説明

双安定ネマチック液晶表示装置

【課題】双安定性を綿密に制御することを、より正確でかつ簡単に行うことができる双安定ネマチック液晶表示装置を提供する。
【解決手段】一対の基板11,17と、前記一対の基板11,17間に配置された液晶層22と、この液晶層22と前記一対の基板11,17の少なくともいずれか一方との間に配置された液晶配向層とを有し、この液晶配向層の少なくとも一方には、ナノインプリント・リソグラフィ技術で液晶を配向し、双安定性を得るための液晶配向層の表面処理法として用い、前記液晶層に熱転移又は濃度転移型のネマチック液晶を用い、かつ二組の面内スイッチング(IPSあるいはFFS)電極構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双安定ネマチック液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)の新しい用途を開拓するための画素表示の双安定性に関する研究は、電力消費の少ない小型表示装置の需要の高まりに後押しされて、近年多くの論文や報告書に絶えず見られるようになっている。無電界状態で二つの安定状態を有する双安定性を適用することで、高精細化を促進することができると共に、本質的な低電力消費化を図ることができる。このため、1980年代初期に双安定コレステリック表示装置、表面安定型強誘電性液晶(SSFLC)表示装置並びに双安定ツイストネマチック(BTN)表示装置が提案されて以来、表面アンカリング・ブレーキングと双安定表面アンカリング又はフレクソエレクトリック結合を使用した新種の双安定表示装置が開発され、それらのメリットが具体化された。双安定コレステリック表示装置は、組成の秩序−無秩序転移を利用している。秩序状態の平面配向は、ブラッグ反射によって円偏光の内の一つを強く反射する。無秩序状態のフォーカルコニック配向は、線欠陥によって分離された小領域から成り、光を反射せずに透過し、黒い背板での吸光による暗状態を呈する。この双安定装置は、偏光子とカラーフィルターを必要としない。特に、双安定性が分散されたポリマー鎖によって安定化されると、その双安定性も十分に良好なものとなる。しかし、この装置の光学特性は、TFT(薄膜トランジスタ)−LCDのような高品質表示装置と比較すると劣る。おそらく、最もよく研究された双安定LCD技術は、SSFLCである。この表示装置は、二つの局所安定構造状態を示し、それら両状態で光軸はセル面内にあり、ビデオ・レートの画素書き換えができるように状態間の高速スイッチングを可能にしている。しかし、この表示装置の衝撃に対する安定性は極めて弱く、外部から小さな圧力が加わるだけでデリケートなスメクティックの階層構造が壊れたり又は表示画像が壊れたりする。BTNは、大きな反平行のプレチルトを有する強力な単安定アンカリングを採用している。双安定状態はトポロジー的に等価であり、表面アンカリングブレーキングをおこさずに連続してこれらの状態間をスイッチングできる。このような装置は、優れたコントラストと視野角と速いスイッチング速度を有している。しかし、BTNの主な欠点は、多くの欠陥ラインが動き易いために安定時間が短く且つ双安定なグレイスケールを達成且つ制御するのが難しい点である。近年このような問題に対処するために、ZBD(zenithal bistable display)、デュラン等によって提案されたフレクソエレクトリック結合を有する表面ネマチック双安定表示装置、表面制御された双安定ネマチック(BiNem)表示装置などの新しい双安定ネマチック表示装置が研究されてきた。これら双安定表示装置の大部分は、表面分極を使用した直流(DC)駆動又は特別なパルス形状を使用した交流(AC)駆動による垂直電界スイッチングによって動作するものである(例えば、下記特許文献1,2)。ただし、より簡単な電極構造を有し、面内電界スイッチングする横山研究グループで実施された表面パターン付き双安定表示装置は除外する。ところで、LCセルを駆動するために極性フレクソエレクトリック結合が方位角的に双安定な表面アンカリングを採用している装置で使用されているが、実際にはDC駆動がLCセルの寿命を短くするために、垂直スイッチングによって二つの安定状態を永久的且つ完全に制御することは非常に難しい。LCの面外スイッチングも、面内スイッチングよりも狭い視野角を持つ。方位角でLCの双安定性を得るために表面に溝を設けた形状を造る最も一般的な方法として、斜めに蒸着させたSiOが使用されてきた。しかし、この方法では、表面の溝のピッチと高さに関して、また大きな寸法のパネルにおける一様性に関して、正確なアンカリング制御を再現性良く行うことができない。横山研究グループは、前記問題を克服するために、面内スイッチングを有しマイクロパターン化された表面配向を使用した双安定又は三安定ネマチック液晶装置を開発した。
【特許文献1】特表平11−513809号公報
【特許文献2】国際公開WO 02/06887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した双安定又は三安定ネマチック液晶装置は、二つの互いに直交した表面領域の相互作用から発生する大きな捩じれによって、原子間力顕微鏡技術(AFM)によって表面処理するために、コントラストも低く、非常に長い時間を要するので、大量生産には適していない。その電極構造も実際の適用には適していない。
【0004】
以上のように、今日、双安定性を綿密に制御するためのより正確でより簡単な方法がLCD業界で強く要求されている。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、双安定性を綿密に制御することを、より正確でかつ簡単に行うことができる双安定ネマチック液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0006】
より具体的には、簡単な一工程のナノインプリント処理によって作製することのできる、ナノインプリント・リソグラフィ(NIL)に基づいた新しい双安定ネマチック表示装置を提供する。また、優れたコントラストを提供すると共に産業上容易に利用できる簡略化された電極構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕双安定ネマチック液晶表示装置であって、一対の基板と、前記一対の基板間に配置された液晶層と、この液晶層と前記一対の基板の少なくともいずれか一方との間に配置された液晶配向層とを有し、この液晶配向層の少なくとも一方には、ナノインプリント・リソグラフィ技術で液晶を配向し、双安定性を得るための液晶配向層の表面処理法として用い、前記液晶層に熱転移又は濃度転移型のネマチック液晶を用いることを特徴とする。
【0008】
