説明

双方向通信システム

【課題】パラレルケーブルを介し、コンパチブルモードとニブルモードとによって、ホスト装置とデバイス装置との間で双方向通信を行う双方向通信システムにおいて、ユーザが必要とする場合にのみ、プリンタ等のデバイス装置からホスト装置へ状態を通知する双方向通信システムを提供する。
【解決手段】ホスト装置2は、デバイス装置1に対する状態確認要求の許可/禁止の設定を行う設定手段2bを備え、設定手段2bによって、状態確認要求が許可に設定されているときには、ホスト装置2は、制御通信モードのときに、予め設定しているタイミングで、状態確認要求をデバイス装置1へ送信した後に、応答通信モードに切り換え、この応答通信モードでは、デバイス装置1は、状態確認要求に応答して、ステータ情報をパラレルデータとしてデータ信号線dを通じて返信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラレルケーブルを介して接続された、パソコンなどのホスト装置と、周辺機器であるデバイス装置との間で双方向通信を行う双方向通信システムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の周辺機器、特にパラレル双方向通信インターフェースを有したプリンタでは、プリンタの状態(エラー、紙切れ、オンラインなど)をパソコン等のホスト装置に通知するために、IEEE1284規格などで規定された所定の通信プロトコル手順で行うことが一般的であった。
図7は、IEEE1284規格のパラレルポート端子に割り付けられた信号テーブルの詳細を示した図であり、以下、IEEE1284で定義された信号を簡単に説明する。
【0003】
まず、制御信号線の信号を説明すると、信号「nStrobe」、「nAutoLF」は、ホスト装置からデバイス装置へのデータ送信で、ハンドシェークのために使われる信号であり、信号「nAck」は、デバイス装置からホスト装置へのデータ送信で、ハンドシェークのために使われる信号である。
【0004】
また、信号「nError」は、コンパチブルモードでは、デバイス装置からホスト装置にエラーを送信する信号で、ニブルモードなどでは、デバイス装置にホスト装置へ送信すべきデータが存在していることを示す。
【0005】
信号「1284Active」は、モード変更に使われる信号で、この信号がローレベルになると、デバイス装置は、ニブルモード、バイトモード、EPPモード、ECPモードからコンパチブルモードへ復帰する。信号「Select」は、デバイス装置が要求されたモードに対応しているか否かを示すために使われる信号である。
【0006】
さらに、信号「Busy」は、デバイス装置からホスト装置へビジー状態を伝えるために使われる信号であり、信号「nInit」は、ホスト装置がデバイス装置に初期化を要求するリセット信号である。
【0007】
また、信号「データビット0」〜「データビット7」は、8ビット幅のパラレルデータを伝送するデータ信号で、コンパチブルモードでは、このデータ信号によるホスト装置からデバイス装置への一方向の伝送が規定され、バイトモードでは、このデータ信号によるデバイス装置からホスト装置への一方向の伝送が規定されている。
なお、ニブルモードでは、信号「データビット0」〜「データビット7」は使用されず、デバイス装置からホスト装置への一方向のデータ伝送がなされるために、制御信号線の信号「nDataAvail」、「XFlag」、「AckDataReq」、「PtrBusy」によって、8ビット幅のデータを4ビット幅のニブルデータに分割して伝送するマルチプレクス方式が規定されている。
【0008】
次の特許文献1には、IEEE1284規格によるコンパチブルモードとニブルモードを切り換えながらデータ通信を行うプリンタシステム技術が記載されている。
【特許文献1】特開平9−121289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記した従来システムでは、ホスト装置の機種や、そこで使用されるオペレーションシステムの種類によっては、ホスト装置が、デバイス装置から制御信号線を通じて返信されてきたステータス信号を読み取れず、デバイス装置の状態を知ることができない場合があった。
【0010】
