説明

双方向DC−DCコンバータ

【課題】小型・高効率な絶縁型の双方向DC−DCコンバータを提供する。
【解決手段】双方向DC−DCコンバータの第1のスイッチング回路は、スイッチング素
子H1とスイッチング素子H2とを直列接続した第1のスイッチングレッグと、スイッチ
ング素子H3とスイッチング素子H4とを直列接続し、かつ第1のスイッチングレッグに
並列接続された第2のスイッチングレッグとを備え、第1のスイッチングレッグの両端間
を直流端子間とし、スイッチング素子H1とスイッチング素子H2との直列接続点と、ス
イッチング素子H3とスイッチング素子H4との直列接続点との間を交流端子間とし、制
御手段は、第2の直流電源から第1の直流電源へ電力を送る場合に、前記スイッチング素子H1〜H4の全てをオン状態に保つモードを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁機能を有する双方向DC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全への意識の高まりから、効率が高いハイブリッド自動車の普及が進められている。ハイブリッド自動車は、走行モーター駆動用の主バッテリと補機駆動用の補機バッテリをもつ。これら電圧が異なる2つのバッテリ間で電力を融通できれば、車両電源システムの設計自由度を増すことができる。
【0003】
そこで、電圧が異なる2つの電源間で双方向に電力を変換する双方向DC−DCコンバータが〔特許文献1〕に開示されている。このコンバータは、高圧側の回路と低圧側の回路とをトランスを介して接続している。高圧側回路のスイッチング素子を動作させることで高圧側電源から低圧側電源へ電力を供給し、低圧側回路のスイッチング素子を動作させることで低圧側電源から高圧側電源へ電力を供給する。
【0004】
また、スイッチング素子とコンデンサの直列接続体を含む電圧クランプ回路を低圧側回路に接続した双方向DC−DCコンバータが〔特許文献2〕に開示されている。このコンバータは、電圧クランプ回路により降圧動作時に循環電流による損失を低減する。また、昇降圧動作時に低圧側回路におけるサージ電圧の発生を防止してスイッチング素子の耐圧を低減し、高効率で小型な双方向DC−DCコンバータを提供する。
【0005】
また、トランスの巻線と直列にLC共振回路を接続した双方向DC−DCコンバータが〔特許文献3〕に開示されている。このコンバータは、スイッチング損失が少なく、オン・オフ時にスイッチング素子に大電流が流れる恐れをなくすことができ、簡単な制御系で効率よく2つの直流電源系で電力を融通し合うことができる双方向DC−DCコンバータを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−165448号公報
【特許文献2】特開2006−187147号公報
【特許文献3】特開2004−282828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に双方向DC−DCコンバータを小型・高効率化するためには、スイッチング特性が速いスイッチング素子を用いることが効果的である。しかしながら、前述の特許文献に開示された従来の双方向DC−DCコンバータでは、電圧の高い直流電源と電力を授受し、かつ小型・高効率化するために、スイッチング素子として例えば高耐圧MOSFETを用いても、MOSFETのボディダイオードの逆回復特性がMOSFETのスイッチング特性と比較して遅いために、小型・高効率化の障害となっていた。
【0008】
本発明の目的は、スイッチング素子として例えば高耐圧MOSFETのようにスイッチング特性が速くてボディダイオードの逆回復特性が比較的遅い素子を用いて、スイッチング損失を低減しつつ、ボディダイオードの逆回復特性が比較的遅いことによる影響を軽減し、小型・高効率な双方向DC−DCコンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は第1の平滑コンデンサが並列接続された第1の直流電源の電力を直流端子間に入力し,該電力を交流に変換して交流端子間から1次巻線に供給する第1のスイッチング回路と,第2の平滑コンデンサが並列接続された第2の直流電源の電力を直流端子間に入力し,該電力を交流に変換して交流端子間から2次巻線に供給する第2のスイッチング回路と,前記1次巻線と前記2次巻線とを磁気結合するトランスと,前記第1,第2の直流電源の間で電力を授受するように前記第1,第2のスイッチング回路を制御する制御手段と,を備えた双方向DC−DCコンバータにおいて,
前記第1のスイッチング回路は,スイッチング素子H1とスイッチング素子H2とを直列接続した第1のスイッチングレッグと,スイッチング素子H3とスイッチング素子H4とを直列接続し,かつ前記第1のスイッチングレッグに並列接続された第2のスイッチングレッグと,を備え,前記第1のスイッチングレッグの両端間を直流端子間とし,前記スイッチング素子H1と前記スイッチング素子H2との直列接続点と,前記スイッチング素子H3と前記スイッチング素子H4との直列接続点との間を交流端子間とし,
前記制御手段は,前記第2の直流電源から前記第1の直流電源へ電力を送る場合に,前記スイッチング素子H1〜H4の全てをオン状態に保つモードを備えたことを特徴とするものである。
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第2のスイッチング回路は、前記第2の直流電源に流れる電流を平滑する平滑リアクトルを備え、前記第2のスイッチング回路が備えたスイッチング素子の状態を切り替えて前記第2の直流電源の電力を前記2次巻線に供給するときに、前記平滑リアクトルに蓄積した前記第2の直流電源のエネルギーを放出することを特徴とするものである。
【0010】
