説明

原稿読取装置及び画像形成装置

【課題】原稿載置の際の操作性に優れると共に製作が容易で且つ低コストでありながら、原稿押圧部材の原稿台への接離の際の原稿ずれを抑制でき、これにより位置精度の優れた原稿の読み取りが可能な原稿読取装置、及び位置精度の優れた原稿画像の形成が可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】原稿Pが載置される原稿台20と、原稿Pの位置決めを行うための位置決め部3と、原稿Pの画像を光学的に読み取る読取部30と、原稿台20上に載置された原稿Pを押さえるための原稿押圧部材4とを備えた原稿読取装置1において、原稿台20上に載置される原稿Pを吸着保持するための誘電体部5を備え、位置決め部3は、原稿台20の少なくとも一辺側を基準に位置決めするものであり、誘電体部5は、原稿台20の一部を構成し、該原稿台20における前記位置決め側の端部領域αの少なくとも一部α1に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に用いられる原稿読取装置に関し、詳しくは、原稿(特に比較的薄いシート原稿)の原稿台への載置時に発生し得るずれを効果的に防止できる原稿読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィス文書等の文書データの電子化処理や記録媒体への画像形成などのために原稿の画像を読み取るスキャナ装置等の原稿読取装置が利用されている。
【0003】
従来の原稿読取装置は、一般的に、原稿が載置される原稿台と、原稿台上に載置される原稿の位置決めを行うための位置決め部と、原稿の画像を光学的に読み取る読取部と、原稿台上に載置された原稿を押さえるための原稿押圧部材(例えば、原稿台に対して開閉可能な原稿押圧板(原稿押さえ、オリジナルカバーともいう。))とを備えている。
【0004】
このような原稿読取装置においては、原稿は、原稿台に載置された位置決め部にて所定の適正位置に位置決めされた後、原稿押圧部材にて押さえられて該原稿台上で画像が読取部にて読み取られる。
【0005】
このような原稿画像の読み取りにあたり、原稿押圧部材が原稿台へ接離される際に、原稿台近傍の空気の流れや原稿押圧部材の押圧力等の影響を受け、原稿(特に比較的薄いシート原稿)が適正位置よりずれてしまうことがあり、取り込んだ画像が適正位置に記録されなかったり、形成画像が傾いたものになってしまったりという不都合があった。
【0006】
かかる不都合に対して、従来の原稿読取装置では、原稿が配置されるにあたり、原稿押圧部材にて原稿を押さえる前に、仮固定するという対策が講じられている。
【0007】
例えば、コンタクトガラス(原稿台)に対し接離可能に設けられる原稿押圧板にシート原稿を被覆可能な大きさの誘電体板を設けて原稿押圧板自体に原稿を吸着することで該原稿を原稿押圧板に保持する技術(下記特許文献1参照)や、透明板(原稿台)の上面に、互いに正負それぞれの電荷が帯電される線状の電極パターンを形成して原稿を原稿台に吸着することで該原稿を原稿台に保持する技術(下記特許文献2参照)などが提案されている。
【特許文献1】実特昭63−185137号公報
【特許文献2】特開2005−70588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、原稿押圧板にシート原稿を被覆可能な大きさの誘電体板を設ける必要があるため、原稿押圧板に全面的に誘電体を作製しなければならず、製造面での困難さやコストアップにつながるという問題がある。また、原稿を読み取る際には、操作者が原稿を原稿押圧板に取り付ける必要があるため、原稿押圧板への原稿の配置に気を使うといった操作性の問題もある。
【0009】
また、特許文献2記載の技術では、線状の電極パターンを複数作製する必要があるが、原稿読み取りの際に該電極パターンが読み取りに影響しないように該電極パターンを薄くしなければならないため、非常に精密なコーティング技術を必要とし、また、線状の電極パターンを透明板(原稿台)に全面的に作製しなければならないため、コストがかさむという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、原稿載置の際の操作性に優れると共に製作が容易で且つ低コストでありながら、原稿押圧部材の原稿台への接離の際の原稿ずれを抑制でき、これにより位置精度の優れた原稿の読み取りが可能な原稿読取装置を提供することを一の目的とする。
【0011】
また、本発明は、位置精度の優れた原稿画像を形成することが可能な画像形成装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するために、原稿が載置される原稿台と、前記原稿台上に載置される原稿の位置決めを行うための位置決め部と、前記原稿の画像を光学的に読み取る読取部と、前記原稿台上に載置された原稿を押さえるための原稿押圧部材とを備えた原稿読取装置において、前記原稿台上に載置される原稿を吸着保持するための誘電体部を備え、前記位置決め部は、前記原稿台の少なくとも一辺側を基準に原稿を位置決めするものであり、前記誘電体部は、前記原稿台の一部を構成し、該原稿台における前記位置決め側の端部領域の少なくとも一部に位置していることを特徴とする原稿読取装置を提供する。
【0013】
本発明に係る原稿読取装置では、原稿は前記原稿台に載置される。このとき、原稿は、前記原稿台の少なくとも一辺側を基準に位置決めする前記位置決め部にて所定の適正な位置に位置決めされる。そして、前記原稿台における前記位置決め側の端部領域の少なくとも一部に位置している前記誘電体部が、該原稿台上に載置される原稿を吸着保持する。
【0014】
