、KLK−10、KLK−6およびSLPI、α−1アンチトリプシン(AAT)からなる群より選択される複数のバイオマーカーを含む。他の実施形態において、CA125、HE4、グリコデリン、MMP−7、SLPI、PLAU−R、Muc−1、インヒビンAおよびPAI−1を含むバイオマーカーのサブセットから選択されるバイオマーカーパネルが提供される。
【0053】
任意の女性患者または患者集団が、本発明のスクリーニング方法および診断方法を用いて評価され得る。例えば、本明細書において開示される方法は、一般的な女性患者集団について、ならびに、閉経後の女性というより狭い集団について行われ得る。用語「閉経後」は、当業者により理解される。特定の実施形態において、閉経後は一般に、例えば、55歳より上の女性を指す。特定の実施形態において、スクリーニング方法は、一般女性集団に対して慣習的に(例えば、年に一度、2年毎など)行われる。患者の通常のスクリーニングは、例えば、月経の開始時、30歳、または、更年期の開始時に開始され得る。本明細書において以下に規定されるような高リスクの患者集団のスクリーニングは、代表的には、患者の年齢に依存して、定期ベースで行われる。自覚症状のある患者および自覚症状のある(すなわち、骨盤もしくは腹部の疼痛または膨張のような卵巣癌に特徴的な症状を呈する)患者の両方が、本発明のスクリーニング方法および診断方法を用いて、卵巣癌を有する可能性の増加について評価され得る。卵巣癌を発症する危険性の少ない女性、ならびに、臨床上および家族暦による危険因子に基づき、高リスクであるとみなされる女性もまた、本発明の方法を用いて評価され得る。このような臨床上および家族暦による危険因子に基づいて「高リスクである」とみなされる患者としては、乳癌、結腸癌または乳/卵巣症候群を持って生きる患者、卵巣癌を有する一親等血族が居る女性(例えば、母親、娘または姉妹)、少なくとも1種の卵巣癌遺伝子(BRCA1または2)について陽性の患者、および、HNPCC(すなわち、遺伝性非ポリーポーシス性大腸癌)を罹患する女性が挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
本発明の1つの局面において、スクリーニング方法および診断方法のための標的集団は、例えば、上記の臨床上および家族暦による危険因子に基づいて高リスクであると分類された、自覚症状がない患者の群である。この高リスクで自覚症状がない集団は、米国において800万人より多い女性に相当する。本発明の方法、組成物およびキットは、卵巣癌を発症する危険性が高い患者、およびその医師に対し、特に有益であることが認識される。当該分野において、卵巣癌を発症する危険性が高いとして認識される患者としては、卵巣癌の家族暦を有する患者および高齢の患者(すなわち、代表的には、55歳より上の女性)が挙げられる。
【0055】
卵巣癌には直接関係しない多数の臨床上の状態または特徴が、本発明の方法に従って試験した患者集団に存在し、それによって、本明細書中に開示されるスクリーニング方法および診断方法の結果と干渉し得る。このような臨床上の状態または特徴は、本明細書中で、「干渉性の実体および病理(interfering substances and pathologies)」と呼び、これらとしては、妊娠(妊娠初期)、乳癌、慢性肝炎、結腸癌、経口避妊薬治療、冠動脈疾患、深静脈血栓症、糖尿病、子宮内膜症、ホルモン補充療法、月経、多発性骨髄腫、卵巣嚢腫/多嚢胞腫、多発性筋痛、多発性筋炎、直腸癌、慢性関節リウマチ、全身性エリトマトーデス(SLE)およびワルファリン治療が挙げられるがこれらに限定されない。干渉性病理のさらなる例としては、子宮の異常(例えば、子宮筋腫、子宮腺筋症および子宮内膜癌)、卵巣の異常(例えば、機能性嚢腫、卵胞膜黄体嚢腫、妊娠黄体腫、硬化嚢胞卵巣、漿液嚢胞腺腫、ムチン嚢胞腺腫、嚢胞性奇形腫、線維芽腫、莢膜腫、およびブレンナー腫のような良性の増殖;新生物;ならびに、嚢胞腺癌および腺癌のような悪性の異常)、卵管の異常(例えば、卵管卵巣膿瘍、卵管水腫、卵巣傍体嚢腫、異所性妊娠および卵管の癌)、腸の異常(例えば、ガスおよび/または便の膨満、憩室炎、回腸炎、虫垂炎および結腸癌)、ならびに他の多岐にわたる異常(例えば、拡大した膀胱、骨盤腎臓、尿膜管嚢胞、腹壁血腫、腹壁膿瘍、および、リンパ腫、肉腫および奇形腫のような腹膜後の新生物が挙げられる。特定の実施形態において、本明細書中に記載されるスクリーニング方法および診断方法において使用したバイオマーカー、閾値発現レベルおよび数学的モデルは、特許請求される方法の性能(すなわち、特異性、感度、PPVおよびNPV)に対する、干渉性の実体および病理の影響を最小限にするように選択される。
【0056】
「身体試料」とは、患者からの細胞、組織または体液の任意のサンプリングを意図し、この身体試料において、バイオマーカーの発現が検出され得る。このような身体試料の例としては、血液(例えば、全血、血清、血小板を除去した血液など)、リンパ、腹水、尿、婦人科学的な流体(例えば、卵巣、卵管および子宮の分泌物、経血など)、腹腔鏡検査の間に得られた生検および流体が挙げられるがこれらに限定されない。身体試料は、種々の技術によって(例えば、静脈穿刺によって、ある領域を擦過もしくは拭き取ることによって、または、針を用いて体液もしくは組織を吸引することによって、が挙げられる)患者から得られ得る。種々の身体試料を採取するための方法は当該分野で周知である。特定の実施形態において、身体試料は、血液または血清を含む。本発明の発明者らは、採取方法および血液試料、より具体的には血清試料の保管が、本明細書中に開示される方法の性能に影響を及ぼすと認識している。いくつかの研究が、身体試料(特に、血清試料)の採取および保管の方法が、容認可能なアッセイの性能を達成するために重要であることを示唆している。例えば、Diamandis(2004)J.Natl.Cancer Institute 95:353−356およびThavasu et al.(1992)J.Immunol.Meth.153:115−124(これらは、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。血清の採取および保管の一つの例示的な方法が、実施例1に提供される。
【0057】
バイオマーカーの発現を検出するための、当該分野で利用可能なあらゆる方法が、本発明の実施のために使用され得る。本発明のバイオマーカーの発現は、核酸レベルまたはタンパク質レベルで検出され得る。過剰発現を決定するために、試験されるべき身体試料は、健常人に由来する対応する身体試料と比較され得る。すなわち、発現の「正常」レベルとは、卵巣癌を罹患していない患者に由来する身体試料中のバイオマーカーの発現レベルである。このような試料は、基準化された形式で存在し得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの過剰発現の決定は、身体試料と、健常人に由来する対応する身体試料との間の比較を必要としない。
【0058】
本発明の任意のバイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせ、ならびに、任意の公知の卵巣癌バイオマーカーが、本発明の方法、組成物およびキットにおいて使用され得る。一般に、卵巣癌を罹患する患者からの身体試料中のバイオマーカーの発現レベルと、「正常な」身体試料(すなわち、卵巣癌を有さない患者からの身体試料)中の同じバイオマーカーの発現レベルとの間の差が可能な限り大きいようなバイオマーカーを使用することが望ましい。この差は、バイオマーカーの発現を評価するための方法の検出限界と同程度まで小さくあり得るが、この差は、少なくとも評価方法の標準誤差よりも大きく、最適には、正常な身体試料中の同じバイオマーカーの発現レベルの、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、またはそれ以上の差であることが好ましい。本発明のバイオマーカーの「正常な」発現レベルは、卵巣癌を罹患していない患者から得られた身体試料中のそのバイオマーカーの発現を評価することによって決定され得る。あるいは、特に、さらなる情報が本明細書中に記載される方法の慣習的な実施の結果として利用可能になる場合、バイオマーカーの発現レベルについての平均値が使用され得る。
【0059】
上記のように、本発明のいくつかの局面において、特定のバイオマーカーの発現の閾値レベルが確立され得る。この閾値レベルの上では、患者の試料においてバイオマーカーが過剰発現しているとみなされる。閾値を選択するための方法としては、バイオマーカーについてのROCプロットの解析、または、正常な患者集団についてのバイオマーカーの発現レベルの解析が挙げられるがこれらに限定されない。例示的な閾値または「カットオフ」値としては、以下が挙げられる:(1)正常患者集団の試料から決定した、平均発現レベル+2×標準偏差、および(2)感度+特異性の最高値を表す、ROC曲線から選択した発現レベル。特定のバイオマーカーについての発現の閾値レベルは、正常患者集団にこえる発現レベルに関して決定され得る。当業者は、適切な閾値発現値を選択するための他の方法が、本発明の実施のために使用され得ることを理解する。
【0060】
本発明のバイオマーカーを検出するための方法は、核酸レベルまたはタンパク質レベルのいずれかでバイオマーカーの量または存在を決定する任意の方法を含む。このような方法は当該分野で周知であり、そして、ウェスタンブロット、ノザンブロット、サザンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、免疫組織化学、多重ビーズベースの免疫学的検定、核酸ハイブリダイゼーション技術、核酸逆転写法、および核酸増幅法が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態において、バイオマーカーの過剰発現は、例えば、特定のバイオマーカータンパク質に対する抗体を用いて、タンパク質レベルについて検出される。これらの抗体は、ウェスタンブロット、ELISA、多重ビーズベースの免疫学的検定、免疫沈降、または免疫組織化学の技術のような種々の方法において使用され得る。本発明の実施のために使用される多重ビーズベースのアッセイとしては、米国特許第6,599,331号、同第6,592,822号および同第6,268,222号(これらは全て、その全体が本明細書中に参考として援用される)に開示されるLuminex技術が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態において、国際公開番号WO 2005/016126(この全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、Luminex LabMAP(登録商標)システムが利用される。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態において、バイオマーカータンパク質に特異的な抗体は、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するために、身体試料中の複数のバイオマーカータンパク質の発現を検出するために利用される。この方法は、患者から身体試料、特に、血清試料を得る工程、卵巣癌において選択的に過剰発現される複数のバイオマーカーに対する抗体にこの身体試料を接触させる工程、および、抗体結合を検出して、バイオマーカーが患者試料中で過剰発現されているかどうかを決定する工程を包含する。本発明のスクリーニング方法において、バイオマーカーの過剰発現は、卵巣癌を有する可能性が高いことを示す。本発明のスクリーニング方法によって、卵巣癌を有する可能性が高いとして分類された患者は、卵巣癌の存在する検出するためのさらなる診断試験に供される。卵巣癌についての本発明のスクリーニング方法によって、現在は卵巣癌を罹患していないと決定された女性患者は、潜在的に早期段階で卵巣癌を検出するために、定期的にモニタリングされる。
【0062】
上記のように、本発明の特定の局面において、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するためのスクリーニング方法は、2段階の解析を含み得る。すなわち、この方法は、身体試料中で第1のバイオマーカーまたは第1のバイオマーカーパネルの発現を検出する工程と、第1のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルが過剰発現されているかどうかを決定する工程とを包含する第1のアッセイ段階を行う工程を包含する。第1のアッセイ段階において陽性の結果が得られた場合(すなわち、第1のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルが身体試料中で過剰発現している場合)、この方法はさらに、第2のバイオマーカーまたは第2のバイオマーカーパネルの発現を検出する工程と、第2のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルが過剰発現されているかどうかを決定する工程とを包含する第2のアッセイ段階を行う工程を包含する。第1のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルと第2のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルの両方の過剰発現(すなわち、両方のアッセイ段階において陽性の結果)は、卵巣癌を有する可能性が高いことを示す。特定の実施形態において、第1のアッセイ段階および第2のアッセイ段階におけるバイオマーカーの発現の検出は、タンパク質レベルで行われ、身体試料、より具体的には、血清試料を、関心のある特定のバイオマーカーに特異的な抗体と接触させる工程、および、抗体結合を検出する工程を包含する。特定の方法において、バイオマーカーのタンパク質発現は、ELISAまたは多重ビーズベースの免疫学的検定の形式を用いて検出される。
【0063】
本発明の「2段階」スクリーニング方法において、第1の段階において使用されるバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルは、感度およびNPVを最大にするように用いられ得る。すなわち、第1のスクリーニング段階は、本発明の方法によって陰性として分類された真の陰性の数を最大にし、それによって、さらなる解析から真の陰性の有意な割合を排除するように設計され得る。したがって、第1のアッセイ段階によって陽性として分類された患者集団は、真の陽性患者において富化される。2段階方法における第2のスクリーニング段階は、PPVおよび特異性を最大にしつつ、他方で、卵巣癌を有する可能性が最も高い女性を同定するために妥当な感度を維持するように設計され得る。特異性、感度、PPVおよびNPVの値は、上記のように、この方法における各個々のアッセイ段階について決定され得る。2段階スクリーニング方法が使用される場合、感度、特異性、PPVおよびNPVの組み合わせた値が、全体としての方法について決定され得る。特定の実施形態において、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するための2段階の方法は、少なくとも90%の組み合わせた感度、少なくとも98%の組み合わせた特異性、少なくとも10%の組み合わせたPPV、および少なくとも99.9%の組み合わせたNPVを有する。当業者はさらに、2段階のスクリーニング方法が詳細に記載されているが、3、4、5またはそれ以上のアッセイ段階を含む同様のスクリーニング方法もまた本発明により包含されることを理解する。このような後続のアッセイ段階は、卵巣癌の存在から、心臓血管の異常のような他の疾患を除き得る。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態において、患者の試料が「陽性」であることを決定する(すなわち、卵巣癌を有する可能性が高いことを示す)ための「試験の規則」を練るために、アルゴリズムまたは数学的モデルが適用され得る。例えば、HE4、CA125、PLAU−R、グリコリデン、Muc−1およびPAI−1の発現が検出される場合、スクリーニング試験は、(1)HE4、CA125、グリコリデン、PAI−1およびPLAU−Rのうちいずれか3つが陽性である(すなわち、過剰発現している)場合、または、(2)HE4およびCA125が両方とも過剰発現している場合、陽性であるとみなされる;その他の場合、試験は陰性であるとみなされる。さらなる例において、(1)HE4、CA125、グリコリデン、MMP−7およびPLAU−Rのうちいずれか3つが陽性である(すなわち、過剰発現している)場合、または、(2)HE4が過剰発現しており、そしてまた、CA125、グリコリデン、MMP−7もしくはPLAU−Rのうちいずれか1つが陽性である場合、試験は陽性であるとみなされ;その他の場合、試験は陰性であるとみなされる。当業者は、種々のこのような試験の規則が練られ得、そして、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するための本発明の方法(例えば、ロジスティック回帰)において適用され得ることを理解する。適用され得る他の数学的モデルは、Zhou et al.(2002)Statistical Methods in Diagnostic Medicine(Wiley,New York)(その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0065】
本発明の他の局面において、患者において卵巣癌を診断するための方法は、患者から身体試料を得る工程、この身体試料を、卵巣癌において選択的に過剰発現される複数のバイオマーカーに対する抗体に接触させる工程、および、抗体結合を検出してバイオマーカーが患者の試料中で過剰発現されているかどうかを決定する工程を包含する。本発明の診断方法において、バイオマーカーの過剰発現は、卵巣癌の存在を示す。
【0066】
本発明のなお他の実施形態において、患者において卵巣癌を処置するための治療の効果を評価するための方法が提供される。このような方法は、代表的に、治療の開始前に得た第1の患者の身体試料中での複数の本発明のバイオマーカーの発現レベルと、少なくとも部分的に治療を施した後に得た第2の試料中の発現レベルとを比較する工程を包含する。第2の患者の試料中のバイオマーカーの発現レベルが、治療の開始前に得た第1の試料中の発現レベルよりも有意に低い場合、患者における卵巣癌を処置するための治療の効果が陽性であることを示すが、第2の試料中のバイオマーカーの発現レベルが有意により高い場合、治療の効果が陰性であることを示す。本明細書中で使用される場合、「治療の効果が陽性であることを示す」とは、治療が、卵巣癌の処置において有益な結果(例えば、腫瘍の退行など)をもたらすことを意味する。「治療の効果が陰性であることを示す」とは、治療が、卵巣癌の処置に関して有益な作用を持たないことを意味する。特定の処置の効果が陰性であることの表示は、例えば、投薬量に関連し得る。投薬量が高ければ高いほど、治療はより効果的となり得る。
【0067】
当業者は、これらの方法において、用語「治療」が、卵巣癌を治療するための任意の治療を含み、化学療法、放射線療法、腫瘍組織の外科的除去、遺伝子治療および生物学的治療が挙げられるがこれらに限定されないことを認識する。本発明の方法は、例えば、腫瘍重量の減少を評価するために、治療の前、間および後に、患者を評価するために使用され得る。
【0068】
本発明はさらに、患者において卵巣癌の退行または進行を評価するためのモニタリング方法を提供し、この方法は、第1の時点で第1の患者試料において、本発明の複数のバイオマーカーの発現レベルを検出する工程、後の時点に得られた第2の患者試料を用いてこの解析を繰り返す工程、および、第2の時点でバイオマーカーの発現レベルを比較する工程を包含する。後の時点での患者の身体試料中のバイオマーカーの発現レベルが有意により高い場合、卵巣癌が進行していることを示し、一方、発現レベルが有意により低い場合、卵巣癌が退行していることを示す。本明細書中で使用される場合、「卵巣癌の退行」とは、卵巣癌に関する患者の状態が、例えば、腫瘍サイズの減少によって特徴付けられるように、改善したことを意味することが意図される。「卵巣癌の進行」とは、卵巣癌に関する患者の状態が、例えば、腫瘍サイズの増加、転移などによって特徴付けられるように、悪化したことを意味する。疾患状態に関する用語「退行」および「進行」の意味は、当業者に理解される。
【0069】
本発明の特定の局面において、バイオマーカーの発現は、抗体を用いてタンパク質レベルで検出される。用語「抗体」は、広く、天然に存在する形状の抗体、ならびに、単鎖抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体のような組換え抗体、および多重特異性抗体、ならびに、上述の全てのフラグメントおよび誘導体(このフラグメントおよび誘導体は、少なくとも抗原結合部位を有する)を包含する。抗体の誘導体は、抗体に結合体化されたタンパク質または化合物部分を含み得る。
【0070】
「抗体」および「免疫グロブリン」(Ig)は、同じ構造的特徴を持つ糖タンパク質である。抗体は抗原に対する結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗体と、抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を含む。後者の類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によって低いレベルで、そして、骨髄腫によって増加したレベルで生成される。
【0071】
用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、そして、完全に組み立てられた抗体、抗原に結合し得る抗体フラグメント(例えば、Fab’フラグメント、F’(ab)フラグメント、Fvフラグメント、単鎖抗体、二重特異性抗体(diabodies))、および、上述のものを含めた組換えペプチドを網羅する。
【0072】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書中で使用される場合、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体をいう。すなわち、少量存在し得る天然に存在する変異の可能性を覗き、個々の抗体を含む集団は同一である。
【0073】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部分、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメントおよびFvフラグメント;二重特異性抗体;直鎖抗体(Zapata et al.(1995)Protein Eng.8(10):1057−1062);単鎖抗体分子;ならびに、抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化により、「Fab」フラグメントと呼ばれ、各々が、単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合フラグメントと、残りの「Fc」フラグメント(この名称は、35を容易に結晶化するその能力を反映するものである)が生じる。ペプシン処理では、2つの抗原結合部位を有し、なおも抗原を架橋し得るF(ab’)フラグメントを生じる。
【0074】
「Fv」は、完全な抗原認識および結合の部位を含む最小の抗体フラグメントである。2本鎖Fc種において、この領域は、1本の重鎖可変ドメインと1本の軽鎖可変ドメインとがしっかりとした非共有結合でつながった二量体から構成される。1本鎖Fv種において、1本の重鎖可変ドメインと1本の軽鎖可変ドメインとは、柔軟性のあるペプチド結合によって共有結合され得、その結果、軽鎖と重鎖とは、2本鎖Fv種における構造と相同な「二量体」構造で会合し得る。この構成において、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、V−V二量体の表面上の抗原結合部位を規定する。まとめると、6つのCDRが、抗体に抗原特異性を与える。しかし、結合部位全体よりは低い親和性ではあるが、1本鎖の可変ドメイン(または、抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても抗原を認識して抗原に結合する能力を有する。
【0075】
Fabフラグメントはまた、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1定常ドメイン(CH1)とを含む。Fabフラグメントは、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体のヒンジ領域からの1以上のシステインを含む数個の残基を加えることにより、Fab’フラグメントとは異なる。Fab’−SHは、本明細書における、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を持つFab’についての呼称である。F(ab’)抗体フラグメントは元々、間にヒンジシステインを有する一対のFab’フラグメントとして生成された。
【0076】
ポリクローナル抗体は、バイオマーカータンパク質の免疫源を用いて適切な被験体(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、または他の哺乳動物)を免疫することにより調製され得る。免疫した被験体における抗体の力価は、固定化したバイオマーカータンパク質を用いる酵素免疫測定法(ELISA)のような標準的な技術によって、経時的にモニタリングされ得る。免疫後の適切な時点で、例えば、抗体の力価が最高になるとき、抗体産生細胞を被験体から得て、そして、これらの細胞を用いて、ハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495−497により最初に記載された)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.(1983)Immunol.Today 4:72)、EBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al.(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,ReisfeldおよびSell編(Alan R.Liss,Inc.,New York,NY), pp. 77−96)、またはトリオーマ技術のような標準的な技術によってモノクローナル抗体を調製し得る。ハイブリドーマを生成するための技術は周知である{一般には、Coligan et al.編(1994)Current Protocols in Immunology(John Wiley & Sons,Inc.,New York,NY);Galfre et al(1977)Nature 266:550−52;Kenneth(1980)Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses(Plenum Publishing Corp.,NY);およびLerner(1981)Yale J.Biol.Med.,54:387−402を参照のこと}。
