説明

双方向光増幅器並びにこれを用いたPONシステム及び通信方法

【課題】本発明は、パッシブダブルスター型のPONシステムにおいて、遠距離エリアと近距離エリアの加入者を同時に収容する場合であっても、近距離エリアの上り信号光を劣化させることのない双方向光増幅器の提供を目的とする。
【解決手段】本願発明の双方向光増幅器は、下り信号光と上り信号光を合分波する第1の合分波器31及び第2の合分波器32と、下り信号光の強度を増幅する第1の光増幅器33と、上り信号光の強度を増幅する第2の光増幅器34と、第2の光増幅器において発生するASE光を減衰させ又は遮断する光調節器11と、上り信号光があるときは光調節器11を動作させ、上り信号がないときは光調節器11の動作を停止させる制御回路14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシブダブルスター型のPONシステムに用いられる双方向光増幅器並びにこれを用いたPONシステム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)や、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)では、高速のアクセスサービスを経済的に提供するために、PON(Passive Optical Network)の標準化に取り組んでいる。IEEEでは、すでに商用化されているG−EPON(Gigabit Ethernet(登録商標) PON、および次世代システムの10G−EPONの標準化を終えている。またITU−Tでは、すでに商用化されているB−PON(Broadband PON)、およびG−PON(Gigabit−capable PON)の標準化を終えており、次世代システムのXG−PONの標準化を進めている。
【0003】
これらPONは、収容局と複数の加入者が、所外に配置された光スプリッタを介して、一本の光ファイバで結合されるネットワーク構成であり、上り信号光と下り信号光が異なる波長により、同一光ファイバ上を双方向に伝送される。下り信号光は、加入者ごとの信号が、時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)技術を用いて多重された連続信号であり、加入者に配置される送受信装置(ONU:Optical Network Unit)は、光スプリッタにおいて分岐された連続信号から、自身に必要なタイムスロットの信号を取り出す。また、上り信号光は、ONUから間欠的に送信されるバースト信号であり、光スプリッタで結合されてTDM信号となり、収容局に送られる。本システムでは、収容局から光スプリッタまでの光ファイバ、および収容局に配置される送受信装置(OLT:Optical Line Terminal)を、複数の加入者で共用化できることから、ギガを超える高速の光アクセスサービスを、経済的に提供することができる。
【0004】
GE−PONや、G−PONは、すでに完成されたシステムであるが、伝送路の長延化が課題の一つとなっている。これが実現できれば、光スプリッタの分岐数を増やして収容する加入者の数を増したり、収容エリアを拡げたりして、数的ないしは面的に、収容効率を向上させることが期待できる。これを解決するために、光増幅器を用いて、分岐数を増やした光スプリッタや、長延化された伝送路の損失を補償する方法が提案されている(例えば、非特許文献1及び2参照。)。
【0005】
図5に、双方向光増幅器を用いたPONシステムの構成を示す。ここで示すのは、所外だけでなく、所内にも光スプリッタを配置したパッシブダブルスター型のネットワーク構成であり、所内の光スプリッタから分岐される光ファイバのうち、遠距離エリアAの加入者を収容するものに、双方向光増幅器153を配置している。図5では、所内に双方向光増幅器153を配置した場合を図示しているが、所外に配置してもよい。図示する通り、双方向光増幅器153は、双方向の下り信号光(波長λ)と、上り信号光(波長λ)を、2つの合分波器を利用して個別の光増幅器により増幅する構成である。本ネットワーク構成によれば、数の少ない遠距離エリアAの加入者を、近距離エリアAの加入者と同じOLT52で収容することにより、システム収容の効率化を図ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Derek Nesset et al.,“Demonstration of 100 km Reach Amplified PONs with Upstream Bit−rates of 2.5Gb/s and 10 Gb/s”,ECOC2004,We2.6.3
