説明

双円錐型無段変速機

【課題】従来よりの無段変速機(CVT)や、二つの円錐や円の外周同士を組合わせての変速機は、動力伝達の制御の困難性や摩擦抵抗、外周同士の組付け圧力の問題等が顕著であることから、変速及び変速速度の適正な制御を構造的機構的に解決させると共に、部品点数の低減と省スペース化の実現も課題とした。
【解決手段】
円錐の特徴である外周の変遷を利用し、頂角が切断された二つのすり鉢状の底面を継ぎ合わせ回転可能な双円錐形状として、該双円錐の空洞内に頂角が切断された各々の開口部から二本の動力入出力の伝動軸を挿入し、夫々の軸に動力伝達可能なローラーを通し、前記双円錐の内壁に滑らせずにグリップさせ続けての動力伝達を行いながら、前記二つのローラー各々を前記双円錐内壁の異なる外周を移動させる手段を用い、動力を変速させ上記課題の解決を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双円錐形状の内壁を用いて変速比を生成することを可能にした無段変速機に関する分野である。
【背景技術】
【0002】
今のところ、自動車等、各種車両の駆動系にトラクションドライブ機構を利用した無段変速機(CVT)に関する様々な技術が提供され、ベルト式の無段変速機としては、主動側のプーリと、車輪に動力を伝達する出力軸に連結された従動側のプーリとの間に伝達ベルトが巻き付けられ、前記プーリ間の摩擦による伝達損失と、大排気量車やターボ車等の大トルクの伝達には不向きとされている。
【0003】
二つの円錐体をチェーンで連結させて無段階変速を行う方法として特許第3381914号公報(特許文献1)で既に知られており、二つの円錐体間でチェーンを弛ませずに連結することとなると、同トルク、同変速比の範囲が〔0002〕の無段変速機(CVT)と比較すると大きなスペースが必要である。
【0004】
他に二つの円錐体を利用する無段変速機として特開2001−349404の円錐摩擦伝動式無断変速機があり、強いトルクや耐久性の向上、迅速なギア比の変更も可能ではあるが、円錐原車と逆円錐従車の両軸の直線上に中間遊動車の配置とならずに二つのローラーを連結棒で前記両円錐に押し付けるための応力と、円錐と中間遊動車の外周の凸状面同士の少ない接触面のため、動力損失を防ぐため前記二つのローラーを空転させないために大きな応力で前記二つのローラーを挟み込む必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3381914号公報
【特許文献2】特開2001−349404公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記背景技術を鑑み、従来よりの無段変速機(CVT)の動力伝達プーリーとベルト間のすべり損失を構造的に解決し、変速比の生成を二つの円錐の内壁の円周比を利用することを特徴とし、動力伝達を介するローラーと円錐が凹凸状態で接触している関係上、接触面積と接触圧力が効率良く取れることに加え、シンプルな構造による動力伝達の効率化と部品点数の低減による省スペース化、二つの前記ローラーを個々に制御することで変速及び変速速度を極め細やかに制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の双円錐型無段変速機1は、頂角が切断された二つのすり鉢状の底面を継ぎ合わせ回転可能な双円錐2形状とし、該双円錐2の空洞内に頂角が切断された各々の開口部から動力入力側伝動軸3iと動力出力側伝動軸3eを挿入し、前記二本の伝動軸3i,3e夫々の軸に平行に動き且つ空転しないローラー4i,4eを各々貫通させ、該前記ローラー4i,4eの外周を前記双円錐2の内壁面に接触させて動力を伝達し、前記ローラー4i,4eを挟むシフトフォーク5を支持するガイド棒6に加え、前記ローラー4i,4e二個各々の位置を測定する位置センサーを設け、該二個のローラー4i,4e位置、動力入力の回転数やトルク、原動機の運転状態履歴等からCPUで適正な変速比を算出し、歯付ベルト7と接続棒8側歯付プーリー9とアクチュエーター側歯付プーリー10と外部アクチュエーターでシフトフォーク5を可動させて、前記ローラー4i,4e各々の位置を前記CPU制御で変速する。