【0077】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマに代えて、モノクローナル抗体は、バイオマーカータンパク質を用いて組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングし、それによって、バイオマーカータンパク質に結合する免疫グロブリンライブラリーのメンバーを単離することによって、同定および単離され得る。ファージディスプレイライブラリーを作製およびスクリーニングするためのキットは市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System,Catalog No.27−9400−01;およびStratagene SurfZAP9 Phage Display Kit,Catalog No.240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーを作製およびスクリーニングする際に使用するために特に適した方法および試薬の例は、例えば、以下に見出され得る:米国特許第5,223,409号;PCT公開番号WO 92/18619;WO 91/17271;WO 92/20791;WO 92/15679;93/01288;WO 92/01047;92/09690;および90/02809;Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hay et al.(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81−85;Huse et al.(1989)Science 246:1275−1281;Griffiths et al.(1993)EMBO J.12:725−734。
【0078】
本発明の組成物は、さらに、関心のバイオマーカータンパク質に特異的に結合する、モノクローナル抗体、ならびにその改変体およびフラグメントを含む。モノクローナル抗体は、試料中でのバイオマーカータンパク質の検出を容易にするために、以下に記載されるような検出可能な物質で標識され得る。このような抗体は、本発明の方法を行う際に用途を見出す。本明細書中に開示される抗体の結合特性を有するモノクローナル抗体もまた、本発明により包含される。組成物は、さらに、モノクローナル抗体の抗原結合改変体およびフラグメント、これらの抗体を産生するハイブリドーマ細胞株、ならびに、これらのモノクローナル抗体のアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子を含む。
【0079】
本発明のモノクローナル抗体の結合特性を有する抗体もまた提供される。「結合特性」または「結合特異性」は、抗体に関して使用される場合、抗体が、比較抗体と同じまたは同様の抗原エピトープを認識することを意味する。このような抗体の例としては、例えば、競合結合アッセイにおいて本発明のモノクローナル抗体と競合する抗体が挙げられる。当業者は、標準的な方法を用いて、抗体が別の抗体と競合的に干渉するかどうかを決定し得る。
【0080】
「エピトープ」により、抗体が生成され、その抗体が結合される、抗原性分子の一部分が意図される。エピトープは、直鎖状アミノ酸残基(すなわち、エピトープ内の残基が互い違いに直鎖状の様式で連続的に配列される)、非直鎖状アミノ酸残基(本明細書中で「非直鎖状エピトープ」と称される;これらのエピトープは連続的に配列されない)、または、直鎖状および非直鎖状の両方のアミノ酸残基を含み得る。代表的には、エピトープは、短いアミノ酸配列、例えば、約5アミノ酸長である。エピトープを同定するための体系的な技術は当該分野で公知であり、例えば、米国特許第4,708,871号に記載される。簡単に述べると、抗原由来の1セットの重複オリゴペプチドが合成され、そして、各ピンに独特のオリゴペプチドを持つピンの固相アレイへと結合され得る。このピンのアレイは、96ウェルのマイクロタイタープレートを含み得、全96のオリゴペプチドを、例えば、バイオマーカー特異的なモノクローナル抗体への結合について、同時にアッセイすることを可能にする。あるいは、ファージディスプレイペプチドライブラリーキット(New England BioLabs)が現在エピトープマッピングのために市販されている。これらの方法を用いると、所定の抗体が結合するエピトープを同定するために、連続アミノ酸の可能なサブセットごとについての結合親和性が決定され得る。エピトープはまた、推論ではあるが、抗体が得られる動物を免疫するためにエピトープの長さのペプチド配列が使用されるときに同定され得る。エピトープはまた、糖タンパク質上に存在するN結合またはO結合のいずれかのオリゴサッカリドとして存在する炭化水素側鎖によっても規定され得る。
【0081】
本明細書中に開示されるモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントおよび改変体がさらに提供される。このような改変体は、親抗体の所望の結合特性を保持する。抗体フラグメントおよび改変体を作製するための方法は、当該分野で一般に利用可能である。例えば、本明細書中に記載されるモノクローナル抗体のアミノ酸配列改変体は、関心のある抗体をコードするクローニングされたDNA配列中に変異を入れることによって調製され得る。変異誘発およびヌクレオチド配列変更のための方法は、当該分野で周知である。例えば、WalkerおよびGaastra編(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York);Kunkel(1985)Proc.Natl Acad.Sci.USA 82:488−492;Kunkel et al(1987)Methods Enzymol.154:367−382;Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor,New York);米国特許第4,873,192号;およびこの特許における引用文献(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。関心のポリペプチドの生物学的活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換のためのガイダンスは、Dayhoff et al.(1978)のモデルにおいて見出され得る(Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)、本明細書中に参考として援用される)。1つのアミノ酸を、同様の特性を持つ別のアミノ酸と交換するような、保存的置換が好ましくあり得る。保存的置換の例としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔GlnおよびPhe⇔Trp⇔Tyr。
【0082】
関心のある抗体ポリペプチドの改変体を構築する際、改変は、改変体が、所望の活性(すなわち、バイオマーカーに対する同様の結合親和性)を保有し続けるようになされる。明らかに、改変体ポリペプチドをコードするDNAにおいてなされた任意の変異は、リーディングフレームから外れる配列を配置すべきではないし、好ましくは、mRNAの二次構造を生成し得る相補性領域を生じない。欧州特許出願第75,444号を参照のこと。
【0083】
好ましくは、参照バイオマーカー抗体の改変体は、参照抗体分子のアミノ酸配列に対し、または、参照抗体分子のより短い部分に対して、少なくとも70%または75%の配列同一性、好ましくは、少なくとも80%または85%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。より好ましくは、分子は、少なくとも96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する。本発明の目的のために、配列同一性%は、12のギャップオープンペナルティおよび2のギャップ伸長ペナルティ、62のBLOSUMマトリックスを用いた擬似ギャップ検索を使用した、Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムを用いて決定される。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、SmithおよびWaterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482−489において教示される。改変体は、例えば、1〜15程度のアミノ酸残基、1〜10程度のアミノ酸残基(例えば、6〜10、5程度、4程度、3程度、2程度、またはなお1のアミノ酸残基が、参照抗体と異なり得る。
【0084】
2つのアミノ酸配列の最適なアラインメントに関して、改変体アミノ酸配列の連続セグメントは、参照アミノ酸配列に関し、追加のアミノ酸残基を有しても、アミノ酸残基を欠失していてもよい。参照アミノ酸配列との比較のために使用される連続セグメントは、少なくとも20の連続アミノ酸残基を含み、そして、30、40、50またはそれ以上のアミノ酸残基であり得る。保存的残基置換またはギャップを伴って配列同一性の補正がなされ得る(Smith−Watermanの相同性検索アルゴリズムを参照のこと)。
【0085】
当業者は、試薬または条件(例えば、抗体の力価および抗原−抗体結合の検出のためのパラメータ)の最適化が、特定の抗体についての信号対雑音比を最大にするために必要とされることを認識する。本発明のバイオマーカーの特異的結合を最大にし、かつ、非特異的な結合(すなわち、「バックグラウンド」)を最小にする抗体の濃度が決定される。特定の実施形態において、適切な抗体力価は、まず、患者の血清試料において、種々の抗体希釈を試すことによって決定される。抗体の力価および検出条件を最適にするためのアッセイの設計は、標準的なものであり、十分に当業者の慣用的な能力の範囲内である。いくつかの抗体は、バックグラウンドを減らし、そして/または、特異性および感度を増加させるために、さらなる最適化を必要とする。
【0086】
さらに、当業者は、本発明の方法の実施のために使用される特定の抗体の濃度が、結合のための時間、バイオマーカータンパク質に対する抗体の特異性のレベル、および身体試料の調製方法などの要因に依存して変化することを認識する。さらに、単一の試料において複数の抗体を使用する場合、必要とされる濃度は、抗体が試料に適用される順序(すなわち、カクテルとして同時に、または、個々の抗体試薬として連続的に)によって影響され得る。さらに、関心のあるバイオマーカーへの抗体の結合を可視化するために使用される検出化学もまた、所望の信号対雑音比を生じるように最適化されなければならない。
【0087】
抗体結合の検出は、抗体を検出可能な物質に結合することによって容易にされ得る。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射活性物質が挙げられる。適切な酵素の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる;適切な蛍光物質の例としては、アンベリフェロン(umbelliferone)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリスリンが挙げられる;発光物質の例としては、ルミノールが挙げられる;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられる;そして、適切な放射性物質の例としては、125I、131I、35SまたはHが挙げられる。
【0088】
本発明の実施のために使用される抗体は、関心のあるバイオマーカータンパク質に対し高い特異性を有するように選択される。抗体の作製方法および適切な抗体の選択方法は、当該分野で公知である。例えば、Celis,編(印刷中)Cell Biology & Laboratory Handbook,第3版(Academic Press,New York)(その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。いくつかの実施形態において、特定のバイオマーカータンパク質に対する市販の抗体が、本発明の実施のために使用され得る。本発明の抗体は、組織学試料ではなく、細胞学試料の所望の染色に基づいて選択され得る。すなわち、特定の実施形態において、抗体は、最終的な試料のタイプ(すなわち、血清試料)を考慮し、そして、結合特異性について選択される。
【0089】
他の実施形態において、関心のあるバイオマーカーの発現は、核酸レベルで検出される。発現を評価するための核酸ベースの技術は、当該分野で周知であり、そして、例えば、身体試料中のバイオマーカーmRNAのレベルを決定することが挙げられる。多くの発現検出法は、単離されたRNAを用いる。mRNAの単離に対して選択を行わない任意のRNA単離技術が、血清試料からのRNAの精製のために利用され得る(例えば、Ausubel et al.編(1987−1999)Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,New Yorkを参照のこと)。さらに、多数の血液、血清または組織試料が、例えば、Chomczynskiの1段階RNA単離プロセス(1989,米国特許第4,843,155号)のような、当業者に周知の技術を用いて容易に処理され得る。
【0090】
用語「プローブ」は、特に意図される標的生体分子(例えば、バイオマーカーによりコードされるか、またはバイオマーカーに対応するヌクレオチド転写体またはタンパク質)に選択的に結合し得る任意の分子を指す。プローブは、当業者により合成され得、または、適切な生物学的調製物から誘導され得る。プローブは、特に、標識されるように設計され得る。プローブとして利用され得る分子の例としては、RNA、DNA、タンパク質、抗体および有機分子が挙げられるがこれらに限定されない。
【0091】
単離されたmRNAが、ハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイ(サザン解析またはノザン解析、ポリメラーゼ連鎖反応解析およびプローブアレイが挙げられるがこれらに限定されない)において使用され得る。mRNAレベルの検出のための1つの方法は、単離されたmRNAを、検出される遺伝子によりコードされるmRNAへとハイブリダイズし得る核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。核酸プローブは、例えば、全長cDNAまたはその一部分(例えば、少なくとも7、15、30、50、100、250または500ヌクレオチド長)であり得、そして、ストリンジェントな条件下で、本発明のバイオマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分であり得る。mRNAのプローブとのハイブリダイゼーションは、当該バイオマーカーが発現されることを示す。
【0092】
1つの実施形態において、mRNAは、固体表面上に固定化され、そして、例えば、単離されたmRNAをアガロースゲル上で泳動し、ゲルからニトロセルロースなどの膜へとmRNAを移すことによって、プローブと接触させられる。代替的な実施形態において、プローブは、固体表面上に固定化され、そして、mRNAが、例えば、Affymetrix遺伝子チップアレイ中でプローブと接触させられる。当業者は、本発明のバイオマーカーによりコードされるmRNAのレベルの検出において使用するために、公知のmRNA検出法を容易に適合させ得る。
【0093】
試料中のバイオマーカーmRNAレベルの決定のための代替的な方法は、例えば、RT−PCR(Mullis,1987、米国特許第4,683,202号に示される実験的実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189493)、自己持続性配列複製(Guatelli et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、転写増幅系(Kwoh et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、Q−βレプリカーゼ(Lizardi et al.(1988)Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi et al.,米国特許第5,854,033号)または任意の他の核酸増幅法による核酸増幅プロセスと、その後の、増幅された分子の当業者に周知の技術を用いた検出を伴う。これらの検出スキームは、核酸分子が非常に低い数で存在する場合のこのような分子の検出に特に有用である。本発明の特定の局面において、バイオマーカーの発現は、定量的蛍光発生(fluorogenic)RT−PCR(すなわち、TaqMan(登録商標)システム)により評価される。このような方法は、代表的に、関心のあるバイオマーカーに特異的なオリゴヌクレオチドプライマー対を利用する。公知の配列に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを診断するための方法は、当該分野で周知である。
【0094】
RNAのバイオマーカーの発現レベルは、メンブランブロット(例えば、ノザン、サザン、ドットなどのようなハイブリダイゼーション解析において用いられる)、または、マイクロウェル、試験管、ゲル、ビーズまたはファイバ(または、核酸を結合させた任意の固体支持体)を用いてモニタリングされ得る。米国特許第5,770,722号、同第5,874,219号、同第5,744,305号、同第5,677,195号および同第5,445,934号(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。バイオマーカーの発現の検出はまた、溶液中の核酸プローブを用いることを含み得る。
【0095】
本発明の1つの実施形態において、マイクロアレイが、バイオマーカーの発現を検出するために使用される。マイクロアレイは、種々の実験間での再現性の理由から、この目的に特によく適している。DNAマイクロアレイは、多数の遺伝子の発現レベルを同時に測定するための1つの方法を提供する。各アレイは、再現性のあるパターンの固体支持体に付着された捕捉プローブから構成される。標識されたRNAまたはDNAは、アレイ上の相補的なプローブとハイブリダイズし、次いで、レーザ走査により検出される。アレイ上の各プローブへのハイブリダイゼーション強度が決定され、そして、相対的な遺伝子発現レベルを表す定量的な値へと変換される。米国特許第6,040,138号、同第5,800,992号および同第6,020,135号、同第6,033,860号および同第6,344,316号(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。高密度オリゴヌクレオチドアレイは、試料中の多数のRNAについての遺伝子発現プロフィールを決定するために特に有用である。
【0096】
機械的合成法を用いたこれらのアレイの合成のための技術は、例えば、米国特許第5,384,261号(あらゆる目的のためにその全体が本明細書中に参考として援用される)に記載される。平面状のアレイ表面が好ましいが、アレイは、実質的にあらゆる形状の表面で、または多数の表面でさえも製造され得る。アレイは、ビーズ、ゲル、ポリマー表面、ファイバ(例えば、光ファイバ)、ガラス、または任意の他の適切な基材上のペプチドまたは核酸であり得る。米国特許第5,770,358号、同第5,789,162号、同第5,708,153号、同第6,040,193号および同第5,800,992号(この各々は、あらゆる目的のためにその全体が本明細書により参考として援用される)を参照のこと。アレイは、全てを包含するデバイスの診断または他の操作を可能にするような様式で組み合され得る。例えば、米国特許第5,856,174号および同第5,922,591号(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0097】
1つのアプローチにおいて、試料から単離された総mRNAは、標識されたcRNAへと変換され、次いで、オリゴヌクレオチドアレイへとハイブリダイズされる。各試料は、別々のアレイへとハイブリダイズされる。相対的な転写体のレベルは、アレイ上および試料中に存在する適切な対照を参照することによって計算され得る。
【0098】
本発明のスクリーニング方法および診断方法を実施するためのキットがさらに提供される。「キット」により、本発明のバイオマーカーの発現を特異的に検出するための、少なくとも1種の試薬(例えば、抗体、核酸プローブなど)を含む任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)が意図される。キットは、本発明の方法を実施するためのユニットとして、販売促進、配給または販売され得る。さらに、キットは、キットおよびその使用方法を説明するパッケージ挿入物を含み得る。
【0099】
特定の実施形態において、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するためのスクリーニング方法において使用するためのキットは、関心のあるバイオマーカータンパク質に対する複数の抗体を含み、ここで、バイオマーカーは、HE4、CA125、グリコデリン、MMP−7、Muc−1、PAI−1、CTHRC1、インヒビンA、PLAU−R、プロラクチン、KLK−10、KLK−6、SLPIおよびα−1アンチトリプシンからなる群より選択される。バイオマーカーに結合する抗体の検出のための化学物質もまた、キット中に含められ得る。ELISAまたは多重ビーズベースの免疫学的検定の形式で抗体を使用する、バイオマーカーの発現を検出するための他の試薬がさらに、本発明のキット中に含められ得る。他の実施形態において、本明細書中に開示されるスクリーニング方法において使用するためのキットは、身体試料中の複数の関心のあるバイオマーカーの発現を検出するための核酸プローブを含み、特にここで、バイオマーカーは、HE4、CA125、グリコデリン、MMP−7、Muc−1、PAI−1、CTHRC1、インヒビンA、PLAU−R、プロラクチン、KLK−10、KLK−6、SLPIおよびα−1アンチトリプシンからなる群より選択される。
【0100】
本発明の特定の局面において、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するための2段階スクリーニング方法を実施するためのキットが提供される。キットは、2つの別個の試験として2段階スクリーニング方法を実施するように設計され得る。このようなキットは、単一のアッセイ段階(すなわち、第1または第2のアッセイ段階)を実施するための試薬を含む。他の実施形態において、キットは、2段階の方法が、単一の試験として実施され得るような試薬を含む(すなわち、第1のアッセイ段階および第2のアッセイ段階の両方のための試薬を含む)。本発明により包含されるさらなるキットは、本明細書中で上記される1段階スクリーニング方法を実施する際に用途を見出す。キットはさらに、1段階または2段階のスクリーニング方法に適用されるべきアルゴリズムまたは数学的モデルの説明と、人間の介入をほとんど伴わないか、または全く伴わずに、このアルゴリズム/数学的モデルを実行する自動プラットフォームとを含み得る。キットはさらに、2段階の方法における各段階が、自動、半自動または手動の様式で実施されるように提供され得る。
【0101】
卵巣癌を診断するためのキットもまた提供される。このようなキットは、卵巣癌において選択的に過剰発現される複数のバイオマーカー(より具体的には、HE4、CA125、グリコデリン、MMP−7、Muc−1、PAI−1、CTHRC1、インヒビンA、PLAU−R、プロラクチン、KLK−10、KLK−6、SLPIおよびα−1アンチトリプシン)の検出のために特異的である、抗体または核酸プローブを含み得る。
【0102】
当業者はさらに、本発明のスクリーニング方法および診断方法における任意または全ての段階が、職員によって実行され得るか、あるいは、自動様式で実施され得ることを理解する。すなわち、方法は、自動、半自動、または手動の様式で実施され得る。さらに、本明細書中に開示される方法はまた、卵巣癌を有する可能性の高い患者のより正確な同定、または、卵巣癌のより信頼性のある診断を可能にするために、他の公知であるか、または後に開発される方法と組み合され得る。
【0103】
冠詞「a」および「an」は、本明細書において、その冠詞の文法上の対象の1またはそれ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。一例として、「要素(an element)」は、1またはそれ以上の要素を意味する。
【0104】
明細書全体を通じて、用語「含むこと(comprising)」または、「含む(comprise)」または「含むこと(comprising)」のようなバリエーションは、一定の要素、整数もしくは段階、または、要素、整数もしくは段階の群を含むが、任意の他の要素、整数もしくは段階、または、要素、整数もしくは段階の群は排除しないことを含意するものと理解される。
【0105】
以下の実施例は、限定するものとしてではなく、例示として提供される:
【実施例】
【0106】
(実施例1:採血、血清への血液の処理、血清の保存条件および血清の輸送条件についての例示的な方法)
採血
添加物を含まないBecton Dickinson製の蓋が赤色のVacutainer採血管(カタログ番号366430)に、静脈穿刺により十分な量の血液を採血した。採血管のロット番号を記録した。全血は冷蔵も冷凍もしなかった。全血の血清への処理は、採血後直ちに開始した。
【0107】
血清の処理手順
採血管を、ラック中に真っ直ぐ置き、室温で保管した。血液を、採血時間から、最小で60分間、最大で90分間、凝血させた。血液は、遠心前に完全に凝血していた。各試料について完全に凝血させるために要した時間を記録した。
【0108】
血液が完全に凝血した後、スイングヘッド型または固定角度型の遠心ローターのいずれかを用いて、試料を1300×gで10分間遠心分離した。底にある赤血球を乱さないように、管を遠心分離機から注意深く取り出した。
【0109】
細胞ペレットを乱すことなく、各管から栓を取り外した。各ドナーからの血清を、細胞層を乱すことも、ピペット内にいかなる細胞を入れることもなく、使い捨てのトランスファーピペットを用いてラベルを付けた管内に合わせた。移す際に細胞が乱された場合、試料を上記のように再度遠心分離した。
【0110】
管を5回穏やかに反転させることにより、各ドナーからの血清試料を混合した。1mLのアリコートをラベルを付けた管内に入れ、そして、−20℃〜−80℃で冷凍した。血清は、冷凍前に、2時間より長く室温で、または、8時間より長く2〜8℃で保管しなかった。
【0111】
(実施例2:卵巣バイオマーカー選択研究−個々のバイオマーカーの解析)
バイオマーカー選択研究の目的は、14の候補卵巣癌バイオマーカーのセットの最初の臨床上の有用性を評価することであった。この研究の前提は、患者血清中の各バイオマーカーの量を同定および定量することができるということであった。血清試料中のバイオマーカータンパク質の発現を、ELISA形式で、市販または新規のバイオマーカー特異的抗体を用いて検出した。以下の表1に記載するように、14の標的バイオマーカーを解析した。
【0112】
【表1】