【非特許文献2】Ken−Ichi Suzuki et al.,“60km,256−split Optically−amplified PON Repeatered Transmission using 1.24 Gbit/s Upstream and 2.5Gbit/s Downstream PON system”,ECOC2006,Mo4.5.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、光増幅器は、自然放出(ASE:Amplified Spontaneous Emission)光を放出するため、これによる信号劣化の問題を考慮しなければならない。図6に、所内の光スプリッタで結合される前後の遠距離エリアAと近距離エリアAの上り信号光の強度レベルを示す。図に示されるとおり、合波前の近距離エリアAの上り信号光は、第2のONU51群がフレームを送信しない非送信時間においてゼロレベルにある。一方、遠距離エリアAの上り信号光は、第1のONU51群がフレームを送信するすべての時間において、ASEが重畳されているため、フレームの非送信時間においてもゼロレベルから持ち上がる。これらが光スプリッタにより結合されると、近距離エリアの上り信号光にも、ASEが重畳されることになる。その結果、光増幅器により増幅されない近距離エリアAの上り信号光は、相対的にASEの影響が大きくなり、遠距離エリアAの上り信号光よりも、信号が劣化することになる。
【0008】
本発明は、パッシブダブルスター型のPONシステムにおいて、遠距離エリアAと近距離エリアAの加入者を同時に収容する場合であっても、近距離エリアAの上り信号光を劣化させることのない双方向光増幅器並びにこれを用いたPONシステム及び通信方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願発明は、遠距離エリアと近距離エリアに設置するONUを収容する双方向光増幅器を用いたPONシステムにおいて、双方向光増幅器が、遠距離エリアに設置されたONUからの信号が送信されていない時間を判定し、送信されていない時間において、自然放出(ASE)光の発生を抑えることによって、遠距離エリアに設置されたONUからの信号が送信されていない時間における、近距離エリアに設置されたONUからの信号に対するASE光の影響を無くすことを可能とする。
【0010】
具体的には、本願発明の双方向光増幅器は、第1の波長の下り信号光を伝送する下り信号光伝送路と、前記第1の波長とは異なる第2の波長の上り信号光を伝送する上り信号光伝送路と、前記下り信号光伝送路及び前記上り信号光伝送路よりも上流側に配置された上流側光ファイバから下り信号光が入力され、入力された下り信号光を分波して前記下り信号光伝送路に出力し、前記上り信号光伝送路で伝送された上り信号光が入力され、入力された上り信号光を前記上流側光ファイバに出力する第1の合分波器と、前記下り信号光伝送路及び前記上り信号光伝送路よりも下流側に配置された下流側光ファイバから上り信号光が入力され、入力された上り信号光を分波して前記上り信号光伝送路に出力し、前記下り信号光伝送路で伝送された下り信号光が入力され、入力された下り信号光を前記下流側光ファイバに出力する第2の合分波器と、前記下り信号光伝送路に挿入され、下り信号光の強度を増幅する第1の光増幅器と、前記上り信号光伝送路に挿入され、上り信号光の強度を増幅する第2の光増幅器と、前記第2の光増幅器において発生するASE(Amplified Spontaneous Emission)光を減衰させ又は遮断する光調節器と、上り信号光の有無を判定し、上り信号光がないときは前記光調節器を動作させ、上り信号光があるときは前記光調節器の動作を停止させる制御回路と、を備える。
【0011】
本願発明の双方向光増幅器は、下り信号光伝送路と、上り信号光伝送路と、第1の合分波器と、第2の合分波器と、第1の光増幅器と、第2の光増幅器と、を備えるため、上り信号及び下り信号を増幅することができる。ここで、本願発明の双方向光増幅器は、光調節器と、制御回路と、を備えるため、上り信号光がない時間帯における双方向光増幅器からのASE光の出力を防ぐことができる。したがって、本願発明の双方向光増幅器は、パッシブダブルスター型のPONシステムにおいて、遠距離エリアと近距離エリアの加入者を同時に収容する場合であっても、近距離エリアの上り信号光を劣化させることのない双方向光増幅器を提供することができる。
