原子発振器及び原子発振器の製造方法
【課題】安定度の高い原子発振器を提供する。
【解決手段】アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、前記アルカリ金属セルは、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、前記一方の部材における基板の一方の面と、前記他方の部材における基板の一方の面とを直接接合することにより、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、を有するものであることを特徴とする原子発振器を提供することにより上記課題を解決する。
【解決手段】アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、前記アルカリ金属セルは、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、前記一方の部材における基板の一方の面と、前記他方の部材における基板の一方の面とを直接接合することにより、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、を有するものであることを特徴とする原子発振器を提供することにより上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子発振器及び原子発振器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
極めて正確な時間を計る時計として原子時計(原子発振器)があり、この原子時計を小型化する技術等の検討がなされている。原子時計とは、アルカリ金属等の原子を構成している電子の遷移エネルギー量を基準とする発振器であり、特に、アルカリ金属の原子における電子の遷移エネルギーは外乱がない状態では、非常に精密な値が得られるため、水晶発振器に比べて、数桁高い周波数安定性を得ることができる。
【0003】
このような原子時計には、幾つかの方式があるが、中でも、CPT(Coherent Population Trapping)方式の原子時計は、従来の水晶発振器に比べて周波数安定性が3桁程度高く、また、超小型、超低消費電力を望むことができる(非特許文献1、2)。
【0004】
CPT方式の原子時計では、図1に示すように、レーザ素子等の光源910と、アルカリ金属を封入したアルカリ金属セル940と、アルカリ金属セル940を透過したレーザ光を受光する光検出器950とを有しており、レーザ光は変調され、特定波長である搬送波の両側に出現するサイドバンド波長により、アルカリ金属原子における電子の2つの遷移を同時に行ない、励起する。この遷移における遷移エネルギーは不変であり、レーザ光のサイドバンド波長と遷移エネルギーに対応する波長とが一致したときに、アルカリ金属における光の吸収率が低下する透明化現象が生じる。このように、アルカリ金属による光の吸収率が低下するように、搬送波の波長を調整するとともに、光検出器950において検出された信号を変調器960にフィードバックし、変調器960によりレーザ素子等の光源910からのレーザ光の変調周波数を調整することを特徴とした原子時計である。尚、レーザ光は、光源910より発せられ、コリメートレンズ920及びλ/4板930を介し、アルカリ金属セル940に照射される。
【0005】
このような超小型の原子時計におけるアルカリ金属セルとして、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて生産する方法が開示されている(特許文献1〜4)。これらに開示されている方法では、最初に、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術によりSi基板に開口部を形成した後、陽極接合によりガラスとSi基板とを接合する。陽極接合は、200℃〜450℃の温度で、ガラスとSi基板との界面に250V〜1000V程度の電圧を印加することにより行なわれる。この後、アルカリ金属とバッファガスを入れて、上面となる開口部分にガラスを陽極接合により接合することにより封止する。このようにして形成されたものをセルごとに切り出すことにより、アルカリ金属セルが形成される。
【0006】
アルカリ金属をセル内に封入する方法としては、Cs(セシウム)メタルを真空中で直接投下し封入する方法(非特許文献3)、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液をセル内に投入し、セルを封止した後、200℃で反応させてCsメタルを生成する方法(非特許文献3)、ヒータ付きアンプル中でBaN6+CsClを反応させてCsメタルを発生させてセル中に蒸発させて移す方法(非特許文献4)、通常の蒸着法でセル中にCsN3を成膜しセルを封止した後、UV光を照射しCsとN2を発生させる方法(非特許文献5)、大気中で安定なCsディスペンサーをセル内に投入しセルを封止した後、Csディスペンサーのみにレーザ光を照射して加熱し、Csを発生させる方法(非特許文献6)等がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、陽極接合によりセルを封止する場合、陽極接合において発生する酸素、OH、H2O等が、セル内のアルカリ金属と反応し、例えば、Csの場合では、CsxOy等が生成されるため、レーザ光の透過度が変動し、周波数シフトが生じてしまい、周波数の短期安定度を劣化させるという不具合があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、アルカリ金属セル内において、酸素等の不純物が少なく、安定度の高い原子発振器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、前記アルカリ金属セルは、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、前記一方の部材における基板の一方の面と、前記他方の部材における基板の一方の面と、を直接接合することにより、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、を有するものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、前記アルカリ金属セルは、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、前記一方の部材における基板の一方の面及び前記他方の部材における基板の一方の面のいずれかまたは双方には、金属膜が設けられており、前記金属膜を介し共晶接合または金属同士の直接接合により、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、を有するものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記金属膜は、金を含む材料により形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、前記アルカリ金属セルは、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、前記一方の部材における基板の一方の面及び前記他方の部材における基板の一方の面のいずれかまたは双方には、ガラスフリッドが設けられており、前記ガラスフリッドを介し接合し、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、を有するものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記基板はSiにより形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記一方の部材と前記他方の部材との間には、前記開口部と略同一の形状の開口部を有する他の基板が1または2以上設けられており、前記一方の部材と前記他の基板、及び、前記他方の部材と前記他の基板とは接合されており、前記一方の部材の開口部、前記他方の部材の部材の開口部、前記他の基板の開口部によりセル内部が形成されるものであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記他の基板はSiにより形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、2つのガラス基板間の距離は1.5mm以上であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記セル内部は、第1のセル内部と第2のセル内部とを有しており、前記第1のセル内部と前記第2のセル内部とはセル接続部により接続されており、前記アルカリ金属原料はアルカリ金属の化合物であって、第2のセル内部に設置されており、前記光源から発せられた光は、前記第1のセル内部を透過するものであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記原子発振器は、前記光源より出射したサイドバンドを含む光のうち、2つの異なる波長の光を前記アルカリ金属セルに入射させることにより、2種類の共鳴光による量子干渉効果による光吸収特性により発振周波数を制御するものであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記2つの異なる波長の光は、ともに前記面発光レーザより出射したサイドバンドの光であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記アルカリ金属は、ルビジウム、または、セシウムであることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器の製造方法において、2枚の基板に、一方の面から他方の面に貫通する略同じ形状の開口部を形成する工程と、前記開口部の形成された2枚の基板の前記他方の面に各々ガラス基板を接合することにより、一方の部材と他方の部材を形成する工程と、前記一方の部材または前記他方の部材の開口部に、アルカリ金属原料を入れる工程と、前記一方の部材の基板の一方の面と前記他方の部材の基板の一方の面とを接合する工程と、を有し、前記一方の部材の開口部と前記他方の部材の開口部により前記アルカリ金属セルのセル内部が形成されることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記アルカリ金属原料を入れる工程及び前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程は、真空チャンバー内において行なわれるものであって、前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程の前に、前記真空チャンバー内において、前記接合される接合面にイオンビームを照射し前記接合面の表面を活性化処理する工程を有することを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、前記基板はSiにより形成されており、前記一方の部材と前記他方の部材との接合は、前記Siの直接接合により接合されるものであることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、1または2枚以上の他の基板に、一方の面から他方の面に貫通する略同じ形状の開口部を形成する工程を有し、前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程において、前記一方の部材の基板の一方の面と前記他方の部材の基板の一方の面は、前記他の基板を介し接合するものであることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、前記基板及び前記他の基板はSiにより形成されており、前記一方の部材と他の基板との接合及び前記他方の部材と他の基板との接合は、前記Siの直接接合により接合されるものであることを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、前記一方の部材の基板の一方の面及び前記他方の部材の基板の一方の面のうち、いずれかまたは双方には、金属膜が形成されており、前記一方の部材と前記他方の部材との接合は、前記金属膜を介し共晶接合または金属同士の直接接合により接合されるものであることを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、前記金属膜は、金を含む材料により形成されていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、前記一方の部材の基板の一方の面及び前記他方の部材の基板の一方の面のうち、いずれかまたは双方には、ガラスフリットが形成されており、前記一方の部材と前記他方の部材との接合は、前記ガラスフリットを介し接合されるものであることを特徴とする。
【0029】
また、本発明は、ガラス基板に設けたガラスフリットを加熱することにより、前記セル接続部を封止することを特徴とする。
【0030】
また、本発明は、前記アルカリ金属原料はアルカリ金属の化合物であって、前記セル内部を形成した後、前記アルカリ金属原料を加熱、UV光の照射、レーザ光の照射することにより、前記アルカリ金属を生成することを特徴とする。
【0031】
また、本発明は、前記セル内部は、第1のセル内部と第2のセル内部とを有しており、前記第1のセル内部と前記第2のセル内部とはセル接続部により接続されており、前記アルカリ金属原料はアルカリ金属の化合物であって、第2のセル内部に設置されており、前記アルカリ金属原料を加熱、UV光の照射、レーザ光の照射することにより前記アルカリ金属を発生させ、前記アルカリ金属が前記第1のセル内部に入り込むものであることを特徴とする。
【0032】
また、本発明は、前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程は、前記真空チャンバー内において、窒素または不活性ガスの雰囲気中で行なわれるものであることを特徴とする。
【0033】
また、本発明は、前記第1のセル内部に前記アルカリ金属を移動させたあと、前記セル接続部を封止し、前記第1のセル内部と前記第2のセル内部を空間的に分離する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、アルカリ金属セル内において、酸素等の不純物が少なく、安定度の高い原子発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】原子発振器の説明図
【図2】第1の実施の形態における原子発振器の説明図
【図3】第1の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図4】第1の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図5】第2の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図6】第2の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図7】第2の実施の形態における他の原子発振器の製造方法の工程図
【図8】第3の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図9】第3の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図10】第4の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図11】第4の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図12】第4の実施の形態における原子発振器の製造方法の説明図
【図13】第5の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図14】第5の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図15】第5の実施の形態における他の原子発振器の製造方法の工程図
【図16】第6の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図17】第6の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図18】第7の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図19】第7の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図20】第7の実施の形態における原子発振器の製造方法の説明図(1)
【図21】第7の実施の形態における原子発振器の製造方法の説明図(2)
【図22】第8の実施の形態における原子発振器の構造図
【図23】CPT方式を説明する原子エネルギー準位の説明図
【図24】面発光レーザ変調時における出力波長の説明図
【図25】変調周波数と透過光量との相関図
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態における原子発振器及び原子発振器の製造方法について説明する。本実施の形態における原子発振器は、図2に示されるように、CPT方式の小型原子発振器であり、光源10、コリメートレンズ20、λ/4板30、アルカリ金属セル40、光検出器50、変調器60を有している。
【0038】
光源10は、面発光レーザ素子等のレーザ素子が用いられている。アルカリ金属セル40には、アルカリ金属のアルカリ金属としてCs(セシウム)原子ガスが封入されている。光検出器50は、フォトダイオードが用いられている。
【0039】
本実施の形態における原子発振器では、光源10より出射された光をアルカリ金属セル40に照射し、アルカリ金属原子における電子を励起する。アルカリ金属セル40を透過した光は光検出器50において検出され、光検出器50において検出された信号は変調器60にフィードバックされ、変調器60により光源10における面発光レーザ素子を変調する。
【0040】
次に、図3及び図4に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル40の作製方法について説明する。
【0041】
最初に、図3(a)に示すように、基板となるSi基板110を準備する。Si基板110の厚さが0.75mmであり、両面とも鏡面加工されている。尚、本実施の形態では、後述するように、2枚のSi基板を接合することによりアルカリ金属セルを形成するものであるため、Si基板110を2枚準備する。
【0042】
次に、図3(b)に示すように、各々のSi基板110に開口部111を形成する。具体的には、Si基板110の一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、開口部111が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、ICP(Inductively Coupled Plasma)等によるドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のSiを除去し、Si基板110を貫通する開口部111を形成する。Siのドライエッチングは、SF6とC4F8とを交互に供給してエッチングを行なうボッシュプロセスにより行なわれる。ボッシュプロセスでは、異方性の高いSiのエッチングを高速で行なうことができる。尚、このドライエッチングにおいて、印加されるパワーは2kWである。
【0043】