【0008】
また、前記二本の伝動軸3i,3eの回転を安定させることと、前記二個のローラー4i,4eを双円錐2の内壁面に押え付けることを目的として接続棒8を配置する。該接続棒8に嵌め込まれた伝動軸用軸受11を前記二本の伝動軸3i,3eに差込み、該前記二本の伝動軸3i,3eの先端付近に差込まれている動力入力側と動力出力側二個の伝動軸用軸受11同士を前記接続棒8で支え橋渡しし、該接続棒8は、前記双円錐2内で遊離する状態になる。
【0009】
更に、前記ローラー4i,4eが前記双円錐2の内壁面で滑り空転させずにグリップさせる目的で、前記ローラー4i,4eのローラータイヤ25を前記双円錐2の内壁面により一層の押し付ける圧力を加えるため、前記接続棒8に前記二本の伝動軸3i,3eの先端を双円錐2の内壁面へ向かわせる圧縮バネ12等の懸架装置を備える手段もある。
【0010】
更に及んで、搭載型シフトフォーク13に搭載型アクチュエーター15を設置し、該搭載型シフトフォーク13をアクチュエーター制御用ラック付ガイド棒14に支持させ、該搭載型シフトフォーク13を上下方向への空転を抑えるシフトフォーク用ガイド溝17と、前記搭載型アクチュエーター15のピニオンギア16からの駆動力を受けるラック部18と、前記接続棒8と固定する差込口19を備える手段を用いることで、双円錐2内の省スペース化、よりダイレクトなローラー4i,4eの制御が可能になる。
【0011】
本発明の製作を思慮すると、双円錐2の回転の安定と前記接続棒8の設計を簡素化のために前記双円錐2の赤道上を分離し赤道用円管20で継ぎ、該赤道用円管20の外周を軸受で支えることや、前記双円錐2の頂角が切断された開口部に両端用円管21を継ぎ、該両端用円管21の外周を規格の軸受を嵌め込んで双円錐2の回転を受け止める手段も選択できる。
【発明の効果】
【0012】
既存の一般的な無段変速機(CVT)のプーリーと接触する動力伝達ベルトは、該ベルトの側面を横すべりさせながらの動力伝達と変速比変更しており、横滑り抵抗の軽減と変速スピードと変速精度を高めることが難解であったが、本発明ではローラー4i,4eの外周と双円錐2の内壁面が凸凹で接する特徴を有するので、前記ローラー4i,4eが滑り空転させずグリップ状態を保つことを、背景技術よりも軽易に実施することが可能である。
【0013】
本発明の双円錐型無段変速機1の特徴として、頂角を切り落としたすり鉢状の円錐を赤道上でダイレクトに継ぎ合わせての双円錐形体とするので動力伝達損失の低減、更には、変速機潤滑オイルの不要の可能性と部品点数を少なく抑えられる効果が認められる。
【0014】
上記二つの先行技術文献〔0005〕〔特許文献1〕の特許第3381914号、〔特許文献2〕特開2001−349404の無段変速機は、変速比の制御を単一のアクチュエーターで行っているが、本発明の前記双円錐型無段変速機1は、2つのアクチュエーターで制御し、〔0002〕の従来よりの無段変速機(CVT)の前記プーリーと前記伝達ベルト間の横滑り抵抗での動力伝達に頼らずに構造的解決をもって、高効率の動力伝達と的確な変速、素早い変速スピード等により、より極め細やかな制御が期待できる。
【0015】
本発明の双円錐型無段変速機1の出力回転数(Re)の理論値は図7を参考にして、Riの入力回転数、入力側ローラーの直径d1、前記入力側ローラーに接する双円錐内壁の外周の直径D1、出力側ローラーの直径d2、前記出力側ローラーに当たる双円錐内壁の外周の直径D2と円周率πとすると、
