説明

原油貯蔵およびタンク保守

HSP原油がスラッジ蓄積を清掃することおよび定期的に使用されるときにいかなる有意のスラッジ堆積をも防ぐことの両方によってスラッジレベルに対処するために原油貯蔵タンクでプロセス・ストリームとして使用される。HSP原油はまた清掃ルーチンを最適化するためにも使用される。指定のHSP源を提供することによってHSP油を容易にアクセス可能にすると、タンク保守がより効率的になり、製油所がHSP油の利点を最大限に行使することを可能にするであろう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製油所および石油化学プラントにおける全原油、ブレンドおよび留分の処理に関する。特に、本発明は、原油貯蔵タンクおよび貯蔵タンクの清掃、保守および管理に関する。
【背景技術】
【0002】
原油貯蔵タンクでのアスファルテンの沈澱は、原油の不適切なブレンドの結果として起こり得る。例えば、不適切なブレンドは、高レベルのアスファルテンおよび/またはワックスを含有する貧溶媒原油をタンクヒールに加えるか、または比較的高い不溶性数(Insolubility Numbers)(I)を有するアスファルテンを含有する油を加えたときに起こり得る。かかるアスファルテン沈殿物は、効果的な貯蔵タンク運転を妨げ、予熱系統交換器および加熱炉での汚れを加速させることによって製油所プロセスに有害な影響を及ぼす。沈殿物は、原油および他の高重力石油製品のために使用される貯蔵タンクの底部でのスラッジの蓄積を生み出す。
【0003】
かかる沈澱は、原油用に使用される大きなタンクで1メートル以上の深さまで蓄積するかもしれない、大きなスラッジ堆積物を生み出し得る。8フィートを超える極端なレベルが報告されてきた。この堆積は、フローティングルーフ操作、混合、ポンプ送液、および測定を妨げる。幾つかの場合には、スラッジレベルが非常に高いので、フローティングルーフが損傷され得る。スラッジは、タンク容量および効果的なタンク運転を維持するために時々タンクから除去される必要がある。
【0004】
スラッジ除去はまた、タンクを移動する製品の汚染を防ぐかまたは減らす。沈澱したアスファルテン入り油ストリームは、熱交換設備、特に予熱系統交換器を汚すであろう。よく知られているように、アスファルテン沈殿物は加熱面上に蓄積し、コークス化して、除去することが困難である残渣の層を形成し得る。これは、それが効率に悪影響を及ぼし、そして保守コストを上昇させるので、製油所および石油化学プラントにおける幅広い問題である。
【0005】
スラッジを除去するためのコストは非常に高く、かつ、環境問題を引き起こし得る。スラッジは、それが粘着性の固体または半固体であるので、効率的に処理することが困難であり、ポンプなどの、従来の流体ハンドリング設備によって移動させることができない。スラッジを固体物質として機械的に除去するなどの、物理的方法による製油所タンク清掃のための現行の慣行は、時間がかかり、労働集約的であり、かつ、コストがかかる。
【0006】
代替清掃技法には、水洗または溶剤除去が含まれる。水洗は典型的には、分散剤入り水をスラッジ中へ噴出させてそれを破壊し、そしてそれを軟化させることによって成し遂げられ、その後それは、例えばセメントプラントでの、処分のためにスラリーの形態でポンプ送出することができる。高圧洗浄ジェットは、スラッジの塊の破砕を促進する。100バール以下の圧力が用いられてきた。スラッジの軟化はまた、約45℃もの高い温度で、温水を用いて支援される。
【0007】
溶剤洗浄は、よりコストがかからず、そしてさもなければ処分される必要があろう有機物質の量を低減する。原油が時々溶剤として使用される。溶剤清掃方法は先ず、タンク中に通常貯蔵されている以前の液体油内容物のタンクを空にする工程を含む。次に、熱い炭化水素溶剤が、ミキサーを十分にカバーするおよび/またはルーフを浮かせるためにタンク中へ導入される。スラッジ中の固体炭化水素のほとんどは、混合および熱を用いてより迅速に、かつ、完全に溶解するであろう。スラッジの機械的破砕はまた、特定の溶剤用のジェット式注入器を用いて達成することができる。熱が利用可能でない場合、より長い混合時間または繰り返し溶剤適用が利用される。かき混ぜの後、炭化水素溶剤と溶解した物質とはタンクからポンプ送液され、従来の製油所処理によって回収される。水または水性溶剤が次にタンクへ導入される。混合および加熱は溶解の程度および速度を向上させる。水または水性溶剤と溶解した無機物とはタンクからポンプ送液され、従来の製油所水処理施設によって処理される。しかしながら実際には、水洗は多くの場合油状スラッジを完全に除去できるわけではなく、溶剤除去は完全に有効であるわけではない。
