厚膜製造装置及び厚膜製造方法
【課題】均一な厚膜を容易に形成できる厚膜製造装置及び厚膜製造方法を提供する。
【解決手段】型1、ノズル2、ローラ4、剥離ローラ5及び搬送ローラ6を有する。型1は、厚膜3Aの外形を規定するキャビティ1aと、キャビティ1aから溢れた樹脂3を回収する溝1bを有する。樹脂3を供給するノズル2を、キャビティ1aの上方を水平移動可能に設ける。ローラ4を、キャビティ1a内の樹脂3の表面に接して水平移動可能に設ける。ローラ4の内部に、紫外線照射装置4cを設ける。剥離ローラ5及び搬送ローラ6を、紫外線UVにより樹脂3が硬化した厚膜3Aを付着して回転可能に設ける。
【解決手段】型1、ノズル2、ローラ4、剥離ローラ5及び搬送ローラ6を有する。型1は、厚膜3Aの外形を規定するキャビティ1aと、キャビティ1aから溢れた樹脂3を回収する溝1bを有する。樹脂3を供給するノズル2を、キャビティ1aの上方を水平移動可能に設ける。ローラ4を、キャビティ1a内の樹脂3の表面に接して水平移動可能に設ける。ローラ4の内部に、紫外線照射装置4cを設ける。剥離ローラ5及び搬送ローラ6を、紫外線UVにより樹脂3が硬化した厚膜3Aを付着して回転可能に設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光ディスクのような平板状の記録媒体を製造する際に、厚膜を形成するための厚膜製造装置及び厚膜製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクや光磁気ディスク等の光学読み取り式の円盤状記録媒体は、再生専用のものや、記録された情報の書き換えが可能なものなど、多種多様な規格のものが普及している。かかる記録媒体は、基板に形成された記録面を保護したり、記録面の多層化による高密度記録を実現するために、一対の基板を、樹脂を介して貼り合せることによって製造されている場合が多い。
【0003】
このような貼り合わせ型ディスクの製造は、例えば、以下のように行われる。すなわち、2枚のポリカーボネート製の基板を射出成型し、スパッタ室においてスパッタリングによってレーザ反射用の金属膜(記録膜)を形成する。そして、2枚の基板の接合面に、紫外線硬化型の樹脂を塗布し、スピンコート法によって樹脂を展延する(特許文献1参照)。
【0004】
スピンコート法とは、基板の中心の周囲に樹脂を塗布した後、基板を高速スピンさせることにより、基板上に樹脂による膜を形成する方法である。このように、樹脂の展延により接着層を形成した一対の基板は、真空室に挿入され、真空中で互いの接着層が貼り合わされる。
【0005】
さらに、互いに貼り合わされた基板を真空室から大気圧に出し、全体に紫外線を照射することにより、樹脂を硬化させる。これにより、2枚の基板は強固に接着され、ディスクが完成する。例えば、DVD等の接着層も、上記のようにスピンコート法によって、紫外線硬化型樹脂(1液)を塗布し、厚みを制御している。なお、スピンコート法は、接着層の形成ばかりでなく、記録層、コーティング層の形成にも使用される。
【0006】
【特許文献1】特開2003−233936号公報
【特許文献2】特開平11−110834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のようにスピンコート法によって樹脂を塗布する場合、遠心力によって、基板の内周部に対して、外周部の膜厚が厚くなる傾向がある。このため、スピンコート法による膜の形成は、樹脂の粘度にもよるが、膜厚の均一化において難点を有することが多い。
【0008】
特に、Blu−rayやホログラフィックを利用した記録媒体においては、樹脂によって比較的厚い膜を形成する必要がある。この場合には、スピンコート法によって実現できる均一な厚みの上限を、はるかに超えた厚みが必要となるため、単純なスピンコート法の適用では、製品に要求される厚膜の形成は困難となる。
【0009】
スピンコート法以外の樹脂の塗布方法については、ロールコーティング法、ワイヤバーコーティング法、ダイコーティング法、スクリーン印刷法等がある(特許文献2参照)。しかし、いずれの方法も、膜が厚くなるに従って樹脂の流動を防止することが困難となるため、厚膜の形成には適さない。また、厚膜とした場合の膜厚の均一性の確保も困難である。
【0010】
さらに、厚膜とするために、上記のような方法によって薄膜の形成を繰り返すことにより、薄膜を積層していく方法も考えられる。しかし、かかる場合には、膜の形成回数と形成時間が増大するため、工程が複雑となり、生産性の向上が困難となる。また、製造装置の複雑化にもつながる。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、均一な厚膜を容易に形成できる厚膜製造装置及び厚膜製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような目的を達成するため、請求項1の発明は、記録媒体の基板用の膜を形成する厚膜製造装置において、膜の外形を規定する型と、前記型に膜材料を供給する供給部と、前記供給部により供給された膜材料の表面を均す均し部と、前記均し部によって均された膜材料を硬化させる硬化部と、前記型と前記均し部の少なくとも一方を移動させる駆動部と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、記録媒体の基板用の膜を形成する厚膜製造方法において、型に膜材料を供給し、均し部によって型内の膜材料の表面を均しながら、硬化部によって硬化させることを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、請求項8の厚膜製造方法において、前記硬化部による硬化位置は、前記均し部による均し位置の下若しくは均し方向の後方であることを特徴とする。
【0015】
以上のような請求項1、8及び9の発明では、膜材料を、型内部に供給した状態で、その表面を均し部によって均すことにより、膜材料の流動を防止しつつ、均一な厚膜を簡単に形成できる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の厚膜製造装置において、前記型は、膜材料を充填可能なキャビティを有し、前記キャビティには、前記均し部とともに膜の上面を規定するガイド部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