【0012】
本願発明の双方向光増幅器では、前記光調節器は、前記第2の光増幅器と前記第1の合分波器との間の光路に挿入され、光強度を減衰させる光減衰器であり、前記第2の合分波器と前記光減衰器との間の光路に挿入され、上り信号光を分岐する光分岐器を備え、前記制御回路は、前記光分岐器の分岐する光強度を用いて上り信号光の有無を判定し、上り信号光がないときは前記光減衰器に光強度を減衰させ、上り信号光があるときは前記光減衰器に光強度を減衰させない構成であってもよい。
光調節器が光減衰器であるため、ASE光を遮断するだけでなく、強度の異なる上りバースト信号のレベルを一定に制御したり、強度の大きな信号の光レベルを弱めたりすることができる。これにより、OLT内の受信器への強い光信号の入力を防ぐことができる。
【0013】
本願発明の双方向光増幅器では、前記光調節器は、前記第2の光増幅器と前記第1の合分波器との間の光路に挿入され、光を遮断する光遮断器であり、前記第2の合分波器と前記光減衰器との間の光路に挿入され、上り信号光を分岐する光分岐器を備え、前記制御回路は、前記光分岐器の分岐する光強度を用いて上り信号光の有無を判定し、上り信号光がないときは前記光遮断器に光を遮断させ、上り信号光があるときは前記光遮断器に光を通過させる構成であってもよい。
光調節器が光遮断器であるため、ASE光を遮断するだけでなく、強度の異なる上りバースト信号のレベルを一定に制御したり、強度の大きな信号の光レベルを弱めたりすることができる。これにより、OLT内の受信器への強い光信号の入力を防ぐことができる。
【0014】
本願発明の双方向光増幅器では、前記光調節器は、前記第2の光増幅器に励起光を供給する励起光源であり、前記第2の合分波器と前記第2の光増幅器との間の光路に挿入され、上り信号光を分岐する光分岐器を備え、前記制御回路は、前記光分岐器の分岐する光強度を用いて上り信号光の有無を判定し、上り信号光がないときは前記励起光源の供給する励起光の供給量を減少させ、上り信号光があるときは前記励起光源の供給する励起光の供給量を増加させる構成であってもよい。
【0015】
光調節器が励起光源であるため、光減衰器又は光遮断器を用いることなくASE光を減衰させることができる。
【0016】
具体的には、本願発明のPONシステムは、第1のONU群を互いに接続する第1の光スプリッタと、前記第1のONU群とは異なる第2のONU群を互いに接続する第2の光スプリッタと、前記第1の光スプリッタ及び第2の光スプリッタをOLTに接続する第3の光スプリッタと、前記第3の光スプリッタと前記第1の光スプリッタとの間の光路に挿入されている本発明に係る双方向光増幅器と、を備え、前記第3の光スプリッタから前記第1のONU群までの距離が、前記第3の光スプリッタから前記第2のONU群までの距離よりも長い。
【0017】
本願発明のPONシステムは、第1の光スプリッタと、第2の光スプリッタと、第3の光スプリッタと、を備えるため、パッシブダブルスター型のPONシステムを構成することができる。ここで、本願発明のPONシステムは、本発明に係る双方向光増幅器を備えるため、遠距離エリアと近距離エリアの加入者を同時に収容する場合であっても、近距離エリアの上り信号光を劣化させることのないPONシステムを提供することができる。
【0018】
具体的には、本願発明のPONシステムの通信方法は、距離の異なる複数のONU群が光スプリッタでOLTと接続されたパッシブダブルスター型のPONシステムの通信方法であって、前記ONU群のうちの遠距離エリアのONU群と前記光スプリッタの間を接続する光ファイバで伝送される下り信号光を分波して増幅した後に前記遠距離エリアのONU群に向けて前記光ファイバに出力するとともに、前記光ファイバで伝送される上り信号光を分波して増幅した後に前記OLTに向けて前記光ファイバに出力する増幅手順を有し、前記増幅手順において、上り信号光の有無を判定し、上り信号光があるときは、上り信号光を分波し、上り信号光を増幅した後に、前記OLTに向けて前記光ファイバに出力し、上り信号光がないときは、上り信号光の増幅時に発生するASE光を減衰させるか又は遮断する。