〔2〕上記〔1〕記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記双安定性は面内(又は方位角による)双安定性として実現されている。
【0009】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記液晶配向層の少なくとも一方は、液晶配向方向として二つ以上の方位角の異なる容易軸を有する。
【0010】
〔4〕上記〔3〕記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記方位角の異なる容易軸の組合わせは、ナノインプリント・リソグラフィ技術(例えば、溝といった表面トポグラフィ)によって発生した容易軸の組合わせか、又はナノインプリント・リソグラフィ技術によって発生した前記容易軸とラビング処理、SiOx蒸着物、レーザ・リソグラフィ、フォトリソグラフィ、光配向又はイオンビーム配向のいずれかで発生した容易軸との組合わせである。
【0011】
〔5〕上記〔4〕記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記方位角が異なる容易軸のアンカリング強度は、同じ程度である。
【0012】
〔6〕上記〔5〕記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、同じ程度のアンカリング強度を有する方位角の異なる容易軸は、ナノインプリント・リソグラフィ技術によって異なった方向に対して溝のピッチと高さを制御することで発生する。
【0013】
〔7〕上記〔6〕記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、双安定性を得るために、凹凸金型による一工程のナノインプリント・リソグラフィ技術によって生成される方位角が直交した二つの溝から二つの競合するアンカリング強度を有する格子状パターンが用いられる。
【0014】
〔8〕上記〔6〕記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、双安定性を得るために、線状のパターンのインプリントを行う二工程が使用されている。
【0015】
〔9〕上記〔6〕記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、双安定性を得るために、凹凸金型によるナノインプリント・リソグラフィ技術とラビング処理(又は光配向又はイオンビーム配向)による線状のパターンの組合わせを使用する。
【0016】
〔10〕上記〔7〕から〔9〕の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記溝のピッチ及び高さ(又は深さ)は、50から1500nm及び20から1000nmとなっている。
【0017】
〔11〕上記〔7〕から〔10〕の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、インプリント方法は、光ナノインプリントおよび熱ナノインプリントを含む。
【0018】
〔12〕上記〔7〕から〔10〕の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、表面トポグラフィーを作成するインプリント条件は、配向膜用のインプリント装置と金型を使用して25℃から350℃で0.2分から5分の間、3MPaから10MPaの圧力を加える。
【0019】
〔13〕上記〔1〕から〔10〕の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記ネマチック液晶のプレチルト角度は、双安定性を得るための二つの異方性アンカリングエネルギーによる二つの優先方向の内の少なくとも一方において、1°未満である。
【0020】
〔14〕上記〔1〕から〔13〕のいずれか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、二つの安定状態をスイッチングするため、上部基板及び下部基板に交差した櫛歯状電極からなる電極構造を有する。
【0021】
〔15〕上記〔1〕から〔13〕の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、二つの安定状態の電極構造を、二周波駆動のネマチック液晶材料と上部基板と下部基板の一方に配置された櫛歯状電極からなる電極構造を有する。
【0022】
〔16〕上記〔14〕又は〔15〕記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、透明電極(ITO、ZnOxなど)が使用される。
【0023】
〔17〕上記〔1〕から〔16〕の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、暗状態は、二つの安定状態を有する下部層(又は上部層)の安定状態の液晶配向方向が、ラビング処理(又は光配向又はイオンビーム配向又はナノインプリント・リソグラフィなど)によって単安定状態の上部層(又は下部層)の液晶配向方向に平行になるときに得られ、また明状態は、前記下部層(又は上部層)のもう一つの安定状態の液晶配向方向が前記上部層(又は下部層)の前記単安定状態の液晶配向方向と方位角が直交しているときに得られる。
【0024】
〔18〕上記〔17〕記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記液晶層のリタデーションd△nは、0.3≦d△n≦0.6となるように制御される。
【0025】
〔19〕上記〔1〕から〔18〕の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、配向層の材料は、10-7から10-4J/m2のアンカリング強度(係数)を有している。
【0026】
〔20〕上記〔1〕から〔19〕の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、1μmよりも大きく且つ深さ(又は高さ)が50nm未満のピッチを有する金型がナノインプリント・リソグラフィに使用されている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、従来の双安定装置の垂直スイッチングとは異なり、面内スイッチングによって、光学補償膜をなんら使用せずに高いコントラスト比と広い視野角を有している。
【0028】