【0113】
(研究の標的集団および実態的人口統計)
このタイプの評価において、試験される標本は、標的臨床集団を代表するものであり、そして、正常な対照が人口学上適合されているということがきわめて重要である。合計900の患者血清標本をこの研究において解析した。200の標本は、疾患の種々の段階にある卵巣癌患者に由来するものであった(すなわち、200の標本は、段階1、段階2、段階3の卵巣癌標本の間で均等に分配した)。合計500の正常血清をこの試験において使用した。104の正常血清標本は、各バイオマーカーの基線レベルを確立するため、そして、適切な閾値カットオフ値を計算するために、閉経後の女性(本研究では、55歳より上の女性と設定)に由来するものであった。残りの396の正常血清標本は、55歳より下の閉経前の女性と、55歳より上の閉経後の女性に均等に分配した。この分配は、あらゆる年齢またはホルモンに関連する患者の分配の検討を可能にした。この研究における残りの200の標本は、本明細書中で上記したように、種々の状態/疾患(すなわち、「干渉性の実体」または「干渉性の病理」)を有するドナーから集めた。これらの標本を含めることで、個々のバイオマーカーの性能に影響を与え得るあらゆる干渉性の病理の解析を可能にした。解析した患者集団および研究の実態的人口統計のまとめを表2〜4に提供する。
【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
【表4】


