原子状炭素を用いた調理方法及び調理器具
【課題】 加熱するときの熱効率がよく調理に際しての食材の煮焼き具合を向上させることができる調理方法及び調理器具を提供すること。
【解決手段】 直径が1nm以下の原子状炭素を直接用いて、或いはこの原子状炭素を水中に溶解させて生成したマイナスイオン水を使って調理を行うことを特徴とする。上記煮焼き調理に関して、例えば煮物を作るときは、上記マイナスイオン水を調理器具の底部に張り、この状態の下で食材を調理器具内で前記マイナスイオン水に浸して調理する。また、焼き料理を作るときは、上記マイナスイオン水を食材の表面に付着させ、この状態の下で食材を調理器具の発熱体により加熱して調理する。これにより野菜、魚、肉などの食材の細胞を収縮させることなく煮焼きすることができ、食材のうまみがそのまま残った料理を提供することができる。
【解決手段】 直径が1nm以下の原子状炭素を直接用いて、或いはこの原子状炭素を水中に溶解させて生成したマイナスイオン水を使って調理を行うことを特徴とする。上記煮焼き調理に関して、例えば煮物を作るときは、上記マイナスイオン水を調理器具の底部に張り、この状態の下で食材を調理器具内で前記マイナスイオン水に浸して調理する。また、焼き料理を作るときは、上記マイナスイオン水を食材の表面に付着させ、この状態の下で食材を調理器具の発熱体により加熱して調理する。これにより野菜、魚、肉などの食材の細胞を収縮させることなく煮焼きすることができ、食材のうまみがそのまま残った料理を提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子状炭素を用いた調理方法及び調理器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、料理を美味しく食べるために各種の工夫がなされている。例えば、うなぎの蒲焼、焼き鳥、焼肉などの美味しさを増すために、発熱体である燃料として木炭を使用し、炭火焼きにしたり、その場合の燃料に備長炭を使用したりする方法がよく採られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、昨今の自然環境保護に対する意識の高まりから、森林伐採の禁止やCO2の削減などの施策が打ち出され、炭自体が消えようとしているのが現状であり、今後も永続的に炭が使用できるという保証はない。また、煮たり焼いたり(以下、「煮焼き」という)といった調理を行うのに炭を使用すると、火のついた炭から遠赤外線が放出されて煮焼き具合がよくなるという一定の評価を与えられているが、火力が強いとされる備長炭でさえも大量の遠赤外線が放出されるものでなくその効果は未だ十分ではない。
【0004】
本発明は上記のような従来の課題に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、加熱するときの熱効率がよく調理に際しての食材の煮焼き具合を向上させることができる調理方法及び調理器具を提供することである。
【0005】
本発明の第2の目的は、原料に制約がなく、廃棄物を有効に活用する途を開くことができる調理方法及び調理器具を提供することである。
【0006】
本発明の第3の目的は、調理に際して、煙やCO2の発生がなく、また、臭いの発生を抑制することができる調理方法及び調理器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、直径が1nm以下の原子状炭素を直接用いて、或いはこの原子状炭素を水中に溶解させて生成したマイナスイオン水を使って煮焼き調理を行うことを特徴とするものである。なお、この明細書において、原子状炭素とは、炭素原子1個或いは数個(せいぜい4〜5個)の結合体が他の物質と結合せずに単一の状態で存在しているものをいい、炭素原子の結合体からなるフラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、或いは木炭などとは異なるものである。上記煮焼き調理に関して、例えば煮物を作るときは、上記マイナスイオン水を調理器具の底部に張り、この状態の下で食材を調理器具内で前記マイナスイオン水に浸して調理する。また、焼き料理を作るときは、上記マイナスイオン水を食材の表面に付着させ、この状態の下で食材を調理器具の発熱体により加熱して調理する。
【0008】
これにより野菜、魚、肉などの食材の細胞を収縮させることなく煮焼きすることができ、食材のうまみがそのまま残った料理を提供することができる。
【0009】
また、本発明の別の特徴は、原子状炭素を水に溶解させることなくそのまま加熱材料または加熱補助材料として使用する点にある。このような調理方法としては、例えば、直径が1nm以下の原子状炭素の塊状体を調理器具の発熱体の下方位置に敷設し、前記発熱体と原子状炭素の塊状体との間に、調理される食材を配置し、発熱体の熱により前記食材及び原子状炭素を加熱して調理する方法がある。また、別の同様な調理方法として、発熱体の上方に、直径が1nm以下の原子状炭素の塊状体を敷設し、前記原子状炭素の塊状体の上方に調理される食材を配置し、発熱体の熱により前記原子状炭素を加熱して発火させ、その熱により食材を加熱して調理する方法がある。
【0010】
このような方法によっても野菜、魚、肉などの食材の細胞を収縮させることなく焼くことができ、食材のうまみがそのまま残った焼き料理を提供することができる。
【0011】
さらに本発明の別の特徴は、発熱体と、この発熱体の上方に配置された皿構造のトレー部材とを備え、トレー部材はその上面部分に、調理される食材を載置する食材受け部を有するとともに、トレー部材の底部には直径が1nm以下の原子状炭素の塊状体を敷設乃至は載置してあり、前記発熱体により前記原子状炭素及び食材を加熱して調理するようにした調理器具にある。発熱体は、前記トレー部材の上方に配置され、食材及び原子状炭素を上方から加熱して調理するようにしてもよい(例えば、ガスコンロの魚焼きグリルの構造)し、或いは発熱体は、前記トレー部材の下方に配置され、発熱体が原子状炭素及び食材を下方から加熱してその熱により前記原子状炭素を加熱して発火させ、その発火熱により食材を加熱して調理するようにしてもよい(例えば、通常の魚焼きの構造)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、直径が1nm以下の原子状炭素を水中に存在させているマイナスイオン水が調理のための熱により多量の遠赤外線を放射して、食材を外部からのみならず内部からも加熱し、ふっくらとした煮上がり、或いは焼き上がりにすることができる。
また、塊状の原子状炭素をそのまま加熱材料または加熱補助材料として使用する場合においても、原子状炭素が加熱されたり、或いは発火することにより多量の遠赤外線を放射して、食材を外部及び内部から加熱し、ふっくらとした煮上がり、或いは焼き上がりにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(原子状炭素の製造)
