原稿画像読取装置、画像形成装置、原稿画像読取方法、プログラム及び記録媒体
【課題】 搬送原稿位置に応じて変動する原稿による負荷を受けることで生じる原稿の搬送速度の変化による読取精度の劣化を低減すること。
【解決手段】 原稿が原稿テーブルからはみ出し、垂れ下がった状態になった原稿後端、先端側の部分による負荷変動により定速搬送が阻害される状態になるときの搬送原稿位置(速度変更位置)に対応する駆動制御値(速度変更量)の対応関係を表した「原稿位置−制御値対応テーブル」(図4)を用いて、負荷変動による搬送速度変化を打ち消す速度変更条件で原稿を搬送するモータの駆動制御を行う。この制御により原稿搬送速度は一定になり、先行技術において読取画像に生じた読取精度の劣化(伸び、縮み)を低減することができる。
【解決手段】 原稿が原稿テーブルからはみ出し、垂れ下がった状態になった原稿後端、先端側の部分による負荷変動により定速搬送が阻害される状態になるときの搬送原稿位置(速度変更位置)に対応する駆動制御値(速度変更量)の対応関係を表した「原稿位置−制御値対応テーブル」(図4)を用いて、負荷変動による搬送速度変化を打ち消す速度変更条件で原稿を搬送するモータの駆動制御を行う。この制御により原稿搬送速度は一定になり、先行技術において読取画像に生じた読取精度の劣化(伸び、縮み)を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ある種の広幅原稿画像読取装置のように、原稿全面を原稿台等に載せて支持した状態で読取動作ができない、大形の原稿を読取る原稿画像読取装置に関し、より詳しくは、大形の原稿を搬送しながら読取る際、搬送原稿位置に応じて変化する負荷による読取りへの影響を低減する機能を有した原稿画像読取装置、原稿画像読取方法、当該原稿画像読取装置を搭載した画像形成装置、前記機能を実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大型の原稿を読取る原稿画像読取装置として、原稿を搬送しながら固定のCIS(密着イメージセンサ)で原稿面を読取る方式を採用した広幅原稿画像読取装置といわれるものが知られている。
このような広幅原稿画像読取装置では、文書に広く用いられている定形サイズ(例えば、A4,B5等)の原稿に対して通常用意される原稿トレイのように、原稿全面を安定して載せ、支えるトレイや台が存在せず、原稿搬送入り口に原稿を差し入れて、原稿の大部分がそこから垂れ下がった状態で、読み取りを開始する構成が一般的である。また、原稿を排出する側においても、排出された原稿を安定して載せ、支えるトレイや台が存在せず、排出された原稿は排紙部から垂れ下がり、最終的には下部にあるボックスに収まるという機構を用いている。
【0003】
このような機構を有する従来の広幅原稿画像読取装置では、原稿が搬送入り口から垂れ下がった状態では、原稿の重みで、搬送を阻害する方向に力が働き、搬送速度が減少してしまい、そのため読み取り画像が伸びてしまい、また、原稿が排紙部から垂れ下がった状態では、原稿の重みで、搬送を促進する方向に力が働き、搬送速度が増加してしまい、そのため読み取り画像が縮んでしまうという問題があった(後記図2、図3の説明、参照)。
【0004】
ところで、原稿面の二次元読取において、原稿搬送を一方の走査(副走査)として読取る方式では、搬送速度の変化が読取精度を劣化させるので、搬送速度の変化による影響を低減することが従来から提案されており、例えば、特許文献1(特開2006−245927号公報)を示すことができる。
特許文献1には、搬送手段の構成部品のばらつきにより生じる搬送速度の変化による影響を打ち消す手段を備えることが記載されている。
【0005】
しかし、上述の広幅原稿画像読取装置における原稿の重みによるように、搬送する原稿による負荷として、搬送原稿位置に応じて変動する負荷を受けることにより生じる原稿の搬送速度の変化に対応して、読取精度の劣化を低減することは、例示した特許文献1にも示すところがなく、従来技術における未解決の課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、原稿画像読取装置において、搬送する原稿による負荷として、搬送原稿位置に応じて変動する負荷を受けることで生じる原稿の搬送速度の変化による読取精度の劣化を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、搬送原稿位置に応じて原稿による負荷が変化する原稿搬送手段で原稿を搬送し、搬送しながら原稿面の画像を走査方式で読み取る原稿画像読取装置であって、前記原稿搬送手段は、駆動が制御可能であり、前記原稿搬送手段によって搬送される原稿の搬送原稿位置を検出する原稿位置検出手段と、前記搬送原稿位置と、前記搬送原稿位置において前記原稿搬送手段が受ける原稿による負荷変動の影響を打ち消す駆動制御値とを対応付けて記憶した制御値記憶手段と、原稿画像読取時に前記原稿位置検出手段によって搬送原稿位置を検出させ、検出された搬送原稿位置に対応する駆動制御値を前記制御値記憶手段から取得し、取得した駆動制御値により前記原稿搬送手段を制御する制御手段とを有する原稿画像読取装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送する原稿による負荷として、搬送原稿位置に応じて変動する負荷を受けることで生じる原稿の搬送速度の変化による読取精度の劣化を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る原稿画像読取装置の構成の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る原稿画像読取装置(図1)において、大サイズ原稿を読取対象とした場合の原稿読取開始時における原稿の状態を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る原稿画像読取装置(図1)において、大サイズ原稿を読取対象とした場合の原稿読取終了時における原稿の状態を説明する図である。
【図4】速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の一例を示すテーブルである。
【図5】速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の他の例を示すテーブルである。
【図6】図1に示した原稿画像読取装置に係る制御系の構成を示す概略図である。
【図7】本発明の実施形態に係る原稿画像読取装置における原稿画像読取の動作手順を示すフロー図である。
【図8】速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の他の例を示すテーブルである。
【図9】速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の補間演算を説明するグラフである。
【図10】異なる材質の原稿ごとの速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
以下に示す実施形態の原稿画像読取装置は、文書に広く用いられているサイズよりも大きいサイズの原稿を搬送手段によって搬送しながら読取るものである。
読取りは、原稿搬送を副走査とし、副走査方向に交わる主走査方向にラインイメージセンサの一種である広幅のCIS(密着イメージセンサ)を設け、主・副のラスタ走査によって原稿面を読取り、画素値を出力する。
【0011】
以下に示す大サイズ原稿の読取に適応し得る原稿画像読取装置は、広く使用されるA4,B5サイズの原稿を主にする画像読取装置に通常用意される原稿トレイのように、原稿全面を安定して載せ、支えるトレイや十分な大きさの原稿テーブルを持たない。
このため、原稿は原稿テーブルからはみ出し、垂れ下がるといった状態になり、また搬送にともなって状態の変化が生じる。
この状態の変化が搬送手段の作動に影響して、原稿画像の読取結果を劣化させる。そこで、読取精度を適正に保つために、状態変化による影響を低減する後記で詳述する搬送制御機能を備える。
【0012】
なお、以下に説明する原稿画像読取装置は、読取った原稿画像等を基に生成されるプリント出力用データを用いて記録用紙に作像を行う、複写機、複合機等の画像形成装置に搭載された形態で実施した例を示す。
ただ、独立したスキャナ装置のように原稿画像読取機能を単機能として備えた形態で実施してもよいし、画像形成装置以外の他の画像処理装置に搭載された形態で実施してもよい。
【0013】
[原稿画像読取装置の構成]
図1は、本発明の実施形態に係る原稿画像読取装置の構成の概要を示す図である。
図1において、図1全体は複写機、複合機等の画像形成装置であり、原稿画像読取装置11は、画像形成装置の上部に搭載されており、原稿画像読取装置11の下部に画像形成部19を有する。
画像形成部19は、作像部81、給紙部82よりなり、給紙部82から供給される記録用紙に作像部81によって画像を形成し、プリント出力を行う。なお、画像形成部19は、本発明の要旨とは直接関係がなく、既存の構成を採用するものであるから、説明を省略する。
【0014】
原稿画像読取装置11は、原稿1の搬送手段と搬送過程にある原稿1の画像読取手段を有する。
原稿1の搬送手段は、上流側搬送ローラ13とこれに圧接する上流側従動ローラ23、下流側搬送ローラ14とこれに圧接する下流側従動ローラ24、排紙ローラ15及びこれらローラの駆動用モータ(不図示)等を要素として構成する。上記駆動用モータは、後述する原稿による負荷の影響を打ち消す動作を含め、原稿面の読取において副走査に求められる条件で原稿を搬送するため、コントローラによって駆動が制御される。この搬送手段の制御に用いる原稿1を検知するセンサとして、原稿挿入センサ22及び原稿レジストセンサ18が搬送路上に設けられている。
また、原稿1の搬送手段への挿入側には原稿テーブル25を設けるとともに、搬送手段からの原稿排紙側には前方排紙用トレイ12と後方排紙用の案内26を設ける。
【0015】
原稿1の画像読取手段は、CIS読取部17、バックアップローラ16等を要素として構成する。CIS読取部17は、図示しないミラー、光源、結像レンズ、シェーディング板、CIS(密着イメージセンサ)等を備えており、搬送路上の原稿1の画像面に対し上方から光を照射し、その反射光をミラーおよび結像レンズを介してCISの主走査方向に並ぶ素子の受光面に結像し、受光量を電気信号に変換することで、主走査方向の画素列の出力値を得る。なお、読取精度は、原稿1の搬送速度を一定に保つとともに、CIS読取部17と原稿1との距離を一定に保つことが重要である。
【0016】
また、原稿画像読取装置11の上方には、操作部51を設ける。操作部51は、ユーザーインターフェースとして働き(図4、参照)、操作部51の操作パネルに備えた入力ボタン等をユーザーが操作することにより、原稿読取、複写、プリンタ等の機能を利用する際、機器の動作に係る各種設定の入力を行うとともに、表示部によって、機器側の状態(ステータス)を報知するとともに、ユーザーによる入力操作の案内をする。
【0017】
原稿画像読取装置11の原稿読取時の動作を説明すると、原稿1を原稿テーブル25に下向きにセットし、原稿入り口の上流側搬送ローラ13に突き当てると、原稿1が原稿挿入センサ22によって検知される。この検知信号をトリガとして、原稿入り口の上流側搬送ローラ13は駆動されて正転し、上流側従動ローラ23との間で原稿を挟み、内部に引き込む。
次いで、原稿1の先端が原稿レジストセンサ18によって検知されると、この検知信号をトリガとして、原稿入り口の上流側搬送ローラ13は停止される。