上記においては、開口部111をドライエッチングにより形成する方法について説明したが、開口部111をウェットエッチングにより形成することも可能である。具体的には、Si基板110の表面に、減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)により不図示のSiN膜を成膜し、成膜されたSiN膜上にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、開口部111が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、エッチングガスとしてCF4を用いたドライエッチングを行なうことによりレジストパターンが形成されていない領域におけるSiN膜を除去し、更に、レジストパターンを除去することにより、SiNからなるマスクを形成する。この後、85℃の温度で、KOH(30wt%)溶液を用いたウェットエッチングを行なうことにより、SiNからなるマスクが形成されていない領域のSiを除去し、Si基板110に開口部111を形成する。更に、この後、SiNからなるマスクは、SiNを溶解する溶液を用いてウェットエッチング等を行なうことにより除去する。尚、Siのウェットエッチングは、異方性エッチングであり、形成された開口部111の側面には、傾斜角54.7の逆傾斜が形成される。
【0044】
次に、図3(c)に示すように、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面に透明なガラス基板120を陽極接合により接合する。具体的には、減圧チャンバー内において、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面にガラス基板120を接触させ、380℃の温度で、ガラス基板120に−800V印加することにより陽極接合する。この際、アルカリ金属原料等は設置されていないため、陽極接合により生じた酸素等によりアルカリ金属が酸化されることはない。尚、本実施の形態では、2枚のSi基板を接合するものであるため、同様の構造のものをもう1枚作製する。よって、双方のSi基板には略同じ形状の開口部111が形成される。本実施の形態では、ガラス基板120が接合されているSi基板110からなる部材が2つ形成され、後に、各々を一方の部材101、他方の部材102と記載する場合がある。
【0045】
次に、図3(d)に示すように、各々のSi基板110においてガラス基板120が接合されていない一方の面に付着している付着物を除去する。具体的には、ガラス基板120が接合されているSi基板110からなる部材を2つ真空チャンバー内に設置し、真空チャンバー内を排気した後、真空中において双方のSi基板110の一方の面に、Arイオンビームを照射する。これにより、双方のSi基板110の一方の面に付着している自然酸化膜、付着物が除去され表面が活性化処理される。このようにして、双方のSi基板110の一方の面において、接合プラズマ活性化処理を行なう。尚、図3(d)は、一方の部材101を示しているが、他方の部材102についても同様である。
【0046】
次に、図4(a)に示すように、一方の部材101におけるSi基板110の開口部111にCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入する。
【0047】
次に、図4(b)に示すように、一方の部材101と他方の部材102とをSi基板110の一方の面、即ち、表面が活性化処理された面同士が向きあうように対向させ、位置合せを行なう。具体的には、一方の部材101における開口部111と他方の部材102における開口部111とが一致するように位置合せを行なう。
【0048】
次に、図4(c)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材101と他方の部材102とを接合する。具体的には、一方の部材101におけるSi基板110の一方の面及び、他方の部材におけるSi基板110の一方の面の表面は、プラズマ活性化処理がされているため、一方の部材101におけるSi基板110の一方の面と他方の部材におけるSi基板110の一方の面とを接触させて加圧することにより、Si−Siの直接接合により、常温で接合させることができる。尚、直接接合とは、2つの基板表面原子の結合手同士が別原子を介さないで接合している状態である。このようにして、Si基板110の一方の面の接合面同士を接合領域112において接合させることにより、2つの開口部111からなるセル内部113が形成される。このようなSi−Siの直接接合では、酸素等のガスは発生することはないため、接合の際に、アルカリ金属原料130が封入されているセル内部113に酸素等の不純物が入り込むことはない。
【0049】
次に、図4(d)に示すように、一方の部材101と他方の部材102とが接合されたものを図4(c)に示される破線4Aにおいて、セルごとに分離し、アルカリ金属セル40を形成する。
【0050】
これにより、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル40を作製することができる。このように作製されたアルカリ金属セル40は、セル内部113に含まれる酸素等の不純物の量が少ないため、安定度の高い原子発振器を得ることができる。
【0051】
また、CPTによる原子発振器用のMEMS技術を用いたガスセルは、対向した2枚のガラス間がセル内をレーザ光が通る光路長となり、光路長は従来最大で1.5mm程度であった。この光路長は長い方が、レーザ光がアルカリ金属セル通過中に吸収に寄与する原子が増えて、S/Nが高くなるので好ましい。
【0052】
更に、本実施の形態では、アルカリ金属セル40を形成している2枚のガラス120間の距離は、2枚のSi基板110の基板厚に相当するため、容易に2枚のガラス120間の距離を広げることができる。具体的には、1枚の厚いSi基板、例えば、1.5mmの厚さのSi基板をエッチングして開口部を形成する場合には、Si基板が厚いため、開口部を形成する際の負担が大きく、また、開口部を所望の形状に形成することができない場合等がある。しかしながら、本実施の形態では、半分の厚さの基板、即ち、0.75mmの厚さの双方のSi基板をエッチングして開口部を形成するものであるため、開口部を形成する際の負担を軽減することができ、容易に光路長が1.5mmを超えるようなガスセルをMEMS技術により形成することができる等、開口部を所望の形状で形成することができる。
【0053】
尚、アルカリ金属原料130は、アルカリ金属がCsの場合の原料としては、Csメタル、Csを含む大気中で安定的な化合物が挙げられる。アルカリ金属原料130として、Csを含む大気中で安定的な化合物を用いた場合には、セル内部113にアルカリ金属原料130を封入した後、加熱等することによりCsを生成させる。例えば、アルカリ金属原料130として、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液を用いた場合には、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液をセル内部113に封入した後、200℃で反応させてCsを生成する。また、アルカリ金属原料130として、CsN3を用いた場合には、通常の蒸着法でセル内部113にCsN3を成膜し、CsN3をセル内部113に封入した後、UV光を照射しCsとバッファガスとなるN2を発生させる。また、アルカリ金属原料130として、大気中で安定なCsディスペンサーを用いる場合には、Csディスペンサーをセル内部113内に投入して封止した後、Csディスペンサーのみにレーザ光を照射して加熱し、Csを発生させる。
【0054】
尚、アルカリ金属であるCsやRb等は、酸素やH2O等と激しく反応する。よって、セル内部113にCsメタルそのものを投入する場合には、真空チャンバー内において、Cs原料投入後に、真空中で封止した場合においても、真空チャンバー内には、微量の酸素やH2O等が存在しているため、これによりCsが酸化されてしまい、Csの酸化を完全に防ぐことは困難である。これに対し、大気中で安定的なCsの化合物をアルカリ金属原料130として用いた場合では、アルカリ金属原料130をセル内部113に封入した後、加熱等によりCsを生成する方法により、Csの酸化を格段に抑えることができるため、原子発振器の周波数安定性をより一層高めることができる。
【0055】
また、アルカリ金属原料130をセル内部113に封入する際には、真空中で封入するのではなく、上述したように、N2等のバッファガスとともに封入することが好ましい。セル内部113のアルカリ金属は、セル内部113の壁に衝突するとアルカリ金属原子の内部状態が変化してしまい、原子発振器に用いた場合に周波数安定度が低下してしまうが、セル内部113にバッファガスを封入することにより、アルカリ金属原子がセル内部113の壁に衝突する確率を減らすことができ、周波数安定度の低下を抑制することができるため好ましい。尚、バッファガスとしては、窒素、不活性ガス等が好ましく、例えば、N2、Ne、Ar、Ne−Ar混合ガス等が挙げられる。
【0056】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態とは異なるアルカリ金属セルを有する原子発振器及び原子発振器の製造方法である。図5及び図6に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セルの作製方法について説明する。
【0057】
最初に、図5(a)に示すように、Si基板110を準備する。Si基板110の厚さが1mmであり、両面とも鏡面加工されている。尚、本実施の形態では、後述するように、2枚のSi基板を接合することによりアルカリ金属セルを形成するものであるため、Si基板110を2枚準備する。
【0058】
次に、図5(b)に示すように、一方のSi基板110の一方の面の所定の領域に金属膜210を形成する。金属膜210は、後述する開口部111が形成される領域以外、即ち、後述する接合領域となる領域に形成する。具体的には、金属膜210は、Au:700nm/Cr:10nmからなる積層膜であり、スパッタリング、真空蒸着等により成膜することにより形成する。尚、所定の領域に金属膜210を形成する方法としては、Au/Cr膜を成膜した後、金属膜210が形成される領域にレジストパターンを形成し、レジストパターンの形成されていない領域のAu/Cr膜をエッチングにより除去することにより形成することができる。また、Si基板110の一方の面に金属膜210が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成した後、Au/Cr膜を成膜し、有機溶剤等によりレジストパターン上に形成されたAu/Cr膜をレジストパターンとともに除去するリフトオフ等により形成することができる。
【0059】
次に、図5(c)に示すように、Si基板110に開口部111を形成する。具体的には、Si基板110において金属膜210が形成されている一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、開口部111が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、ICP等によるドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のSiを除去し、Si基板110を貫通する開口部111を形成する。Siのドライエッチングは、SF6とC4F8とを交互に供給してエッチングを行なうボッシュプロセスにより行なわれる。
【0060】
次に、図5(d)に示すように、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面に透明なガラス基板120を陽極接合により接合する。具体的には、減圧チャンバー内において、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面にガラス基板120を接触させ、380℃の温度で、ガラス基板120に−800V印加することにより陽極接合する。このようにして形成されたものをガラス基板120が接合されているSi基板110からなる一方の部材201と記載する場合がある。尚、本実施の形態では、2枚のSi基板を接合するものであり、他方の部材102は、第1の実施の形態における他方の部材102を形成する方法と同様の方法により形成する。
【0061】
次に、図6(a)に示すように、一方の部材201において、Si基板110の開口部111にCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入する。
【0062】
次に、図6(b)に示すように、一方の部材201の金属膜210が形成されている面と、他方の部材102のSi基板110が露出している面とを対向させ、位置合せを行なう。尚、他方の部材102において、ガラス基板120が接合されていないSi基板110の一方の面は、直前にフッ酸ライトエッチングを行なうことにより、付着物や酸化膜が予め除去されている。
【0063】
次に、図6(c)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材201と他方の部材102とを金属膜210を介し、メタル−Siの共晶接合により接合する。具体的には、減圧チャンバー内において、一方の部材201におけるSi基板110の一方の面に形成された金属膜210と他方の部材102におけるSi基板110の一方の面とを接触させ、400℃の温度で、15kNで20分間、加圧処理を行い、接合領域212にメタル−Siの共晶を形成する。これにより共晶接合により接合させる。このようにして、2つの開口部111からなるセル内部213が形成される。このようなメタル−Siの共晶接合では、酸素等のガスは発生することはないため、接合の際に、アルカリ金属原料130が封入されているセル内部213に酸素等の不純物が入り込むことはない。
【0064】
次に、図6(d)に示すように、一方の部材201と他方の部材102とが接合されたものを図6(c)に示される破線6Aにおいて、セルごとに分離しアルカリ金属セル240を形成する。
【0065】
これにより、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル240を作製することができる。このように作製されたアルカリ金属セル240は、セル内部213に含まれる酸素等の不純物の量は少ないため、安定度の高い原子発振器を得ることができる。
【0066】
尚、本実施の形態における原子発振器は、第1の実施の形態における原子発振器のアルカリ金属セル40をアルカリ金属セル240に置き換えることにより得ることができる。また、金属膜210はとしては、Au/Cr以外にも、Au−Sn(合金)、Au等を用いることができる。
【0067】
また、本実施の形態において、アルカリ金属セル240は、一方の部材201と同様に金属膜210が形成された他方の部材202を用いて作製してもよい。この場合、他方の部材202は、一方の部材201と同様の方法により作製される。この場合の製造方法は、他方の部材202の作製方法を除き、図6(a)までは、前述した内容と同じである。よって、これ以降の製造工程について、図7に基づき説明する。
【0068】
図6(a)に示す工程の後、図7(a)に示すように、一方の部材201の金属膜210が形成されている面と、他方の部材202の金属膜210が形成されている面とを対向させ、位置合せを行なう。
【0069】
次に、図7(b)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材201と他方の部材202とを互いの金属膜210同士で接合する。具体的には、減圧チャンバー内において、一方の部材201における金属膜210と他方の部材202における金属膜210とを接触させ、加圧または加熱等することにより金属膜210同士の直接接合により接合する。このように、金属膜210同士の直接接合により接合領域212において接合することにより、2つの開口部111からなるセル内部213が形成される。このような金属同士の接合では、酸素等のガスは発生することはないため、接合の際に、アルカリ金属原料130が封入されているセル内部213に酸素等の不純物が入り込むことはない。尚、金属同士の接合を行なう場合には、金属膜210は、ともにAu(金)、または、Auを含む金属材料により形成されていることが好ましい。
【0070】
次に、図7(c)に示すように、一方の部材201と他方の部材202とが接合されたものを図7(b)に示される破線7Aにおいて、セルごとに分離し、アルカリ金属セル240を形成する。
【0071】
また、本実施の形態では、アルカリ金属セル240を形成している2枚のガラス120間の距離(光路長)はおよそ2mmである。従来は1.5mm程度であったが、2枚のSi基板110の基板厚に相当するため、容易に2枚のガラス120間の距離を広げることができる。
【0072】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0073】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1及び第2の実施の形態とは異なるアルカリ金属セルを有する原子発振器及び原子発振器の製造方法である。図8及び図9に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セルの作製方法について説明する。
【0074】
最初に、図8(a)に示すように、Si基板110を準備する。Si基板110の厚さが1mmであり、両面とも鏡面加工されている。尚、本実施の形態では、後述するように、3枚のSi基板を接合することによりアルカリ金属セルを形成するものであるため、Si基板110を3枚準備する。
【0075】
次に、図8(b)に示すように、各々のSi基板110に開口部111を形成する。具体的には、Si基板110の一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、開口部111が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、ICP等によるドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のSiを除去し、Si基板110を貫通する開口部111を形成する。Siのドライエッチングは、SF6とC4F8とを交互に供給してエッチングを行なうボッシュプロセスにより行なわれる。
【0076】
次に、図8(c)に示すように、開口部111の形成されたSi基板110のうち、2枚のSi基板110の他方の面に透明なガラス基板120を陽極接合により接合する。具体的には、減圧チャンバー内において、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面にガラス基板120を接触させ、380℃の温度で、ガラス基板120に−800V印加することにより陽極接合する。本実施の形態では、ガラス基板120が接合されているSi基板110からなる部材が2つ形成され、各々を一方の部材301、他方の部材302と記載する場合がある。また、ガラス基板120が接合されていないSi基板を他のSi基板110aと記載する場合がある。
【0077】
次に、図8(d)に示すように、ガラス基板120が接合されているSi基板110からなる一方の部材301と、開口部111が形成された他のSi基板110aとの双方の接合面に付着している付着物を除去する。具体的には、一方の部材301と開口部111が形成された他のSi基板110aとを真空チャンバー内に設置し、真空チャンバー内を排気した後、真空中において接合面となるSi基板110及び他のSi基板110aの表面に、Arイオンビームを照射する。これにより、双方の接合面となるSi基板110及び他のSi基板110aの表面に付着している自然酸化膜、付着物を除去することにより表面を活性化処理する。このようにして、一方の部材301及び他のSi基板110aの双方の接合面となる表面において、接合プラズマ活性化処理を行なう。
【0078】
次に、図9(a)に示すように、一方の部材301と開口部111が形成された他のSi基板110aとを表面が活性化処理された面同士を接触させて加圧することにより、Si−Siの直接接合により接合する。
【0079】
次に、図9(b)に示すように、一方の部材301における開口部111にCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入する。
【0080】