なお、本発明は、第1の直流電源に並列接続され、かつ第1のスイッチング回路の直流端子間に接続された第1の平滑コンデンサと、第2の直流電源に並列接続され、かつ第2のスイッチング回路の直流端子間に接続された第2の平滑コンデンサと、前記第1のスイッチング回路の交流端子間に接続された1次巻線と、前記第2のスイッチング回路の交流端子間に接続された2次巻線と、前記1次巻線と前記2次巻線とを磁気結合するトランスと、前記第1,第2の直流電源の間で電力を授受するよう前記第1,第2のスイッチング回路を制御する制御手段と、を備えた双方向DC−DCコンバータにおいて、前記第1の直流電源および前記第1の平滑コンデンサと前記第1のスイッチング回路の直流端子との間に、カソードが前記第1の直流電源の正極を向くよう直列に挿入された第1のダイオードと、前記第1のダイオードに並列接続された第1のスイッチとを備え、前記制御手段は、前記第1の直流電源から前記第2の直流電源へ電力を送る場合には前記第1のスイッチをオン状態にし、前記第2の直流電源から前記第1の直流電源へ電力を送る場合には前記第1のスイッチをオフ状態にする。
【0011】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記1次巻線及び/又は前記2次巻線に直列に挿入された共振リアクトルを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記1次巻線及び/又は前記2次巻線に直列に挿入された共振コンデンサを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第1のスイッチング回路は、第1,第2のスイッチング素子を直列接続した第1のスイッチングレッグと、第3,第4のスイッチング素子を直列接続し、かつ前記第1のスイッチングレッグに並列接続された第2のスイッチングレッグとを備え、前記第1のスイッチングレッグの両端間を直流端子間とし、前記第1,第2のスイッチング素子の直列接続点と前記第3,第4のスイッチング素子の直列接続点との間を交流端子間としたことを特徴とするものである。
【0014】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第3,第4のスイッチング素子をそれぞれ第1,第2のコンデンサに置き換えたことを特徴とするものである。
【0015】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記1次巻線は、第1の1次巻線の一端と第2の1次巻線の一端との接続体を備え、前記第1のスイッチング回路は、第1,第2のスイッチング素子を備え、前記第1の1次巻線の他端に前記第1のスイッチング素子の一端を接続し、前記第2の1次巻線の他端に前記第2のスイッチング素子の一端を接続し、前記第1のスイッチング素子の他端と前記第2のスイッチング素子の他端とを接続し、前記第1,第2のスイッチング素子の接続点と前記第1,第2の1次巻線の接続点との間を直流端子間としたことを特徴とするものである。
【0016】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第2のスイッチング回路は、平滑リアクトルと、第5,第6のスイッチング素子を直列接続した第3のスイッチングレッグと、第7,第8のスイッチング素子を直列接続し、かつ前記第3のスイッチングレッグに並列接続された第4のスイッチングレッグとを備え、前記第3のスイッチングレッグの一端に前記平滑リアクトルの一端を接続し、前記平滑リアクトルの他端と前記第3のスイッチングレッグの他端との間を直流端子間とし、前記第5,第6のスイッチング素子の直列接続点と前記第7,第8のスイッチング素子の直列接続点との間を交流端子間としたことを特徴とするものである。
【0017】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記2次巻線は、第1の2次巻線の一端と第2の2次巻線の一端との接続体を備え、前記第2のスイッチング回路は、平滑リアクトルと、第5,第6のスイッチング素子とを備え、前記第1の2次巻線の他端に前記第5のスイッチング素子の一端を接続し、前記第2の2次巻線の他端に前記第6のスイッチング素子の一端を接続し、前記第5のスイッチング素子の他端と前記第6のスイッチング素子の他端とを接続し、前記第1,第2の2次巻線の接続点に前記平滑リアクトルの一端を接続し、前記平滑リアクトルの他端と前記第5,第6のスイッチング素子の接続点との間を直流端子間としたことを特徴とするものである。
【0018】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第2のスイッチング回路は、第1の平滑リアクトルの一端と第2の平滑リアクトルの一端との接続体と、第5のスイッチング素子の一端と第6のスイッチング素子の一端との接続体とを備え、前記第5のスイッチング素子の他端に前記第1の平滑リアクトルの他端を接続し、前記第6のスイッチング素子の他端に前記第2の平滑リアクトルの他端を接続し、前記第5のスイッチング素子の他端と前記第6のスイッチング素子の他端との間を交流端子間とし、前記第1,第2の平滑リアクトルの接続点と前記第5,第6のスイッチング素子の接続点との間を直流端子間としたことを特徴とするものである。
【0019】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第2の直流電源および前記第2の平滑コンデンサと前記第2のスイッチング回路の直流端子との間に、カソードが前記第2の直流電源の正極を向くよう直列に挿入された第2のダイオードと、前記第2のダイオードに並列接続された第2のスイッチとを備え、前記制御手段は、前記第2の直流電源から前記第1の直流電源へ電力を送る場合には前記第2のスイッチをオン状態に保ち、前記第1の直流電源から前記第2の直流電源へ電力を送る場合には前記第2のスイッチをオフ状態に保つようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第2のスイッチング回路は、第5,第6のスイッチング素子を直列接続した第3のスイッチングレッグと、第7,第8のスイッチング素子を直列接続し、かつ前記第3のスイッチングレッグに並列接続された第4のスイッチングレッグとを備え、前記第3のスイッチングレッグの両端間を直流端子間とし、前記第5,第6のスイッチング素子の直列接続点と前記第7,第8のスイッチング素子の直列接続点との間を交流端子間としたことを特徴とするものである。