この後、操作部51にて、ユーザーが読み取り開始を指示する入力操作を行うと、原稿入り口の上流側搬送ローラ13は駆動されて正転し、原稿1がCIS読取部17を通過して、CISによって原稿画像が読取られる。
【0018】
CIS読取部17を経て送られる原稿1は、原稿1を搬送するために駆動されている下流側搬送ローラ14に至り、下流側従動ローラ24との間で原稿を挟み、上流側搬送ローラ13とともに、原稿1を外部に引き出す搬送を行う。
下流側のローラ対14,24により引き出される原稿1は、前方排紙用トレイ12への排紙と後方排紙用の案内26を経て行う排紙のいずれかの排紙方法が選択される。前方排紙用トレイ12を選択した場合、下流側のローラ対14,24の後に設けた分岐爪等を用いて排紙ローラ15を通す搬送路(図1中、矢印bにて示す)に切替え、前方排紙用トレイ12に送る。他方、後方排紙用の案内26を経て行う排紙の場合、前記分岐爪等を用いることなく、同一面に設けた後方排紙用の案内26に向けて矢印a方向に送る。
【0019】
〈原稿による負荷の変動〉
上記の原稿画像読取装置11において、原稿テーブル25は、原稿全面を安定して載せ、支えるに十分な大きさではないため、大サイズの原稿であった場合、原稿テーブル25からはみ出した状態になる。
図2は、本実施形態の原稿画像読取装置(図1)において、大サイズ原稿を読取対象とした場合の原稿読取開始時における原稿の状態を説明する図である。
大サイズの原稿1が読取対象となっている場合、図2に示すように、読取開始時には、原稿1の後端側の部分1rが原稿テーブル25からはみ出し、垂れ下がった状態となる。この状態では、原稿の搬送手段に掛かる負荷として、垂れ下がった後端側の部分1rの重みによって、原稿全面がテーブル等に載って安定して支えられている小サイズ原稿の場合に比べ、極めて大きくなる。
【0020】
よって、ほぼ安定して掛かる負荷を前提に搬送速度を一定に保つ制御を行う搬送動作が阻害され、原稿1の垂れ下がった後端側の部分1rによる負荷の増大により原稿の搬送速度が遅くなって、読取結果として画像が伸びてしまう。
また、上記の原稿による負荷は、原稿が搬送されるに連れて、原稿1の垂れ下がった後端側の部分1rの長さが減っていくため、画像の伸び具合は徐々に収まっていく、という変動を示す。
このように、原稿の原稿読取開始時に原稿による負荷が原稿搬送位置に応じて変動することによって、読取った画像が伸びる読取精度の劣化が生じる。
【0021】
また、上記の原稿画像読取装置11において、後方排紙用の案内26についても、原稿全面を安定して載せ、支える十分な大きさではないため、大サイズの原稿であった場合、後方排紙用の案内26からはみ出した状態になる。
図3は、本実施形態の原稿画像読取装置(図1)において、大サイズ原稿を読取対象とした場合の原稿読取終了時における原稿の状態を説明する図である。
大サイズの原稿1が読取対象となっている場合、図3に示すように、読取終了に近づいた時には、原稿1の先端側の部分1fが後方排紙用の案内26からはみ出し、垂れ下がった状態となる。この状態では、垂れ下がった先端側の部分1fの重みが、原稿搬送を促進するように働くようになることで、原稿の搬送手段に掛かる負荷が、原稿前面がテーブル等に載って安定して支えられている小サイズ原稿の場合に比べ、極めて小さくなる。
【0022】
よって、ほぼ安定して掛かる負荷を前提に搬送速度を一定に保つ制御を行う搬送動作が阻害され、原稿1の垂れ下がった先端側の部分1fによる負荷の減少により原稿の搬送速度が速くなって、読取結果として画像が縮んでしまう。
また、上記の原稿による負荷は、原稿が搬送されるに連れて、垂れ下がった先端側の部分1fの長さが増えていくため、画像の縮み具合は徐々に著しくなる、という変動を示す。
このように、原稿の原稿読取終了時に原稿による負荷が原稿搬送位置に応じて変動することによって、読取った画像が縮まる読取精度の劣化が生じる。
なお、原稿排紙側には、前方排紙用トレイ12に排紙する場合がある。この場合、後方排紙用の案内26におけるほど負荷の変動が大きくならないが、大きな変動が生じる仕様である場合には、同様の対処が可能である。ただ、以下では、後方排紙用の案内26側で生じる負荷の変動へ対処する形態を例に説明をする。
【0023】
[読取精度の劣化の低減]
上記〈原稿による負荷の変動〉で述べたように、大サイズ原稿を読取対象とした場合、原稿読取終了時において、先行技術におけると同様の搬送制御で対応すると、原稿搬送位置に応じて変動する原稿による負荷によって、搬送速度が変動してしまい、読取精度の劣化が生じる。
そこで、本実施形態では、原稿による負荷の変動の搬送速度への影響を予測し、負荷の影響を打ち消すよう搬送手段を動作させることによって、読取精度の劣化を低減する。
【0024】
この実施形態では、搬送される原稿が安定して支えられなくなる状態、即ち、原稿1が原稿テーブル25、後方排紙用の案内26からはみ出し、垂れ下がった状態になった原稿後端もしくは先端側の部分1r、1fによる負荷変動により定速搬送が阻害される状態になるとき、この負荷変動の影響を打ち消すよう原稿搬送手段の駆動を制御する。この制御を行うことで、読取精度の劣化を低減する。
読取精度の劣化を低減する上記駆動制御を実行するためには、搬送原稿位置に対応する駆動制御値を用意する必要がある。この搬送原稿位置と駆動制御値との対応関係は、所定の原稿を所定の原稿搬送手段に通紙する実験などを予め行うことにより、適正な動作が得られる関係を経験値として求める。
【0025】
また、求めた適正な動作が得られる搬送原稿位置と駆動制御値の対応関係を表す情報をテーブル(以下、「原稿位置−制御値対応テーブル」という)等の形で記憶手段に保存し、実行時に保存したこのテーブルを参照して、取得した制御値を搬送手段の駆動制御に用いる。
搬送手段の駆動制御の際、搬送原稿位置を検出し、検出された搬送原稿位置に基づいて「原稿位置−制御値対応テーブル」を参照して、制御値を取得する。
搬送原稿位置の検出手段は、例えば、原稿の搬送手段の上流側搬送ローラ13もしくは下流側搬送ローラ14の回転を検出する(当該ローラの駆動モータの回転を検出してもよい)等、既存の検出手段を採用することで実施し得る。
【0026】
また、「原稿位置−制御値対応テーブル」の制御値は、下記実施形態では、速度変更量(%)の形で表す。速度変更量は、原稿による負荷の変動の影響で、本来あるべき一定速度の原稿搬送速度が変化するときに、負荷変動の影響を打ち消すための量であり、本来あるべき一定速度からの変更量(%)で表す。
原稿搬送速度を変更する制御は、実際には、上流側搬送ローラ13もしくは下流側搬送ローラ14の駆動用モータ(以下「搬送モータ」という)の駆動を制御することによる。搬送モータとして、例えば、ステッピングモータを使用する場合、速度変更量(%)に応じて、駆動パルスの周波数を調整することにより実施し得る。
【0027】
ここで、読取精度の劣化の低減を図る上述の搬送手段の駆動制御について、その基本動作を、下記「実施形態1」及び「実施形態2」によって具体的に説明する。
「実施形態1」
本実施形態は、原稿後端もしくは先端側の部分1r、1fによる負荷変動により定速搬送が阻害される状態になるときの搬送原稿位置(以下「速度変更位置」という)を、搬送方向の原稿先端を基準(0)にして原稿後端までの距離(長さ)で表し、この位置との対応関係を表す「原稿位置−制御値対応テーブル」を用いて、搬送手段(搬送モータ)の駆動制御を行う。
【0028】
図4は、速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の対応関係を表した本実施形態に用いるテーブルである。同図のテーブルは、速度変更を必要とする速度変更位置である、原稿の先端側と後端側のそれぞれを3つの範囲に分け、速度変更量を設定する設計をとっている。
図4の「原稿位置−制御値対応テーブル」により搬送手段の駆動制御を行う場合の原稿搬送手段の動作を説明する。
搬送される原稿1は、原稿レジストセンサ18の検出位置で一旦停止した後、レジスト位置を基準に再び搬送され、この搬送過程でCIS読取部17によって原稿画像の読取が行われる。
【0029】
読取開始時から原稿1を200mm搬送するまでの間は、図4の「設定1」に該当し、搬送モータ回転速度を+0.3%変更する。例えば、本来の搬送モータ回転速度が80.00mm/sであれば、80.00×1.003=80.24mm/sとなる。
また、200mm〜400mmの間は、図4の「設定2」に該当し、速度を+0.2%変更する。上記と同じ速度条件であれば、80.00×1.002=80.16mm/sとなる。
また、400mm〜600mmの間は、上記と同様に計算でき、ここでは、速度変更量がさらに小さくなる「設定3」による。
「設定1」〜「設定3」は、原稿1の先端側の範囲に当たるので、速度変更量が+であり、本来の搬送モータ回転速度を速める制御値を設定する。
【0030】
「設定3」と「設定4」の間に該当する原稿位置においては、原稿による負荷の変動がなく、本来の搬送モータ回転速度で動作させる範囲であるため、速度変更が不要であるから、「原稿位置−制御値対応テーブル」にデータが用意されていない。
原稿1の後端側の始めの範囲である原稿位置が1400mm〜1600mmの間は、図4の「設定4」に該当し、速度を−0.1%変更する。この場合、上記と同じ速度条件であれば、80.00×0.999=79.92mm/sとなる。
また、「1600mm〜1800mm」、「1800mm〜2000mm」それぞれの間は、上記と同様に計算でき、ここでは、速度変更量が徐々に−方向に大きくなる「設定5」、「設定6」による。
「設定4」〜「設定6」は、原稿1の後端側の範囲に当たるので、速度変更量が−であり、本来の搬送モータ回転速度を遅くする制御値を設定する。
【0031】
なお、図4の「原稿位置−制御値対応テーブル」において、速度変更が必要な範囲や速度変更量として、デフォルトで与えられた値が、経時に生じる機器条件の変化等によって適正値からずれてしまう、といったことが生じ得る。
このような状況に対応し、適切な設定を可能とするために、「原稿位置−制御値対応テーブル」の速度変更位置と速度変更量を変更できるようにするとよい。
実施形態としては、操作部51からユーザーが入力できるようにする。つまり、実際に原稿画像読取装置11を使用して得られる読取結果に生じる画像の伸び縮みを確認しながら、最適な数値を設定できるようにする。この形態で実施する場合、操作部51の表示部に「原稿位置−制御値対応テーブル」のデータを変更するための入力操作用の画面を表示し、その画面に対するユーザーの入力操作により、画像の伸び縮みの確認結果が反映された最適な数値を設定する。
最適な数値とは、原稿による負荷の変動の影響を打ち消す搬送速度に制御値を変更することで、結果的に原稿搬送速度が本来あるべき一定速度、即ち、上記の例における80.00mm/s近くになるように制御する数値である。
【0032】
「実施形態2」
本実施形態は、原稿後端もしくは先端側の部分1r、1fによる負荷変動により定速搬送が阻害される状態になる速度変更位置を、原稿1の先端側の範囲に対しては原稿先端を基準(0)にして原稿後端に向く方向の距離(長さ)で表し、他方、原稿1の後端側の範囲に対しては原稿後端を基準(0)にして原稿先端に向く方向の距離(長さ)で表し、これらの位置との対応関係を表す「原稿位置−制御値対応テーブル」を用いて、搬送手段(搬送モータ)の駆動制御を行う。
【0033】
図5は、速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の対応関係を表した本実施形態に用いるテーブルである。同図(A)のテーブルは、先端側の範囲に対し、同図(B)のテーブルは、後端側の範囲に適用する。なお、同図のテーブルは、上記「実施形態1」によって設定される3レベルの速度変更量(図4、参照)と同じである。