次に、図9(c)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、開口部111が形成された他のSi基板110aと他方の部材302とを接合する。具体的には、図示はしないが、一方の部材302と開口部111が形成された他のSi基板110aとの双方の接合面にArイオンビームを照射し、双方の接合面となるSi基板110及び他のSi基板110aの表面に付着している自然酸化膜、付着物を除去し表面を活性化処理する。この後、他方の部材302と開口部111が形成された他のSi基板110aとにおいて、表面が活性化処理されている面同士を接触させて加圧することにより、Si−Siの直接接合により接合する。このようなSi−Siの直接接合では、酸素等のガスは発生することはないため、接合の際に、アルカリ金属原料130が封入されているセル内部313に酸素等の不純物が入り込むことはない。このように、一方の部材301の開口部111、Si基板110aの開口部111、他方の部材の開口部302によりセル内部313が形成される。
【0081】
次に、図9(d)に示すように、一方の部材301と開口部111が形成された他のSi基板110aと他方の部材302とが接合されたものを図9(c)に示される破線9Aにおいて、セルごとに分離し、アルカリ金属セル340を形成する。
【0082】
これにより、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル340を作製することができる。このように作製されたアルカリ金属セル340は、セル内部313に含まれる酸素等の不純物の量は少ないため、安定度の高い原子発振器を得ることができる。
【0083】
尚、本実施の形態における原子発振器は、第1の実施の形態における原子発振器のアルカリ金属セル40をアルカリ金属セル340に置き換えることにより得ることができる。本実施の形態においては、厚さ1mmのSi基板110を3枚接合したものであるため、アルカリ金属セル340を形成している2枚のガラス120間の距離(光路長)はおよそ3mmである。また、上記説明では、Si基板110を3枚用いた場合について説明したが、Si基板110を4枚以上用いた場合も同様にアルカリ金属セルを形成することができる。本実施の形態では、アルカリ金属セルを形成するためのSi基板110の枚数を増やすことにより、容易にアルカリ金属セル内を透過するレーザ光の光路長を長くすることができる。
【0084】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0085】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第3の実施の形態とは異なるアルカリ金属セルを有する原子発振器及び原子発振器の製造方法である。図10から図12に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セルの作製方法について説明する。
【0086】
最初に、図10(a)に示すように、基板となるSi基板410a及び410bを準備する。Si基板410aと410bはともに同じ基板であり、厚さが1mmであり、両面とも鏡面加工されている。
【0087】
次に、図10(b)に示すように、一方のSi基板410aに開口部411a及び411bを形成し、他方のSi基板410bに開口部411a、411b及び411cを形成する。これにより、一方のSi基板410aには、図12(a)に示すように、分離された開口部411a及び開口部411bが形成され、他方のSi基板410bには、図12(b)に示すように、開口部411cにより開口部411aと開口部411bとが接続されているものが形成される。ここで、開口部411cはセル接続部となるものであり、Cs原子ガスは通過することはできるが、Csの化合物は通過することができないように細い溝により形成されている。尚、図10(b)は、図12(a)において、一点鎖線12A−12Bにおいて切断したSi基板410aの断面、及び図12(b)において、一点鎖線12C−12Dにおいて切断したSi基板410bの断面を示す。
【0088】
次に、図10(c)に示すように、一方のSi基板410aにガラス基板120を陽極接合により接合することにより一方の部材401を作製し、他方のSi基板410bにガラス基板120を陽極接合により接合することにより他方の部材402を作製する。
【0089】
次に、図11(a)に示すように、一方の部材401における開口部411bにCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入する。尚、図示はしないが、一方の部材401において、ガラス基板120が接合されていないSi基板410の面に付着している付着物は、Arイオンビームを照射することにより除去されており、他方の部材402において、ガラス基板120が接合されていないSi基板410の面に付着している付着物は、Arイオンビームを照射することにより除去されているものとする。これにより、一方の部材401と他方の部材402の接合面は、接合プラズマ活性化処理がなされる。
【0090】
次に、図11(b)に示すように、一方の部材401と他方の部材402とを表面が活性化処理された面同士が向きあうように対向させ、位置合せを行なう。
【0091】
次に、図11(c)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材401と他方の部材402とを接合しアルカリ金属セル440を形成する。具体的には、一方の部材401と他方の部材402とが接合される面は、ともにプラズマ活性化処理がされているため、接触させて加圧することにより、Si−Siの直接接合により接合することができる。このようにして、一方の部材401と他方の部材402とを接合領域412において接合することにより、2つの開口部411aからなる第1のセル内部413a及び2つの開口部411bからなる第2のセル内部413bが形成される。尚、第1のセル内部413aと第2のセル内部413bとは、セル接続部となる開口部411cにより接続されており、アルカリ金属原料130は、第2のセル内部413bに設置されている。
【0092】
本実施の形態におけるアルカリ金属セル440では、アルカリ金属の生成は加熱等することによりなされ、生じたアルカリ金属のガスがセル接続部となる開口部411cを通り、第1のセル内部413aに入った状態で用いられる。よって、本実施の形態における原子発振器においては、アルカリ金属セル440の第1のセル内部413aに光が照射される。
【0093】
本実施の形態において用いられるアルカリ金属原料130は、アルカリ金属がCsの場合では、Csを含む大気中で安定的な化合物が挙げられる。具体的には、アルカリ金属原料130として、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液を用いた場合には、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液を第2のセル内部413bに封入した後、200℃で反応させてCsを生成する。また、アルカリ金属原料130として、CsN3を用いた場合には、通常の蒸着法で第2のセル内部413bにCsN3を成膜し、CsN3を第2のセル内部413bに封入した後、UV光を照射しCsとバッファガスとなるN2を発生させる。また、アルカリ金属原料130として、大気中で安定なCsディスペンサーを用いる場合には、Csディスペンサーを第2のセル内部413b内に投入して封止した後、Csディスペンサーのみにレーザ光を照射して加熱し、Csを発生させる。
【0094】
本実施の形態では、第1のセル内部413aには、Cs等のアルカリ金属とバッファガスのみとなるため、原子発振器の周波数安定性をより一層高めることができる。
【0095】
本実施の形態においては、厚さ1mmのSi基板410aおよび410bの2枚接合したものであるため、アルカリ金属セル440を形成している2枚のガラス120間の距離(光路長)はおよそ2mmである。
【0096】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0097】
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態とは異なるアルカリ金属セルを有する原子発振器及び原子発振器の製造方法である。
【0098】
図13及び図14に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル540の作製方法について説明する。
【0099】
最初に、図13(a)に示すように、Si基板110を準備する。Si基板110の厚さが1mmであり、両面とも鏡面加工されている。尚、本実施の形態では、後述するように、2枚のSi基板を接合することによりアルカリ金属セルを形成するものであるため、Si基板110を2枚準備する。
【0100】
次に、図13(b)に示すように、各々のSi基板110の一方の面をエッチングし、凹部511aを形成する。具体的には、Si基板110の一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、凹部511aが形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、ICP等によるドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のSiを除去し、凹部511aを形成する。
【0101】
次に、図13(c)に示すように、各々のSi基板110の他方の面において、凹部511aに対応する領域をエッチングにより除去し、貫通させることにより、開口部511を形成する。
【0102】
次に、図13(d)に示すように、各々の開口部511の形成されたSi基板110の他方の面に透明なガラス基板120を陽極接合により接合する。このようにしてガラス基板120が接合されているSi基板110からなる部材が2つ形成され、各々について一方の部材501、他方の部材502と記載する場合がある。
【0103】
次に、図14(a)に示すように、各々のSi基板110においてガラス基板120が接合されていない一方の面にArイオンビームを照射し、双方のSi基板110の一方の面に付着している自然酸化膜、付着物を除去することにより表面を活性化処理する。このようにして、双方のSi基板110の一方の面において、接合プラズマ活性化処理を行なう。
【0104】
次に、図14(b)に示すように、一方の部材501におけるSi基板110の開口部511にCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入する。
【0105】
次に、図14(c)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材501と他方の部材502とを接合領域512において接合する。これにより、双方の開口部511によりセル内部513が形成される。
【0106】
次に、図14(d)に示すように、一方の部材501と他方の部材502とが接合されたものを図14(c)に示される破線14Aにおいて、セルごとに分離し、アルカリ金属セル540を形成する。
【0107】
本実施の形態では、Si基板110を両面より各々エッチングすることにより開口部511を形成するものであるため、1回当たりのエッチングの負担を軽くすることができる。
【0108】
また、本実施の形態では、開口部511を更に別の方法により形成することも可能である。具体的には、図15(a)に示すように、Si基板110を準備する。
【0109】
次に、図15(b)に示すように、Si基板110において、開口部511が形成される領域の縁に沿って、エッチングにより一方の面から他方の面に貫通する溝部518を形成する。
【0110】
次に、図15(c)に示すように、溝部518に囲まれた領域のSi部519を除去することにより、図13(c)に示すものと同様のものを作製することができ、Si基板110に開口部511を形成することができる。
【0111】
この後の工程は、図13(d)から図14(d)と同様である。
【0112】
尚、本実施の形態は、第2から第4の実施の形態にも適用することが可能である。
【0113】
〔第6の実施の形態〕
次に、第6の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第5の実施の形態とは異なるアルカリ金属セルを有する原子発振器及び原子発振器の製造方法である。図16及び図17に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セルの作製方法について説明する。
【0114】
最初に、図16(a)に示すように、Si基板110を準備する。Si基板110の厚さが1mmであり、両面とも鏡面加工されている。尚、本実施の形態では、後述するように、2枚のSi基板を接合することによりアルカリ金属セルを形成するものであるため、Si基板110を2枚準備する。
【0115】
次に、図16(b)に示すように、一方のSi基板110に開口部111を形成する。具体的には、一方のSi基板110の一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、開口部111が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、ICP等によるドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のSiを除去し、Si基板110を貫通する開口部111を形成する。Siのドライエッチングは、SF6とC4F8とを交互に供給してエッチングを行なうボッシュプロセスにより行なわれる。
【0116】
次に、図16(c)に示すように、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面に透明なガラス基板120を陽極接合により接合する。具体的には、減圧チャンバー内において、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面にガラス基板120を接触させ、380℃の温度で、ガラス基板120に−800V印加することにより陽極接合する。
【0117】
次に、図16(d)に示すように、開口部111の形成されたSi基板110の一方の面に低融点ガラスペーストを塗布し乾燥させることにより、開口部111が形成されている領域以外、即ち、接合領域となる領域にガラスフリッド610を形成する。ガラスフリッド610となる低融点ガラスペーストは、低融点ガラス微粒子を主成分とするものであり、熱膨張係数を調整するための無機フィラーを含んでおり、500℃以下の低温でリフローが可能である。このようにして形成されたものをガラス基板120が接合されているSi基板110からなる一方の部材601と記載する場合がある。尚、本実施の形態では、2枚のSi基板を接合するものであり、他方の部材102は、第1の実施の形態における他方の部材102を形成する方法と同様の方法により形成する。
【0118】
次に、図17(a)に示すように、一方の部材601において、Si基板110の開口部111にCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入する。
【0119】
次に、図17(b)に示すように、一方の部材601のガラスフリッド610が形成されている面と、他方の部材102のSi基板110が露出している面とを対向させ、位置合せを行なう。尚、他方の部材102において、ガラス基板120が接合されていないSi基板110の一方の面は、直前にフッ酸ライトエッチングを行なうことにより、付着物や酸化膜が予め除去されている。
【0120】
次に、図17(c)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材601と他方の部材102とをガラスフリッド610を介し接合する。具体的には、窒素雰囲気中における減圧チャンバー内において、一方の部材601におけるSi基板110の一方の面に形成されたガラスフリッド610と他方の部材102におけるSi基板110の一方の面とを接触させ、470℃の温度で、300kPaで20分間加熱処理を行なうことにより接合する。このようにして、一方の部材601と他方の部材102とを接合領域612において接合することにより、2つの開口部111からなるセル内部613が形成される。このようなガラスフリッドによる接合では、酸素等のガスは発生することはないため、接合の際に、アルカリ金属原料130が封入されているセル内部613に酸素等の不純物が入り込むことはない。
【0121】
次に、図17(d)に示すように、一方の部材601と他方の部材102とが接合されたものを図17(c)に示される破線17Aにおいて、セルごとに分離しアルカリ金属セル640を形成する。
【0122】
これにより、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル640を作製することができる。このように作製されたアルカリ金属セル640は、セル内部613に含まれる酸素等の不純物の量は少ないため、安定度の高い原子発振器を得ることができる。尚、本実施の形態における原子発振器は、第1の実施の形態における原子発振器のアルカリ金属セル40を本実施の形態におけるアルカリ金属セル640に置き換えることにより得ることができる。
【0123】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0124】
〔第7の実施の形態〕
次に、第7の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第6の実施の形態とは異なるアルカリ金属セルを有する原子発振器及び原子発振器の製造方法である。図18から図21に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セルの作製方法について説明する。
【0125】
最初に、図18(a)に示すように、基板となるSi基板710a及び710bを準備する。Si基板710a及び710bはともに同じ基板であり、厚さが1mmであり、両面とも鏡面加工されている。
【0126】
次に、図18(b)に示すように、一方のSi基板710aにガスセル室と原料室を形成するための開口部711a及び711bを形成し、他方のSi基板710bにガスセル室、原料室及びセル接続部を形成するための開口部711a、711b及び711cを形成する。これにより、一方のSi基板710aには、図20(a)に示すように、ガスセル室及び原料室を形成するための分離された開口部711a及び711bが形成され、他方のSi基板710bには、図20(b)に示すように、ガスセル室及び原料室を形成するための開口部711a及び711bが、セル接続部となる開口部711cにより接続されているものが形成される。ここで、開口部711cにより形成されるセル接続部は、Cs原子ガスは通過することはできるが、Csの化合物は通過することができないように、図21(a)に示すように、ガスセル室や原料室より浅く、2段階のエッチングによる細い溝により形成されている。尚、図18、図19は、図20(a)における一点鎖線20A−20Bにおいて切断したSi基板710aの断面に対応する部分、及び図20(b)における一点鎖線20C−20Dにおいて切断したSi基板710bの断面に対応する部分を示す。また、図21は、図20(a)において、一点鎖線20E−20Fにおいて切断したSi基板710aの断面に対応する部分、及び図20(b)において、一点鎖線20G−20Hにおいて切断したSi基板710bの断面に対応する部分を示す。また、本実施の形態においては、セル接続部を形成するための開口部711cは、一つの細い溝により形成されているが、複数の細い溝により形成されたものであってもよい。
【0127】
次に、図18(c)に示すように、一方のSi基板710aにガラス基板120を陽極接合により接合することにより一方の部材701を作製する。また、他方のSi基板710bのセル接続部となる開口部711cに相当する領域に、ガラスフリッド721が形成されているガラス基板120を陽極接合により接合することにより他方の部材702を作製する。