このように、本発明に係る原稿読取装置によれば、原稿が前記原稿台に載置されるので、原稿載置の際の操作性に優れる。さらに、前記誘電体部は、前記原稿台における前記位置決め側の端部領域の少なくとも一部に位置しているので、それだけ容易に製作することができると共に製作コストを低く抑えることができる。さらに、前記誘電体部は、前記原稿台上に載置される原稿を吸着保持できるので、前記原稿押圧部材の前記原稿台への接離の際に発生し得る気流等の影響で原稿が適正位置よりずれることを抑えることができ、従って、位置精度の優れた原稿の読み取りを行うことが可能となる。このことは、基準となる標準的な厚みの原稿よりも薄いシート原稿に対して特に有効である。
【0015】
本発明に係る原稿読取装置の具体的態様として、次の態様を例示できる。即ち、前記原稿読取装置は、原稿を主走査方向及び副走査方向に走査して画像を読み取る前記読取部を備えたスキャナ装置であり、前記位置決め部は、前記原稿台の少なくとも前記副走査方向上流側を基準に原稿を位置決めするものであり、前記誘電体部は、前記原稿台における前記副走査方向上流側の端部領域に位置している態様である。
【0016】
本発明に係る原稿読取装置において、前記誘電体部としては、誘電率が高い材料を例示でき、例えば、ポリフッ化ビニリデンよりなる誘電体と、該誘電体に電気的に接続される一対の電極とを含むものを挙げることできる。前記誘電体の誘電率が高いほど、少しの印加電力で前記誘電体部を効果的に駆動できる。また、このポリフッ化ビニリデンは耐熱性が高い上に離型性も高いため、量産製造に利用しやすい。
【0017】
前記誘電体部における前記一対の電極は、互いに対向する側のパターンが交互に配置された凹凸形状とされていることが好ましい。こうすることで、原稿の前記誘電体部との吸着領域での電極密度を向上させることができ、それだけ少ない印加電圧で吸着力を強化することができる。
【0018】
本発明に係る原稿読取装置において、前記位置決め部は、原稿に当接されることで該原稿の移動を規制するように前記原稿台の原稿載置面より突出した2個以上の位置決めリブとされており、前記2個以上の位置決めリブは、前記原稿台の少なくとも1つの角部に直角をなすように配設されている態様を例示できる。かかる態様では、前記少なくとも1つの角部に直角をなすように配設された前記2個以上の位置決めリブを基準にして原稿を配置できるため、原稿のずれをさらに抑制することができる。
【0019】
本発明に係る原稿読取装置において、前記誘電体部へ通電する通電状態と前記誘電体部への通電を遮断する遮断状態とを切り換える切換スイッチを備えていてもよい。こうすることで、操作者が必要に応じて前記切換スイッチを前記通電状態と前記遮断状態とに切り換えることができる。これにより、利便性を向上させることができ、前記誘電体部の無駄な吸着動作をなくすことができる。
【0020】
本発明に係る原稿読取装置において、前記原稿押圧部材は、前記原稿台に対して開閉可能な原稿押圧板とされていてもよい。この場合、前記切換スイッチは、前記原稿押圧板の開閉動作に連動して前記誘電体部の前記通電状態と前記遮断状態とを切り換える切り換え動作を行う自動スイッチ構成とされている態様を例示できる。かかる態様では、前記原稿押圧板の開閉動作の途中で前記誘電体部を前記通電状態にできるので、この開閉動作の途中で生じやすい原稿のずれを自動的に抑制することができる。具体的には、前記切換スイッチは、前記原稿押圧板が開いた開放姿勢から原稿を前記原稿台に押しつけた閉じ姿勢へ移行する動作のときに、その移行途中で前記誘電体部を前記通電状態に切り換える動作を行う一方、前記原稿押圧板の前記閉じ姿勢から前記開放姿勢へ移行する動作のときに、その移行途中で前記誘電体部を前記遮断状態に切り換える切り換え動作を行うように構成され得る。
【0021】
本発明はまた、前記本発明に係る原稿読取装置と、該原稿読取装置における前記読取部で読み取られた画像データに基づき画像を記録媒体に形成する画像形成部とを備える画像形成装置も提供する。
【0022】
本発明に係る画像形成装置によれば、前記本発明に係る原稿読取装置における前記読取部からの画像データに基づき画像を記録媒体に形成するので、位置精度の優れた画像を記録媒体に形成することができる。
【0023】
本発明に係る画像形成装置において、前記原稿読取装置における前記読取部で読み取られた画像データに基づき、記録媒体に形成すべき画像の適正位置に対し前記画像形成部にて該記録媒体に形成する画像の印刷位置を一致させるように前記画像形成部を制御する制御手段を備える態様を例示できる。この態様では、たとえ前記適正位置に対して前記原稿読取装置における前記読取部で読み取られた画像データにずれがある場合でも、前記制御手段によって前記適正位置に対し前記印刷位置を一致させるように前記画像形成部を制御するので、記録媒体の前記適正位置に画像を形成することができ、それだけ位置精度の優れた画像を記録媒体に形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によると、原稿載置の際の操作性に優れると共に製作が容易で且つ低コストでありながら、原稿のずれを抑制でき、これにより位置精度の優れた原稿の読み取りが可能な原稿読取装置を提供することができる。
【0025】
また、本発明によると、位置精度の優れた原稿画像を形成することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0027】
図1は、本発明に係る原稿読取装置の一実施形態であるスキャナ装置1の概観斜視図である。図2は、図1に示すスキャナ装置1の概略構成を示す部分側面図である。
【0028】
[スキャナ装置1の全体構成について]
