説明

双方向CATVシステム

【課題】 CATV双方向システムを利用したIP電話サービスでは、幹線系ゲートを遮断してしまうと、電話で通話中に通話が遮断されてしまい、加入者から通話出来ないという苦情が殺到する。流合雑音の課題を解決できない。
【解決手段】 CATVシステムのセンター側にコントローラ及び送信機を設置し、個々の加入者側にゲート制御機を設置し、ゲート制御機にセンターからの信号を受信する受信機と発信機を設け、コントローラはゲート制御機アドレスとゲートスイッチの状態を管理し、ゲート制御機はセンターの送信機からアドレス指定のゲート制御情報が送出されると、その制御情報を、そのアドレスに対応したアドレスのゲート制御機が受け取り、その制御情報に応答するゲート制御機の発信機から報知信号がセンターに送られるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCATVシステムの異常検知、センターへの流合雑音の流れ込みを防止可能な双方向CATVシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のCATVシステムの幹線系統には、流合雑音が発生した場合、幹線上り系統を遮断してセンターの機器を保護するゲートスイッチ回路が組み込まれている。幹線系のゲートスイッチ回路は夫々の幹線系統ごとに遮断するので、ゲートスイッチ回路で回線を遮断すると、遮断回線エリアが非常に広範囲となる。
【0003】
現在のCATVシステムでは、その異常をセンターで自動的に検知することができないため、異常発生時には作業者が異常個所と思われる場所まで出掛けていって、センターと交信しながら異常場所、異常内容を確認し、異常を修復している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、CATV双方向システムを利用した通信サービスには、インターネットとIP電話がある。前記のように回線が遮断された場合、インターネットサービスでは、例えば、ホームページが表示されていれば、さほど加入者からの苦情にはならず、その間に復旧してしまえば顧客が気付かずに過ぎてしまうことがある。しかし、IP電話サービスでは、幹線系ゲートを遮断してしまうと、電話で通話中の顧客がいる場合、その通話が完全に遮断されてしまい、加入者から通話出来ないという苦情が殺到する。この場合、大事な通話内容であれば、回線遮断による苦情は大変大きなものになってしまう。
【0005】
流合雑音の主な原因としては、家庭内電化製品や短波ラジオ、市民無線バンド等があり、それらから発生する流合雑音はケーブル配線のシールドが完全でないところから飛び込む。CATVへの加入契約が決まると、通常は、加入契約者の家庭内配線の不完全な部分は改修工事を行って完全なものにしてから加入契約者に接続する。これは集合住宅の場合も同様である。集合住宅では、通常は、各家庭内までのケーブル配線は連続で接続されているが、加入者・未加入者が混在している。加入者の場合はその宅内に入って配線の改修工事をすることができるが、未加入者宅には通常は許可を得て入ることが難しいため、配線の改修工事ができないのが現状である。このため、未加入者宅の配線の不完全な箇所からの流合雑音の飛び込みを完全に防止することは難しく、結局は流合雑音対策に悩まされているのが実情である。
【0006】
従来は、CATV回線の異常発生時に、作業者が一々異常現場とおぼしき付近まで出掛けなればならず面倒であった。しかも、センターとの交信用発信機やスペクトルアナライザー又は波形観測用計測器等を現場まで持ち運ばなければならないため、労力が掛かり、大変である。また、異常の発見、確認に手間が掛かり、修復に時間がかかる。更に、異常発生箇所によっては、回線遮断エリアが広くなり、受信できない多くの加入者に迷惑がかかる。場合によっては加入者から苦情が殺到することがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、センターに居ながらにしてCATVシステムの異常発生とその現場を迅速に特定することができ、異常確認のために交信用の発信機やスペクトルアナライザー又は波形観測用計測器等を持ち出す必要もなく、発生した異常の種類や内容を知ることもでき、異常発生時のゲートスイッチ回路のOFFによって遮断されて通信・通話が出来なくなる回線エリアを極力狭くしてサービスの確保を確実なものにすることにある。また、視聴料金未納の加入者や契約違反加入者への下り信号の供給を停止して、それらの者がテレビを受信するこができないようにすることもでき、更には、流合雑音を遮断することもできるCATVシステムを提供することにある。
【0008】