【0128】
次に、図19(a)及び図21(b)に示すように、一方の部材701における開口部711bにCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入した後、一方の部材701と他方の部材702におけるSiが露出している側の面同士を張り合わせる。尚、図示はしないが、ガラス基板120が接合されていない両方のSi基板710a及び710bの表面に付着している付着物は、Arイオンビームを照射することにより除去されており、これにより、一方の部材701及び他方の部材702における接合面は、接合プラズマ活性化処理がなされる。具体的には、一方の部材701と他方の部材702とを表面が活性化処理された面同士が向きあうように対向させ、位置合せを行なう。そして、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材701と他方の部材702とを接合し一体部材を形成する。一方の部材701と他方の部材702とが接合される面は、ともにプラズマ活性化処理がされているため、接触させて加圧することにより、Si−Siの直接接合により接合することができる。このようにして、一方の部材710aと他方の部材710bとを接合領域712において接合することにより、2つの開口部711aによりガスセル室となる第1のセル内部713a、2つの開口部711bにより原料室となる第2のセル内部713bが形成される。尚、第1のセル内部713aと第2のセル内部713bとは、セル接続部となる開口部711cにより接続されており、アルカリ金属原料130は、第2のセル内部713bに設置されている。
【0129】
本実施の形態におけるアルカリ金属セル740では、アルカリ金属の生成は加熱等することによりなされ、生じたアルカリ金属のガスがセル接続部となる開口部711cを通り、第1のセル内部713aに入った状態で用いられる。よって、本実施の形態における原子発振器においては、アルカリ金属セル740の第1のセル内部713aに光が照射される。
【0130】
本実施の形態において用いられるアルカリ金属原料130は、アルカリ金属がCsの場合では、Csを含む大気中で安定的な化合物が挙げられる。具体的には、アルカリ金属原料130として、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液を用いた場合には、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液を第2のセル内部713bに封入した後、200℃で反応させてCsを生成する。また、アルカリ金属原料130として、CsN3を用いた場合には、通常の蒸着法で第2のセル内部713bにCsN3を成膜し、CsN3を第2のセル内部713bに封入した後、UV光を照射しCsとバッファガスとなるN2を発生させる。また、アルカリ金属原料130として、大気中で安定なCsディスペンサーを用いる場合には、Csディスペンサーを第2のセル内部713b内に投入して封止した後、Csディスペンサーのみにレーザ光を照射して加熱し、Csを発生させる。
【0131】
次に、図19(b)及び図21(c)に示すように、窒素雰囲気のオーブンの中で、470℃の温度で、300kPaで20分間、加圧処理を行い、ガラスフリッド721を溶融し、セル接合部を封止する。
【0132】
これにより、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル740を作製することができる。このように作製されたアルカリ金属セル740は、第1のセル内部713a等に含まれる酸素等の不純物の量は少なく、Cs等のアルカリ金属とバッファガスのみとなる。また、セル接続部である開口部721は、ガラスフリッド721により封止されているため、ガスセル室となる第1のセル内部713aと原料室となる第2のセル内部713bが分離されており、ガスセル室となる第1のセル内部713aにおける雰囲気は、吸着などによるアルカリ金属原料130の経時変化の影響を受けず、原子発振器の周波数安定性をより一層高めることができる。
【0133】
ここで、セル接合部封止後、不要となったアルカリ金属原料室を切り離してガスセル室部のみをアルカリ金属セルとして用いてもよい。この場合には、アルカリ金属セルの熱容量が小さくなるため、省エネルギーなものとなる。
【0134】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0135】
〔第8の実施の形態〕
次に、第8の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第7の実施の形態における原子発振器が一体化された構造のものである。
【0136】
図22に基づき、本実施の形態における原子発振器について説明する。本実施の形態における原子発振器は、回路基板71上に縦方向に形成されている。回路基板71上には、アルミナ基板72が設けられており、アルミナ基板72上には光源10となる面発光レーザ素子が設置されている。尚、アルミナ基板72は、光源10の温度等を制御するための面発光レーザ用ヒータ73が設けられている。光源10の上方には、ND(Neutral Density)フィルタ74が設けられている。NDフィルタ74は、ガラス等により形成された断熱スペーサ75により所定の位置に設置されている。NDフィルタ74の上部にはコリメートレンズ20が設けられており、コリメータレンズの上方には、λ/4板30が設けられている。λ/4板30はシリコン等により形成されたスペーサ76により所定の位置に設置されている。λ/4板30の上には、アルカリ金属セル40が設けられている。アルカリ金属セル40は、2枚のガラス基板41を有しており、2枚のガラス基板41が対向している状態で、縁の部分がシリコン基板42により接続されており、ガラス基板41とシリコン基板42に囲まれた部分には、アルカリ金属が封入されている。尚、アルカリ金属セル40において、レーザ光が透過する面がガラス基板41により形成されている。アルカリ金属セル40の両側には、セル用ヒータ77が設けられており、アルカリ金属セル40を所定の温度に設定することができる。アルカリ金属セル40の上方には、光検出器50が設けられており、光検出器50はシリコンからなるスペーサ78により所定の位置に設置されている。
【0137】
次に、図23に、CPTに関連する原子エネルギー準位の構造を示す。二つの基底準位から励起準位に電子が同時に励起されると光の吸収率が低下することを利用する。面発光レーザは搬送波波長が894.6nmに近い素子を用いている。搬送波の波長は面発光レーザの温度、もしくは出力を変化させてチューニングすることができる。図24に示すように、変調をかけることで搬送波の両側にサイドバンドが発生し、その周波数差がCs原子の固有振動数である9.2GHzに一致するように4.6GHzで変調させている。図25に示すように、励起されたCsガスを通過するレーザ光はサイドバンド周波数差がCs原子の固有周波数差に一致した時に最大となるので、光検出器50の出力が最大値を保持するように変調器60においてフィードバックして光源10における面発光レーザ素子の変調周波数を調整する。原子の固有振動数が極めて安定なので変調周波数は安定した値となり、この情報がアウトプットとして取り出される。尚、波長が894.6nmの場合では、±1nmの範囲の波長が必要となる。
【0138】
尚、本実施の形態における原子発振器のアルカリ金属セル40において、本実施の形態におけるシリコン基板42は、第1の実施の形態等におけるSi基板110に相当するものであり、ガラス基板41は、第1の実施の形態におけるガラス基板120等に相当するものである。また、本実施の形態における原子発振器において、アルカリ金属セル40に代えて、第2から第7の実施の形態におけるアルカリ金属セル240、340、440、540、640、740についても同様に用いることも可能である。
【0139】
また、本実施例ではアルカリ金属としてCsを用い、そのD1ラインの遷移を用いるために波長が894.6nmの面発光レーザを用いたが、CsのD2ラインを利用する場合852.3nmを用いることもできる。また、アルカリ金属としてRb(ルビジウム)を用いることもでき、D1ラインを利用する場合は795.0nm、D2ラインを利用する場合は780.2nmを用いることができる。また、Rbを用いる場合の変調周波数は、87Rbでは3.4GHz、85Rbでは1.5GHzで変調させる。尚、これらの波長においても、±1nmの範囲の波長が必要となる。
【0140】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0141】
10 光源
20 コリメートレンズ
30 λ/4板
40 アルカリ金属セル
50 光検出器
60 変調器
101 一方の部材
102 他方の部材
110 Si基板
111 開口部
112 接合領域
113 セル内部
120 ガラス基板
130 アルカリ金属原料
【先行技術文献】
【特許文献】
【0142】
【特許文献1】米国特許第6806784号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0007118号明細書
【特許文献3】特開2009−212416号公報
【特許文献4】特開2009−283526号公報
【非特許文献】
【0143】
【非特許文献1】Applied Physics Letters,Vol.85,pp.1460−1462 (2004)
【非特許文献2】Comprehensive Microsystems, vol.3,pp.571−612
【非特許文献3】Applied Physics Letters,Vol.84,pp.2694−2696 (2004)
【非特許文献4】OPTICS LETTERS,Vol.30,pp.2351−2353 (2005)
【非特許文献5】Applied Physics Letters,Vol.90,114106 (2007)
【非特許文献6】J.Micro/Nanolith. MEMS MOEMS 7(3),033013(2008)
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子発振器及び原子発振器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
極めて正確な時間を計る時計として原子時計(原子発振器)があり、この原子時計を小型化する技術等の検討がなされている。原子時計とは、アルカリ金属等の原子を構成している電子の遷移エネルギー量を基準とする発振器であり、特に、アルカリ金属の原子における電子の遷移エネルギーは外乱がない状態では、非常に精密な値が得られるため、水晶発振器に比べて、数桁高い周波数安定性を得ることができる。
【0003】
このような原子時計には、幾つかの方式があるが、中でも、CPT(Coherent Population Trapping)方式の原子時計は、従来の水晶発振器に比べて周波数安定性が3桁程度高く、また、超小型、超低消費電力を望むことができる(非特許文献1、2)。
【0004】
CPT方式の原子時計では、図1に示すように、レーザ素子等の光源910と、アルカリ金属を封入したアルカリ金属セル940と、アルカリ金属セル940を透過したレーザ光を受光する光検出器950とを有しており、レーザ光は変調され、特定波長である搬送波の両側に出現するサイドバンド波長により、アルカリ金属原子における電子の2つの遷移を同時に行ない、励起する。この遷移における遷移エネルギーは不変であり、レーザ光のサイドバンド波長と遷移エネルギーに対応する波長とが一致したときに、アルカリ金属における光の吸収率が低下する透明化現象が生じる。このように、アルカリ金属による光の吸収率が低下するように、搬送波の波長を調整するとともに、光検出器950において検出された信号を変調器960にフィードバックし、変調器960によりレーザ素子等の光源910からのレーザ光の変調周波数を調整することを特徴とした原子時計である。尚、レーザ光は、光源910より発せられ、コリメートレンズ920及びλ/4板930を介し、アルカリ金属セル940に照射される。
【0005】
このような超小型の原子時計におけるアルカリ金属セルとして、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて生産する方法が開示されている(特許文献1〜4)。これらに開示されている方法では、最初に、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術によりSi基板に開口部を形成した後、陽極接合によりガラスとSi基板とを接合する。陽極接合は、200℃〜450℃の温度で、ガラスとSi基板との界面に250V〜1000V程度の電圧を印加することにより行なわれる。この後、アルカリ金属とバッファガスを入れて、上面となる開口部分にガラスを陽極接合により接合することにより封止する。このようにして形成されたものをセルごとに切り出すことにより、アルカリ金属セルが形成される。
【0006】
アルカリ金属をセル内に封入する方法としては、Cs(セシウム)メタルを真空中で直接投下し封入する方法(非特許文献3)、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液をセル内に投入し、セルを封止した後、200℃で反応させてCsメタルを生成する方法(非特許文献3)、ヒータ付きアンプル中でBaN6+CsClを反応させてCsメタルを発生させてセル中に蒸発させて移す方法(非特許文献4)、通常の蒸着法でセル中にCsN3を成膜しセルを封止した後、UV光を照射しCsとN2を発生させる方法(非特許文献5)、大気中で安定なCsディスペンサーをセル内に投入しセルを封止した後、Csディスペンサーのみにレーザ光を照射して加熱し、Csを発生させる方法(非特許文献6)等がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、陽極接合によりセルを封止する場合、陽極接合において発生する酸素、OH、H2O等が、セル内のアルカリ金属と反応し、例えば、Csの場合では、CsxOy等が生成されるため、レーザ光の透過度が変動し、周波数シフトが生じてしまい、周波数の短期安定度を劣化させるという不具合があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、アルカリ金属セル内において、酸素等の不純物が少なく、安定度の高い原子発振器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、前記アルカリ金属セルは、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、前記一方の部材における基板の一方の面と、前記他方の部材における基板の一方の面と、を直接接合することにより、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、を有するものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、前記アルカリ金属セルは、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、前記一方の部材における基板の一方の面及び前記他方の部材における基板の一方の面のいずれかまたは双方には、金属膜が設けられており、前記金属膜を介し共晶接合または金属同士の直接接合により、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、を有するものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記金属膜は、金を含む材料により形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、前記アルカリ金属セルは、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、前記一方の部材における基板の一方の面及び前記他方の部材における基板の一方の面のいずれかまたは双方には、ガラスフリッドが設けられており、前記ガラスフリッドを介し接合し、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、を有するものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記基板はSiにより形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記一方の部材と前記他方の部材との間には、前記開口部と略同一の形状の開口部を有する他の基板が1または2以上設けられており、前記一方の部材と前記他の基板、及び、前記他方の部材と前記他の基板とは接合されており、前記一方の部材の開口部、前記他方の部材の部材の開口部、前記他の基板の開口部によりセル内部が形成されるものであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記他の基板はSiにより形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、2つのガラス基板間の距離は1.5mm以上であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記セル内部は、第1のセル内部と第2のセル内部とを有しており、前記第1のセル内部と前記第2のセル内部とはセル接続部により接続されており、前記アルカリ金属原料はアルカリ金属の化合物であって、第2のセル内部に設置されており、前記光源から発せられた光は、前記第1のセル内部を透過するものであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記原子発振器は、前記光源より出射したサイドバンドを含む光のうち、2つの異なる波長の光を前記アルカリ金属セルに入射させることにより、2種類の共鳴光による量子干渉効果による光吸収特性により発振周波数を制御するものであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記2つの異なる波長の光は、ともに前記面発光レーザより出射したサイドバンドの光であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記アルカリ金属は、ルビジウム、または、セシウムであることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器の製造方法において、2枚の基板に、一方の面から他方の面に貫通する略同じ形状の開口部を形成する工程と、前記開口部の形成された2枚の基板の前記他方の面に各々ガラス基板を接合することにより、一方の部材と他方の部材を形成する工程と、前記一方の部材または前記他方の部材の開口部に、アルカリ金属原料を入れる工程と、前記一方の部材の基板の一方の面と前記他方の部材の基板の一方の面とを接合する工程と、を有し、前記一方の部材の開口部と前記他方の部材の開口部により前記アルカリ金属セルのセル内部が形成されることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記アルカリ金属原料を入れる工程及び前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程は、真空チャンバー内において行なわれるものであって、前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程の前に、前記真空チャンバー内において、前記接合される接合面にイオンビームを照射し前記接合面の表面を活性化処理する工程を有することを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、前記基板はSiにより形成されており、前記一方の部材と前記他方の部材との接合は、前記Siの直接接合により接合されるものであることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、1または2枚以上の他の基板に、一方の面から他方の面に貫通する略同じ形状の開口部を形成する工程を有し、前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程において、前記一方の部材の基板の一方の面と前記他方の部材の基板の一方の面は、前記他の基板を介し接合するものであることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、前記基板及び前記他の基板はSiにより形成されており、前記一方の部材と他の基板との接合及び前記他方の部材と他の基板との接合は、前記Siの直接接合により接合されるものであることを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、前記一方の部材の基板の一方の面及び前記他方の部材の基板の一方の面のうち、いずれかまたは双方には、金属膜が形成されており、前記一方の部材と前記他方の部材との接合は、前記金属膜を介し共晶接合または金属同士の直接接合により接合されるものであることを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、前記金属膜は、金を含む材料により形成されていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、前記一方の部材の基板の一方の面及び前記他方の部材の基板の一方の面のうち、いずれかまたは双方には、ガラスフリットが形成されており、前記一方の部材と前記他方の部材との接合は、前記ガラスフリットを介し接合されるものであることを特徴とする。
