説明

原稿読取装置およびそれに装着される透明シートカートリッジ

【課題】原稿移動方式で画像読取が行われる場合に、プラテン上の汚れが副走査方向に沿って延びる直線上のスジとなって表れる現象を防止でき、1つの画像読取手段で原稿固定方式と原稿移動方式の両方式に対応でき、さらには、原稿移動方式においても画像を鮮明に読み取ることができる原稿読取装置を提供すること。
【解決手段】原稿読取装置は、原稿を原稿搬送路に沿って搬送する原稿送り手段と、搬送されてきた原稿の画像を読み取る画像読取手段と、画像読取手段と搬送される原稿との間に介在する有端で長尺状の透明シートと、透明シートを原稿の搬送方向と平行な方向に移動させる透明シート移動手段とを備え、透明シート移動手段は所定の間隔を空けて配置され透明シートを送り出して巻き取る一対の第1リールと第2リールとを有し、透明シートは第1および第2リールの間で搬送される原稿と共に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原稿読取装置とそれに装着される透明シートカートリッジに関し、詳しくは、原稿を自動的に搬送しつつ原稿の画像を読み取る原稿読取装置とそれに装着される透明シートカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
この発明に関連する従来技術としては、自動的に原稿を搬送しつつその原稿の画像を読み取る原稿読取装置であって、原稿搬送路と、原稿搬送路の所定位置に配設され原稿の画像を読み取る画像読取手段と、画像読取手段の周囲に回動可能に設けられ搬送される原稿と一緒に回転する透明な回転保護部材とから構成される原稿読取装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、同様の従来技術としては、自動的に原稿を搬送しつつその原稿の画像を読み取る原稿読取装置であって、原稿搬送路と、原稿搬送路の所定位置に配設され原稿の画像を読み取る画像読取手段と、搬送される原稿と画像読取手段との間に介在し一対のリールによって巻き回される無端状の透明シートとから構成される原稿読取装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−247294号公報
【特許文献2】特開2004−357160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複写機等に設けられる原稿読取装置の画像読取方式としては、一般的に原稿固定方式と原稿移動方式の2つが挙げられる。
原稿固定方式では、透明なプラテン上にユーザーが原稿を載置し、プラテンの下に設けられた光源、ミラー群、レンズおよびCCDから構成される画像読取手段(以下、「縮小光学系の画像読取手段」と称する)のうち、光源とミラー群を原稿に対して移動させながら原稿の画像を走査し、ミラーから反射してきた走査光をレンズを介してCCDに結像させ、原稿の画像を電子化する。
一方、原稿移動方式では、自動原稿送り装置(以下、「ADF」と称する)によって搬送され透明なプラテン上を通過する原稿に対し、縮小光学系の画像読取手段のうち、光源とミラー群を静止させた状態で原稿の画像を走査し、画像の読取を行う。
【0005】
原稿移動方式は、ADFの原稿載置台にユーザーが読取を希望する原稿を載置し、スタートキーを押すだけで、原稿が自動的に搬送され原稿の画像読取が行われるので、ユーザーにとっては原稿固定方式よりも便利である。
しかし、原稿移動方式では、プラテン上に何らかの汚れが付着していると、読み取られた画像データにプラテン上の汚れが原稿の副走査方向(原稿の搬送方向)に沿って直線状に延びるスジとして表れてしまう。
【0006】
なお、プラテン上に汚れが付着する原因は様々であるが、なかでも油性インクが用いられた原稿を原稿移動方式で連続的に読み取る場合に付着し易い。
というのは、油性インクが用いられた原稿を原稿移動方式で連続的に読み取ると、プラテンに対して原稿が連続的に摺擦されるため、摩擦熱によってプラテンが熱をもち、熱を受けて軟化した油性インクがプラテン上に汚れとして付着してしまうのである。
【0007】
特許文献1に記載のものでは、画像読取手段を収容した透明な回転保護部材が搬送される原稿と一緒に回転し、回転保護部材が画像読取面(プラテン)の役割を果たすため、回転保護部材に汚れが付着していても画像読取面は常に新しい面に更新されることとなり、読み取られた画像データにおいて、回転保護部材に付着した汚れが直線状のスジとなって表れることが防止される。