以上のような請求項2の発明では、均し部とキャビティのガイド部によって、膜材料の上面が規定されるので、均し部と型の相対位置に高い精度が要求されることがなく、容易に膜厚を均一にできる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の厚膜製造装置において、前記型には、前記均し部によって膜材料が均される際に、溢れ出た膜材料の流路が形成されていることを特徴とする。
【0019】
以上のような請求項3の発明では、均し部の均し時に溢れ出た膜材料を、流路を介して回収することにより、再利用することができる。
【0020】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項の厚膜製造装置において、前記型は、膜材料に対して剥離性の良い材質で形成され若しくは当該材質でコーティングされていることを特徴とする。
【0021】
以上のような請求項4の発明では、型から膜材料を容易に剥離できるので、効率のよい厚膜の製造が可能となる。
【0022】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項の厚膜製造装置において、前記硬化部は、膜材料に電磁波を照射する照射装置であることを特徴とする。
【0023】
以上のような請求項5の発明では、型内の膜材料に対して、均し部による均しとともに、電磁波の照射によって、膜材料の外形を保持した状態で硬化させることができるので、膜材料の流動を防止して厚く均一な膜を容易に形成できる。
【0024】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項の厚膜製造装置において、前記膜材料を加熱する加熱装置が設けられていることを特徴とする。
【0025】
以上のような請求項6の発明では、膜材料が熱硬化型の樹脂の場合には、均し部による均しとともに、加熱によって、膜材料の外形を保持した状態で硬化させることができるので、膜材料の流動を防止して厚く均一な膜を容易に形成できる。また、膜材料が熱硬化型でない場合には、加熱によって、粘度を下げて気泡の発生を抑制させることができる。
【0026】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項の厚膜製造装置において、前記均し部が膜材料を均す際に、前記均し部と膜材料との間に介在して膜材料に接するシート部を有することを特徴とする。
【0027】
以上のような請求項7の発明では、膜材料に直接接するのがシート部であるため、均し時の均し部への膜材料の付着を防止できる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、均一な厚膜を容易に形成可能な厚膜製造装置及び厚膜製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態(以下、実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[構成]
まず、本実施形態の構成を説明する。すなわち、本実施形態は、図1〜6に示すように、型1、ノズル2、ローラ4、剥離ローラ5及び搬送ローラ6等を備えている。
【0030】
型1は、図1に示すように、膜の外形を規定するキャビティ1aを有している。キャビティ1aの深さは、必要な膜厚と同等となっている。キャビティ1aは、樹脂3に対して剥離しやすい材質で形成されているか、若しくはキャビティ1aの内壁が、かかる材質によってコーティングされている。例えば、このような材質としては、SiO2、SiN、ZnSSiO2、ZnOGa2O3等の誘電体とすることがが考えられるが、これらには限定されない。
【0031】
また、キャビティ1aの上部は、ローラ4が接触しながら通過することにより、膜の上面を規定することができるガイド部となっている。さらに、型1におけるキャビティ1aの周囲には、キャビティ1aから溢れた樹脂3が流入して外部へ排出される溝1bが形成されている。この溝1bは、図示しない樹脂3の回収装置に連通している。
【0032】
ノズル2は、図示しない樹脂の供給源に接続されており、キャビティ1a内に樹脂3を滴下する手段である(供給部)。本実施形態では、樹脂3としては、紫外線硬化型を使用する。ノズル2は、図示しない駆動機構によって、キャビティ1aの上方を上下方向及び水平方向に移動可能に設けられている。なお、溝1bを経由して回収装置において回収、再生された樹脂3は、供給源から再び供給されるように構成されている。
【0033】
ローラ4は、図2及び図6に示すように、外筒4a、軸4b及び紫外線照射装置4cを有している(均し部)。外筒4aは、石英等の紫外線UVを透過する材質により形成され、軸4bを中心に回動可能に設けられている。軸4bは、図示しない駆動源によって、水平方向に移動可能に設けられている。この軸4bの移動に従って、外筒4aの外周は、キャビティ1a内に充填された樹脂3の表面に接して回転する。
【0034】
さらに、紫外線照射装置4cは、外筒4aを介して樹脂3に紫外線UVを照射可能となるように、外筒4aの内部に設けられている。紫外線照射装置4cは、カバー4dで覆われており、カバー4dの下部の窓から、紫外線UVの照射を局所的に行うように構成されている。本実施形態においては、紫外線UVは、形成される膜の全幅に亘ってローラ4の直下から後方に照射される。なお、紫外線照射装置4cは、軸4b内に設けられた配線を介して電源等に接続されている。
【0035】
剥離ローラ5は、図4に示すように、図示しない軸を中心に回動可能に設けられるとともに、駆動機構によって水平方向に移動可能に設けられている。剥離ローラ5の表面は、厚膜3Aが吸着され易い材質(例えば、ゴム等、但し、これには限定されない)によって形成されており、厚膜3Aはローラ5の表面に吸着されて、キャビティ1aから剥離される。
【0036】
搬送ローラ6は、図5に示すように、剥離ローラ5の外周に付着した厚膜3Aを受け取って、次工程に搬送する手段である。この搬送ローラ6は、図示しない駆動機構により回転する複数のローラを備えている。これらのローラの表面も、厚膜3Aが吸着され易い材質によって形成されており、厚膜3Aはローラの表面に順次吸着されて搬送される。
【0037】
