説明

双方向昇降圧コンバータ

【課題】従来よりもリアクトルを小型化することが可能であり、かつ生産経費の上昇を抑制することが出来る双方向昇降圧コンバータを提供することを目的とする。
【解決手段】双方向昇降圧コンバータにおいて、昇圧チョッパ回路は、昇圧用リアクトルの他方の端子に並列接続された複数の昇圧用スイッチング素子を有し、降圧チョッパ回路は、降圧用リアクトルの他方の端子に並列接続された複数の降圧用スイッチング素子を有し、制御部は、第1入出力端子から入力された直流電圧を昇圧する場合に、ONタイミングが重ならないように昇圧チョッパ回路の複数の昇圧用スイッチング素子にスイッチングさせ、第2入出力端子から入力された直流電圧を降圧する場合に、ONタイミングが重ならないように降圧チョッパ回路の複数の降圧用スイッチング素子にスイッチングさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向昇降圧コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ/発電機がモータとして稼動する時には、バッテリの電圧よりも高い電圧をモータ/発電機へ出力する必要があり、かつモータ/発電機が発電機として稼動する時には、モータ/発電機が出力する電力を降圧してバッテリに充電する必要ある場合に、一般的に、双方向昇降圧コンバータ(DC/DCコンバータ)にバッテリからモータ/発電機へ出力する電力を昇圧させ、またモータ/発電機からバッテリに出力へする電力を降圧することによって、モータ/発電機の稼動に必要な電圧及びバッテリに充電可能な電圧を手に入れる。このような双方向昇降圧コンバータとして、回路構成が比較的単純であるチョッパ方式の双方向昇降圧チョッパ回路が広く用いられている。この双方向昇降圧チョッパ回路は、バイポーラトランジスタあるいはFET(Field Effect Transistor)等のスイッチング素子のON/OFFを繰り返すことによってリアクトルに流れる電流を変化させ、リアクトルに流れる電流の変化によって生じる誘導起電力を利用して、電圧を昇降圧させるものである。
【0003】
しかしながら、上記双方向昇降圧チョッパ回路では、リアクトルに流れる電流がゼロになる期間のない「電流連続モード」で動作しなければならない為に、大きなエネルギーを蓄えることが出来るリアクトル、すなわち規模の大きなリアクトルを搭載しなければならない。そして、双方向昇降圧チョッパ回路では、大きなリアクトルの搭載に伴って、自身の体積を大きくしなければならない。その為、このような問題を解決する発明として、下記特許文献1には、スイッチング損失の低減によってスイッチング周波数を下げる必要がない為に、リアクトルの小型化が可能である双方向コンバータが開示されている。この双方向コンバータは、昇圧用リアクトル、昇圧用スイッチング素子及びワイドギャップ半導体ユニポーラデバイスから成る昇圧用ダイオードから構成された昇圧チョッパ回路と、降圧用リアクトル、降圧用スイッチング素子及びワイドギャップ半導体ユニポーラデバイスから成る降圧用ダイオードから構成された降圧チョッパ回路とを、備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−006061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来技術における双方向昇降圧チョッパ回路には、上述したように、リアクトルの体積を大きくしなければならないという問題が存在していた。
また、上記従来技術における上記特許文献1では、双方向昇降圧チョッパ回路の昇圧用及び降圧用ダイオードとして、SiCまたはGaN等のユニポーラ型ダイオードを採用している。