ただ、本実施形態の図5では、(A)、(B)の各テーブルは、上記のように、速度変更位置(mm)を表す距離(長さ)の基準(0)を原稿の先端、後端にそれぞれとっているので、3レベルの速度変更量に対応する速度変更位置の範囲は、「0〜200」、「200〜400」、「400〜600」と同じである。つまり、原稿1の先端側と後端側において負荷変動が生じる範囲が同じであり、変動量も、変動の生じる方向が逆であるが、同じである。なお、特殊な原稿ではない限り、多くの原稿は、このような対応で負荷変動の影響を打ち消す駆動制御を行うことになる。
【0034】
よって、図5のテーブルを用いると、原稿先端側と後端側の負荷変動が生じる範囲が同じであり、方向は逆であるが、変動量も同じである、という条件が満たされれば、原稿長が変わっても同じ設定を使用できる。なお、原稿長が大きく違うと、速度変更量も違ってくるので、原稿長が変わっても同じ設定を使用できる原稿長には限界が存在する。ただ、この場合にも、速度変更範囲は変えることなく共通にして、速度変更量だけを変えることで対応してもよく、このようにすることで、処理負担を軽減できる。
【0035】
ただし、図5のテーブルを使用して駆動制御を行う際には、レジスト位置基準でそこからの搬送位置を特定しなければならない。原稿先端側は、図5(A)のテーブルにおける速度変更位置(mm)が原稿の先端、即ち、レジスト位置基準で表された位置であるから、そのまま駆動制御に適用できる。他方、原稿後端側は、図5(B)のテーブルにおける速度変更位置(mm)が原稿の後端基準であり、レジスト位置基準で表された位置ではないので、そのまま駆動制御に適用できない。
駆動制御に適用できる速度変更位置(mm)にするためには、原稿長を知り、逆算する処理が必要になる。つまり、原稿長から図5(B)のテーブルにおける速度変更位置(mm)を逆算する(−する)ことで、駆動制御に適用できる数値になる。
【0036】
上述の逆算処理は、原稿長が変わるたびに、原稿読取開始前に、読取対象の原稿の原稿長の入力を行い、入力された原稿長と図5(B)の「原稿位置−制御値対応テーブル」に基づいて駆動制御に適用できる速度変更位置(mm)を求め、求めた数値を制御値として設定しなければならない。
例えば、原稿長が1800mmの場合、図5(B)のテーブルの「設定4」、「設定5」、「設定6」に対し、逆算処理をしてレジスト位置基準で表した後の速度変更位置(mm)に対する速度変更量(%)は、それぞれ
速度変更位置(mm)1200〜1400mm→速度変更量(%)−0.1%(設定6)
速度変更位置(mm)1400〜1600mm→速度変更量(%)−0.2%(設定5)
速度変更位置(mm)1600〜1800mm→速度変更量(%)−0.3%(設定4)
となる。
この逆算処理をすることで、レジスト位置基準で表した後の速度変更位置(mm)に対する速度変更量(%)により搬送手段の駆動制御を行うときの原稿搬送手段の動作は、上記「実施形態1」におけると同様であり、先の説明を参照することとして、ここでは、記載を省略する。
【0037】
ところで、駆動制御に適用できる速度変更位置(mm)を求めるためには、読取対象の原稿の原稿長の入力が必要である。この入力を行う方法としては、二つの方法が採用できる。
一つは、読取対象の原稿のサイズを測定することにより原稿長の入力を行う。ここでは、原稿画像読取装置11自身のCIS読取部17で原稿を読取らせる方法である。つまり、先に説明した読取時の動作と同様に、原稿を搬送手段で送りながらCIS読取部17で原稿面を読取って(以下、「予備読取動作」という)、画像信号として検出する。
このときの検出信号には、原稿のエッジ部分で変化する反射光量による信号の変化が現われるので、検出信号に対する閾値処理により原稿端部を判断し、両端間の搬送距離を紙の長さとして検出する。
上記予備読取動作を行う場合、通常の原稿読取とは違う原稿長測定モードとして、この動作モードを用意し、原稿を通紙して測定される原稿長データを管理する機能を備える必要がある。
【0038】
もう一つは、測定手段を用いて測るまでもなく、ユーザーが原稿サイズを既に知っている場合があり、この場合には、ユーザーインターフェースとして機能する操作部51からユーザーの操作によって原稿長を入力する方法を採用することができる。
ところで、上記二つの方法による原稿長の入力機能の両方を備えると、機器の利用性を高めることができる。
二つの方法による原稿長の入力機能の両方を備える場合、機器側は、ユーザーに対し操作部51の画面でこれらの機能の存在を知らせ、どちらの入力動作モードを選択して原稿長の入力を行うかを指示できる画面を表示して、ユーザーに設定操作を促す。この後、ユーザーの操作で指示された入力動作モードの設定に切替え、設定に従う動作モードの制御で対応する。
【0039】
[制御系の構成]
ここで、原稿読取の際、読取精度の劣化を低減する上述の原稿搬送制御動作を行う制御系を中心にしたデータ(信号)処理系の構成について、概要を説明する。
図6は、図1に示した原稿画像読取装置11に係る制御系の構成を示す概略図である。
原稿画像読取装置11の制御系は、図6に示すように、システム制御部としての主制御部100の制御下に、原稿画像読取装置11内の各動作部を制御するコントローラ111を有する。
主制御部100は、画像形成装置(図1、参照)全体を制御するので、原稿画像読取装置11のコントローラ111のほか、記録用紙にプリント出力を行う作像部81、給紙部82、操作部51を制御する。
【0040】
コントローラ111は、図1を参照して上記で説明した原稿1の搬送手段及び画像読取手段を制御する。
具体的には、原稿1の搬送手段に係る原稿レジストセンサ18や、原稿挿入センサ22等の各種センサ117の検知信号の入力を受け、CIS読取部17、原稿搬送モータ(原稿搬送用のローラを駆動するモータ)115を制御下に置く。
また、コントローラ111は、CIS読取部17で読取った画像データに対し補正処理等を施し正規化し、画像形成装置等で用いるのに適した画像データとして主制御部100にデータ出力をする。このほか、コントローラ111は、上記「実施形態2」で述べた予備読取動作による原稿長測定、即ち、原稿長の測定をCIS読取部17の出力と、搬送原稿(副走査)位置の検出により行う機能を持つ。
【0041】
コントローラ111は、コンピュータをハードウェアとして構成することができる。
コントローラ111を構成するコンピュータは、ソフトウェアプログラムの命令を実行するためのCPU(Central Processing Unit)と、CPUによって使用される制御プログラム、制御用データ等を格納するROM(Read Only Memory)と、前記制御プログラムによって生成される各種データなどを一時的に保存するメモリ或いはソフトウェアプログラムの動作に必要なデータを保存するワークメモリとして利用するRAM(Random Access Memory)と、機器に依存する処理条件等の設定データなどを保存しておく不揮発性メモリであるNV−RAM(Non Volatile RAM)を構成要素として有する。
本実施形態の原稿画像読取装置11における読取精度の劣化を低減する原稿搬送制御に係る動作は、この動作を実行するための手順(図7、参照)を記述した制御プログラムを上記コンピュータにより駆動することにより実施することができる。
【0042】
[原稿画像読取の動作手順]
コントローラ111が行う原稿画像読取の動作手順について説明する。
本実施形態の原稿画像読取装置11における原稿画像読取の基本動作手順として、読取精度の劣化を低減する上記「実施形態2」の原稿搬送制御を伴う動作を例に、以下に、その手順を動作フローに基づいて説明する。
図7は、本実施形態における原稿画像読取の動作手順を示すフロー図である。
コントローラ111は、原稿の読取を要求するユーザーの操作として、例えば、原稿テーブル25に読取対象原稿を載せ、原稿入り口の上流側搬送ローラ13に原稿先端を突き当て、原稿挿入センサ22によって原稿が検知されたとき、図7の動作フローを起動する。
【0043】
図7の動作フローが起動されると、先ず、予備読取動作を行わせ、原稿長の測定を行う(ステップS101)。
この測定動作は、後段の原稿画像の読取時の動作と同様に、原稿を搬送手段で送りながらCIS読取部17で原稿を読取らせる。CIS読取部17で原稿を読取り、検出信号を基に原稿長を測定し(上記「実施形態2」の説明、参照)、測定結果を後段の原稿画像読取で用いるために管理する。なお、原稿長の測定を行うときに、実行する読取が原稿長を測定するための動作であること、並びに後段の原稿画像読取時に原稿の再セットが必要であることをユーザーに操作部51を通して知らせる。
また、原稿長の入力を操作部51からのユーザー操作によっても行う(上記「実施形態2」の説明、参照)ことができるようにした場合、このステップの始めに、入力動作モードの選択画面を操作部51で表示し、表示された選択画面に対応するユーザーの入力操作によって指示されたモードの動作を行う。このとき、原稿長の入力が、操作部51からのユーザー操作によって行われた場合、直ぐに後段の原稿画像読取を実行することができる。
【0044】
ステップS101で原稿長の測定を行った後、原稿再セット、即ち、再び原稿テーブル25に読取対象原稿を載せ、原稿入り口の上流側搬送ローラ13に原稿先端を突き当てる操作がユーザーによって行われたことを、原稿挿入センサ22によって確認する(ステップS102)。
ステップS102における原稿の再セットの確認を経て、次に、実際に原稿面の画像を読取る原稿画像読取を行う(ステップS103)。
【0045】
ステップS103で行う原稿画像読取は、上記「実施形態2」で説明したように、原稿1の負荷変動の影響を打ち消す駆動制御によって原稿を搬送しながらCIS読取部17で原稿面の画像読取が行われる。即ち、図5の「原稿位置−制御値対応テーブル」に基づいて負荷変動の生じる原稿1の先端部、後端部それぞれの読取時の駆動制御に用いる速度変更量(%)を求め、求めた値を設定して意図した制御動作を行う。なお、ステップS101で取得した原稿長は、負荷変動の生じる原稿1の後端部に適用する、図5(B)の「原稿位置−制御値対応テーブル」を用いる場合に速度変更位置(mm)を逆算するときに必要となり、この点については、上記「実施形態2」で述べたとおりである。
ステップS103の動作が完了したところで、この動作フローを終了する。
【0046】
なお、図7の動作フローは、「実施形態2」の原稿搬送制御を伴う原稿画像読取動作を例に示したので、ステップS101の原稿長測定とステップS102の原稿再セットを必要とするが、「実施形態1」の原稿搬送制御を伴う原稿画像読取動作の場合、ステップS101の原稿長測定とステップS102の原稿再セットは不要である。
なお、「実施形態1」に係る動作の場合、ステップS103に相当する原稿画像読取動作は、上記「実施形態1」で説明した動作を実行する。
【0047】
次に、読取精度の劣化の低減を図る搬送手段の駆動制御の他の実施形態について、下記「実施形態3」及び「実施形態4」にて説明する。
「実施形態3」
本実施形態は、原稿1の負荷変動の影響を打ち消す原稿搬送手段の駆動制御を「原稿位置−制御値対応テーブル」を参照し、取得した制御値(速度変更量%)を設定して行う手法を用いる点で基本的に上記「実施形態1」、「実施形態2」と同じである。
【0048】
ただ、上記「実施形態1」、「実施形態2」の「原稿位置−制御値対応テーブル」は、原稿による負荷変動が生じる範囲内の全域に亘って、所定間隔だけ離れた複数の離散値(「設定1」〜「設定6」の6値)で表している。この方法で精度を高めるためには、離散値の間隔を小さくすることにより実現できるが、データ量が膨大になる。