【0008】
しかし、搬送される原稿を一緒に回転する透明な回転保護部材に画像読取手段が収容されているため、原稿移動方式には対応できるが、原稿に対して画像読取手段の移動が必要となる原稿固定方式には対応できない。
このため、原稿固定方式用に別の画像読取手段を設ける必要があり、コストの面からみて好ましくない。
【0009】
一方、特許文献2に記載のものでは、透明シートが一対のリールによって巻き回され、透明シートが画像読取面(プラテン)の役割を果たすため、透明シートに汚れが付着していても、画像読取面は常に新しい面に更新されることとなり、読み取られた画像データにおいて透明シートに付着した汚れが直線状のスジとなって表れることが防止される。
【0010】
しかし、透明シートは無端状であって一対のリールによって巻き回されることから、画像読取手段の光源から発せられた走査光は透明シートを2回透過してから原稿を照射することとなり、さらに、原稿から反射された走査光も透明シートを2回透過してからミラーに達することとなる。
このため、走査光が透明シートを透過する度に減衰し、画像の鮮明度や明るさの調整などの点で課題が残る。
【0011】
この発明は以上のような事情を考慮してなされたものであり、原稿移動方式で画像読取が行われる場合に、プラテン上の汚れが副走査方向に沿って延びる直線上のスジとなって表れる現象を防止でき、1つの画像読取手段で原稿固定方式と原稿移動方式の両方式に対応でき、さらには、原稿移動方式においても画像を鮮明に読み取ることができる原稿読取装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、原稿を原稿搬送路に沿って搬送する原稿送り手段と、搬送されてきた原稿の画像を読み取る画像読取手段と、画像読取手段と搬送される原稿との間に介在する有端で長尺状の透明シートと、透明シートを原稿の搬送方向と平行な方向に移動させる透明シート移動手段とを備え、透明シート移動手段は所定の間隔を空けて配置され透明シートを送り出して巻き取る一対の第1リールと第2リールとを有し、透明シートは第1および第2リールの間で搬送される原稿と共に移動する原稿読取装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、画像読取手段と搬送される原稿との間に透明シートが介在し、この透明シートは透明シート移動手段によって搬送される原稿と共に移動させられるので、透明シートは画像読取手段に対して常に新しい面に更新されることとなり、透明シートに汚れが付着しても、この汚れが読み取られた画像データにおいて直線状のスジとなって表れることを防止できる。
【0014】
また、直線状のスジを防止する手段が搬送される原稿と共に移動する透明シートであることから、画像読取手段と透明シートとの間には物理的な相関関係がなく画像読取手段は透明シートに対して移動可能であるため、1つの画像読取手段で原稿固定方式と原稿移動方式に対応できる。
【0015】
さらに、透明シートが有端であって所定の間隔を空けて配置された第1リールと第2リールの間で送り出され巻き取られるので、画像読取手段と原稿との間には1枚の透明シートしか介在しないこととなり、鮮明な画像を読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明による原稿読取装置は、原稿を原稿搬送路に沿って搬送する原稿送り手段と、搬送されてきた原稿の画像を読み取る画像読取手段と、画像読取手段と搬送される原稿との間に介在する有端で長尺状の透明シートと、透明シートを原稿の搬送方向と平行な方向に移動させる透明シート移動手段とを備え、透明シート移動手段は所定の間隔を空けて配置され透明シートを送り出して巻き取る一対の第1リールと第2リールとを有し、透明シートは第1および第2リールの間で搬送される原稿と共に移動することを特徴とする。
【0017】
この発明による原稿読取装置において、原稿送り手段とは、原稿搬送路に沿って原稿を搬送できるものであればよく、その構成は特に限定されないが、具体例としては、公知の自動原稿送り装置(ADF)を挙げることができる。
画像読取手段とは、搬送されてくる原稿の画像を走査し電子的な画像データに変換できるものであればよく、その構成は特に限定されないが、例えば、走査光を発する光源、ミラー群、レンズ、CCDとから構成される縮小光学系の画像読取手段を挙げることができる。
【0018】
透明シートは、有端で長尺状のものであればよく、特にその材質や形状は限定されないが、例えば、原稿の主走査方向と同じかそれ以上の幅を有し、