【0021】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第7,第8のスイッチング素子をそれぞれ第3,第4のコンデンサに置き換えたことを特徴とするものである。
【0022】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記2次巻線は、第1の2次巻線の一端と第2の2次巻線の一端との接続体を備え、前記第2のスイッチング回路は、第5,第6のスイッチング素子を備え、前記第1の2次巻線の他端に前記第5のスイッチング素子の一端を接続し、前記第2の2次巻線の他端に前記第6のスイッチング素子の一端を接続し、前記第5のスイッチング素子の他端と前記第6のスイッチング素子の他端とを接続し、前記第5,第6のスイッチング素子の接続点と前記第1,第2の2次巻線の接続点との間を直流端子間としたことを特徴とするものである。
【0023】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第1〜第8のスイッチング素子のそれぞれに逆並列接続された逆並列ダイオードを備えたことを特徴とするものである。
【0024】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第1〜第8のスイッチング素子のそれぞれに並列接続されたスナバコンデンサを備えたことを特徴とするものである。
【0025】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第1,第2のスイッチは電磁継電器としたことを特徴とするものである。
【0026】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第1,第2のスイッチは半導体スイッチング素子としたことを特徴とするものである。
【0027】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第1〜第8のスイッチング素子はMOSFETとしたことを特徴とするものである。
【0028】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータは、前記第1,第2のダイオードは、前記
第1〜第8のスイッチング素子のボディダイオード及び/又は前記逆並列ダイオードより
も逆回復特性が速いことを特徴とするものである。
【0029】
また、上記課題を解決するために、本発明は第1の直流電源に並列接続された第1のスイッチング回路と、第2の直流電源に並列接続された第2のスイッチング回路と、前記第1のスイッチング回路の交流端子間に接続された1次巻線と、前記第2のスイッチング回路の交流端子間に接続された2次巻線と、前記1次巻線と前記2次巻線とを磁気結合するトランスと、前記第1,第2の直流電源の間で電力を授受するよう前記第1,第2のスイッチング回路を制御する制御手段とを備えた双方向DC−DCコンバータの制御方法において、第1の整流素子を前記第1の直流電源と前記第1のスイッチング回路の直流端子との間に、整流方向が前記第1の直流電源の正極を向くよう直列に挿入すること、前記第1の整流素子に第1のスイッチを並列接続すること、前記制御手段は、前記第1の直流電源から前記第2の直流電源へ電力を送る場合には前記第1のスイッチをオン状態にし、前記第2の直流電源から前記第1の直流電源へ電力を送る場合には前記第1のスイッチをオフ状態にすることを特徴とするものである。
【0030】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータの制御方法は、前記1次巻線及び/又は前記2次巻線に直列に挿入された共振リアクトルを備えることを特徴とするものである。
【0031】
更に、本発明の双方向DC−DCコンバータの制御方法は、前記1次巻線及び/又は前記2次巻線に直列に挿入された共振コンデンサを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、スイッチング素子として例えば高耐圧MOSFETのようにスイッチング特性が速くてボディダイオードの逆回復特性が比較的遅い素子を用いて、スイッチング損失を低減しつつ、ボディダイオードの逆回復特性が比較的遅いことによる影響を軽減して、小型・高効率な双方向DC−DCコンバータを提供することが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1による双方向DC−DCコンバータの回路構成図。
【図2】本発明の実施例2による双方向DC−DCコンバータの回路構成図。
【図3】本発明の実施例2による双方向DC−DCコンバータの順電送時の動作を説明する回路図。
【図4】本発明の実施例2による双方向DC−DCコンバータの逆電送時の動作を説明する回路図。
【図5】本発明の実施例3による双方向DC−DCコンバータの回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
本明細書では、直流電源V1から直流電源V2へ電力伝送することを順電送と呼称し、逆に直流電源V2から直流電源V1へ電力伝送することを逆電送と呼称する。また、オン状態のスイッチング素子の電圧またはダイオードの順方向降下電圧と同等程度かそれ以下の電圧をゼロ電圧と呼称し、スイッチング素子に印加された電圧がゼロ電圧の状態でこのスイッチング素子のオンとオフを切り替えてスイッチング損失を低減することをゼロ電圧スイッチングと呼称する。
【実施例1】
【0036】
図1は、本発明の実施例1による双方向DC−DCコンバータの回路構成図である。この双方向DC−DCコンバータは、直流電源V1と直流電源V2との間に接続され、直流電源V1と直流電源V2との間で電力の授受を行う。直流電源V1には負荷R1が接続され、直流電源V2には負荷R2が接続されている。