【0016】
【数1】



【0017】
そして、最小出力回転数(Re-min)を求める理論値は図7(a)より、Riの入力回転数、入力側ローラー直径(d1min)を円錐内壁最大直径部(D1min)に、出力側ローラー直径(d2min)を円錐内壁最小直径部(D2min)に当てることで得られ〔数1〕に代入すると、
【0018】
【数2】



【0019】
また、最大出力回転数(Re-max)を求める理論値は図7(b)より、Riの入力回転数、入力側ローラー直径(d1max)を円錐内壁最小直径部(D1max)に、出力側ローラー直径(d2max)を円錐内壁最大直径部(D2max)に当てることで得られ〔数1〕に代入すると、
【0020】
【数3】



【0021】
これらで導き出された〔数2〕と〔数3〕の数式から変速比(理論値)が求められる。変速比を示すと、
【0022】
【数4】



【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る要部側面断面図。
【図2】図1に示す双円錐部品の正面図。
【図3】圧縮バネ付接続棒の部分正面図。
【図4】アクチュエーター制御用ラック付ガイド棒の正面図と側面図。
【図5】シフトフォーク搭載型アクチュエーター利用の概略図。
【図6】本発明の軸受配置例に係る側面図。
【図7】本発明の変速比に関する図であり、(a)は変速比最小時の図。(b)は変速比最大時の図。
【図8】本発明に係る動力伝達の(a)ローラーのローラの正面図と側面図(b)ローラー軸の正面図と側面図。
【図9】本発明の双円錐の展開図の一部とローラーの接する図で(a)垂直の図。(b)左右角度を与えた図。
【図10】本発明の実施例である接続棒とガイド棒を連結する連結部品の利用を示す概略図。
【図11】本発明の実施例である内双円錐の利用を示す概略図。
【図12】本発明の実施例である少数段円錐混合型変速機の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の双円錐型無段変速機1の双円錐2の形態は、動力伝達時には常時回転する回転体であるので軽量コンパクトが求められ、前記双円錐2の傾斜している外壁の外周部に規格外の軸受を嵌め込む方法が最良と考えるが、双円錐2の頂角を切断し両端用円管21を継ぎ合わせ規格品の軸受を嵌め込む方法や、傾斜している外壁に円管を嵌め込む形で前記円管の一方の開口部を双円錐2の外壁に継ぎ、もう一方の該円管と双円錐2の外壁の隙間が開いている部分をワッシャー形状等何らかの部材で補強した上で、該円管の外周部に規格品の軸受を嵌め込む方法もある。
【0025】
また、双円錐2の回転体を高速回転させる上で回転バランスを保持するために、双円錐2の赤道を分離し赤道用円管20を継ぎ合わせ、該赤道用円管20の外周に軸受を嵌め込み、該軸受と〔0024〕で記載の規格品の軸受2個と合わせて計3個の軸受で前記双円錐2を支持する形態もある。
【0026】
二個のローラー4i,4e等が双円錐2内で発生する塵を排出する手段として、双円錐2の赤道付近に前記塵を排出するための排出口22を、前記双円錐2の回転バランスを考慮しながら設置することを検討したい。
【0027】
前記赤道用円管20で赤道付近を円柱状にすることで、二本の伝動軸3i,3eを渡す接続棒8をコンパクトな設計で〔0009〕記載の前記圧縮バネ12等のレイアウトが容易になる可能性が認められ、別の視点からは、前記赤道用円管20を設けることで常時回転する回転体である双円錐2の重量が増えることから、慣性モーメント等の兼ね合いを考慮する必要がある。
【0028】