厚さ25〜200μm程度、長さ10〜200m程度で摺動性に優れた材質からなるものが好ましい。
透明シート移動手段を構成する第1リールと第2リールは、透明シートを原稿の搬送方向と平行な方向に移動させるために所定の間隔を空けて配置されたものであればよく、その構成は特に限定されない。
なお、透明シートの移動速度は、必ずしも原稿の搬送速度と同じである必要はなく、場合によっては、原稿の搬送速度よりも遅い速度で移動させられてもよい。
【0019】
この発明による原稿読取装置において、画像読取手段は、搬送される原稿を支える透明な支持板と、原稿の画像を走査するために走査光を発する光源とを備え、支持板には原稿の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に沿って所定幅で延びる開口部が形成され、光源から照射された走査光は開口部を通過し透明シートを介して原稿に照射されることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、光源から発せられた走査光は、開口部を通過し透明シートのみを介して原稿に照射されるので、走査光の減衰や散乱を極力抑えて鮮明な画像を読み取ることができる。
なお、開口部の幅に特に制限はないが、好ましくは副走査方向、つまり原稿の搬送方向に約2〜3mmである。
というのは、2mmよりも狭く設定すると、実際の製品の組立て精度によっては光源から発せられた走査光の一部が開口部でけられてしまう恐れがあるからである。一方、3mmよりも広くなると透明シートが開口部で撓み、原稿を所定の位置で支持できなくなる恐れがある。
【0021】
この発明による原稿読取装置において、透明シートは少なくともその表面がフッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂からなることが好ましい。
このような構成によれば、透明シートの表面の摩擦係数が低くなり摺動性に優れたものとなることから、透明シートを原稿の搬送速度よりも遅い速度で移動させた場合でも、透明シートが原稿との摩擦によって熱を帯びることが防止され、原稿の油性インク等が透明シートに付着することを防止できる。
【0022】
透明シートの表面がフッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂からなる上記構成において、フッ素系樹脂が用いられる場合、フッ素系樹脂は四フッ化エチレン樹脂(PTFE)であることが好ましい。
というのは、PTFEは、摩擦係数が極めて低く(あらゆる固体の中で最小)、さらには耐熱性に優れているため(260℃で長期の使用が可能)、透明シートの表面を構成する材料として好適であるからである。
【0023】
この発明による原稿読取装置において、透明シートは原稿と対向する表面に帯電防止処理が施されていることが好ましい。
このような構成によれば、透明シートが原稿の搬送速度よりも遅い速度で移動させられ、原稿と透明シートが互いに摺擦される状態となっても透明シートが摩擦帯電せず、塵芥が透明シートに静電吸着されることを防止できる。この結果、透明シートが汚れにくくなり、良好な画像読取を行うことができる。
【0024】
なお、帯電防止処理には、透明シートを作製する際に例えば、ポリエチレンオキシドなどのイオン導電化材を配合する方法や、作製された透明シートの表面に例えば、カチオン活性剤などの帯電防止材をコーティングする方法などが挙げられる。
また、上述の透明シートの表面がフッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂で構成されたものである場合、原稿との摩擦そのものが極力抑えられるので、特に帯電防止処理を施さなくても透明シートの摩擦帯電が防止される。
【0025】
この発明による原稿読取装置において、原稿送り手段は、搬送すべき原稿が載置される原稿載置台と、原稿載置台に載置された原稿の厚さを測定して載置された原稿の枚数を推定する原稿枚数測定センサとを備え、透明シート移動手段は、原稿枚数測定センサによって推定された原稿の枚数が所定の枚数以下である場合に、原稿の搬送速度よりも遅い速度で透明シートを移動させてもよい。
【0026】
このような構成によれば、透明シートが、第1又は第2リールから送り出され、第2又は第1リールに全て巻き取られるまでの時間を長くすることができるので、結果として透明シートの消費が抑えられ、原稿読取装置の稼動時間を長くすることができる。