【0008】
スラッジの一除去方法は、2006年3月2日に公開された、関連した特許文献1に開示されている。本出願の内容は参照により本明細書に援用される。この方法で、2段階アプローチは、スラッジの有機成分を溶解させるための溶剤抽出、引き続く無機物質を除去するための水洗を利用している。混合および加熱は、この方法の両段階で可溶性物質の溶解を向上させる。
【0009】
しかしながら、特に溶剤を改善し、かつ、有益な溶剤へのアクセスを改善することによって、スラッジ除去の方法を最適化する必要性がある。更に、スラッジレベル管理を最適化すること、および除去の必要性を低下させるかまたは排除するためにスラッジ堆積を防ぐことによって高レベルの堆積前にスラッジ問題に対処することは望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0042661号明細書
【特許文献2】米国特許出願第11/391,258号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態の態様は、原油貯蔵タンクからスラッジを清掃するための有効な方法を提供することに関する。
【0012】
本発明の実施形態の別の態様は、最低限のスラッジレベルの原油タンクを維持することに関する。
【0013】
本発明の実施形態の追加の態様は、計画的な清掃および保守を実施すること、および溶剤製品へのアクセスを提供することによって精製施設を最適化することに関する。
【0014】
これらのおよび他の態様は、100より大きい溶解ブレンド数(solubility blending number)(SBN)を有する、高い溶解力(HSP)原油を含む原油のストリームを提供する工程と、貯蔵タンク中のアスファルテンに富むスラッジを溶解させるために原油を貯蔵するための貯蔵タンクによってストリームを処理する工程とを含む、原油貯蔵タンクからのスラッジの清掃方法に関する、本発明によって実現することができる。好ましくは、このストリームを提供する工程は、少なくとも年1回などの、計画ベース(scheduled basis)で行われる。
【0015】
このストリームを処理する工程はまた、ブレンドを是正するために、沈澱したアスファルテンを有する貯蔵タンク中に存在する2つ以上の非相溶性原油のブレンドにこのストリームを加えることを含むことができる。
【0016】
タンクによってHSPストリームを処理する前に、本方法は、スラッジの油溶性有機成分を油溶剤に溶解させるためにスラッジを熱油溶剤と接触させる工程と、溶解した油溶性有機成分と共に油溶剤をタンクから取り出す工程とを含む。次に、HSPストリームは、タンク中に残るスラッジのかき混ぜでタンクによって処理され、HSP油は、溶解したアスファルテン、ワックスおよび懸濁した無機固形物と共にタンクから取り出される。スラッジ中の無機物を溶解させるために水または水性溶剤をタンクに加え、次に溶解した無機物と共に取り出すことができる。
【0017】
本発明は更に、貯蔵タンク中のアスファルテンに富むスラッジを溶解させるために原油貯蔵タンクに、100より大きい溶解ブレンド数(SBN)を有する、高い溶解力(HSP)原油を含む原油を加える工程と、タンクからのHSP原油を精製プロセスに使用する工程と、低下したスラッジレベルを貯蔵タンク中で維持するために計画ベースでHSP原油を加える工程を繰り返す工程とを含む、精製施設での原油貯蔵タンクの保守方法にも関する。
【0018】
本発明はまた、原油貯蔵タンクと、原油を処理するための熱交換設備をはじめとする、原油処理アセンブリとを含む製油所システムに関する。パイプラインアセンブリなどの、輸送システムは、原油が貯蔵タンクから処理アセンブリに供給されるように原油貯蔵タンクを原油処理アセンブリに接続する。原油貯蔵タンクの少なくとも1つは、少なくとも100の溶解ブレンド数(SBN)を有する高い溶解力(HSP)原油を貯蔵するための指定タンクを含む。
【0019】
本発明のこれらのおよび他の態様は、詳細な説明および添付の図面と関連して理解されるときに明らかになるであろう。
【0020】
本発明は、以下の添付図面と関連して今説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に従った方法を実施することによる汚れの減少を示す試験結果を例示するグラフである。