【0029】
また、本発明は、ガラス基板に設けたガラスフリットを加熱することにより、前記セル接続部を封止することを特徴とする。
【0030】
また、本発明は、前記アルカリ金属原料はアルカリ金属の化合物であって、前記セル内部を形成した後、前記アルカリ金属原料を加熱、UV光の照射、レーザ光の照射することにより、前記アルカリ金属を生成することを特徴とする。
【0031】
また、本発明は、前記セル内部は、第1のセル内部と第2のセル内部とを有しており、前記第1のセル内部と前記第2のセル内部とはセル接続部により接続されており、前記アルカリ金属原料はアルカリ金属の化合物であって、第2のセル内部に設置されており、前記アルカリ金属原料を加熱、UV光の照射、レーザ光の照射することにより前記アルカリ金属を発生させ、前記アルカリ金属が前記第1のセル内部に入り込むものであることを特徴とする。
【0032】
また、本発明は、前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程は、前記真空チャンバー内において、窒素または不活性ガスの雰囲気中で行なわれるものであることを特徴とする。
【0033】
また、本発明は、前記第1のセル内部に前記アルカリ金属を移動させたあと、前記セル接続部を封止し、前記第1のセル内部と前記第2のセル内部を空間的に分離する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、アルカリ金属セル内において、酸素等の不純物が少なく、安定度の高い原子発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】原子発振器の説明図
【図2】第1の実施の形態における原子発振器の説明図
【図3】第1の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図4】第1の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図5】第2の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図6】第2の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図7】第2の実施の形態における他の原子発振器の製造方法の工程図
【図8】第3の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図9】第3の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図10】第4の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図11】第4の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図12】第4の実施の形態における原子発振器の製造方法の説明図
【図13】第5の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図14】第5の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図15】第5の実施の形態における他の原子発振器の製造方法の工程図
【図16】第6の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図17】第6の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図18】第7の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1)
【図19】第7の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2)
【図20】第7の実施の形態における原子発振器の製造方法の説明図(1)
【図21】第7の実施の形態における原子発振器の製造方法の説明図(2)
【図22】第8の実施の形態における原子発振器の構造図
【図23】CPT方式を説明する原子エネルギー準位の説明図
【図24】面発光レーザ変調時における出力波長の説明図
【図25】変調周波数と透過光量との相関図
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態における原子発振器及び原子発振器の製造方法について説明する。本実施の形態における原子発振器は、図2に示されるように、CPT方式の小型原子発振器であり、光源10、コリメートレンズ20、λ/4板30、アルカリ金属セル40、光検出器50、変調器60を有している。
【0038】
光源10は、面発光レーザ素子等のレーザ素子が用いられている。アルカリ金属セル40には、アルカリ金属のアルカリ金属としてCs(セシウム)原子ガスが封入されている。光検出器50は、フォトダイオードが用いられている。
【0039】
本実施の形態における原子発振器では、光源10より出射された光をアルカリ金属セル40に照射し、アルカリ金属原子における電子を励起する。アルカリ金属セル40を透過した光は光検出器50において検出され、光検出器50において検出された信号は変調器60にフィードバックされ、変調器60により光源10における面発光レーザ素子を変調する。
【0040】
次に、図3及び図4に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル40の作製方法について説明する。
【0041】
最初に、図3(a)に示すように、基板となるSi基板110を準備する。Si基板110の厚さが0.75mmであり、両面とも鏡面加工されている。尚、本実施の形態では、後述するように、2枚のSi基板を接合することによりアルカリ金属セルを形成するものであるため、Si基板110を2枚準備する。
【0042】
次に、図3(b)に示すように、各々のSi基板110に開口部111を形成する。具体的には、Si基板110の一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、開口部111が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、ICP(Inductively Coupled Plasma)等によるドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のSiを除去し、Si基板110を貫通する開口部111を形成する。Siのドライエッチングは、SF6とC4F8とを交互に供給してエッチングを行なうボッシュプロセスにより行なわれる。ボッシュプロセスでは、異方性の高いSiのエッチングを高速で行なうことができる。尚、このドライエッチングにおいて、印加されるパワーは2kWである。
【0043】
上記においては、開口部111をドライエッチングにより形成する方法について説明したが、開口部111をウェットエッチングにより形成することも可能である。具体的には、Si基板110の表面に、減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)により不図示のSiN膜を成膜し、成膜されたSiN膜上にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、開口部111が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、エッチングガスとしてCF4を用いたドライエッチングを行なうことによりレジストパターンが形成されていない領域におけるSiN膜を除去し、更に、レジストパターンを除去することにより、SiNからなるマスクを形成する。この後、85℃の温度で、KOH(30wt%)溶液を用いたウェットエッチングを行なうことにより、SiNからなるマスクが形成されていない領域のSiを除去し、Si基板110に開口部111を形成する。更に、この後、SiNからなるマスクは、SiNを溶解する溶液を用いてウェットエッチング等を行なうことにより除去する。尚、Siのウェットエッチングは、異方性エッチングであり、形成された開口部111の側面には、傾斜角54.7の逆傾斜が形成される。
【0044】
次に、図3(c)に示すように、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面に透明なガラス基板120を陽極接合により接合する。具体的には、減圧チャンバー内において、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面にガラス基板120を接触させ、380℃の温度で、ガラス基板120に−800V印加することにより陽極接合する。この際、アルカリ金属原料等は設置されていないため、陽極接合により生じた酸素等によりアルカリ金属が酸化されることはない。尚、本実施の形態では、2枚のSi基板を接合するものであるため、同様の構造のものをもう1枚作製する。よって、双方のSi基板には略同じ形状の開口部111が形成される。本実施の形態では、ガラス基板120が接合されているSi基板110からなる部材が2つ形成され、後に、各々を一方の部材101、他方の部材102と記載する場合がある。
【0045】
次に、図3(d)に示すように、各々のSi基板110においてガラス基板120が接合されていない一方の面に付着している付着物を除去する。具体的には、ガラス基板120が接合されているSi基板110からなる部材を2つ真空チャンバー内に設置し、真空チャンバー内を排気した後、真空中において双方のSi基板110の一方の面に、Arイオンビームを照射する。これにより、双方のSi基板110の一方の面に付着している自然酸化膜、付着物が除去され表面が活性化処理される。このようにして、双方のSi基板110の一方の面において、接合プラズマ活性化処理を行なう。尚、図3(d)は、一方の部材101を示しているが、他方の部材102についても同様である。
【0046】
次に、図4(a)に示すように、一方の部材101におけるSi基板110の開口部111にCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入する。
【0047】
次に、図4(b)に示すように、一方の部材101と他方の部材102とをSi基板110の一方の面、即ち、表面が活性化処理された面同士が向きあうように対向させ、位置合せを行なう。具体的には、一方の部材101における開口部111と他方の部材102における開口部111とが一致するように位置合せを行なう。
【0048】
次に、図4(c)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材101と他方の部材102とを接合する。具体的には、一方の部材101におけるSi基板110の一方の面及び、他方の部材におけるSi基板110の一方の面の表面は、プラズマ活性化処理がされているため、一方の部材101におけるSi基板110の一方の面と他方の部材におけるSi基板110の一方の面とを接触させて加圧することにより、Si−Siの直接接合により、常温で接合させることができる。尚、直接接合とは、2つの基板表面原子の結合手同士が別原子を介さないで接合している状態である。このようにして、Si基板110の一方の面の接合面同士を接合領域112において接合させることにより、2つの開口部111からなるセル内部113が形成される。このようなSi−Siの直接接合では、酸素等のガスは発生することはないため、接合の際に、アルカリ金属原料130が封入されているセル内部113に酸素等の不純物が入り込むことはない。
【0049】
次に、図4(d)に示すように、一方の部材101と他方の部材102とが接合されたものを図4(c)に示される破線4Aにおいて、セルごとに分離し、アルカリ金属セル40を形成する。
【0050】
これにより、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル40を作製することができる。このように作製されたアルカリ金属セル40は、セル内部113に含まれる酸素等の不純物の量が少ないため、安定度の高い原子発振器を得ることができる。
【0051】
また、CPTによる原子発振器用のMEMS技術を用いたガスセルは、対向した2枚のガラス間がセル内をレーザ光が通る光路長となり、光路長は従来最大で1.5mm程度であった。この光路長は長い方が、レーザ光がアルカリ金属セル通過中に吸収に寄与する原子が増えて、S/Nが高くなるので好ましい。
【0052】
更に、本実施の形態では、アルカリ金属セル40を形成している2枚のガラス120間の距離は、2枚のSi基板110の基板厚に相当するため、容易に2枚のガラス120間の距離を広げることができる。具体的には、1枚の厚いSi基板、例えば、1.5mmの厚さのSi基板をエッチングして開口部を形成する場合には、Si基板が厚いため、開口部を形成する際の負担が大きく、また、開口部を所望の形状に形成することができない場合等がある。しかしながら、本実施の形態では、半分の厚さの基板、即ち、0.75mmの厚さの双方のSi基板をエッチングして開口部を形成するものであるため、開口部を形成する際の負担を軽減することができ、容易に光路長が1.5mmを超えるようなガスセルをMEMS技術により形成することができる等、開口部を所望の形状で形成することができる。
【0053】
尚、アルカリ金属原料130は、アルカリ金属がCsの場合の原料としては、Csメタル、Csを含む大気中で安定的な化合物が挙げられる。アルカリ金属原料130として、Csを含む大気中で安定的な化合物を用いた場合には、セル内部113にアルカリ金属原料130を封入した後、加熱等することによりCsを生成させる。例えば、アルカリ金属原料130として、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液を用いた場合には、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液をセル内部113に封入した後、200℃で反応させてCsを生成する。また、アルカリ金属原料130として、CsN3を用いた場合には、通常の蒸着法でセル内部113にCsN3を成膜し、CsN3をセル内部113に封入した後、UV光を照射しCsとバッファガスとなるN2を発生させる。また、アルカリ金属原料130として、大気中で安定なCsディスペンサーを用いる場合には、Csディスペンサーをセル内部113内に投入して封止した後、Csディスペンサーのみにレーザ光を照射して加熱し、Csを発生させる。
【0054】
尚、アルカリ金属であるCsやRb等は、酸素やH2O等と激しく反応する。よって、セル内部113にCsメタルそのものを投入する場合には、真空チャンバー内において、Cs原料投入後に、真空中で封止した場合においても、真空チャンバー内には、微量の酸素やH2O等が存在しているため、これによりCsが酸化されてしまい、Csの酸化を完全に防ぐことは困難である。これに対し、大気中で安定的なCsの化合物をアルカリ金属原料130として用いた場合では、アルカリ金属原料130をセル内部113に封入した後、加熱等によりCsを生成する方法により、Csの酸化を格段に抑えることができるため、原子発振器の周波数安定性をより一層高めることができる。
【0055】
また、アルカリ金属原料130をセル内部113に封入する際には、真空中で封入するのではなく、上述したように、N2等のバッファガスとともに封入することが好ましい。セル内部113のアルカリ金属は、セル内部113の壁に衝突するとアルカリ金属原子の内部状態が変化してしまい、原子発振器に用いた場合に周波数安定度が低下してしまうが、セル内部113にバッファガスを封入することにより、アルカリ金属原子がセル内部113の壁に衝突する確率を減らすことができ、周波数安定度の低下を抑制することができるため好ましい。尚、バッファガスとしては、窒素、不活性ガス等が好ましく、例えば、N2、Ne、Ar、Ne−Ar混合ガス等が挙げられる。
【0056】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態とは異なるアルカリ金属セルを有する原子発振器及び原子発振器の製造方法である。図5及び図6に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セルの作製方法について説明する。
【0057】
最初に、図5(a)に示すように、Si基板110を準備する。Si基板110の厚さが1mmであり、両面とも鏡面加工されている。尚、本実施の形態では、後述するように、2枚のSi基板を接合することによりアルカリ金属セルを形成するものであるため、Si基板110を2枚準備する。
【0058】
次に、図5(b)に示すように、一方のSi基板110の一方の面の所定の領域に金属膜210を形成する。金属膜210は、後述する開口部111が形成される領域以外、即ち、後述する接合領域となる領域に形成する。具体的には、金属膜210は、Au:700nm/Cr:10nmからなる積層膜であり、スパッタリング、真空蒸着等により成膜することにより形成する。尚、所定の領域に金属膜210を形成する方法としては、Au/Cr膜を成膜した後、金属膜210が形成される領域にレジストパターンを形成し、レジストパターンの形成されていない領域のAu/Cr膜をエッチングにより除去することにより形成することができる。また、Si基板110の一方の面に金属膜210が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成した後、Au/Cr膜を成膜し、有機溶剤等によりレジストパターン上に形成されたAu/Cr膜をレジストパターンとともに除去するリフトオフ等により形成することができる。
【0059】
次に、図5(c)に示すように、Si基板110に開口部111を形成する。具体的には、Si基板110において金属膜210が形成されている一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、開口部111が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、ICP等によるドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のSiを除去し、Si基板110を貫通する開口部111を形成する。Siのドライエッチングは、SF6とC4F8とを交互に供給してエッチングを行なうボッシュプロセスにより行なわれる。
【0060】