【0037】
図1において、平滑コンデンサC1は直流電源V1に接続され、平滑コンデンサC2は直流電源V2に接続されている。スイッチング回路11の直流端子は、ダイオードD1を介して平滑コンデンサC1に接続される。このダイオードD1は、スイッチング回路11から直流電源V1へは電力を流し、逆に直流電源V1からスイッチング回路11へは電力を流さない向きに接続され、ダイオードD1にはスイッチSW1が並列接続されている。また、スイッチング回路12の直流端子は平滑コンデンサC2に接続されている。
【0038】
スイッチング回路11の交流端子には巻線N1が接続され、スイッチング回路12の交流端子には巻線N2が接続されている。トランス2は、巻線N1と巻線N2とを磁気結合している。
【0039】
スイッチング回路11と、スイッチング回路12と、スイッチSW1は、制御手段1によって制御される。制御手段1には、電圧センサ21,22及び電流センサ31,32が接続されている。
【0040】
実施例1による双方向DC−DCコンバータの順電送時の動作を説明する。制御手段1は、スイッチSW1をオン状態に保ちながら、スイッチング回路11をスイッチング動作させ、巻線N1に交流電圧を印加する。スイッチング回路12は、巻線N2に生じた誘起電圧を整流し、直流電源V2に電力を供給する。
【0041】
このように順電送時は、スイッチSW1をオン状態に保つ。これにより、ダイオードD1の両端は短絡されるから、スイッチング回路11の直流端子は、ダイオードD1を介さずに直接平滑コンデンサC1に接続された場合と同様の状態になる。この状態は、既に述べた特許文献1〜3の回路構成と同様であり、スイッチング動作も同様とすることができる。
【0042】
次に、実施例1による双方向DC−DCコンバータの逆電送時の動作を説明する。制御手段1は、スイッチSW1をオフ状態に保ちながら、スイッチング回路12をスイッチング動作させ、巻線N2に交流電圧を印加する。スイッチング回路11は、巻線N1に生じた誘起電圧を整流し、直流電源V1に電力を供給する。
【0043】
このように逆電送時は、スイッチSW1をオフ状態に保ち、スイッチング回路11が整流回路として作用する。このとき、スイッチング回路11を構成する整流素子として、高耐圧MOSFETのボディダイオードのように逆回復特性が比較的遅い素子を用いても、逆回復特性が比較的速いダイオードD1が、直流電源V1や平滑コンデンサC1からスイッチング回路11への電力の逆流を防ぐ。これにより、本発明の双方向DC−DCコンバータは、効率的な逆電送が可能である。ダイオードD1を備えない従来の回路構成では、整流素子の逆導通期間中は、直流電源V1や平滑コンデンサC1からスイッチング回路11へ電力が逆流し、効率的な逆電送を妨げることは容易に理解できる。
【0044】
上記した実施例によらない解決方法として、スイッチング回路11のスイッチング・整流素子として、逆並列ダイオードを備えたIGBTを用いる方法がある。しかしながらIGBTは、高耐圧MOSFETと比較してスイッチング特性が遅いため、スイッチング損失が大きくなり順電送時の効率低下を招く。また、スイッチング損失を抑えるためにスイッチング周波数を低下させれば、トランス2や平滑コンデンサC1,C2を大きくしなければならず、双方向DC−DCコンバータの体積増加を招く。
【0045】
また、他の本発明によらない解決方法として、スイッチング回路11のスイッチング・整流素子として、逆並列ダイオードを備えた逆阻止MOSFETを用いる方法がある。しかし、この方法では、部品点数増加によるコストアップや体積増加を招く。
【0046】
一方、本発明の双方向DC−DCコンバータでは、スイッチSW1は、順電送と逆電送の切り替え時のみ、オン状態とオフ状態を切り替えるため、動作が比較的遅いIGBTや、電磁継電器のような機械式スイッチを用いることができる。IGBTを用いる場合、逆並列ダイオードを内蔵したパッケージのものを用いれば、ダイオードD1を外付けする必要がなく、小型化に有利である。また、機械式スイッチを用いれば、導通損失が小さいことから、更に効率の高い順電送が可能となる。
【実施例2】
【0047】
図2は、本発明の実施例2による双方向DC−DCコンバータの回路構成図である。この双方向DC−DCコンバータは、その両端に接続された直流電源V1と直流電源V2との間で電力の授受を行う。直流電源V1には負荷R1が接続され、直流電源V2には負荷R2が接続されている。
【0048】
図2において、平滑コンデンサC1は直流電源V1に接続され、平滑コンデンサC2は直流電源V2に接続されている。スイッチング素子H1,H2を直列接続した第1のスイッチングレッグは、ダイオードD1を介して平滑コンデンサC1に接続される。このダイオードD1は、第1のスイッチングレッグから直流電源V1へは電力を流し、逆に直流電源V1から第1のスイッチングレッグへは電力を流さない向きに接続され、ダイオードD1にはスイッチSW1が並列接続されている。スイッチング素子H3,H4を直列接続した第2のスイッチングレッグは、第1のスイッチングレッグに並列接続される。スイッチング素子H1,H2の直列接続点と、スイッチング素子H3,H4の直列接続点との間に、巻線N1と共振リアクトルLrと共振コンデンサCrとが直列接続されている。
【0049】
トランス3は、巻線N1,N21,N22を磁気結合している。巻線N21の一端と巻線N22の一端とが接続され、巻線N21の他端はスイッチング素子S1の一端に接続され、巻線N22の他端はスイッチング素子S2の一端に接続されている。スイッチング素子S1の他端とスイッチング素子S2の他端とが平滑コンデンサC2の一端に接続されている。巻線N21,N22の接続点は、平滑リアクトルLを介して平滑コンデンサC2の他端に接続されている。
【0050】