【0117】
(研究についての自動化および確認解析の一般的な説明)
全900の血清標本を14のマーカーの各々について二連で処理した。マーカー選択データの作製に、バーコード追跡を備える自動アッセイシステムを利用した。このマーカー選択研究におけるアッセイの実行は全て、Tecan Evo自動機械式液体ハンドラー(automated robotic liquid handler)を用いて完了させた。このプラットフォームの使用は、全900の標本を、各マーカーについて1回の実験の実行(1日1回の実行)で処理することを可能にした。自動プラットフォームの正確さは、あらゆる研究標本を処理する前に確認した。
【0118】
この研究のために、全てのELISAアッセイを、標準曲線のための希釈液として緩衝溶液を用いて処理した。これは、可能な限り、各アッセイのプロトコールを標準化するために行った。
【0119】
この研究において使用した正常血清は、支部(local)IRBの慣習に則った地域の採血センターから得た。これらの血清は、「正常」と考えられ得るが、これらのドナーが、疾患を有さないか、または正常なである状態を確認するために、医療の専門家によってスクリーニングされていなかったことに注意すべきである。
【0120】
(血清試料中のHE4発現の検出(代表的実施例))
材料および方法
A.アッセイプレートのコーティング:
ELISAの96ウェルプレートを、100μl/ウェルの一次抗体、PBS中2μg/mlの抗HE4モノクローナル抗体90.1 #6でコーティングし、次いで、このプレートを、4℃で一晩インキュベートした。次の日、これらのプレートをPBSで1度洗浄し、次いで、250μl/ウェルのPBS−3%BSAを全ウェルに加え、そして、プレートを30℃にて2時間インキュベートした。次いで、これらのプレートを空にし、そして、真空オーブン内で室温にて2時間乾燥させた。次いで、これらを、乾燥剤パックと共にマイラーフォイルバッグ(mylar foil bag)の内側にヒートシールし、アッセイで使用するまで、4℃に保管した。
【0121】
B.アッセイ方法
アッセイプレートを含むフォイルバッグをアッセイの使用直前に室温まで温めた。血清試料を、PBS−1%ウシ血清−0.05% Tween 20−1mg/mlマウスIgG中に1:4で希釈した。HE4抗原タンパク質を100ng/mlに希釈し、次いで、PBS−1%ウシ血清−0.05% Tween 20−1mg/mlマウスIgG中に2倍で段階希釈し、次いで、血清試料と同じに希釈されるように、全ての個々の標準曲線用試料をさらに緩衝液中1:4に希釈した。
【0122】
希釈した血清試料と標準曲線用試料を、抗HE4コーティングしたアッセイプレートに、100μl/ウェルの容量で加えた。次いで、これらのプレートを、30℃にて2時間インキュベートした。これらのプレートを、次に、250μl/ウェルのPBS−0.05% Tween 20で5回洗浄した。
【0123】
二次抗体である抗HE4モノクローナル抗体71.1#1.13−HRPを、PBS−1%ウシIgG−0.05% Tween 20−1mg/mlマウスIgG中に1:16,000で希釈した。次いで、この二次抗体溶液を、吸引したプレートに100μl/ウェルの容量で加えた。これらのプレートを30℃にて1時間インキュベートした。
【0124】
これらのプレートを、250μl/ウェルのPBS−0.05% Tween 20で5回洗浄した。発色溶液TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)を使用前に室温まで温め、次いで、このTMBを吸引したプレートに100μl/ウェルの容量で加えた。
【0125】
これらのプレートを室温で10分間インキュベートし、次いで、停止溶液である2N HSOをプレート(TMBを含む)に100μl/ウェルの容量で加えた。
【0126】
これらのプレートを室温で10分間インキュベートし、次いで、これらを、Molecular Devices SpectraMaxプレートリーダー上で、450nmにて読み取った(650nmの参照波長、SoftMax Proソフトウェアを使用)。
【0127】
データをSoftMax Proファイルとして保存し、そしてまた、MS Excel(登録商標)で使用するためのテキストファイルとしてエクスポートした。
【0128】
対照:高対照として使用した血清:Uniglobe #72372
低対照として使用した血清:Uniglobe #72404
使用した緩衝液対照は、PBS−1%ウシ血清−0.05% Tween 20
−1mg/mlマウスIgGであった。
【0129】
全25プレートにわたる対照についての変動係数(CV)を表5にまとめる。
【0130】
【表5】