本件出願のCATVシステムは、CATVシステムのセンター側にコントローラ及び送信機を設置し、個々の加入者側にゲート制御機を設置し、ゲート制御機にセンターからの信号を受信する受信機と発信機を設け、コントローラはゲート制御機アドレスとゲートスイッチの状態を管理し、ゲート制御機はセンターの送信機からアドレス指定のゲート制御情報が送出されると、その制御情報を、そのアドレスに対応したアドレスのゲート制御機が受け取り、その制御情報に応答するゲート制御機の発信機から報知信号がセンターに送られるようにした。この場合、ゲート制御機が発信周波数の異なる2以上の発信機を備えることができる。ゲート制御機に波形観測モジュールを搭載することもできる。個々の加入者の下り回線に下りゲートスイッチ回路を設け、センターからの指令信号をゲート制御機の受信機が受信すると、前記下りゲートスイッチ回路をOFFにして加入者への下り信号の供給を停止できるようにもした。この場合、集合住宅あるいは戸建て住宅の夫々のCATVシステム引き込み口の近くに上り回線を遮断する上りゲートスイッチ回路を設置し、流合雑音発生時にその上りゲートスイッチ回路をOFFして、流合雑音の上りを阻止できるようにもした。
【発明の効果】
【0009】
本件出願のCATVシステムは次のような効果がある。
1.集合住宅あるいは戸建て住宅のCATVシステム引き込み口の近くに、上り回線を遮断する上りゲートスイッチ回路を搭載したので、流合雑音発生時にこれを遮断すれば、流合雑音発生原因住宅以外の加入者に対してはCATVシステムのサービスを停止させることなく対応することができる。
2.現在のCATVテレビのサービスは有料であり、通信の遮断・配信停止はあってはならない事が原則であり、遮断・配信の停止があると、すぐに「金を返せ」という苦情につながることが多々あり、現在は、これに対応する人件費、返金等がかかっている。本発明ではそれら苦情、人件費、返金等を最小限に食い止めることができる。
3.通常、システムトラブルが発生した場合、保守・メンテナンスに対応する人員が異常発生現場と思われる現場に測定用発信機や波形観測モジュール等の必要機器を持って出掛けていき、システム端末から発信信号を上り帯域へ挿入し、センター側にいる人員と連絡を取り合って到達レベル等を確認している。本発明では測定用発信機や波形観測モジュールを内蔵させてあるので、センター側だけで異常の確認、判断が出来、それに掛かる人件費や時間が削減できる。
4.どのケーブルテレビ局でも抱えている問題が、月々の料金の未払者の対応である。未払い者があった場合、ケーブルテレビ局では加入者に数回、通告を行い、それでも未払いを続けている加入者には工事担当者が未払い者宅へ行き、引き込み線を取り外す工事を行っている。本発明では下り系路(各加入者の保安器の位置)に搭載した下りゲートスイッチ回路をOFFにすれば、加入者への下り信号の供給を停止できるので、何回かの通告後に、センター側で下りゲートスイッチ回路を制御して、未払い加入者宅への信号供給を停止して、それらの者はテレビ信号を受像できなくすることができる。このため、工事担当者が現場へ出向く事なく、未払い加入者への停波処理を行なうことができ、人件費の削減につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施形態1)
本発明のCATVシステムを図1〜図3に基づいて説明する。図1のCATVセンターにはコントローラを含んだ送信機(送受信機)1、それを制御するための制御用パソコン(PC)2、ヘッドエンド(HE)3が設置され、端末にゲート制御機4が設置されている。図2のように、コントローラ1はI/Oを介してPCと接続され、送信機6を通して下りRF信号が出力され、受信機7を通して上りRF信号が入力されるようにしてある。
【0011】
ゲート制御機4は図3のように個々の加入者の近く(端末)に設置されている双方向増幅器に内蔵或いは外付けされている。双方向増幅器は下り信号系路10と上り信号系路20を備え、下り信号系路10には下り信号入力調整器11、アンプ12、下り信号利得調整器(GC)13、下りゲートスイッチ回路14、アンプ15が設けられ、上り信号系路20には上り信号入力調整器21、上りゲートスイッチ回路22、アンプ23、上り信号利得調整器(GC)24、アンプ25が設けられている。ゲート制御機4は受信機41、送信周波数の異なる二つの発信器42、43、波形観測モジュール44を備えている。
【0012】
本発明のCATVシステムの動作を図1〜図3に基づいて説明する。図1の双方向増幅器及びゲート制御機4は電源安定供給機(AVR)8から必要電圧が供給されて動作する。双方向増幅器の動作は既存の双方向増幅器の動作と同じである。
図1のコントローラ及び送信機1からの制御信号が図1のヘッドエンド(HE)3の下り混合器で混合され、下り信号(TV・データ信号)と共に幹線へ送出され、加入者側に設置してある双方向増幅器に入力される。センターは流合雑音を検知して、それが多い場合は双方向増幅器の上り信号系路20の上りゲートスイッチ回路22をOFFにしてセンターへの流合雑音の流れ込みを遮断する。
【0013】