より具体的には、この装置はネマチック液晶−基板表面の界面で方位角方向に双安定状態を有し、これにより二組の面内電界によって簡単に駆動される。双安定性を得るための表面は、ナノインプリント・リソグラフィに基づいて作製されるが、これは柔軟なフィルムによって基板上に所望の表面トポグラフィー(溝)を作成するのに利用される。その双安定性は、同じ程度のアンカリング強度を有すると共に互いに直交した方向の表面トポグラフィーに関連する二つの弾性エネルギー間の複合作用から生まれる。双安定性の方位角方向は、二つの直交した方向各々に対して溝のピッチと高さを調整することで制御される。この双安定表示装置は、高いコントラストと輝度などの良好な光学特性と、面内スイッチングを行うネマチック液晶モードと同様の広い視野角特性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の双安定ネマチック液晶表示装置は、一対の基板と、前記一対の基板間に配置された液晶層と、この液晶層と前記一対の基板の少なくともいずれか一方との間に配置された液晶配向層とを有し、この液晶配向層の少なくとも一方には、ナノインプリント・リソグラフィ技術で液晶を配向し、双安定性を得るための液晶配向層の表面処理法として用いられているとともに、前記液晶層に熱転移又は濃度転移型のネマチック液晶を用いる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
ここで、方位角のネマチック双安定性を得て且つ制御するための、容易で簡単且つ基本的な構想を有するほぼ永久的に双安定なネマチック表示装置に関する発明を実験結果と共に説明する。
【0032】
双安定な表面配向規制を正確に制御するために実験で使用した表面処理方法は、ナノインプリント・リソグラフィ(NIL)である。NILは、表面の溝のピッチと高さを再現良く形成可能であるため全領域で一様なアンカリング条件を繰り返し作成することができ、また、このシステムでは一工程の処理で双安定性を得ることができる。
【0033】
図1は本発明に係る方位角での表面ネマチック双安定性のための概略表面外形図である。方位角で互いに直交した状態の二つの競合する弾性アンカリングエネルギー強度を有するこの格子状パターンでは、ネマチック液晶−基板の界面にほぼ4回対称な対称性がある。
【0034】
図1に示されているように、基板1上の格子状パターン2は、二つの異なる、より正確には90°の差を有するLC配向規制間に表面複合作用を有している。NILによって同時に作成された二つの配向方向のうちの一方は、x軸と一致しており、残りはy軸と一致している。φはネマチックLCの方向である。互いに直交した配向を有するこの方位角システムでは、表面トポグラフィに関係した弾性エネルギーが、同じ程度のアンカリング強度を有する二つの異方性配向規制間の複合作用を一意的に決定すると想定される。その場合、このシステムにおける全表面の自由エネルギー密度は、次の等式によって与えられる。
【0035】
t =fx +fy +fs …(1)
ここで、x軸沿いの溝3によって生じるLCの単位面積当りの自由エネルギーfx は、次の等式によって与えられる。
【0036】
x =(1/2)wx sin2 φ …(2)
但し、wx はx方向のアンカリング強度である。また、y軸沿いの溝4によって生じるLCの単位面積当りの自由エネルギーfy は、次の等式によって与えられる。
【0037】
y =(1/2)wy sin2 φ …(3)
但し、wy はy方向のアンカリング強度である。直接的に固体基板の影響を受ける配向層の表面エネルギーへの弾性寄与に関連したfs は、次の等式によって与えられる。
【0038】
s =(1/8)asin2 2φ …(4)
上記した等式(2)及び(3)におけるwは、Berremanの式によって具体化され、また、上記した等式(4)における係数は、符号が反対になっている。上記した等式(1)は最終的に次のように書き替えることができる。
【0039】
t =(1/2)wt sin2 φ+(1/8)asin2 2φ …(5)
但し、wt =wx −wy
LCダイレクタの方位角φについて等式(5)を最小化することによって、このシステムの表面における方位角上安定したダイレクタ状態を表すことができる。その結果は、次のように得られた。
【0040】
(dft /dφ)
=(1/2)wt sin2φ+(1/2)acos2φsin2φ=0 …(6)
上記等式(6)では、|wt |>aの場合、ネマチックLCダイレクタは、φ=0又はφ=π/2で安定されるが、このことは、LCが単安定状態でx軸又はy軸に沿って配向されていることを意味している。|wt |<aの場合、解はcos2φ=wt /aであり、このことはネマチックLCの方向が、方位角が直交している同じ程度の二つのアンカリング強度間で双安定した相互のアンカリング複合作用によって決められることを意味している。この条件では常に二つの解が存在しており、一方の解がφ=ψであれば、他方はφ=π−ψとなる。例えば、wx =wy であれば、LCダイレクタは、φ=45°及びφ=135°で安定される。
【0041】
図2は、NILによって金型パターンからスピンコートされたポリメチルメタクリレート(PMMA)、又はハイブリッド型ポリイミド(HPI)に転写されたナノサイズの格子状パターンのAFM画像である。それらのピッチは、x及びyの両方向に対して全て400nmで、またそれらの高さは、x方向に対して160nmで且つy方向に対して180nmであった。その場合、双安定性はx軸線から方位角で47°と133°で達成された。すなわち、スピンコートされたポリメチルメタクリレート(PMMA)膜又はハイブリット型ポリイミド膜(HPI)に1mm×1mmの面積の金型パターンから転写されたナノサイズの基板表面構造についての原子間力顕微鏡(AFM、SPM−9500J3、株式会社 島津製作所製)による画像を示している。PMMA膜は、インプリント装置(X−200−NV、SCIVAX株式会社製)によって金型を使用して200℃で5分間10MPaの圧力でプレスされた。なお、HPIの場合は200℃で5分間、8.5MPaでプレスされた。引き続いて、ガラス転移温度よりも低くなるよう冷却されて金型が分離される。そのパターンにおけるx方向のピッチと高さは、それぞれ400nmと160nmで、またそのパターンにおけるy方向のピッチと高さは、それぞれ400nmと180nmであった。このシステムにおけるLC挙動は、方向角方向にほぼ4回対称なアンカリング構成の作用を基にして、全体的な表面アンカリングによって決定される。Berremanの式によれば、この溝が形成された界面におけるネマチックLCの方位角アンカリング強度は、次の等式によって表される。
【0042】
w=(1/2)kA2 3 …(7)
但し、kはLCの弾性定数であり、Αは溝の高さであり、またq=2π/λ(λは溝のピッチである)は波数ベクトルである。k22≒2×10-12 Nとして上記した等式(7)の計算をすることで、二つの方位角アンカリングエネルギーのwx ≒10-4とwy ≒1.3×10-4J/m2 を得た。それらは、実際には強い極性アンカリングエネルギーを有するHPIに良く合致するので、それについて以下に説明する。