まず、本発明で用いられる原子状炭素およびその製造について説明する。
【0014】
図1は本発明において用いられる塊状の原子状炭素の好ましい実施の形態についての200万倍の透過型電子顕微鏡の写真である。この写真によれば所謂結晶化(グラファイト化)していないで粒径が1nm(ナノメートル)以下(計算値によれば1.66Å)であることが確認できる。図1では原子状炭素は塊状であるが、個々の原子状炭素は他の原子状炭素と結合しておらず単体の状態である。
【0015】
次に、前記図1に示した原子状炭素についての製造方法の好ましい例について説明する。
【0016】
図2は前記図1に示した原子状炭素の製造方法を実施するための好ましい製造装置の一例を示すものであり、気密に開閉可能な蓋2を有する処理槽1内に有機物からなる原料3を気密状態の元に装填するともに処理槽1内の雰囲気を無酸素雰囲気にする第1工程と、処理槽1内に装填された原料3を所定の温度で加熱して前記雰囲気中及び有機物中の炭素以外の所期成分を、分解温度の低いものから順次熱分解させて個別的に遊離させて処理槽1から排出させる第2工程と、処理槽1内に残存する原子状炭素を回収する第3工程とを有している。
【0017】
第1工程で用いられる炭素の原料としては例えば高分子や植物等の普通に存在する有機物を用いることができるが、特に、炭素単体を含むものは炭素単体が結晶化して分子状を呈していることと、このような分子状の炭素単体は本発明の原子状の炭素に変換することはできず、製造した炭素に分子状の炭素が混入するので原料としては好ましくない。炭素原料としては特に木材や竹(生のものがよい)が好適である。
【0018】
更に詳しく説明すると、処理槽1は例えば適宜の径と深さとを有する有底円筒型で開口部に例えばねじ込み等により気密に開閉可能な蓋体2が嵌装されており、鉄又はそれに類する金属により形成されたカマ111の内側に、適宜の手段により処理槽1の外部から通電可能な遠赤外線炭素セラミックヒータや炭素フィラメント等のヒータ112が網体113により装着されており、カマ111の外側面には断熱材114を介して最外部に外装材115が配置されており、内部の周壁11及び底部12及び底部12に立設されたポール13にヒータ112が装備されている。
【0019】
また、前記蓋2には、蓋2を閉じて気密状態とした処理槽1内に通じる吸気通路21と排気通路22とが設けられている。殊に、これらの通路には開閉弁23及び24がそれぞれ配置されている。
【0020】
次に、本実施の形態につき前記工程毎に詳細に説明する。まず、第1工程では、蓋2を開放した状態で、例えば生の竹である原料3を装填して蓋2を閉じ、排気通路22を開放した状態で処理槽1内に吸気通路21から例えば窒素ガスを送入して処理槽1内を窒素ガスで完全に置換して無酸素状態とし、吸気通路21と排気通路22との開閉弁23及び24を閉じる。
【0021】
そして、次に、第2工程に移り、ヒータ112に通電して最初に処理槽1内、即ち、装填した原料3を100〜150℃に保ち、原料3及び窒素雰囲気中の水分を充分に気化させ、吸気通路21から窒素を導入させた状態で排気通路22から水分、酸素、窒素を含む気体として処理槽1の外部へと排出することにより、処理槽1内及び原料3を無酸素状態で且つ乾燥状態にする。
【0022】
次いで、再び、処理槽1内を窒素雰囲気とした後、ヒータ112に通電して原料3を200〜350℃に保ち、原料3中の塩素を遊離させて前記水分の場合と同様にして原料3内の塩素を処理槽1から排出する。
【0023】
更に、処理槽1内を窒素雰囲気とした後、ヒータ112に通電して原料3を350〜450℃に保ち、前記水分及び塩素の場合と同様にして原料3中の残りの高分子成分を遊離させて処理槽1から排出し、第2工程を終了する。
【0024】
以上の第2工程を終了した時点で処理槽1内には450℃では気化しない炭素すなわち、原子状炭素が残存する。次いで、ヒータ112の通電を停止して、吸気通路21から低温の窒素を導入させて排気通路22から排出させることにより、50〜100℃程度まで冷却した後、蓋2を開放して処理槽1内に残存する炭素を取り出すので酸化されることがなく、蓋2を開放して大気雰囲気中に取り出し第3工程を終了する。この第3工程の終了により本発明の原子状炭素が生成される。
【0025】
図5は本発明の原子状炭素の原子構造を模式的に示す図である。この原子状炭素は炭素原子一個一個が、4本の腕のそれぞれに何らの原子或いはイオンと結合していない状態で個別に存在しているため、高いイオン吸着能力を有する。
【0026】
このイオン吸着能力についてみると、本発明である原子状炭素は、有機化合物として存在していた状態、即ち、粒子の大きさが1nm以下(理論的には1.66Å)の原子に近い状態で、図5に示すように炭素原子の1個当たり4個のイオンを吸着する能力を有する状態であるため、本発明の原子状炭素は、60個の炭素原子で構成されるフラーレンのイオン吸着能力60の4倍,即ち240のイオン吸着能力を有し、また、1000個の炭素原子で構成されるカーボンナノチューブのイオン吸着能力1000の4倍,即ち4000のイオン吸着能力を有することになり、きわめて活性である。ここで、参考までに図9にカーボンナノチューブの分子構造を模式的に示し、また図10にフラーレンの分子構造を模式的に示す。
【0027】
殊に、本発明の原子状炭素はグラファイト化している従来の炭素と異なり更に細かいばかりか各種の物質と化合物を作ることが可能であり、特に人体に対しても毒性を有しないので水を改善する能力が高いという性質を持つ。
【0028】
このようにして本実施の形態において得られた塊状の原子状炭素は化合している他の成分を熱分解して遊離する過程で酸素に触れることがないので、石炭、コークス、活性炭などのように生成段階で酸化されることがなく、また、加熱温度も他の成分の分解温度である500℃以下(好ましくは450℃前後)としたので炭素自身に同素体結合を生じさせるだけの励起エネルギーを与えることがなく、単に化合している他の成分が遊離するだけであり、原料3に化合物として結合していた状態、即ち、原子状のままで固定され、前記図1に示した原子状炭素が得られた。
【0029】
また、図3は、前記図1に示したものと同じ原子状炭素を550℃で短時間(約30分)保った場合の200万倍の透過型電子顕微鏡の写真である。この場合には表面から結晶化(グラファイト化)が進行している様子が確認できる。図4は、前記図1に示したものと同じ原子状炭素を更に長時間(約60分)にわたって550℃に保った場合の200万倍の透過型電子顕微鏡の写真である。この場合は、図4に示した200万倍の透過型電子顕微鏡の写真のように周囲の部分から内部へと結晶化(グラファイト化)していることが確認できる。
