説明

原料物質供給装置

【課題】基板に蒸着される有機発光素子の厚さを一定に維持し、信頼性の高い有機発光素子を製作できる原料物質供給装置を提供する。
【解決手段】基板上に蒸着される原料物質1が固体又は液体状態で収容される原料容器110と、前記原料容器110が設置される内部空間を備えており、前記原料容器110から気化された原料物質1が通過する気化チャンバー120と、前記気化チャンバー120の内部空間で前記原料容器110の上側に設置され、前記原料容器110に収容された原料物質1を気化させるために前記原料容器110に熱を供給する第1のヒーター130と、前記第1のヒーター130と前記原料容器110とが互いに近づく方向又は互いに遠ざかる方向に前記第1のヒーター130及び前記原料容器110のうち一つを往復移送させる移送ユニット140とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料物質供給装置に関し、より詳細には、基板上に薄膜形態で蒸着させる有機物質を気化させて供給する原料物質供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置は、自体発光特性を有する次世代の表示装置であって、液晶表示装置(Liquid Crystal Display Device;LCD)に比べて視野角、コントラスト、応答速度、消費電力などの側面で優れた特性を有する。
【0003】
有機発光表示装置は、走査ラインとデータラインとの間にマトリックス方式で連結されて画素を構成する有機発光素子を含む。有機発光素子は、アノード電極及びカソード電極と、アノード電極とカソード電極との間に形成され、正孔輸送層、有機発光層及び電子輸送層を含む有機薄膜層とで構成されており、アノード電極とカソード電極に所定の電圧が印加されると、アノード電極を通して注入される正孔とカソード電極を通して注入される電子とが有機発光層で再結合するようになり、この過程で発生するエネルギー差によって光を放出する。
【0004】
有機薄膜層の蒸着工程で使用される有機材料は、無機材料とは異なり、高い蒸気圧が必要でないが、高温での分解及び変性が容易である。このような素材の特性により、従来の有機薄膜は、タングステン材質の原料容器に有機材料を充填し、原料容器の加熱によって有機材料を気化させ、これを基板上に蒸着させた。
【0005】
従来の有機発光素子の製作は、外部環境と遮断された真空環境で行われるので、有機発光素子を製作するための原料物質を再充填する場合、再充填のための装置の稼動停止が不可避であった。また、稼動停止周期を延ばすために大容量の原料容器を用いて充填量を増大させる場合、原料物質の劣化による物質変性及び変質を誘発させ、原料容器の交換時点に設備の維持補修を進行しなければならなかった。
【0006】
一方、従来の装置では、原料物質の消耗とともに気化量が変化し、基板に蒸着される膜の厚さ変化によって信頼性のある素子製作が行われないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、このような従来の問題を解決するために、同一の空間内に、原料物質と、原料物質を気化させるために原料物質に熱を供給するヒーターとを配置し、原料物質の気化量によって原料物質とヒーターとの間の距離を調節することによって、基板に蒸着される有機発光素子の厚さを一定に維持し、信頼性の高い有機発光素子を製作できる原料物質供給装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のような目的を達成するために、本発明の原料物質供給装置は、基板上に薄膜形態で蒸着される原料物質を気化させ、基板と対向する噴射口に気化された原料物質を供給する原料物質供給装置において、基板上に蒸着される原料物質が固体又は液体状態で収容される原料容器と、前記原料容器が設置される内部空間を備えており、前記原料容器から気化された原料物質が通過する気化チャンバーと、前記気化チャンバーの内部空間で前記原料容器の上側に設置され、前記原料容器に収容された原料物質を気化させるために前記原料容器に熱を供給する第1のヒーターと、前記第1のヒーターと前記原料容器とが互いに近づく方向又は互いに遠ざかる方向に前記第1のヒーター及び前記原料容器のうち一つを往復移送させる移送ユニットとを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る原料物質供給装置において、望ましくは、前記気化チャンバーの内部空間で前記第1のヒーターの上側に設置され、外部から前記気化チャンバーの内部に伝達される熱を遮断するための遮断板をさらに含む。