なお、この場合、透明シートの移動速度が原稿の搬送速度よりも遅くなるので、当然、原稿と透明シートは互いに摺擦される状態となり、透明シートは摩擦熱によってある程度の熱を帯びることとなるが、所定の枚数以下であれば、摩擦熱によって原稿の油性インクが透明シートに付着するなどの悪影響は最小限に抑えられる。
【0027】
また、透明シートに汚れが付着していれば、原稿の搬送速度と透明シートの移動速度に差があることから、読み取られた画像データにおいて透明シートの汚れが直線状のスジに延びて表れることとなるが、透明シートが停止するわけではないので、スジの距離は短くて済み、無視できる程度のものとなる。
しかし、透明シートの移動速度を極端に遅くすると直線状のスジをなくす効果が薄らいでしまうため、原稿の搬送速度に対して透明シートの移動速度を遅くする場合であっても、透明シートの移動速度は原稿の搬送速度の1/3〜原等速の範囲内で設定されることが好ましい。
【0028】
この発明による原稿読取装置において、透明シート移動手段は、第1リールから送り出された透明シートが全て第2リールに巻き取られた際に、第1および第2リールの回転方向を逆転させ第2リールから第1リールへ向かって透明シートを送り出してもよい。
このような構成によれば、透明シートが第1又は第2リールに全て巻き取られ次第、第1及び第2リールの回転方向を逆転させて透明シートを巻き戻すので、透明リールの残量に係わりなく常に原稿読取装置を稼動状態とすることができる。
【0029】
この場合、巻き戻し時には原稿の搬送方向と逆方向に透明シートが移動することとなるが、透明シートの表面が摩擦係数の小さな摺動性に優れたものであれば、原稿と透明シートとの摺擦による摩擦は無視できる程度のものとなり、透明シートが摩擦によって熱を帯びる恐れはない。
また、原稿の搬送方向と逆方向に透明シートが移動するので、透明シート上の汚れが、読み取られた画像データにおいて、若干、直線状に延びたスジとなって表れることとなるが、その長さは短いので無視できる程度のものとなる。
なお、画像品質を最優先するのであれば、透明シートの巻き戻し時には画像読取を一時休止させる設定としてもよい。
【0030】
この発明は別の観点からみると、上述のこの発明による原稿読取装置に用いられる部品であって、有端で長尺状の透明シートと、一対の第1リールおよび第2リールと、第1および第2リールを回転可能に保持する筐体とを備え、透明シートは両端が第1および第2リールにそれぞれ固定されたうえで第1リールに巻き取られてなる透明シートカートリッジを提供するものでもある。
【0031】
つまり、この発明による上記の原稿読取装置において、透明シートは消耗品であるため、透明シートの汚れ具合によって交換されることが好ましい。
このような観点からして、透明シートと第1および第2リールをカートリッジ化し、該カートリッジが原稿読取装置に対して着脱可能となるように構成されていれば、原稿読取装置のメンテナンスが容易になる。
【0032】
この発明による上記の透明シートカートリッジにおいて、透明シートは少なくともその表面がフッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂からなることが好ましい。その理由は原稿読取装置の説明で述べた通りである。
このような構成からなる透明シートカートリッジにおいて、フッ素系樹脂が用いられる場合、フッ素系樹脂は四フッ化エチレン樹脂であることが好ましい。その理由は原稿読取装置の説明で述べた通りである。
【0033】
また、この発明による上記の透明シートカートリッジにおいて、透明シートは表面に帯電防止処理が施されていることが好ましい。その理由は原稿読取装置の説明で述べた通りである。
【0034】
以下、図面に示す実施例に基づいてこの発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0035】
この発明の実施例による原稿読取装置について図1に基づいて説明する。
図1は実施例による原稿読取装置100の概略的な断面図を示している。
【0036】
図1に示されるように、概して、実施例による原稿読取装置100は、原稿を原稿搬送路4に沿って搬送する自動原稿送り装置(以下、「ADF」と称する)20と、搬送されてきた原稿の画像を読み取る画像読取手段30と、画像読取手段30と搬送される原稿Dとの間に介在する有端で長尺状の透明シート40と、透明シート40を原稿の搬送方向と平行な方向に移動させる透明シート移動手段50とを備え、透明シート移動手段50は所定の間隔を空けて配置され透明シート40を送り出して巻き取る一対の第1リール51と第2リール52とから構成され、透明シート40は第1および第2リール51,52の間で搬送される原稿Dと共に移動するように構成されている。