しかしながら、SiCまたはGaN等のユニポーラ型ダイオードは値段が高い為に、上記特許文献1を適用した双方向昇降圧チョッパ回路は、生産経費が上昇してしまうという課題を抱えてしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、従来よりもリアクトルを小型化することが可能であり、かつ生産経費の上昇を抑制することが出来る双方向昇降圧コンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、双方向昇降圧コンバータに係る第1の解決手段として、第1入出力端子に一方の端子が接続された昇圧用リアクトルを有し、第1入出力端子から入力された直流電圧を前記昇圧用リアクトルによって昇圧し、昇圧した直流電圧を第2入出力端子から出力する昇圧チョッパ回路と、第1入出力端子に一方の端子が接続された降圧用リアクトルを有し、第2入出力端子から入力された直流電圧を前記降圧用リアクトルによって降圧し、降圧した直流電圧を第1入出力端子から出力する降圧チョッパ回路と、前記昇圧チョッパ回路及び前記降圧チョッパ回路を制御する制御部とを、具備する双方向昇降圧コンバータであって、前記昇圧チョッパ回路は、前記昇圧用リアクトルの他方の端子に並列接続された複数の昇圧用スイッチング素子を有し、前記降圧チョッパ回路は、前記降圧用リアクトルの他方の端子に並列接続された複数の降圧用スイッチング素子を有し、前記制御部は、前記第1入出力端子から入力された直流電圧を昇圧する場合に、ONタイミングが重ならないように前記昇圧チョッパ回路の複数の前記昇圧用スイッチング素子にスイッチングさせ、前記第2入出力端子から入力された直流電圧を降圧する場合に、ONタイミングが重ならないように前記降圧チョッパ回路の複数の前記降圧用スイッチング素子にスイッチングさせるという手段を採用する。
【0008】
本発明では、双方向昇降圧コンバータに係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御部は、前記第1入出力端子から入力された直流電圧を昇圧する場合に、複数の前記昇圧用スイッチング素子に等時間間隔でスイッチングさせるという手段を採用する。
【0009】
本発明では、双方向昇降圧コンバータに係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記制御部は、前記第2入出力端子から入力された直流電圧を降圧する場合に、複数の前記降圧用スイッチング素子に等時間間隔でスイッチングさせるという手段を採用する。
【0010】
本発明では、双方向昇降圧コンバータに係る第4の解決手段として、上記第1〜第3いずれかの解決手段において、昇降圧用リアクトルを具備し、前記昇降圧用リアクトルを、昇圧時には前記昇圧用リアクトルとして使用し、降圧時には前記降圧用リアクトルとして使用するという手段を採用する。
【0011】
本発明では、双方向昇降圧コンバータに係る第5の解決手段として、上記第1〜第4いずれかの解決手段において、前記制御部は、前記第1入出力端子から入力された直流電圧を昇圧する場合に、複数の前記昇圧用スイッチング素子のONデューティを変化させることによって、昇圧率を変化させるという手段を採用する。
【0012】
本発明では、双方向昇降圧コンバータに係る第6の解決手段として、上記第1〜第5いずれかの解決手段において、制御部を具備し、前記制御部は、前記第2入出力端子から入力された直流電圧を降圧する場合に、複数の前記降圧用スイッチング素子のONデューティを変化させることによって、降圧率を変化させるという手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、双方向昇降圧コンバータにおいて、昇圧チョッパ回路は、昇圧用リアクトルの他方の端子に並列接続された複数の昇圧用スイッチング素子を有し、降圧チョッパ回路は、降圧用リアクトルの他方の端子に並列接続された複数の降圧用スイッチング素子を有し、制御部は、第1入出力端子から入力された直流電圧を昇圧する場合に、ONタイミングが重ならないように昇圧チョッパ回路の複数の昇圧用スイッチング素子にスイッチングさせ、第2入出力端子から入力された直流電圧を降圧する場合に、ONタイミングが重ならないように降圧チョッパ回路の複数の降圧用スイッチング素子にスイッチングさせる。
【0014】
このように、双方向昇降圧コンバータでは、複数の昇圧用スイッチング素子及び複数の降圧用スイッチング素子を具備することによって、短い周期でのスイッチングを実行するが出来る為、一度にリアクトルに蓄えるエネルギーを小さくすることが出来る。そして、双方向昇降圧コンバータAでは、これによって、リアクトルを小型化することが可能になる。
【0015】