次に、図5(d)に示すように、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面に透明なガラス基板120を陽極接合により接合する。具体的には、減圧チャンバー内において、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面にガラス基板120を接触させ、380℃の温度で、ガラス基板120に−800V印加することにより陽極接合する。このようにして形成されたものをガラス基板120が接合されているSi基板110からなる一方の部材201と記載する場合がある。尚、本実施の形態では、2枚のSi基板を接合するものであり、他方の部材102は、第1の実施の形態における他方の部材102を形成する方法と同様の方法により形成する。
【0061】
次に、図6(a)に示すように、一方の部材201において、Si基板110の開口部111にCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入する。
【0062】
次に、図6(b)に示すように、一方の部材201の金属膜210が形成されている面と、他方の部材102のSi基板110が露出している面とを対向させ、位置合せを行なう。尚、他方の部材102において、ガラス基板120が接合されていないSi基板110の一方の面は、直前にフッ酸ライトエッチングを行なうことにより、付着物や酸化膜が予め除去されている。
【0063】
次に、図6(c)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材201と他方の部材102とを金属膜210を介し、メタル−Siの共晶接合により接合する。具体的には、減圧チャンバー内において、一方の部材201におけるSi基板110の一方の面に形成された金属膜210と他方の部材102におけるSi基板110の一方の面とを接触させ、400℃の温度で、15kNで20分間、加圧処理を行い、接合領域212にメタル−Siの共晶を形成する。これにより共晶接合により接合させる。このようにして、2つの開口部111からなるセル内部213が形成される。このようなメタル−Siの共晶接合では、酸素等のガスは発生することはないため、接合の際に、アルカリ金属原料130が封入されているセル内部213に酸素等の不純物が入り込むことはない。
【0064】
次に、図6(d)に示すように、一方の部材201と他方の部材102とが接合されたものを図6(c)に示される破線6Aにおいて、セルごとに分離しアルカリ金属セル240を形成する。
【0065】
これにより、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル240を作製することができる。このように作製されたアルカリ金属セル240は、セル内部213に含まれる酸素等の不純物の量は少ないため、安定度の高い原子発振器を得ることができる。
【0066】
尚、本実施の形態における原子発振器は、第1の実施の形態における原子発振器のアルカリ金属セル40をアルカリ金属セル240に置き換えることにより得ることができる。また、金属膜210はとしては、Au/Cr以外にも、Au−Sn(合金)、Au等を用いることができる。
【0067】
また、本実施の形態において、アルカリ金属セル240は、一方の部材201と同様に金属膜210が形成された他方の部材202を用いて作製してもよい。この場合、他方の部材202は、一方の部材201と同様の方法により作製される。この場合の製造方法は、他方の部材202の作製方法を除き、図6(a)までは、前述した内容と同じである。よって、これ以降の製造工程について、図7に基づき説明する。
【0068】
図6(a)に示す工程の後、図7(a)に示すように、一方の部材201の金属膜210が形成されている面と、他方の部材202の金属膜210が形成されている面とを対向させ、位置合せを行なう。
【0069】
次に、図7(b)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材201と他方の部材202とを互いの金属膜210同士で接合する。具体的には、減圧チャンバー内において、一方の部材201における金属膜210と他方の部材202における金属膜210とを接触させ、加圧または加熱等することにより金属膜210同士の直接接合により接合する。このように、金属膜210同士の直接接合により接合領域212において接合することにより、2つの開口部111からなるセル内部213が形成される。このような金属同士の接合では、酸素等のガスは発生することはないため、接合の際に、アルカリ金属原料130が封入されているセル内部213に酸素等の不純物が入り込むことはない。尚、金属同士の接合を行なう場合には、金属膜210は、ともにAu(金)、または、Auを含む金属材料により形成されていることが好ましい。
【0070】
次に、図7(c)に示すように、一方の部材201と他方の部材202とが接合されたものを図7(b)に示される破線7Aにおいて、セルごとに分離し、アルカリ金属セル240を形成する。
【0071】
また、本実施の形態では、アルカリ金属セル240を形成している2枚のガラス120間の距離(光路長)はおよそ2mmである。従来は1.5mm程度であったが、2枚のSi基板110の基板厚に相当するため、容易に2枚のガラス120間の距離を広げることができる。
【0072】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0073】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1及び第2の実施の形態とは異なるアルカリ金属セルを有する原子発振器及び原子発振器の製造方法である。図8及び図9に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セルの作製方法について説明する。
【0074】
最初に、図8(a)に示すように、Si基板110を準備する。Si基板110の厚さが1mmであり、両面とも鏡面加工されている。尚、本実施の形態では、後述するように、3枚のSi基板を接合することによりアルカリ金属セルを形成するものであるため、Si基板110を3枚準備する。
【0075】
次に、図8(b)に示すように、各々のSi基板110に開口部111を形成する。具体的には、Si基板110の一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、開口部111が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、ICP等によるドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のSiを除去し、Si基板110を貫通する開口部111を形成する。Siのドライエッチングは、SF6とC4F8とを交互に供給してエッチングを行なうボッシュプロセスにより行なわれる。
【0076】
次に、図8(c)に示すように、開口部111の形成されたSi基板110のうち、2枚のSi基板110の他方の面に透明なガラス基板120を陽極接合により接合する。具体的には、減圧チャンバー内において、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面にガラス基板120を接触させ、380℃の温度で、ガラス基板120に−800V印加することにより陽極接合する。本実施の形態では、ガラス基板120が接合されているSi基板110からなる部材が2つ形成され、各々を一方の部材301、他方の部材302と記載する場合がある。また、ガラス基板120が接合されていないSi基板を他のSi基板110aと記載する場合がある。
【0077】
次に、図8(d)に示すように、ガラス基板120が接合されているSi基板110からなる一方の部材301と、開口部111が形成された他のSi基板110aとの双方の接合面に付着している付着物を除去する。具体的には、一方の部材301と開口部111が形成された他のSi基板110aとを真空チャンバー内に設置し、真空チャンバー内を排気した後、真空中において接合面となるSi基板110及び他のSi基板110aの表面に、Arイオンビームを照射する。これにより、双方の接合面となるSi基板110及び他のSi基板110aの表面に付着している自然酸化膜、付着物を除去することにより表面を活性化処理する。このようにして、一方の部材301及び他のSi基板110aの双方の接合面となる表面において、接合プラズマ活性化処理を行なう。
【0078】
次に、図9(a)に示すように、一方の部材301と開口部111が形成された他のSi基板110aとを表面が活性化処理された面同士を接触させて加圧することにより、Si−Siの直接接合により接合する。
【0079】
次に、図9(b)に示すように、一方の部材301における開口部111にCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入する。
【0080】
次に、図9(c)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、開口部111が形成された他のSi基板110aと他方の部材302とを接合する。具体的には、図示はしないが、一方の部材302と開口部111が形成された他のSi基板110aとの双方の接合面にArイオンビームを照射し、双方の接合面となるSi基板110及び他のSi基板110aの表面に付着している自然酸化膜、付着物を除去し表面を活性化処理する。この後、他方の部材302と開口部111が形成された他のSi基板110aとにおいて、表面が活性化処理されている面同士を接触させて加圧することにより、Si−Siの直接接合により接合する。このようなSi−Siの直接接合では、酸素等のガスは発生することはないため、接合の際に、アルカリ金属原料130が封入されているセル内部313に酸素等の不純物が入り込むことはない。このように、一方の部材301の開口部111、Si基板110aの開口部111、他方の部材の開口部302によりセル内部313が形成される。
【0081】
次に、図9(d)に示すように、一方の部材301と開口部111が形成された他のSi基板110aと他方の部材302とが接合されたものを図9(c)に示される破線9Aにおいて、セルごとに分離し、アルカリ金属セル340を形成する。
【0082】
これにより、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル340を作製することができる。このように作製されたアルカリ金属セル340は、セル内部313に含まれる酸素等の不純物の量は少ないため、安定度の高い原子発振器を得ることができる。
【0083】
尚、本実施の形態における原子発振器は、第1の実施の形態における原子発振器のアルカリ金属セル40をアルカリ金属セル340に置き換えることにより得ることができる。本実施の形態においては、厚さ1mmのSi基板110を3枚接合したものであるため、アルカリ金属セル340を形成している2枚のガラス120間の距離(光路長)はおよそ3mmである。また、上記説明では、Si基板110を3枚用いた場合について説明したが、Si基板110を4枚以上用いた場合も同様にアルカリ金属セルを形成することができる。本実施の形態では、アルカリ金属セルを形成するためのSi基板110の枚数を増やすことにより、容易にアルカリ金属セル内を透過するレーザ光の光路長を長くすることができる。
【0084】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0085】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第3の実施の形態とは異なるアルカリ金属セルを有する原子発振器及び原子発振器の製造方法である。図10から図12に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セルの作製方法について説明する。
【0086】
最初に、図10(a)に示すように、基板となるSi基板410a及び410bを準備する。Si基板410aと410bはともに同じ基板であり、厚さが1mmであり、両面とも鏡面加工されている。
【0087】
次に、図10(b)に示すように、一方のSi基板410aに開口部411a及び411bを形成し、他方のSi基板410bに開口部411a、411b及び411cを形成する。これにより、一方のSi基板410aには、図12(a)に示すように、分離された開口部411a及び開口部411bが形成され、他方のSi基板410bには、図12(b)に示すように、開口部411cにより開口部411aと開口部411bとが接続されているものが形成される。ここで、開口部411cはセル接続部となるものであり、Cs原子ガスは通過することはできるが、Csの化合物は通過することができないように細い溝により形成されている。尚、図10(b)は、図12(a)において、一点鎖線12A−12Bにおいて切断したSi基板410aの断面、及び図12(b)において、一点鎖線12C−12Dにおいて切断したSi基板410bの断面を示す。
【0088】
次に、図10(c)に示すように、一方のSi基板410aにガラス基板120を陽極接合により接合することにより一方の部材401を作製し、他方のSi基板410bにガラス基板120を陽極接合により接合することにより他方の部材402を作製する。
【0089】
次に、図11(a)に示すように、一方の部材401における開口部411bにCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入する。尚、図示はしないが、一方の部材401において、ガラス基板120が接合されていないSi基板410の面に付着している付着物は、Arイオンビームを照射することにより除去されており、他方の部材402において、ガラス基板120が接合されていないSi基板410の面に付着している付着物は、Arイオンビームを照射することにより除去されているものとする。これにより、一方の部材401と他方の部材402の接合面は、接合プラズマ活性化処理がなされる。
【0090】
次に、図11(b)に示すように、一方の部材401と他方の部材402とを表面が活性化処理された面同士が向きあうように対向させ、位置合せを行なう。
【0091】
次に、図11(c)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材401と他方の部材402とを接合しアルカリ金属セル440を形成する。具体的には、一方の部材401と他方の部材402とが接合される面は、ともにプラズマ活性化処理がされているため、接触させて加圧することにより、Si−Siの直接接合により接合することができる。このようにして、一方の部材401と他方の部材402とを接合領域412において接合することにより、2つの開口部411aからなる第1のセル内部413a及び2つの開口部411bからなる第2のセル内部413bが形成される。尚、第1のセル内部413aと第2のセル内部413bとは、セル接続部となる開口部411cにより接続されており、アルカリ金属原料130は、第2のセル内部413bに設置されている。
【0092】
本実施の形態におけるアルカリ金属セル440では、アルカリ金属の生成は加熱等することによりなされ、生じたアルカリ金属のガスがセル接続部となる開口部411cを通り、第1のセル内部413aに入った状態で用いられる。よって、本実施の形態における原子発振器においては、アルカリ金属セル440の第1のセル内部413aに光が照射される。
【0093】
本実施の形態において用いられるアルカリ金属原料130は、アルカリ金属がCsの場合では、Csを含む大気中で安定的な化合物が挙げられる。具体的には、アルカリ金属原料130として、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液を用いた場合には、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液を第2のセル内部413bに封入した後、200℃で反応させてCsを生成する。また、アルカリ金属原料130として、CsN3を用いた場合には、通常の蒸着法で第2のセル内部413bにCsN3を成膜し、CsN3を第2のセル内部413bに封入した後、UV光を照射しCsとバッファガスとなるN2を発生させる。また、アルカリ金属原料130として、大気中で安定なCsディスペンサーを用いる場合には、Csディスペンサーを第2のセル内部413b内に投入して封止した後、Csディスペンサーのみにレーザ光を照射して加熱し、Csを発生させる。
【0094】
本実施の形態では、第1のセル内部413aには、Cs等のアルカリ金属とバッファガスのみとなるため、原子発振器の周波数安定性をより一層高めることができる。
【0095】
本実施の形態においては、厚さ1mmのSi基板410aおよび410bの2枚接合したものであるため、アルカリ金属セル440を形成している2枚のガラス120間の距離(光路長)はおよそ2mmである。
【0096】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0097】
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態とは異なるアルカリ金属セルを有する原子発振器及び原子発振器の製造方法である。
【0098】
図13及び図14に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル540の作製方法について説明する。
【0099】
最初に、図13(a)に示すように、Si基板110を準備する。Si基板110の厚さが1mmであり、両面とも鏡面加工されている。尚、本実施の形態では、後述するように、2枚のSi基板を接合することによりアルカリ金属セルを形成するものであるため、Si基板110を2枚準備する。
【0100】
次に、図13(b)に示すように、各々のSi基板110の一方の面をエッチングし、凹部511aを形成する。具体的には、Si基板110の一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、凹部511aが形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、ICP等によるドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のSiを除去し、凹部511aを形成する。
【0101】
次に、図13(c)に示すように、各々のSi基板110の他方の面において、凹部511aに対応する領域をエッチングにより除去し、貫通させることにより、開口部511を形成する。
【0102】
次に、図13(d)に示すように、各々の開口部511の形成されたSi基板110の他方の面に透明なガラス基板120を陽極接合により接合する。このようにしてガラス基板120が接合されているSi基板110からなる部材が2つ形成され、各々について一方の部材501、他方の部材502と記載する場合がある。
【0103】
次に、図14(a)に示すように、各々のSi基板110においてガラス基板120が接合されていない一方の面にArイオンビームを照射し、双方のSi基板110の一方の面に付着している自然酸化膜、付着物を除去することにより表面を活性化処理する。このようにして、双方のSi基板110の一方の面において、接合プラズマ活性化処理を行なう。
【0104】
次に、図14(b)に示すように、一方の部材501におけるSi基板110の開口部511にCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入する。
【0105】
次に、図14(c)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材501と他方の部材502とを接合領域512において接合する。これにより、双方の開口部511によりセル内部513が形成される。
【0106】
次に、図14(d)に示すように、一方の部材501と他方の部材502とが接合されたものを図14(c)に示される破線14Aにおいて、セルごとに分離し、アルカリ金属セル540を形成する。
【0107】
本実施の形態では、Si基板110を両面より各々エッチングすることにより開口部511を形成するものであるため、1回当たりのエッチングの負担を軽くすることができる。