スイッチング素子S3とスイッチング素子S4とクランプコンデンサCcの、それぞれ一端を接続して成る電圧クランプ回路は、スイッチング素子S3の他端がスイッチング素子S1の一端に接続され、スイッチング素子S4の他端がスイッチング素子S2の一端に接続され、クランプコンデンサCcの他端がスイッチング素子S1,S2の他端に接続されている。
【0051】
スイッチング素子H1〜H4,S1〜S4には、それぞれ逆並列ダイオードDH1〜DH4,DS1〜DS4が接続されている。ここで、これらのスイッチング素子としてMOSFETを用いた場合は、逆並列ダイオードとしてMOSFETのボディダイオードを利用することができる。
【0052】
スイッチング素子H1〜H4,S1〜S4と、スイッチSW1は、制御手段1によって制御される。制御手段1には、電圧センサ21,22及び電流センサ31,32が接続されている。
【0053】
(V1→V2:順電送)
図3は、実施例2による双方向DC−DCコンバータの順電送時の動作を説明する回路図である。以下、この図3を参照しながら順電送時の動作を詳細に説明する。ただし、図3において、(a)〜(f)は、モードa〜fを表す。
【0054】
(モードa)
まず、モードaでは、スイッチSW1,スイッチング素子H1,H4がオン状態、スイッチング素子H2,H3がオフ状態であり、直流電源V1の電圧が、スイッチSW1,スイッチング素子H1,H4,共振コンデンサCr,共振リアクトルLrを介して巻線N1に印加されている。
【0055】
スイッチング素子S2,S3はオフ状態であり、巻線N21に生じた電圧が、ダイオードDS1,平滑リアクトルLを介して直流電源V2に印加され、直流電源V2にエネルギーが供給される。また、巻線N21,N22に生じた電圧が、ダイオードDS1,DS4を介してクランプコンデンサCcに印加され、クランプコンデンサCcは充電される。
【0056】
このとき、スイッチング素子S1〜S4としてMOSFETを用いている場合は、スイッチング素子S1,S4をオン状態とすれば、ダイオードDS1,DS4に流れる電流をスイッチング素子S1,S4へ分流することで損失を低減できる場合がある。このように、MOSFETと逆並列接続されたダイオード、またはMOSFETのボディダイオードに、ダイオードの順方向電流が流れるとき、このMOSFETをオン状態として損失を低減することを、以後、同期整流と呼称する。このとき、スイッチング素子S4をオンさせる(ゼロ電圧スイッチング)。
【0057】
(モードb)
クランプコンデンサCcの充電電流は減少していき、やがて放電に変化する。クランプコンデンサCcの放電電流は、スイッチング素子S4,巻線N22,平滑リアクトルLを介して直流電源V2に供給される。
【0058】
(モードc)
スイッチング素子H4をオフすると、スイッチング素子H4を流れていた電流は、ダイオードDH3,スイッチング素子H1,共振コンデンサCr,共振リアクトルLr,巻線N1へ流れる。このとき、スイッチング素子H3をオンさせる(ゼロ電圧スイッチング)。
【0059】
また、スイッチング素子S4をオフすると、クランプコンデンサCcの放電は終了し、スイッチング素子S4を流れていた電流は、ダイオードDS2へ転流する。このとき、スイッチング素子S2をオンすれば同期整流となる。平滑リアクトルLに蓄積されているエネルギーは、直流電源V2に供給される。
【0060】
(モードd)
スイッチング素子H1をオフすると、スイッチング素子H1を流れていた電流は、スイッチSW1及び/又はダイオードD1,直流電源V1,ダイオードDH2,共振コンデンサCr,共振リアクトルLr,巻線N1,ダイオードDH3を流れる。このとき、スイッチング素子H2をオンさせる(ゼロ電圧スイッチング)。共振リアクトルLrには、直流電源V1の電圧が印加され、この電流は減少していく。
【0061】
(モードe)
スイッチング素子H2,H3はオン状態であるから、共振リアクトルLrの電流がゼロに達した後は、逆向きにこの電流が増加していく。これに伴い、ダイオードDS1と巻線N21を通る電流は減少し、ダイオードDS2と巻線N22を通る電流が増加していく。巻線N21を通る電流がゼロに達する前に、スイッチング素子S1をオフしておく。
【0062】
(モードf)
巻線N21を通る電流がゼロに達すると、ダイオードDS1は逆導通した後、逆回復する。この逆導通中に流れていた電流は、逆回復後、ダイオードDS3に転流する。このとき、スイッチング素子S3をオンする(ゼロ電圧スイッチング)。また、直流電源V1の電圧が巻線N1に印加される。
【0063】
スイッチング素子S1,S4はオフ状態であり、巻線N22に生じた電圧が、ダイオードDS2,平滑リアクトルLを介して直流電源V2に印加され、直流電源V2にエネルギーが供給される。また、巻線N21,N22に生じた電圧が、ダイオードDS2,DS3を介してクランプコンデンサCcに印加され、クランプコンデンサCcは充電される。
【0064】
このモードfは、モードaの対称動作である。以降、モードb〜eの対称動作の後、モードaへ戻るため容易に理解できると考えるので詳細な説明は省略する。
【0065】
(V1←V2:逆電送)
図4は、実施例2による双方向DC−DCコンバータの順電送時の動作を説明する回路図である。以下、この図4を参照しながら順電送時の動作を詳細に説明する。ただし、図4において、(A)〜(H)は、モードA〜Hを表す。
【0066】
(モードA)
まず、モードAでは、スイッチング素子S1,S2がオン状態、スイッチング素子S3,S4がオフ状態である。直流電源V2の電圧が、巻線N21,N22,スイッチング素子S1,S2を介して平滑リアクトルLに印加され、直流電源V2のエネルギーを平滑リアクトルLに蓄積している。
【0067】
また、スイッチSW1,スイッチング素子H1,H4がオフ状態、スイッチング素子H2,H3がオン状態である。共振リアクトルLrには、共振コンデンサCr,ダイオードDH1,DH4,スイッチング素子H2,H3,巻線N1を通る電流が流れている。このとき、スイッチング素子H1〜H4としてMOSFETを用いている場合は、スイッチング素子H1,H4をオン状態にすれば同期整流となる。
【0068】
(モードB)