【0019】
本願発明のPONシステムの通信方法は、増幅手順を有するため、収容局内の光スプリッタから分岐される光ファイバ上で下り信号光及び上り信号光を増幅することができる。ここで、上り信号光がないときにはASE光を減衰させるか遮断するため、遠距離エリアと近距離エリアの加入者を同時に収容する場合であっても、近距離エリアの上り信号光を劣化させることのないPONシステムの通信方法を提供することができる。
【0020】
本願発明の通信方法では、前記増幅手順において、光減衰器で光を減衰させることによって、前記ASE光を低下させてもよい。
本発明により、ASE光を減衰させるだけでなく、強度の異なる上りバースト信号のレベルを一定に制御したり、強度の大きな信号の光レベルを弱めたりすることができる。これにより、OLT内の受信器への強い光信号の入力を防ぐことができる。
【0021】
本願発明の通信方法では、前記増幅手順において、光遮断器で光を遮断することによって、前記ASE光を低下させてもよい。
本発明により、ASE光を遮断するだけでなく、強度の異なる上りバースト信号のレベルを一定に制御したり、強度の大きな信号の光レベルを弱めたりすることができる。これにより、OLT内の受信器への強い光信号の入力を防ぐことができる。
【0022】
本願発明の通信方法では、前記増幅手順において、励起光の供給量を減少させることによって、前記ASE光を低下させてもよい。
本発明により、光減衰器又は光遮断器を用いることなくASE光を減衰させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、パッシブダブルスター型のPONシステムにおいて、遠距離エリアと近距離エリアの加入者を同時に収容する場合であっても、近距離エリアの上り信号光を劣化させることのない双方向光増幅器並びにこれを用いたPONシステム及び通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態1に係るPONシステムの一例を示す。
【図2】双方向光増幅器の第1例を示す。
【図3】実施形態1に係る上り信号光の一例を示す。
【図4】双方向光増幅器の第2例を示す。
【図5】光増幅器を用いたPONシステムの構成を示す。
【図6】光スプリッタで結合される前後の遠距離エリアと近距離エリアの上り信号光の強度レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0026】
(実施形態1)
図1に、本実施形態に係るPONシステムの一例を示す。実施形態1に係るPONシステムは、距離の異なる複数の第1のONU51群及び第2のONU51群が第3の光スプリッタ55でOLT52と接続されたパッシブダブルスター型のPONシステムである。第1の光スプリッタ54は、第1のONU51群を互いに接続する。第2の光スプリッタ54は、第1のONU51群とは異なる第2のONU51群を互いに接続する。第3の光スプリッタ55は、第1の光スプリッタ54及び第2の光スプリッタ54をOLT52に接続する。実施形態1に係るPONシステムは、第1のONU51群及び第2のONU51群からOLT52への上り信号光を伝送し、OLT52から第1のONU51群及び第2のONU51群への下り信号光を伝送する。
【0027】
双方向光増幅器53は、第3の光スプリッタ55と第1の光スプリッタ54との間の光路に挿入される。ここで、第3の光スプリッタ55から第1のONU51群までの距離は、第3の光スプリッタ55から第2のONU51群までの距離よりも長い。
【0028】
実施形態1に係るPONシステムの通信方法は、距離の異なる第1のONU51群及び第2のONU51群が第3の光スプリッタ55で接続されたパッシブダブルスター型のPONシステムの通信方法であって、双方向光増幅器53が、上流側光ファイバ41から下り信号光を分波して増幅した後に下流側光ファイバ42に出力するとともに、下流側光ファイバ42から上り信号光を分波して増幅した後に上流側光ファイバ41に出力する増幅手順を有する。この増幅手順において、双方向光増幅器53は、上り信号光の有無を判定する。そして、上り信号光があるときは、双方向光増幅器53は、上り信号光を分波し、上り信号光を増幅した後に、上流側光ファイバ41に出力する。一方、上り信号光がないときは、双方向光増幅器53は、上り信号光の増幅時に発生するASE光を減衰させるか又は遮断する。以下、増幅手順の具体例について説明する。