【0108】
また、本実施の形態では、開口部511を更に別の方法により形成することも可能である。具体的には、図15(a)に示すように、Si基板110を準備する。
【0109】
次に、図15(b)に示すように、Si基板110において、開口部511が形成される領域の縁に沿って、エッチングにより一方の面から他方の面に貫通する溝部518を形成する。
【0110】
次に、図15(c)に示すように、溝部518に囲まれた領域のSi部519を除去することにより、図13(c)に示すものと同様のものを作製することができ、Si基板110に開口部511を形成することができる。
【0111】
この後の工程は、図13(d)から図14(d)と同様である。
【0112】
尚、本実施の形態は、第2から第4の実施の形態にも適用することが可能である。
【0113】
〔第6の実施の形態〕
次に、第6の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第5の実施の形態とは異なるアルカリ金属セルを有する原子発振器及び原子発振器の製造方法である。図16及び図17に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セルの作製方法について説明する。
【0114】
最初に、図16(a)に示すように、Si基板110を準備する。Si基板110の厚さが1mmであり、両面とも鏡面加工されている。尚、本実施の形態では、後述するように、2枚のSi基板を接合することによりアルカリ金属セルを形成するものであるため、Si基板110を2枚準備する。
【0115】
次に、図16(b)に示すように、一方のSi基板110に開口部111を形成する。具体的には、一方のSi基板110の一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、開口部111が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、ICP等によるドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のSiを除去し、Si基板110を貫通する開口部111を形成する。Siのドライエッチングは、SF6とC4F8とを交互に供給してエッチングを行なうボッシュプロセスにより行なわれる。
【0116】
次に、図16(c)に示すように、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面に透明なガラス基板120を陽極接合により接合する。具体的には、減圧チャンバー内において、開口部111の形成されたSi基板110の他方の面にガラス基板120を接触させ、380℃の温度で、ガラス基板120に−800V印加することにより陽極接合する。
【0117】
次に、図16(d)に示すように、開口部111の形成されたSi基板110の一方の面に低融点ガラスペーストを塗布し乾燥させることにより、開口部111が形成されている領域以外、即ち、接合領域となる領域にガラスフリッド610を形成する。ガラスフリッド610となる低融点ガラスペーストは、低融点ガラス微粒子を主成分とするものであり、熱膨張係数を調整するための無機フィラーを含んでおり、500℃以下の低温でリフローが可能である。このようにして形成されたものをガラス基板120が接合されているSi基板110からなる一方の部材601と記載する場合がある。尚、本実施の形態では、2枚のSi基板を接合するものであり、他方の部材102は、第1の実施の形態における他方の部材102を形成する方法と同様の方法により形成する。
【0118】
次に、図17(a)に示すように、一方の部材601において、Si基板110の開口部111にCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入する。
【0119】
次に、図17(b)に示すように、一方の部材601のガラスフリッド610が形成されている面と、他方の部材102のSi基板110が露出している面とを対向させ、位置合せを行なう。尚、他方の部材102において、ガラス基板120が接合されていないSi基板110の一方の面は、直前にフッ酸ライトエッチングを行なうことにより、付着物や酸化膜が予め除去されている。
【0120】
次に、図17(c)に示すように、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材601と他方の部材102とをガラスフリッド610を介し接合する。具体的には、窒素雰囲気中における減圧チャンバー内において、一方の部材601におけるSi基板110の一方の面に形成されたガラスフリッド610と他方の部材102におけるSi基板110の一方の面とを接触させ、470℃の温度で、300kPaで20分間加熱処理を行なうことにより接合する。このようにして、一方の部材601と他方の部材102とを接合領域612において接合することにより、2つの開口部111からなるセル内部613が形成される。このようなガラスフリッドによる接合では、酸素等のガスは発生することはないため、接合の際に、アルカリ金属原料130が封入されているセル内部613に酸素等の不純物が入り込むことはない。
【0121】
次に、図17(d)に示すように、一方の部材601と他方の部材102とが接合されたものを図17(c)に示される破線17Aにおいて、セルごとに分離しアルカリ金属セル640を形成する。
【0122】
これにより、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル640を作製することができる。このように作製されたアルカリ金属セル640は、セル内部613に含まれる酸素等の不純物の量は少ないため、安定度の高い原子発振器を得ることができる。尚、本実施の形態における原子発振器は、第1の実施の形態における原子発振器のアルカリ金属セル40を本実施の形態におけるアルカリ金属セル640に置き換えることにより得ることができる。
【0123】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0124】
〔第7の実施の形態〕
次に、第7の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第6の実施の形態とは異なるアルカリ金属セルを有する原子発振器及び原子発振器の製造方法である。図18から図21に基づき、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セルの作製方法について説明する。
【0125】
最初に、図18(a)に示すように、基板となるSi基板710a及び710bを準備する。Si基板710a及び710bはともに同じ基板であり、厚さが1mmであり、両面とも鏡面加工されている。
【0126】
次に、図18(b)に示すように、一方のSi基板710aにガスセル室と原料室を形成するための開口部711a及び711bを形成し、他方のSi基板710bにガスセル室、原料室及びセル接続部を形成するための開口部711a、711b及び711cを形成する。これにより、一方のSi基板710aには、図20(a)に示すように、ガスセル室及び原料室を形成するための分離された開口部711a及び711bが形成され、他方のSi基板710bには、図20(b)に示すように、ガスセル室及び原料室を形成するための開口部711a及び711bが、セル接続部となる開口部711cにより接続されているものが形成される。ここで、開口部711cにより形成されるセル接続部は、Cs原子ガスは通過することはできるが、Csの化合物は通過することができないように、図21(a)に示すように、ガスセル室や原料室より浅く、2段階のエッチングによる細い溝により形成されている。尚、図18、図19は、図20(a)における一点鎖線20A−20Bにおいて切断したSi基板710aの断面に対応する部分、及び図20(b)における一点鎖線20C−20Dにおいて切断したSi基板710bの断面に対応する部分を示す。また、図21は、図20(a)において、一点鎖線20E−20Fにおいて切断したSi基板710aの断面に対応する部分、及び図20(b)において、一点鎖線20G−20Hにおいて切断したSi基板710bの断面に対応する部分を示す。また、本実施の形態においては、セル接続部を形成するための開口部711cは、一つの細い溝により形成されているが、複数の細い溝により形成されたものであってもよい。
【0127】
次に、図18(c)に示すように、一方のSi基板710aにガラス基板120を陽極接合により接合することにより一方の部材701を作製する。また、他方のSi基板710bのセル接続部となる開口部711cに相当する領域に、ガラスフリッド721が形成されているガラス基板120を陽極接合により接合することにより他方の部材702を作製する。
【0128】
次に、図19(a)及び図21(b)に示すように、一方の部材701における開口部711bにCsまたはRb等のアルカリ金属原料130を投入した後、一方の部材701と他方の部材702におけるSiが露出している側の面同士を張り合わせる。尚、図示はしないが、ガラス基板120が接合されていない両方のSi基板710a及び710bの表面に付着している付着物は、Arイオンビームを照射することにより除去されており、これにより、一方の部材701及び他方の部材702における接合面は、接合プラズマ活性化処理がなされる。具体的には、一方の部材701と他方の部材702とを表面が活性化処理された面同士が向きあうように対向させ、位置合せを行なう。そして、真空チャンバー内にバッファガスとなる窒素を導入して窒素雰囲気とし、窒素雰囲気中において、一方の部材701と他方の部材702とを接合し一体部材を形成する。一方の部材701と他方の部材702とが接合される面は、ともにプラズマ活性化処理がされているため、接触させて加圧することにより、Si−Siの直接接合により接合することができる。このようにして、一方の部材710aと他方の部材710bとを接合領域712において接合することにより、2つの開口部711aによりガスセル室となる第1のセル内部713a、2つの開口部711bにより原料室となる第2のセル内部713bが形成される。尚、第1のセル内部713aと第2のセル内部713bとは、セル接続部となる開口部711cにより接続されており、アルカリ金属原料130は、第2のセル内部713bに設置されている。
【0129】
本実施の形態におけるアルカリ金属セル740では、アルカリ金属の生成は加熱等することによりなされ、生じたアルカリ金属のガスがセル接続部となる開口部711cを通り、第1のセル内部713aに入った状態で用いられる。よって、本実施の形態における原子発振器においては、アルカリ金属セル740の第1のセル内部713aに光が照射される。
【0130】
本実施の形態において用いられるアルカリ金属原料130は、アルカリ金属がCsの場合では、Csを含む大気中で安定的な化合物が挙げられる。具体的には、アルカリ金属原料130として、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液を用いた場合には、BaN6水溶液にCsClを混合した溶液を第2のセル内部713bに封入した後、200℃で反応させてCsを生成する。また、アルカリ金属原料130として、CsN3を用いた場合には、通常の蒸着法で第2のセル内部713bにCsN3を成膜し、CsN3を第2のセル内部713bに封入した後、UV光を照射しCsとバッファガスとなるN2を発生させる。また、アルカリ金属原料130として、大気中で安定なCsディスペンサーを用いる場合には、Csディスペンサーを第2のセル内部713b内に投入して封止した後、Csディスペンサーのみにレーザ光を照射して加熱し、Csを発生させる。
【0131】
次に、図19(b)及び図21(c)に示すように、窒素雰囲気のオーブンの中で、470℃の温度で、300kPaで20分間、加圧処理を行い、ガラスフリッド721を溶融し、セル接合部を封止する。
【0132】
これにより、本実施の形態における原子発振器に用いられるアルカリ金属セル740を作製することができる。このように作製されたアルカリ金属セル740は、第1のセル内部713a等に含まれる酸素等の不純物の量は少なく、Cs等のアルカリ金属とバッファガスのみとなる。また、セル接続部である開口部721は、ガラスフリッド721により封止されているため、ガスセル室となる第1のセル内部713aと原料室となる第2のセル内部713bが分離されており、ガスセル室となる第1のセル内部713aにおける雰囲気は、吸着などによるアルカリ金属原料130の経時変化の影響を受けず、原子発振器の周波数安定性をより一層高めることができる。
【0133】
ここで、セル接合部封止後、不要となったアルカリ金属原料室を切り離してガスセル室部のみをアルカリ金属セルとして用いてもよい。この場合には、アルカリ金属セルの熱容量が小さくなるため、省エネルギーなものとなる。
【0134】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0135】
〔第8の実施の形態〕
次に、第8の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第7の実施の形態における原子発振器が一体化された構造のものである。
【0136】
図22に基づき、本実施の形態における原子発振器について説明する。本実施の形態における原子発振器は、回路基板71上に縦方向に形成されている。回路基板71上には、アルミナ基板72が設けられており、アルミナ基板72上には光源10となる面発光レーザ素子が設置されている。尚、アルミナ基板72は、光源10の温度等を制御するための面発光レーザ用ヒータ73が設けられている。光源10の上方には、ND(Neutral Density)フィルタ74が設けられている。NDフィルタ74は、ガラス等により形成された断熱スペーサ75により所定の位置に設置されている。NDフィルタ74の上部にはコリメートレンズ20が設けられており、コリメータレンズの上方には、λ/4板30が設けられている。λ/4板30はシリコン等により形成されたスペーサ76により所定の位置に設置されている。λ/4板30の上には、アルカリ金属セル40が設けられている。アルカリ金属セル40は、2枚のガラス基板41を有しており、2枚のガラス基板41が対向している状態で、縁の部分がシリコン基板42により接続されており、ガラス基板41とシリコン基板42に囲まれた部分には、アルカリ金属が封入されている。尚、アルカリ金属セル40において、レーザ光が透過する面がガラス基板41により形成されている。アルカリ金属セル40の両側には、セル用ヒータ77が設けられており、アルカリ金属セル40を所定の温度に設定することができる。アルカリ金属セル40の上方には、光検出器50が設けられており、光検出器50はシリコンからなるスペーサ78により所定の位置に設置されている。
【0137】
次に、図23に、CPTに関連する原子エネルギー準位の構造を示す。二つの基底準位から励起準位に電子が同時に励起されると光の吸収率が低下することを利用する。面発光レーザは搬送波波長が894.6nmに近い素子を用いている。搬送波の波長は面発光レーザの温度、もしくは出力を変化させてチューニングすることができる。図24に示すように、変調をかけることで搬送波の両側にサイドバンドが発生し、その周波数差がCs原子の固有振動数である9.2GHzに一致するように4.6GHzで変調させている。図25に示すように、励起されたCsガスを通過するレーザ光はサイドバンド周波数差がCs原子の固有周波数差に一致した時に最大となるので、光検出器50の出力が最大値を保持するように変調器60においてフィードバックして光源10における面発光レーザ素子の変調周波数を調整する。原子の固有振動数が極めて安定なので変調周波数は安定した値となり、この情報がアウトプットとして取り出される。尚、波長が894.6nmの場合では、±1nmの範囲の波長が必要となる。
【0138】
尚、本実施の形態における原子発振器のアルカリ金属セル40において、本実施の形態におけるシリコン基板42は、第1の実施の形態等におけるSi基板110に相当するものであり、ガラス基板41は、第1の実施の形態におけるガラス基板120等に相当するものである。また、本実施の形態における原子発振器において、アルカリ金属セル40に代えて、第2から第7の実施の形態におけるアルカリ金属セル240、340、440、540、640、740についても同様に用いることも可能である。
【0139】
また、本実施例ではアルカリ金属としてCsを用い、そのD1ラインの遷移を用いるために波長が894.6nmの面発光レーザを用いたが、CsのD2ラインを利用する場合852.3nmを用いることもできる。また、アルカリ金属としてRb(ルビジウム)を用いることもでき、D1ラインを利用する場合は795.0nm、D2ラインを利用する場合は780.2nmを用いることができる。また、Rbを用いる場合の変調周波数は、87Rbでは3.4GHz、85Rbでは1.5GHzで変調させる。尚、これらの波長においても、±1nmの範囲の波長が必要となる。
【0140】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0141】
10 光源
20 コリメートレンズ
30 λ/4板
40 アルカリ金属セル
50 光検出器
60 変調器
101 一方の部材
102 他方の部材
110 Si基板
111 開口部
112 接合領域
113 セル内部
120 ガラス基板
130 アルカリ金属原料
【先行技術文献】
【特許文献】
【0142】
【特許文献1】米国特許第6806784号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0007118号明細書
【特許文献3】特開2009−212416号公報
【特許文献4】特開2009−283526号公報
【非特許文献】
【0143】
【非特許文献1】Applied Physics Letters,Vol.85,pp.1460−1462 (2004)
【非特許文献2】Comprehensive Microsystems, vol.3,pp.571−612
【非特許文献3】Applied Physics Letters,Vol.84,pp.2694−2696 (2004)
【非特許文献4】OPTICS LETTERS,Vol.30,pp.2351−2353 (2005)
【非特許文献5】Applied Physics Letters,Vol.90,114106 (2007)
【非特許文献6】J.Micro/Nanolith. MEMS MOEMS 7(3),033013(2008)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、
前記アルカリ金属セルは、
一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、
一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、
前記一方の部材における基板の一方の面と、前記他方の部材における基板の一方の面とを直接接合することにより、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、
前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、
を有するものであることを特徴とする原子発振器。
【請求項2】
アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、
前記アルカリ金属セルは、
一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、
一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、
前記一方の部材における基板の一方の面及び前記他方の部材における基板の一方の面のいずれかまたは双方には、金属膜が設けられており、前記金属膜を介し共晶接合または金属同士の直接接合により、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、