【0010】
本発明に係る原料物質供給装置において、望ましくは、液体又は固体状態の原料物質と隣接するように前記気化チャンバーの下部に設置され、前記原料容器に収容された原料物質を冷却する冷却部と、液体又は固体状態の原料物質から離隔するように前記気化チャンバーの上部に設置され、前記気化チャンバーを通過する気化された原料物質の液体又は固体状態への相変化を防止するために前記気化チャンバーに熱を供給する第2のヒーターとをさらに含む。
【0011】
本発明に係る原料物質供給装置において、望ましくは、前記移送ユニットは、前記気化チャンバーの上側から貫通して前記第1のヒーターに結合され、前記第1のヒーターと共に前記気化チャンバーの内部で上下方向に往復移送されるロッド部と、前記ロッド部を往復移送させる駆動力を供給する駆動源と、前記駆動源に連結され、前記ロッド部の移送方向及び移送速度を制御する制御部とを含む。
【0012】
本発明に係る原料物質供給装置において、望ましくは、前記移送ユニットは、前記気化チャンバーの下側から貫通して前記原料容器に結合され、前記原料容器と共に前記気化チャンバーの内部で上下方向に往復移送されるロッド部と、前記ロッド部を往復移送させる駆動力を供給する駆動源と、前記駆動源に連結され、前記ロッド部の移送方向及び移送速度を制御する制御部とを含む。
【0013】
また、前記のような目的を達成するために、本発明の薄膜形成用蒸着装置は、基板上に薄膜形態で蒸着される原料物質を気化させ、基板と対向する噴射口に気化された原料物質を供給する原料物質供給装置において、下部には基板上に蒸着される原料物質が固体又は液体状態で収容され、上部には気化された原料物質が通過する原料容器と、前記原料容器の内部で固体又は液体状態の原料物質の上側に設置され、原料物質を気化させるために固体又は液体状態の原料物質に熱を供給する第1のヒーターと、前記第1のヒーターと固体又は液体状態の原料物質とが互いに近づく方向又は互いに遠ざかる方向に前記第1のヒーター及び前記原料物質のうち一つを往復移送させる移送ユニットとを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る原料物質供給装置において、望ましくは、前記原料容器の内部空間で前記第1のヒーターの上側に設置され、外部から前記原料容器の内部に伝達される熱を遮断するための遮断板をさらに含む。
【0015】
本発明に係る原料物質供給装置において、望ましくは、液体又は固体状態の原料物質と隣接するように前記原料容器の下部に設置され、前記原料容器に収容された原料物質を冷却する冷却部と、液体又は固体状態の原料物質から離隔するように前記原料容器の上部に設置され、前記原料容器を通過する気化された原料物質の液体又は固体状態への相変化を防止するために前記原料容器に熱を供給する第2のヒーターとをさらに含む。
【0016】
本発明に係る原料物質供給装置において、望ましくは、前記移送ユニットは、前記原料容器の上側から貫通して前記第1のヒーターに結合され、前記第1のヒーターと共に前記原料容器の内部で上下方向に往復移送されるロッド部と、前記ロッド部を往復移送させる駆動力を供給する駆動源と、前記駆動源に連結され、前記ロッド部の移送方向及び移送速度を制御する制御部とを含む。
【0017】
本発明に係る原料物質供給装置において、望ましくは、前記移送ユニットは、前記原料容器の下側から貫通して前記原料物質に接触し、前記原料物質と共に前記原料容器の内部で上下方向に往復移送されるロッド部と、前記ロッド部を往復移送させる駆動力を供給する駆動源と、前記駆動源に連結され、前記ロッド部の移送方向及び移送速度を制御する制御部とを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の原料物質供給装置によると、同一の空間内に、原料物質と、原料物質を気化させるために原料物質に熱を供給するヒーターとを配置し、原料物質の気化量によって原料物質とヒーターとの間の距離を調節することによって、原料物質の消耗量とは関係なく、基板に蒸着される有機発光素子の厚さを一定に維持し、信頼性の高い有機発光素子を製作することができる。