【図2】本発明に従った方法に使用された幾つかの異なるブレンドでの汚れの減少を示す試験結果を例示するグラフである。
【図3】オンライン清掃シミュレーションからの試験結果を例示するグラフである。
【図4】全原油汚染ランのプロフィロメトリー分析である。
【図5】ブレンド原油清掃ランのプロフィロメトリー分析である。
【図6】別のブレンド原油清掃ランのプロフィロメトリー分析である。
【0022】
図面において、類似の参照番号は、異なる図での相当する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、製油所および石油化学プラントにおける原油貯蔵設備でのスラッジ堆積への対処の異なる態様に関する。好ましい使用では、本方法は原油貯蔵タンクに適用されるが、他の高重力石油製品用の貯蔵容器にもまた用いられてもよい。参照を簡略化するために、石油製品は本明細書では原油として言及され、それはスラッジ堆積を体験する類似の製品を含むと理解されるであろう。勿論、本発明を他の処理施設および熱交換器、特に、堆積を受けやすい、そしてまた精製プロセス中に体験されるものと類似のやり方で汚れを受けやすい、かつ、修理および清掃のためにオフラインを取ることが不便であるものに適用することは可能である。
【0024】
選択される原油はアスファルテンに対してより高い溶解力を有すること、およびこれらの選択される原油のストリームは固体、粘着性コークス沈着物が形成され得る前に沈澱したアスファルテンを熱交換器表面から除去するために使用されてもよいことが分かった。これらの原油は、高い溶解力(HSP)原油と言われる。HSP原油は、100より大きい溶解ブレンド数(SBN)(SBN>100)のものと定義される。
【0025】
例えば、先願発明では、熱交換器は、交換器に受け入れられ、アスファルテンを溶解させるのに十分な期間表面を浸すことが可能な高い溶解力(HSP)油を用いて清掃される。その期間後に、油は溶解したアスファルテンおよび任意の緩んだ沈着物と共に取り出され、回収され、そして従来の精製操作によって、例えば、コーカーへ送ることによって処理される。これは、2006年3月29日に出願された、今係属中である、「オンライン熱交換器清掃方法(On−Line Heat Exchanger Cleaning Method)」という表題の関連出願(特許文献2)に開示されている。この関連出願の内容は参照により本明細書に援用される。
【0026】
上に議論されたように、原油用の貯蔵タンクは、アスファルテンの沈澱のためにスラッジ堆積を体験する傾向がある。本発明は、HSP原油を使用する溶剤除去によってスラッジ堆積の問題にアプローチする。本発明者らは、原油貯蔵タンクでのアスファルテンに富むスラッジの形成および堆積を減少させるための、および製油所処理設備の予熱系統の汚れをHSPストリームで防ぐための予防手段としてHSP原油を使用することを提案する。
【0027】
本発明によれば、HSP原油は、溶液から沈澱した、そしてアスファルテンに富むタンクスラッジの堆積を形成したかもしれないアスファルテンを再溶解させるために貯蔵タンクによって処理される。かかる処理は、アスファルテンに富むスラッジを溶解させ、原油の標準処理以外にスラッジの更なるハンドリングを必要としない。HSP原油成分を含む油のブレンドもまた、HSP成分とのブレンド油のSBNレベルが少なくとも100でるという条件で有効である。このアプローチを用いると、HSP原油はまた、さもなければアスファルテン沈殿をもたらすであろう貯蔵タンク中に存在する貧原油ブレンドを是正するために使用することができる。HSP原油またはブレンドのストリームを非相溶性ブレンド入りタンクに加えると、沈澱したアスファルテンを溶解させ、現存スラッジレベルに影響を与えるであろう。
【0028】
HSP原油でのタンク清掃の頻度を上げると、タンク・スラッジレベル管理を最適化するであろう。HSP原油またはHSPブレンドを頻繁にそして計画ベースで使用すると、スラッジの堆積を防ぎ、かつ、タンクに負担をかけすぎるときに必要とされるコストのかかる清掃努力を減らすであろう。HSP原油を使用する年1回の、またはより好ましくは年2回の清掃手順は、タンクスラッジがコストのかかるレベルまで堆積しないようにし、貯蔵能力への影響を最小限にするであろう。これは、レベルが問題含みになったときにスラッジが対処される現在の慣行とは異なる。