図1及び図2に示すように、スキャナ装置1は、水平に配設された原稿台20と、原稿台20上に載置されるシート原稿P(図1では図示せず、図2参照)の位置決めを行うための位置決め部3と、位置決め部3にて位置決めされた原稿Pの画像を光学的に読み取る読取部30(図1では図示せず、図2参照)と、原稿台20上に載置された原稿Pを押さえるための原稿押圧部材4(図2では図示せず、図1参照)とを備えている。
【0029】
このスキャナ装置1は、デジタル複写機等の画像形成装置100(図1では図示せず、図2参照)の上部に設けられるようになっている。読取部30は、ここでは、原稿Pを該原稿Pの読み取り面に沿った主走査方向(図中X方向)に光学的に走査すると共に主走査方向Xに直交し且つ該原稿Pの読み取り面に沿った副走査方向(図中Y方向)に移動しながら光学的に走査して画像を読み取るものである。スキャナ装置1は、主として読取部30を収容する原稿走査部50から構成されている。原稿走査部50は、取り付け部材(図示せず)によって画像形成装置100本体に連結されている。
【0030】
原稿走査部50は、ユーザーが原稿Pを原稿台20上に載置して原稿画像の読み取りを行う原稿固定方式による画像読み取り動作を行うようになっている。
【0031】
即ち、原稿走査部50は、図2に示すように、筐体51と、原稿台20と、該原稿台20に隣接して設けられる位置決め部3と、筐体51内に収容される読取部30とを備えている。なお、原稿台20、位置決め部3及び原稿押圧部材4については、後ほど詳しく説明する。
【0032】
読取部30は、原稿Pが原稿押圧部材4にて押さえられた状態で原稿Pの画像を読み取るようになっている。読取部30は、ここでは、光源31及び第1ミラー32を有する光源ユニット33と、第2ミラー34及び第3ミラー35を有するミラーユニット36と、レンズ37及び撮像素子38を有する撮像ユニット39とを備えている。そして、読取部30は、光源31にて原稿Pに光照射しつつ該原稿Pを光学的に走査して該原稿Pからの反射光を画像データとして読み取るようになっている。具体的には、読取部30は、光源31、ミラー群(ここでは第1〜第3ミラー32,34,35)、レンズ37及びCCD(イメージセンサ)等の撮像素子38から構成される縮小光学系の読取部とされている。
【0033】
この原稿走査部50では、原稿Pの画像を読み取るにあたり、光源ユニット33及びミラーユニット36は、ホームポジションにそれぞれ移動する。その後、光源ユニット33は原稿Pに対して光を照射しながら主走査方向Xに走査しつつ一定の速度で副走査方向Yに移動して原稿Pの画像を読み取り、それと同時にミラーユニット36は光源ユニット33の移動速度の1/2の移動速度で同じく副走査方向Yに移動する。
【0034】
光源ユニット33の光源31から原稿Pへ光照射されて該原稿Pから反射した反射光は、光源ユニット33に設けられた第1ミラー32で反射したのち、ミラーユニット36の第2及び第3ミラー34,35によって180°光路変換され、第3ミラー35から反射された光はレンズ37を介して撮像素子38に結像し、ここで原稿画像が読み取られて電気的な画像データに変換される。そして、この画像データは、画像形成装置100における後述する画像形成部110に入力されるようになっている。
【0035】
図1及び図2に示すスキャナ装置1はさらに制御部101を備えている。図3は、図1及び図2に示すスキャナ装置1の制御部101を中心に示す電気的構成の概略ブロック図である。
【0036】
図1及び図2に示すスキャナ装置1は、前記の構成に加えて、制御部101と、画像処理部102と、記憶部103と、操作部104と、原稿走査部駆動モータ105aを駆動制御するドライバ105とを備えている。
【0037】
制御部101は、装置全体の動作制御を行う部分であり、図示は省略したがCPU等の情報処理部、ROM、RAM等のメモリ部によって構成されている。
【0038】
画像処理部102は、図2に示す読取部30で読み取った光学データを、ページ単位で電気的な画像データに変換するものである。記憶部103は、例えばRAM、EEPROMなどで構成され、制御部101によって制御される制御中のデータ、入力された各種指示内容を記憶するものである。また、記憶部103は、読取部30で読み取った原稿画像を一時的に記憶するようになっている。
【0039】
操作部104は、図1に示すスキャナ装置1の手前側に配置されている。また、操作部104は、原稿読み取りの指示を行う操作部材や後述する切換スイッチ7などの人為操作可能な入力手段を備えている。
【0040】
原稿走査部駆動モータ105aは、原稿画像を読み取る場合に、光源ユニット33及びミラーユニット36を適宜の速度で副走査方向Yに移動させるためのモータであり、制御部101の制御により、ドライバ105によって適宜駆動制御されるものである。
【0041】
[本発明の特徴部分の説明]
このスキャナ装置1において、原稿押圧部材4は、ここでは、原稿台20に対して開閉可能とされ、原稿台20上に載置された読み取り原稿Pを読み取り面とは反対側から押さえる原稿押圧板とされている。なお、原稿押圧部材4は、原稿押圧板の他、原稿を自動搬送する原稿自動搬送装置の下面を構成する部材であってもよい。
【0042】
位置決め部3は、原稿台20の少なくとも一辺側を基準に原稿Pを位置決めするものである。詳しくは、位置決め部3は、原稿台20の少なくとも副走査方向Y上流側を基準に原稿Pを位置決めするものであり、原稿台20の少なくとも副走査方向Y上流側に隣設され得る。ここでは、位置決め部3は、原稿台20の副走査方向Y上流側端及び主走査方向X一方側端に隣接して設けられている。位置決め部3としては、位置決めリブを例示できる。位置決め部3は、例えば、スキャナ装置1の原稿載置側面(上面)カバー1aに一体形成され得る。
【0043】
そして、スキャナ装置1は、原稿台20上に載置される原稿Pを吸着保持するための誘電体部5を備えている。この誘電体部5は、原稿台20の一部を構成し、該原稿台20における前記位置決め側(具体的には位置決め部3側)の端部領域の少なくとも一部であって、読取部30による原稿画像の有効読取領域を含む領域に位置している。