つまり、ホスト装置のパソコンと、デバイス装置のプリンタとをパラレルケーブルで接続したシステムでは、装置の構成、オペレーションシステムによる環境に依存し、特定の環境では、ホスト装置が、上述した信号「nError」など、デバイス装置のステータスを示す信号を読み取れないといった問題があった。このような問題は、特に、パラレルケーブルによる通信で、コンパチブルモードとニブルモードしか利用できない環境では、重大な問題であった。
【0011】
本発明は、このような事情を考慮し、ホスト装置でデバイス装置が出力したステータスを示す信号を識別することが困難な場合であっても、デバイス装置のステータスを確実に知ることができる双方向通信システムを提供するものである。
【0012】
しかしながら、ホスト装置が状態確認要求コマンドを送信し、これに応じて、デバイス装置がステータスを示す信号を返信する場合、その通信には400mSもの時間を要することになり、その時間は、デバイス装置のステータスの表示を必要としないユーザにとって、無駄な時間である。
【0013】
したがって、本発明の目的とするところは、ホスト装置が、デバイス装置の出力したステータスを示す信号を読み取れない場合であっても、デバイス装置のステータスを確実に知ることができ、しかも、ユーザが必要とする場合にのみ、プリンタ等のデバイス装置に対して、状態確認要求コマンドを送信するようにした双方向通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明の請求項1では、ホスト装置とデバイス装置とを、制御信号線とデータ信号線とで構成されたパラレルケーブルで接続され、上記ホスト装置は、通信方式を少なくとも、制御通信モードと、応答通信モードとに切り換えて、制御通信モードでは、デバイス装置側へ状態確認要求、パラレルデータを送信する一方、応答通信モードでは、デバイス装置側からステータス情報を受信するようにして、双方向の通信を行うシステムにおいて、次の特徴を有している。
すなわち、ホスト装置は、デバイス装置に対する状態確認要求の許可/禁止の設定を行う設定手段を備え、設定手段によって、状態確認要求が許可に設定されているときには、ホスト装置は、制御通信モードのときに、予め設定しているタイミングで、状態確認要求を上記デバイス装置へ送信した後に、応答通信モードに切り換え、この応答通信モードでは、デバイス装置は、状態確認要求に応答して、ステータ情報をパラレルデータとしてデータ信号線を通じて返信することを特徴とする。
【0015】
請求項2では、ホスト装置は、ステータス情報を受けたときには受信したステータス情報を報知するステータス報知手段をさらに備えている。
そして、請求項3では、デバイス装置は、プリンタであって、所定のタイミングは、ホスト装置が、デバイス装置に印字データを送信する直前に設定されている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜3によれば、ホスト装置は、デバイス装置の異常などをユーザに報知するので、それによって、ユーザは、デバイス装置のステータスを知ることができる。すなわち、デバイス装置であるプリンタのインク切れなどを、ホスト装置であるパーソナルコンピュータのモニタ画面から知ることができ、利便である。特に、状態確認要求の許可/禁止の設定ができるようにしているので、デバイス装置のステータスを知る必要がないユーザにとっては、ステータス返信の通信による時間、負荷を節約することができる。
【0017】
請求項2によれば、デバイス装置のステータスを表示する報知手段を備えているため、状態確認要求を許可に設定していれば、デバイス装置の詳細な情報を確実に把握することができる。
【0018】
請求項3によれば、ホスト装置が、プリンタに印字データを送信する直前に、プリンタのステータスが報知されるので、プリンタに用紙切れ、インク切れなどの異常があるときには、印字を中止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の双方向通信システムの実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。以下の実施例には、プリンタシステムを例示しているが、これには限定されない。また、以下の実施例では、IEEE規格によるコンパチブルモードとニブルモードとによるパラレル双方向通信を行うものを記載している。したがって、コンパチブルモードをホスト装置がデバイス装置側へ状態確認要求を行う制御通信モードとして、ニブルモードをデバイス装置側からステータス情報を返信する応答通信モードとして規定している。