【0030】
これらのことからも本実施の形態が従来一般に結晶化(グラファイト化)されている炭素とは異なり原子状の炭素であることを確認することができる。
【0031】
上記製造方法で得られた原子状炭素は多数の原子状の炭素が原子間引力により集合して塊として得ることができる。このようにして得られた原子状炭素の成分、すなわち物質特性を求めると、図6のようになる。この図は、上記原子状炭素の組成を重量パーセントで表したものである。この図から明かなように、本実施の形態において得られた原子状炭素の成分は97.4%が炭素であり、残りの2.6%がミネラル分である。また、上記原子状炭素の分光放射出力を求めると、図7のようになる。この図は被検査物質(原子状炭素など)の表面温度を100℃に加熱し、そのときに得られる放射線量をフーリエ変換赤外分光光度計により測定した結果を表したものである。図7において、曲線1は、黒体の出力を示し、理想的な物質により出力される放射線量(或いは強さ)を示す。次に、図7中、曲線2は本実施の形態により得られた原子状炭素により出力される放射線量を示す。また、曲線3は備長炭により出力される放射線量を示し、曲線4は活性炭により出力される放射線量を示す。図7から明かなように、本発明の原子状炭素は黒体の出力にきわめて近く、備長炭の100倍、活性炭の400倍の出力を示すことが分かる。また、黒体、原子状炭素、備長炭は、100℃に加熱されたときに、5〜15ミクロンの波長の放射線、すなわち遠赤外線を著しく放射することが分かる。
【0032】
なお、図2に示した本実施の形態の製造装置(方法)において、無酸素雰囲気を形成するために安価で安定しているとともに低温ガス化も容易な窒素ガスを用いたが、他の不活性ガスを用いてもよく、また、製造装置として図2に示した処理槽型のものを用いたが、他の型式の製造装置を用いることもできる。
【0033】
(原子状炭素の調理への利用)
上記のようにして得られた塊状の原子状炭素を例えば塊状のまま、或いはミルなどを用いて1nm以下の粒径に粉砕して粉末状にして利用される。粉末状とする場合は、必ず500℃以下(好ましくは450℃前後)の雰囲気で粉末にすることにより、粉砕過程におけるグラファイト化を防ぐことができる。
【0034】
塊状の原子状炭素或いは粉末にされた原子状炭素は、それぞれの目的に応じて様々な方法で煮焼き調理に利用される。この原子状炭素を用いた幾つかの調理方法の事例を以下に説明する。
【0035】
(1)原子状炭素を焼き調理に用いる場合
直径が1nm以下の原子状炭素から成る塊状体(粉体でもよい)を焼き調理器具である魚焼きグリル内で発熱体の下方位置に敷設する。一例としては、網部材と、凹形構造のトレー部材とから成る食材置き皿の、トレー部材底部に原子状炭素の塊状体を配置し、その上に網部材を設置し、さらにこの網部材の上に食材(魚など)を置く。この魚焼きグリルにおいて、発熱体(ガスバーナーやニクロム線など)は天井部分に取り付けられているから、発熱体と原子状炭素の塊状体との間に、調理される食材が配置される形となる。この状態で発熱体を点火すると、その熱は食材を加熱するとともに原子状炭素を加熱する。これにより原子状炭素からは多量の遠赤外線が放射され、食材は発熱体からの熱によるあぶり焼きに加えて遠赤外線により内部からも加熱されることになり、速く焼き上がる上、良好な状態で焼き上がる。
【0036】
上記魚焼き調理の変更例として、網部材と、凹形構造のトレー部材とから成る食材置き皿の、トレー部材底部に原子状炭素の塊状体を配置し、その上に網部材を設置し、さらにこの網部材の上に食材(魚など)を置く。この魚焼きグリルにおいて、発熱体(ガスバーナーやニクロム線など)を上記食材置き皿の下側に設置し、発熱体の上方に原子状炭素の塊状体、および調理される食材をこの順に配置されるようにする。この状態で発熱体を点火すると、発熱体の熱は原子状炭素および食材を直接、間接に加熱する。これにより原子状炭素からは多量の遠赤外線が放射され、食材は発熱体からの熱によるあぶり焼きに加えて遠赤外線により内部から加熱されることになり、速く焼き上がる上、良好な状態で焼き上がる。
【0037】
さらに、原子状炭素は木炭の一種として燃料として用いることができるから、上記発熱体に原子状炭素を用いれば、燃料である原子状炭素からは熱焼による熱と遠赤外線が放射され、食材は熱によるあぶり焼きに加えて遠赤外線により内部から加熱されることになり、速く焼き上がる上、良好な状態で焼き上がる。
【0038】
この焼き調理に用いられる調理器具の一例を図11に示す。図11はそのような調理器具の概略構造を示す斜視図である。この調理器具は、発熱体としてのガスバーナー11と、このガスバーナー11の上方に配置された皿構造のトレー部材12とを備えて成る。トレー部材12はその上面部分に、調理される食材13を載置する網体14を有するとともに、トレー部材12の底部には直径が1nm以下の原子状炭素15の塊状体が敷設してある。かかる構成を有する調理器具の網体14の上に食材13を載せ、ガスバーナー11を点火すると、ガスの燃焼による熱は原子状炭素15および食材13を直接、間接に加熱する。食材13としては、例えばジャガイモ、などの各種野菜、或いは魚、肉などである。上記燃焼により原子状炭素14からは多量の遠赤外線(図中の線16で示す)が放射され、食材13はガスバーナー11からの熱によるあぶり焼きに加えて遠赤外線16により内部から加熱されることになり、速く焼き上がる上、味が逃げず良好な状態で焼き上がる。なおガスバーナー11は、家庭用キッチン設備の魚焼きグリルに見られるように、トレー部材12の上方位置に配置され、食材13及び原子状炭素14を上方から加熱して調理する構造を採るようにしてもよい。また、発熱体としては、上記のようなガスバーナー11に限定されるものではなく、電熱用のニクロム線、油燃焼用バーナーなど各種発熱体を使用することもできる。
【0039】
(2)原子状炭素からマイナスイオン水を生成し、このマイナスイオン水を煮焼き調理に用いる場合