【0044】
これについて図4を参照しながらさらに具体的に説明する。図4は、原稿台20の前記位置決め側の端部領域αを説明するための図であって、図4(A)は、スキャナ装置1における位置決め部3及び原稿台20の誘電体部5部分を中心に示す概略平面図であり、図4(B)は、その概略斜視図である。なお、図4(A)において、原稿台20の前記位置決め側の端部領域αは破線部分で示し、誘電体部5は斜線部分で示す。
【0045】
位置決め部3は、副走査方向Yにおいて原稿台20の上流側端部(副走査開始側端部)21aに隣設された第1位置決め部3aと、主走査方向Xにおいて原稿台20の一方側端部21bに隣設された第2位置決め部3bとを有している。第1位置決め部3aは、原稿台20上に載置される原稿Pの副走査方向Yに対して該原稿Pの該方向Y上流側端部を当接させて位置決めするようになっており、第2位置決め部3bは、原稿台20上に載置される原稿Pの主走査方向Xに対して該原稿Pの該方向X一方側端部を当接させて位置決めするようになっている。
【0046】
詳しくは、第1位置決め部3a及び第2位置決め部3bは、原稿台20に載置された原稿Pに当接されることで該原稿Pの移動を規制する当接面3a’,3b’を有している。第1位置決め部3a及び第2位置決め部3bは、原稿台20の原稿載置面(上面)20cより所定高さh(例えば1mm程度)だけ垂直方向(上方)に突出し(図2参照)且つ主走査方向X及び副走査方向Yにそれぞれ延びる位置決めリブとされている。
【0047】
ここで、原稿台20における前記位置決め側の端部領域α(α1,α2)とは、前記位置決め側(具体的には位置決め部3(3a,3b)に臨む側)の端部21(21a,21b)から所定の距離dだけ内側に入った領域を意味する。
【0048】
そして、誘電体部5は、原稿台20における端部領域αの幅方向全体、且つ、長手方向の全体又は一部に位置することができる。ここでは、誘電体部5は、原稿台20における端部領域α1,α2のうち、第1位置決め部3a側の端部領域α1に全域に亘って設けられている。
【0049】
原稿台20は、透明平板(ここでは透明なガラス板)2と誘電体部5とからなっている。さらに具体的には、誘電体部5は、板状部材とされている。誘電体部5及び透明平板2は、何れも矩形状のものとされている。誘電体部5は、長手方向が主走査方向Xに且つ短手方向が副走査方向Yに沿うように第1位置決め部3aに隣接して設けられている。また、透明平板2は、原稿載置面(上面)2cが誘電体部5の原稿載置側面(上面)5cに揃うと共に、長手方向が副走査方向Yに且つ短手方向が主走査方向Xに沿うように該誘電体部5に隣接して設けられている。即ち、第1位置決め部3aに隣接する原稿台20の誘電体部5及び透明平板2は、副走査方向Yの上流側から下流側へこの順に配置されている。
【0050】
誘電体部5は、ここでは、透明平板2の厚みと同程度の厚みとされている。即ち、原稿台20は、構成される誘電体部5及び透明平板2全体として矩形状の平板とされている。なお、透明平板2及び誘電体部5並びに位置決めリブ3a,3bは、スキャナ本体前後に設けられた2つの保持台板9の上に載置されて保持されるようになっている。
【0051】
誘電体部5は、ここでは光を透過しないものとされている。この点を考慮して、誘電体部5の幅dは、原稿Pの周縁部に一般的に設けられる余白部分の所定幅に相当する距離(例えば3mm程度)とすることができる。こうすることで、原稿Pの画像を読み取る場合、誘電体部5が光源31からの光を通すことができないため、原稿Pの誘電体部5に対応する部分は読み取ることができないものの、このように誘電体部5によって原稿Pの実際上不必要な読み取り部分が欠落しても実質的な問題にはならない。
【0052】
また、誘電体部5の幅dの下限値としては、誘電体部5の原稿Pへの吸着性を確保するという観点から、それには限定されないが、3mm程度を例示できる。
【0053】
以上説明したスキャナ装置1では、原稿Pを読み取るにあたり、原稿Pは操作者にて原稿台20上に載置される。このとき、原稿Pは、原稿台20に隣設された位置決め部3(3a,3b)に当接されて所定の適正な位置に位置決めされた状態で原稿台20に載置される。
【0054】
そして、原稿台20における位置決め部3側の端部領域αの少なくとも一部α1に位置する誘電体部5が、該原稿台20上に載置される原稿Pを吸着保持する。
【0055】
このように、スキャナ装置1によれば、原稿Pが原稿台20に載置されるので、原稿を原稿押圧板に取り付けるといった従来技術に比べ原稿載置の際の操作性を向上させることができる。さらに、誘電体部5は、原稿台20に全面的に設けられることなく、原稿台20における位置決め部3側の端部領域αの少なくとも一部α1に設けられるので、それだけ容易に製作することができると共に製作コストを低く抑えることができる。さらに、誘電体部5は、原稿台20上に載置される原稿Pを吸着保持するので、原稿押圧部材4の原稿台20への接離の際に発生することがある空気の流れ等の影響で原稿Pが位置決め部3にて適正位置に位置決めされた位置よりずれることを抑えることができ、従って、位置精度の優れた原稿P(特に薄いシート原稿)の読み取りを行うことが可能となる。
【0056】
本実施の形態においては、位置決めリブ3a、3bは、矩形状の原稿台20の副走査方向Y上流側端部21aと主走査方向X一方側端部21bとの角部Cに直角をなすように配設されている。こうすることで、1つの角部Cに直角をなすように配設された位置決めリブ3a,3bを基準にして原稿Pを配置できるため、原稿Pのずれを一層抑制することが可能となる。
【0057】
