説明

原子力発電養生用難燃性樹脂フィルム

【課題】高度な難燃性を有する原子力発電養生用難燃性フィルムを提供する。
【解決手段】原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムは、ランダムポリプロピレン系樹脂5〜95重量部及び熱可塑性エラストマー5〜95重量部の計100重量部に対してNOR型ヒンダードアミン誘導体0.5〜3.0重量部を含有する基層の表裏両面に、ランダムポリプロピレン系樹脂100重量部に対してNOR型ヒンダードアミン誘導体0.5〜3.0重量部を含有する外層が積層された構造を有する積層フィルムであって、該積層フィルムを構成する樹脂組成物のメルトフローレート(JIS K7210、230℃、2.16kgf)が40g/10分以上、且つヘイズ値5%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度の難燃性を有する原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の放射性物質を取り扱う施設においては、点検・修理業務が行われる際に、被爆事故を防ぐために、機器、床、壁等に養生フィルムを被覆したり、シート類で特定エリアを仕切るために樹脂フィルムや樹脂シートが用いられている。
【0003】
このようなフィルムやシートには、火災を防止するための高度な難燃性や、作業上の効率性と安全性を確保するための透明性、被覆の施工性を満たすべく柔軟性等、さまざまな性能が要求されており、かかる要求をみたすべく、所要の検討がなされてきた。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、メルトフローレートが3〜20のポリプロピレンホモポリマー樹脂100質量部に対し、NOR型光安定剤0.2質量部から1.6質量部を配合してなり、難燃性の指標である限界酸素指数が28以上であり、厚みが30μm〜100
μmである原子力発電所用養生シートが記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、3層からなる原子力施設用養生フィルムにおいて、中層が、熱可塑性ポリウレタン樹脂100重量部とメラミンシアヌレート10〜50重量部とを含む組成物からなる層であって、該中層の両面に形成される外層が、ポリエステル樹脂100重量部とメラミンシアヌレート0〜50重量部とを含む組成物からなる層であることを特徴とする原子力施設用養生フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−238482号公報
【特許文献2】特開2005−349612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、原子力発電養生用に用いられる樹脂フィルムとして要求される、高度な難燃性及び透明性を満たすものは得られていない。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、優れた難燃性及び透明性を有する原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、(1)ランダムポリプロピレン系樹脂5〜95重量部及び熱可塑性エラストマー5〜95重量部の計100重量部に対してNOR型ヒンダードアミン誘導体0.5〜3.0重量部を含有する基層の表裏両面に、ランダムポリプロピレン系樹脂100
重量部に対してNOR型ヒンダードアミン誘導体0.5〜3.0重量部を含有する外層が積層された構造を有する積層フィルムであって、該積層フィルムを構成する樹脂組成物のメルトフローレート(JIS K7210、230℃、2.16kgf)が40g/10
分以上、且つヘイズ値5%以下であることを特徴とする原子力発電養生用難燃性樹脂フィルム、
(2)前記熱可塑性エラストマーはハードセグメント部がメタロセン触媒を用いて重合させたエチレン/プロピレン共重合体ブロックである多段重合で得られる熱可塑性エラストマーである上記(1)に記載の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルム、
(3)難燃性樹脂フィルムを構成する樹脂組成物のメルトフローレート(JISK7210、230℃、2.16kgf)が50g/10分以上である上記(1)又は(2)に記載の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルム
(4)酸素指数が 26.0以上である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原子力発電所等の放射性物質を取り扱う施設において用いられるフィルムとして要求される高度な難燃性及び透明性を有し、且つ機械強度及び柔軟性に優れる原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において用いられるランダムポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、プロピレンとプロピレン以外のモノマーとをランダムに共重合したものであればよく、例えば、エチレンや1−ブテン用いた共重合体などが用いられる。これによれば、プロピレン単位のみからなるポリプロピレン樹脂やブロックポリプロピレン系樹脂に比べ、透明性と柔軟性に優れた樹脂フィルムを得ることができる。
【0012】
本発明において用いられるNOR型ヒンダードアミン誘導体としては、特に限定されず、ピペリジン環のイミノ基(>N−H)のHがアルコキシル基(−OR)に置換されたヒンダードアミン系化合物の誘導体であればいずれも用いられる。
【0013】