【0043】
図3は、金型パターンからHPIに転写されたナノサイズの線状のパターンのAFM画像である。ナノパターン上に実施されたラビング処理(露光、又はイオンビームへの暴露)方向が示された。
【0044】
4−n−ペンチル−4’−シアノビフェニル(5CB)が充填されたセルギャップ10μmのLCセルがこの実験に適用された。このセルにおける双安定性は、図3に描かれているようにPMMAとHPIの両方に対して偏光顕微鏡によってφ=47°とφ=133°で観察された。このシステムにおけるランダム成分の寄与aは≒3.5×10-4J/m2 として推定され、強いアンカリングエネルギーを有するHPIではより高い。正又は負の誘電異方性を有するネマチック液晶によって二つの安定状態をスイッチングする二組の面内電界を形成するための電極構造が図4と図5に示されている。
【0045】
図4は、二つの安定状態をスイッチングするための正又は負の誘電異方性を有するネマチック液晶を備えた二組の面内スイッチング(IPS)電極構造を示している。図4(a)は暗状態を示し、図4(b)は明状態を示す。
【0046】
図4において、11は上部基板、12は上部基板11の底面に形成される櫛歯状の第1の上部電極、13は上部基板11の底面に形成される櫛歯状の第2の上部電極、14は第1の上部電極12に接続される第1の接続電極、15は第2の上部電極13に接続される第2の接続電極、16はラビング方向、17は下部基板、18は下部基板17の上面に形成される櫛歯状の第1の下部電極、19は下部基板17の上面に形成される櫛歯状の第2の下部電極、20は第1の下部電極18に接続される第1の接続電極、21は第2の下部電極19に接続される第2の接続電極、22はネマチック液晶、23はネマチック液晶の単安定性を有する上部層、24はネマチック液晶の双安定性を有する下部層を示している。上記したように、櫛歯状の第1の上部電極12と櫛歯状の第2の上部電極13、また、櫛歯状の第1の下部電極18と櫛歯状の第2の下部電極19とはそれぞれ互いにかみ合うように配置されている。また、上部基板及び下部基板のそれぞれの櫛歯状の電極は互いに直交している。
【0047】
図8に示されているように偏光子を交差させた光学系では、誘電異方性が正のネマチック液晶を用いた場合には、図4(a)に示されているように下部IPS電極によるac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、偏光子の吸収軸の方向に配向されたLCダイレクタによって良好な暗状態が達成され、また、図4(b)に示されているように上部IPS電極によるac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、90°捩じられたネマチックLCによって良好な明状態が達成される。
【0048】
図5は、二つの安定状態をスイッチングするための正又は負の誘電異方性を有するネマチック液晶を備えた二組のフリンジ・フィールド・スイッチング(FFS)電極構造を示している。図5(a)は暗状態を示し、図5(b)は明状態を示す。
【0049】
図5において、31は下部基板、32はその下部基板の基部、33は下部基板の第1の電極、34は下部基板の絶縁部、35は絶縁部34の表面に形成される櫛歯状の第2の電極、36は第2の電極35に接続される接続電極、37は上部基板、38はその上部基板の基部、39は上部基板の第1の電極、40は上部基板の絶縁部、41は絶縁部40の下面に形成される櫛歯状の第2の電極、42は第2の電極41に接続される接続電極、43はネマチック液晶を示している。また、上部基板及び下部基板のそれぞれの櫛歯上の電極は互いに直交している。
【0050】
図8に示されているように偏光子を交差させた光学系では、誘電異方性が正のネマチック液晶を用いた場合には、図5(a)に示されているように下部FFS電極によるac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、偏向子の吸収軸の方向に配向されたLCダイレクタによって良好な暗状態が達成され、また、図5(b)に示されているように上部FFS電極によるac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、90°捩じられたネマチックLCによって良好な明状態が達成される。
【0051】
それらは、面内スイッチング(IPS)のネマチックLCモード又はフリンジ・フィールド・スイッチング(FFS)のネマチックLCモードで一般的に使用される電極の形と同様であり、上部基板及び下部基板において互いに直交した二つの電極である、上部電極と下部電極から構成されている。下部電極に起因する電界方向は方位角がφ=45°であり、上部電極に起因する電界方向は方位角がφ=135°である。LCダイレクタから2°の差だけ反れたそれらの方向は、電界によるLC回転時の特異点を防ぐ。ラビング処理によって配向された上部層の表面ネマチックダイレクタはφ=47°で安定であった。別の電極構造によって、二つの安定状態をスイッチングすることもできる。
【0052】
図6は、二つの安定状態をスイッチングするための二周波駆動液晶を備えた単一のIPS又はFFSの電極構造を示している。図6(a)は暗状態を示し、図6(b)は明状態を示す。
【0053】
図6において、51は上部基板、52はそのラビング方向、53は下部基板、54は下部基板53の表面に形成される櫛歯状の第1の下部電極、55は下部基板53の表面に形成される櫛歯状の第2の下部電極、56は第1の下部電極54に接続される第1の接続電極、57は第2の下部電極55に接続される第2の接続電極、58は二周波駆動のネマチック液晶、59はネマチック液晶の単安定性を有する上部層、60はネマチック液晶の双安定性を有する下部層を示している。
【0054】
この構造では、図6に示すように二周波駆動のネマチック液晶58を使用する上部基板51あるいは下部基板53の一方にIPS又はFFS電極(ここでは下部IPS電極)を有する。単安定性を有する上部層59と双安定性を有する下部層60のこのような構成をとることで、印加ac電界の周波数が高周波時にはその誘電異方性が正で、低周波時にはその誘電異方性が負となる二周波駆動のネマチックLCを用いた場合、下部電極に高周波電界を印加した後すぐに電界を除去することによって交差した偏光子を備えた光学系の偏光子の吸収軸方向に配向されたLCダイレクタによって良好な暗状態が発生する。また、下部電極に低周波電界を印加した後ですぐに電界を除去することによって、同じ光学系で90°捩れた(正確には86°の捩れ)ネマチックLCによって良好な明状態が発生する。
【0055】