【実施例1】
【0020】
図1は、実施例のプリンタシステム10の要部構成示すブロック図である。図1中、1はプリンタ、2はパソコン等のホスト装置であり、両者はパラレルケーブルLで接続されている。パラレルケーブルLは、少なくとも、制御信号線l1〜ln、データ信号線dを備え、パーソナルコンピュータ1とプリンタ2との間では、このパラレルケーブルLを通じて、IEEE規格に準拠したコンパチブルモードとニブルモードとによるパラレル双方向通信が行われる。
【0021】
プリンタ1は、印字制御部1aと、通信制御部1bと、通信ポート1cを少なくとも備えている。また、ホスト装置2は、信号処理部2aと、設定手段2bと、報知手段2cと、通信制御部2dと、通信ポート2eとを少なくとも備えている。ここで、報知手段2cは、たとえば液晶表示装置でもよく、その場合には、プリンタ1の受信可否状態、紙切れ状態、その他エラー状態などの各種状態を認識し、液晶表示装置のステータス表示画面にプリンタのステータスをグラフィカルに表示して報知する構成となっている。なお、音声による報知等も可能である。プリンタのステータスを表示する報知手段としては、表示ランプなどでもよい。
【0022】
ホスト装置2は、コンパチブルモードのときに、プリンタ1へステータス要求コマンドを送出し、その後ネゴシエーションによりニブルモードに切り換える。一方、プリンタ1は、そのステータス要求コマンドを検知して、ホスト装置2にステータスデータを返送する。
【0023】
この返信では、信号線として、制御信号線l1〜lnの信号「nDataAvail」、「XFlag」、「AckDataReq」、「PtrBusy」を用いた、4ビット幅のニブルデータによるマルチプレクス方式が使用される。つまり、コンパチブルモードからいったんニブルモードに切り換えて、ステータスデータを返送する動作構成となっている。
【0024】
図2は、そのステータスコードの一例である。ステータスコードSCは、例えば1バイトデータで定義されたもので、コンパチブルモードで定義されたステータスを示す信号の内容以外にも、インク切れなどのステータス、更にプリンタ1側で手動によって設定された独自なステータスなどを含めてもよい。
【0025】
そして本発明では、ホスト装置2からのステータス要求コマンドの送信許可/禁止を設定手段2bで設定できる点を特徴としている。この設定手段2bは、例えばホスト装置2にインストールされたプリンタドライバの設定画面等で構成され、ユーザがこの設定画面を操作して、許可/禁止を選択できる。更に、この許可/禁止の設定に、ステータス表示画面の表示設定を連動させ、表示/非表示が自動的に切り替わるようにしてもよい。
【0026】
図3は、プリンタドライバの設定画面の一例を示し、図4は、ステータス表示画面の一例を示している。このプリンタドライバの設定画面では、状態確認要求を許可/禁止でき、ステータス表示画面では、黒インク、カラーインクのインク切れ、紙切れなどのステータスが表示される。
【0027】
図5は、ホスト装置2の印刷開始時の動作フローチャートである。このフローチャートに従って説明すると、ホスト装置2は、ユーザにより印刷開始指令を受け付けたときには、図3に示したプリンタドライバ設定画面による設定にしたがい、状態確認要求コマンドの送信が禁止となっている場合は、そのまま印刷データを送出する一方(101、102)、状態確認要求コマンドの送信が許可となっている場合は、データ信号線dに、状態確認要求コマンドを送出してから、プリンタ1とのネゴシエーションによりいったんニブルモードへ切り換える。
【0028】
そして、プリンタ1から、ニブルモードによって、ステータスコードSCが返信されてくると、それを受け付け、そのステータスコードSCに基づいて、図4に示すステータス表示画面が表示されている場合はその画面を更新し、更に、コンパチブルモードに戻してから、印刷データを送出する(104〜106)動作を実行する。すなわち、このフローチャートでは、ホスト装置2は、印刷データをプリンタ1に送出する直前に、プリンタ1のステータスを確認している。
【0029】
なお、プリンタ1から返信されてきたステータスコードSCから、プリンタ1のエラーが判別されたときには、印刷データの送出を中止して、ステータス表示画面に対処を促すメッセージを表示してもよい。