【0029】
図2に、双方向光増幅器の第1例を示す。双方向光増幅器53の第1例は、第1の合分波器31と、第2の合分波器32と、第1の光増幅器33と、第2の光増幅器34と、下り信号光伝送路35と、上り信号光伝送路36と、光調節器11と、光分岐器12と、光検出器13と、制御回路14と、を備える。第1の合分波器31は、第3の光スプリッタ55側に配置される上流側光ファイバ41に接続される。第2の合分波器32は、第1の光スプリッタ54側に配置される下流側光ファイバ42に接続される。
【0030】
第1の合分波器31は、下り信号光伝送路35及び上り信号光伝送路36よりも上流側に配置された上流側光ファイバ41から下り信号光が入力され、入力された下り信号光を分波して下り信号光伝送路35に出力する。第1の光増幅器33は、下り信号光伝送路35に挿入され、分波された下り信号光の強度を増幅する。第2の合分波器32は、下り信号光伝送路35で伝送されることによって第1の光増幅器33で増幅された下り信号光が入力され、入力された下り信号光を下流側光ファイバ42に出力する。
【0031】
第2の合分波器32は、下り信号光伝送路35及び上り信号光伝送路36よりも下流側に配置された下流側光ファイバ42から上り信号光が入力され、入力された上り信号光を分波して上り信号光伝送路36に出力する。第2の光増幅器34は、上り信号光伝送路36に挿入され、上り信号光の強度を増幅する。第1の合分波器31は、上り信号光伝送路36で伝送されることによって第2の光増幅器34で増幅された上り信号光が入力され、入力された上り信号光を上流側光ファイバ41に出力する。
【0032】
光調節器11は、上り信号光伝送路36に挿入され、第2の光増幅器34において発生するASE光を減衰させ又は遮断する。光分岐器12は、上り信号光伝送路36に挿入され、上り信号光の一部を分岐する。光検出器13は、光分岐器12の分岐する上り信号光の光強度を検出する。光検出器13は、例えば、光信号を電気信号に変換する光電変換器である。
【0033】
制御回路14は、上り信号光の有無を判定する。例えば、光検出器13の検出する光強度が予め定められた一定値未満であるか否かを判定する。そして、制御回路14は、上り信号光がないときは光調節器11を動作させ、上り信号光があるときは光調節器11の動作を停止させる。これにより、上り信号光を選択的に第1の合分波器31に入射させ、それ以外のASE光などのノイズが含まれた光が第1の合分波器31に入射されることを防ぐ。
【0034】
例えば、制御回路14は、光検出器13の出力する電気信号レベルが低く、非送信時間と判断される時間において、制御信号を出力する。光調節器11は、制御回路14から制御信号が送られた場合、それに対応する時間、すなわち非送信時間と判断された時間において、第2の光増幅器34が放出するASE光を減衰させ又は遮断する。
【0035】
光調節器11は、例えば、第2の光増幅器34と第1の合分波器31との間の光路に挿入され、光強度を減衰させる光減衰器である。この場合、制御回路14は、光分岐器12の分岐する光強度を用いて上り信号光の有無を判定し、上り信号光がないときは光減衰器に光強度を減衰させ、上り信号光があるときは光減衰器に光強度を減衰させない。これにより、増幅手順において、ASE光を減衰させることができる。
【0036】
光調節器11は、例えば、第2の光増幅器34と第1の合分波器31との間の光路に挿入され、光を遮断する光遮断器である。この場合、制御回路14は、光分岐器12の分岐する光強度を用いて上り信号光の有無を判定し、上り信号光がないときは光減衰器に光を遮断させ、上り信号光があるときは光減衰器に光を通過させる。これにより、増幅手順において、ASE光を遮断することができる。
【0037】
図3に、本実施形態に係る上り信号光の一例を示す。双方向光増幅器53を用いることにより、図6の場合と異なり、遠距離エリアAの上り信号光において、非送信時間におけるASE光が遮断されることから、相対的に強度の小さい近距離エリアAの上り信号光が、ASE光の影響により劣化することを防ぐことができる。
【0038】
また、光調節器11が光減衰器又は光遮断器であるため、ASE光を遮断するだけでなく、強度の異なる上りバースト信号のレベルを一定に制御したり、強度の大きな信号の光レベルを弱めたりすることにより、OLT52内の受信器に、強い光信号が入力されることを防ぐことができる。