本実施の形態に係るスキャナ装置1は、誘電体部5へ通電する通電状態と誘電体部5への通電を遮断する遮断状態とを切り換える切換スイッチ7をさらに備えている。この切換スイッチ7を備えることにより、操作者が必要に応じて切換スイッチ7を前記通電状態と前記遮断状態とに切り換えることができ、例えば、操作者が正確な原稿Pの読み取りを必要とするときのみ、切換スイッチ7にて誘電体部5を前記通電状態にして原稿Pを吸着する動作に切り換えることができる。これにより、より使い勝手がよくなり、誘電体部5の無駄な吸着動作をなくすことができる。なお、切換スイッチ7は、ここでは、操作部104に設けられている。
【0058】
また、本実施の形態においては、原稿押圧部材4は既述のとおり原稿押圧板とされている。この原稿押圧部材4(以下、原稿押圧板という。)は、原稿台20に対して原稿Pを載置可能に全開した開放姿勢と、原稿Pを間にして原稿台20に密着した閉じ姿勢とをとり得るように一端側が軸支されている。さらに具体的には、原稿押圧板4は、主走査方向Xの一端側が原稿走査部50にヒンジ等の回動部材(図示せず)を介して設けられており、該回動部材によって副走査方向Yに沿った枢支軸回りに開閉自在に軸支されている。また、原稿押圧板4は、原稿台20上に載置された原稿Pを含む、原稿走査部50の原稿載置側面(上面)全体を押さえることができるように、矩形状のものとされている。
【0059】
ここで、原稿Pの誘電体部5への吸着保持について、図5を参照しながら具体的な動作説明を行う。図5は、原稿Pの誘電体部5への吸着保持動作を説明するための図であって、図5(A)は、原稿台20に原稿Pを載置した状態を示しており、図5(B)は、位置決め部3にて原稿Pを位置決めした後、切換スイッチ7をオン操作した状態を示しており、また、図5(C)は、位置決め部3にて原稿Pを位置決めして切換スイッチ7をオン操作した後、原稿押圧板4が前記閉じ姿勢をとっている状態を示している。
【0060】
本実施の形態では、角部Cに直角をなすように配設された位置決めリブ3a、3bを原稿配置の基準位置としているため、原稿Pは操作者によりその位置を基準に載置される。また、位置決めリブ3a,3bは、原稿台面20cより垂直方向に所定高さh(例えば約1mm)高くしているため、ほぼ基準位置に移動された原稿Pを適正位置に位置決めすることができる。このとき、図5(A)に示すように、原稿Pは原稿台20に単に置かれている(載せられている)だけで、固定されているわけではない。そのため、例えば、原稿押圧板4を閉める動作の際に、その風圧などの影響を受けて、原稿Pが適正位置からずれてしまうことがある。そこで、図5(B)に示すように、操作者により切換スイッチ7が操作される(オンされる)ことにより、原稿台20を構成する誘電体部5に誘電電界が生じ、原稿Pが原稿台20の誘電体部5に吸着されるようになる。その結果、図5(C)に示すように、原稿押圧板4が閉じられる際にも、原稿Pが基準位置の適正位置に確実に位置するように原稿Pを誘電体部5に吸着することができる。
【0061】
次に、誘電体部5の詳細について、図6を参照しながら説明する。図6は、誘電体部5の内部構造の一例を模式的に示す概略断面図である。
【0062】
誘電体部5は、誘電体51と、該誘電体51に電気的に接続される一対の電極52a,52bとを含んでいる。誘電体51は、誘電体部5の外側面(原稿載置面)5cを構成する外側面51cを有する矩形状のものとされている。誘電体51の外側面(原稿載置面)51cとは反対側の面には、一対の電極52a,52bが所定間隔をおいて配置されている。
【0063】
また、一対の電極52a,52bには、切換スイッチ7を介して電源8が接続されている。電源8は、直流電源とされている。一対の電極52a,52bにおいて、片方の電極(ここでは電極52a)にプラス極性のラインが接続されていると共に、もう1方の電極(ここでは電極52b)にマイナス極性のラインが接続されており、電源8から数kVの電圧が印加されるようになっている。
【0064】
誘電体部5は、さらに絶縁体53を含んでいる。絶縁体53は、誘電体51と同形状のものとされている。詳しくは、誘電体部5は、誘電体51に対して一対の電極52a,52bを挟持するように絶縁体53が設けられたサンドイッチ構造とされている。そして、誘電体51と絶縁体53との間には、絶縁材料54、例えば、エポキシ系の樹脂54(具体的にはエポキシ樹脂YDFシリーズ(東都化成株式会社製))が充填されている。
【0065】
誘電体51としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等の樹脂材料及びこれらの材料から選ばれた少なくとも2種類の材料からなる混合物を挙げることができる。特に、誘電体51として、誘電率の大きいポリフッ化ビニリデンを用いることが好ましい。
【0066】
また、誘電体51は、誘電率が大きいという特性の他に、印加電圧に対して適度の抵抗を保持できるという観点から体積固有抵抗が1013Ωcm以上であることがより好ましい。
【0067】
一対の電極52a,52bは、それぞれの全体形状が矩形状とされていてもよいし、誘電体5を全面的にカバーできるように互いに対向する側のパターンが所定の間隔をおいて交互に形成された凹凸形状とされていてもよい。図7は、誘電体部5における一対の電極52a,52bの形状を示す平面図であって、図7(A)は、それぞれの全体形状が矩形状とされた一対の電極52a,52bを示しており、図7(B)は、互いに対向する側のパターンが凹凸形状とされた一対の電極52a,52bを示している。
【0068】
図7(A)に示す一対の電極52a,52bは、それぞれ、所定間隔をおいて誘電体51の長手方向に沿って平行に延びている。また、図7(B)に示す一対の電極52a,52bは、誘電体51の長手方向に沿って平行に延びる電極の内側が凹凸状(ここでは矩形パルス状)に、且つ、一方の電極の凹部βが他方の電極の凸部γに入り込むと共に、一方の電極の凸部γが他方の電極の凹部βに入り込むように所定間隔eをおいて形成されている。ここでは、一対の電極52a,52b間の間隔eは、凸部γの電極幅方向の距離fよりも小さくなっている。