本発明において用いられる熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましく、例えばイソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びアクリロニトリル−イソプレンゴム等のジエン系ゴム(エラストマー)、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム、結晶融解熱(ΔH)が100g/J以下である低結晶性プロピレン単独重合体、多段重合法によって得られるポリオレフィン、上記ゴム(成分)とポリエチレン樹脂及び/またはポリプロピレン樹脂との混合物を動的架橋して得られるポリオレフィン等が挙げられる。
【0014】
なお、前記結晶融解熱(ΔH)とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の速度で溶解したときの融解ヒ゜ーク面積より計算した値のことであり、また、多段重合法によって得られるポリオレフィンとは、反応器中で(i)ハードセグメントと、(ii)ソフトセグメントとが2段階以上で多段重合されてなる共重合体である。(i)ハードセグメントとしては、プロピレン単独重合体ブロック、あるいはプロピレンとα−オレフィンとの共重合体ブロック、例えば、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン等の2元又は3元共重合体ブロックが挙げられる。 また、(ii)ソフトセグメントとしては、エチレン単独重合体ブロック、あるいはエチレンとα−オレフィンとの共重合体ブロック、例えば、エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン等の2元又は3元共重合体ブロックが挙げられる。
【0015】
本発明の好ましい態様においては、前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、特に、透明性に優れることから(i)ハードセグメント部がメタロセン触媒を用いて重合させたエチレン/プロピレン共重合体ブロックのものが良い。これによれば、透明性に優れるため、原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムの内外の一方から、他方を識別し易くなることから、これを用いた際の作業上の効率性や安全性を確保することができる。
【0016】
本発明において、原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムの主成分である、上述のランダムポリプロピレン系樹脂、熱可塑性エラストマー及びNOR型ヒンダードアミン誘導体の3成分の合計含有量は、原子力発電養生用難燃性樹脂フィルム全体の80〜100重量%であることが好ましい。
【0017】
本発明の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムを構成する各層には、上述の成分の他に、必要に応じて、他の合成樹脂や各種添加剤を含有することができ、例えば熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤及び着色剤等を使用することができるが、上述の3主要成分以外の成分の含有量は原子力発電養生用難燃性樹脂フィルム全体の20重量%以下であることが好ましい。
【0018】
混合する他の合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)やスチレン−ブタジエンブロック共重合体等のスチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマー及びスチレン−イソプレン共重合ゴム等のスチレン系熱可塑性エラストマー(これらの水素添加物を含む)が挙げられる。
【0019】
本発明の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムは、基層の表裏両面に、外層が積層された3層構造を有する積層フィルムであって、該積層フィルムを構成する樹脂組成物のメルトフローレート(JIS K7210、230℃、2.16kgf)が40g/10分以上、且つヘイズ値5%以下である原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムである。
【0020】
前記基層とは、ランダムポリプロピレン系樹脂5〜95重量部及び熱可塑性エラストマー5〜95重量部の計100重量部に対して、NOR型ヒンダードアミン誘導体0.5〜3.0重量部を含有する層である。また、前記外層とは、ランダムポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、NOR型ヒンダードアミン誘導体0.5〜3.0重量部を含有する層である。
【0021】
このように、本発明の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムは、ポリ塩化ビニル系樹脂や、ハロゲン化合物等の難燃剤を含有しないため、廃棄時の有害ガスの発生を抑えることができる。また、熱可塑性エラストマーを含有する前記基層を、熱可塑性エラストマーを含有しない外層でコートすることにより、原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムの表面が、熱可塑性エラストマーに起因する独特のベタベタ感を有することを防ぐことができる。
【0022】
本発明の好ましい態様においては、基層における前記熱可塑性エラストマーの含有量は、5〜95重量部、より好ましくは40〜80重量部である。上記の特定値よりも前記熱可塑性エラストマーが多いとフィルムの加工性が低下し、上記の特定値よりも前記熱可塑
性エラストマーが少ない場合、柔軟性に欠ける。
【0023】
本発明の好ましい態様においては、各層における前記NOR型ヒンダードアミン誘導体の含有量は、好ましくは0.5〜2重量部、より好ましくは0.5〜1.5重量部である。上記の特定値よりも前記NOR型ヒンダードアミン誘導体が多いとフィルムの加工性が
低下し、上記の特定値よりも前記NOR型ヒンダードアミン誘導体が少ない場合、難燃性が不十分となる。