なお、ノズル2の移動と滴下タイミング、ローラ4の移動、紫外線照射装置4cの照射タイミング、剥離ローラ5の移動、搬送ローラ6の回転等は、それぞれの駆動機構の動作タイミングを、制御装置によって制御することにより行われる。この制御装置は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって実現できる。従って、以下に説明する手順で本装置の動作を制御するためのコンピュータプログラム及びこれを記録した記録媒体も、本発明の一態様である。
【0038】
[作用]
以上のような本実施形態の作用を、図1〜6を参照して説明する。すなわち、図1に示すように、下降させたノズル2から樹脂3を滴下させ、水平方向に移動させることにより、キャビティ1a内に樹脂3を充填する。
【0039】
次に、図2及び図6に示すように、キャビティ1a内に充填された樹脂3に接するローラ4を、水平方向に移動させることにより、樹脂3の表面を均していく。このとき、図3に示すように、紫外線照射装置4cによって紫外線UVを照射させながら、ローラ4によって均された直後の樹脂3を硬化させていく。キャビティ1aからはみ出た樹脂3は、溝1bに流れ込み、回収装置にて回収、再生されて、樹脂3の供給源からノズル2に供給される。
【0040】
このように樹脂3が硬化することによって、均一な厚みの厚膜3Aが形成される。この厚膜3Aに対して、図4に示すように、剥離ローラ5を接触させて、水平方向に移動させることにより、剥離ローラ5に厚膜3Aを吸着させて、キャビティ1aから厚膜3Aを巻き取るように剥離させる。
【0041】
剥離された厚膜3Aは、図5に示すように、回転する搬送ローラ6に付着させることにより渡されて、複数のローラを順次経由して搬送される。このとき、搬送ローラ6によって厚膜3Aが冷却されて安定する。
【0042】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、キャビティ1aに樹脂3を供給して、ローラ4で均すことによって、厚みが均一な厚膜3Aを形成することができる。
【0043】
また、ローラ4を回転移動させながら紫外線照射を行うことで、ローラ4で均した瞬間に硬化させることができる。このため、均し終わった直後の樹脂3の流動が防止されるので、スピンコート法に比べて、均一性の高い厚膜を、非常に短時間で効率よく製造できる。特に、均し終わった直後の樹脂3の表面が、その後の均し動作の影響を受けて波打ったり変形したりすることがない。
【0044】
また、キャビティ1a上部のガイド部により、膜厚が自動的に決まるので、ローラ4と型1との間に高い精度が要求されることがなく、容易に膜厚を均一にできる。また、ローラ4により押し流された樹脂3は、溝1bに流れ込み、再利用することができるので、樹脂3の廃棄量が低減される。
【0045】
また、型1のキャビティ1aは、樹脂3に対して剥離性の良い材質で形成され若しくは当該材質でコーティングされているので、硬化後の厚膜3Aを容易に剥離でき、効率のよい製造が可能となる。さらに、搬送ローラ6によって搬送しながら、効率よく冷却させて安定させることができる。
【0046】
[他の実施形態]
本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではない。例えば、型及びキャビティの形状や大きさに関しては、製造する膜に応じて自由に設定可能である。例えば、一般的なディスクに使用する場合には、中央に穴が形成されるように構成されていてもよい。溢れた膜材料の流路を設けるか設けないか、設ける位置についても、自由である。型への膜材料の供給方法も、ノズルによる滴下には限定されない。さらに、均し部が型のキャビティ内を移動するように構成すれば、膜材料の供給量、均し部の圧力、回転速度や移動時間等を制御することによって、膜厚の調整が可能となる。
【0047】
また、膜材料を均す際には、型及び均し部が相対的に移動すればよい。例えば、上記の実施形態ではローラが移動していたが、型が移動してもよいし、ローラ及び型の双方が移動してもよい。
【0048】
また、図7及び図8に示すように、外筒4aを回転しないカバー4eで覆い、カバー4e内の鏡面を反射した紫外線UVによって、照射が行われるようにしてもよい。この場合の照射方向としては、例えば、図7に示すように、ローラ4の直下及び後方とすることが望ましい。図9に示すように、カバー4eの形状を変えることにより、照度や照射方向を変えることもできる。なお、樹脂の種類や厚み等によっては樹脂が硬化し難い場合もあり、図10に示すように、均し前にあらかじめ前方に照射されるようにすることも考えられる。
【0049】
また、均し部は、膜材料の表面を均すことができればよいので、必ずしもローラには限定されない。例えば、図11に示すように、平板状のスキージ7を移動させることによって均す構造も実現可能である。この場合にも、スキージ7の進行方向の後方に紫外線照射装置4cを追従させるようにすることにより、均し後の硬化を行わせることができる。
【0050】
また、図12に示すように、紫外線照射装置4cをスキージ7に内蔵させて、スキージ7の内側の鏡面を反射した紫外線UVが、樹脂3に照射されるように構成してもよい。なお、スキージ7の形状は、図示したものには限定されない。
【0051】
また、硬化部の位置についても、種々の態様が考えられる。例えば、図13に示すように、ローラ4の後方において、ローラ4に紫外線照射装置4cが追従するように構成してもよい。図14に示すように、キャビティ1aを含む型1を、紫外線UVを透過する材料(例えば、石英等)で形成し、キャビティ1aの下方から、樹脂3に紫外線UVを照射する構成としてもよい。この場合、ローラ4に対して、その直下若しくは後方から、紫外線照射装置4cが追従するように構成することが望ましい。
【0052】
もし、上方からのみ紫外線UVを照射する場合には、膜が厚い場合には、表面側からのみ硬化が開始して、アウトガスなどにより下面側に生じる空洞(気泡)が残留する可能性がある。しかし、図14に示すように下方から紫外線UVを照射すれば、かかる気泡は上方への逃げが確保されるので、残留することが防止できる。また、同様に紫外線照射装置4cをローラ4と別体とした図13の場合に比べて、紫外線照射装置4cをローラ4の下に配置できるので、紫外線UV照射のためにローラ4に要求される可動範囲を少なく抑えることができる。