前記伝動軸3i,3eと双円錐2間の動力を伝達する前記ローラー4i,4eは、前記伝動軸3i3eからの大トルクを支持する為、ローラーピン23を複数設けることが望ましく、また、前記伝動軸3i,3eの軸に沿っての平行移動を容易にするためローラーピン23に軸受を配置することも一考であり、前記ローラー4i,4eのローラー金属部24の外周にゴム等のグリップ状態の維持が容易で、且つ長寿命なローラータイヤ25を履かせ、双円錐2の内壁を確りグリップさせながら前記伝動軸3i,3eの軸上の平行移動を容易にすることが求められる。
【0029】
前記伝動軸3i,3eは、前記ローラー4i,4eのローラーピン23をガイドする伝動軸用ガイド溝26部を設け、前記ローラータイヤ25に要求性能を発揮させるためにも剛性、耐久性、重量面等で適切な材質を選択したい。
【0030】
本発明の双円錐型無段変速機1の組立を容易にするために双円錐2の赤道付近を分離可能とし、前記伝動軸3i,3eに前記ローラー4i,4eを挿入し、伝動軸軸受圧入部27に伝動軸用軸受11を圧入して接続棒8で支え橋渡しさせるように組み付けた後、前記双円錐2のすり鉢同士を継ぎ合わせる組立法もある。
【0031】
前記伝動軸3i,3eの回転を安定させるように努めると共に、より一段と前記ローラー4i,4eを双円錐2の内壁面にスリップさせず確りグリップさせ続けるために、前記伝動軸3i,3eを双円錐2の内壁面に押え付ける圧力を掛ける圧縮バネ12等の懸架装置を前記接続棒8に設置する方法もある。
【0032】
変速のためシフトフォーク5で前記ローラー4i,4eを挟み込み、該シフトフォーク5を上下方向に空転させずに前記伝動軸3i,3eの軸に平行に配置するガイド棒6を、前記接続棒8と双円錐2の頂角付近の開口部の外部固定部位とで接続し、前記シフトフォーク5の位置を制御するため、双円錐2の二つの頂角を切断した開口部の外に二つの外部アクチュエーターを配置し、該外部アクチュエーターにアクチュエーター側歯付プーリー10と、前記接続棒8にも回転可能な接続棒側歯付プーリー9を取付けて歯付ベルト7を前記シフトフォーク5を引掛ける形で一回りさせ装着し、前記外部アクチュエーターで前記シフトフォーク5を介し前記ローラー4i,4eを制御する。
【0033】
前記シフトフォーク5を可動させるにあたり〔0032〕の記載ではガイド棒6とアクチュエーター制御関連の機能を別立てにする形態を示しているが、実用量産面では、搭載型アクチュエーター15をアクチュエーター搭載型シフトフォーク13に設置させ、前記搭載型アクチュエーター15にピニオンギア16を配し、該搭載型シフトフォーク13をガイドするシフトフォーク用ガイド溝17と前記ピニオン部16の受部としてのラック18部を設ける前記ラック付ガイド棒14を用いることで、前記搭載型シフトフォーク13のガイドと、搭載型アクチュエーター15の制御という二つの役割を持たせることが実用量産面で適した形態と考える。
【0034】
前記ガイド付ラック棒14の採用により外部アクチュエーターを双円錐2の空洞内に収められることは、主に前記接続棒側歯付プーリー9や歯付ベルト7を省略させ、前記搭載型シフトフォーク13に前記搭載型アクチュエーター15を設置し直にラック・アンド・ピニオン機構で可動させるので、より一層ダイレクトな制御が可能になる。他にも、特に双円錐2の切断された頂角の開口部付近での省スペース化は肝要で、本発明の双円錐型無段変速機1の常時回転する双円錐2全体の大きさに良い納まりを与える。
【0035】
変速比を定め制御する方法として、双円錐2内の適当な位置に取付けられたローラー4i,4eの位置を計測する位置センサーからの前記ローラー4i,4e位置と、原動機の回転速度、トルク等のセンサー類や前記原動機を操る運転者の意図に加え、運転傾向の癖や本発明を含む様々な機器の設計上の安全性をCPUで考慮し、該CPUの計算結果をアクチュエーターでシフトフォーク5や搭載型シフトフォーク13を介し前記ローラー4i,4eを制御して、前記双円錐2の内壁面に押し付けながら変速比の変更を実施する。