【0019】
また、本発明の原料物質供給装置によると、媒介部材を経らずに第1のヒーターの熱を原料容器に直接伝達することによって、第1のヒーターの温度制御による原料容器内の原料物質の温度反応を迅速に行うことができ、原料物質の安定的な気化によって均一な蒸着及び大面積蒸着を行うことができ、大容量の原料物質の変性を防止することができる。
【0020】
また、本発明の原料物質供給装置によると、遮断板を用いて外部から気化チャンバーの内部に伝達される熱を最大限に遮断することによって、原料物質の気化量に影響を及ぼすおそれのある外部変数を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施例に係る原料物質供給装置を簡略に示した図である。
【図2】図1の原料物質供給装置で第1のヒーターが原料容器に近づくように移動した状態を示した図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る原料物質供給装置を簡略に示した図である。
【図4】本発明の第3の実施例に係る原料物質供給装置を簡略に示した図である。
【図5】本発明の第4の実施例に係る原料物質供給装置を簡略に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る原料物質供給装置の各実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施例に係る原料物質供給装置を簡略に示した図で、図2は、図1の原料物質供給装置で第1のヒーターが原料容器に近づくように移動した状態を示した図である。
【0024】
図1及び図2を参照すると、本実施例の原料物質供給装置100は、基板上に薄膜形態で蒸着させる有機物質を気化させて供給する装置であって、原料容器110、気化チャンバー120、第1のヒーター130、移送ユニット140、遮断板150、冷却部160及び第2のヒーター170を含む。
【0025】
本発明は、有機発光表示装置(Organic Light Emitting Device:OLED)を製造する装置を提示したものであって、本発明に提示される原料物質としては、例えば、有機材料が使用されることが望ましい。
【0026】
図1に示したインジェクター10は、内部に連結管20と連通する流路が形成され、その端部には気化された原料物質1が噴射される噴射口11が形成される。このとき、インジェクター10は線状をなし、噴射口11が一直線に配列されて基板と対向するように配置される。そして、噴射口11は、ノズル形態の別途の部品で製作されてインジェクター10の端部に結合することもでき、インジェクター10の端部に貫通ホールの形態で一体に成形することもできる。
【0027】
連結管20は、後述する第1のヒーター130によって気化された原料物質1がインジェクター10に流動するように気化チャンバー120とインジェクター10とを連結する。連結管20は、インジェクター10及び気化チャンバー120に着脱可能に結合される。
【0028】
前記原料容器110は、基板上に蒸着される原料物質1が固体又は液体状態で収容されるものであって、一側が開口される円筒状に形成される。原料容器110は、例えば、タングステン材質で製作され、気化チャンバー120の下部に配置される。原料容器110の内部には、基板に蒸着される原料物質1である有機材料が充填されている。
【0029】
前記気化チャンバー120は、原料容器110が設置される内部空間を備える。気化チャンバー120の内部空間の下部には原料容器110が気化チャンバー120と連通するように配置され、気化チャンバー120の内部空間の上部には、気化される原料物質1が通過する空間が形成される。
【0030】
第1のヒーター130によって原料容器110に収容されていた固体状態又は液体状態の原料物質1が加熱され、加熱された原料物質1は、気化されて気化チャンバー120の内部空間の上部に蒸発される。蒸発される原料物質1は、気化チャンバー120を通過して噴射口11を介して基板に噴射される。
【0031】
原料容器110は、気化チャンバー120と着脱可能に結合される。原料容器110の内部に基板に蒸着させる原料物質1、すなわち、有機材料を充填しようとする場合、蒸着工程を中断し、原料容器110を気化チャンバー120から分離する。その後、原料容器110内への原料物質1の充填が完了すると、再び原料容器110を気化チャンバー120の内部空間に配置し、蒸着工程を行う。