そこで、本実施形態では、離散値間の中間値を補間演算する手段を備えることで、「原稿位置−制御値対応テーブル」を構成する離散値の数を少なくしてデータ量を小さくする。
【0049】
図8は、速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の本実施形態の例を示すテーブルである。同図(A)のテーブルは、先端側の範囲に対し、同図(B)のテーブルは、後端側の範囲に適用する。
同図(A)、(B)の各テーブルは、「設定1:0〜200(mm)」「設定2:600〜800(mm)」、「設定3:0〜200(mm)」「設定4:600〜800(mm)」の各2速度変更位置に対応して2レベルの速度変更量が対応付けられている。つまり、「原稿位置−制御値対応テーブル」には、原稿による負荷変動が生じる範囲である0〜800(mm)内における2点の設定しか登録していない。よって、最小限のデータ量となる。
【0050】
図9は、速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の補間演算を説明するグラフである。同図の横軸は速度変更開始位置をとり、縦軸は、速度変更量をとっている。
図9のグラフに、先端側の図8(A)のテーブルの設定を表すと、グラフ中に示すように点「設定1」と点「設定2」の2点となる。なお、図示の点は、図8に示される「設定1:0〜200(mm)」「設定2:600〜800(mm)」それぞれの最小値、即ち、速度変更開始位置をとっている。
原稿による負荷変動が生じる範囲は、この2点の速度変更開始位置の範囲であるから、2点の中間値を補間する。ここでは、一次式で補間演算をするので、点「設定1」と点「設定2」の2点間が直線で結ばれている。この直線上に求める速度変更開始位置に対応する速度変更量(駆動制御値)が存在する。
【0051】
例えば、図8(A)のテーブルの設定の場合、
速度変更開始位置(X):0の時、変更量(Y):+0.4
速度変更開始位置(X):600の時、変更量(Y):+0.1
であり、
この2点が、下記式(1)で表す一次式の直線上の点である。
Y=aX+b・・・式(1)
とみなして、式(1)中のa,bを求めると、図9のグラフの点「設定1」と点「設定2」の2点間を結ぶ直線は、下記式(2)で表すことができる。
Y=(0.1−0.4)/(600−0)X+0.4
=−X/2000+0.4・・・式(2)
【0052】
上記式(2)に基づいて、
速度変更位置200〜400(mm)の時、速度変更開始位置は200(mm)なので、変更量は+0.3(%)
速度変更位置400〜600(mm)の時、速度変更開始位置は400(mm)なので、変更量は+0.2(%)
と算出される。
【0053】
後端側の図8(B)のテーブルの設定についても、同様に計算すると、
Y=X/2000−0.4・・・式(3)
が得られる。
上記式(3)に基づいて、
速度変更位置200〜400(mm)の時、速度変更開始位置は200(mm)なので、変更量は−0.3(%)
速度変更位置400〜600(mm)の時、速度変更開始位置は400(mm)なので、変更量は−0.2(%)
と算出される。
【0054】
上記のように、本実施形態によると、離散値間の中間値を補間演算する手段を備えることで、「原稿位置−制御値対応テーブル」のデータ量を小さくし、記憶手段の容量を小さくでき、又テーブルデータを入力する手間も少なくすることができる。
【0055】
「実施形態4」
本実施形態は、原稿1の負荷変動の影響を打ち消す原稿搬送手段の駆動制御を「原稿位置−制御値対応テーブル」を参照し、取得した制御値(速度変更量%)を設定して行う手法を用いる点で基本的に上記「実施形態1」、「実施形態2」と同じである。
ただ、上記「実施形態1」、「実施形態2」では、「原稿位置−制御値対応テーブル」は一つで、読取対象原稿の違いは考慮していない。例えば、原稿の材質の違いによって、比重が変わる。この変化によって、原稿による負荷が生じる範囲や大きさが変わってきても、対応することができず、誤差が生じることになり適切な制御が行えない。
【0056】
そこで、原稿の材質それぞれに適用する「原稿位置−制御値対応テーブル」を用意し、その中から使用される原稿に適合するテーブルを選び、上述の搬送制御動作を行うようにする。なお、上記原稿の材質は、普通紙、厚紙といった紙の種類(紙種)の違いを含めて、材質という。
図10は、異なる材質の原稿ごとの速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の例を示すテーブルである。同図には、「紙種」として「普通紙」「厚紙」「トレーシングペーパ(トレペ)」を例示している。紙種ごとの「原稿位置−制御値対応テーブル」は、基本的に先の実施形態で示した同テーブル(図4及び図5)と同じ、速度変更位置に対応する速度変更量、という形式で設定1〜4の設定としている。
【0057】
図10に示すような紙種ごとの「原稿位置−制御値対応テーブル」から読取対象原稿に適用するテーブルを選択するためには、読取対象原稿の紙種を知る必要があり、機器への紙種の入力手段を備える。
紙種の入力手段の一つは紙種を検出する手段を設けることである。この検出手段として、既存のメディアセンサ(不図示)を用いることができる。メディアセンサは、安定して原稿面を検出できる適当な位置に設け(例えば、レジスト位置で停止した状態の原稿を検出できるように設置して)、原稿から、通常の上質紙の他に、中質紙、ざら紙、ハガキなどの厚紙、薬品などよって漂白された再生紙、繊維質が多いラグ紙、OHPフィルムなどを検出する。
【0058】
紙種の入力手段の他の例は、メディアセンサで検出するまでもなく、ユーザーが原稿サイズを既に知っている場合があり、この場合に適応する手段である。
この場合に適応する手段としては、ユーザーインターフェースとして機能する操作部51からユーザーの操作によって原稿の紙種を指定する入力を行う手段を採用することができる。
【0059】
上記のような紙種入力手段を備え、原稿画像を読取る際には、動作手順として、原稿搬送手段の駆動制御の実行に先立ち、原稿の紙種を入力する手順、即ち、上記メディアセンサで紙種を検出する手順、もしくは、ユーザーによる上記入力操作手順を行うようにし、また、入力された原稿の紙種によって使用する「原稿位置―制御値対応テーブル」を選択し、紙種に適応する制御条件を設定する手順を行う。
【0060】
上記のように、本実施形態によると、上記「実施形態1」、「実施形態2」において、原稿の紙種に適応する制御動作を行わせようとすると、原稿の紙種が変わるたびに、「原稿位置―制御値対応テーブル」の速度変更位置に対応する速度変更量のデータの入力をやり直す必要があったが、こうした手間を掛けることなく、紙種ごとに用意された中から原稿の紙種に適応する「原稿位置―制御値対応テーブル」を選ぶことができる。
【符号の説明】
【0061】
11・・原稿画像読取装置、13・・上流側搬送ローラ、14・・下流側搬送ローラ、16・・バックアップローラ、17・・CIS読取部、18・・原稿レジストセンサ、19・・画像形成部、22・・原稿挿入センサ、23・・上流側従動ローラ、24・・下流側従動ローラ、25・・原稿テーブル、26・・後方排紙用の案内、51・・操作部、81・・作像部、82・・給紙部、100・・主制御部、111・・コントローラ、115・・原稿搬送モータ、117・・各種センサ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2006−245927号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ある種の広幅原稿画像読取装置のように、原稿全面を原稿台等に載せて支持した状態で読取動作ができない、大形の原稿を読取る原稿画像読取装置に関し、より詳しくは、大形の原稿を搬送しながら読取る際、搬送原稿位置に応じて変化する負荷による読取りへの影響を低減する機能を有した原稿画像読取装置、原稿画像読取方法、当該原稿画像読取装置を搭載した画像形成装置、前記機能を実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大型の原稿を読取る原稿画像読取装置として、原稿を搬送しながら固定のCIS(密着イメージセンサ)で原稿面を読取る方式を採用した広幅原稿画像読取装置といわれるものが知られている。
このような広幅原稿画像読取装置では、文書に広く用いられている定形サイズ(例えば、A4,B5等)の原稿に対して通常用意される原稿トレイのように、原稿全面を安定して載せ、支えるトレイや台が存在せず、原稿搬送入り口に原稿を差し入れて、原稿の大部分がそこから垂れ下がった状態で、読み取りを開始する構成が一般的である。また、原稿を排出する側においても、排出された原稿を安定して載せ、支えるトレイや台が存在せず、排出された原稿は排紙部から垂れ下がり、最終的には下部にあるボックスに収まるという機構を用いている。
【0003】
このような機構を有する従来の広幅原稿画像読取装置では、原稿が搬送入り口から垂れ下がった状態では、原稿の重みで、搬送を阻害する方向に力が働き、搬送速度が減少してしまい、そのため読み取り画像が伸びてしまい、また、原稿が排紙部から垂れ下がった状態では、原稿の重みで、搬送を促進する方向に力が働き、搬送速度が増加してしまい、そのため読み取り画像が縮んでしまうという問題があった(後記図2、図3の説明、参照)。
【0004】
ところで、原稿面の二次元読取において、原稿搬送を一方の走査(副走査)として読取る方式では、搬送速度の変化が読取精度を劣化させるので、搬送速度の変化による影響を低減することが従来から提案されており、例えば、特許文献1(特開2006−245927号公報)を示すことができる。
特許文献1には、搬送手段の構成部品のばらつきにより生じる搬送速度の変化による影響を打ち消す手段を備えることが記載されている。
【0005】
しかし、上述の広幅原稿画像読取装置における原稿の重みによるように、搬送する原稿による負荷として、搬送原稿位置に応じて変動する負荷を受けることにより生じる原稿の搬送速度の変化に対応して、読取精度の劣化を低減することは、例示した特許文献1にも示すところがなく、従来技術における未解決の課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、原稿画像読取装置において、搬送する原稿による負荷として、搬送原稿位置に応じて変動する負荷を受けることで生じる原稿の搬送速度の変化による読取精度の劣化を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、搬送原稿位置に応じて原稿による負荷が変化する原稿搬送手段で原稿を搬送し、搬送しながら原稿面の画像を走査方式で読み取る原稿画像読取装置であって、前記原稿搬送手段は、駆動が制御可能であり、前記原稿搬送手段によって搬送される原稿の搬送原稿位置を検出する原稿位置検出手段と、前記搬送原稿位置と、前記搬送原稿位置において前記原稿搬送手段が受ける原稿による負荷変動の影響を打ち消す駆動制御値とを対応付けて記憶した制御値記憶手段と、原稿画像読取時に前記原稿位置検出手段によって搬送原稿位置を検出させ、検出された搬送原稿位置に対応する駆動制御値を前記制御値記憶手段から取得し、取得した駆動制御値により前記原稿搬送手段を制御する制御手段とを有する原稿画像読取装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送する原稿による負荷として、搬送原稿位置に応じて変動する負荷を受けることで生じる原稿の搬送速度の変化による読取精度の劣化を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る原稿画像読取装置の構成の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る原稿画像読取装置(図1)において、大サイズ原稿を読取対象とした場合の原稿読取開始時における原稿の状態を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る原稿画像読取装置(図1)において、大サイズ原稿を読取対象とした場合の原稿読取終了時における原稿の状態を説明する図である。