【0037】
図1に示される原稿読取装置100は複写機(図示せず)の上部に設けられるもので、上述の通り、原稿搬送路4に沿って自動的に原稿を搬送するADF20と、画像読取手段30と、透明シート40と、透明シート40を移動させる第1および第2リール51,52とから主に構成されている。
【0038】
ADF20は、原稿載置台1に載置された原稿を1枚ずつADF20の内部へ呼び込む呼び込みローラ2と、原稿の重ね送りを防止するための摺接部材3、呼び込まれた原稿を案内する原稿搬送路4と、原稿搬送路4への入紙を検出する入紙センサ5、原稿読取部7への給紙タイミングを調節するレジストローラ6、搬送ローラ8、画像読取を終えた原稿を排紙トレイ14へ排出する排紙ローラ9とから主に構成されている。
【0039】
また、ADF20は、上記構成に加え、両面読取を可能とするための、揺動板10、中間トレイ11およびスイッチバック搬送路12を備えている。
両面読取が行われる場合、原稿読取部7にて表面側の画像が読み取られた原稿Dは、下側のホームポジションに移動した揺動板10に案内されながら中間トレイ11上に排出される。
この際、原稿Dの後端は可逆回転可能な排紙ローラ9によってチャックされ、逆回転する排紙ローラ9によってスイッチバック搬送路12へ送り出されて表裏が反転され、レジストローラ6を経て再び原稿読取部7を通過する。
【0040】
表裏が反転した状態で原稿読取部7を通過した原稿Dは搬送ローラ8、排紙ローラ9、揺動板10を経て再び中間トレイ11上に排出され、原稿の後端が排紙ローラ9によってチャックされる。
その後、逆回転する排紙ローラ9によって再びスイッチバック搬送路12へ送り出されて表裏が反転され、原稿搬送路4に沿って搬送された後、上側のホームポジションに移動した揺動板10に案内されて排紙トレイ14上に排紙される。
【0041】
つまり、両面読取が行われる場合、原稿は1回目に原稿読取部7を通過する際に表面側の画像が読み取られ、2回目に原稿読取部7を通過する際に裏面側の画像が読み取られる。
3回目に原稿読取部7を通過する際には画像の読取は行われない。3回目の搬送は、原稿載置台1に載置された通りの順番で排紙トレイ14に原稿Dを排紙するための空送りと呼ばれる搬送で、これによって原稿Dの表裏が元通りに整えられてから排紙トレイ14上に排紙されることとなる。
【0042】
画像読取手段30は、光源31、第1ミラー32、第2ミラー33、第3ミラー34、レンズ35、CCD36とから主に構成され、原稿読取部7に相当する位置に原稿移動方式用の第1プラテンガラス60が配置されている。
原稿移動方式用の第1プラテンガラス60は、主走査方向(原稿の搬送方向と直交する方向)に沿って延びる3mm幅の開口部60aが形成され、原稿搬送路4に露出する表面側が透明シート40で覆われている。
【0043】
透明シート40は有端の長尺状であって、一対の第1リール51と第2リール52の間で送り出されて巻き取られることにより第1プラテンガラス60の表面上を摺動する。
なお、図2に示されるように、透明シート40はポリエチレンテレフタレート(PET)からなる厚さ25μmの基材フィルム40aの表面上に、摩擦係数が極めて低いPTFEからなる摺動層40bが膜厚2μm程度にわたってコーティングされたものである。
平面寸法は、A3サイズの原稿に対応できるように幅が320mmで、長さが50mである。
【0044】
図1に示されるように、光源31から発せられた走査光Lは第1プラテンガラス60の開口部60aを通過し、透明シート40を介して原稿Dに照射され、原稿から反射した走査光Lは透明シート40を介して第1ミラー32に入射した後、第2および第3ミラー33,34によって順次光路変換され、レンズ35を介してCCD36に結像し、電子的な画像データに変換される。
【0045】
このような読取が行われる際、透明シート40は第1および第2リール51,52の間で送り出されて巻き取られ、原稿Dと共に搬送方向に向かって移動するので、従来の課題であったプラテンガラス上の汚れが直線状に延びるスジとなって表れる現象が防止される。
すなわち、透明シート40の移動速度Dが原稿の搬送速度と同じである場合、透明シート40に付着した汚れは、単なる汚れとして読み取られるので、読み取られた画像データにおいて、透明シート40に付着した汚れが直線状に延びるスジとして表れることはない。