【0032】
前記第1のヒーター130は、原料容器110に収容された原料物質1を気化させるために原料容器110に熱を供給するものであって、気化チャンバー120の内部空間で原料容器110の上側に設置される。
【0033】
第1のヒーター130は、原料物質1を気化させ得る熱エネルギーを供給できる多様な形態で具現可能することができる。第1のヒーター130としては、例えば、コアヒーター又はランプヒーターなどを使用することができる。本実施例では、コアヒーターが使用されるが、このときに使用される抵抗熱線はTa、W、Mo金属又はこれらの合金線からなる。
【0034】
本発明で、第1のヒーター130は、原料物質1が収容された原料容器110と同一の空間に設置されることによって、媒介部材を経ずに第1のヒーター130の熱を原料容器110に直接伝達できるという特徴を有する。したがって、第1のヒーター130の温度制御による原料容器110内の原料物質1の温度反応を速く行うことができる。
【0035】
前記移送ユニット140は、第1のヒーター130と原料容器110とが互いに近づく方向又は互いに遠ざかる方向に第1のヒーター130及び原料容器110のうち一つを往復移送させる。本実施例では、第1のヒーター130を往復移送させる。移送ユニット140を用いて原料容器110と第1のヒーター130との間の距離を調節することによって、原料容器110で気化される原料物質1の量を制御することができる。
【0036】
すなわち、気化される原料物質1の量が少ないと、第1のヒーター130を原料物質1に近づく方向に移送させ、より多くの熱を原料容器110に供給することによって、原料容器110で気化される原料物質1の量を増加させることができる。一方、気化される原料物質1の量が多いと、第1のヒーター130を原料物質1から遠ざかる方向に移送させ、より少ない熱を原料容器110に供給することによって、原料容器110で気化される原料物質1の量を減少させることができる。
【0037】
また、原料容器110に残存する原料物質1の量によって原料容器110と第1のヒーター130との間の距離を調節することもできる。原料物質1の消耗によって原料容器110に残存する原料物質1の体積が減少する場合、より少ない熱を原料容器110に供給すると均一な気化量を維持できるが、この場合、第1のヒーター130を原料物質1から遠ざかる方向に移送させる。一方、新しい原料物質1の充填によって原料容器110に残存する原料物質1の体積が増加する場合、より多くの熱を原料容器110に供給すると均一な気化量を維持できるが、この場合、第1のヒーター130を原料物質1に近づく方向に移送させる。
【0038】
本実施例の移送ユニット140は、ロッド部141、駆動源142及び制御部143を含む。
【0039】
前記ロッド部141は、気化チャンバー120の上側から貫通して第1のヒーター130に結合され、第1のヒーター130と共に気化チャンバー120の内部で上下方向に往復移送される。このとき、気化チャンバー120内部のロッド部141付近にはベローズ管144が設置され、気化された原料物質1がロッド部141にくっ付くことを防止する。
【0040】
ロッド部141が気化チャンバー120の上側から貫通するように設置されることによって、全体装置の大きさを減少させることができる。すなわち、原料物質1が気化されて通過する区間とロッド部141が設置される領域とが一部重なることによって、ロッド部141の全体のストロークを確保するために追加的に必要な外部空間がその分だけ減少する。
【0041】
前記駆動源142は、ロッド部141を往復移送させる駆動力を供給する。駆動源142は、直線往復運動を行える多様な形態で具現することができる。駆動源142としては、空圧シリンダー、リニアモーター、回転モーターとボールスクリューとを組み合わせた構成などの通常の技術者によく知られた構成を採用できるので、それについての詳細な説明は省略する。
【0042】
前記制御部143は、駆動源142に連結され、ロッド部141の移送方向及び移送速度を制御する。
【0043】