【実施例1】
【0036】
本発明の双円錐型無段変速機1の変速比を生成する実施例として、双円錐の二つのすり鉢の高さ、場合によっては赤道部外周を変更することによって、用途や原動機の出力特性への適合や省スペース化が可能で、例えば、スポーツ用自転車のペダル付近のギアミッションと後輪タイヤ付近のギアミッションの外周と変速段数の違いと同様に実施できることと、出力側ローラー4eと伝動軸3eは入力側ローラー4iと伝動軸3iよりも想定される設計荷重を概ね低く設定することが可能で、二個の入出力ローラー4i,4eと伝動軸3i,3eの夫々を変更することで、より省スペース軽量化が図れ、延いては、〔0022〕の〔数4〕の数式に示される通り、柔軟な変速比の生成が可能である。
【実施例2】
【0037】
前記接続棒8や前記ガイド棒6又は前記ラック付ガイド棒14付近の部品の振動等の安定と剛性補強のため、前記ガイド棒6又は前記ラック付ガイド棒14と、前記接続棒8を三点で連結させる連結部品28を配置することで、該連結部品28付近の部品の振動等に対する安定と剛性補強の効果がある。連結部品28(棒)の正面に、接続棒8の幅が嵌る切り込みを入れ、前記接続棒8の定められた部位に嵌め込み、該接続棒8と前記連結部品28(棒)と溶接する製作方法がある
【実施例3】
【0038】
更に確りと剛性強化を果す一例として、河川の架かる橋梁のアーチ橋特有の構造的な利点の活用ではないが、該アーチ橋の橋桁で分離し、該アーチ橋の岸部同士を反転背中合わせで路面を継ぎ合わせ、接続棒8の板面と前記アーチ橋の前記路面部分を垂直に接合すると、該路面部分は、前記路面の中心線上に前記ガイド棒6又は前記ラック付ガイド棒14、伝動軸3i,3eが配置され、双円錐2の切断された頂角付近の開口部の大きさによって前記アーチ橋の幅員を狭くする形態を採り、外部固定部位に接続する。
【0039】
前記アーチ橋の岸部と接合する接続棒8には、前記ガイド棒6又は前記ラック付ガイド棒14の一端が嵌め込み固定させ、対する一端を前記外部固定部位に接続固定すると、斜張橋のケーブル部分と似た形態で、前記斜張橋のケーブルは、概ね引張応力のみ想定されているが、前記ガイド棒6又は前記ラック付ガイド棒14は、金属棒を採用していることから、前記引張応力に加え、圧縮応力、捻り応力にも対応でき、前記双円錐型無段変速機1の空洞内を始め固定部位全体の剛性強化が相当程度見込めると考える。
【実施例4】
【0040】
前記双円錐無段変速機1の双円錐2の空洞内に該双円錐2が回転可能な範囲で頂角付近を外部と固定された双円錐に近い形状の内双円錐28を配置し、該内双円錐28の形状を前記双円錐2の空洞内の機器が可動する機能部分をくり抜き、前記ガイド棒6又は前記ラック付ガイド棒14の両端付近を固定する挿入口29を設ける。
【0041】
前記内双円錐28方式を採用した場合、前記双円錐2の空洞内に於ける静物部品を始め全部品の振動等への対策と剛性補強の効果は多大と思慮し、前記双円錐2の空洞内の可動部品の適正な性能発揮と正確な動作を引き出すと共に、前記内双円錐28は、回転体や可動部品で選択される材質ほどの高品質の必要がなく、金属以外の材質(合成樹脂等)でも製作可能と考えるが、該内双円錐28の形状については、前記双円錐2や前記ローラー4i,4eは高速回転する運転もあることから、前記双円錐2の空洞内で発生する空気の運動作用を鑑みた設計を施したい。また、実用量産面では、金型での作製が可能であるので、〔実施例3〕の複数の部品を製作し組合せる手法よりも簡単で安価な製造を見通すことが出来る。
【0042】