端末に設置されたゲート制御機4はセンターのコントローラ1を操作することにより制御される。コントローラ1はゲート制御機4のアドレスと上り及び下りゲートスイッチ回路14、22の状態を管理し、オペレータの指定したアドレスが割り当てられたゲート制御機4へゲート制御情報を送出する。送信されたゲート制御情報はCATVシステムに設置された全てのゲート制御機4の受信機41に送信され、そこで、ゲート制御情報のアドレスと夫々のゲート制御機4に設定されたアドレスとが比較され、双方のアドレスが一致した場合に、一致したゲート制御機4の発信機42、43が、センターのコントローラ1からの指令に基づいて発信・停止する。例えば、上り回線のシステム上のトラブルが発生した場合、センターのコントローラ1から、発信機42、43を制御して発信させ、センター側でこの周波数を確認する事によりCATVシステムのトラブルを解析することができる。例えば、一方の発信機42の発信周波数を10MHz(上り帯域の下限周波数)、他方の発信機43の発信周波数を55MHz(上り帯域の上限周波数)とし、この2周波数ともセンター側に来なければ回線が切断されていると判断し、2周波数のバランス(チルト特性)或は到達レベルに異常があれば、CATVシステムの中間に設置されている機器やケーブル・コネクタ等に異常があると判断することができる。この場合は、現場へ発信機を持参する必要が無い。
【0014】
前記発信機での異常検知と併せて、ゲート制御機4に搭載されている波形観測モジュール44に表示される波形観測をすることにより、更に細かい判断をセンターに居ながらにして行なうことができる。この場合は、従来のように、現場へスペクトルアナライザー又は波形観測用計測器等を持参する必要が無い。
【0015】
また、センターからの指令に基づいて、下り系路20に搭載した下り信号用ゲートスイッチ回路14をOFFにすると、センターから送り出される下り信号を遮断して加入者へ供給されなくし、加入者がテレビを見られないようにすることができる。
【0016】
発信器は一つでも、発信周波数の異なる3つ以上でもよい。発信機の数が多くなれば、異常の内容や種類を細かく確認することができる。発信周波数も用途に合わせて設定することができる。
【0017】
図1の制御PCは、コントローラ専用パソコン2とは別のパソコンであり、センター内あるいはセンターの外ではあるがセンターのある社内に設置されているもの、或は社内LANを構成するものである。この制御PCの操作によりコントローラ専用パソコン2を操作し、コントローラ・送信機1を操作することもできる。また、図1の制御用PCとは別に、センターの外部のパソコンでインターネットを通じてコントローラ専用パソコン2を操作し、コントローラ・送信機1を操作することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】CATVシステムの全体図。
【図2】CATVセンター側のコントローラ及び送信部分の説明図。
【図3】ゲート制御機の説明図。
【符号の説明】
【0019】
1 送信機(送受信機)
2 制御用パソコン(PC)
3 ヘッドエンド(HE)
4 ゲート制御機
6 送信機
7 受信機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
CATVシステムのセンター側にコントローラ及び送信機を設置し、個々の加入者側にゲート制御機を設置し、ゲート制御機にセンターからの信号を受信する受信機と発信機を設け、コントローラはゲート制御機アドレスとゲートスイッチの状態を管理し、ゲート制御機はセンターの送信機からアドレス指定のゲート制御情報が送出されると、その制御情報を、そのアドレスに対応したアドレスのゲート制御機が受け取り、その制御情報に応答するゲート制御機の発信機からの報知信号がセンターに送られるようにしたことを特徴とする双方向CATVシステム。
【請求項2】
請求項1記載の双方向CATVシステムにおいて、ゲート制御機が発信周波数の異なる2以上の発信機を備えたことを特徴とする双方向CATVシステム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の双方向CATVシステムにおいて、ゲート制御機に波形観測モジュールを備えたことを特徴とする双方向CATVシステム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の双方向CATVシステムにおいて、個々の加入者の下り回線にそれを遮断する下りゲートスイッチを設け、センターからの指令信号をゲート制御機の受信機が受信すると、その下りゲートスイッチ回路をOFFにして加入者への下り信号の供給を停止することを特徴とする双方向CATVシステム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の双方向CATVシステムにおいて、集合住宅あるいは戸建て住宅の夫々のCATVシステム引き込み口の近くに上り回線を遮断する上りゲートスイッチを設置し、流合雑音発生時にそのスイッチ回路をOFFにして、上流への流合雑音の上りを阻止することを特徴とする双方向CATVシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−5702(P2006−5702A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180634(P2004−180634)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(504236318)コンゴー・エンジニアリング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】