前記遮断板150は、外部から気化チャンバー120の内部に伝達される熱を遮断するためのものであって、気化チャンバー120の内部空間で第1のヒーター130の上側に設置される。
【0044】
インジェクター10や連結管20に収容されている気化された原料物質1から放出される熱は、連通した経路を通して気化チャンバー120の内部空間に伝達することができる。この場合、第1のヒーター130と原料物質1との間の距離又は第1のヒーター130の温度によって制御されていた原料物質1の気化量が予期しない外部変数によって変化し得る。気化量の変化は、直ちに有機発光素子の厚さに影響を及ぼすようになり、これは製品の不良と直結されるという問題が発生する。
【0045】
したがって、遮断板150を用いて外部から気化チャンバー120の内部に伝達される熱を最大限に遮断することによって、原料物質1の気化量に影響を及ぼすおそれのある外部変数を除去することができる。
【0046】
遮断板150は平板形態で形成され、気化チャンバー120の内壁から一定距離だけ離隔するように設置される。気化された原料物質1は、遮断板150と気化チャンバー120の内壁との間の空間を通して移動することができる。
【0047】
前記冷却部160は、原料容器110の内部に収容された原料物質1が第1のヒーター130の熱によって変性されることを防止するために、原料容器110に収容された原料物質を冷却する。冷却部160は、液体又は固体状態の原料物質1と隣接するように原料容器110の外側に設置され、望ましくは、気化チャンバー120の下部で気化チャンバー120の外壁を取り囲むように備えられる。
【0048】
冷却部160は、原料物質1が収容された原料容器110の内部を冷却可能な多様な形態で具現することができる。本実施例では、冷却部160としては、例えば、冷却ジャケットが使用される。冷却部160は、気化チャンバー120の外壁に冷却水が流れる冷却流路が取り囲まれて形成される。
【0049】
前記第2のヒーター170は、気化チャンバー120を通過する気化された原料物質1の液体又は固体状態への相変化を防止するために気化チャンバー120に熱を供給するものであって、液体又は固体状態の原料物質1から離隔するように気化チャンバー120の上部に設置される。
【0050】
第2のヒーター170としては、例えば、コアヒーター又はランプヒーターなどを使用することができ、第2のヒーター170は、気化チャンバー120の上部外壁を抵抗熱線が取り囲む形態で形成される。このときに使用される抵抗熱線は、Ta、W、Mo金属又はこれらの合金線からなる。
【0051】
上述したように構成された本実施例に係る原料物質供給装置は、同一の空間内に、原料物質と、原料物質を気化させるために原料物質に熱を供給するヒーターとを配置し、原料物質の気化量によって原料物質とヒーターとの間の距離を調節することによって、原料物質の消耗量とは関係なく、基板に蒸着される有機発光素子の厚さを一定に維持し、信頼性の高い有機発光素子を製作することができる。
【0052】
また、上述したように構成された本実施例に係る原料物質供給装置は、媒介部材を経ずに第1のヒーターの熱を原料容器に直接伝達することによって、第1のヒーターの温度制御による原料容器内の原料物質の温度反応を迅速に行うことができ、原料物質の安定的な気化によって均一な蒸着及び大面積蒸着を行うことができ、大容量の原料物質の変性を防止することができる。
【0053】
また、上述したように構成された本実施例に係る原料物質供給装置は、遮断板を用いて外部から気化チャンバーの内部に伝達される熱を最大限に遮断することによって、原料物質の気化量に影響を及ぼすおそれのある外部変数を除去することができる。
【0054】
また、上述したように構成された本実施例に係る原料物質供給装置は、原料物質が収容された重い原料容器の代わりに、第1のヒーターを往復移送させることによって、過度な負荷が要される移送運動を避けることができ、消耗される原料物質によって質量が変わる原料容器の代わりに、常に一定の質量を維持する第1のヒーターを往復移送させることによって、移送運動を容易に制御することができる。
【0055】
また、上述したように構成された本実施例に係る原料物質供給装置は、ロッド部が気化チャンバーの上側から貫通するように設置され、原料物質が気化されて通過する区間とロッド部が設置される領域とが一定部分重なることによって、全体のストロークを確保するために追加的に必要な空間がその分だけ減少し、全体の装置の大きさを減少させることができる。