前記内双円錐28の部位に前記伝動軸軸受11の嵌め込み口を備える伝動軸受固定部品30を挿入する挿入穴31を設け、該伝動軸受固定部品30を動力伝動軸3i,3eを回転可能な双円錐2の内壁に押し付ける圧縮バネ32等の懸架装置を前記内双円錐28の前記挿入穴31内に挿入し、前記圧縮バネ32等の懸架装置を挟み込む形で伝動軸受固定部品30を前記挿入穴31に挿入することで、前記ローラー4i,4eを双円錐2の内壁に適切な圧力を掛け続けることが可能になり、前記ローラー4i,4eが、確りしたグリップを保ち高効率の動力伝達で且つ長時間運転が実施可能になる。
【実施例5】
【0043】
本発明の双円錐型無段変速機1の動力伝達のための双円錐2空洞内の二個のローラー4i,4eは、図9(a)に示す通り二つの伝動軸3i,3eの軸に対し垂直に双円錐2の内壁面に当てているが、図9(b)は該垂直から左右角度θを付与している一例を図示しており、前記二個のローラー4i,4eを上下左右に角度を与えることによって、より極め細やかでスムーズな変速と伝動効率の向上を図りたい。
【0044】
他にも、前記ローラー4i,4eのローラータイヤ25を凸状にすること、また凸の頂点を偏心させる等の工夫を凝らすことで〔0043〕と共に合わせて、より極め細やかでスムーズな変速と伝動効率の向上を研究したい。
【実施例6】
【0045】
本発明の双円錐型無段変速機1を基に一層の省スペース化と機構の簡略化を考慮し、実施の一例として図12の概略図のように双円錐の二つのすり鉢の一方に段差を付ける形態とし、内壁側の内歯車と平歯車の噛合い方式での変速と、本発明の円錐内壁を利用しての変速を組合せる少数段円錐混合型変速機33も実施可能で、該歯車は、はすば歯車かやまば歯車を選択し、シフト方式としても一般的な方法の選択の他に、前記少数段円錐混合型変速機33は小段数で成立し得る特徴から電磁石方式での実施も面白い。
【0046】
前記少数段円錐混合型変速機33は、一般的な自動車の変速式オートマチックトランスミッションのキックダウンと同様の良い印象を運転者に与える加速感を味わえることに加え、構造的に一段の歯車で対応できる範囲が大きいことから、一般的に運転者にマイナスの印象を与える小刻みな変速ショックを解消することが出来る。また、構造的にも全体のスペース的にも双円錐形体では前記双円錐型無段変速機1では成立困難な車両の後進用ギア(バックギア)を埋め込むことも容易である。
【0047】
前記少数段円錐混合型変速機33の少数段の歯車が噛合う場所は、一般的に変速機循環オイルが必要なことから、動力入力伝達軸等にはオイルシール等でオイル漏れを防ぎ、前記少数段円錐混合型変速機の円錐部との間にオイル隔壁34を設ける必要があると考える。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の双円錐型無段変速機1を自動車で利用する場合、FR(フロントエンジンリア駆動)形式がレイアウト的に好都合である。自動車の前部から順に、エンジン−本発明の双円錐型無段変速機1−クラッチ−後進用モーター(兼オルタネーター)−リアデフ−後輪駆動輪という利用可能性もあり、本発明の前記双円錐型無段変速機1自体にフライホイールの機能を持たせることや、前記後進用モーターにオルタネーターの役割も持たせ全発電量を増加させることで、一時停車の際のエンジン停止時(アイドリングストップ機能)のエアコン等の機器動作用電力に、更には、前記後進用モーターを逆回転させることで低速時の前進走行用としての利用の可能性も検討したい。(ハイブリット自動車)
【0049】