原子状炭素は水の中に投入されてマイナスイオン水をつくることができる。本発明の原子状炭素(粉末のものがよい)を水の中に投入すると原子状炭素水溶液ができる。この原子状炭素水溶液は、原子状炭素が持つ優れた遠赤外線放出能力により水の分子が強く、持続的な振動を受ける。これにより水の分子は分解されて水素イオンH+ と水酸イオンOH- に電離する。また、炭素が炭素以下の原子番号を持つ元素との結合に強い親和力を有するので、原子状炭素(C)が、原子状炭素水溶液の水素イオン(H+)を吸着して、水素イオン(H+)と水酸イオン(OH-)への電離を促し、さらに電離した水素イオン(H+)は原子状炭素(C)に吸着される。その結果、原子状炭素水溶液中には水酸イオン(OH-)(すなわち、マイナスイオン)の割合が多くなり、マイナスイオン水となる。このマイナスイオン水はアルカリ性を示す。上記のような作用において、原子状炭素は、その強力なイオン吸着力により水素イオンと結合し、図8のような構造となる。このため、本発明のマイナスイオン水は内部に多数のマイナスイオンを含んだ水となり、種々の良好な性質を有する。原子状炭素が投入される水は、水道水、井戸水、その他の自然の水であってもよく、種々の用途に応じて選ばれる。例えば飲料水や調理用の水としての用途であれば、水道水や検査済みの井戸水が選ばれる。水道水に本発明の原子状炭素を入れると、水道水中の残留塩素が著しく減少する上、マイナスイオンの作用により、水中にPH8.5〜PH9.7のマイナスイオンを保った水がつくられる。なお、マイナスイオン水としての各種の効果を得るにはPH値は8以上であれば十分である。
【0040】
本発明のマイナスイオン水は、水に原子状炭素を投入して得られたものであるから、有機物状態のミネラルイオンによりマイナスイオン水となっている。したがって、生体中と同じ有機物状態のイオンを使用していることになり、人体への悪影響は生じない。これに対して酸化チタンや白金などの金属、或いはバナジウムなどの結晶体の微粒子を使って生成されたマイナスイオン水では、水中に微粒子の金属や結晶体が残留し、これが体内に蓄積されるので、長い時間を経た後に人体に悪影響が及ぶ可能性があり、完全に安全とはいえない。
【0041】
本発明により得られたマイナスイオン水を食材の煮焼き調理に用いると、それぞれのケースに応じて下記のように調理の効果が上がる。
【0042】
(2−1)煮調理への利用
煮調理に際しては、通常の飲料水にわずかのマイナスイオン水(通常の水1リットルにつき100cc程度)を加えて煮炊き水とし、調理を行う。例えばご飯を炊くときに上記の煮炊き水を使用すると、艶があり、コシのあるご飯ができる。このご飯は冷めても味が落ちず、美味しさが保たれる。また、常温に比較的長時間にわたり放置してもいたまず日持ちする。また、野菜の根菜類(人参、各種の芋など)を煮るときに上記の煮炊き水を使用すると、でき上がりが速く各種野菜本来の味が逃げないで保持される。さらに、野菜を煮るときの別の方法として、マイナスイオン水を鍋の底に1cm程度入れ、そこに食材である野菜を入れて煮ると、野菜の味が生きた、おいしい温野菜が得られる。さらにまた、アク抜きやダシ取りに上記の煮炊き水を使うと、アクが除去され、ダシがよく出るようにすることができる。また、発酵性の食品(例えば、味噌、醤油など)を使った料理では、これらの発酵性食品に上記の煮炊き水を混入させると、それらの食品の味を良くし、しかも常温に比較的長時間にわたり放置しても鮮度を保つことができる。
【0043】
(2−2)焼き調理への利用
焼き調理自体については、既に上述した通りである。この焼き調理に際して、調理対象となる食材(魚、肉など)をマイナスイオン水に10分間程度浸し、その後火にかける。こうすると、焼き上がりが速く、食材の臭みが消え、旨みが保持された料理が提供される。したがって、食材である魚や肉本来の味を楽しむことができる。
【0044】
直径が1nm以下の原子状炭素を直接用いて、或いはこの原子状炭素を水中に溶解させて生成したマイナスイオン水を使って煮焼き調理を行う。このような調理により、食材を加熱するときの熱効率がよく調理に際しての食材の煮焼き具合を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明である原子状炭素の好ましい実施の形態についての電子顕微鏡写真。
【図2】本発明である原子状炭素の製造方法における好ましい実施の形態を示す説明図。
【図3】図1に示した実施の形態について高温に短時間だけ保った場合の電子顕微鏡写真。
【図4】図1に示した実施の形態について高温において長時間保った場合の電子顕微鏡写真。
【図5】本発明の原子状炭素の模式図。
【図6】本発明の原子状炭素の組成を重量パーセントで表した図。
【図7】本発明の上記原子状炭素の分光放射出力を他の物質と比較して表した図。
【図8】本発明のマイナスイオン水中における原子状炭素と水素との結合の様子を示す模式図。
【図9】カーボンナノチューブの模式図。
【図10】フラーレンの模式図。
【図11】本発明の焼き調理に用いられる調理器具の一例を概略的に示す斜視図。
【符号の説明】
【0046】
1:処理槽、 2:蓋、 3:原料、 11:調理器具、 12:トレー部材、
13:食材、 14:網体、 15:原子状炭素
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子状炭素を用いた調理方法及び調理器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、料理を美味しく食べるために各種の工夫がなされている。例えば、うなぎの蒲焼、焼き鳥、焼肉などの美味しさを増すために、発熱体である燃料として木炭を使用し、炭火焼きにしたり、その場合の燃料に備長炭を使用したりする方法がよく採られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、昨今の自然環境保護に対する意識の高まりから、森林伐採の禁止やCO2の削減などの施策が打ち出され、炭自体が消えようとしているのが現状であり、今後も永続的に炭が使用できるという保証はない。また、煮たり焼いたり(以下、「煮焼き」という)といった調理を行うのに炭を使用すると、火のついた炭から遠赤外線が放出されて煮焼き具合がよくなるという一定の評価を与えられているが、火力が強いとされる備長炭でさえも大量の遠赤外線が放出されるものでなくその効果は未だ十分ではない。
【0004】
本発明は上記のような従来の課題に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、加熱するときの熱効率がよく調理に際しての食材の煮焼き具合を向上させることができる調理方法及び調理器具を提供することである。
【0005】
本発明の第2の目的は、原料に制約がなく、廃棄物を有効に活用する途を開くことができる調理方法及び調理器具を提供することである。
【0006】
本発明の第3の目的は、調理に際して、煙やCO2の発生がなく、また、臭いの発生を抑制することができる調理方法及び調理器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、直径が1nm以下の原子状炭素を直接用いて、或いはこの原子状炭素を水中に溶解させて生成したマイナスイオン水を使って煮焼き調理を行うことを特徴とするものである。なお、この明細書において、原子状炭素とは、炭素原子1個或いは数個(せいぜい4〜5個)の結合体が他の物質と結合せずに単一の状態で存在しているものをいい、炭素原子の結合体からなるフラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、或いは木炭などとは異なるものである。上記煮焼き調理に関して、例えば煮物を作るときは、上記マイナスイオン水を調理器具の底部に張り、この状態の下で食材を調理器具内で前記マイナスイオン水に浸して調理する。また、焼き料理を作るときは、上記マイナスイオン水を食材の表面に付着させ、この状態の下で食材を調理器具の発熱体により加熱して調理する。