また、双方向昇降圧コンバータでは、複数の昇圧用スイッチング素子及び降圧用スイッチング素子を具備することによって、単位時間あたりのスイッチングの回数を多くすることが出来る為に、出力する直流電圧のリップルを小さくすることが出来る。さらに、双方向昇降圧コンバータでは、SiCまたはGaN等の高価なユニポーラ型ダイオードを搭載しなくても、単位時間あたりのスイッチングの回数を多くすることが出来る為に、生産経費の上昇を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る双方向昇降圧コンバータAの構成を示す回路図である。
【図2】従来の双方向昇降圧コンバータの1つである双方向昇降圧チョッパ回路の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る双方向昇降圧コンバータAと、従来の双方向昇降圧チョッパ回路との昇圧時のスイッチング周期を示す波形図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る双方向昇昇降圧コンバータAと、従来の双方向昇降圧チョッパ回路との出力する昇圧した直流電圧の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、入力電圧を昇圧または降圧する双方向昇降圧コンバータに関する。
まず、本実施形態に係る双方向昇降圧コンバータAの回路構成について、図1を参照して、説明する。図1は、本実施形態に係る双方向昇降圧コンバータAの構成を示す回路図である。
双方向昇降圧コンバータAは、バッテリBから入力される直流電圧を昇圧して負荷であるインバータCへ出力し、またインバータCから入力される直流電圧を降圧してバッテリBへ出力するものであり、第1入出力端子1a,1b、昇降圧用リアクトル2、昇圧用MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)3a〜3c、降圧用MOSFET4a〜4c、コンデンサ5、第2入出力端子6a,6b及び制御部7を備えている。
【0018】
第1入出力端子1a,1bは、バッテリBから入力される直流電圧を双方向昇降圧コンバータAへ入力し、また双方向昇降圧コンバータAによって降圧された直流電圧をバッテリBへ出力するための一対の接続端子である。一方の第1入出力端子1aはバッテリBの正極端に接続され、他方の第1入出力端子1bはバッテリBの負極端に接続されている。
昇降圧用リアクトル2は、一端が一方の第1入出力端子1aに接続され、他端が昇圧用MOSFET3a〜3cのドレイン端子と、降圧用MOSFET4a〜4cのソース端子とへ接続されている。
【0019】
昇圧用MOSFET3a〜3cは、昇降圧用リアクトル2の他端に並列接続されている。また、降圧用MOSFET4a〜4cも、昇圧用MOSFET3a〜3cと同様に、昇降圧用リアクトル2の他端に並列接続されている。そして、この6個の昇圧用MOSFET3a〜3c及び降圧用MOSFET34a〜4cは、図1に示すように、第1〜第3のスイッチングアームを構成している。すなわち、6個の昇圧用MOSFET3a〜3c及び降圧用MOSFET4a〜4cのうち、昇圧用MOSFET3aと降圧用MOSFET4aとは第1のスイッチングアームを、昇圧用MOSFET3bと降圧用MOSFET4bとは第3のスイッチングアームを、また昇圧用MOSFET3cと降圧用MOSFET4cとは第3のスイッチングアームをそれぞれ構成している。
【0020】
第1のスイッチングアームを構成する昇圧用MOSFET3aは、ドレイン端子が上記昇降圧用リアクトル2の他端及び降圧用MOSFET4aのソース端子に、ソース端子が上記一方の第1入出力端子1bに、ゲート端子が制御部7にそれぞれ接続されている。そして、降圧用MOSFET4aは、ドレイン端子が第2入出力端子6aに接続され、ソース端子が上記昇降圧用リアクトル2の他端及び上述したように昇圧用MOSFET3aのドレイン端子に、ゲート端子が制御部7にそれぞれ接続されている。
【0021】
第2のスイッチングアームを構成する昇圧用MOSFET3bは、ドレイン端子が上記昇降圧用リアクトル2の他端及び降圧用MOSFET4bのソース端子に、ソース端子が上記一方の第1入出力端子1bに、ゲート端子が制御部7にそれぞれ接続されている。そして、降圧用MOSFET4bは、ドレイン端子が第2入出力端子6aに接続され、ソース端子が上記昇降圧用リアクトル2の他端及び上述したように昇圧用MOSFET3bのドレイン端子に、ゲート端子が制御部7にそれぞれ接続されている。
【0022】