【図4】速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の一例を示すテーブルである。
【図5】速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の他の例を示すテーブルである。
【図6】図1に示した原稿画像読取装置に係る制御系の構成を示す概略図である。
【図7】本発明の実施形態に係る原稿画像読取装置における原稿画像読取の動作手順を示すフロー図である。
【図8】速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の他の例を示すテーブルである。
【図9】速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の補間演算を説明するグラフである。
【図10】異なる材質の原稿ごとの速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
以下に示す実施形態の原稿画像読取装置は、文書に広く用いられているサイズよりも大きいサイズの原稿を搬送手段によって搬送しながら読取るものである。
読取りは、原稿搬送を副走査とし、副走査方向に交わる主走査方向にラインイメージセンサの一種である広幅のCIS(密着イメージセンサ)を設け、主・副のラスタ走査によって原稿面を読取り、画素値を出力する。
【0011】
以下に示す大サイズ原稿の読取に適応し得る原稿画像読取装置は、広く使用されるA4,B5サイズの原稿を主にする画像読取装置に通常用意される原稿トレイのように、原稿全面を安定して載せ、支えるトレイや十分な大きさの原稿テーブルを持たない。
このため、原稿は原稿テーブルからはみ出し、垂れ下がるといった状態になり、また搬送にともなって状態の変化が生じる。
この状態の変化が搬送手段の作動に影響して、原稿画像の読取結果を劣化させる。そこで、読取精度を適正に保つために、状態変化による影響を低減する後記で詳述する搬送制御機能を備える。
【0012】
なお、以下に説明する原稿画像読取装置は、読取った原稿画像等を基に生成されるプリント出力用データを用いて記録用紙に作像を行う、複写機、複合機等の画像形成装置に搭載された形態で実施した例を示す。
ただ、独立したスキャナ装置のように原稿画像読取機能を単機能として備えた形態で実施してもよいし、画像形成装置以外の他の画像処理装置に搭載された形態で実施してもよい。
【0013】
[原稿画像読取装置の構成]
図1は、本発明の実施形態に係る原稿画像読取装置の構成の概要を示す図である。
図1において、図1全体は複写機、複合機等の画像形成装置であり、原稿画像読取装置11は、画像形成装置の上部に搭載されており、原稿画像読取装置11の下部に画像形成部19を有する。
画像形成部19は、作像部81、給紙部82よりなり、給紙部82から供給される記録用紙に作像部81によって画像を形成し、プリント出力を行う。なお、画像形成部19は、本発明の要旨とは直接関係がなく、既存の構成を採用するものであるから、説明を省略する。
【0014】
原稿画像読取装置11は、原稿1の搬送手段と搬送過程にある原稿1の画像読取手段を有する。
原稿1の搬送手段は、上流側搬送ローラ13とこれに圧接する上流側従動ローラ23、下流側搬送ローラ14とこれに圧接する下流側従動ローラ24、排紙ローラ15及びこれらローラの駆動用モータ(不図示)等を要素として構成する。上記駆動用モータは、後述する原稿による負荷の影響を打ち消す動作を含め、原稿面の読取において副走査に求められる条件で原稿を搬送するため、コントローラによって駆動が制御される。この搬送手段の制御に用いる原稿1を検知するセンサとして、原稿挿入センサ22及び原稿レジストセンサ18が搬送路上に設けられている。
また、原稿1の搬送手段への挿入側には原稿テーブル25を設けるとともに、搬送手段からの原稿排紙側には前方排紙用トレイ12と後方排紙用の案内26を設ける。
【0015】
原稿1の画像読取手段は、CIS読取部17、バックアップローラ16等を要素として構成する。CIS読取部17は、図示しないミラー、光源、結像レンズ、シェーディング板、CIS(密着イメージセンサ)等を備えており、搬送路上の原稿1の画像面に対し上方から光を照射し、その反射光をミラーおよび結像レンズを介してCISの主走査方向に並ぶ素子の受光面に結像し、受光量を電気信号に変換することで、主走査方向の画素列の出力値を得る。なお、読取精度は、原稿1の搬送速度を一定に保つとともに、CIS読取部17と原稿1との距離を一定に保つことが重要である。
【0016】
また、原稿画像読取装置11の上方には、操作部51を設ける。操作部51は、ユーザーインターフェースとして働き(図4、参照)、操作部51の操作パネルに備えた入力ボタン等をユーザーが操作することにより、原稿読取、複写、プリンタ等の機能を利用する際、機器の動作に係る各種設定の入力を行うとともに、表示部によって、機器側の状態(ステータス)を報知するとともに、ユーザーによる入力操作の案内をする。
【0017】
原稿画像読取装置11の原稿読取時の動作を説明すると、原稿1を原稿テーブル25に下向きにセットし、原稿入り口の上流側搬送ローラ13に突き当てると、原稿1が原稿挿入センサ22によって検知される。この検知信号をトリガとして、原稿入り口の上流側搬送ローラ13は駆動されて正転し、上流側従動ローラ23との間で原稿を挟み、内部に引き込む。
次いで、原稿1の先端が原稿レジストセンサ18によって検知されると、この検知信号をトリガとして、原稿入り口の上流側搬送ローラ13は停止される。
この後、操作部51にて、ユーザーが読み取り開始を指示する入力操作を行うと、原稿入り口の上流側搬送ローラ13は駆動されて正転し、原稿1がCIS読取部17を通過して、CISによって原稿画像が読取られる。
【0018】
CIS読取部17を経て送られる原稿1は、原稿1を搬送するために駆動されている下流側搬送ローラ14に至り、下流側従動ローラ24との間で原稿を挟み、上流側搬送ローラ13とともに、原稿1を外部に引き出す搬送を行う。
下流側のローラ対14,24により引き出される原稿1は、前方排紙用トレイ12への排紙と後方排紙用の案内26を経て行う排紙のいずれかの排紙方法が選択される。前方排紙用トレイ12を選択した場合、下流側のローラ対14,24の後に設けた分岐爪等を用いて排紙ローラ15を通す搬送路(図1中、矢印bにて示す)に切替え、前方排紙用トレイ12に送る。他方、後方排紙用の案内26を経て行う排紙の場合、前記分岐爪等を用いることなく、同一面に設けた後方排紙用の案内26に向けて矢印a方向に送る。
【0019】
〈原稿による負荷の変動〉
上記の原稿画像読取装置11において、原稿テーブル25は、原稿全面を安定して載せ、支えるに十分な大きさではないため、大サイズの原稿であった場合、原稿テーブル25からはみ出した状態になる。
図2は、本実施形態の原稿画像読取装置(図1)において、大サイズ原稿を読取対象とした場合の原稿読取開始時における原稿の状態を説明する図である。
大サイズの原稿1が読取対象となっている場合、図2に示すように、読取開始時には、原稿1の後端側の部分1rが原稿テーブル25からはみ出し、垂れ下がった状態となる。この状態では、原稿の搬送手段に掛かる負荷として、垂れ下がった後端側の部分1rの重みによって、原稿全面がテーブル等に載って安定して支えられている小サイズ原稿の場合に比べ、極めて大きくなる。
【0020】
よって、ほぼ安定して掛かる負荷を前提に搬送速度を一定に保つ制御を行う搬送動作が阻害され、原稿1の垂れ下がった後端側の部分1rによる負荷の増大により原稿の搬送速度が遅くなって、読取結果として画像が伸びてしまう。
また、上記の原稿による負荷は、原稿が搬送されるに連れて、原稿1の垂れ下がった後端側の部分1rの長さが減っていくため、画像の伸び具合は徐々に収まっていく、という変動を示す。
このように、原稿の原稿読取開始時に原稿による負荷が原稿搬送位置に応じて変動することによって、読取った画像が伸びる読取精度の劣化が生じる。
【0021】
また、上記の原稿画像読取装置11において、後方排紙用の案内26についても、原稿全面を安定して載せ、支える十分な大きさではないため、大サイズの原稿であった場合、後方排紙用の案内26からはみ出した状態になる。
図3は、本実施形態の原稿画像読取装置(図1)において、大サイズ原稿を読取対象とした場合の原稿読取終了時における原稿の状態を説明する図である。
大サイズの原稿1が読取対象となっている場合、図3に示すように、読取終了に近づいた時には、原稿1の先端側の部分1fが後方排紙用の案内26からはみ出し、垂れ下がった状態となる。この状態では、垂れ下がった先端側の部分1fの重みが、原稿搬送を促進するように働くようになることで、原稿の搬送手段に掛かる負荷が、原稿前面がテーブル等に載って安定して支えられている小サイズ原稿の場合に比べ、極めて小さくなる。
【0022】
よって、ほぼ安定して掛かる負荷を前提に搬送速度を一定に保つ制御を行う搬送動作が阻害され、原稿1の垂れ下がった先端側の部分1fによる負荷の減少により原稿の搬送速度が速くなって、読取結果として画像が縮んでしまう。
また、上記の原稿による負荷は、原稿が搬送されるに連れて、垂れ下がった先端側の部分1fの長さが増えていくため、画像の縮み具合は徐々に著しくなる、という変動を示す。
このように、原稿の原稿読取終了時に原稿による負荷が原稿搬送位置に応じて変動することによって、読取った画像が縮まる読取精度の劣化が生じる。
なお、原稿排紙側には、前方排紙用トレイ12に排紙する場合がある。この場合、後方排紙用の案内26におけるほど負荷の変動が大きくならないが、大きな変動が生じる仕様である場合には、同様の対処が可能である。ただ、以下では、後方排紙用の案内26側で生じる負荷の変動へ対処する形態を例に説明をする。
【0023】
[読取精度の劣化の低減]
上記〈原稿による負荷の変動〉で述べたように、大サイズ原稿を読取対象とした場合、原稿読取終了時において、先行技術におけると同様の搬送制御で対応すると、原稿搬送位置に応じて変動する原稿による負荷によって、搬送速度が変動してしまい、読取精度の劣化が生じる。
そこで、本実施形態では、原稿による負荷の変動の搬送速度への影響を予測し、負荷の影響を打ち消すよう搬送手段を動作させることによって、読取精度の劣化を低減する。
【0024】
この実施形態では、搬送される原稿が安定して支えられなくなる状態、即ち、原稿1が原稿テーブル25、後方排紙用の案内26からはみ出し、垂れ下がった状態になった原稿後端もしくは先端側の部分1r、1fによる負荷変動により定速搬送が阻害される状態になるとき、この負荷変動の影響を打ち消すよう原稿搬送手段の駆動を制御する。この制御を行うことで、読取精度の劣化を低減する。
読取精度の劣化を低減する上記駆動制御を実行するためには、搬送原稿位置に対応する駆動制御値を用意する必要がある。この搬送原稿位置と駆動制御値との対応関係は、所定の原稿を所定の原稿搬送手段に通紙する実験などを予め行うことにより、適正な動作が得られる関係を経験値として求める。
【0025】
また、求めた適正な動作が得られる搬送原稿位置と駆動制御値の対応関係を表す情報をテーブル(以下、「原稿位置−制御値対応テーブル」という)等の形で記憶手段に保存し、実行時に保存したこのテーブルを参照して、取得した制御値を搬送手段の駆動制御に用いる。