【0024】
本発明の好ましい態様においては、該原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムを構成する樹脂組成物のメルトフローレート(JISK7210、230℃、2.16kgf)は、40g/10分以上、更に好ましくは、50g/10分以上である。上記の特定値よりもメルトフローレート値が低い場合、難燃性が得られない。また、メルトフローレート値が200g/10分よりも高い場合、分子量が小さ過ぎることからフィルム強度が不十分となり好ましくない。
【0025】
本発明の好ましい態様においては、該原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムの酸素指数は、26.0以上である。上記の特定値よりも酸素指数が高い場合、フィルムの難燃性が不十分となり、好ましくない。
【0026】
本発明の好ましい態様においては、該原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムを構成する樹脂組成物のヘイズ値は5%以下である。上記の特定値よりもヘイズ値が高い場合、原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムの透明性が不十分となり好ましくない。
【0027】
本発明の好ましい態様においては、該原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムの厚みは、0.03〜0.2mmであり、更に好ましくは、0.06〜0.15mmである。上記の特定値よりも原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムの厚みが薄い場合、フィルムが破れやすくなり、また、上記の特定値よりも原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムの厚みが厚い場合、フィルムの柔軟性が損なわれる。尚、本発明の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムにおいて、各層の厚みの好ましい比率は、外層(2層の厚みの合計):基層が1:9〜7:3であって、より好ましくは2:8〜6:4である。
【0028】
本発明の好ましい態様においては、上述の基層とその両面に位置する外層からなる3層構造が原子力発電養生用難燃性樹脂フィルム全体の80〜100重量%である。
【0029】
本発明の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムには、必要に応じて、前記の3層構造の他の添加剤や接着剤、他の合成樹脂層等を含有することができるが、上述の3層構造以外の層は、原子力発電養生用難燃性樹脂フィルム全体の20重量%以下であることが好まし
い。
【0030】
次に、本発明の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムの製造方法を説明する。
【0031】
本発明の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムは、ランダムポリプロピレン系樹脂5〜95重量部及び可塑性エラストマー5〜95重量部の計100重量部に対してNOR型ヒンダードアミン誘導体0.5〜3.0重量部をそれぞれ含有する基層と、該基層の表裏両面にランダムポリプロピレン系樹脂100重量部に対してNOR型ヒンダードアミン誘導体0.5〜3.0重量部を含有する外層とを有する積層フィルムを、共押出法により製造することができる。
【0032】
尚、押出しの際の樹脂組成物のメルトフローレートは、1〜20g/10分、好ましくは、5〜15g/10分である。樹脂組成物のメルトフローレートが上記の特定値よりもメルトフローレート値が低い場合、溶融粘度が高くなり過ぎて押出加工しづらいという不具合が生じ、上記の特定値よりもメルトフローレート値が高い場合、溶融粘度が低くなり過ぎて流動性が高くなることから加工しづらいためである。また、本発明の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムは、必要に応じて延伸することができる。
【0033】
本発明においては、メルトフローレートが40g/10分以上である樹脂組成物により構成される積層フィルムを得る手段としては、例えば、前記積層フィルムに放射線を照射することなどがある。この場合、照射方法は特に限定されず、公知の照射装置を用いることができるが、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線照射装置を用いることができる。
【0034】
こうして得られる本発明の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムは、機械的強度や柔軟性に優れ、且つフィルム表面のベタ付き感がない。また、MFRが40g/10分以上であって、高度な難燃性を兼ね添えるものであることや、ヘイズ値は5%以下であって透明性に優れることから、原子力発電所等の放射性物質を取り扱う施設において用いられるフィルムとして適しており、また他用途のフィルムであっても、高度な難燃性及び透明性を要求される用途のフィルムとして用いられることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施形態を実施例を用いて詳述するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
<実施例1〜2>
表1に記載されている配合に従い、ペレット状態でドライブレンドし、東芝機械製単軸押出機(50φmm、L/D=32)のホッパーに、ブレンドした原料を投入し、押出機温度をC1:210℃、C2:240℃、C3:240℃、C4:240℃、C5:240℃のように設定し、550mm幅Tダイ(温度設定240℃ リップ開度0.3mm)から押出した。押出された溶融樹脂は、冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度30℃)にて冷却固化、巻取りしELECTRO CURTAIN CB170(アイグラフィックス社)を用いて加速電圧165kVで電子線照射し、照射線量の異なる実施例1〜2の積層フィルムを得た。