【0008】
これにより野菜、魚、肉などの食材の細胞を収縮させることなく煮焼きすることができ、食材のうまみがそのまま残った料理を提供することができる。
【0009】
また、本発明の別の特徴は、原子状炭素を水に溶解させることなくそのまま加熱材料または加熱補助材料として使用する点にある。このような調理方法としては、例えば、直径が1nm以下の原子状炭素の塊状体を調理器具の発熱体の下方位置に敷設し、前記発熱体と原子状炭素の塊状体との間に、調理される食材を配置し、発熱体の熱により前記食材及び原子状炭素を加熱して調理する方法がある。また、別の同様な調理方法として、発熱体の上方に、直径が1nm以下の原子状炭素の塊状体を敷設し、前記原子状炭素の塊状体の上方に調理される食材を配置し、発熱体の熱により前記原子状炭素を加熱して発火させ、その熱により食材を加熱して調理する方法がある。
【0010】
このような方法によっても野菜、魚、肉などの食材の細胞を収縮させることなく焼くことができ、食材のうまみがそのまま残った焼き料理を提供することができる。
【0011】
さらに本発明の別の特徴は、発熱体と、この発熱体の上方に配置された皿構造のトレー部材とを備え、トレー部材はその上面部分に、調理される食材を載置する食材受け部を有するとともに、トレー部材の底部には直径が1nm以下の原子状炭素の塊状体を敷設乃至は載置してあり、前記発熱体により前記原子状炭素及び食材を加熱して調理するようにした調理器具にある。発熱体は、前記トレー部材の上方に配置され、食材及び原子状炭素を上方から加熱して調理するようにしてもよい(例えば、ガスコンロの魚焼きグリルの構造)し、或いは発熱体は、前記トレー部材の下方に配置され、発熱体が原子状炭素及び食材を下方から加熱してその熱により前記原子状炭素を加熱して発火させ、その発火熱により食材を加熱して調理するようにしてもよい(例えば、通常の魚焼きの構造)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、直径が1nm以下の原子状炭素を水中に存在させているマイナスイオン水が調理のための熱により多量の遠赤外線を放射して、食材を外部からのみならず内部からも加熱し、ふっくらとした煮上がり、或いは焼き上がりにすることができる。
また、塊状の原子状炭素をそのまま加熱材料または加熱補助材料として使用する場合においても、原子状炭素が加熱されたり、或いは発火することにより多量の遠赤外線を放射して、食材を外部及び内部から加熱し、ふっくらとした煮上がり、或いは焼き上がりにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(原子状炭素の製造)
まず、本発明で用いられる原子状炭素およびその製造について説明する。
【0014】
図1は本発明において用いられる塊状の原子状炭素の好ましい実施の形態についての200万倍の透過型電子顕微鏡の写真である。この写真によれば所謂結晶化(グラファイト化)していないで粒径が1nm(ナノメートル)以下(計算値によれば1.66Å)であることが確認できる。図1では原子状炭素は塊状であるが、個々の原子状炭素は他の原子状炭素と結合しておらず単体の状態である。
【0015】
次に、前記図1に示した原子状炭素についての製造方法の好ましい例について説明する。
【0016】
図2は前記図1に示した原子状炭素の製造方法を実施するための好ましい製造装置の一例を示すものであり、気密に開閉可能な蓋2を有する処理槽1内に有機物からなる原料3を気密状態の元に装填するともに処理槽1内の雰囲気を無酸素雰囲気にする第1工程と、処理槽1内に装填された原料3を所定の温度で加熱して前記雰囲気中及び有機物中の炭素以外の所期成分を、分解温度の低いものから順次熱分解させて個別的に遊離させて処理槽1から排出させる第2工程と、処理槽1内に残存する原子状炭素を回収する第3工程とを有している。
【0017】
第1工程で用いられる炭素の原料としては例えば高分子や植物等の普通に存在する有機物を用いることができるが、特に、炭素単体を含むものは炭素単体が結晶化して分子状を呈していることと、このような分子状の炭素単体は本発明の原子状の炭素に変換することはできず、製造した炭素に分子状の炭素が混入するので原料としては好ましくない。炭素原料としては特に木材や竹(生のものがよい)が好適である。
【0018】
更に詳しく説明すると、処理槽1は例えば適宜の径と深さとを有する有底円筒型で開口部に例えばねじ込み等により気密に開閉可能な蓋体2が嵌装されており、鉄又はそれに類する金属により形成されたカマ111の内側に、適宜の手段により処理槽1の外部から通電可能な遠赤外線炭素セラミックヒータや炭素フィラメント等のヒータ112が網体113により装着されており、カマ111の外側面には断熱材114を介して最外部に外装材115が配置されており、内部の周壁11及び底部12及び底部12に立設されたポール13にヒータ112が装備されている。
【0019】
また、前記蓋2には、蓋2を閉じて気密状態とした処理槽1内に通じる吸気通路21と排気通路22とが設けられている。殊に、これらの通路には開閉弁23及び24がそれぞれ配置されている。
【0020】
次に、本実施の形態につき前記工程毎に詳細に説明する。まず、第1工程では、蓋2を開放した状態で、例えば生の竹である原料3を装填して蓋2を閉じ、排気通路22を開放した状態で処理槽1内に吸気通路21から例えば窒素ガスを送入して処理槽1内を窒素ガスで完全に置換して無酸素状態とし、吸気通路21と排気通路22との開閉弁23及び24を閉じる。
【0021】
そして、次に、第2工程に移り、ヒータ112に通電して最初に処理槽1内、即ち、装填した原料3を100〜150℃に保ち、原料3及び窒素雰囲気中の水分を充分に気化させ、吸気通路21から窒素を導入させた状態で排気通路22から水分、酸素、窒素を含む気体として処理槽1の外部へと排出することにより、処理槽1内及び原料3を無酸素状態で且つ乾燥状態にする。
【0022】
次いで、再び、処理槽1内を窒素雰囲気とした後、ヒータ112に通電して原料3を200〜350℃に保ち、原料3中の塩素を遊離させて前記水分の場合と同様にして原料3内の塩素を処理槽1から排出する。
【0023】