搬送手段の駆動制御の際、搬送原稿位置を検出し、検出された搬送原稿位置に基づいて「原稿位置−制御値対応テーブル」を参照して、制御値を取得する。
搬送原稿位置の検出手段は、例えば、原稿の搬送手段の上流側搬送ローラ13もしくは下流側搬送ローラ14の回転を検出する(当該ローラの駆動モータの回転を検出してもよい)等、既存の検出手段を採用することで実施し得る。
【0026】
また、「原稿位置−制御値対応テーブル」の制御値は、下記実施形態では、速度変更量(%)の形で表す。速度変更量は、原稿による負荷の変動の影響で、本来あるべき一定速度の原稿搬送速度が変化するときに、負荷変動の影響を打ち消すための量であり、本来あるべき一定速度からの変更量(%)で表す。
原稿搬送速度を変更する制御は、実際には、上流側搬送ローラ13もしくは下流側搬送ローラ14の駆動用モータ(以下「搬送モータ」という)の駆動を制御することによる。搬送モータとして、例えば、ステッピングモータを使用する場合、速度変更量(%)に応じて、駆動パルスの周波数を調整することにより実施し得る。
【0027】
ここで、読取精度の劣化の低減を図る上述の搬送手段の駆動制御について、その基本動作を、下記「実施形態1」及び「実施形態2」によって具体的に説明する。
「実施形態1」
本実施形態は、原稿後端もしくは先端側の部分1r、1fによる負荷変動により定速搬送が阻害される状態になるときの搬送原稿位置(以下「速度変更位置」という)を、搬送方向の原稿先端を基準(0)にして原稿後端までの距離(長さ)で表し、この位置との対応関係を表す「原稿位置−制御値対応テーブル」を用いて、搬送手段(搬送モータ)の駆動制御を行う。
【0028】
図4は、速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の対応関係を表した本実施形態に用いるテーブルである。同図のテーブルは、速度変更を必要とする速度変更位置である、原稿の先端側と後端側のそれぞれを3つの範囲に分け、速度変更量を設定する設計をとっている。
図4の「原稿位置−制御値対応テーブル」により搬送手段の駆動制御を行う場合の原稿搬送手段の動作を説明する。
搬送される原稿1は、原稿レジストセンサ18の検出位置で一旦停止した後、レジスト位置を基準に再び搬送され、この搬送過程でCIS読取部17によって原稿画像の読取が行われる。
【0029】
読取開始時から原稿1を200mm搬送するまでの間は、図4の「設定1」に該当し、搬送モータ回転速度を+0.3%変更する。例えば、本来の搬送モータ回転速度が80.00mm/sであれば、80.00×1.003=80.24mm/sとなる。
また、200mm〜400mmの間は、図4の「設定2」に該当し、速度を+0.2%変更する。上記と同じ速度条件であれば、80.00×1.002=80.16mm/sとなる。
また、400mm〜600mmの間は、上記と同様に計算でき、ここでは、速度変更量がさらに小さくなる「設定3」による。
「設定1」〜「設定3」は、原稿1の先端側の範囲に当たるので、速度変更量が+であり、本来の搬送モータ回転速度を速める制御値を設定する。
【0030】
「設定3」と「設定4」の間に該当する原稿位置においては、原稿による負荷の変動がなく、本来の搬送モータ回転速度で動作させる範囲であるため、速度変更が不要であるから、「原稿位置−制御値対応テーブル」にデータが用意されていない。
原稿1の後端側の始めの範囲である原稿位置が1400mm〜1600mmの間は、図4の「設定4」に該当し、速度を−0.1%変更する。この場合、上記と同じ速度条件であれば、80.00×0.999=79.92mm/sとなる。
また、「1600mm〜1800mm」、「1800mm〜2000mm」それぞれの間は、上記と同様に計算でき、ここでは、速度変更量が徐々に−方向に大きくなる「設定5」、「設定6」による。
「設定4」〜「設定6」は、原稿1の後端側の範囲に当たるので、速度変更量が−であり、本来の搬送モータ回転速度を遅くする制御値を設定する。
【0031】
なお、図4の「原稿位置−制御値対応テーブル」において、速度変更が必要な範囲や速度変更量として、デフォルトで与えられた値が、経時に生じる機器条件の変化等によって適正値からずれてしまう、といったことが生じ得る。
このような状況に対応し、適切な設定を可能とするために、「原稿位置−制御値対応テーブル」の速度変更位置と速度変更量を変更できるようにするとよい。
実施形態としては、操作部51からユーザーが入力できるようにする。つまり、実際に原稿画像読取装置11を使用して得られる読取結果に生じる画像の伸び縮みを確認しながら、最適な数値を設定できるようにする。この形態で実施する場合、操作部51の表示部に「原稿位置−制御値対応テーブル」のデータを変更するための入力操作用の画面を表示し、その画面に対するユーザーの入力操作により、画像の伸び縮みの確認結果が反映された最適な数値を設定する。
最適な数値とは、原稿による負荷の変動の影響を打ち消す搬送速度に制御値を変更することで、結果的に原稿搬送速度が本来あるべき一定速度、即ち、上記の例における80.00mm/s近くになるように制御する数値である。
【0032】
「実施形態2」
本実施形態は、原稿後端もしくは先端側の部分1r、1fによる負荷変動により定速搬送が阻害される状態になる速度変更位置を、原稿1の先端側の範囲に対しては原稿先端を基準(0)にして原稿後端に向く方向の距離(長さ)で表し、他方、原稿1の後端側の範囲に対しては原稿後端を基準(0)にして原稿先端に向く方向の距離(長さ)で表し、これらの位置との対応関係を表す「原稿位置−制御値対応テーブル」を用いて、搬送手段(搬送モータ)の駆動制御を行う。
【0033】
図5は、速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の対応関係を表した本実施形態に用いるテーブルである。同図(A)のテーブルは、先端側の範囲に対し、同図(B)のテーブルは、後端側の範囲に適用する。なお、同図のテーブルは、上記「実施形態1」によって設定される3レベルの速度変更量(図4、参照)と同じである。
ただ、本実施形態の図5では、(A)、(B)の各テーブルは、上記のように、速度変更位置(mm)を表す距離(長さ)の基準(0)を原稿の先端、後端にそれぞれとっているので、3レベルの速度変更量に対応する速度変更位置の範囲は、「0〜200」、「200〜400」、「400〜600」と同じである。つまり、原稿1の先端側と後端側において負荷変動が生じる範囲が同じであり、変動量も、変動の生じる方向が逆であるが、同じである。なお、特殊な原稿ではない限り、多くの原稿は、このような対応で負荷変動の影響を打ち消す駆動制御を行うことになる。
【0034】
よって、図5のテーブルを用いると、原稿先端側と後端側の負荷変動が生じる範囲が同じであり、方向は逆であるが、変動量も同じである、という条件が満たされれば、原稿長が変わっても同じ設定を使用できる。なお、原稿長が大きく違うと、速度変更量も違ってくるので、原稿長が変わっても同じ設定を使用できる原稿長には限界が存在する。ただ、この場合にも、速度変更範囲は変えることなく共通にして、速度変更量だけを変えることで対応してもよく、このようにすることで、処理負担を軽減できる。
【0035】
ただし、図5のテーブルを使用して駆動制御を行う際には、レジスト位置基準でそこからの搬送位置を特定しなければならない。原稿先端側は、図5(A)のテーブルにおける速度変更位置(mm)が原稿の先端、即ち、レジスト位置基準で表された位置であるから、そのまま駆動制御に適用できる。他方、原稿後端側は、図5(B)のテーブルにおける速度変更位置(mm)が原稿の後端基準であり、レジスト位置基準で表された位置ではないので、そのまま駆動制御に適用できない。
駆動制御に適用できる速度変更位置(mm)にするためには、原稿長を知り、逆算する処理が必要になる。つまり、原稿長から図5(B)のテーブルにおける速度変更位置(mm)を逆算する(−する)ことで、駆動制御に適用できる数値になる。
【0036】
上述の逆算処理は、原稿長が変わるたびに、原稿読取開始前に、読取対象の原稿の原稿長の入力を行い、入力された原稿長と図5(B)の「原稿位置−制御値対応テーブル」に基づいて駆動制御に適用できる速度変更位置(mm)を求め、求めた数値を制御値として設定しなければならない。
例えば、原稿長が1800mmの場合、図5(B)のテーブルの「設定4」、「設定5」、「設定6」に対し、逆算処理をしてレジスト位置基準で表した後の速度変更位置(mm)に対する速度変更量(%)は、それぞれ
速度変更位置(mm)1200〜1400mm→速度変更量(%)−0.1%(設定6)
速度変更位置(mm)1400〜1600mm→速度変更量(%)−0.2%(設定5)
速度変更位置(mm)1600〜1800mm→速度変更量(%)−0.3%(設定4)
となる。
この逆算処理をすることで、レジスト位置基準で表した後の速度変更位置(mm)に対する速度変更量(%)により搬送手段の駆動制御を行うときの原稿搬送手段の動作は、上記「実施形態1」におけると同様であり、先の説明を参照することとして、ここでは、記載を省略する。
【0037】
ところで、駆動制御に適用できる速度変更位置(mm)を求めるためには、読取対象の原稿の原稿長の入力が必要である。この入力を行う方法としては、二つの方法が採用できる。
一つは、読取対象の原稿のサイズを測定することにより原稿長の入力を行う。ここでは、原稿画像読取装置11自身のCIS読取部17で原稿を読取らせる方法である。つまり、先に説明した読取時の動作と同様に、原稿を搬送手段で送りながらCIS読取部17で原稿面を読取って(以下、「予備読取動作」という)、画像信号として検出する。
このときの検出信号には、原稿のエッジ部分で変化する反射光量による信号の変化が現われるので、検出信号に対する閾値処理により原稿端部を判断し、両端間の搬送距離を紙の長さとして検出する。
上記予備読取動作を行う場合、通常の原稿読取とは違う原稿長測定モードとして、この動作モードを用意し、原稿を通紙して測定される原稿長データを管理する機能を備える必要がある。
【0038】
もう一つは、測定手段を用いて測るまでもなく、ユーザーが原稿サイズを既に知っている場合があり、この場合には、ユーザーインターフェースとして機能する操作部51からユーザーの操作によって原稿長を入力する方法を採用することができる。
ところで、上記二つの方法による原稿長の入力機能の両方を備えると、機器の利用性を高めることができる。
二つの方法による原稿長の入力機能の両方を備える場合、機器側は、ユーザーに対し操作部51の画面でこれらの機能の存在を知らせ、どちらの入力動作モードを選択して原稿長の入力を行うかを指示できる画面を表示して、ユーザーに設定操作を促す。この後、ユーザーの操作で指示された入力動作モードの設定に切替え、設定に従う動作モードの制御で対応する。
【0039】
[制御系の構成]
ここで、原稿読取の際、読取精度の劣化を低減する上述の原稿搬送制御動作を行う制御系を中心にしたデータ(信号)処理系の構成について、概要を説明する。
図6は、図1に示した原稿画像読取装置11に係る制御系の構成を示す概略図である。
原稿画像読取装置11の制御系は、図6に示すように、システム制御部としての主制御部100の制御下に、原稿画像読取装置11内の各動作部を制御するコントローラ111を有する。
主制御部100は、画像形成装置(図1、参照)全体を制御するので、原稿画像読取装置11のコントローラ111のほか、記録用紙にプリント出力を行う作像部81、給紙部82、操作部51を制御する。
【0040】
