説明

反射シート及びそれを用いた面光源装置

【課題】 アースのためのアルミニウム箔層の折り曲げ時のひび割れを無くした反射シート及びそれを用いた面光源装置を提供する。
【解決手段】 アルミニウム箔ラミネートポリエチレンテレフタレートフィルムのポリエチレンテレフタレート面に白色反射ポリエチレンテレフタレートフィルムの非反射面側を熱軟化温度が180℃以下のポリエステル系接着剤で貼り合わせて、反射シートを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーターの液晶表示装置用などの反射シート及びそれを用いた面光源装置に関する。本発明は、勿論、その原理が同じである限り、ワープロ、パソコン、電子手帳、携帯電話、PHS、液晶テレビ等の他の各種機器の表示装置用や看板等のその他の各種照明装置用の各種の面光源装置に適用できるが、以下、その代表例としての液晶表示装置に関連して主に説明する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーターなどの各種機器に液晶表示装置が用いられている。例えば、サイドライト型バックライト方式の液晶表示装置は、一般に、筐体の中に反射板、導光板、拡散板、通常は2枚のプリズムシート(輝度を高める)、液晶セルの順の積層構造を有し、且つ、導光板の側方に冷陰極管やLED(発光ダイオード)等の光源(ランプ)とランプリフレクタが配置されており、反射板から拡散板又はプリズムシートまでの積層構造と光源及びランプリフレクタとで主にバックライトは構成されている。かかるサイドライト型バックライト方式の液晶表示装置において、反射板とランプリフレクタが分割されている方式のバックライトもあるが、両者を一枚の反射シートを折り曲げて構成し、コストダウンを図った一体化方式のバックライトがある。
【0003】
従来、このような一体化方式のバックライトでは、アルミニウム箔を接着剤で白色反射PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに貼り合せた(ラミネートした)反射シートを、アルミニウム箔面を外側にしてランプリフレクタ部分でほぼ直角(90°)に2回折り曲げて、ランプを囲む様にしてサイドライト型バックライトを構成し、液晶表示装置を組み立てる。ほぼ直角(90°)に2回折り曲げるのは、導光板直下の反射機能とランプ部分の反射機能の両方を最大限利用するためである。例えば、カーナビゲーターに液晶表示装置を使用した場合、駆動装置のノイズが液晶画面に影響して画面を乱したり、自動車内にノイズ電波が飛んで自動車の制御機器を狂わしたりするのを上記アルミニウム箔が遮断し、しかもアースを取るために外側に露出したアルミニウム箔と地面とを接地してアルミニウム箔で吸収したノイズ電流を地中に流す様にする。
【0004】
図1は、このような一体化方式のサイドライト型バックライトの概念断面図である。ランプ1を囲む様に位置aとbで反射シート2をほぼ90°折り曲げ、部分cからアースを取っている。3は導光板である。
【0005】
この方式のバックライトの欠点として、折り曲げ位置aやbで反射シート2の外側に露出したアルミニウム箔層がひび割れ断裂することがある点である。ひび割れ断裂は一度90°に折り曲げた位では発生し難いが、曲げ角度を調整するために反射シートを3〜4回曲げたり伸ばしたりすることがあり、その時にアルミニウム箔にひびが入り断裂する(疲労破断)ことがあることが分かった。このように折り曲げ位置aやbでアルミニウム箔のひび割れ断裂が生じると、構造上、部分cでアルミニウム箔とアースを取っているのに、アルミニウム箔の部分dで吸収したノイズ電流が部分cに到達できず、地下に伝わって逃げなくなり、アースできなくなる現象が生じ、ノイズ遮断効果も発揮できなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、反射シートのアルミニウム箔層のひび割れを無くし、上記の様な従来技術の問題点を解決せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、厚さ50μmで且つ狭い部分の巾及び長さがそれぞれ15mmの接着剤試験片の上辺部を固定し下辺部に450gの荷重をかけて昇温オーブン中で2℃/分の昇温速度で加熱していった時に荷重が落下する時の温度を熱軟化温度と定義したとして、アルミニウム箔ラミネートポリエチレンテレフタレートフィルムのポリエチレンテレフタレート面に白色反射ポリエチレンテレフタレートフィルムの非反射面側を熱軟化温度が180℃以下のポリエステル系接着剤で貼り合せたことを特徴とする反射シート、並びに、上記の反射シートを反射板として用いたことを特徴とする面光源装置を提供するものである。