【0029】
HSP原油でのタンク清掃はまた、選択的な溶剤抽出(SSE)法と組み合わせることができる。この方法は、参照により本明細書に援用される、2006年3月2日に公開された特許文献1に記載されている。この清掃方法は、以前の液体炭化水素内容物、即ち、タンク中に通常貯蔵されている製品のタンクを空にする工程を含み、それは半固体スラッジをタンク中に残す。熱い炭化水素溶剤が、ミキサーを十分にカバーするおよび/またはルーフを浮かせるためにタンクへ導入される。石油ベースの溶剤は固体スラッジ物質の有機部分に作用する。
【0030】
固体炭化水素のほとんどは、溶解の程度および速度を改善する、混合および加熱を用いてより迅速におよび完全に溶解させるであろう。熱が加えられない場合、より長い混合時間または繰り返し溶剤適用を利用することができる。かき混ぜ後に、炭化水素溶剤と溶解した物質とは、タンクからポンプ送液され、従来の製油所処理によって回収される。混合物は、接触分解またはコーキングなとの、固形分を典型的には取り扱う製油所プロセスによって処理される。
【0031】
水または水性溶剤が次に、これらのスラッジ中に存在することが知られている、塩化物、炭酸塩、酸化物などのような、無機塩を溶解させるためにタンクへ導入される。水または水性溶剤と溶解した無機物とはタンクからポンプ送液され、従来の製油所水処理施設によって処理される。この方法を、年1回または年2回など、計画ベースで用いると、タンクを実質的にスラッジなしに保つことができ、それは関連製油所運転を改善するであろう。
【0032】
本発明で、上記方法に従ったタンクスラッジ除去は、例えば、触媒スラリー、精製スラリー油(CSO)、または重質芳香族燃料油(HAFO)などの、流動接触分解スラリー油の形態での炭化水素溶剤製品を使用することによって最適化することができる。この溶剤は、接触分解油製品へ戻る最終スラリーと共に炭化水素溶剤工程の第2段階に使用される。この製品の使用はスラッジを除去し、製品品質に悪影響を及ぼさない。
【0033】
本方法によれば、炭化水素溶剤工程の第1段階は、液体炭化水素内容物がタンクから出され、そして熱い炭化水素溶剤がミキサーを十分にカバーするおよび/またはルーフを浮かせるためにタンクへ導入されて上記のものに似ている。この第1段階では混合は、スラッジ中の無機固形物のかき混ぜを回避するために全く用いられない。溶剤と溶解したスラッジ成分とは次に、別の原油タンクにポンプ送液して戻され、運転への影響がほとんどなく製油所設備によって正常に処理される。上に開示された方法では、混合物は、例えば、接触分解またはコーキングによる処理を必要とする固形分を含んだ。この場合、固形分は存在しないので、溶剤−スラッジ処理操作を計画する必要性、処理を待つ混合物を貯蔵する必要性は全くなく、キャパシティまたは汚染可能性の増加はほとんどない。
【0034】
第2段階は、より多くの炭化水素溶剤を導入し、そして混合物をかき混ぜることを含む溶剤工程に加えられる。溶解したアスファルテンおよびワックス並びに懸濁した無機固形物と共に炭化水素溶剤の残りはタンクからポンプ送液され、従来の製油所処理によって回収される。この第2段階は、無機固形物を本質的に含有するHSP溶剤物質である、異なる溶剤を使用する。上で述べたように、この溶剤製品は、触媒スラリー、CSO、およびHAFOなどの、流動接触分解スラリー油である。この種類の溶剤は無機固形物を本質的に含有するので、かき混ぜによって混合物中へかき混ぜ入れられる無機固形物は、混合物に悪影響を及ばさず、それは次に、全く特別な処理なしに製品システムへ戻すことができる。
【0035】
水または水性溶剤工程が次に成し遂げられる。混合および加熱は必要とされないが、溶解の程度および速度を向上させることができる。水または水性溶剤と溶解した無機物とはタンクからポンプ送液され、従来の製油所水処理施設によって処理される。
【0036】
上記の本方法から明らかなように、HSP原油およびHSP原油ブレンドは、タンク清掃および管理を強化する。しかしながら、多くの製油所は、HSPストリームおよび/または原油への即時アクセスを持たない。不十分なアクセスは、上記の様々な方法で運転を最適化する製油所の能力を制限し得る。本発明に従って、あるタンクが製油所または石油化学プラントの一部としてHSP原油貯蔵タンクに指定される。かかる指定は、アスファルテン沈殿を最小限にすることによるタンクヒール・ブレンドおよび管理;原油予熱系統交換器および加熱炉汚れを防ぐためにブレンドを改善することによる原油ブレンド;アスファルト、触媒スラリー、および全原油を含有するタンクからアスファルテン、ワックスおよび他の残渣を除去するための貯蔵タンクスラッジ清掃;脱アスファルト装置(DAU)のデボッギング(debogging);並びにオンラインおよびオフライン原油予熱系統熱交換器清掃などの製油所運転を最適化するであろう。