【0046】
また、光源31から発せられた走査光Lは、第1プラテンガラス60を透過することなく、透明シート40のみを介して原稿Dに照射されるので、走査光Lの減衰や散乱が極力抑えられ、鮮明な画像を読み取ることができる。
【0047】
透明シート40が第1リール51から送り出され第2リール52に全て巻き取られると、第1リール51と第2リール52は自動的に回転方向が逆転し、こんどは第2リール52から透明シート40が送り出され第1リール51に巻き取られる。
この際、透明シート40は原稿Dの搬送方向と逆方向に移動するので、原稿Dと透明シート40は互いに摺擦する状態となるが、上述の通り、透明シート40はその表面が摩擦係数の極めて低いPTFEからなる摺動層40b(図2参照)によってコーティングされているので、摩擦によって透明シート40が熱を帯びることはない。
したがって、油性インクなどが用いられた原稿Dであっても、それが乾燥している限り、透明シート40に付着することはない。
また、原稿Dと透明シート40との摩擦が極力抑えられることから、透明シート40が摩擦帯電し、塵芥を静電吸着してしまうこともない。
【0048】
ADF20の原稿載置台1には載置された原稿の厚さを測定する原稿枚数測定センサ13が設けられており、図示しない制御部は原稿枚数測定センサ13の出力に基づいて、原稿載置台1に載置された原稿Dの枚数を推定する。
透明シート40の移動速度は、基本的に原稿Dの搬送速度と等速となるように設定されるが、制御部は原稿載置台1に載置された原稿Dが10枚以下であると判断した場合に、透明シート40の移動速度を原稿Dの搬送速度の1/3に設定変更する。
これは、原稿Dが10枚以下であれば、原稿Dが連続搬送されても透明シート40との摩擦による発熱の影響が少なくて済むことを利用し、透明シート40の消耗を抑え、透明シートの交換サイクルを長くすることを目的とするものである。
【0049】
図3に示されるように、ADF20は第1プラテンガラス60以外に、原稿固定方式用の第2プラテンガラス70を備えている。
ユーザーが原稿固定方式を選択した場合には、ユーザーの手によって第2プラテンガラス70上に原稿(図示せず)が載置され、画像読取手段30によって画像の読取が行われる。
この際、光源31、第1〜第3ミラー32,33,34は、図1に示される原稿移動方式で原稿Dの画像を読み取る場合のホームポジションから、図3に示される原稿固定方式で原稿Dの画像を読み取る場合のホームポジションに移動する。
【0050】
その後、ユーザーから画像読取開始の要求がなされると、光源31と第1ミラー32は原稿に対して所定の速度で副走査方向に移動しながら原稿を走査し、これと同時に第2および第3ミラー33,34は、光源31および第1ミラー32の移動速度の1/2の速度で副走査方向に移動し、原稿移動方式と同様に原稿から反射されてきた走査光Lをレンズ35を介してCCD36に結像させる。
このように、実施例による原稿読取装置100は、1つの画像読取手段30で原稿移動方式と原稿固定方式の両方式に対応している。
【0051】
ところで、透明シート40は繰り返し使用されるにしたがって、その表面に徐々に汚れが付着していく。
このため、汚れの付着が著しく目立つようになり、これが画像品質に影響を及ぼすようになった場合には、透明シート40を交換する必要がある。
図4に示されるように、透明シート40は透明シートカートリッジ80に収容されており、使用済みの透明シートカートリッジ80を原稿読取装置100(図1参照)から取り外し、新しい透明シートカートリッジ80を原稿読取装置100に装着することにより、透明シート40の交換が容易に行えるように構成されている。
【0052】
図4に示される透明シートカートリッジは、透明シート40と、第1および第2リール51,52と、第1および第2リール51,52を回転可能に保持する筐体81とから構成され、透明シート40は両端が第1および第2リール51,52に固定されたうえで第1リール51に巻き取られている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施例による原稿読取装置の概略的な断面図である。
【図2】透明シートの断面を示す断面図である。
【図3】実施例による原稿読取装置の概略的な断面図であり、原稿固定方式で原稿の画像を読み取る場合の光源および第1〜第3ミラーのホームポジションを示している。