【0037】
<比較例1〜4>
各々表1に記載されている配合により、実施例1と同様の手法でドライブレンドと押出しを行い、押出された溶融樹脂は、冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度30℃)にて冷却固化、巻取りを行った。その後、比較例2〜4については、実施例1と同様の条件でELECTRO CURTAIN CB170(アイグラフィックス社)を用いて電子線照射を行った。
【0038】
評価項目は、得られた各フィルムについて、以下の要領で評価を行った。
【0039】
<評価>
(1)メルトフローレート
フィルムを構成する樹脂組成物のメルトフローレートをJIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に従って測定した。
【0040】
(2)成形性
フィルム成形時の加工性、フィルム外観を確認し、良好なものは○、ひどく劣るもの、フィルム化できないものは×で示した。×は実用に供することができない。
【0041】
(3)難燃性の評価
フィルムから試験片(寸法:長さ130mm、幅65mm)を採取し、この試験片をJIS K 7201の酸素指数法による高分子材料の燃焼試験方法に準じて燃焼させ、試験片の燃焼時間が3分以上継続して燃焼するか、または着炎後の燃焼長さが50mm以上燃え続けるのに必要な酸素流量とその時の窒素流量を流量計にて測定し、下記式(A)により酸素指数を求め、該酸素指数で難燃性を評価した。なお、酸素指数の値が大きいほど難燃性が高い。
酸素指数(O.I.)={[O2]/([O2]+[N2])}×100 ・・・(A)
(式中、[O2]は酸素の流量(l/分)、[N2]は窒素の流量(l/分)である。)
【0042】
(4)透明性の評価
JIS K 7105に従い、フィルムから採取した試験片のヘイズを測定した。
【0043】
【表1】

【0044】
尚、実施例、比較例において各樹脂および配合剤は、具体的にはそれぞれ次の通りである。
PP;ランダムPP(日本ポリプロ(株)社製、ノバテックPP FX3A MFR8.5g/10min)
エラストマー(A);オレフィン系エラストマー(日本ポリプロ(株)社製、ウェルネクス RFG4VA MFR6g/10min)
エラストマー(B);オレフィン系エラストマー(サンアロマー(株)社製、キャタロイ C200F MFR6g/10min)
NOR;NOR型ヒンダードアミン誘導体(チバ・ジャパン社製 FLAMESTAB NOR116FF)
上記のエラストマー(A)は、ハードセグメント部がメタロセン触媒を用いて重合させたものであり、上記のエラストマー(B)は、ハードセグメント部がチーグラーナッタ触媒等を用いて得られたものである。
【0045】
本発明に係る組成物は押出成形により外観の良好なフィルムを作成することができ、得られた本発明のフィルムは、難燃性及び透明性に優れるものであった。(実施例1〜2)。特に、樹脂組成物のメルトフローレート(JISK7210、230℃、2.16kgf)が55g/10分である実施例2は、より難燃性に優れ、原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムとして好ましいものであることが分かった。これに対し、比較例1〜2のフィルムは、透明性は優れるものの、難燃性に劣るものであった。また、比較例3のフィルムは、難燃性は優れるものの、透明性が劣るものであった。すなわち、比較例1〜3のフィルムは原子力発電養生用難燃性樹脂フィルムとして好ましいものでなかった。また、比較例4はNOR型ヒンダードアミン誘導体の含有量が多すぎることから加工性が悪く、フィルムを製造することが困難であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダムポリプロピレン系樹脂5〜95重量部及び熱可塑性エラストマー5〜95重量部の計100重量部に対してNOR型ヒンダードアミン誘導体0.5〜3.0重量部を含有する基層の表裏両面に、ランダムポリプロピレン系樹脂100重量部に対してNOR型ヒンダードアミン誘導体0.5〜3.0重量部を含有する外層が積層された構造を有する積層フィルムであって、該積層フィルムを構成する樹脂組成物のメルトフローレート(JIS K7210、230℃、2.16kgf)が40g/10分以上、且つヘイズ値5%以下であることを特徴とする原子力発電養生用難燃性樹脂フィルム。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマーはハードセグメント部がメタロセン触媒を用いて重合させたエチレン/プロピレン共重合体ブロックである多段重合で得られる熱可塑性エラストマーである請求項1に記載の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルム。
【請求項3】
難燃性樹脂フィルムを構成する樹脂組成物のメルトフローレート(JISK7210、230℃、2.16kgf)が50g/10分以上である請求項1又は2記載の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルム。
【請求項4】
酸素指数が26.0以上である請求項1〜3のいずれか一つに記載の原子力発電養生用難燃性樹脂フィルム。

【公開番号】特開2011−79287(P2011−79287A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245008(P2009−245008)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】