エンジン付二輪車(以下バイクという)の変速機で要求される変速比は、小排気量車は約3、中排気量車(400cc程度)は約2.2、大排気量車(1000cc程度)は約2であることから、前記変速比を〔0022〕の〔数4〕の式に代入し、本発明の双円錐型無段変速機の頂角付近の内壁の直径(D)を100mmと仮定したとしても、例としてドイツBMW社製バイクの水平対抗エンジンの横幅程度で収まる計算ではあるが、省スペース化を考慮し、双円錐の二つのすり鉢の大きさを異ならせることも一考である。しかしながら、従来よりのバイクは、クランクシャフトの軸と駆動輪の軸が平行であることが殆どなので、前記双円錐の二つのすり鉢の大きさを異ならせると、機構的な動力伝達の流れの成立の困難性も内在している。
【0050】
本発明の双円錐型無段変速機1をバイクで利用する場合、概ね車両後進用機能(バック機能)が不要なことと、何らかの事態で駆動輪が急遽回転を止めた場合、自動車で本発明の双円錐型無段変速機を用いた場合には再走行時の変速比が不確定のため再走行が不可能になる恐れがあることから、〔0048〕に挙げている通りクラッチの位置を前記双円錐型無段変速機と後進用モーターとの間にレイアウトさせているが、前記バイクで用いる場合、該バイク用のセンタースタンドを掛けた後、エンジンをスタートさせて前記双円錐型無段変速機1の二つの入出力側ローラー4i,4eを定位置に戻せるので、従来よりのバイク用のクラッチ方式を用いることが可能と考える。
【0051】
また、バイクという趣味的要素の強い乗り物から〔実施例6〕の少数段円錐混合型変速機33の利用も面白く、少数段歯車変速機でのキックダウン(自動車のオートマチックで利用)と円錐部分での無段変速制御と相俟って、エンジンの通常運転の回転数からエンジン性能を最大限発揮できる回転数(パワーバンド域)への変速が的確に行える可能性が高く、歯車変速の変速音で素早い加速の準備を促せられてからのスロットルオープンは爽快に達す。
【符号の説明】
【0052】
1 双円錐型無段変速機
2 双円錐
3i (入力側)伝動軸
3e (出力側)伝動軸
4i (入力側)ローラー
4e (出力側)ローラー
5 シフトフォーク
6 ガイド棒
7 歯付ベルト(シフトフォーク制御用)
8 接続棒
9 接続棒側歯付プーリー
10 アクチュエーター側歯付プーリー
11 伝動軸用軸受(接続棒と伝動軸間)
12 圧縮バネ
13 (アクチュエーター)搭載型シフトフォーク
14 ラック付ガイド棒
15 (シフトフォーク)搭載型アクチュエーター
16 ピニオンギア(シフトフォーク搭載型アクチュエーター側)
17 シフトフォーク用ガイド溝
18 ラック
19 差込口
20 赤道用円管
21 両端用円管
22 塵の排出口
23 ローラーピン
24 ローラー金属部
25 ローラータイヤ
26 伝動軸用ガイド溝
27 伝動軸軸受圧入部
28 連結部品(棒)
29 内双円錐
30 伝動軸受固定部品
31 挿入穴(伝動軸受固定部品)
32 圧縮バネ(内双円錐)
33 少数段円錐混合型変速機
34 オイル隔壁























【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂角が切断された二つのすり鉢状の底面を継ぎ合わせ回転可能な双円錐形状とし、
該双円錐空洞内に、前記頂角が切断された二つの別の開口部ごとに動力入力の伝動軸と動力出力の伝動軸を挿入し、
前記動力入力の伝動軸の軸に平行に動き且つ空転しないローラーを貫通させ外周を双円錐の一方のすり鉢状の内壁に接触させて動力を伝達させ、
前記ローラーを前記動力入力の伝動軸の軸に平行に可動させるシフトフォークを介しアクチュエーターで制御し、
前記ローラーの外周で前記双円錐を回転させて対面するすり鉢状の空洞の内壁に別のローラーの外周を接触させ、
前記ローラーを前記動力出力の伝動軸の軸に平行に動き且つ空転させずに貫通させ前記ローラーを前記動力出力の伝動軸の軸に平行に可動させるシフトフォークを介してアクチュエーターで制御し動力を変速して伝達することを特徴とした双円錐型無段変速機。