スイッチング素子S2をオフすると、スイッチング素子S2を流れていた電流は、ダイオードDS4を流れてクランプコンデンサCcを充電する。このとき、スイッチング素子S4をオンする(ゼロ電圧スイッチング)。
【0069】
巻線N21,N22には、クランプコンデンサCcの電圧が印加され、巻線N1に電圧が生じる。この巻線N1の電圧は共振リアクトルLrに印加され、共振リアクトルLrの電流は増加していく。
【0070】
また、平滑リアクトルLに蓄積されたエネルギーは放出されていく。
【0071】
(モードC)
スイッチング素子H2,H3をオフすると、スイッチング素子H2,H3を流れていた電流は、ダイオードDH4,巻線N1,共振リアクトルLr,共振コンデンサCr,ダイオードDH1,ダイオードD1を通り、直流電源V1へ流れ、直流電源V1にエネルギーが供給される。このとき、スイッチング素子H1,H4をオンさせる(ゼロ電圧スイッチング)。
【0072】
(モードD)
共振リアクトルLrの電流の増加に伴い、クランプコンデンサCcの充電電流は減少していき、やがて放電に転じる。
【0073】
(モードE)
スイッチング素子S4をオフすると、スイッチング素子S4に流れていたクランプコンデンサCcの放電電流はダイオードDS2を導通する。このとき、スイッチング素子S2をオンする(ゼロ電圧スイッチング)。
【0074】
巻線N21,N22には、クランプコンデンサCcの電圧VCcが印加されなくなるため、巻線N1に電圧が生じなくなり、共振リアクトルLrには、直流電源V1の電圧が印加され、共振リアクトルLrの電流は減少していく。
【0075】
また、モードAと同様に、直流電源V2のエネルギーを平滑リアクトルLに蓄積していく。
【0076】
(モードF)
共振リアクトルLrの電流の減少に伴い、スイッチング素子S2の電流の向きが反転する。
【0077】
(モードG)
スイッチング素子H1,H4はオン状態、スイッチSW1はオフ状態であるから、共振リアクトルLrの電流がさらに減少しゼロに達すると、まず、ダイオードD1が逆導通し、共振リアクトルLrには、モードFと逆向きの電流が流れる。
【0078】
(モードH)
ダイオードD1が逆回復すると、このダイオードD1の逆導通中に蓄積された共振リアクトルLrの電流は、ダイオードDH2,DH3を導通し、ダイオードDH2,DH3,共振コンデンサCr,巻線N1,スイッチング素子H1,H4を流れる。このとき、共振コンデンサCrには電荷が蓄積されており、共振リアクトルLrの電流を増加させる向きに電圧を生じており、共振リアクトルLrの電流は徐々に増加していく。
【0079】
このモードHは、モードAの対称動作である。以降、モードB〜Gの対称動作の後、モードAへ戻るため容易に理解できると考えるので詳細な説明は省略する。
【0080】
上記のモードA(H)の期間中に、ダイオードDH2(DH1),DH3(DH4)は逆回復している。しかしながら、ダイオードDH1〜DH4として、MOSFETのボディダイオードのように逆回復特性が比較的遅いダイオードを用いている場合には、この期間中に逆回復しない場合がある。モードAの期間中に、ダイオードDH2,DH3が逆回復しない場合は、モードBの期間中に逆回復すれば、上記で説明した動作と同様となる。モードBの期間中にも逆回復しない場合には、逆回復次第モードCの動作に移行する。しかしながら、モードBからモードCの動作への移行を遅らせると、出力電力が増加する場合がある。この場合には、出力電力を所望の値に容易に調整するために、モードBの期間が終わるまでにダイオードDH2,DH3を逆回復させるのがよい。このために、次に述べるようにダイオードD1と並列に静電容量成分を付加する方法がある。
【0081】
また、モードA(H)において、ダイオードD1と並列に静電容量成分を有する場合には、ダイオードD1が逆回復した後に、この静電容量成分を充電する電流が流れる。この充電電流が流れる期間にも共振リアクトルLrに電流が蓄積される。例えば、ダイオードD1と並列にコンデンサを接続すれば、モードA(H)における共振リアクトルLrの電流を増加することができる。この共振リアクトルLrの電流の増加は、ダイオードDH2(DH1),DH3(DH4)の逆回復を促進する効果がある。
【0082】
しかしながら、モードA(H)において、共振リアクトルLrの電流が大きくなると、スイッチング素子S1,S2のオンがゼロ電圧スイッチングになりにくくなる場合がある。モードAにおいて、共振リアクトルLrの電流すなわち巻線N1の電流が大きいと、巻線N1,N21,N22が磁気結合していることから、巻線N21とスイッチング素子S1の電流よりも、巻線N22とスイッチング素子S2の電流の方が、より小さくなる。モードBでは、スイッチング素子S2が遮断した電流がクランプコンデンサCcの充電電流となる。したがって、この遮断電流が小さくなると、モードB,CにおけるクランプコンデンサCcの充電電流が小さくなり、モードDにおけるクランプコンデンサCcの放電電流も小さくなる。モードEでは、クランプコンデンサCcの放電電流をスイッチング素子S4が遮断することにより、この電流をダイオードDS2へ転流させて、スイッチング素子S2のオンのゼロ電圧スイッチングを実現しているからである。
【0083】
そこで、モードA(H)における共振リアクトルLrの電流を比較的大きくしても、スイッチング素子S1,S2のオンがゼロ電圧スイッチングになりやすくする方法として、スイッチング素子S1,S2のオン時間比率の上限を、入力電圧すなわち直流電源V2の電圧に応じて変化させる方法がある。スイッチング素子S1,S2のオン時間比率を大きくすると、出力電力の増加と共に、クランプコンデンサCcの電圧の上昇を招く。スイッチング素子S1〜S4には、クランプコンデンサCcの電圧が印加されるから、この電圧の上昇はスイッチング素子S1〜S4の破壊を招く場合がある。このため、スイッチング素子S1,S2のオン時間比率には上限を設け、このオン時間比率を上限で動作させても出力電力が足りない場合には、オン時間比率を上限とした状態でモードBの期間を長くすることで出力電力を得る。このとき、出力電力はモードBの期間の長さで調整を行う。なお、モードBの期間の長さをゼロ、すなわちモードBにおいてスイッチング素子S2をオフするタイミングとほぼ同時にモードCにおいてスイッチング素子H2,H3をオフさせても十分な出力電力が得られる場合には、モードBの期間の長さを例えばゼロに固定した状態で、スイッチング素子S1,S2のオン時間比率を調整して、出力電力を調整しても良い。