【0056】
一方、図3は、本発明の第2の実施例に係る原料物質供給装置を簡略に示した図である。
【0057】
図3を参照すると、本実施例の原料物質供給装置200は、第1のヒーター130が往復移送される第1の実施例とは異なり、原料容器110が往復移送されることを特徴とする。図3において、図1及び図2に示した各部材と同一の参照符号によって示される各部材は、同一の構成及び機能を有するものであって、それらについての詳細な説明は省略する。
【0058】
本実施例の移送ユニット240は、第1のヒーター130と原料容器110とが互いに近づく方向又は互いに遠ざかる方向に往復移送させるために、原料容器110を往復移送させる。移送ユニット240を用いて原料容器110と第1のヒーター130との間の距離を調節することによって発生する効果は、本発明の第1の実施例と同一であるので、それについての詳細な説明は省略する。
【0059】
本実施例の移送ユニット240は、ロッド部241、駆動源242及び制御部243を含む。
【0060】
前記ロッド部241は、気化チャンバー120の下側から貫通して原料容器110に結合され、原料容器110と共に気化チャンバー120の内部で上下方向に往復移送される。
【0061】
前記駆動源242は、ロッド部141を往復移送させる駆動力を供給し、前記制御部243は、駆動源242に連結され、ロッド部241の移送方向及び移送速度を制御する。
【0062】
一方、図4は、本発明の第3の実施例に係る原料物質供給装置を簡略に示した図である。
【0063】
図4を参照すると、本実施例の原料物質供給装置300は、原料容器と気化チャンバーが別途に設けられておらず、原料容器が原料物質を収容し、気化された原料物質を通過させる機能を同時に行うことを特徴とし、原料容器310、第1のヒーター330、移送ユニット340、遮断板350、冷却部360及び第2のヒーター370を含む。
【0064】
前記原料容器310は、下部には基板に蒸着される原料物質1が固体又は液体状態で収容され、上部には気化された原料物質1が通過する。原料容器310の下部には、基板に蒸着される原料物質1である有機材料が充填されている。
【0065】
第1のヒーター330によって原料容器310の下部に収容されている固体状態又は液体状態の原料物質1が加熱され、加熱された原料物質1は、気化されて原料容器330の上部に蒸発される。蒸発される原料物質1は、原料容器310を通過して噴射口11を介して基板に噴射される。
【0066】
前記第1のヒーター330は、原料容器310に収容された原料物質1を気化させるために原料容器310に熱を供給するものであって、原料容器310の内部で原料物質1の上側に設置される。第1のヒーター330の材質及び機能は、第1の実施例の第1のヒーター130の材質及び機能と同一であるので、それについての詳細な説明は省略する。
【0067】
前記移送ユニット340は、第1のヒーター330と原料物質1とが互いに近づく方向又は互いに遠ざかる方向に第1のヒーター330を往復移送させる。移送ユニット340を用いて第1のヒーター330と原料物質1との間の距離を調節することによって発生する効果は、本発明の第1の実施例と同一であるので、それについての詳細な説明は省略する。
【0068】
本実施例の移送ユニット340は、ロッド部341、駆動源342及び制御部343を含む。
【0069】
前記ロッド部341は、原料容器310の上側から貫通して第1のヒーター330に結合され、第1のヒーター330と共に原料容器310の内部で上下方向に往復移送される。このとき、原料容器310内部のロッド部341付近にはベローズ管344が設置され、気化された原料物質1がロッド部341にくっ付くことを防止する。
【0070】
前記駆動源342は、ロッド部341を往復移送させる駆動力を供給し、前記制御部343は、駆動源342に連結されてロッド部341の移送方向及び移送速度を制御する。
【0071】
前記遮断板350は、外部から原料容器310の内部に伝達される熱を遮断するためのものであって、原料容器310の内部空間で第1のヒーター330の上側に設置される。遮断板350の機能及び形態は、第1の実施例の遮断板150の機能及び形態と同一であるので、それについての詳細な説明は省略する。
【0072】