前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、
を有するものであることを特徴とする原子発振器。
【請求項3】
前記金属膜は、金を含む材料により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の原子発振器。
【請求項4】
アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、
前記アルカリ金属セルは、
一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、
一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、
前記一方の部材における基板の一方の面及び前記他方の部材における基板の一方の面のいずれかまたは双方には、ガラスフリッドが設けられており、前記ガラスフリッドを介し接合し、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、
前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、
を有するものであることを特徴とする原子発振器。
【請求項5】
前記基板はSiにより形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の原子発振器。
【請求項6】
前記一方の部材と前記他方の部材との間には、前記開口部と略同一の形状の開口部を有する他の基板が1または2以上設けられており、
前記一方の部材と前記他の基板、及び、前記他方の部材と前記他の基板とは接合されており、
前記一方の部材の開口部、前記他方の部材の部材の開口部、前記他の基板の開口部によりセル内部が形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の原子発振器。
【請求項7】
前記他の基板はSiにより形成されていることを特徴とする請求項6に記載の原子発振器。
【請求項8】
2つのガラス基板間の距離は1.5mm以上であることを特徴とする請求項5または7記載の原子発振器。
【請求項9】
前記セル内部は、第1のセル内部と第2のセル内部とを有しており、
前記第1のセル内部と前記第2のセル内部とはセル接続部により接続されており、
前記アルカリ金属原料はアルカリ金属の化合物であって、第2のセル内部に設置されており、
前記光源から発せられた光は、前記第1のセル内部を透過するものであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の原子発振器。
【請求項10】
前記原子発振器は、前記光源より出射したサイドバンドを含む光のうち、2つの異なる波長の光を前記アルカリ金属セルに入射させることにより、2種類の共鳴光による量子干渉効果による光吸収特性により発振周波数を制御するものであることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の原子発振器。
【請求項11】
前記2つの異なる波長の光は、ともに前記面発光レーザより出射したサイドバンドの光であることを特徴とする請求項10に記載の原子発振器。
【請求項12】
前記アルカリ金属は、ルビジウム、または、セシウムであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の原子発振器。
【請求項13】
アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器の製造方法において、
2枚の基板に、一方の面から他方の面に貫通する略同じ形状の開口部を形成する工程と、
前記開口部の形成された2枚の基板の前記他方の面に各々ガラス基板を接合することにより、一方の部材と他方の部材を形成する工程と、
前記一方の部材または前記他方の部材の開口部に、アルカリ金属原料を入れる工程と、
前記一方の部材の基板の一方の面と前記他方の部材の基板の一方の面とを接合する工程と、
を有し、前記一方の部材の開口部と前記他方の部材の開口部により前記アルカリ金属セルのセル内部が形成されることを特徴とする原子発振器の製造方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属原料を入れる工程及び前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程は、真空チャンバー内において行なわれるものであって、
前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程の前に、前記真空チャンバー内において、前記接合される接合面にイオンビームを照射し前記接合面の表面を活性化処理する工程を有することを特徴とする請求項13に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項15】
前記基板はSiにより形成されており、
前記一方の部材と前記他方の部材との接合は、前記Siの直接接合により接合されるものであることを特徴とする請求項13または14に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項16】
1または2枚以上の他の基板に、一方の面から他方の面に貫通する略同じ形状の開口部を形成する工程を有し、
前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程において、前記一方の部材の基板の一方の面と前記他方の部材の基板の一方の面は、前記他の基板を介し接合するものであることを特徴とする請求項13または14に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項17】
前記基板及び前記他の基板はSiにより形成されており、
前記一方の部材と他の基板との接合及び前記他方の部材と他の基板との接合は、前記Siの直接接合により接合されるものであることを特徴とする請求項16に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項18】
前記一方の部材の基板の一方の面及び前記他方の部材の基板の一方の面のうち、いずれかまたは双方には、金属膜が形成されており、
前記一方の部材と前記他方の部材との接合は、前記金属膜を介し共晶接合または金属同士の直接接合により接合されるものであることを特徴とする請求項13に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項19】
前記金属膜は、金を含む材料により形成されていることを特徴とする請求項18に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項20】
前記一方の部材の基板の一方の面及び前記他方の部材の基板の一方の面のうち、いずれかまたは双方には、ガラスフリットが形成されており、
前記一方の部材と前記他方の部材との接合は、前記ガラスフリットを介し接合されるものであることを特徴とする請求項13に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項21】
ガラス基板に設けたガラスフリットを加熱することにより、前記セル接続部を封止することを特徴とする請求項20に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項22】
前記アルカリ金属原料はアルカリ金属の化合物であって、
前記セル内部を形成した後、前記アルカリ金属原料を加熱、UV光の照射、レーザ光の照射することにより、前記アルカリ金属を生成することを特徴とする請求項13から21に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項23】
前記セル内部は、第1のセル内部と第2のセル内部とを有しており、
前記第1のセル内部と前記第2のセル内部とはセル接続部により接続されており、
前記アルカリ金属原料はアルカリ金属の化合物であって、第2のセル内部に設置されており、
前記アルカリ金属原料を加熱、UV光の照射、レーザ光の照射することにより前記アルカリ金属を発生させ、前記アルカリ金属が前記第1のセル内部に入り込むものであることを特徴とする請求項13から22に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項24】
前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程は、前記真空チャンバー内において、窒素または不活性ガスの雰囲気中で行なわれるものであることを特徴とする請求項13から23に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項25】
前記第1のセル内部に前記アルカリ金属を移動させたあと、前記セル接続部を封止し、前記第1のセル内部と前記第2のセル内部を空間的に分離する工程を有することを特徴とする請求項20に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項1】
アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、
前記アルカリ金属セルは、
一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、
一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、
前記一方の部材における基板の一方の面と、前記他方の部材における基板の一方の面とを直接接合することにより、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、
前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、
を有するものであることを特徴とする原子発振器。
【請求項2】
アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、
前記アルカリ金属セルは、
一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、
一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、
前記一方の部材における基板の一方の面及び前記他方の部材における基板の一方の面のいずれかまたは双方には、金属膜が設けられており、前記金属膜を介し共晶接合または金属同士の直接接合により、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、
前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、
を有するものであることを特徴とする原子発振器。
【請求項3】
前記金属膜は、金を含む材料により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の原子発振器。
【請求項4】
アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器において、
前記アルカリ金属セルは、
一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された一方の部材と、
一方の面から他方の面に貫通する開口部が形成された基板の他方の面にガラス基板が接合された他方の部材と、
前記一方の部材における基板の一方の面及び前記他方の部材における基板の一方の面のいずれかまたは双方には、ガラスフリッドが設けられており、前記ガラスフリッドを介し接合し、前記一方の部材の開口部及び前記他方の部材の開口部により形成されるセル内部と、
前記セル内部に封入されるアルカリ金属原料と、
を有するものであることを特徴とする原子発振器。
【請求項5】
前記基板はSiにより形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の原子発振器。
【請求項6】
前記一方の部材と前記他方の部材との間には、前記開口部と略同一の形状の開口部を有する他の基板が1または2以上設けられており、
前記一方の部材と前記他の基板、及び、前記他方の部材と前記他の基板とは接合されており、
前記一方の部材の開口部、前記他方の部材の部材の開口部、前記他の基板の開口部によりセル内部が形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の原子発振器。
【請求項7】
前記他の基板はSiにより形成されていることを特徴とする請求項6に記載の原子発振器。
【請求項8】
2つのガラス基板間の距離は1.5mm以上であることを特徴とする請求項5または7記載の原子発振器。
【請求項9】
前記セル内部は、第1のセル内部と第2のセル内部とを有しており、
前記第1のセル内部と前記第2のセル内部とはセル接続部により接続されており、
前記アルカリ金属原料はアルカリ金属の化合物であって、第2のセル内部に設置されており、
前記光源から発せられた光は、前記第1のセル内部を透過するものであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の原子発振器。
【請求項10】
前記原子発振器は、前記光源より出射したサイドバンドを含む光のうち、2つの異なる波長の光を前記アルカリ金属セルに入射させることにより、2種類の共鳴光による量子干渉効果による光吸収特性により発振周波数を制御するものであることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の原子発振器。
【請求項11】
前記2つの異なる波長の光は、ともに前記面発光レーザより出射したサイドバンドの光であることを特徴とする請求項10に記載の原子発振器。
【請求項12】
前記アルカリ金属は、ルビジウム、または、セシウムであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の原子発振器。
【請求項13】
アルカリ金属が封入されたアルカリ金属セルと、前記アルカリ金属セルにレーザ光を照射する光源と、前記アルカリ金属セルを透過した光を検出する光検出器と、を有する原子発振器の製造方法において、
2枚の基板に、一方の面から他方の面に貫通する略同じ形状の開口部を形成する工程と、
前記開口部の形成された2枚の基板の前記他方の面に各々ガラス基板を接合することにより、一方の部材と他方の部材を形成する工程と、
前記一方の部材または前記他方の部材の開口部に、アルカリ金属原料を入れる工程と、
前記一方の部材の基板の一方の面と前記他方の部材の基板の一方の面とを接合する工程と、
を有し、前記一方の部材の開口部と前記他方の部材の開口部により前記アルカリ金属セルのセル内部が形成されることを特徴とする原子発振器の製造方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属原料を入れる工程及び前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程は、真空チャンバー内において行なわれるものであって、
前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程の前に、前記真空チャンバー内において、前記接合される接合面にイオンビームを照射し前記接合面の表面を活性化処理する工程を有することを特徴とする請求項13に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項15】
前記基板はSiにより形成されており、
前記一方の部材と前記他方の部材との接合は、前記Siの直接接合により接合されるものであることを特徴とする請求項13または14に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項16】
1または2枚以上の他の基板に、一方の面から他方の面に貫通する略同じ形状の開口部を形成する工程を有し、
前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程において、前記一方の部材の基板の一方の面と前記他方の部材の基板の一方の面は、前記他の基板を介し接合するものであることを特徴とする請求項13または14に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項17】
前記基板及び前記他の基板はSiにより形成されており、
前記一方の部材と他の基板との接合及び前記他方の部材と他の基板との接合は、前記Siの直接接合により接合されるものであることを特徴とする請求項16に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項18】
前記一方の部材の基板の一方の面及び前記他方の部材の基板の一方の面のうち、いずれかまたは双方には、金属膜が形成されており、
前記一方の部材と前記他方の部材との接合は、前記金属膜を介し共晶接合または金属同士の直接接合により接合されるものであることを特徴とする請求項13に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項19】
前記金属膜は、金を含む材料により形成されていることを特徴とする請求項18に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項20】
前記一方の部材の基板の一方の面及び前記他方の部材の基板の一方の面のうち、いずれかまたは双方には、ガラスフリットが形成されており、
前記一方の部材と前記他方の部材との接合は、前記ガラスフリットを介し接合されるものであることを特徴とする請求項13に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項21】
ガラス基板に設けたガラスフリットを加熱することにより、前記セル接続部を封止することを特徴とする請求項20に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項22】
前記アルカリ金属原料はアルカリ金属の化合物であって、
前記セル内部を形成した後、前記アルカリ金属原料を加熱、UV光の照射、レーザ光の照射することにより、前記アルカリ金属を生成することを特徴とする請求項13から21に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項23】
前記セル内部は、第1のセル内部と第2のセル内部とを有しており、
前記第1のセル内部と前記第2のセル内部とはセル接続部により接続されており、
前記アルカリ金属原料はアルカリ金属の化合物であって、第2のセル内部に設置されており、
前記アルカリ金属原料を加熱、UV光の照射、レーザ光の照射することにより前記アルカリ金属を発生させ、前記アルカリ金属が前記第1のセル内部に入り込むものであることを特徴とする請求項13から22に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項24】
前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する工程は、前記真空チャンバー内において、窒素または不活性ガスの雰囲気中で行なわれるものであることを特徴とする請求項13から23に記載の原子発振器の製造方法。
【請求項25】
前記第1のセル内部に前記アルカリ金属を移動させたあと、前記セル接続部を封止し、前記第1のセル内部と前記第2のセル内部を空間的に分離する工程を有することを特徴とする請求項20に記載の原子発振器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−38382(P2013−38382A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−66675(P2012−66675)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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