【請求項2】
前記動力入力の伝動軸と前記動力出力の伝動軸の双方を、前記動力入力の伝動軸と前記動力出力の伝動軸が回転可能な状態で嵌め込み接続された接続棒を前記双円錐空洞内に配置することを特徴とした請求項1記載の双円錐型無段変速機。
【請求項3】
前記双円錐の空洞内の前記接続棒に、該双円錐の内壁にローラーを押し付ける圧力を、前記伝動軸を介して加える機能を備えることを特徴とする請求項2記載の双円錐型無段変速機。
【請求項4】
ローラーを移動させるシフトフォークを上下方向に空転させずに平行可動させ支持するガイド棒と、
アクチュエーターの駆動力を橋渡しするプーリーを前記接続棒に配置し前記プーリーと前記シフトフォーク引掛け部と前記アクチュエーターの駆動力伝達部を一回りするベルトを掛け、
前記アクチュエーターで前記シフトフォークを介し、前記ローラーを制御することを特徴とした請求項1から3何れか1項記載の双円錐型無段変速機。
【請求項5】
前記ローラーを制御するシフトフォークにアクチュエーターを設置し、
前記ガイド棒にはラックを、前記アクチュエーターにはピニオン・ギアを配置し、
ラック・アンド・ピニオン機構で前記アクチュエーターを搭載した前記シフトフォークを平行可動させることを特徴とした請求項1から3何れか1項記載の双円錐型無段変速機。
【請求項6】
前記双円錐の頂角を切断した開口部付近の前記ガイド棒に連結部品を接合し、該連結部品を前記接続棒にも接合させることを特徴とした請求項1から5何れか1項記載の双円錐型無段変速機。
【請求項7】
前記双円錐の空洞内に、該双円錐が回転可能な範囲で頂角付近を外部と固定された双円錐に近い形状の内双円錐部品を配置し、
該内双円錐形状を変速に必要な機能部分をくり抜き、
前記ガイド棒の両端付近を固定する挿入穴を設けることを特徴とする請求項1、請求項4、請求項5何れか1項記載の双円錐型無段変速機。
【請求項8】
前記伝動軸を回転可能とする前記伝動軸軸受の嵌め込み口を備える伝動軸受固定部品と前記内双円錐形状の部位に前記伝動軸受固定部品を挿入する挿入穴を設け、
該伝動軸受固定部品が可動する形態で前記挿入穴に挿入し、
前記伝動軸受固定部品を前記双円錐の内壁へ押し付ける機能を備えることを特徴とする請求項7記載の双円錐型無段変速機。
【請求項9】
前記双円錐の赤道付近で分離し、該赤道付近で分離されたすり鉢状の底面を円管で継ぎ合わせることを特徴とした請求項1から9何れか1項記載の双円錐型無段変速機。
【請求項10】
前記双円錐の赤道付近で分離し、該赤道付近で分離されたすり鉢状の底面を継ぎ合わせた前記円管の外周部に回転軸受を嵌め込むことを特徴とした請求項9記載の双円錐型無段変速機。
【請求項11】
前記双円錐の頂角を切断した開口部に円管を継ぎ合わせることを特徴とした請求項1から10何れか1項記載の双円錐型無段変速機。
【請求項12】
前記双円錐の頂角を切断した開口部に継ぎ合わせた前記円管の外周部に回転軸受を嵌め込むことを特徴とした請求項11記載の双円錐型無段変速機。
【請求項13】
請求項1から12何れか1項記載の双円錐型無段変速機において、
前記双円錐の赤道付近に塵の排出口を設けることを特徴とした双円錐型無段変速機。


































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−233553(P2012−233553A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104343(P2011−104343)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(503350703)
【Fターム(参考)】