前記冷却部360は、原料容器310の内部に収容された原料物質1が第1のヒーター330の熱によって変性されることを防止するために、原料容器310に収容された原料物質1を冷却する。冷却部360は、液体又は固体状態の原料物質1と隣接するように原料容器310の下部で原料容器310の外壁を取り囲むように備えられる。
【0073】
冷却部360の機能及び形態は、第1の実施例の冷却部360の機能及び形態と同一であるので、それについての詳細な説明は省略する。
【0074】
前記第2のヒーター370は、原料容器310を通過する気化された原料物質1の液体又は固体状態への相変化を防止するために原料容器310に熱を供給するものであって、液体又は固体状態の原料物質1から離隔するように原料容器310の上部に設置される。
【0075】
第2のヒーター370の材質及び形態は、第1の実施例の第2のヒーター170の材質及び形態と同一であるので、それについての詳細な説明は省略する。
【0076】
一方、図5は、本発明の第4の実施例に係る原料物質供給装置を簡略に示した図である。
【0077】
図5を参照すると、本実施例の原料物質供給装置400は、第1のヒーター330が往復移送される第3の実施例とは異なり、原料物質1が往復移送されることを特徴とする。図5において、図4に示した各部材と同一の参照符号によって示される各部材は、同一の構成及び機能を有するものであって、それらについての詳細な説明は省略する。
【0078】
本実施例の移送ユニット440は、第1のヒーター330と原料物質1とが互いに近づく方向又は互いに遠ざかる方向に往復移送させるために、原料物質1を往復移送させる。移送ユニット440を用いて第1のヒーター330と原料物質1との間の距離を調節することによって発生する効果は、本発明の第1の実施例と同一であるので、それについての詳細な説明は省略する。
【0079】
本実施例の移送ユニット440は、ロッド部441、駆動源442及び制御部443を含む。
【0080】
前記ロッド部441は、原料容器310の下側から貫通して原料物質1に接触し、原料物質1と共に原料容器310の内部で上下方向に往復移送される。
【0081】
前記駆動源442は、ロッド部441を往復移送させる駆動力を供給し、前記制御部443は、駆動源442に連結されてロッド部441の移送方向及び移送速度を制御する。
【0082】
本発明の権利範囲は、上述した実施例及び変形例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で多様な形態の実施例で具現可能である。特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば誰でも変形可能な多様な範囲までを本発明の特許請求の範囲に記載した範囲と見なす。
【符号の説明】
【0083】
100:原料物質供給装置、110:原料容器、120:気化チャンバー、130:第1のヒーター、140:移送ユニット、150:遮断板、160:冷却部、170:第2のヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に薄膜形態で蒸着される原料物質を気化させ、基板と対向する噴射口に気化された原料物質を供給する原料物質供給装置において、
基板上に蒸着される原料物質が固体又は液体状態で収容される原料容器と、
前記原料容器が設置される内部空間を備えており、前記原料容器から気化された原料物質が通過する気化チャンバーと、
前記気化チャンバーの内部空間で前記原料容器の上側に設置され、前記原料容器に収容された原料物質を気化させるために前記原料容器に熱を供給する第1のヒーターと、
前記第1のヒーターと前記原料容器とが互いに近づく方向又は互いに遠ざかる方向に前記第1のヒーター及び前記原料容器のうち一つを往復移送させる移送ユニットと、を含むことを特徴とする原料物質供給装置。
【請求項2】
前記気化チャンバーの内部空間で前記第1のヒーターの上側に設置され、外部から前記気化チャンバーの内部に伝達される熱を遮断するための遮断板をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の原料物質供給装置。
【請求項3】
液体又は固体状態の原料物質と隣接するように前記気化チャンバーの下部に設置され、前記原料容器に収容された原料物質を冷却する冷却部と、