【0084】
しかしながら、出力電力を得るためにモードBの期間を長くすると、スイッチング素子S1,S2のオンがゼロ電圧スイッチングになりにくくなる場合がある。モードBにおいて、巻線N1に生じた電圧は、ほぼ全て共振リアクトルLrに印加されるため、共振リアクトルLrの電流は急速に増加する。したがって、クランプコンデンサCcの充電電流は急速に減少し、モードB〜Cにおける充電電荷量が少なくなることから、モードDにおけるクランプコンデンサCcの放電電流も小さくなる。モードEでは、クランプコンデンサCcの放電電流をスイッチング素子S4が遮断することにより、この電流をダイオードDS2へ転流させて、スイッチング素子S2のオンのゼロ電圧スイッチングを実現しているからである。
【0085】
上述の、スイッチング素子S1,S2のオン時間比率を上限に固定し、モードBの期間の長さを調整して出力電力を調整し、所望の出力電力を得ている場合は、オン時間比率の上限を引き上げることにより、モードBの期間を短くしても所望の出力電力が得られるため、スイッチング素子S1,S2のオンがゼロ電圧スイッチングになりやすくできる。このとき、クランプコンデンサCcの電圧の上昇によるスイッチング素子S1〜S4の破壊を防ぐためには、入力電圧すなわち直流電源V2の電圧の減少に伴って、オン時間比率の上限を引き上げるようにすればよい。オン時間比率を固定した場合、クランプコンデンサCcの電圧は、入力電圧すなわち直流電源V2の電圧に概略比例するからである。
【0086】
このように、ダイオードDH1〜DH4の逆回復を促進するために、モードA(H)における共振リアクトルLrの電流を比較的大きくしても、スイッチング素子S1,S2のオン時間比率の上限を、入力電圧すなわち直流電源V2の電圧に応じて変化させるようにすることで、スイッチング素子S1,S2のオンがゼロ電圧スイッチングになりやすくすることができる。
【0087】
以上、説明したように、実施例2による双方向DC−DCコンバータは、順電送時はスイッチSW1をオン状態に保ち、逆電送時はスイッチSW1をオフ状態に保つことが最大の特徴である。これにより逆電送時は、ダイオードDH1〜DH4として、高耐圧MOSFETのボディダイオードのように逆回復特性が比較的遅い素子を用いても、逆回復特性が比較的速いダイオードD1が、直流電源V1や平滑コンデンサC1からダイオードDH1〜DH4への電力の逆流を防ぎ、効率的な逆電送が可能である。これにより、スイッチング素子H1〜H4とダイオードDH1〜DH4として、例えば高耐圧MOSFETとそのボディダイオードを用いても、効率的な逆電送が可能である。
【0088】
その他の特徴は、実施例2による双方向DC−DCコンバータのスイッチング素子H1〜H4とダイオードDH1〜DH4が、実施例1による双方向DC−DCコンバータのスイッチング回路11のスイッチング・整流素子に相当することに留意すれば、実施例1と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0089】
また、この実施例2では、電圧型フルブリッジ回路と電流型センタタップ回路の組合せとしたが、電圧型センタタップ回路や、ハーフブリッジ回路,電流型フルブリッジ回路,カレントダブラ回路の組合せであっても同様の構成,効果を有することは当然である。
【実施例3】
【0090】
図5は、本発明の実施例3による双方向DC−DCコンバータの回路構成図である。この双方向DC−DCコンバータは、その両端に接続された直流電源V1と直流電源V2との間で電力の授受を行う。
【0091】
図5において、平滑コンデンサC1は直流電源V1に接続され、平滑コンデンサC2は直流電源V2に接続されている。スイッチング素子H1,H2を直列接続した第1のスイッチングレッグは、ダイオードD1を介して平滑コンデンサC1に接続される。このダイオードD1は、第1のスイッチングレッグから直流電源V1へは電力を流し、逆に直流電源V1から第1のスイッチングレッグへは電力を流さない向きに接続され、ダイオードD1にはスイッチSW1が並列接続されている。スイッチング素子H2の両端間に、巻線N1と共振リアクトルLrと共振コンデンサCrとが直列接続されている。
【0092】
スイッチング素子S1,S2を直列接続した第21のスイッチングレッグは、ダイオードD2を介して平滑コンデンサC2に接続される。このダイオードD2は、第21のスイッチングレッグから直流電源V2へは電力を流し、逆に直流電源V2から第21のスイッチングレッグへは電力を流さない向きに接続され、ダイオードD2にはスイッチSW2が並列接続されている。スイッチング素子S3,S4を直列接続した第22のスイッチングレッグは、第21のスイッチングレッグに並列接続される。スイッチング素子S1,S2の直列接続点と、スイッチング素子S3,S4の直列接続点との間に、巻線N2が接続されている。トランス2は、巻線N1,N2を磁気結合している。
【0093】
スイッチング素子H1,H2,S1〜S4には、それぞれ逆並列ダイオードDH1,DH2,DS1〜DS4が接続されている。ここで、これらのスイッチング素子としてMOSFETを用いた場合は、逆並列ダイオードとしてMOSFETのボディダイオードを利用することができる。
【0094】
実施例3による双方向DC−DCコンバータの動作を説明する。順電送時には、スイッチSW1をオン状態に保ち、スイッチSW2をオフ状態に保つ。スイッチング素子H1,H2を相補にオンオフ動作させ、共振コンデンサCrと共振リアクトルLrを通して巻線N1に交流の共振電流を流す。ダイオードDS1〜DS4は、巻線N2に生じた誘導電流を整流し、ダイオードD2を介して直流電源V2に電力が供給される。