第3のスイッチングアームを構成する昇圧用MOSFET3cは、ドレイン端子が上記昇降圧用リアクトル2の他端及び降圧用MOSFET4cのソース端子に、ソース端子が上記一方の第1入出力端子1bに、ゲート端子が制御部7にそれぞれ接続されている。そして、降圧用MOSFET4cは、ドレイン端子が第2入出力端子6aに接続され、ソース端子が上記昇降圧用リアクトル2の他端及び上述したように昇圧用MOSFET3cのドレイン端子に、ゲート端子が制御部7にそれぞれ接続されている。
そして、昇圧用MOSFET3a〜3c及び降圧用MOSFET4a〜4cの各ゲート端子には、制御部7から制御信号が入力される。そして、昇圧用MOSFET3a〜3c及び降圧用MOSFET4a〜4cは、制御信号に基づいてON/OFFを行う。
【0023】
コンデンサ5は、インバータCへ出力する直流電圧のリップルの低減、すなわち平滑化することを目的として設けられたものであり、一端が、各降圧用MOSFET4a〜4cのドレイン端子及び上記一方の第2入出力端子6aに接続され、他端が、各昇圧用MOSFET3a〜3cのソース端子、他方の第1入出力端子1b及び他方の第2入出力端子6bに接続されている。
【0024】
第2入出力端子6a,6bは、双方向昇降圧コンバータAが昇圧した直流電圧をインバータCへ出力し、またインバータCから入力される直流電圧を双方向昇降圧コンバータAへ入力するための一対の接続端子であり、一方の第2入出力端子6aはインバータCの一端に接続され、他方の第2入出力端子6bは上記インバータCの他端に接続されている。
制御部7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び昇圧用MOSFET3a〜3c並びに降圧用MOSFET4a〜4cと信号の入出力を行うインタフェース回路等から構成されており、上記ROMに記憶された制御プログラムに基づいて、昇圧用MOSFET3a〜3c及び降圧用MOSFET4a〜4cを制御する。
【0025】
次に、このように構成された双方向昇降圧コンバータAの動作について、詳しく説明する。
まず、双方向昇降圧コンバータAにおける昇圧動作について説明する。なお、この場合には、第1入出力端子1a,1bが入力側になり、第2入出力端子6a,6bが出力側になる。
【0026】
制御部7は、バッテリBから入力される直流電圧を昇圧する場合に、全ての降圧用MOSFET4a〜4cをOFFにし、かつ昇圧用MOSFET3a〜3cを、順番に120度ずつ位相をずらしてON/OFFを繰り返すことによって、バッテリBから入力される直流電圧を昇圧する。そして、制御部7は、この際、各昇圧用MOSFET3a〜3cのONのタイミングは、重ならないようにする。
【0027】
図2は、従来の双方向昇降圧コンバータの1つである双方向昇降圧チョッパ回路の構成を示す回路図であり、図3は、本実施形態に係る双方向昇降圧コンバータAと、従来の双方向昇降圧チョッパ回路との昇圧時のスイッチング周期を示す波形図であり、図4は、本実施形態に係る双方向昇降圧コンバータAと、従来の双方向昇降圧チョッパ回路との出力する昇圧した直流電圧の波形図である。
【0028】
図3の(a)は、双方向昇降圧コンバータAの昇圧時の昇圧用MOSFET3a〜3bのそれぞれのスイッチング周期を示す波形図であり、図3の(b)は、図2に示す双方向昇降圧チョッパ回路の昇圧時の昇圧用MOSFETのスイッチング周期を示す波形図である。なお、図3の(a)では、実線の矩形が昇圧用MOSFET3aがONであることを示し、破線の矩形が昇圧用MOSFET3bがONであることを示し、一点鎖線の矩形が昇圧用MOSFET3cがONであることを示している。そして、図3の(a),(b)では、縦軸が電圧を示し、横軸が時間を示す。
【0029】
また、図4の(a)は、双方向昇降圧コンバータAの出力する昇圧した直流電圧を示す波形図であり、図4の(b)は、図2に示す双方向昇降圧チョッパ回路の出力する昇圧した直流電圧を示す波形図である。そして、図4の(a),(b)では、縦軸が、電圧を示し、横軸が時間を示す。
【0030】