図4、図5及び図6で用いられる電極は、光の透過性を高めるために透明であるのが望ましい。クロム製の電極の幅は10μmで、隣り合う電極間の距離は15μmであった。100Hzの矩形波の面内電界が、0V/μmから10V/μmまで電極に印加された。一方の状態から他方の状態へのスイッチングを行うために必要とされる表面LCのアンカリング・ブレーキングを起こすための敷居電界は、表面層の材料に依存する。そのような意味で、等式(7)は、極角アンカリングを考慮にいれてより正確な形に変更されるべきである。有限な極角アンカリングを考慮にいれると、極角アンカリングが方位角アンカリングに影響することが示され、これら二つの係数が次のように関連付けられる。
【0056】
a =(1/2)kA2 3 〔1+(kq/2wp )〕-1 …(8)
但し、wa は方位角アンカリング強度であり、またwp は極角アンカリング強度である。wp ≫qk/2であれば、方位角アンカリングは溝が形成された表面の近くの弾性歪みのみによって決定されることが等式(8)から証明され、これはBerremanの式を裏付けるものである。しかし、wp ≪qk/2であれば、方位角アンカリングに対する極角アンカリングの寄与が重要になり、したがってその場合Berremanの式は有効ではない。wp ≧qk/2の強い極角アンカリングを行うHPIとwp ≦qkの弱い極角アンカリングを行うPMMAそれぞれの表面ネマチック境界では、表面アンカリング・ブレーキングに対して観察された敷居電界は、HPIに対して≒7V/μmで、PMMAに対して≒5V/μmであった。表面アンカリングエネルギーのRapini−Papoular関数を用いた敷居電界に関連した方位角アンカリングエネルギーは、次のように与えられる。
【0057】
a =2Es √(k22Δε) …(9)
この等式(9)から、△ε≒7×10-11F/mを用いて、HPIに対して≒12nmの外挿長を生じるwa ≒1.7×10-4J/m2 と、PMMAに対して≒17nmの外挿長を生じるwa ≒1.2×10-4J/m2 を得る。HPIに対する値は、この表面ネマチック双安定システムにおけるwa が、wx とwy のベクトル構成要素によってもたらされるかのような値である。これが正しいと仮定すると、このシステムにおいて上記した等式(8)から誘導されたPMMAの推定極角アンカリングは、4.8×10-5J/m2 であり、したがって、wx 及びwy は、それぞれ7.4×10-5J/m2 及び9.4×10-5J/m2 となることが分かる。その場合、PMMAに対するランダム成分の寄与aは、≒2.8×10-4J/m2 と推定される。
【0058】
図7は、実際の双安定装置で測定された偏光顕微鏡画像を示している。図7(a)及び図7(b)は、それぞれ図3と図4の動作原理によって得られた暗状態及び明状態である。すなわち、PMMAのLC配向層を使用した実際の双安定装置で測定された偏光顕微鏡画像を示している。図7(a)及び図7(b)は暗状態と明状態であり、それぞれ、下部電極による敷居電界(≒5V/μm)及び上部電極による敷居電界(≒5.5V/μm)により完全にスイッチングされる。それらの敷居電界の差は、セルの厚さに由来する。二つの明瞭な状態間のコントラスト比(CR)は、200:1より大きく、これは他の双安定表示装置よりも大きい。より大きなCRは、LCセルの光学的設計を含んだ、光学部品の機械的組み立て精度を向上させることで得られる。実際に二つの永久的に双安定な状態を有するこの表示装置の光学的特徴は、一般的なIPSモードとほぼ同じである。溝のピッチを大きくすることで敷居電界を弱めることができる。600から800nmのピッチをこの表示装置に使用すると、方位角アンカリングエネルギーを≒10-5J/m2 まで低下させることができる。材料のランダム成分の寄与は変数であるが、それは敷居電界の急激な低下と関連している。
【0059】
図8は、代表図面としてのLCセルの光学系を示す図である。図8(a)は暗状態を示し、図8(b)は明状態を示す。
【0060】
図8において、61は下部基板、62はその下部基板の基部、63は下部基板の第1の電極、64は下部基板の絶縁部、65は下部基板の絶縁部64の表面に形成される櫛歯状の第1の下部電極、66は第2の下部電極65に接続される接続電極、67は上部基板、68はその上部基板の基部、69は上部基板の第1の電極、70は上部基板の絶縁部、71は上部基板の絶縁部70の下面に形成される櫛歯状の第1の上部電極、72は第2の上部電極71に接続される接続電極、73はネマチック液晶、74は下部基板61側に配置される第1の偏光子、75はその吸収又は透過軸、76は上部基板67側に配置される第2の偏光子、77はその吸収又は透過軸を示している。また、上部基板67及び下部基板61のそれぞれの櫛歯状の電極は互いに直交している。
【0061】
図8に示されているように偏光子を交差させた光学系では、誘電異方性が正のネマチック液晶を用いた場合には、図8(a)に示されているように下部FFS電極によるac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、偏向子の吸収軸の方向に配向されたLCダイレクタによって良好な暗状態が達成され、また、図8(b)に示されているように上部FFS電極によるac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、90°捩られたネマチックLCによって良好な明状態が達成される。
【0062】
更に、双安定を得るためのもう一つ別の特徴として、線状のナノサイズのパターンを二工程でインプリントすることを提案する。
【0063】
図9は、二工程でインプリントされたAFM画像を示している。第一工程では、線状パターンを有する金型81によって同じインプリント条件の下でHPI基板82にインプリントを行った。第二工程では、HPI基板82を同一平面上で90°回転し、第一工程でインプリントされた領域に同じ金型81で再びインプリントを行った。HPI基板82は、Tg よりも高い温度でインプリントされたが、第二工程で加熱しても第一工程で生成した線状パターンを何ら損なうことなくHPI基板82において期待した二工程インプリントのパターン形状を正確に得ることができた。
[実施例1]
正又は負の誘電異方性を有するネマチック液晶(LC)を用いた二組の面内電界電極構成(IPS+IPSの組合わせ)
1.図4に示すような透明なIPS電極を備えた薄膜トランジスタ(TFT)基板及びIPS電極と薄膜トランジスタ(TFT)を備えたカラーフィルター(C/F)基板を用意する。
【0064】
2.ナノインプリント・リソグラフィ用のLC配向材料(ホモジニアス配向)がIPSのTFT基板及びC/F基板上にスピンコートされる。
【0065】