【0037】
指定HSP貯蔵タンクは好ましくは、最適化運転を適用できる装置に内容物を容易に輸送できるおよび/またはパイプライン送液できる場所に配置される。一試験では、おおよそ90容量%のHSP原油を含有する専用貯蔵タンクは、製油所で原油装置シャットダウンの前の最終段階で装置が浸されるようにそれが休止時間に向けて減速しながら予熱系統交換器にチャージされた。HSP原油タンクはまた、装置の最終フラッシュアウトのためにも使用された。予熱系統は、加熱炉が修理される間数日間浸されていた。濃縮されたHSP原油を浸漬の間ずっと使用する結果として予熱系統交換器のエネルギー効率は、平均して約15kBTU/bblだけ改善された。この低下の1/3のみがHSP原油洗浄のためであった場合を推定すると、$4.61/MBTUで約$750,000/年の節約が実現されるであろう。エネルギー便益に加えて、原油装置脱塩装置入口温度は、前年を超える最高観察レベルまで改善された。同様に、その年の早期の記録原油ラン中より低い加熱炉火入れ強度が体験された。これらの便益は、装置がより多量の原油を、より大きい効率で処理することを可能にする。これらの発明に従ってセットアップされた製油所プロセスはより高い効率および費用有効性を体験するであろうと理解することができる。
【0038】
原油およびブレンドの相対的な汚染可能性を評価するために、商業的に入手可能なアルコル熱液体プロセスシミュレーター(Alcor Hot Liquid Process Simulator)(HPLS)が本発明者らによって用いられる。アルコル・ランは、1リットル溜めに原油またはブレンドを装入し、液体を150℃(302°F)まで加熱し、それを3.0mL/分の流量で垂直に配置された炭素鋼棒を横切ってポンプ送液することによって実施される。使用済み油はアルコル溜めのトップセクションに集められ、それは封止されたピストンによって未処理油から分離され、それによってワンススルー運転を可能にする。システムは、ガスが試験の間ずっと油に溶解したままであることを確実にするために各試験ラン前に窒素で400〜500psigに加圧される。棒は、プリセット温度に電気加熱され、ランの初めから終わりまで一定に保持される。試験のための棒表面温度は370℃(698°F)である。熱電対読みがバルク流体入口および出口温度について並びに棒の表面について記録される。加熱面熱電対は棒の内部に配置される。
【0039】
汚れ試験中に、アスファルテンが加熱面上に沈着し、試験棒の表面上に堆積する、コークスに熱分解される。コークス沈着は、それを通り過ぎる油を加熱する加熱面の効率および/または能力を低下させる断熱効果をもたらす。温度の生じた低下は、出口液体デルタ(Delta)Tと言われ、原油/ブレンドの種類、試験条件および他の影響に依存する。これらのランのための試験時間は180分である。試験は、ランの開始前に溜め内での30分の撹拌および予熱を許す。出口液体温度の全低下によって測定されるような、全汚れは「デルタT180」と言われる。アルコル・システムについての流動様式が層流であり、それ故実地体験との正相間は困難であることが指摘されるべきである。しかしながら、装置は、原油とブレンドとの間の相対的な汚染可能性の差を評価するのに有効であることが分かった。
【0040】
アルコル装置標準汚れ試験パラメータは次の通りである:
流量/種類: 3.0mL/分/ワンススルー運転
冶金: 炭素鋼(1018)ヒーター棒
システム圧力: 400〜500psi
棒表面温度: 370℃(698°F)または400℃(752°F)
システム温度設定(溜め、ポンプ、ライン):150℃(302°F)
実際のバルク流体入口温度:105〜120℃(221〜248°F)
【実施例】
【0041】
実施例1
2つの原油の非相溶性ブレンド(ブレンドA)を調製した。ブレンドAについてのSBNおよびI値は、それぞれ、30および38であった。これは、0.81のSBN/I比を表し、加熱面上へ沈着し、そして熱分解して汚染物を形成し得る沈澱したアスファルテンを有する「高汚染」原油ブレンドであると考えられる。上の手順に従ったアルコル装置でのブレンドAの試験は、−92℃のデルタT180をもたらした。言い換えれば、液体出口温度は、棒表面上へのコークスの堆積の結果として92℃だけ低下した。