【0053】
さらに、使用する樹脂を熱硬化型とし、図15に示すように、外筒4aを加熱する加熱装置4fを設けて、外筒4aで均しながら、硬化させることも可能である。加熱装置4fとしては、ヒータや赤外線照射装置が考えられるが、これには限定されない。赤外線照射装置とすれば、上記の紫外線照射装置と同様の手法によって、局所的(直下、後方等)に加熱させることも可能である。図16に示すように、ローラ4の後方から追従して厚膜3Aに接する冷却ローラ4gを設けて、加熱直後に冷却することにより、ローラ4への樹脂3の貼り付きを防止してもよい。
【0054】
さらに、図17に示すように、ローラ4と樹脂3との間に、樹脂等によるフィルム(シート部)8を介在させることにより、ローラ4への樹脂3の貼り付きを防止してもよい。かかる場合には、円滑なフィルム8の表面により、厚膜3Aの表面をより均一化することができる。また、フィルム8へ厚膜3Aを付着させて、型1から剥離させることもできる。
【0055】
上記のように、ローラ4は樹脂3の貼り付きを防止する必要があるが、その一方で、剥離ローラ5及び搬送ローラ6には厚膜3Aが吸着される必要がある。これは、各ローラの表面粗さによって左右されるため、用途に応じて表面粗さが変わるように、材料の選択や表面処理を行う必要がある。
【0056】
また、図18に示すように、紫外線硬化型の樹脂3を用いる場合に、型1の内部にヒータ等の加熱装置9を設けて、キャビティ1aへの樹脂3の供給時に、樹脂3を加熱することで粘度を下げて、気泡の発生を抑制することも可能である。
【0057】
なお、膜材料となる樹脂としては、現在又は将来において利用可能なあらゆる材質のものが適用可能である。放射線硬化型の樹脂のように、外部から広義の電磁波を照射したり、熱硬化型の樹脂のように、温度変化を加えることによって硬化するものも適用可能である。
【0058】
製造された厚膜は、基板自体、接着層、記録層、コーティング層のいずれにも使用できる(具体的な膜の厚さは問わない)。本発明の適用対象となる記録媒体は、その大きさ、形状、材質、記録層の数等は自由であり、既存のCDやDVD等の規格に限定されず、将来において採用されるあらゆる規格に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態における樹脂供給を示す簡略断面図である。
【図2】図1の実施形態におけるローラによる樹脂の均し前の状態を示す簡略断面図である。
【図3】図1の実施形態におけるローラによる樹脂の均し及び硬化後の状態を示す簡略断面図である。
【図4】図1の実施形態における厚膜の剥離を示す簡略断面図である。
【図5】図1の実施形態における厚膜の搬送を示す簡略断面図である。
【図6】図1の実施形態における紫外線の照射を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態におけるローラ及び紫外線照射装置を示す簡略断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態におけるローラ及び紫外線照射装置を示す簡略断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態におけるスキージ及び紫外線照射装置を示す簡略断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態におけるスキージ及び紫外線照射装置を示す簡略断面図である。
【図13】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【図15】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【図16】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【図17】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【図18】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1…型
1a…キャビティ
1b…溝
2…ノズル
3…樹脂
3A…厚膜
4…ローラ
4a…外筒
4b…軸
4c…紫外線照射装置
4d,4e…カバー
4f,9…加熱装置
4g…冷却ローラ
5…剥離ローラ
6…搬送ローラ
7…スキージ
8…フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光ディスクのような平板状の記録媒体を製造する際に、厚膜を形成するための厚膜製造装置及び厚膜製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクや光磁気ディスク等の光学読み取り式の円盤状記録媒体は、再生専用のものや、記録された情報の書き換えが可能なものなど、多種多様な規格のものが普及している。かかる記録媒体は、基板に形成された記録面を保護したり、記録面の多層化による高密度記録を実現するために、一対の基板を、樹脂を介して貼り合せることによって製造されている場合が多い。
【0003】
このような貼り合わせ型ディスクの製造は、例えば、以下のように行われる。すなわち、2枚のポリカーボネート製の基板を射出成型し、スパッタ室においてスパッタリングによってレーザ反射用の金属膜(記録膜)を形成する。そして、2枚の基板の接合面に、紫外線硬化型の樹脂を塗布し、スピンコート法によって樹脂を展延する(特許文献1参照)。
【0004】
スピンコート法とは、基板の中心の周囲に樹脂を塗布した後、基板を高速スピンさせることにより、基板上に樹脂による膜を形成する方法である。このように、樹脂の展延により接着層を形成した一対の基板は、真空室に挿入され、真空中で互いの接着層が貼り合わされる。
【0005】
さらに、互いに貼り合わされた基板を真空室から大気圧に出し、全体に紫外線を照射することにより、樹脂を硬化させる。これにより、2枚の基板は強固に接着され、ディスクが完成する。例えば、DVD等の接着層も、上記のようにスピンコート法によって、紫外線硬化型樹脂(1液)を塗布し、厚みを制御している。なお、スピンコート法は、接着層の形成ばかりでなく、記録層、コーティング層の形成にも使用される。
【0006】
【特許文献1】特開2003−233936号公報