本実施形態に係る双方向昇降圧コンバータAは、昇圧時に、図3の(a)に示すように、図3の(b)と比較して、単位時間内に、短い周期でスイッチングを行う。このように、双方向昇降圧コンバータAは、短い周期でのスイッチングを実行することによって、一度に昇降圧用リアクトル2に蓄えるエネルギーを小さくすることが出来る為に、昇降圧用リアクトル2を小型化することが可能である。また、双方向昇降圧コンバータAは、スイッチング周期が短い為に、図4の(a)示すように、図4の(b)と比較して、出力する昇圧した直流電圧のリップルが小さくなる。
【0031】
また、双方向昇降圧コンバータAでは、制御部7が、昇圧時に、図3の(a)に示す昇圧用MOSFET3a〜3bのスイッチングのONデューティを高くすることによって、昇圧率を上昇することが出来、またONデューティを低くすることによって、昇圧率を低くすることが出来る。
【0032】
次に、双方向昇降圧コンバータAにおける降圧動作について説明する。なお、この場合には、第2入出力端子6a,6bが入力側になり、第1入出力端子1a,1bが出力側になる。
制御部7は、インバータCから入力される直流電圧を降圧する場合に、全ての昇圧用MOSFET3a〜3cをOFFにし、かつ降圧用MOSFET4a〜4cを、順番に120度ずつ位相をずらしてON/OFFを繰り返すことによって、インバータCから入力される直流電圧を降圧する。そして、制御部7は、この際、各降圧用MOSFET4a〜4cのONのタイミングは、重ならないようにする。
【0033】
また、双方向昇降圧コンバータAでは、制御部7が、降圧時に、降圧用MOSFET4a〜4bのスイッチングのONデューティを低くすることによって、降圧率を上昇することが出来、またONデューティを高くすることによって、降圧率を低くすることが出来る。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る双方向昇降圧コンバータAでは、バッテリBから入力される直流電圧を昇圧する場合に、昇圧用MOSFET3a〜3cが、順番にON/OFFを繰り返すことによって、短い周期でのスイッチングによる昇圧が可能になる。また、双方向昇降圧コンバータAでは、インバータCから入力される直流電圧を降圧する場合に、降圧用MOSFET4a〜4cが、順番にON/OFFを繰り返すことによって、短い周期でのスイッチングによる降圧が可能になる。
【0035】
このように、双方向昇降圧コンバータAでは、昇圧用MOSFET3a〜3c及び降圧用MOSFET4a〜4cを具備することによって、短い周期でのスイッチングを実行するが出来る為、一度に昇降圧用リアクトル2に蓄えるエネルギーを小さくすることが出来る。そして、双方向昇降圧コンバータAでは、これによって、昇降圧用リアクトル2を小型化することが可能になる。また、双方向昇降圧コンバータAでは、複数の昇圧用MOSFET及び降圧用MOSFETを具備することによって、単位時間あたりのスイッチングの回数を多くすることが出来る為に、出力する直流電圧のリップルを小さくすることが出来る。さらに、双方向昇降圧コンバータAでは、SiCまたはGaN等の高価なユニポーラ型ダイオードを搭載しなくても、単位時間あたりのスイッチングの回数を多くすることが出来る為に、生産経費の上昇を抑制することが出来る。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態は、3個の昇圧用MOSFET3a〜3cを並列接続し、さらに3個の降圧用MOSFET4a〜4cを並列接続しているが、本発明はこれに限定されない。
【0037】
例えば、双方向昇降圧コンバータAが、2個の昇圧用MOSFETと、2個の降圧用MOSFETとを備えるようにしてもよいし、また昇圧用MOSFET及び降圧用MOSFETとをそれぞれ4個以上備えるようにしてもよい。このような場合に、昇圧用MOSFET及び降圧用MOSFETのスイッチングのタイミングは、それぞれ「360/昇圧用MOSFET(降圧用MOSFET)の数」度ずらす。
【0038】
また、昇圧用MOSFET及び降圧用MOSFETの数がn個になると、双方向昇降圧コンバータAが出力する直流電圧のリップルは、昇圧用MOSFET及び降圧用MOSFETが1個の場合と比較して、「1/n」になる。すなわち、昇圧用MOSFET及び降圧用MOSFETの数が増えるほど、出力する直流電圧のリップルを低減することが出来る。
さらに、スイッチング素子として、MOSFETの代わりに、一般的な、バイポーラ型を使用することが出来る。そして、昇圧用スイッチング素子及び降圧用スイッチング素子の数が、2個または3個である場合には、市販されているフルブリッジ回路を使用することが出来る為、生産経費を抑制することが出来る。