更に、処理槽1内を窒素雰囲気とした後、ヒータ112に通電して原料3を350〜450℃に保ち、前記水分及び塩素の場合と同様にして原料3中の残りの高分子成分を遊離させて処理槽1から排出し、第2工程を終了する。
【0024】
以上の第2工程を終了した時点で処理槽1内には450℃では気化しない炭素すなわち、原子状炭素が残存する。次いで、ヒータ112の通電を停止して、吸気通路21から低温の窒素を導入させて排気通路22から排出させることにより、50〜100℃程度まで冷却した後、蓋2を開放して処理槽1内に残存する炭素を取り出すので酸化されることがなく、蓋2を開放して大気雰囲気中に取り出し第3工程を終了する。この第3工程の終了により本発明の原子状炭素が生成される。
【0025】
図5は本発明の原子状炭素の原子構造を模式的に示す図である。この原子状炭素は炭素原子一個一個が、4本の腕のそれぞれに何らの原子或いはイオンと結合していない状態で個別に存在しているため、高いイオン吸着能力を有する。
【0026】
このイオン吸着能力についてみると、本発明である原子状炭素は、有機化合物として存在していた状態、即ち、粒子の大きさが1nm以下(理論的には1.66Å)の原子に近い状態で、図5に示すように炭素原子の1個当たり4個のイオンを吸着する能力を有する状態であるため、本発明の原子状炭素は、60個の炭素原子で構成されるフラーレンのイオン吸着能力60の4倍,即ち240のイオン吸着能力を有し、また、1000個の炭素原子で構成されるカーボンナノチューブのイオン吸着能力1000の4倍,即ち4000のイオン吸着能力を有することになり、きわめて活性である。ここで、参考までに図9にカーボンナノチューブの分子構造を模式的に示し、また図10にフラーレンの分子構造を模式的に示す。
【0027】
殊に、本発明の原子状炭素はグラファイト化している従来の炭素と異なり更に細かいばかりか各種の物質と化合物を作ることが可能であり、特に人体に対しても毒性を有しないので水を改善する能力が高いという性質を持つ。
【0028】
このようにして本実施の形態において得られた塊状の原子状炭素は化合している他の成分を熱分解して遊離する過程で酸素に触れることがないので、石炭、コークス、活性炭などのように生成段階で酸化されることがなく、また、加熱温度も他の成分の分解温度である500℃以下(好ましくは450℃前後)としたので炭素自身に同素体結合を生じさせるだけの励起エネルギーを与えることがなく、単に化合している他の成分が遊離するだけであり、原料3に化合物として結合していた状態、即ち、原子状のままで固定され、前記図1に示した原子状炭素が得られた。
【0029】
また、図3は、前記図1に示したものと同じ原子状炭素を550℃で短時間(約30分)保った場合の200万倍の透過型電子顕微鏡の写真である。この場合には表面から結晶化(グラファイト化)が進行している様子が確認できる。図4は、前記図1に示したものと同じ原子状炭素を更に長時間(約60分)にわたって550℃に保った場合の200万倍の透過型電子顕微鏡の写真である。この場合は、図4に示した200万倍の透過型電子顕微鏡の写真のように周囲の部分から内部へと結晶化(グラファイト化)していることが確認できる。
【0030】
これらのことからも本実施の形態が従来一般に結晶化(グラファイト化)されている炭素とは異なり原子状の炭素であることを確認することができる。
【0031】
上記製造方法で得られた原子状炭素は多数の原子状の炭素が原子間引力により集合して塊として得ることができる。このようにして得られた原子状炭素の成分、すなわち物質特性を求めると、図6のようになる。この図は、上記原子状炭素の組成を重量パーセントで表したものである。この図から明かなように、本実施の形態において得られた原子状炭素の成分は97.4%が炭素であり、残りの2.6%がミネラル分である。また、上記原子状炭素の分光放射出力を求めると、図7のようになる。この図は被検査物質(原子状炭素など)の表面温度を100℃に加熱し、そのときに得られる放射線量をフーリエ変換赤外分光光度計により測定した結果を表したものである。図7において、曲線1は、黒体の出力を示し、理想的な物質により出力される放射線量(或いは強さ)を示す。次に、図7中、曲線2は本実施の形態により得られた原子状炭素により出力される放射線量を示す。また、曲線3は備長炭により出力される放射線量を示し、曲線4は活性炭により出力される放射線量を示す。図7から明かなように、本発明の原子状炭素は黒体の出力にきわめて近く、備長炭の100倍、活性炭の400倍の出力を示すことが分かる。また、黒体、原子状炭素、備長炭は、100℃に加熱されたときに、5〜15ミクロンの波長の放射線、すなわち遠赤外線を著しく放射することが分かる。
【0032】
なお、図2に示した本実施の形態の製造装置(方法)において、無酸素雰囲気を形成するために安価で安定しているとともに低温ガス化も容易な窒素ガスを用いたが、他の不活性ガスを用いてもよく、また、製造装置として図2に示した処理槽型のものを用いたが、他の型式の製造装置を用いることもできる。
【0033】
(原子状炭素の調理への利用)
上記のようにして得られた塊状の原子状炭素を例えば塊状のまま、或いはミルなどを用いて1nm以下の粒径に粉砕して粉末状にして利用される。粉末状とする場合は、必ず500℃以下(好ましくは450℃前後)の雰囲気で粉末にすることにより、粉砕過程におけるグラファイト化を防ぐことができる。
【0034】
塊状の原子状炭素或いは粉末にされた原子状炭素は、それぞれの目的に応じて様々な方法で煮焼き調理に利用される。この原子状炭素を用いた幾つかの調理方法の事例を以下に説明する。
【0035】
(1)原子状炭素を焼き調理に用いる場合
直径が1nm以下の原子状炭素から成る塊状体(粉体でもよい)を焼き調理器具である魚焼きグリル内で発熱体の下方位置に敷設する。一例としては、網部材と、凹形構造のトレー部材とから成る食材置き皿の、トレー部材底部に原子状炭素の塊状体を配置し、その上に網部材を設置し、さらにこの網部材の上に食材(魚など)を置く。この魚焼きグリルにおいて、発熱体(ガスバーナーやニクロム線など)は天井部分に取り付けられているから、発熱体と原子状炭素の塊状体との間に、調理される食材が配置される形となる。この状態で発熱体を点火すると、その熱は食材を加熱するとともに原子状炭素を加熱する。これにより原子状炭素からは多量の遠赤外線が放射され、食材は発熱体からの熱によるあぶり焼きに加えて遠赤外線により内部からも加熱されることになり、速く焼き上がる上、良好な状態で焼き上がる。
【0036】