【0042】
次に、158のSBNのHSP原油を増加する容量比でブレンドAと混合した。HSP原油はゼロのデルタT180を有したか、またはアルコル条件下で実質的に非汚染原油である。ブレンドA/HSP原油ブレンドのそれぞれを、デルタT180の変化を測定するためにアルコル装置で試験した。ランのそれぞれからの最終デルタT180データを、加えられたHSP原油の量の関数として図1にプロットする。プロットは、HSP原油の濃度が増加するにつれて、相対的な汚れが著しくより低いデルタT180値に低下することを示す。50容量%より多いHSPが存在すると、汚染可能性は実質的に非汚染レベルに低下した。これらの結果は、HSP原油の添加がアスファルテン含有原油およびブレンドの汚染可能性の低下に著しい影響を及ぼすことを実証する。
【0043】
実施例2
実施例1に記載された同じ高い汚染原油ブレンドAをまた、異なるSBNレベルの他のHSP原油と50容量%で混合し、アルコル装置で試験した。結果を図2にまとめる。この曲線は、等容量の増加するSBN原油が存在するときに基本ケースからの汚れの減少を示す。棒は、各試験のために使用された個々のHSP原油のそれぞれについての実際のSBN値を示す。これらの結果は、より高いSBNのHSPストリームが汚れの相対的な程度に有益な影響を及ぼすことを示す。
【0044】
実施例3
標準汚染ランは、基本ケースデータを得るために370℃(698°F)棒表面温度を用いて行った。棒をこの温度に加熱するのに15分を要した。同じ汚染ランを繰り返し、汚れた棒をフォローアップ清掃試験のために適所に保った。第1に、112のSBNのHSP全原油をあらかじめ汚した棒の一面にランさせた。第2に、貧溶媒全原油(SBN=40)を比較のためにランさせた。原油の両方とも、用いた条件下では非汚染原油である。図3は両試験ランの結果を示す。液体を加熱するアルコル棒の結果として得られた出口温度をプロットする。両方の基本ケース試験とも、原油が最高270〜277℃(518〜531°F)まで線形速度で加熱されることを示す。HSP清掃試験は、汚染物が最初は棒上に存在したけれども、原油が261℃(502°F)、または基本ケース270℃の97%まで加熱されたことを示す。かかる汚染物は普通は加熱効果を排除し、それによって液体を加熱する表面の効率を低下させる。HSP清掃ランからのデータを検討すると、出口温度の勾配が5分後に、または100℃に達した後に有意に増大することを示す。これは、汚染物沈着の物理的除去、それによって棒表面のより多くを露出させ、そして熱が液体に移動することを可能にすることに起因する。
【0045】
低いSBN原油での第2清掃試験は、勾配が増大せず、そして232℃(450°F)の最高温度が達成されたにすぎなかったことを示す。これは、前に形成した汚染物沈着の非除去か、または汚染物沈着の存在による伝熱の非能率性に起因する。図3の差し込み図棒グラフは、高いおよび低いSBN全原油間の出口温度の差を示す。5分後に、これらの間の差は8℃にすぎないが、ヒートアップ時間の10および15分後に出口温度の差は、それぞれ、26および29℃ある。これは、ヒーター棒上に残っている沈着物の量の差を反映している。この場合には、最適清掃時間またはフラッシュ時間は約5〜20分、好ましくは5〜15分である。
【0046】
図4〜6は、選択的な溶剤汚染物除去の追加の証拠を例示する。これらの図に示される結果は、棒上の汚染物沈着の物理的形状の検討を可能にする分析技法である、プロフィロメトリーを用いる試験によって得られた、図4は、全原油汚染ラン後の基本ケース棒についてのプロフィールを示す。図5は、高いSBN(SBN=112)原油清掃ラン後の基本ケース棒についてのプロフィールを示す。より低いプロフィールを有する丸く囲んだ部分は、アルコル棒沈着の清浄化部分を示す。図6は、低いSBN(SBN=40)原油清掃ラン後の基本ケース棒についてのプロフィールを示す。図6は、図4に示されるプロフィールと比較して効果が全くないことを示す。これらの結果は、HSP全原油のみが汚染物沈着を除去し、そしてシステムの伝熱効率を向上させることができたアルコル試験から得られた結果を裏付ける。
【0047】