【特許文献2】特開平11−110834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のようにスピンコート法によって樹脂を塗布する場合、遠心力によって、基板の内周部に対して、外周部の膜厚が厚くなる傾向がある。このため、スピンコート法による膜の形成は、樹脂の粘度にもよるが、膜厚の均一化において難点を有することが多い。
【0008】
特に、Blu−rayやホログラフィックを利用した記録媒体においては、樹脂によって比較的厚い膜を形成する必要がある。この場合には、スピンコート法によって実現できる均一な厚みの上限を、はるかに超えた厚みが必要となるため、単純なスピンコート法の適用では、製品に要求される厚膜の形成は困難となる。
【0009】
スピンコート法以外の樹脂の塗布方法については、ロールコーティング法、ワイヤバーコーティング法、ダイコーティング法、スクリーン印刷法等がある(特許文献2参照)。しかし、いずれの方法も、膜が厚くなるに従って樹脂の流動を防止することが困難となるため、厚膜の形成には適さない。また、厚膜とした場合の膜厚の均一性の確保も困難である。
【0010】
さらに、厚膜とするために、上記のような方法によって薄膜の形成を繰り返すことにより、薄膜を積層していく方法も考えられる。しかし、かかる場合には、膜の形成回数と形成時間が増大するため、工程が複雑となり、生産性の向上が困難となる。また、製造装置の複雑化にもつながる。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、均一な厚膜を容易に形成できる厚膜製造装置及び厚膜製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような目的を達成するため、請求項1の発明は、記録媒体の基板用の膜を形成する厚膜製造装置において、膜の外形を規定する型と、前記型に膜材料を供給する供給部と、前記供給部により供給された膜材料の表面を均す均し部と、前記均し部によって均された膜材料を硬化させる硬化部と、前記型と前記均し部の少なくとも一方を移動させる駆動部と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、記録媒体の基板用の膜を形成する厚膜製造方法において、型に膜材料を供給し、均し部によって型内の膜材料の表面を均しながら、硬化部によって硬化させることを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、請求項8の厚膜製造方法において、前記硬化部による硬化位置は、前記均し部による均し位置の下若しくは均し方向の後方であることを特徴とする。
【0015】
以上のような請求項1、8及び9の発明では、膜材料を、型内部に供給した状態で、その表面を均し部によって均すことにより、膜材料の流動を防止しつつ、均一な厚膜を簡単に形成できる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の厚膜製造装置において、前記型は、膜材料を充填可能なキャビティを有し、前記キャビティには、前記均し部とともに膜の上面を規定するガイド部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
以上のような請求項2の発明では、均し部とキャビティのガイド部によって、膜材料の上面が規定されるので、均し部と型の相対位置に高い精度が要求されることがなく、容易に膜厚を均一にできる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の厚膜製造装置において、前記型には、前記均し部によって膜材料が均される際に、溢れ出た膜材料の流路が形成されていることを特徴とする。
【0019】
以上のような請求項3の発明では、均し部の均し時に溢れ出た膜材料を、流路を介して回収することにより、再利用することができる。
【0020】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項の厚膜製造装置において、前記型は、膜材料に対して剥離性の良い材質で形成され若しくは当該材質でコーティングされていることを特徴とする。
【0021】
以上のような請求項4の発明では、型から膜材料を容易に剥離できるので、効率のよい厚膜の製造が可能となる。
【0022】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項の厚膜製造装置において、前記硬化部は、膜材料に電磁波を照射する照射装置であることを特徴とする。
【0023】
以上のような請求項5の発明では、型内の膜材料に対して、均し部による均しとともに、電磁波の照射によって、膜材料の外形を保持した状態で硬化させることができるので、膜材料の流動を防止して厚く均一な膜を容易に形成できる。
【0024】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項の厚膜製造装置において、前記膜材料を加熱する加熱装置が設けられていることを特徴とする。
【0025】
以上のような請求項6の発明では、膜材料が熱硬化型の樹脂の場合には、均し部による均しとともに、加熱によって、膜材料の外形を保持した状態で硬化させることができるので、膜材料の流動を防止して厚く均一な膜を容易に形成できる。また、膜材料が熱硬化型でない場合には、加熱によって、粘度を下げて気泡の発生を抑制させることができる。
【0026】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項の厚膜製造装置において、前記均し部が膜材料を均す際に、前記均し部と膜材料との間に介在して膜材料に接するシート部を有することを特徴とする。
【0027】
以上のような請求項7の発明では、膜材料に直接接するのがシート部であるため、均し時の均し部への膜材料の付着を防止できる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、均一な厚膜を容易に形成可能な厚膜製造装置及び厚膜製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態(以下、実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[構成]