液体又は固体状態の原料物質から離隔するように前記気化チャンバーの上部に設置され、前記気化チャンバーを通過する気化された原料物質の液体又は固体状態への相変化を防止するために前記気化チャンバーに熱を供給する第2のヒーターと、をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の原料物質供給装置。
【請求項4】
前記移送ユニットは、
前記気化チャンバーの上側から貫通して前記第1のヒーターに結合され、前記第1のヒーターと共に前記気化チャンバーの内部で上下方向に往復移送されるロッド部と、
前記ロッド部を往復移送させる駆動力を供給する駆動源と、
前記駆動源に連結され、前記ロッド部の移送方向及び移送速度を制御する制御部と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の原料物質供給装置。
【請求項5】
前記移送ユニットは、
前記気化チャンバーの下側から貫通して前記原料容器に結合され、前記原料容器と共に前記気化チャンバーの内部で上下方向に往復移送されるロッド部と、
前記ロッド部を往復移送させる駆動力を供給する駆動源と、
前記駆動源に連結され、前記ロッド部の移送方向及び移送速度を制御する制御部と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の原料物質供給装置。
【請求項6】
基板上に薄膜形態で蒸着される原料物質を気化させ、基板と対向する噴射口に気化された原料物質を供給する原料物質供給装置において、
下部には基板上に蒸着される原料物質が固体又は液体状態で収容され、上部には気化された原料物質が通過する原料容器と、
前記原料容器の内部で固体又は液体状態の原料物質の上側に設置され、原料物質を気化させるために固体又は液体状態の原料物質に熱を供給する第1のヒーターと、
前記第1のヒーターと固体又は液体状態の原料物質とが互いに近づく方向又は互いに遠ざかる方向に前記第1のヒーター及び前記原料物質のうち一つを往復移送させる移送ユニットと、を含むことを特徴とする原料物質供給装置。
【請求項7】
前記原料容器の内部空間で前記第1のヒーターの上側に設置され、外部から前記原料容器の内部に伝達される熱を遮断するための遮断板をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の原料物質供給装置。
【請求項8】
液体又は固体状態の原料物質と隣接するように前記原料容器の下部に設置され、前記原料容器に収容された原料物質を冷却する冷却部と、
液体又は固体状態の原料物質から離隔するように前記原料容器の上部に設置され、前記原料容器を通過する気化された原料物質の液体又は固体状態への相変化を防止するために前記原料容器に熱を供給する第2のヒーターと、をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の原料物質供給装置。
【請求項9】
前記移送ユニットは、
前記原料容器の上側から貫通して前記第1のヒーターに結合され、前記第1のヒーターと共に前記原料容器の内部で上下方向に往復移送されるロッド部と、
前記ロッド部を往復移送させる駆動力を供給する駆動源と、
前記駆動源に連結され、前記ロッド部の移送方向及び移送速度を制御する制御部と、を含むことを特徴とする、請求項6に記載の原料物質供給装置。
【請求項10】
前記移送ユニットは、
前記原料容器の下側から貫通して前記原料物質に接触し、前記原料物質と共に前記原料容器の内部で上下方向に往復移送されるロッド部と、
前記ロッド部を往復移送させる駆動力を供給する駆動源と、
前記駆動源に連結され、前記ロッド部の移送方向及び移送速度を制御する制御部と、を含むことを特徴とする、請求項6に記載の原料物質供給装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−221961(P2012−221961A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90744(P2012−90744)
【出願日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【出願人】(512096595)エスエヌユー精密股▲ふん▼有限公司 (4)
【Fターム(参考)】