【0131】
結果(標準曲線)
HE4についての標準曲線を、PBS/1%ウシ血清/0.05%Tween 20−1mg/mLのマウスIgG中にHE4タンパク質を希釈することによって調製した。このような標準曲線の調製は、当該分野で周知である。本質的には、HE4について上述したようにして(変更が当業者により理解および実行され得る)、残りのバイオマーカーについて全ての血清試料中のバイオマーカーの標準曲線およびレベルまたは濃度を得た。解析したバイオマーカー(すなわち、HE4、グリコデリン、SLPI、PLAU−R、MUC−1、PAI−1、MMP−7、インヒビン、CA125、CTHRC1、KLK−6、KLK−10、α−1アンチトリプシンおよびプロラクチン)についての標準曲線の範囲および曲線の当てはめの等式を以下に示す。
【0132】
HE4
*標準曲線の実験範囲=0.78ng/ml〜100ng/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=三次多項式、
【0133】
【数1】

*次いで、標準曲線の試料および血清試料を共に1:4希釈して、アッセイを行った;血清試料および標準曲線の試料の両方を同じ様式で希釈したので、未知血清試料の濃度を決定するためのデータ解析の間に希釈係数を使用する必要はなかった。
【0134】
グリコデリン
*標準曲線の実験範囲=3ng/ml〜100ng/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=二次方程式、
【0135】
【数2】