【0069】
一対の電極52a,52bを図7(B)に示すような凹凸形状とすることで、原稿Pの誘電体部5との吸着領域での電極密度を向上させることができ、それだけ少ない印加電圧で吸着力を強化することができ、より原稿Pの吸着効果を向上させることができる。
【0070】
[凹凸形状とした一対の電極52a,52bを用いた実施例]
ここで、一対の電極52a,52bとして図7(B)に示すような凹凸形状の電極を用い、図7(A)に示すような矩形状の電極に比べどのくらいの印加電圧を削減できるかを確認したので、それについて以下に説明する。
【0071】
この実施例では、誘電体部5は図6に示す構成のものとし、誘電体51として、クレハKFポリマー(登録商標)(株式会社クレハ製)を用いた。電極52としては、一般的に使用されているITO(酸化インジュウム)を蒸着させたものを用いた。但し、電極52の材質はITOに限定されるものではない。また、絶縁体53としては、板状に形成された樹脂を用いることができ、ここでは、ポリ塩化ビニル(例えば、イラックス(登録商標)VZL、住友電工ファインポリマー株式会社製)を用いた。
【0072】
表1にその結果を示す。
【0073】
【表1】

表1に示すように、図7(B)に示すような凹凸形状の電極は、図7(A)に示すような矩形状の電極に比べ印加電圧を20%削減できることが分かった。
【0074】
[切換スイッチの他の実施形態]
図1及び図2に示すスキャナ装置1において、操作者の入力操作により切り換える切換スイッチ7(以下、第1切換スイッチ7という。)に加えて又は代えて、自動スイッチ構成とされた切換スイッチ10(以下、第2切換スイッチ10という。)を用いることができる。スキャナ装置1は、ここでは、第1切換スイッチ7及び第2切換スイッチ10の双方を備えている。なお、第1切換スイッチ7及び第2切換スイッチ10の双方を備える場合、図8に示すように、第1切換スイッチ7を介して誘電体部5を通電する第1経路L1と、第2切換スイッチ10を介して誘電体部5を通電する第2経路L2と、第1経路L1又は第2経路L2への接続を選択的に切り換える切換手段6とを備えていることが好ましい。
【0075】
図9は、第1切換スイッチ7及び第2切換スイッチ10の双方を備えたスキャナ装置1の概観斜視図である。
【0076】
第2切換スイッチ10は、原稿押圧板4の開閉動作に連動して誘電体部5の前記通電状態と前記遮断状態とを切り換える切り換え動作を行う自動スイッチ構成とされている。
【0077】
詳しくは、第2切換スイッチ10は、可動部10aに外力が加わらない状態では前記遮断状態となるように付勢されており、可動部10aに対し付勢力に抗して外力が加わっているときのみ前記通電状態となるプッシュスイッチとされている。第2切換スイッチ10は、可動部10aが上面カバー1aの前記閉じ姿勢での原稿押圧板4との重合領域に位置し、且つ、原稿押圧板4が前記開放姿勢から前記閉じ姿勢に移行する際に該原稿押圧板4に接触して押下されることで誘電体部5が前記遮断状態から前記通電状態へと切り換わるように配置されている。
【0078】
このように、原稿押圧板4の開閉動作に連動して誘電体部5の原稿Pとの吸着動作を行うようにすることで、原稿押圧板4の開閉の際に生じやすい原稿Pの配置ずれを自動的に防止することができる。即ち、操作者が原稿Pの原稿台20に対する載置及び除去の都度、切換スイッチを切り換える必要がないため、より使い勝手がよくなる。
【0079】
ところで、原稿押圧板4の開閉の際の空気の流れ等の影響による原稿Pのずれは、原稿押圧板4が原稿台20に接近するときに発生しやすい。かかる観点から、第2切換スイッチ10による前記通電状態と前記遮断状態との切り換え位置は、原稿押圧板4の前記開放姿勢と、原稿押圧板4が原稿台20に近接する近接姿勢との間の何れかの位置に位置することが好ましい。
【0080】
なお、第2切換スイッチ10によって誘電体部5の前記通電状態と前記遮断状態とが切り換わる原稿押圧板4の原稿台20に対する切り換え角度は、小さすぎると原稿押圧板4が原稿台20に接離する際の影響によって原稿Pがずれやすく、大きすぎると原稿押圧板4が操作者による原稿台20からの原稿Pの除去可能な姿勢であっても誘電体部5が前記通電状態のままとなってしまうことがある。かかる観点から、この切り換え角度は、それには限定されないが、15°〜30°の範囲の何れかの角度とすることが好ましい。
【0081】
[スキャナ装置1を備えた画像形成装置100について]
次に、図1及び図2に示すスキャナ装置1を備えた画像形成装置100について図10を参照しながら以下に説明する。
【0082】
図10は、図1及び図2に示すスキャナ装置1を備えた画像形成装置100の概略構成を示すブロック図である。なお、図10において、スキャナ装置1における制御部101等は図示を省略してある。
【0083】
図10に示す画像形成装置100は、スキャナ装置1に加えて、スキャナ装置1における読取部30で読み取られた画像データに基づき画像を用紙等の記録媒体Qに形成する画像形成部110を備えている。
【0084】
画像形成部110は、ここでは、スキャナ装置1における読取部30からの画像データを処理して記録媒体Qに画像形成するものである。具体的には、画像形成部110は、画像データをページ単位で記憶するメモリ111と、レーザ光により画像データに基づく静電潜像を像担持体(ここでは感光体)112に書き込むレーザ走査ユニット(LSU)を有する印字部113と、制御部114(制御手段の一例)とを備えている。
【0085】