このように、本発明者らは、HSP原油がアスファルテン沈殿物を溶解させる能力を有し、タンクを清掃するおよび貯蔵容器中のスラッジレベルを管理するための有効な方法を提供することを示してきた。HSP油のストリームをタンクに供給すると、スラッジを一掃し、非相溶性ブレンドをタンクヒールで是正し、定期的に使用されたときに低いまたは最低限のスラッジレベルを維持し、そして他の清掃手順を最適化することができる。製油所システムにおいてHSP油へのアクセスを提供すると、これらの有益な油の使用を最大限にし、精製システムでの効率を上げる。かなりの労働、時間の節約、およびコストの削減が実現されるであろうと理解することができる。
【0048】
本発明が石油製品で使用するための任意の貯蔵施設に適用できることは当業者によって理解されるであろう。
【0049】
様々な修正が本明細書に記載されたような本発明において行われ得、デバイスおよび方法の多くの異なる実施形態は、特許請求の範囲に規定されるような本発明の趣旨および範囲内にとどまりながら、かかる趣旨および範囲から逸脱することなく作られ得る。添付の明細書に含まれる全ての事柄はあくまでも例示的なものであり、限定することを意味するものではないと解釈されるものとすることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100より大きい溶解ブレンド数(SBN)を有する、高溶解力(HSP)原油を含む原油のストリームを提供する工程;および
貯蔵タンク中のアスファルテンに富むスラッジを溶解させるために、原油を貯蔵するための前記貯蔵タンクによってストリームを処理する工程
を含むことを特徴とする原油貯蔵タンクからのスラッジの清掃方法。
【請求項2】
前記ストリームを処理する工程が、沈澱したアスファルテンを有する貯蔵タンク中に存在する2つ以上の非相溶性原油のブレンドに前記ストリームを加えることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストリームを提供する工程が、計画ベースで行われることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
タンクによってHSPストリームを処理する前記工程の前に、
前記スラッジの油溶性有機成分を油溶剤に溶解させるために前記スラッジを熱油溶剤と接触させる工程;
溶解した油溶性有機成分と共に油溶剤をタンクから取り出す工程;および
を更に含む請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、
タンクによってHSPストリームを処理する前記工程が、前記タンク中に残るスラッジを攪拌し、次いで溶解したアスファルテン、ワックスおよび懸濁した無機固形物と共にHSP油をタンクから取り出すことを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記HSPストリームが、無機固形物をその中に有する流動接触分解スラリー油を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
スラッジ中の無機物を溶解させるために水または水性溶剤をタンクに加える工程;および
水または水性溶剤および溶解した無機物を、処理するためにタンクから取り出す工程
を更に含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記HSP原油が、少なくとも50容量%のHSPとのブレンドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記HSP原油が、110より大きいSBNを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記HSP原油が、150より大きいSBNを有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
原油の前記ストリームが、未処理原油または石油から誘導された処理油であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記HSP油が、指定貯蔵容器から提供されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
貯蔵タンク中のアスファルテンに富むスラッジを溶解させるために、100より大きい溶解ブレンド数(SBN)を有する、高溶解力(HSP)原油を含む原油を原油貯蔵タンクに加える工程;