3.焼成後に、一つの基板にナノサイズの格子状パターン(図2)〔又は線状のナノサイズのパターン+ラビング処理(又は光配向又はイオンビーム配向)(図3)又は二工程の線状のパターン(図9)〕が、用意された金型によって特許請求の範囲に記載された適当な条件の下で電極(ITO)による電界方向に対して45°又は135°の方向にインプリントされる。もう一つ別の基板は、電極(ITO)による電界方向に対して0°又は90°の方向にラビング処理される(またはインプリントされるか、又は露光されるか、又はイオンビームに曝らされる)。
【0066】
4.正又は負の誘電異方性を有する液晶が基板の一方の上に滴下され、二つの基板が互いに直交した電極方向に組み合わされ、所望のセル・ギャップ〔△nd=0.482(90°TN条件)〕になるようにプレスされ、そして完全にシールされる。勿論、LCは組み合わされたセル内に毛細管法によって注入されてもよい。
【0067】
5.次にインプリントによって与えられた二つの安定したLC方向の一方は、下部(上部)電極による電界方向に直交しており、またもう一つ別の方向は上部(下部)電極による電界方向に直交している。
【0068】
6.図8に示されているように偏光子を交差させた光学系では、誘電異方性が正のネマチック液晶を用いた場合には、図4に示されているように下部IPS電極によるac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、偏光子の吸収軸の方向に配向されたLCダイレクタによって良好な暗状態が達成され、また、上部電極によるac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、90°捩られたネマチックLCによって良好な明状態が達成される。
[実施例2]
正又は負の誘電異方性を有するネマチック液晶(LC)を用いた二組の面内電界電極構成(FFS+FFSの組合わせ)
1.図5に示されたような透明なFFS電極を備えた薄膜トランジスタ(TFT)基板及びFFS電極と薄膜トランジスタ(TFT)を備えたカラーフィルター(C/F)基板を用意する。
【0069】
2.ナノインプリント・リソグラフィ用のLC配向材料(ホモジニアス配向)がFFSのTFT基板及びC/F基板上にスピンコートされる。
【0070】
3.焼成後に、一つの基板にナノサイズの格子状パターン(図2)〔又は線状のナノサイズのパターン+ラビング処理(又は光配向又はイオンビーム配向)(図3)又は二工程の線状のパターン(図9)〕が、用意された金型によって特許請求の範囲に記載された適当な条件の下で電極(ITO)による電界方向に対して45°又は135°の方向にインプリントされる。もう一つ別の基板は、電極(ITO)による電界方向に対して0°又は90°の方向ラビング処理される(又は、インプリントされるか、露光されるか、又はイオンビームに曝らされる)。
【0071】
4.正又は負の誘電異方性を有する液晶が基板の一方の上に滴下され、二つの基板が互いに直交した電極方向に組み合わされ、所望のセル・ギャップ〔△nd=0.482(90°TN条件)〕になるようプレスされ、そして完全にシールされる。勿論、LCは組み合わされたセル内に毛細管法によって注入されてもよい。
【0072】
5.次にインプリントによって与えられた二つの安定したLC方向の一方は、下部(上部)電極による電界方向に直交しており、またもう一つ別の方向は上部(下部)電極による電界方向に直交している。
【0073】
6.図8に示されているように偏光子を交差させた光学系では、誘電異方性が正のネマチック液晶を用いた場合には、図5に示されているように下部FFS電極によるac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、偏光子の吸収軸の方向に配向されたLCダイレクタによって良好な暗状態が達成され、また上部電極によるac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、90°捩られたネマチックLCによって良好な明状態が達成される。
[実施例3]
正又は負の誘電異方性を有するネマチック液晶(LC)を用いた二組の面内電界電極構成(IPS+FFSの組合わせ)
1.透明なFFS(IPS)電極を備えた薄膜トランジスタ(TFT)基板及びIPS(FFS)電極と薄膜トランジスタ(TFT)を備えたカラーフィルター(C/F)基板を用意する。
【0074】
2.ナノインプリント・リソグラフィ用のLC配向材料(ホモジニアス配向)がIPS(FFS)のTFT基板及びC/F基板上にスピンコートされる。
【0075】
3.焼成後に、一つの基板にナノサイズの格子状パターン(図2)〔又は線状のナノサイズのパターン+ラビング処理(又は光配向、又はイオンビーム配向)(図3)又は二工程の線状のパターン(図9)〕が、用意された金型によって特許請求の範囲に記載された適当な条件の下で電極(ITO)による電界方向に対して45°又は135°の方向にインプリントされる。もう一つ別の基板は、電極(ITO)による電界方向に対して0°又は90°の方向にラビング処理される(または、インプリントされるか、露光されるか、イオンビームに曝らされる)。
【0076】
4.正又は負の誘電異方性を有する液晶が基板の一方の上に滴下され、二つの基板が互いに直交した電極方向に組み合わされ、所望のセル・ギャップ〔△nd=0.482(90°TN条件)〕になるようプレスされ、そして完全にシールされる。勿論、LCは組み合わされたセル内に毛細管法によって注入されてもよい。
【0077】
5.次に、インプリントによって与えられた二つの安定したLC方向の一方は、下部(上部)電極による電界方向に直交しており、またもう一つ別の方向は上部(下部)電極による電界方向に直交している。
【0078】
6.図8に示されているように偏光子を交差させた光学系では、誘電異方性が正のネマチック液晶を用いた場合には、下部IPS(FFS)電極によるac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、偏光子の吸収軸の線に配向されたLCダイレクタによって良好な暗状態が達成され、また上部電極によるac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、90°捩られたネマチックLCによって良好な明状態が達成される。
[実施例4]
IPS又はFFS電極及び二周波駆動ネマチック液晶(LC)を用いた単一面内スイッチング
1.図6に示されたような透明なIPS又はFFS薄膜トランジスタ(TFT)基板及びカラーフィルター(C/F)基板を用意する。
【0079】
2.ナノインプリント・リソグラフィ用のLC配向材料(ホモジニアス配向)がIPS又はFFSのTFT基板及びC/F基板上にスピンコートされる。
【0080】