まず、本実施形態の構成を説明する。すなわち、本実施形態は、図1〜6に示すように、型1、ノズル2、ローラ4、剥離ローラ5及び搬送ローラ6等を備えている。
【0030】
型1は、図1に示すように、膜の外形を規定するキャビティ1aを有している。キャビティ1aの深さは、必要な膜厚と同等となっている。キャビティ1aは、樹脂3に対して剥離しやすい材質で形成されているか、若しくはキャビティ1aの内壁が、かかる材質によってコーティングされている。例えば、このような材質としては、SiO2、SiN、ZnSSiO2、ZnOGa2O3等の誘電体とすることがが考えられるが、これらには限定されない。
【0031】
また、キャビティ1aの上部は、ローラ4が接触しながら通過することにより、膜の上面を規定することができるガイド部となっている。さらに、型1におけるキャビティ1aの周囲には、キャビティ1aから溢れた樹脂3が流入して外部へ排出される溝1bが形成されている。この溝1bは、図示しない樹脂3の回収装置に連通している。
【0032】
ノズル2は、図示しない樹脂の供給源に接続されており、キャビティ1a内に樹脂3を滴下する手段である(供給部)。本実施形態では、樹脂3としては、紫外線硬化型を使用する。ノズル2は、図示しない駆動機構によって、キャビティ1aの上方を上下方向及び水平方向に移動可能に設けられている。なお、溝1bを経由して回収装置において回収、再生された樹脂3は、供給源から再び供給されるように構成されている。
【0033】
ローラ4は、図2及び図6に示すように、外筒4a、軸4b及び紫外線照射装置4cを有している(均し部)。外筒4aは、石英等の紫外線UVを透過する材質により形成され、軸4bを中心に回動可能に設けられている。軸4bは、図示しない駆動源によって、水平方向に移動可能に設けられている。この軸4bの移動に従って、外筒4aの外周は、キャビティ1a内に充填された樹脂3の表面に接して回転する。
【0034】
さらに、紫外線照射装置4cは、外筒4aを介して樹脂3に紫外線UVを照射可能となるように、外筒4aの内部に設けられている。紫外線照射装置4cは、カバー4dで覆われており、カバー4dの下部の窓から、紫外線UVの照射を局所的に行うように構成されている。本実施形態においては、紫外線UVは、形成される膜の全幅に亘ってローラ4の直下から後方に照射される。なお、紫外線照射装置4cは、軸4b内に設けられた配線を介して電源等に接続されている。
【0035】
剥離ローラ5は、図4に示すように、図示しない軸を中心に回動可能に設けられるとともに、駆動機構によって水平方向に移動可能に設けられている。剥離ローラ5の表面は、厚膜3Aが吸着され易い材質(例えば、ゴム等、但し、これには限定されない)によって形成されており、厚膜3Aはローラ5の表面に吸着されて、キャビティ1aから剥離される。
【0036】
搬送ローラ6は、図5に示すように、剥離ローラ5の外周に付着した厚膜3Aを受け取って、次工程に搬送する手段である。この搬送ローラ6は、図示しない駆動機構により回転する複数のローラを備えている。これらのローラの表面も、厚膜3Aが吸着され易い材質によって形成されており、厚膜3Aはローラの表面に順次吸着されて搬送される。
【0037】
なお、ノズル2の移動と滴下タイミング、ローラ4の移動、紫外線照射装置4cの照射タイミング、剥離ローラ5の移動、搬送ローラ6の回転等は、それぞれの駆動機構の動作タイミングを、制御装置によって制御することにより行われる。この制御装置は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって実現できる。従って、以下に説明する手順で本装置の動作を制御するためのコンピュータプログラム及びこれを記録した記録媒体も、本発明の一態様である。
【0038】
[作用]
以上のような本実施形態の作用を、図1〜6を参照して説明する。すなわち、図1に示すように、下降させたノズル2から樹脂3を滴下させ、水平方向に移動させることにより、キャビティ1a内に樹脂3を充填する。
【0039】
次に、図2及び図6に示すように、キャビティ1a内に充填された樹脂3に接するローラ4を、水平方向に移動させることにより、樹脂3の表面を均していく。このとき、図3に示すように、紫外線照射装置4cによって紫外線UVを照射させながら、ローラ4によって均された直後の樹脂3を硬化させていく。キャビティ1aからはみ出た樹脂3は、溝1bに流れ込み、回収装置にて回収、再生されて、樹脂3の供給源からノズル2に供給される。
【0040】
このように樹脂3が硬化することによって、均一な厚みの厚膜3Aが形成される。この厚膜3Aに対して、図4に示すように、剥離ローラ5を接触させて、水平方向に移動させることにより、剥離ローラ5に厚膜3Aを吸着させて、キャビティ1aから厚膜3Aを巻き取るように剥離させる。
【0041】
剥離された厚膜3Aは、図5に示すように、回転する搬送ローラ6に付着させることにより渡されて、複数のローラを順次経由して搬送される。このとき、搬送ローラ6によって厚膜3Aが冷却されて安定する。
【0042】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、キャビティ1aに樹脂3を供給して、ローラ4で均すことによって、厚みが均一な厚膜3Aを形成することができる。
【0043】
また、ローラ4を回転移動させながら紫外線照射を行うことで、ローラ4で均した瞬間に硬化させることができる。このため、均し終わった直後の樹脂3の流動が防止されるので、スピンコート法に比べて、均一性の高い厚膜を、非常に短時間で効率よく製造できる。特に、均し終わった直後の樹脂3の表面が、その後の均し動作の影響を受けて波打ったり変形したりすることがない。
【0044】
また、キャビティ1a上部のガイド部により、膜厚が自動的に決まるので、ローラ4と型1との間に高い精度が要求されることがなく、容易に膜厚を均一にできる。また、ローラ4により押し流された樹脂3は、溝1bに流れ込み、再利用することができるので、樹脂3の廃棄量が低減される。
【0045】
また、型1のキャビティ1aは、樹脂3に対して剥離性の良い材質で形成され若しくは当該材質でコーティングされているので、硬化後の厚膜3Aを容易に剥離でき、効率のよい製造が可能となる。さらに、搬送ローラ6によって搬送しながら、効率よく冷却させて安定させることができる。
【0046】
[他の実施形態]