【0039】
(2)上記実施形態では、制御部7が、昇圧率を変化させる為に昇圧用MOSFET3a〜3cのONデューティを変化させているが、昇圧した電圧の出力先であるインバータCによって生じるリップルと同期するリップルを発生させないように昇圧用MOSFET3a〜3cを制御することによって、インバータCにおける動作を安定化することが出来る。
【符号の説明】
【0040】
A…双方向昇降圧コンバータ、1a,1b…第1入出力端子、2…昇降圧用リアクトル、3a〜3c…昇圧用MOSFET、4a〜4c…降圧用MOSFET、5…コンデンサ、6a,6b…第2入出力端子、7…制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入出力端子に一方の端子が接続された昇圧用リアクトルを有し、第1入出力端子から入力された直流電圧を前記昇圧用リアクトルによって昇圧し、昇圧した直流電圧を第2入出力端子から出力する昇圧チョッパ回路と、
第1入出力端子に一方の端子が接続された降圧用リアクトルを有し、第2入出力端子から入力された直流電圧を前記降圧用リアクトルによって降圧し、降圧した直流電圧を第1入出力端子から出力する降圧チョッパ回路と、
前記昇圧チョッパ回路及び前記降圧チョッパ回路を制御する制御部とを、具備する双方向昇降圧コンバータであって、
前記昇圧チョッパ回路は、前記昇圧用リアクトルの他方の端子に並列接続された複数の昇圧用スイッチング素子を有し、
前記降圧チョッパ回路は、前記降圧用リアクトルの他方の端子に並列接続された複数の降圧用スイッチング素子を有し、
前記制御部は、前記第1入出力端子から入力された直流電圧を昇圧する場合に、ONタイミングが重ならないように前記昇圧チョッパ回路の複数の前記昇圧用スイッチング素子にスイッチングさせ、前記第2入出力端子から入力された直流電圧を降圧する場合に、ONタイミングが重ならないように前記降圧チョッパ回路の複数の前記降圧用スイッチング素子にスイッチングさせることを特徴とする双方向昇降圧コンバータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1入出力端子から入力された直流電圧を昇圧する場合に、複数の前記昇圧用スイッチング素子に等時間間隔でスイッチングさせることを特徴とする請求項1に記載の双方向昇降圧コンバータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2入出力端子から入力された直流電圧を降圧する場合に、複数の前記降圧用スイッチング素子に等時間間隔でスイッチングさせることを特徴とする請求項1または2に記載の双方向昇降圧コンバータ。
【請求項4】
昇降圧用リアクトルを具備し、
前記昇降圧用リアクトルを、昇圧時には前記昇圧用リアクトルとして使用し、降圧時には前記降圧用リアクトルとして使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の双方向昇降圧コンバータ。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1入出力端子から入力された直流電圧を昇圧する場合に、複数の前記昇圧用スイッチング素子のONデューティを変化させることによって、昇圧率を変化させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の双方向昇降圧コンバータ。
【請求項6】
制御部を具備し、
前記制御部は、前記第2入出力端子から入力された直流電圧を降圧する場合に、複数の前記降圧用スイッチング素子のONデューティを変化させることによって、降圧率を変化させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の双方向昇降圧コンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−220309(P2010−220309A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61566(P2009−61566)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】