3.焼成後に、一つの基板にナノサイズの格子状パターン(図2)〔又は線状のナノサイズのパターン+ラビング処理(又は光配向又はイオンビーム配向)(図3)又は二工程の線状のパターン(図9)〕が、用意された金型によって特許請求の範囲に記載された適当な条件の下で電極(ITO)による電界方向に対して45°又は135°の方向にインプリントされる。もう一つ別の基板は、電極(ITO)による電界方向に対して0°又は90°の方向にラビング処理される(または、インプリントされるか、露光されるか、イオンビームに曝らされる)。
【0081】
4.二周波駆動のネマチックLCが基板の一方の上に滴下され、二つの基板が互いに直交した電極方向に組み合わされ、所望のセル・ギャップ〔△nd=0.482(90°TN条件)〕になるようプレスされ、そして完全にシールされる。勿論、LCは組み立て合わされたセル内に毛細管法によって注入されてもよい。ここで、上記の二周波駆動のネマチックLCは、印加ac電界の周波数が高周波時にはその誘電異方性が正で、低周波時にはその誘電異方性が負となるものを用いた。
【0082】
5.次に、インプリントによって与えられた二つの安定したLC方向の一方は、下部(上部)電極による電界方向に直交しており、またもう一つ別の方向は上部(下部)電極による電界方向に直交している。
【0083】
6.図8に示されているように偏光子を交差させた光学系では、図6に示されているように下部IPS又はFFS電極による高い(低い)周波数のac電界をLCセルに印加しれてすぐに除去すると、偏光子の吸収軸の線に配向されたLCダイレクタによって良好な暗状態が達成され、また下部電極による低い周波数のac電界をLCセルに印加してすぐに除去すると、90°捩られたネマチックLCによって良好な明状態が達成される。
【0084】
本発明のネマチックLC装置は、従来の双安定装置の垂直スイッチングとは異なり、面内スイッチングによって、光学補償膜をなんら使用せずに高いコントラスト比と広い視野角を有している。
【0085】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の双安定ネマチック液晶表示装置は、低電力消費で広い視野角の様々な携帯液晶表示装置に利用可能である。
【0087】
更に、e−ブックを含むモバイル・アプリケーションに対する需要は、将来的にも絶えることなく増大する。このような技術によるLCD機能の拡張は、使用者の好奇心を十分に満足させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る方位角での表面ネマチック双安定性のための概略表面外形図である。
【図2】本発明に係るNILによって金型パターンからスピンコートされたポリメチルメタクリレート(PMMA)、又はハイブリッド型ポリイミド(HPI)に転写されたナノサイズの格子状パターンのAFM画像である。
【図3】本発明に係る金型パターンからHPIに転写されたナノサイズの線状のパターンのAFM画像である。
【図4】本発明に係る二つの安定状態をスイッチングするための正又は負の誘電異方性を有するネマチック液晶を備えた二組のIPS電極構造を示す図である。
【図5】本発明に係る二つの安定状態をスイッチングするための正又は負の誘電異方性を有するネマチック液晶を備えた二組のFFS電極構造を示す図である。
【図6】本発明に係る二つの安定状態をスイッチングするための二周波駆動液晶を備えた単一のIPS又はFFSの電極構造を示す図である。
【図7】本発明に係る実際の双安定装置で測定された偏光顕微鏡画像である。
【図8】本発明に係る代表例としてのLCセルの光学系を示す図である。
【図9】本発明に係る二工程でインプリントされたAFM画像である。
【符号の説明】
【0089】
1 基板
2 格子状パターン
3 x軸沿いの溝
4 y軸沿いの溝
11,37,51,67 上部基板
12,71 櫛歯状の第1の上部電極
13 櫛歯状の第2の上部電極
14 第1の上部電極に接続される第1の接続電極
15 第2の上部電極に接続される第2の接続電極
16,52 ラビング方向
17,31,53,61 下部基板
18,54,65 櫛歯状の第1の下部電極
19,55 櫛歯状の第2の下部電極
20,56,66 第1の下部電極に接続される第1の接続電極
21,57 第2の下部電極に接続される第2の接続電極
22,43,73 ネマチック液晶
23,59 ネマチック液晶の単安定性を有する上部層
24,60 ネマチック液晶の双安定性を有する下部層
32,62 下部基板の基部
33,63 下部基板の第1の電極
34,64 下部基板の絶縁部
35 下部基板の櫛歯状の第2の電極
36 下部基板の第2の電極に接続される接続電極
38,68 上部基板の基部
39,69 上部基板の第1の電極
40,70 上部基板の絶縁部
41 上部基板の櫛歯状の第2の電極
42 上部基板の第2の電極に接続される接続電極
58 二周波駆動のネマチック液晶
72 上部基板の接続電極
74 下部基板側に配置される第1の偏光子
75 第1の偏光子の吸収又は透過軸
76 上部基板側に配置される第2の偏光子
77 第1の偏光子の吸収又は透過軸
81 線状パターンを有する金型
82 HPI基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と、前記一対の基板間に配置された液晶層と、該液晶層と前記一対の基板の少なくともいずれか一方との間に配置された液晶配向層とを有し、該液晶配向層の少なくとも一方には、ナノインプリント・リソグラフィ技術で液晶を配向し、双安定性を得るための液晶配向層の表面処理法として用い、前記液晶層に熱転移又は濃度転移型のネマチック液晶を用いることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記双安定性は面内(又は方位角による)双安定性として実現されていることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記液晶配向層の少なくとも一方は、液晶配向方向として二つ以上の方位角の異なる容易軸を有することを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記方位角の異なる容易軸の組合わせは、ナノインプリント・リソグラフィ技術によって発生した容易軸の組合わせか、又はナノインプリント・リソグラフィ技術によって発生した前記容易軸とラビング処理、SiOx蒸着物、レーザ・リソグラフィ、フォトリソグラフィ、光配向又はイオンビーム配向のいずれかで発生した容易軸との組合わせであることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項5】