*血清試料を希釈せずにアッセイを行ったので、データ解析において希釈係数を使用しなかった。
【0136】
SLPI
*標準曲線の実験範囲=2.38ng/ml〜305ng/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=三次多項式、
【0137】
【数3】

*自動試料調製技術の早い段階で血清試料を1:6.1に希釈した。次いで、これらの希釈した血清試料を、全体として1:40の希釈を達成するために、別の自動化段階でさらに1:6.6希釈した。次いで、これらの1:40希釈した試料のアッセイを行った。
*標準曲線の試料を上述の濃度(実験範囲)で調製し、次いで、これらの標準曲線の試料を全て、さらに1:6.1希釈し、次いで、この1:6.1希釈した試料のアッセイを行った。
*標準曲線の試料の希釈(1:6.1)と比べ、血清試料の希釈(1:40)との間に相違が存在するので、標準曲線から得られた全ての血清試料濃度の値を、「6.6」の希釈係数で乗じて、この相違を補正した(1:40=1:6.1×1:6.6)。
【0138】
uPar(PLAU−R)
*標準曲線の実験範囲=62.5pg/ml〜4000pg/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=線形、
【0139】
【数4】

*自動試料調製技術の早い段階で血清試料を1:6に希釈した。次いで、これらの希釈した血清試料を、全体として1:18の希釈を達成するために、別の自動化段階でさらに1:3希釈した。次いで、これらの1:18希釈した試料のアッセイを行った。
*標準曲線の試料を上述の濃度(実験範囲)で調製し、次いで、これらの標準曲線の試料を全て、さらに1:3希釈し、次いで、この1:3希釈した試料のアッセイを行った。
*標準曲線の試料の希釈(1:3)と比べ、血清試料の希釈(1:18)との間に相違が存在するので、標準曲線から得られた全ての血清試料濃度の値を、「6」の希釈係数で乗じて、この相違を補正した(1:18=1:3×1:6)。
【0140】
MUC−I
*標準曲線の実験範囲=0.3U/ml〜600U/ml、段階3倍希釈
*曲線の当てはめ=三次多項式、
【0141】
【数5】

*次いで、標準曲線の試料および血清試料を共に1:2希釈して、アッセイを行った;血清試料および標準曲線の試料の両方を同じ様式で希釈したので、未知血清試料の濃度を決定するためのデータ解析の間に希釈係数を使用する必要はなかった。
【0142】
PAI−1
*標準曲線の実験範囲=0.78ng/ml〜100ng/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=線形、
【0143】
【数6】

*次いで、標準曲線の試料および血清試料を共に1:4希釈して、アッセイを行った;血清試料および標準曲線の試料の両方を同じ様式で希釈したので、未知血清試料の濃度を決定するためのデータ解析の間に希釈係数を使用する必要はなかった。
【0144】
MMP−7
*標準曲線の実験範囲=0.16ng/ml〜20ng/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=三次多項式、
【0145】
【数7】

*次いで、標準曲線の試料および血清試料を共に1:2希釈して、アッセイを行った;血清試料および標準曲線の試料の両方を同じ様式で希釈したので、未知血清試料の濃度を決定するためのデータ解析の間に希釈係数を使用する必要はなかった。
【0146】
インヒビン
*標準曲線の実験範囲=10pg/ml〜1000pg/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=線形、
【0147】
【数8】

*次いで、標準曲線の試料および血清試料を共に1:3希釈して、アッセイを行った;血清試料および標準曲線の試料の両方を同じ様式で希釈したので、未知血清試料の濃度を決定するためのデータ解析の間に希釈係数を使用する必要はなかった。
【0148】
CA125
*標準曲線の実験範囲=15U/ml〜400U/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=線形、
【0149】
【数9】

*血清試料を希釈せずにアッセイを行ったので、データ解析において希釈係数を使用しなかった。
【0150】
CTHRC1
*標準曲線の実験範囲=0.78ng/ml〜100ng/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=線形、
【0151】
【数10】

*次いで、標準曲線の試料および血清試料を共に1:2希釈して、アッセイを行った;血清試料および標準曲線の試料の両方を同じ様式で希釈したので、未知血清試料の濃度を決定するためのデータ解析の間に希釈係数を使用する必要はなかった。
【0152】
KLK−6
*標準曲線の実験範囲=0.78ng/ml〜100ng/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=三次多項式、
【0153】
【数11】

*次いで、標準曲線の試料および血清試料を共に1:2希釈して、アッセイを行った;血清試料および標準曲線の試料の両方を同じ様式で希釈したので、未知血清試料の濃度を決定するためのデータ解析の間に希釈係数を使用する必要はなかった。
【0154】
KLK−10
*標準曲線の実験範囲=1ng/ml〜80ng/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=線形、
【0155】
【数12】

*次いで、標準曲線の試料および血清試料を共に1:4希釈して、アッセイを行った;血清試料および標準曲線の試料の両方を同じ様式で希釈したので、未知血清試料の濃度を決定するためのデータ解析の間に希釈係数を使用する必要はなかった。
【0156】
α1 アンチトリプシン
*標準曲線の実験範囲=3.3ng/ml〜90ng/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=二次方程式、
【0157】
【数13】

*血清試料を1:250000希釈し、次いで、これらの希釈した試料のアッセイを行った。標準曲線の試料を上述のように(実験範囲)段階希釈し、次いで、これらの試料のアッセイを行った。
*標準曲線の試料の希釈(段階希釈以上には希釈していない)と比べ、血清試料の希釈(1:250000)との間に相違が存在するので、標準曲線から得られた全ての血清試料濃度の値を、「250000」の希釈係数で乗じて、この相違を補正した。
【0158】
プロラクチン
*標準曲線の実験範囲=2ng/ml〜240ng/ml、段階2倍希釈
*曲線の当てはめ=線形、
【0159】
【数14】

*次いで、標準曲線の試料および血清試料を共に1:5希釈して、アッセイを行った;血清試料および標準曲線の試料の両方を同じ様式で希釈したので、未知血清試料の濃度を決定するためのデータ解析の間に希釈係数を使用する必要はなかった。
【0160】
結果−個々のマーカーの性能
本研究に用いた500の正常症例の中で、104の正常症例を対照群として用いて、閾値カットオフポイントを選択した。表6は、各マーカーについてのこれらの104の閾値正常症例に基づいた、平均、標準偏差、範囲、平均+2std、平均+3stdを提供する。表7は、全ての正常研究症例(396症例)における平均標準偏差、範囲、平均+2stdを提供する。表8は、55歳より上の患者からの正常研究症例(195症例以下)における平均標準偏差、範囲、平均+2stdを提供する。マーカーHE4およびインヒビンの除く各バイオマーカーについて、平均および標準偏差は、正常閾値対照症例と55歳より上の患者についての正常研究症例との間で非常に類似していた。表6および8を参照のこと。
【0161】
【表6】