上記魚焼き調理の変更例として、網部材と、凹形構造のトレー部材とから成る食材置き皿の、トレー部材底部に原子状炭素の塊状体を配置し、その上に網部材を設置し、さらにこの網部材の上に食材(魚など)を置く。この魚焼きグリルにおいて、発熱体(ガスバーナーやニクロム線など)を上記食材置き皿の下側に設置し、発熱体の上方に原子状炭素の塊状体、および調理される食材をこの順に配置されるようにする。この状態で発熱体を点火すると、発熱体の熱は原子状炭素および食材を直接、間接に加熱する。これにより原子状炭素からは多量の遠赤外線が放射され、食材は発熱体からの熱によるあぶり焼きに加えて遠赤外線により内部から加熱されることになり、速く焼き上がる上、良好な状態で焼き上がる。
【0037】
さらに、原子状炭素は木炭の一種として燃料として用いることができるから、上記発熱体に原子状炭素を用いれば、燃料である原子状炭素からは熱焼による熱と遠赤外線が放射され、食材は熱によるあぶり焼きに加えて遠赤外線により内部から加熱されることになり、速く焼き上がる上、良好な状態で焼き上がる。
【0038】
この焼き調理に用いられる調理器具の一例を図11に示す。図11はそのような調理器具の概略構造を示す斜視図である。この調理器具は、発熱体としてのガスバーナー11と、このガスバーナー11の上方に配置された皿構造のトレー部材12とを備えて成る。トレー部材12はその上面部分に、調理される食材13を載置する網体14を有するとともに、トレー部材12の底部には直径が1nm以下の原子状炭素15の塊状体が敷設してある。かかる構成を有する調理器具の網体14の上に食材13を載せ、ガスバーナー11を点火すると、ガスの燃焼による熱は原子状炭素15および食材13を直接、間接に加熱する。食材13としては、例えばジャガイモ、などの各種野菜、或いは魚、肉などである。上記燃焼により原子状炭素14からは多量の遠赤外線(図中の線16で示す)が放射され、食材13はガスバーナー11からの熱によるあぶり焼きに加えて遠赤外線16により内部から加熱されることになり、速く焼き上がる上、味が逃げず良好な状態で焼き上がる。なおガスバーナー11は、家庭用キッチン設備の魚焼きグリルに見られるように、トレー部材12の上方位置に配置され、食材13及び原子状炭素14を上方から加熱して調理する構造を採るようにしてもよい。また、発熱体としては、上記のようなガスバーナー11に限定されるものではなく、電熱用のニクロム線、油燃焼用バーナーなど各種発熱体を使用することもできる。
【0039】
(2)原子状炭素からマイナスイオン水を生成し、このマイナスイオン水を煮焼き調理に用いる場合
原子状炭素は水の中に投入されてマイナスイオン水をつくることができる。本発明の原子状炭素(粉末のものがよい)を水の中に投入すると原子状炭素水溶液ができる。この原子状炭素水溶液は、原子状炭素が持つ優れた遠赤外線放出能力により水の分子が強く、持続的な振動を受ける。これにより水の分子は分解されて水素イオンH+ と水酸イオンOH- に電離する。また、炭素が炭素以下の原子番号を持つ元素との結合に強い親和力を有するので、原子状炭素(C)が、原子状炭素水溶液の水素イオン(H+)を吸着して、水素イオン(H+)と水酸イオン(OH-)への電離を促し、さらに電離した水素イオン(H+)は原子状炭素(C)に吸着される。その結果、原子状炭素水溶液中には水酸イオン(OH-)(すなわち、マイナスイオン)の割合が多くなり、マイナスイオン水となる。このマイナスイオン水はアルカリ性を示す。上記のような作用において、原子状炭素は、その強力なイオン吸着力により水素イオンと結合し、図8のような構造となる。このため、本発明のマイナスイオン水は内部に多数のマイナスイオンを含んだ水となり、種々の良好な性質を有する。原子状炭素が投入される水は、水道水、井戸水、その他の自然の水であってもよく、種々の用途に応じて選ばれる。例えば飲料水や調理用の水としての用途であれば、水道水や検査済みの井戸水が選ばれる。水道水に本発明の原子状炭素を入れると、水道水中の残留塩素が著しく減少する上、マイナスイオンの作用により、水中にPH8.5〜PH9.7のマイナスイオンを保った水がつくられる。なお、マイナスイオン水としての各種の効果を得るにはPH値は8以上であれば十分である。
【0040】
本発明のマイナスイオン水は、水に原子状炭素を投入して得られたものであるから、有機物状態のミネラルイオンによりマイナスイオン水となっている。したがって、生体中と同じ有機物状態のイオンを使用していることになり、人体への悪影響は生じない。これに対して酸化チタンや白金などの金属、或いはバナジウムなどの結晶体の微粒子を使って生成されたマイナスイオン水では、水中に微粒子の金属や結晶体が残留し、これが体内に蓄積されるので、長い時間を経た後に人体に悪影響が及ぶ可能性があり、完全に安全とはいえない。
【0041】
本発明により得られたマイナスイオン水を食材の煮焼き調理に用いると、それぞれのケースに応じて下記のように調理の効果が上がる。
【0042】
(2−1)煮調理への利用
煮調理に際しては、通常の飲料水にわずかのマイナスイオン水(通常の水1リットルにつき100cc程度)を加えて煮炊き水とし、調理を行う。例えばご飯を炊くときに上記の煮炊き水を使用すると、艶があり、コシのあるご飯ができる。このご飯は冷めても味が落ちず、美味しさが保たれる。また、常温に比較的長時間にわたり放置してもいたまず日持ちする。また、野菜の根菜類(人参、各種の芋など)を煮るときに上記の煮炊き水を使用すると、でき上がりが速く各種野菜本来の味が逃げないで保持される。さらに、野菜を煮るときの別の方法として、マイナスイオン水を鍋の底に1cm程度入れ、そこに食材である野菜を入れて煮ると、野菜の味が生きた、おいしい温野菜が得られる。さらにまた、アク抜きやダシ取りに上記の煮炊き水を使うと、アクが除去され、ダシがよく出るようにすることができる。また、発酵性の食品(例えば、味噌、醤油など)を使った料理では、これらの発酵性食品に上記の煮炊き水を混入させると、それらの食品の味を良くし、しかも常温に比較的長時間にわたり放置しても鮮度を保つことができる。
【0043】
(2−2)焼き調理への利用
焼き調理自体については、既に上述した通りである。この焼き調理に際して、調理対象となる食材(魚、肉など)をマイナスイオン水に10分間程度浸し、その後火にかける。こうすると、焼き上がりが速く、食材の臭みが消え、旨みが保持された料理が提供される。したがって、食材である魚や肉本来の味を楽しむことができる。
【0044】
直径が1nm以下の原子状炭素を直接用いて、或いはこの原子状炭素を水中に溶解させて生成したマイナスイオン水を使って煮焼き調理を行う。このような調理により、食材を加熱するときの熱効率がよく調理に際しての食材の煮焼き具合を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明である原子状炭素の好ましい実施の形態についての電子顕微鏡写真。
【図2】本発明である原子状炭素の製造方法における好ましい実施の形態を示す説明図。
【図3】図1に示した実施の形態について高温に短時間だけ保った場合の電子顕微鏡写真。