【0039】
(実施形態2)
本実施形態に係るPONシステムは、双方向光増幅器53の第2例を備えることを特徴とする。図4に、双方向光増幅器の第2例を示す。双方向光増幅器53の第2例は、双方向光増幅器の第1例で説明した、光調節器11、光分岐器12及び制御回路14に代えて、光調節器21、光分岐器22及び制御回路24を備える。
【0040】
本実施形態に係る通信方法は、増幅手順において、励起光の供給量を減少させることによって、ASE光を低下させる。例えば、第2の光増幅器34に、希土類を添加した光ファイバ増幅器を用いる。光調節器21は、第2の光増幅器34に励起光を供給する励起光源である。第2の光増幅器34は、光調節器21から供給される励起光によって上り信号光を増幅する。
【0041】
光分岐器22は、第2の合分波器32と第2の光増幅器34の間の光路に挿入され、上り信号光の一部を分岐する。光検出器13は、光分岐器22の分岐する上り信号光の光強度を検出する。制御回路24は、光分岐器22の分岐する光強度を用いて上り信号光の有無を判定する。例えば、光検出器13の検出する光強度が予め定められた一定値未満であるか否かを判定する。そして、上り信号光がないときは、制御回路24は、励起光源の供給する励起光の供給量を減少させる。このとき、制御回路24は、励起光の供給を停止してもよい。一方、上り信号光があるときは、制御回路24は、励起光源の供給する励起光の供給量を増加させる。これにより、増幅手順において、ASE光を低下させることができる。
【0042】
双方向光増幅器53の第2例は、図1に示す遠距離エリアAの上り信号光において、非送信時間におけるASE光を減衰させることができる。これにより、相対的に強度の小さい近距離エリアAの上り信号光が、ASE光の影響により劣化することを防ぐことができる。
【0043】
また、光調節器21によって、ASE光を減衰させるだけでなく、第2の光増幅器34の利得を一定に制御するAGC(Auto Gain Control)機能を持たせてもよい。例えば、制御回路24は、光検出器13の検出する光強度が高いときは、所望の利得になるまで励起光の供給量を増加させる。一方、制御回路24は、光検出器13の検出する光強度が低いときは、所望の利得になるまで励起光の供給量を減少させるか供給を停止させる。これにより、第2の光増幅器34の利得を所望の一定値に保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
11、21:光調節器
12、22:光分岐器
13:光検出器
14、24:制御回路
31:第1の合分波器
32:第2の合分波器
33:第1の光増幅器
34:第2の光増幅器
35:下り信号光伝送路
36:上り信号光伝送路
41:上流側光ファイバ
42:下流側光ファイバ
51:第1のONU
51:第2のONU
52:OLT
53、153:双方向光増幅器
54:第1の光スプリッタ
54:第2の光スプリッタ
55:第3の光スプリッタ
100:収容局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の下り信号光を伝送する下り信号光伝送路と、
前記第1の波長とは異なる第2の波長の上り信号光を伝送する上り信号光伝送路と、
前記下り信号光伝送路及び前記上り信号光伝送路よりも上流側に配置された上流側光ファイバから下り信号光が入力され、入力された下り信号光を分波して前記下り信号光伝送路に出力し、前記上り信号光伝送路で伝送された上り信号光が入力され、入力された上り信号光を前記上流側光ファイバに出力する第1の合分波器と、
前記下り信号光伝送路及び前記上り信号光伝送路よりも下流側に配置された下流側光ファイバから上り信号光が入力され、入力された上り信号光を分波して前記上り信号光伝送路に出力し、前記下り信号光伝送路で伝送された下り信号光が入力され、入力された下り信号光を前記下流側光ファイバに出力する第2の合分波器と、
前記下り信号光伝送路に挿入され、下り信号光の強度を増幅する第1の光増幅器と、
前記上り信号光伝送路に挿入され、上り信号光の強度を増幅する第2の光増幅器と、
前記第2の光増幅器において発生するASE(Amplified Spontaneous Emission)光を減衰させ又は遮断する光調節器と、
上り信号光の有無を判定し、上り信号光がないときは前記光調節器を動作させ、上り信号光があるときは前記光調節器の動作を停止させる制御回路と、