請求項4記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記方位角が異なる容易軸のアンカリング強度は、同じ程度であることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、同じ程度のアンカリング強度を有する方位角の異なる容易軸は、ナノインプリント・リソグラフィ技術によって異なった方向に対して溝のピッチと高さを制御することで発生することを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項7】
請求項6記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、双安定性を得るために、凹凸金型による一工程のナノインプリント・リソグラフィ技術によって生成される方位角が直交した二つの溝から二つの競合するアンカリング強度を有する格子状パターンを使用することを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項8】
請求項6記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、双安定性を得るために、線状のパターンのインプリントを行う二工程を用いることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項9】
請求項6記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、双安定性を得るために、凹凸金型によるナノインプリント・リソグラフィ技術とラビング処理による線状のパターンの組合わせを用いることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項10】
請求項7から9の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記溝のピッチ及び高さ(又は深さ)は、50から1500nm及び20から1000nmであることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項11】
請求項7から10の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、インプリント方法は、光ナノインプリントおよび熱ナノインプリントを含むことを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項12】
請求項7から10の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、表面トポグラフィーを作成するインプリント条件は、配向膜用のインプリント装置と金型を使用して25℃から350℃で0.2分から5分の間、3MPaから10MPaの圧力を加えることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項13】
請求項1から10の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記ネマチック液晶のプレチルト角度は、双安定性を得るための二つの異方性アンカリングエネルギーによる二つの優先方向の内の少なくとも一方において、1°未満であることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項14】
請求項1から13の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、二つの安定状態をスイッチングするため、上部基板及び下部基板に交差した櫛歯状電極からなる電極構造を有することを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項15】
請求項1から13の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、二つの安定状態の電極構造を、二周波駆動のネマチック液晶材料と上部基板と下部基板の一方に配置された櫛歯状電極からなる電極構造を有することを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項16】
請求項14又は15記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、透明電極を用いることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項17】
請求項1から16の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、暗状態は、二つの安定状態を有する下部層(又は上部層)の安定状態の液晶配向方向が、ラビング処理によって単安定状態の上部層(又は下部層)の液晶配向方向に平行になるときに得られ、また明状態は、前記下部層(又は上部層)のもう一つの安定状態の液晶配向方向が前記上部層(又は下部層)の前記単安定状態の液晶配向方向と方位角が直交しているときに得られることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項18】
請求項17記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、前記液晶層のリタデーションd△nは、0.3≦d△n≦0.6となるように制御されることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項19】
請求項1から18の何れか一項に記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、配向層の材料は、10-7から10-4J/m2のアンカリング強度(係数)を有していることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。
【請求項20】
請求項1から19の何れか一項記載の双安定ネマチック液晶表示装置において、1μmよりも大きく且つ深さ(又は高さ)が50nm未満のピッチを有する金型がナノインプリント・リソグラフィに用いられることを特徴とする双安定ネマチック液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−96562(P2008−96562A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276175(P2006−276175)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】