【図4】図1に示した実施の形態について高温において長時間保った場合の電子顕微鏡写真。
【図5】本発明の原子状炭素の模式図。
【図6】本発明の原子状炭素の組成を重量パーセントで表した図。
【図7】本発明の上記原子状炭素の分光放射出力を他の物質と比較して表した図。
【図8】本発明のマイナスイオン水中における原子状炭素と水素との結合の様子を示す模式図。
【図9】カーボンナノチューブの模式図。
【図10】フラーレンの模式図。
【図11】本発明の焼き調理に用いられる調理器具の一例を概略的に示す斜視図。
【符号の説明】
【0046】
1:処理槽、 2:蓋、 3:原料、 11:調理器具、 12:トレー部材、
13:食材、 14:網体、 15:原子状炭素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が1nm以下の原子状炭素を水中に溶解せしめ、水素イオンを水中に滞留させたマイナスイオン水を鍋またはフライパン等の調理器具の底部に張り、この状態の下で食材を調理器具内で前記マイナスイオン水に浸して調理するようにしたことを特徴とする調理方法。
【請求項2】
マイナスイオン水は水素イオンによりPH値が8以上に維持せしめられていることを特徴とする請求項1記載の調理方法。
【請求項3】
原子状炭素は、炭素単体を含まない有機物を無酸素雰囲気において所定の温度で加熱し、前記雰囲気中及び有機物中の炭素以外の成分を、500℃以下の温度において分解温度の低いものから順次熱分解させて個別的に遊離させて得られるものであることを特徴とする請求項1記載の調理方法。
【請求項4】
原子状炭素は500℃以下において1nm以下の粒径に粉砕されたものであることを特徴とする請求項3に記載の調理方法。
【請求項5】
直径が1nm以下の原子状炭素の塊状体を調理器具の発熱体の下方位置に敷設し、前記発熱体と原子状炭素の塊状体との間に、調理される食材を配置し、発熱体の熱により前記食材及び原子状炭素を加熱して調理するようにしたことを特徴とする調理方法。
【請求項6】
発熱体の上方に、直径が1nm以下の原子状炭素の塊状体を敷設し、前記原子状炭素の塊状体の上方に調理される食材を配置し、発熱体の熱により前記原子状炭素及び食材を加熱して調理するようにしたことを特徴とする調理方法。
【請求項7】
発熱体と、この発熱体の上方に配置された皿構造のトレー部材とを備え、
トレー部材はその上面部分に、調理される食材を載置する食材受け部を有するとともに、トレー部材の底部には直径が1nm以下の原子状炭素の塊状体を敷設してあり、
前記発熱体により前記原子状炭素及び食材を加熱して調理するようにしたことを特徴とする調理器具。
【請求項8】
発熱体は、前記トレー部材の上方に配置され、食材及び原子状炭素を上方から加熱して調理するようにしたことを特徴とする請求項7記載の調理器具。
【請求項9】
発熱体は、前記トレー部材の下方に配置され、食材及び原子状炭素を下方から加熱して調理するようにしたことを特徴とする請求項7記載の調理器具。
【請求項10】
原子状炭素は、炭素単体を含まない有機物を無酸素雰囲気において所定の温度で加熱し、前記雰囲気中及び有機物中の炭素以外の成分を、500℃以下の温度において分解温度の低いものから順次熱分解させて個別的に遊離させて得られるものであることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の調理器具。
【請求項1】
直径が1nm以下の原子状炭素を水中に溶解せしめ、水素イオンを水中に滞留させたマイナスイオン水を鍋またはフライパン等の調理器具の底部に張り、この状態の下で食材を調理器具内で前記マイナスイオン水に浸して調理するようにしたことを特徴とする調理方法。
【請求項2】
マイナスイオン水は水素イオンによりPH値が8以上に維持せしめられていることを特徴とする請求項1記載の調理方法。
【請求項3】
原子状炭素は、炭素単体を含まない有機物を無酸素雰囲気において所定の温度で加熱し、前記雰囲気中及び有機物中の炭素以外の成分を、500℃以下の温度において分解温度の低いものから順次熱分解させて個別的に遊離させて得られるものであることを特徴とする請求項1記載の調理方法。
【請求項4】
原子状炭素は500℃以下において1nm以下の粒径に粉砕されたものであることを特徴とする請求項3に記載の調理方法。
【請求項5】
直径が1nm以下の原子状炭素の塊状体を調理器具の発熱体の下方位置に敷設し、前記発熱体と原子状炭素の塊状体との間に、調理される食材を配置し、発熱体の熱により前記食材及び原子状炭素を加熱して調理するようにしたことを特徴とする調理方法。
【請求項6】
発熱体の上方に、直径が1nm以下の原子状炭素の塊状体を敷設し、前記原子状炭素の塊状体の上方に調理される食材を配置し、発熱体の熱により前記原子状炭素及び食材を加熱して調理するようにしたことを特徴とする調理方法。
【請求項7】
発熱体と、この発熱体の上方に配置された皿構造のトレー部材とを備え、
トレー部材はその上面部分に、調理される食材を載置する食材受け部を有するとともに、トレー部材の底部には直径が1nm以下の原子状炭素の塊状体を敷設してあり、
前記発熱体により前記原子状炭素及び食材を加熱して調理するようにしたことを特徴とする調理器具。
【請求項8】
発熱体は、前記トレー部材の上方に配置され、食材及び原子状炭素を上方から加熱して調理するようにしたことを特徴とする請求項7記載の調理器具。
【請求項9】
発熱体は、前記トレー部材の下方に配置され、食材及び原子状炭素を下方から加熱して調理するようにしたことを特徴とする請求項7記載の調理器具。
【請求項10】
原子状炭素は、炭素単体を含まない有機物を無酸素雰囲気において所定の温度で加熱し、前記雰囲気中及び有機物中の炭素以外の成分を、500℃以下の温度において分解温度の低いものから順次熱分解させて個別的に遊離させて得られるものであることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の調理器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−230226(P2006−230226A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46315(P2005−46315)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(301037589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(301037589)
【Fターム(参考)】
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