コントローラ111は、図1を参照して上記で説明した原稿1の搬送手段及び画像読取手段を制御する。
具体的には、原稿1の搬送手段に係る原稿レジストセンサ18や、原稿挿入センサ22等の各種センサ117の検知信号の入力を受け、CIS読取部17、原稿搬送モータ(原稿搬送用のローラを駆動するモータ)115を制御下に置く。
また、コントローラ111は、CIS読取部17で読取った画像データに対し補正処理等を施し正規化し、画像形成装置等で用いるのに適した画像データとして主制御部100にデータ出力をする。このほか、コントローラ111は、上記「実施形態2」で述べた予備読取動作による原稿長測定、即ち、原稿長の測定をCIS読取部17の出力と、搬送原稿(副走査)位置の検出により行う機能を持つ。
【0041】
コントローラ111は、コンピュータをハードウェアとして構成することができる。
コントローラ111を構成するコンピュータは、ソフトウェアプログラムの命令を実行するためのCPU(Central Processing Unit)と、CPUによって使用される制御プログラム、制御用データ等を格納するROM(Read Only Memory)と、前記制御プログラムによって生成される各種データなどを一時的に保存するメモリ或いはソフトウェアプログラムの動作に必要なデータを保存するワークメモリとして利用するRAM(Random Access Memory)と、機器に依存する処理条件等の設定データなどを保存しておく不揮発性メモリであるNV−RAM(Non Volatile RAM)を構成要素として有する。
本実施形態の原稿画像読取装置11における読取精度の劣化を低減する原稿搬送制御に係る動作は、この動作を実行するための手順(図7、参照)を記述した制御プログラムを上記コンピュータにより駆動することにより実施することができる。
【0042】
[原稿画像読取の動作手順]
コントローラ111が行う原稿画像読取の動作手順について説明する。
本実施形態の原稿画像読取装置11における原稿画像読取の基本動作手順として、読取精度の劣化を低減する上記「実施形態2」の原稿搬送制御を伴う動作を例に、以下に、その手順を動作フローに基づいて説明する。
図7は、本実施形態における原稿画像読取の動作手順を示すフロー図である。
コントローラ111は、原稿の読取を要求するユーザーの操作として、例えば、原稿テーブル25に読取対象原稿を載せ、原稿入り口の上流側搬送ローラ13に原稿先端を突き当て、原稿挿入センサ22によって原稿が検知されたとき、図7の動作フローを起動する。
【0043】
図7の動作フローが起動されると、先ず、予備読取動作を行わせ、原稿長の測定を行う(ステップS101)。
この測定動作は、後段の原稿画像の読取時の動作と同様に、原稿を搬送手段で送りながらCIS読取部17で原稿を読取らせる。CIS読取部17で原稿を読取り、検出信号を基に原稿長を測定し(上記「実施形態2」の説明、参照)、測定結果を後段の原稿画像読取で用いるために管理する。なお、原稿長の測定を行うときに、実行する読取が原稿長を測定するための動作であること、並びに後段の原稿画像読取時に原稿の再セットが必要であることをユーザーに操作部51を通して知らせる。
また、原稿長の入力を操作部51からのユーザー操作によっても行う(上記「実施形態2」の説明、参照)ことができるようにした場合、このステップの始めに、入力動作モードの選択画面を操作部51で表示し、表示された選択画面に対応するユーザーの入力操作によって指示されたモードの動作を行う。このとき、原稿長の入力が、操作部51からのユーザー操作によって行われた場合、直ぐに後段の原稿画像読取を実行することができる。
【0044】
ステップS101で原稿長の測定を行った後、原稿再セット、即ち、再び原稿テーブル25に読取対象原稿を載せ、原稿入り口の上流側搬送ローラ13に原稿先端を突き当てる操作がユーザーによって行われたことを、原稿挿入センサ22によって確認する(ステップS102)。
ステップS102における原稿の再セットの確認を経て、次に、実際に原稿面の画像を読取る原稿画像読取を行う(ステップS103)。
【0045】
ステップS103で行う原稿画像読取は、上記「実施形態2」で説明したように、原稿1の負荷変動の影響を打ち消す駆動制御によって原稿を搬送しながらCIS読取部17で原稿面の画像読取が行われる。即ち、図5の「原稿位置−制御値対応テーブル」に基づいて負荷変動の生じる原稿1の先端部、後端部それぞれの読取時の駆動制御に用いる速度変更量(%)を求め、求めた値を設定して意図した制御動作を行う。なお、ステップS101で取得した原稿長は、負荷変動の生じる原稿1の後端部に適用する、図5(B)の「原稿位置−制御値対応テーブル」を用いる場合に速度変更位置(mm)を逆算するときに必要となり、この点については、上記「実施形態2」で述べたとおりである。
ステップS103の動作が完了したところで、この動作フローを終了する。
【0046】
なお、図7の動作フローは、「実施形態2」の原稿搬送制御を伴う原稿画像読取動作を例に示したので、ステップS101の原稿長測定とステップS102の原稿再セットを必要とするが、「実施形態1」の原稿搬送制御を伴う原稿画像読取動作の場合、ステップS101の原稿長測定とステップS102の原稿再セットは不要である。
なお、「実施形態1」に係る動作の場合、ステップS103に相当する原稿画像読取動作は、上記「実施形態1」で説明した動作を実行する。
【0047】
次に、読取精度の劣化の低減を図る搬送手段の駆動制御の他の実施形態について、下記「実施形態3」及び「実施形態4」にて説明する。
「実施形態3」
本実施形態は、原稿1の負荷変動の影響を打ち消す原稿搬送手段の駆動制御を「原稿位置−制御値対応テーブル」を参照し、取得した制御値(速度変更量%)を設定して行う手法を用いる点で基本的に上記「実施形態1」、「実施形態2」と同じである。
【0048】
ただ、上記「実施形態1」、「実施形態2」の「原稿位置−制御値対応テーブル」は、原稿による負荷変動が生じる範囲内の全域に亘って、所定間隔だけ離れた複数の離散値(「設定1」〜「設定6」の6値)で表している。この方法で精度を高めるためには、離散値の間隔を小さくすることにより実現できるが、データ量が膨大になる。
そこで、本実施形態では、離散値間の中間値を補間演算する手段を備えることで、「原稿位置−制御値対応テーブル」を構成する離散値の数を少なくしてデータ量を小さくする。
【0049】
図8は、速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の本実施形態の例を示すテーブルである。同図(A)のテーブルは、先端側の範囲に対し、同図(B)のテーブルは、後端側の範囲に適用する。
同図(A)、(B)の各テーブルは、「設定1:0〜200(mm)」「設定2:600〜800(mm)」、「設定3:0〜200(mm)」「設定4:600〜800(mm)」の各2速度変更位置に対応して2レベルの速度変更量が対応付けられている。つまり、「原稿位置−制御値対応テーブル」には、原稿による負荷変動が生じる範囲である0〜800(mm)内における2点の設定しか登録していない。よって、最小限のデータ量となる。
【0050】
図9は、速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の補間演算を説明するグラフである。同図の横軸は速度変更開始位置をとり、縦軸は、速度変更量をとっている。
図9のグラフに、先端側の図8(A)のテーブルの設定を表すと、グラフ中に示すように点「設定1」と点「設定2」の2点となる。なお、図示の点は、図8に示される「設定1:0〜200(mm)」「設定2:600〜800(mm)」それぞれの最小値、即ち、速度変更開始位置をとっている。
原稿による負荷変動が生じる範囲は、この2点の速度変更開始位置の範囲であるから、2点の中間値を補間する。ここでは、一次式で補間演算をするので、点「設定1」と点「設定2」の2点間が直線で結ばれている。この直線上に求める速度変更開始位置に対応する速度変更量(駆動制御値)が存在する。
【0051】
例えば、図8(A)のテーブルの設定の場合、
速度変更開始位置(X):0の時、変更量(Y):+0.4
速度変更開始位置(X):600の時、変更量(Y):+0.1
であり、
この2点が、下記式(1)で表す一次式の直線上の点である。
Y=aX+b・・・式(1)
とみなして、式(1)中のa,bを求めると、図9のグラフの点「設定1」と点「設定2」の2点間を結ぶ直線は、下記式(2)で表すことができる。
Y=(0.1−0.4)/(600−0)X+0.4
=−X/2000+0.4・・・式(2)
【0052】
上記式(2)に基づいて、
速度変更位置200〜400(mm)の時、速度変更開始位置は200(mm)なので、変更量は+0.3(%)
速度変更位置400〜600(mm)の時、速度変更開始位置は400(mm)なので、変更量は+0.2(%)
と算出される。
【0053】
後端側の図8(B)のテーブルの設定についても、同様に計算すると、
Y=X/2000−0.4・・・式(3)
が得られる。
上記式(3)に基づいて、
速度変更位置200〜400(mm)の時、速度変更開始位置は200(mm)なので、変更量は−0.3(%)
速度変更位置400〜600(mm)の時、速度変更開始位置は400(mm)なので、変更量は−0.2(%)
と算出される。
【0054】
上記のように、本実施形態によると、離散値間の中間値を補間演算する手段を備えることで、「原稿位置−制御値対応テーブル」のデータ量を小さくし、記憶手段の容量を小さくでき、又テーブルデータを入力する手間も少なくすることができる。
【0055】
「実施形態4」
本実施形態は、原稿1の負荷変動の影響を打ち消す原稿搬送手段の駆動制御を「原稿位置−制御値対応テーブル」を参照し、取得した制御値(速度変更量%)を設定して行う手法を用いる点で基本的に上記「実施形態1」、「実施形態2」と同じである。
ただ、上記「実施形態1」、「実施形態2」では、「原稿位置−制御値対応テーブル」は一つで、読取対象原稿の違いは考慮していない。例えば、原稿の材質の違いによって、比重が変わる。この変化によって、原稿による負荷が生じる範囲や大きさが変わってきても、対応することができず、誤差が生じることになり適切な制御が行えない。
【0056】
そこで、原稿の材質それぞれに適用する「原稿位置−制御値対応テーブル」を用意し、その中から使用される原稿に適合するテーブルを選び、上述の搬送制御動作を行うようにする。なお、上記原稿の材質は、普通紙、厚紙といった紙の種類(紙種)の違いを含めて、材質という。
図10は、異なる材質の原稿ごとの速度変更位置に対応する速度変更量(駆動制御値)の例を示すテーブルである。同図には、「紙種」として「普通紙」「厚紙」「トレーシングペーパ(トレペ)」を例示している。紙種ごとの「原稿位置−制御値対応テーブル」は、基本的に先の実施形態で示した同テーブル(図4及び図5)と同じ、速度変更位置に対応する速度変更量、という形式で設定1〜4の設定としている。
【0057】
図10に示すような紙種ごとの「原稿位置−制御値対応テーブル」から読取対象原稿に適用するテーブルを選択するためには、読取対象原稿の紙種を知る必要があり、機器への紙種の入力手段を備える。
紙種の入力手段の一つは紙種を検出する手段を設けることである。この検出手段として、既存のメディアセンサ(不図示)を用いることができる。メディアセンサは、安定して原稿面を検出できる適当な位置に設け(例えば、レジスト位置で停止した状態の原稿を検出できるように設置して)、原稿から、通常の上質紙の他に、中質紙、ざら紙、ハガキなどの厚紙、薬品などよって漂白された再生紙、繊維質が多いラグ紙、OHPフィルムなどを検出する。
【0058】