画像形成部110は、読取部30からの画像データを、メモリ111を介して印字部113に転送するようになっている。印字部113では、電子写真方式による記録が行われる。即ち、印字部113は、画像データがLSUに入力されると、一様に帯電された感光体112表面にLSUのレーザ光を走査して静電潜像を形成し、該感光体112上の静電潜像をトナーにて現像して顕像化し、さらに該感光体112上に顕像化したトナー像を該感光体112から記録媒体Qに転写した後、加熱及び加圧して定着するようになっている。
【0086】
この画像形成装置100は、さらに、給紙トレイ115及び手差しトレイ116を有する記録媒体供給部117と、搬送部118と、排出トレイ119とを備えている。記録媒体供給部117は、給紙トレイ115及び手差しトレイ116から記録媒体Qを搬送部118に供給するようになっている。搬送部118は、給紙トレイ115又は手差しトレイ116から供給された記録媒体Qを印字部113の感光体112(具体的には感光体112との転写部位)へ搬送すると共に、印字部113にて画像形成された記録媒体Qを排出トレイ119へ排出するようになっている。排出トレイ119は、搬送部118にて排出された記録媒体Qを収容するようになっている。
【0087】
制御部114は、CPU等の情報処理部と、ROM、RAM等の記憶部とを備えており、画像形成装置100の統合的な制御、例えば、画像形成部110の各部の動作制御を行うようになっている。
【0088】
この画像形成装置100によれば、図1及び図2に示すスキャナ装置1における読取部30からの画像データに基づき画像を記録媒体Qに形成するため、位置精度の優れた原稿画像を記録媒体Qに形成することができる。
【0089】
このように画像形成装置100では、位置精度の優れた原稿画像を記録媒体Qに形成できるのであるが、それでも原稿Pの原稿台20への載置位置が所定の適正位置から微妙にずれた場合には、読取部30で読み取られた原稿Pの画像データは、本来の適正位置で読み取られた原稿の画像データとは位置関係で異なることになる。即ち、記録媒体Qへの印刷画像で比較した場合に、適正位置から微妙にずれた位置で読み取られた原稿Pの画像は、本来の適正位置で読み取られた原稿Pの画像とは主走査方向X、副走査方向Y及び斜め方向のうち少なくとも一つの方向の位置が微妙にずれすることがある。
【0090】
かかる観点から、制御部114は、スキャナ装置1における読取部30で読み取られた画像データに基づき、記録媒体Qに形成すべき画像の適正位置に対し画像形成部110にて該記録媒体Qに形成する画像の印刷位置を一致させるように画像形成部110を制御するようになっている。
【0091】
詳しくは、制御部114は、原稿Pが原稿台20の所定の適正位置に載置された後であって原稿押圧板4にて押さえられる前に入力される入力信号(例えば、原稿Pの有無を検知する原稿検知センサー30aの原稿有りの検知信号や、スキャナ装置1における操作部104等に設けられた操作部材104aからの操作者の入力操作による操作信号)によって、原稿台20の適正位置に載置された原稿Pを読取部30で適正画像データ(適正画像情報)として予め読み取っておく適正画像データ読取手段と、原稿Pが原稿押圧板4にて押さえられた後に読取部30で読み取られた読み取り画像データ(読み取り画像情報)と前記適正画像データ読取手段にて予め読み取っておいた適正画像データとの画像位置のずれ量を検出するずれ量検出手段と、前記ずれ量検出手段による検出結果によって前記読み取り画像データと前記適正画像データとがずれていると判断した場合に、画像形成部110を制御して前記適正位置となるように前記印刷位置を変更させる印刷位置変更手段とを備えるように構成されている。なお、前記適正画像データ読取手段及び前記ずれ量検出手段の少なくとも一方は、制御部114に備えられる構成に代えて、スキャナ装置1の制御部101に備えられるように構成されていてもよい。
【0092】
かかる構成を備えた画像形成装置100では、例えば、原稿Pの原稿台20への適正位置に対する微妙な載置位置にずれがある場合に、前記ずれ量検出手段にて検出された前記ずれ量に基づき、画像形成部110にて記録媒体Pに形成する画像の印刷位置と、該記録媒体Pに形成すべき画像の適正位置との位置関係を算出し、前記ずれ量に対応する分だけ前記印刷位置をずらすことにより、適正位置に載置された原稿Pにて得られる印刷画像の位置と実質的に等しい位置の印刷画像を得ることができる。
【0093】
具体的には、制御部114は、読取部30で読み取られた原稿Pの画像データの画像処理を行うことで副走査方向Y及び主走査方向X並びに斜め方向の記録媒体Qへの画像の印刷位置を前記適正位置となるようにそれぞれ変更できるようになっている。なお、前記画像処理は、メモリ111にページ単位で記憶された画像情報を調整することで行うことができる。この調整については、従来周知の画像処理手法を利用でき、ここでは詳しい説明を省略する。
【0094】
また、制御部114は、原稿Pの画像が主走査方向X及び/又は副走査方向Yにのみずれていると判断した場合には、画像形成部110の印字部113を制御して感光体112へのレーザ光の主走査方向Xの照射位置及び/又は副走査方向Yの照射タイミングを調整することで主走査方向X及び/又は副走査方向Yの記録媒体Qへの画像の印刷位置を前記適正位置となるように変更してもよいし、原稿Pの画像が副走査方向Yにのみずれていると判断した場合には、画像形成部110の搬送部118を制御して記録媒体の感光体112への搬送タイミングを調整することで副走査方向Yの記録媒体Qへの画像の印刷位置を前記適正位置となるように変更してもよい。
【0095】