【0162】
【表7】

【0163】
【表8】

各個々のマーカーについて、ROC曲線を得た。ROC曲線は、396の正常症例と200の卵巣癌症例とのみから構成される。対照としての104の正常症例と、200の干渉物質/病理の症例は、この解析には含めなかった。HE4、インヒビンA、プロラクチン、PLAU−R、グリコデリン、SLPI、CTHRC1、PAI−1、KLK−10、CA125、KLK−6、MUC−1、MMP−7についてのROC曲線を、それぞれ、図2〜14に示す。
【0164】
また、陽性および陰性の試料の割合を、年齢群、癌の段階、および、干渉物質/病理の分類によって、各マーカーについて決定した。これらの決定は、以下の2種類のカットオフポイントに基づいた:(1)平均+2stdおよび(2)ROC曲線からのベストカットオフ(best cutoff point)。ベストカットオフポイントは、感度+特異性の最高値を有するROC曲線から選択した。ベストカットオフポイントを表6に列挙する。年齢群、癌の段階、および、干渉物質/病理の分類による各バイオマーカーについての陽性の結果のまとめを、表9〜47に示す。
【0165】
(バイオマーカー:HE4)
【0166】
【表9】

【0167】
【表10】

【0168】
【表11】

(バイオマーカーMuc−1)
【0169】
【表12】

【0170】
【表13】

【0171】
【表14】

(バイオマーカー:KLK−6)
【0172】
【表15】

【0173】
【表16】

【0174】
【表17】

(バイオマーカー:KLK−10)
【0175】
【表18】

【0176】
【表19】

【0177】
【表20】

(バイオマーカー:PAI−1)
【0178】
【表21】

【0179】
【表22】

【0180】
【表23】

(バイオマーカー:CTHRC1)
【0181】
【表24】

【0182】
【表25】

【0183】
【表26】

(バイオマーカー:SLPI)
【0184】
【表27】

【0185】
【表28】

【0186】
【表29】

(バイオマーカー:インヒビンA)
【0187】
【表30】

【0188】
【表31】

【0189】
【表32】

(バイオマーカー:グリコデリン)
【0190】
【表33】

【0191】
【表34】

【0192】
【表35】

(バイオマーカー:MMP−7)
【0193】
【表36】

【0194】
【表37】

【0195】
【表38】

(バイオマーカー:PLAU−R)
【0196】
【表39】

【0197】
【表40】

【0198】
【表41】

(バイオマーカー:プロラクチン)
【0199】
【表42】

【0200】
【表43】

【0201】
【表44】

(バイオマーカー:CA125(Lab Corpデータ))
【0202】
【表45】

【0203】
【表46】

【0204】
【表47】


【0205】
それぞれ、腫瘍の段階、正常な2−標準偏差限界(normal 2−standard deviation limit)、または「ベストフィット」に基づいた、解析した13のバイオマーカーの感度のまとめを表48〜50に示す。
【0206】
【表48】

【0207】
【表49】

【0208】
【表50】


【0209】
(実施例3:卵巣バイオマーカー選択研究−複数のバイオマーカーの解析)
この研究のための最適なバイオマーカーを選択するために、ロジスティック回帰法を用いた。ロジスティック回帰法を用いると、段階的な選択は、従属変数に関して最大のR値を生じるバイオマーカーを見出すことによって開始する。次いで、「最良の」バイオマーカーがこのモデル中にあると仮定すると、ロジスティック回帰により、Rに足すことによって、次の最良のバイオマーカーが見出される。Rに足すという、バイオマーカーのセットを見出すこのプロセスは、特定の統計的基準に従って、バイオマーカーがもはやRに足すことができない場合に停止される。これらのバイオマーカーのセットは、バイオマーカーのうちのいくつかが同じ予測性能を有することから、唯一のものではない。
【0210】
1つの選択したモデルに基づいて、ROCプロットが生成され得、これは、感度と特異性の割合との間の関係性を提供する。従って、容認される感度を有する、PPVの期待値を得るために、適切な特異性および感度が選択され得る。
【0211】
表51および52は、集団が8,000,000であり、疾患の有病率が0.25%であるという仮定の下、約10%のPPVおよび約70%〜80%の組み合わせの感度の割合と共に、より高い特異性と、適切な感度とを有するバイオマーカーのセットを選択することを含む、いくつかの例を提供する。感度、特異性、NPVおよびPPVについての異なる標的値が、異なるアッセイカットオフ、異なるバイオマーカーの組み合わせ、および、バイオマーカーを組み合わせるための異なる規則を選択することによって得られ得る。バイオマーカーの値を、連続変数として(表51)およびカテゴリー的変数(categorical variables)として(表52)使用して、バイオマーカーの性能を解析した。
【0212】
定義する目的で、2つのアッセイ段階が実施されるとき、最初のアッセイ段階は「スクリーニング試験」と称され得、そして、2番目の段階は、「反射試験(reflex test)」と称され得る。「ベストカットオフポイント(best cutoff point)」は、最良の感度および特異性を生じる、特定のバイオマーカーについてROCプロットから得られる値を指す。「平均+2std」は、発現レベルの平均に、卵巣癌を罹患していない患者からの正常な試料の解析に基づいた標準偏差の2倍を加えたものを指す。
【0213】
連続変数としてのバイオマーカーの性能
【0214】
【表51】

カテゴリー的変数としてのバイオマーカーの性能
【0215】
【表52−1】

【0216】
【表52−2】


【0217】
「試験の規則」を適用して得られた感度、特異性、PPVおよびNPVの結果
現在の研究において、バイオマーカーHE4、CA125、PLAU−R、グリコデリン、Muc−1、PAI−1、MMP−7およびインヒビンは、マーカー性能に基づいて、連続変数またはカテゴリー的変数のいずれかとして最も頻繁に選択されるマーカーであった。上記の統計的手法とは対照的に、表53は、以下の2つの試験の規則に基づいて、推定の感度、特異性、PPVおよびNPV(疾患の有病率により調整)を提供する:(1)上記バイオマーカーのうちのいずれか2つが陽性である(すなわち、過剰発現される)場合、試験は陽性であることを示す、または、(2)上記バイオマーカーのうちいずれか3つが陽性である(すなわち、過剰発現される)場合、試験は陽性であることを示す。表51および52において上に提示される結果とは対照的ではあるが、卵巣癌の低い罹患率について調整した場合、いずれの試験の規則の適用も、高い特異性の割合を生じず、今度は、容認でいないほど低いPPV(<1.5%)をもたらした。本明細書中に記載されるもののような「試験の規則」の適用は、卵巣癌を有する可能性の高い患者の同定における当該分野の現在の技術水準を代表するものである。
【0218】
【表53】


【0219】
(実施例4:卵巣バイオマーカー選択研究−1段階スクリーニング方法を用いた多重バイオマーカー解析)
全患者および55歳より上の患者について、バイオマーカーHE4、CA125およびグリコリデン、ならびにこれらの組み合わせの発現を、本明細書において上記したような、1段階スクリーニング方法を用いて評価した。特に、表54は、55歳より上の患者についての1段階アルゴリズムの結果を提供する。この試験アルゴリズムは、線形ロジスティック回帰モデルに基づくものであり、このモデルにおいて、各マーカーの実際の値を用いた。線形ロジスティック回帰モデル(および他のアルゴリズム)は、当該分野で慣習的かつ周知である。例えば、Fleiss(2003)Statistical Methods for Rates and Proportions(第3版)(その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。このアルゴリズムは、96.4%の特異性において76.8%の感度を与えた。陽性と規定される試験結果は、以下の線形ロジスティック回帰モデルに基づくものであった:ln(P/(1−P))=−4.2391+0.0888*CA125+0.1790*HE4+0.2349*GLY(ここで、Pは、卵巣癌の条件付き確率であり、CA125、HE4およびグリコリデンが患者の身体試料において過剰発現されているものと仮定する)。≧35u/mlという製造業者の推奨するカットオフ値を用いて決定したCA125についても同様の結果が得られた。
【0220】
【表54】


【0221】
(実施例5:解析のブートストラップ法)
研究方法の確認
また、解析のブートストラップ法を、癌の血清の個々の独特のセットがこのモデルを確認するために利用可能でないと仮定して、上記研究についての感度および特異性の大まかな推定を確実なものとするために行った。このブートストラップ法は、研究標本セットから補充選択して、1000のランダムなデータセットを人工的に作製することから構成される。最適な性能に基づき、研究において最も頻繁に選択されたマーカーのセットを選択した:HE4、CA125、PLAU−R、グリコデリン、MUC1およびPAI−1。「試験」を以下のように規定した:(1)HE4が陽性でありかつCA125、グリコリデン、MMP−7、PLAU−Rのいずれか1つが陽性である場合、または(2)HE4が陰性であるが、CA125、グリコリデン、MMP−7、PALU−Rが全て陽性である場合のいずれかを、試験が陽性であるとし;それ以外の場合は、「試験」は陰性である。1000のランダムな標本から、この規定された試験の感度/特異性の平均/標準偏差および95%信頼区間を得た。
【0222】
【表55】