【0030】
図6は、プリンタ1の動作を示すフローチャートであり、このフローチャートに従って、プリンタ1の動作を以下に説明する。プリンタ1は、ホスト装置2から状態確認要求コマンドを受信したときには、いったんニブルモードに切り換えたのち、ステータスデータを返信し、コンパチブルモードに戻し(201〜204)、その後、印刷データを受信して印刷を開始するが、ホスト装置2から状態確認要求コマンドを受信せずに、印字データを受信したときには、直ちに印刷を開始する(205、206)。このプリンタ1は、デバイス装置からホスト装置にエラーを送信する信号である信号「nError」等によっても、ステータスを出力しているが、これは、従来と同様である。
【0031】
なお、上記の実施例では、印刷開始のタイミングで状態確認要求を行うようにしているが、更に印刷中に一定間隔で要求してもよいし、そのほか、ユーザ指定のタイミングで要求する構成も可能である。また、プリンタドライバの設定画面では、印刷開始時の要求のみ許可し、一定間隔ごとの要求を禁止できるようにしてもよい。
【0032】
以上のように本発明では、ホスト装置2でステータス要求コマンドの送出を禁止する設定が可能となっているため、プリンタのステータスの報知を必要としないユーザは、その設定により、通信時間のロスを低減することができる。
【0033】
また、状態確認要求コマンドの送信を許可する時間帯を付加設定できるようにすれば、人がいる昼間はプリンタのステータスを常時確認できるようにし、しかも夜間は、状態確認要求コマンドの送信を止めておくようにできて、利便である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による双方向通信システムの要部構成を示すブロック図である。
【図2】ステータスコードの一例を示すテーブルである。
【図3】状態確認要求コマンドの送信許可/禁止を設定する画面の一例である。
【図4】ステータス表示画面の一例である。
【図5】ホスト装置の印刷開始時の動作フローチャートである。
【図6】プリンタの基本動作を示すフローチャートである。
【図7】IEEE1284で規定されたパラレルケーブルの信号線テーブルである。
【符号の説明】
【0035】
10 プリンタシステム
1 プリンタ
1b 通信制御部
1c 通信ポート
2 ホスト装置
2a 信号処理部
2b 設定手段
2c 報知手段
2d 通信制御部
2e 通信ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置とデバイス装置とを、制御信号線とデータ信号線とで構成されたパラレルケーブルで接続され、上記ホスト装置は、通信方式を少なくとも、制御通信モードと、応答通信モードとに切り換えて、制御通信モードでは、デバイス装置側へ状態確認要求、パラレルデータを送信する一方、応答通信モードでは、デバイス装置側からステータス情報を受信するようにして、双方向の通信を行うシステムにおいて、
上記ホスト装置は、
上記デバイス装置に対する状態確認要求の許可/禁止の設定を行う設定手段を備え、
上記設定手段によって、状態確認要求が許可に設定されているときには、
上記ホスト装置は、制御通信モードのときに、予め設定しているタイミングで、状態確認要求を上記デバイス装置へ送信した後に、応答通信モードに切り換え、
この応答通信モードでは、上記デバイス装置は、上記状態確認要求に応答して、ステータ情報をパラレルデータとして上記データ信号線を通じて返信することを特徴とする双方向通信システム。
【請求項2】
請求項1において、
上記ホスト装置は、ステータス情報を受けたときには受信したステータス情報を報知する報知手段をさらに備えている、双方向通信システム。
【請求項3】
請求項1において、
上記デバイス装置は、プリンタであって、
上記状態確認要求を送信するタイミングは、上記ホスト装置が、上記デバイス装置に印字データを送信する直前に設定されている、双方向通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−119701(P2006−119701A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304039(P2004−304039)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】