本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではない。例えば、型及びキャビティの形状や大きさに関しては、製造する膜に応じて自由に設定可能である。例えば、一般的なディスクに使用する場合には、中央に穴が形成されるように構成されていてもよい。溢れた膜材料の流路を設けるか設けないか、設ける位置についても、自由である。型への膜材料の供給方法も、ノズルによる滴下には限定されない。さらに、均し部が型のキャビティ内を移動するように構成すれば、膜材料の供給量、均し部の圧力、回転速度や移動時間等を制御することによって、膜厚の調整が可能となる。
【0047】
また、膜材料を均す際には、型及び均し部が相対的に移動すればよい。例えば、上記の実施形態ではローラが移動していたが、型が移動してもよいし、ローラ及び型の双方が移動してもよい。
【0048】
また、図7及び図8に示すように、外筒4aを回転しないカバー4eで覆い、カバー4e内の鏡面を反射した紫外線UVによって、照射が行われるようにしてもよい。この場合の照射方向としては、例えば、図7に示すように、ローラ4の直下及び後方とすることが望ましい。図9に示すように、カバー4eの形状を変えることにより、照度や照射方向を変えることもできる。なお、樹脂の種類や厚み等によっては樹脂が硬化し難い場合もあり、図10に示すように、均し前にあらかじめ前方に照射されるようにすることも考えられる。
【0049】
また、均し部は、膜材料の表面を均すことができればよいので、必ずしもローラには限定されない。例えば、図11に示すように、平板状のスキージ7を移動させることによって均す構造も実現可能である。この場合にも、スキージ7の進行方向の後方に紫外線照射装置4cを追従させるようにすることにより、均し後の硬化を行わせることができる。
【0050】
また、図12に示すように、紫外線照射装置4cをスキージ7に内蔵させて、スキージ7の内側の鏡面を反射した紫外線UVが、樹脂3に照射されるように構成してもよい。なお、スキージ7の形状は、図示したものには限定されない。
【0051】
また、硬化部の位置についても、種々の態様が考えられる。例えば、図13に示すように、ローラ4の後方において、ローラ4に紫外線照射装置4cが追従するように構成してもよい。図14に示すように、キャビティ1aを含む型1を、紫外線UVを透過する材料(例えば、石英等)で形成し、キャビティ1aの下方から、樹脂3に紫外線UVを照射する構成としてもよい。この場合、ローラ4に対して、その直下若しくは後方から、紫外線照射装置4cが追従するように構成することが望ましい。
【0052】
もし、上方からのみ紫外線UVを照射する場合には、膜が厚い場合には、表面側からのみ硬化が開始して、アウトガスなどにより下面側に生じる空洞(気泡)が残留する可能性がある。しかし、図14に示すように下方から紫外線UVを照射すれば、かかる気泡は上方への逃げが確保されるので、残留することが防止できる。また、同様に紫外線照射装置4cをローラ4と別体とした図13の場合に比べて、紫外線照射装置4cをローラ4の下に配置できるので、紫外線UV照射のためにローラ4に要求される可動範囲を少なく抑えることができる。
【0053】
さらに、使用する樹脂を熱硬化型とし、図15に示すように、外筒4aを加熱する加熱装置4fを設けて、外筒4aで均しながら、硬化させることも可能である。加熱装置4fとしては、ヒータや赤外線照射装置が考えられるが、これには限定されない。赤外線照射装置とすれば、上記の紫外線照射装置と同様の手法によって、局所的(直下、後方等)に加熱させることも可能である。図16に示すように、ローラ4の後方から追従して厚膜3Aに接する冷却ローラ4gを設けて、加熱直後に冷却することにより、ローラ4への樹脂3の貼り付きを防止してもよい。
【0054】
さらに、図17に示すように、ローラ4と樹脂3との間に、樹脂等によるフィルム(シート部)8を介在させることにより、ローラ4への樹脂3の貼り付きを防止してもよい。かかる場合には、円滑なフィルム8の表面により、厚膜3Aの表面をより均一化することができる。また、フィルム8へ厚膜3Aを付着させて、型1から剥離させることもできる。
【0055】
上記のように、ローラ4は樹脂3の貼り付きを防止する必要があるが、その一方で、剥離ローラ5及び搬送ローラ6には厚膜3Aが吸着される必要がある。これは、各ローラの表面粗さによって左右されるため、用途に応じて表面粗さが変わるように、材料の選択や表面処理を行う必要がある。
【0056】
また、図18に示すように、紫外線硬化型の樹脂3を用いる場合に、型1の内部にヒータ等の加熱装置9を設けて、キャビティ1aへの樹脂3の供給時に、樹脂3を加熱することで粘度を下げて、気泡の発生を抑制することも可能である。
【0057】
なお、膜材料となる樹脂としては、現在又は将来において利用可能なあらゆる材質のものが適用可能である。放射線硬化型の樹脂のように、外部から広義の電磁波を照射したり、熱硬化型の樹脂のように、温度変化を加えることによって硬化するものも適用可能である。
【0058】
製造された厚膜は、基板自体、接着層、記録層、コーティング層のいずれにも使用できる(具体的な膜の厚さは問わない)。本発明の適用対象となる記録媒体は、その大きさ、形状、材質、記録層の数等は自由であり、既存のCDやDVD等の規格に限定されず、将来において採用されるあらゆる規格に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態における樹脂供給を示す簡略断面図である。
【図2】図1の実施形態におけるローラによる樹脂の均し前の状態を示す簡略断面図である。
【図3】図1の実施形態におけるローラによる樹脂の均し及び硬化後の状態を示す簡略断面図である。
【図4】図1の実施形態における厚膜の剥離を示す簡略断面図である。
【図5】図1の実施形態における厚膜の搬送を示す簡略断面図である。
【図6】図1の実施形態における紫外線の照射を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態におけるローラ及び紫外線照射装置を示す簡略断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態におけるローラ及び紫外線照射装置を示す簡略断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態におけるスキージ及び紫外線照射装置を示す簡略断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態におけるスキージ及び紫外線照射装置を示す簡略断面図である。