【0223】
明細書中で言及された全ての刊行物および特許出願は、本発明の属する分野の当業者の水準を示す。全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願の各々が、具体的かつ個々に参考として援用されると示されるのと同程度まで、本明細書中に参考として援用される。
【0224】
上記発明は、理解を明瞭にする目的で、説明および例証として幾分詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲内で特定の変更および修正がなされ得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】図1は、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するための例示的な「2段階」スクリーニング試験の概念図を提供する。この例においてスクリーニングされた800万人の女性患者は、本明細書において規定されたような、高リスクで自覚症状のない米国患者集団に相当する。第一のアッセイ段階において、かなりの数の真の陰性がさらなる試験から排除され、それによって、第二のアッセイ段階におけるさらなる解析のために、富化された集団が残る。第二のアッセイ段階は、さらに、卵巣癌を有する危険性が最も高い女性を同定するために、真の陰性であるさらなる患者を除外する。2段階スクリーニング方法に関するさらなる詳細は、本文中に提供される。
【図2】図2は、55歳より上の患者からの試料(A)および全ての患者試料から得られる、HE4についての受信者動作特性(ROC)プロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。
【図3】図3は、55歳より上の患者からの試料(A)および全ての患者試料から得られる、インヒビンA(INH)についてのROCプロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。
【図4】図4は、全ての患者試料から得られる、プロラクチンについてのROCプロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。
【図5】図5は、全ての患者試料から得られる、PLAU−RについてのROCプロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。
【図6】図6は、55歳より上の患者からの試料(A)および全ての患者試料から得られる、グリコデリデン(GLY)についてのROCプロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。
【図7】図7は、全ての患者試料から得られる、SLPIについてのROCプロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。
【図8】図8は、全ての患者試料から得られる、CTHRC1についてのROCプロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。
【図9】図9は、全ての患者試料から得られる、PAI−1についてのROCプロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。
【図10】図10は、全ての患者試料から得られる、KLK−10についてのROCプロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。
【図11】図11は、55歳より上の患者からの試料(A)および全ての患者試料から得られる、CA125についてのROCプロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。
【図12】図12は、全ての患者試料から得られる、KLK−6についてのROCプロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。
【図13】図13は、全ての患者試料から得られる、Muc−1(MU)についてのROCプロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。
【図14】図14は、全ての患者試料から得られる、MMP−7(MM)についてのROCプロットを提供する。さらなる実験の詳細については、実施例2に提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するためのスクリーニング方法であって、該方法は、以下:
a)第一のアッセイ段階を行う工程であって、該第一のアッセイ段階は、身体試料中の第一のバイオマーカーまたは第一のバイオマーカーパネルの発現を検出し、該第一のバイオマーカーまたは該第一のバイオマーカーパネルが過剰発現しているかどうかを決定する工程を含む、工程;ならびに
b)工程a)において該第一のバイオマーカーまたは該第一のバイオマーカーパネルが過剰発現していると決定された場合に、第二のアッセイ段階を行う工程であって、該第二のアッセイ段階は、該身体試料中の第二のバイオマーカーまたは第二のバイオマーカーパネルの発現を検出し、該第二のバイオマーカーまたは該第二のバイオマーカーパネルが過剰発現しているかどうかを決定する工程;
を包含し、該第一のバイオマーカーまたは該第一のバイオマーカーパネル、および該第二のバイオマーカーまたは該第二のバイオマーカーパネルの両方の過剰発現は、該患者が卵巣癌を有する可能性が高いことを示す、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、卵巣癌を有する可能性が高いとして同定された患者をさらなる診断試験に供して、該患者が卵巣癌を有するかどうかを決定し、該さらなる診断試験は、骨盤検査、経膣超音波検査、CTスキャン、MRI、側腹切開術、腹腔鏡検査および組織および組織試料生検からなる群より選択される、方法。
【請求項3】
現在は卵巣癌を有していないと決定された前記卵巣癌を有する可能性が高いとして同定された患者を、さらに、卵巣癌の発症について、定期ベースでモニターする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
早期段階の卵巣癌を検出するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
各バイオマーカーについての発現の閾値レベルが、各バイオマーカーについての受信者動作特性(ROC)プロットを解析することによって決定され、閾値レベルを超える発現レベルは、特定のバイオマーカーが過剰発現していることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記各バイオマーカーについての発現の閾値レベルが、正常な患者集団における発現レベルに関して決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、請求項1に記載の方法に従ってスクリーニングされた前記患者が、自覚症状がなく、かつ、卵巣癌の家族暦、または、卵巣癌を発症する危険性が高いことを示す臨床危険因子を有する、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記スクリーニング方法は、閉経後の女性患者集団において行われる、方法。
【請求項9】
前記身体試料が血液試料または血清試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一および第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルが、抗体を用いて、タンパク質レベルで検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第一および第二のバイオマーカータンパク質またはバイオマーカータンパク質パネルが、ELISA形式または多重ビーズベースの免疫学的検定を用いて検出される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第一および第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルが、RT−PCRを用いて、核酸レベルで検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記バイオマーカーが、HE4、CA125、グリコデリン、MMP−7、Muc−1、PAI−1、CTHRC1、インヒビンA、PLAU−R、プロラクチン、KLK−10、KLK−6、SLPIおよびα−1アンチトリプシンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記バイオマーカーが、CA125、HE4、グリコデリン、MMP−7、SLPI、PLAU−R、Muc−1、インヒビンAおよびPAI−1からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第一のアッセイ段階の感度が少なくとも約85%であり、該第一のアッセイ段階の特異性が少なくとも約75%である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第二のアッセイ段階の感度が少なくとも約80%であり、該第二のアッセイ段階の特異性が少なくとも約85%である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第一のアッセイ段階および前記第二のアッセイ段階の組み合わせ感度が少なくとも約70%であり、該第一のアッセイ段階および該第二のアッセイ段階の組み合わせ特異性が少なくとも約95%である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第一のアッセイ段階および前記第二のアッセイ段階を含む組み合わせスクリーニング方法の負の予測価(NPV)が、少なくとも約99%である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
PPVが少なくとも約8%である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第一のアッセイ段階および前記第二のアッセイ段階を含む組み合わせスクリーニング試験が、少なくとも約90%の感度と、少なくとも約98%の特異性と、少なくとも約99.9%のNPVと、少なくとも約10%のPPVとを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第一のバイオマーカーがHE4であり、前記第二のバイオマーカーが、CA125、グリコデリン、Muc−1、PAI−1およびPLAU−Rを含むパネル、CA125およびPAI−1を含むパネル、CA125、グリコデリン、PAI−1およびMMP−7を含むパネル、CA125、グリコデリン、PAI−1およびPLAU−Rを含むパネル、CA125、グリコデリン、PAI−1およびPLAU−Rを含むパネル、グリコデリン、Muc−1、PLAU−RおよびインヒビンAを含むパネル、CA125、Muc−1、グリコデリン、PAI−1およびPLAU−Rを含むパネル、ならびにCA125、MMP−7、グリコデリンおよびPLAU−Rを含むパネルからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記スクリーニング方法が、自動、半自動または手動の様式で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記第一のアッセイ段階および前記第二のアッセイ段階が、単一の試験または別個の試験として行われ、該第一のアッセイ段階が第一の試験を包含し、該第二のアッセイ段階が第二の試験を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するためのスクリーニング方法であって、該方法は、以下:
a)身体試料における複数のバイオマーカーの発現を検出する工程;および
b)数学的モデルを該バイオマーカーの発現レベルのデータに適用して、卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定する工程
を包含する、方法。
【請求項25】
前記数学的モデルが、最良のバイオマーカーを選択するためのロジスティック段階回帰モデル、およびバイオマーカーについてのベストカットオフポイントを選択するために使用される受信者動作特性(ROC)曲線からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
早期段階の卵巣癌を検出するために使用される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
スクリーニングされる前記患者は自覚症状がなく、かつ、卵巣癌の家族暦、または、卵巣癌を発症する危険性が高いことを示す臨床危険因子を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記スクリーニング方法が、閉経後の女性患者集団において行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記身体試料が血液試料または血清試料である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記複数のバイオマーカーが、HE4、CA125、グリコデリン、MMP−7、Muc−1、PAI−1、CTHRC1、インヒビンA、PLAU−R、プロラクチン、KLK−10、KLK−6、SLPI、およびα−1アンチトリプシンからなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記複数のバイオマーカーが、HE4、CA125およびグリコリデンからなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
卵巣癌を有する可能性の高い患者を同定するための、1段階のスクリーニング方法であって、該方法は、身体試料において、HE4、CA125、グリコデリン、MMP−7、Muc−1、PAI−1、CTHRC1、インヒビンA、PLAU−R、プロラクチン、KLK−10、KLK−6、SLPIおよびα−1アンチトリプシン、グリコデリン、HE4およびCA125からなる群より選択される少なくとも3つのバイオマーカーの発現を検出する工程を包含し、該バイオマーカーのうちの少なくとも1つの過剰発現は、該患者が卵巣癌を有する可能性が高いことを示す、方法。
【請求項33】
HE4、グリコリデンおよびCA125からなる群より選択される少なくとも1つのバイオマーカーの過剰発現は、前記患者が卵巣癌を有する可能性が高いことを示す、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
複数の抗体を含むキットであって、該抗体の各々は、卵巣癌において選択的に過剰発現される別個のバイオマーカータンパク質に特異的に結合し、該バイオマーカータンパク質は、HE4、CA125、グリコデリン、MMP−7、Muc−1、PAI−1、CTHRC1、インヒビンA、PLAU−R、プロラクチン、KLK−10、KLK−6、SLPIおよびα−1アンチトリプシンからなる群より選択される、キット。
【請求項35】
前記バイオマーカータンパク質が、CA125、HE4、グリコデリン、MMP−7、SLPI、PLAU−R、Muc−1、インヒビンAおよびPAI−1からなる群より選択される、請求34に記載のキット。
【請求項36】
前記バイオマーカータンパク質に結合する抗体を検出するための化学物質をさらに含む、請求項34に記載のキット。
【請求項37】
請求項1に記載のスクリーニング方法を単一の試験として行うためのキットであって、該試験は、前記第一のアッセイ段階および前記第二のアッセイ段階を含む、キット。
【請求項38】
請求項1に記載の方法の前記第一のアッセイ段階および前記第二のアッセイ段階を行うための、キット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−524438(P2009−524438A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552607(P2008−552607)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/061205
【国際公開番号】WO2007/090076
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(502118993)トライパス イメージング インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】