以上説明した実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示される。そして、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る原稿読取装置の一実施形態であるスキャナ装置の概観斜視図である。
【図2】図1に示すスキャナ装置の概略構成を示す部分側面図である。
【図3】図1及び図2に示すスキャナ装置の制御部を中心に示す電気的構成の概略ブロック図である。
【図4】原稿台の位置決め側の端部領域を説明するための図であって、図(A)は、スキャナ装置における位置決め部及び原稿台の誘電体部部分を中心に示す概略平面図であり、図(B)は、その概略斜視図である。
【図5】原稿の誘電体部への吸着保持動作を説明するための図であって、図(A)は、原稿台に原稿を載置した状態を示す図であり、図(B)は、位置決め部にて原稿を位置決めした後、切換スイッチをオン操作した状態を示す図であり、また、図(C)は、位置決め部にて原稿を位置決めして切換スイッチをオン操作した後、原稿押圧板が閉じ姿勢をとっている状態を示す図である。
【図6】誘電体部の内部構造の一例を模式的に示す概略断面図である。
【図7】誘電体部における電極の形状を示す平面図であって、図(A)は、それぞれの全体形状が矩形状とされた一対の電極を示す図であり、図(B)は、互いに対向する側のパターンが凹凸形状とされた一対の電極を示す図である。
【図8】第1切換スイッチ及び第2切換スイッチの双方を備える場合の切換手段の回路構成を示す図である。
【図9】第1切換スイッチ及び第2切換スイッチの双方を備えたスキャナ装置の概観斜視図である。
【図10】図1及び図2に示すスキャナ装置を備えた画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0097】
1 スキャナ装置(原稿読取装置の一例)
3 リブ(位置決め部の一例)
4 原稿押圧板(原稿押圧部材の一例)
5(20) 誘電体部
7 第1切換スイッチ
10 第2切換スイッチ
20 原稿台
30 読取部
51 誘電体
52a,52b 一対の電極
100 画像形成装置
110 画像形成部
114 制御部(制御手段の一例)
C 原稿台の角部
P 原稿
Q 記録媒体
α 原稿台の位置決め側の端部領域
β 電極の凹部
γ 電極の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が載置される原稿台と、前記原稿台上に載置される原稿の位置決めを行うための位置決め部と、前記原稿の画像を光学的に読み取る読取部と、前記原稿台上に載置された原稿を押さえるための原稿押圧部材とを備えた原稿読取装置において、
前記原稿台上に載置される原稿を吸着保持するための誘電体部を備え、
前記位置決め部は、前記原稿台の少なくとも一辺側を基準に原稿を位置決めするものであり、
前記誘電体部は、前記原稿台の一部を構成し、該原稿台における前記位置決め側の端部領域の少なくとも一部に位置していることを特徴とする原稿読取装置。
【請求項2】
前記原稿読取装置は、原稿を主走査方向及び副走査方向に走査して画像を読み取る前記読取部を備えたスキャナ装置であり、
前記位置決め部は、前記原稿台の少なくとも前記副走査方向上流側を基準に原稿を位置決めするものであり、
前記誘電体部は、前記原稿台における前記副走査方向上流側の端部領域に位置していることを特徴とする請求項1に記載の原稿読取装置。
【請求項3】
前記誘電体部は、ポリフッ化ビニリデンよりなる誘電体と、該誘電体に電気的に接続される一対の電極とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の原稿読取装置。
【請求項4】
前記誘電体部における前記一対の電極は、互いに対向する側のパターンが交互に配置された凹凸形状とされていることを特徴とする請求項3に記載の原稿読取装置。
【請求項5】
前記位置決め部は、原稿に当接されることで該原稿の移動を規制するように前記原稿台の原稿載置面より突出した2個以上の位置決めリブとされており、
前記2個以上の位置決めリブは、前記原稿台の少なくとも1つの角部に直角をなすように配設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の原稿読取装置。
【請求項6】
前記誘電体部へ通電する通電状態と前記誘電体部への通電を遮断する遮断状態とを切り換える切換スイッチを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の原稿読取装置。
【請求項7】
前記原稿押圧部材は、前記原稿台に対して開閉可能な原稿押圧板とされており、
前記切換スイッチは、前記原稿押圧板の開閉動作に連動して前記誘電体部の前記通電状態と前記遮断状態とを切り換える切り換え動作を行う自動スイッチ構成とされていることを特徴とする請求項6に記載の原稿読取装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の原稿読取装置と、該原稿読取装置における前記読取部で読み取られた画像データに基づき画像を記録媒体に形成する画像形成部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記原稿読取装置における前記読取部で読み取られた画像データに基づき、記録媒体に形成すべき画像の適正位置に対し前記画像形成部にて該記録媒体に形成する画像の印刷位置を一致させるように前記画像形成部を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−145604(P2009−145604A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322540(P2007−322540)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】