を備える双方向光増幅器。
【請求項2】
前記光調節器は、前記第2の光増幅器と前記第1の合分波器との間の光路に挿入され、光強度を減衰させる光減衰器であり、
前記第2の合分波器と前記光減衰器との間の光路に挿入され、上り信号光を分岐する光分岐器を備え、
前記制御回路は、前記光分岐器の分岐する光強度を用いて上り信号光の有無を判定し、上り信号光がないときは前記光減衰器に光強度を減衰させ、上り信号光があるときは前記光減衰器に光強度を減衰させない
ことを特徴とする請求項1に記載の双方向光増幅器。
【請求項3】
前記光調節器は、前記第2の光増幅器と前記第1の合分波器との間の光路に挿入され、光を遮断する光遮断器であり、
前記第2の合分波器と前記光減衰器との間の光路に挿入され、上り信号光を分岐する光分岐器を備え、
前記制御回路は、前記光分岐器の分岐する光強度を用いて上り信号光の有無を判定し、上り信号光がないときは前記光遮断器に光を遮断させ、上り信号光があるときは前記光遮断器に光を通過させる
ことを特徴とする請求項1に記載の双方向光増幅器。
【請求項4】
前記光調節器は、前記第2の光増幅器に励起光を供給する励起光源であり、
前記第2の合分波器と前記第2の光増幅器との間の光路に挿入され、上り信号光を分岐する光分岐器を備え、
前記制御回路は、前記光分岐器の分岐する光強度を用いて上り信号光の有無を判定し、上り信号光がないときは前記励起光源の供給する励起光の供給量を減少させ、上り信号光があるときは前記励起光源の供給する励起光の供給量を増加させる
ことを特徴とする請求項1に記載の双方向光増幅器。
【請求項5】
第1のONU(Optical Network Unit)群を互いに接続する第1の光スプリッタと、
前記第1のONU群とは異なる第2のONU群を互いに接続する第2の光スプリッタと、
前記第1の光スプリッタ及び第2の光スプリッタをOLT(Optical Line Terminal)に接続する第3の光スプリッタと、
前記第3の光スプリッタと前記第1の光スプリッタとの間の光路に挿入されている請求項1から4のいずれかに記載の双方向光増幅器と、を備え、
前記第3の光スプリッタから前記第1のONU群までの距離が、前記第3の光スプリッタから前記第2のONU群までの距離よりも長いことを特徴とするPON(Passive Optical Network)システム。
【請求項6】
距離の異なる複数のONU群が光スプリッタでOLTと接続されたパッシブダブルスター型のPONシステムの通信方法であって、
前記ONU群のうちの遠距離エリアのONU群と前記光スプリッタの間を接続する光ファイバで伝送される下り信号光を分波して増幅した後に前記遠距離エリアのONU群に向けて前記光ファイバに出力するとともに、前記光ファイバで伝送される上り信号光を分波して増幅した後に前記OLTに向けて前記光ファイバに出力する増幅手順を有し、
前記増幅手順において、
上り信号光の有無を判定し、
上り信号光があるときは、上り信号光を分波し、上り信号光を増幅した後に、前記OLTに向けて前記光ファイバに出力し、
上り信号光がないときは、上り信号光の増幅時に発生するASE光を減衰させるか又は遮断する
ことを特徴とするPONシステムの通信方法。
【請求項7】
前記増幅手順において、光減衰器で光を減衰させることによって、前記ASE光を減衰させることを特徴とする請求項6に記載のPONシステムの通信方法。
【請求項8】
前記増幅手順において、光遮断器で光を遮断することによって、前記ASE光を遮断することを特徴とする請求項6に記載のPONシステムの通信方法。
【請求項9】
前記増幅手順において、励起光の供給量を減少させることによって、前記ASE光を減衰させることを特徴とする請求項6に記載のPONシステムの通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−15866(P2012−15866A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151484(P2010−151484)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/広域加入者系光ネットワーク技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】