紙種の入力手段の他の例は、メディアセンサで検出するまでもなく、ユーザーが原稿サイズを既に知っている場合があり、この場合に適応する手段である。
この場合に適応する手段としては、ユーザーインターフェースとして機能する操作部51からユーザーの操作によって原稿の紙種を指定する入力を行う手段を採用することができる。
【0059】
上記のような紙種入力手段を備え、原稿画像を読取る際には、動作手順として、原稿搬送手段の駆動制御の実行に先立ち、原稿の紙種を入力する手順、即ち、上記メディアセンサで紙種を検出する手順、もしくは、ユーザーによる上記入力操作手順を行うようにし、また、入力された原稿の紙種によって使用する「原稿位置―制御値対応テーブル」を選択し、紙種に適応する制御条件を設定する手順を行う。
【0060】
上記のように、本実施形態によると、上記「実施形態1」、「実施形態2」において、原稿の紙種に適応する制御動作を行わせようとすると、原稿の紙種が変わるたびに、「原稿位置―制御値対応テーブル」の速度変更位置に対応する速度変更量のデータの入力をやり直す必要があったが、こうした手間を掛けることなく、紙種ごとに用意された中から原稿の紙種に適応する「原稿位置―制御値対応テーブル」を選ぶことができる。
【符号の説明】
【0061】
11・・原稿画像読取装置、13・・上流側搬送ローラ、14・・下流側搬送ローラ、16・・バックアップローラ、17・・CIS読取部、18・・原稿レジストセンサ、19・・画像形成部、22・・原稿挿入センサ、23・・上流側従動ローラ、24・・下流側従動ローラ、25・・原稿テーブル、26・・後方排紙用の案内、51・・操作部、81・・作像部、82・・給紙部、100・・主制御部、111・・コントローラ、115・・原稿搬送モータ、117・・各種センサ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2006−245927号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送原稿位置に応じて原稿による負荷が変化する原稿搬送手段で原稿を搬送し、搬送しながら原稿面の画像を走査方式で読み取る原稿画像読取装置であって、
前記原稿搬送手段は、駆動が制御可能であり、
前記原稿搬送手段によって搬送される原稿の搬送原稿位置を検出する原稿位置検出手段と、
前記搬送原稿位置と、前記搬送原稿位置において前記原稿搬送手段が受ける原稿による負荷変動の影響を打ち消す駆動制御値とを対応付けて記憶した制御値記憶手段と、
原稿画像読取時に前記原稿位置検出手段によって搬送原稿位置を検出させ、検出された搬送原稿位置に対応する駆動制御値を前記制御値記憶手段から取得し、取得した駆動制御値により前記原稿搬送手段を制御する制御手段と
を有する原稿画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載された原稿画像読取装置において、
前記駆動制御値が、原稿による前記負荷の影響を受ける搬送速度を制御するための制御値である原稿画像読取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された原稿画像読取装置において、
原稿を読取る際に読取対象となる原稿の長さを入力する原稿長入力手段を有し、
前記制御値記憶手段には、変量である原稿長が異なっても共通に使用可能な形式で搬送原稿位置と駆動制御値の対応関係を記憶しておくとともに、
前記制御手段は、前記制御値記憶手段から取得した搬送原稿位置と駆動制御値の前記対応関係と前記原稿長入力手段で入力された原稿長とに基づいて前記駆動制御値を求める
原稿画像読取装置。
【請求項4】
請求項3に記載された原稿画像読取装置において、
前記原稿長入力手段は、予備読取動作として原稿の読取りを行い、得られる読取結果を基に原稿長を測定することにより、入力を行う手段である原稿画像読取装置。
【請求項5】
請求項3に記載された原稿画像読取装置において、
前記原稿長入力手段は、外部からの操作によって原稿長の入力を行う手段である原稿画像読取装置。
【請求項6】
請求項3に記載された原稿画像読取装置において、
前記原稿長入力手段は、予備読取動作として原稿の読取りを行い、得られる読取結果を基に原稿長を測定することにより、入力を行う第1入力手段と、外部からの操作によって原稿長の入力を行う第2入力手段とからなり、
前記第1入力手段、前記第2入力手段のいずれを用いるかを外部からの操作によって設定する設定操作手段と、
前記設定操作手段の設定に従い、原稿長の入力動作モードを切替える制御手段を有する
原稿画像読取装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された原稿画像読取装置において、
前記原稿位置検出手段によって検出される搬送原稿位置が、前記制御値記憶手段に離散値として記憶された値に対し中間値をとるときに、離散値間の中間値を補間演算する手段を有する
原稿画像読取装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された原稿画像読取装置において、
原稿を読取る際に読取対象となる原稿の材質を入力する原稿材質入力手段を有し、
前記制御値記憶手段は、原稿材質が異なる場合の搬送原稿位置と駆動制御値の前記対応関係をそれぞれ記憶しておくとともに、
前記制御手段は、前記制御値記憶手段から、前記原稿材質入力手段で入力された原稿材質に応じた搬送原稿位置と駆動制御値の前記対応関係によって、前記駆動制御値を取得する
原稿画像読取装置。
【請求項9】
コンピュータを請求項1乃至8のいずれかに記載された原稿画像読取装置が有する前記制御手段として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれかに記載された原稿画像読取装置を搭載するとともに、画像データを基に画像を形成する手段を有する画像形成装置。
【請求項12】
搬送原稿位置に応じて原稿による負荷が変化する原稿搬送手段で原稿を搬送し、搬送しながら原稿面の画像を走査方式で読み取る原稿画像読取装置における原稿画像読取方法であって、
前記搬送原稿位置と、前記搬送原稿位置において前記原稿搬送手段が受ける原稿による負荷変動の影響を打ち消す駆動制御値とを対応付けて記憶する制御値記憶工程と、
原稿画像読取時に前記原稿搬送手段によって搬送される原稿の搬送原稿位置を検出する原稿位置検出工程と、
前記原稿位置検出工程で検出された搬送原稿位置に対応する駆動制御値を前記制御値記憶工程の記憶値から取得し、取得した駆動制御値により前記原稿搬送手段の駆動を制御する制御工程と
を有する原稿画像読取方法。
【請求項1】
搬送原稿位置に応じて原稿による負荷が変化する原稿搬送手段で原稿を搬送し、搬送しながら原稿面の画像を走査方式で読み取る原稿画像読取装置であって、
前記原稿搬送手段は、駆動が制御可能であり、
前記原稿搬送手段によって搬送される原稿の搬送原稿位置を検出する原稿位置検出手段と、
前記搬送原稿位置と、前記搬送原稿位置において前記原稿搬送手段が受ける原稿による負荷変動の影響を打ち消す駆動制御値とを対応付けて記憶した制御値記憶手段と、
原稿画像読取時に前記原稿位置検出手段によって搬送原稿位置を検出させ、検出された搬送原稿位置に対応する駆動制御値を前記制御値記憶手段から取得し、取得した駆動制御値により前記原稿搬送手段を制御する制御手段と
を有する原稿画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載された原稿画像読取装置において、
前記駆動制御値が、原稿による前記負荷の影響を受ける搬送速度を制御するための制御値である原稿画像読取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された原稿画像読取装置において、
原稿を読取る際に読取対象となる原稿の長さを入力する原稿長入力手段を有し、
前記制御値記憶手段には、変量である原稿長が異なっても共通に使用可能な形式で搬送原稿位置と駆動制御値の対応関係を記憶しておくとともに、
前記制御手段は、前記制御値記憶手段から取得した搬送原稿位置と駆動制御値の前記対応関係と前記原稿長入力手段で入力された原稿長とに基づいて前記駆動制御値を求める
原稿画像読取装置。
【請求項4】
請求項3に記載された原稿画像読取装置において、
前記原稿長入力手段は、予備読取動作として原稿の読取りを行い、得られる読取結果を基に原稿長を測定することにより、入力を行う手段である原稿画像読取装置。
【請求項5】
請求項3に記載された原稿画像読取装置において、
前記原稿長入力手段は、外部からの操作によって原稿長の入力を行う手段である原稿画像読取装置。
【請求項6】
請求項3に記載された原稿画像読取装置において、
前記原稿長入力手段は、予備読取動作として原稿の読取りを行い、得られる読取結果を基に原稿長を測定することにより、入力を行う第1入力手段と、外部からの操作によって原稿長の入力を行う第2入力手段とからなり、
前記第1入力手段、前記第2入力手段のいずれを用いるかを外部からの操作によって設定する設定操作手段と、
前記設定操作手段の設定に従い、原稿長の入力動作モードを切替える制御手段を有する
原稿画像読取装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された原稿画像読取装置において、
前記原稿位置検出手段によって検出される搬送原稿位置が、前記制御値記憶手段に離散値として記憶された値に対し中間値をとるときに、離散値間の中間値を補間演算する手段を有する
原稿画像読取装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された原稿画像読取装置において、
原稿を読取る際に読取対象となる原稿の材質を入力する原稿材質入力手段を有し、
前記制御値記憶手段は、原稿材質が異なる場合の搬送原稿位置と駆動制御値の前記対応関係をそれぞれ記憶しておくとともに、
前記制御手段は、前記制御値記憶手段から、前記原稿材質入力手段で入力された原稿材質に応じた搬送原稿位置と駆動制御値の前記対応関係によって、前記駆動制御値を取得する
原稿画像読取装置。
【請求項9】
コンピュータを請求項1乃至8のいずれかに記載された原稿画像読取装置が有する前記制御手段として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれかに記載された原稿画像読取装置を搭載するとともに、画像データを基に画像を形成する手段を有する画像形成装置。
【請求項12】
搬送原稿位置に応じて原稿による負荷が変化する原稿搬送手段で原稿を搬送し、搬送しながら原稿面の画像を走査方式で読み取る原稿画像読取装置における原稿画像読取方法であって、
前記搬送原稿位置と、前記搬送原稿位置において前記原稿搬送手段が受ける原稿による負荷変動の影響を打ち消す駆動制御値とを対応付けて記憶する制御値記憶工程と、
原稿画像読取時に前記原稿搬送手段によって搬送される原稿の搬送原稿位置を検出する原稿位置検出工程と、
前記原稿位置検出工程で検出された搬送原稿位置に対応する駆動制御値を前記制御値記憶工程の記憶値から取得し、取得した駆動制御値により前記原稿搬送手段の駆動を制御する制御工程と
を有する原稿画像読取方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−74431(P2013−74431A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211412(P2011−211412)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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