【図13】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【図15】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【図16】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【図17】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【図18】本発明の他の実施形態を示す簡略断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1…型
1a…キャビティ
1b…溝
2…ノズル
3…樹脂
3A…厚膜
4…ローラ
4a…外筒
4b…軸
4c…紫外線照射装置
4d,4e…カバー
4f,9…加熱装置
4g…冷却ローラ
5…剥離ローラ
6…搬送ローラ
7…スキージ
8…フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の基板用の膜を形成する厚膜製造装置において、
膜の外形を規定する型と、
前記型に膜材料を供給する供給部と、
前記供給部により供給された膜材料の表面を均す均し部と、
前記均し部によって均された膜材料を硬化させる硬化部と、
前記型と前記均し部の少なくとも一方を移動させる駆動部と、
を有することを特徴とする厚膜製造装置。
【請求項2】
前記型は、膜材料を充填可能なキャビティを有し、
前記キャビティには、前記均し部とともに膜の上面を規定するガイド部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の厚膜製造装置。
【請求項3】
前記型には、前記均し部によって膜材料が均される際に、溢れ出た膜材料の流路が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の厚膜製造装置。
【請求項4】
前記型は、膜材料に対して剥離性の良い材質で形成され若しくは当該材質でコーティングされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の厚膜製造装置。
【請求項5】
前記硬化部は、膜材料に電磁波を照射する照射装置であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の厚膜製造装置。
【請求項6】
前記膜材料を加熱する加熱装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の厚膜製造装置。
【請求項7】
前記均し部が膜材料を均す際に、前記均し部と膜材料との間に介在して膜材料に接するシート部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の厚膜製造装置。
【請求項8】
記録媒体の基板用の膜を形成する厚膜製造方法において、
型に膜材料を供給し、
均し部によって型内の膜材料の表面を均しながら、硬化部によって硬化させることを特徴とする厚膜製造方法。
【請求項9】
前記硬化部による硬化位置は、前記均し部による均し位置の下若しくは均し方向の後方であることを特徴とする請求項8記載の厚膜製造方法。
【請求項1】
記録媒体の基板用の膜を形成する厚膜製造装置において、
膜の外形を規定する型と、
前記型に膜材料を供給する供給部と、
前記供給部により供給された膜材料の表面を均す均し部と、
前記均し部によって均された膜材料を硬化させる硬化部と、
前記型と前記均し部の少なくとも一方を移動させる駆動部と、
を有することを特徴とする厚膜製造装置。
【請求項2】
前記型は、膜材料を充填可能なキャビティを有し、
前記キャビティには、前記均し部とともに膜の上面を規定するガイド部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の厚膜製造装置。
【請求項3】
前記型には、前記均し部によって膜材料が均される際に、溢れ出た膜材料の流路が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の厚膜製造装置。
【請求項4】
前記型は、膜材料に対して剥離性の良い材質で形成され若しくは当該材質でコーティングされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の厚膜製造装置。
【請求項5】
前記硬化部は、膜材料に電磁波を照射する照射装置であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の厚膜製造装置。
【請求項6】
前記膜材料を加熱する加熱装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の厚膜製造装置。
【請求項7】
前記均し部が膜材料を均す際に、前記均し部と膜材料との間に介在して膜材料に接するシート部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の厚膜製造装置。
【請求項8】
記録媒体の基板用の膜を形成する厚膜製造方法において、
型に膜材料を供給し、
均し部によって型内の膜材料の表面を均しながら、硬化部によって硬化させることを特徴とする厚膜製造方法。
【請求項9】
前記硬化部による硬化位置は、前記均し部による均し位置の下若しくは均し方向の後方であることを特徴とする請求項8記載の厚膜製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−93757(P2009−93757A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264136(P2007−264136)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】
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