貯蔵タンクからのHSP原油を精製プロセスに使用する工程;および
低下したスラッジレベルを貯蔵タンク中で維持するために計画ベースでHSP原油を加える工程を繰り返す工程
含むことを特徴とする精製施設での原油貯蔵タンクの保守方法。
【請求項13】
前記HSP原油が、2つ以上の非相溶性原油のブレンドを含むタンクヒールに加えられることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項14】
前記計画ベースが、少なくとも年1回であることを特徴とする請求項3〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記計画ベースが、少なくとも年2回であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記HSP原油が、精製施設の一部を成す指定貯蔵タンクから加えられることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
原油貯蔵タンク;
原油を処理するための熱交換設備を含む原油処理アセンブリ;および
原油が前記貯蔵タンクから前記処理アセンブリへ供給されるように前記原油貯蔵タンクを前記原油処理アセンブリと接続する輸送システム
を含む製油所システムであって、
前記原油貯蔵タンクの少なくとも1つが、少なくとも100の溶解ブレンド数(SBN)を有する高溶解力(HSP)原油を貯蔵するための指定タンクを含むことを特徴とする製油所システム。
【請求項18】
前記輸送システムが、HSP原油を貯蔵するための前記指定タンクを他の原油貯蔵タンクに選択的に接続し、かつ、HSP原油を貯蔵するための前記指定タンクを前記原油処理アセンブリに選択的に接続することを特徴とする請求項17に記載の製油所システム。
【請求項19】
前記輸送システムが、所定の計画に基づいてHSP原油を貯蔵するための前記指定タンクを接続することを特徴とする請求項17に記載の製油所システム。
【請求項20】
前記輸送システムが、パイプラインであることを特徴とする請求項17に記載の製油所システム。
【請求項21】
混合または攪拌なしにスラッジの油溶性有機成分を油溶剤に溶解させるためにスラッジを熱油溶剤と接触させる工程;
前記溶解した油溶性有機成分と共に前記油溶剤を、処理するために前記タンクから取り出す工程;
スラッジと接触させるためにHSP溶剤物質である追加の炭化水素溶剤を導入し、混合物を攪拌する工程;
HSP溶剤物質を、処理するために取り出す工程;
スラッジ中の無機物を溶解させるために、水または水性溶剤を前記タンクに加える工程;および
水または水性溶剤および溶解した無機物を、処理するために前記タンクから取り出す工程
を含むことを特徴とする原油貯蔵タンクからのスラッジの清掃方法。
【請求項22】
前記HSP溶剤物質を取り出す工程が、前記タンクからの溶解したアスファルテン、ワックスおよび懸濁した無機固形物を取り出すことを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記HSP溶剤物質が、無機固形物をその中に有する流動接触分解スラリー油を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
スラッジを熱油溶剤と接触させる工程の前に、液体炭化水素内容物の前記タンクを空にして処理するためにスラッジを前記タンク中に残す工程を更に含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項25】
定期的な所定の計画で実施されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記HSP溶剤物質が、指定HSP原油貯蔵容器から直接ストリームとして提供されることを特徴とする請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−501333(P2010−501333A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525602(P2009−525602)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/018444
【国際公開番号】WO2008/024324
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】