【0095】
このとき、ダイオードDS1〜DS4として逆回復特性が比較的遅い素子を用いても、逆回復特性が比較的速いダイオードD2が、直流電源V2や平滑コンデンサC2からダイオードDS1〜DS4への電力の逆流を防ぎ、効率的な順電送が可能である。これにより、スイッチング素子S1〜S4とダイオードDS1〜DS4として、例えば高耐圧MOSFETとそのボディダイオードを用いても、効率的な順電送が可能である。
【0096】
次に、逆電送時には、スイッチSW2をオン状態に保ち、スイッチSW1をオフ状態に保つ。スイッチング素子S1,S2を相補にオンオフ動作させるとともに、スイッチング素子S4,S3をそれぞれスイッチング素子S1,S2に同期させてオンオフ動作させ、巻線N2に交流の共振電流を流す。巻線N1に生じた誘導電流は、共振コンデンサCrと共振リアクトルLrを通り、ダイオードDH1,DH2により整流され、ダイオードD1を介して直流電源V1に電力が供給される。
【0097】
このとき、ダイオードDH1,DH2として逆回復特性が比較的遅い素子を用いても、逆回復特性が比較的速いダイオードD1が、直流電源V1や平滑コンデンサC1からダイオードDH1,DH2への電力の逆流を防ぎ、効率的な逆電送が可能である。これにより、スイッチング素子H1,H2とダイオードDH1,DH2として、例えば高耐圧MOSFETとそのボディダイオードを用いても、効率的な逆電送が可能である。
【0098】
一般的にダイオードは、耐電圧を高くすると逆回復特性が悪くなる傾向にある。この実施例3では、直流電源V1と直流電源V2の両方の電圧が比較的高く、ダイオードDH1,DH2,DS1〜DS4の全ての耐電圧が比較的高い場合にも、直流電源V1,V2からの電力の逆流を防ぎ、双方向に高効率な電力変換が可能となる。
【0099】
ダイオードD1,D2,スイッチSW1,SW2による効果は、前述の実施例1や実施例2と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0100】
また、この実施例3では、シングルエンドプッシュプル回路とフルブリッジ回路の組合せとしたが、ハーフブリッジ回路や、センタタップ回路の組合せとして構成することも可能である。
【0101】
このように本発明は、絶縁型の双方向DC−DCコンバータの電圧型回路が備えた平滑コンデンサとスイッチング回路との間に、逆並列ダイオードを備えたスイッチを挿入することで、本明細書中に示した効果を得るものであり、電圧型回路を備えた多くの絶縁型の双方向DC−DCコンバータに適用できることは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上、説明したように本発明は、絶縁機能を有する双方向DC−DCコンバータ全般に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 制御手段
2,3 トランス
11,12 スイッチング回路
21,22 電圧センサ
31,32 電流センサ
V1,V2 直流電源
R1,R2 負荷
C1,C2 平滑コンデンサ
L 平滑リアクトル
Lr 共振リアクトル
Cr 共振コンデンサ
Cc クランプコンデンサ
N1,N2,N21,N22 巻線
SW1,SW2 スイッチ
H1〜H4,S1〜S4 スイッチング素子
D1,D2,DH1〜DH4,DS1〜DS4 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の平滑コンデンサが並列接続された第1の直流電源の電力を直流端子間に入力し,該電力を交流に変換して交流端子間から1次巻線に供給する第1のスイッチング回路と,
第2の平滑コンデンサが並列接続された第2の直流電源の電力を直流端子間に入力し,該電力を交流に変換して交流端子間から2次巻線に供給する第2のスイッチング回路と,
前記1次巻線と前記2次巻線とを磁気結合するトランスと,
前記第1,第2の直流電源の間で電力を授受するように前記第1,第2のスイッチング回路を制御する制御手段と,を備えた双方向DC−DCコンバータにおいて,
前記第1のスイッチング回路は,スイッチング素子H1とスイッチング素子H2とを直列接続した第1のスイッチングレッグと,スイッチング素子H3とスイッチング素子H4とを直列接続し,かつ前記第1のスイッチングレッグに並列接続された第2のスイッチングレッグと,を備え,前記第1のスイッチングレッグの両端間を直流端子間とし,前記スイッチング素子H1と前記スイッチング素子H2との直列接続点と,前記スイッチング素子H3と前記スイッチング素子H4との直列接続点との間を交流端子間とし,
前記制御手段は,前記第2の直流電源から前記第1の直流電源へ電力を送る場合に,前記スイッチング素子H1〜H4の全てをオン状態に保つモードを備えたことを特徴とする双方向DC−DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1において、前記第2のスイッチング回路は、前記第2の直流電源に流れる電流を平滑する平滑リアクトルを備え、前記第2のスイッチング回路が備えたスイッチング素子の状態を切り替えて前記第2の直流電源の電力を前記2次巻線に供給するときに、前記平滑リアクトルに蓄積した前記第2の直流電源のエネルギーを放出することを特徴とする双方向DC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−31368(P2013−31368A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−246996(P2012−246996)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2010−265893(P2010−265893)の分割
【原出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000233033)日立コンピュータ機器株式会社 (253)
【Fターム(参考)】