【図4】図1に示される原稿読取装置に着脱自在に装着される透明シートカートリッジを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・原稿載置台
2・・・呼び込みローラ
3・・・摺接部材
4・・・原稿搬送路
5・・・入紙センサ
6・・・レジストローラ
7・・・原稿読取部
8・・・搬送ローラ
9・・・排紙ローラ
10・・・揺動板
11・・・中間トレイ
12・・・スイッチバック搬送路
13・・・原稿枚数測定センサ
14・・・排紙トレイ
20・・・自動原稿送り装置(ADF)
30・・・画像読取手段
31・・・光源
32・・・第1ミラー
33・・・第2ミラー
34・・・第3ミラー
35・・・レンズ
36・・・CCD
40・・・透明シート
40a・・・基材フィルム
40b・・・摺動層
50・・・透明シート移動手段
51・・・第1リール
52・・・第2リール
60・・・第1プラテンガラス
60a・・・開口部
70・・・第2プラテンガラス
80・・・透明シートカートリッジ
81・・・筐体
100・・・原稿読取装置
D・・・原稿
L・・・走査光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を原稿搬送路に沿って搬送する原稿送り手段と、搬送されてきた原稿の画像を読み取る画像読取手段と、画像読取手段と搬送される原稿との間に介在する有端で長尺状の透明シートと、透明シートを原稿の搬送方向と平行な方向に移動させる透明シート移動手段とを備え、透明シート移動手段は所定の間隔を空けて配置され透明シートを送り出して巻き取る一対の第1リールと第2リールとを有し、透明シートは第1および第2リールの間で搬送される原稿と共に移動する原稿読取装置。
【請求項2】
画像読取手段は、搬送される原稿を支える透明な支持板と、原稿の画像を走査するために走査光を発する光源とを備え、支持板には原稿の搬送方向と直交する方向に沿って所定幅で延びる開口部が形成され、光源から照射された走査光は開口部を通過し透明シートを介して原稿に照射される請求項1に記載の原稿読取装置。
【請求項3】
透明シートは少なくとも原稿と対向する表面がフッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂からなる請求項1又は2に記載の原稿読取装置。
【請求項4】
フッ素系樹脂が四フッ化エチレン樹脂である請求項3に記載の原稿読取装置。
【請求項5】
透明シートは原稿と対向する表面に帯電防止処理が施されてなる請求項1〜4のいずれか1つに記載の原稿読取装置。
【請求項6】
原稿送り手段は、搬送すべき原稿が載置される原稿載置台と、原稿載置台に載置された原稿の厚さを測定して載置された原稿の枚数を推定する原稿枚数測定センサとを備え、透明シート移動手段は、原稿枚数測定センサによって推定された原稿の枚数が所定の枚数以下である場合に、原稿の搬送速度よりも遅い速度で透明シートを移動させる請求項1〜5のいずれか1つに記載の原稿読取装置。
【請求項7】
透明シート移動手段は、第1リールから送り出された透明シートが全て第2リールに巻き取られた際に、第1および第2リールの回転方向を逆転させ第2リールから第1リールへ向かって透明シートを送り出す請求項1〜6のいずれか1つに記載の原稿読取装置。
【請求項8】
請求項1に記載の原稿読取装置に着脱自在に装着される部品であって、有端で長尺状の透明シートと、一対の第1リールおよび第2リールと、第1および第2リールを回転可能に保持する筐体とを備え、透明シートは両端が第1および第2リールにそれぞれ固定されたうえで第1リールに巻き取られてなる透明シートカートリッジ。
【請求項9】
透明シートは少なくともその表面がフッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂からなる請求項8に記載の透明シートカートリッジ。
【請求項10】
フッ素系樹脂が四フッ化エチレン樹脂である請求項9に記載の透明シートカートリッジ。
【請求項11】
透明シートは表面に帯電防止処理が施されてなる請求項8〜10のいずれか1つに記載の透明シートカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−253908(P2006−253908A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65673(P2005−65673)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】