【0008】
ポリエステル系接着剤の層の厚さは、ひび割れ断裂防止と経済性の面から2〜20μmであるのが好ましく、3〜15μmであるのがより好ましく、4〜10μmであるのが更に好ましい。ポリエステル系接着剤の熱軟化温度は、接着剤層の柔らかさの一指標であり、接着剤層の厚さにもよるが、180℃以下であれば折り曲げ時のひび割れ防止に効果が現われるが、140℃以下であるのが接着剤層を薄くできてコスト的に好ましい。熱軟化温度が180℃を超える場合、接着剤層が硬くなり過ぎ、ひび割れ断裂の防止が十分にできない。熱軟化温度が低すぎて、接着剤層が粘着性を帯びる様になると、加工適性や接着性に劣る傾向にあるので、一般的には熱軟化温度は60℃以上である。かかるポリエステル系接着剤としては、PET面同士を接着させるので、接着力の面から、ポリエステル系樹脂類やポリエステルウレタン系樹脂類などを用いるのが好ましい。ポリエステル系樹脂にヘキサメチレンジイソシアネートやビスフェノールAジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物を混合して架橋硬化させるポリエステルウレタン系樹脂類が特に接着強度の点で好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アルミニウム箔ラミネートPETフィルムと白色反射PETフィルムとを比較的柔らかなポリエステル系接着剤で貼り合せたことにより、折り曲げ時にアルミニウム箔層に掛かる応力が軽減され、更にPETフィルム層が追加されることで、シート自体の応力も緩和され、折り曲げ加工を行った場合でもアルミニウム箔層のひび割れによる破断を抑制することができ、アルミニウム箔のアース機能を維持することもできる。アルミニウム箔を接着剤で白色反射PETフィルムにラミネートした従来の反射シートと比べて、アルミニウム箔ラミネートPETフィルムは市販品を大量に安価に入手できるという利点があるので、これに反射シートとして常用されている白色反射PETフィルムを貼り合せて本発明の反射シートを比較的低コストで製造できるという利点も生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明がこれらに限定されるもので無いことは言うまでもない。
【0011】
アルミニウム箔ラミネートPETフィルムとしては、アルミニウム箔の厚さが好ましくは5〜30μm、より好ましくは6〜20μm、更に好ましくは8〜15μmで、PETフィルムの厚さが好ましくは5〜50μm、より好ましくは6〜30μm、更に好ましくは7〜20μmで、ポリエステル系樹脂やポリエステルウレタン系樹脂などからなる接着剤(接着剤層厚さ約2〜3μm)で貼り合せたものが好適に用いられる。アルミニウム箔の厚さが12μmで、PETフィルムの厚さが12.5μmの市販品が特に好ましい。
【0012】
白色反射PETフィルムとしては、例えば、液晶表示装置バックライト用白色反射シートとして常用されている発泡によって微細セル(気泡)を形成させた白色PETフィルム、PET樹脂と該樹脂と非相溶性の樹脂及び/又は有機や無機の粒子(炭酸カルシウムや硫酸バリウム等)との混合物を溶融押出しし延伸させて微細気泡を形成させた白色PETフィルム、極薄押出し白色PETフィルムを何層にも重ね、層間に微細気泡を包含させた白色PETフィルム、PET樹脂に白色顔料を練り込んで延伸させて微細溝(気泡溝)を形成した白色PETフィルム、内部に微細な気泡を形成させたPETフィルムの少なくとも片面に有機や無機の粒子を添加したポリエステル系樹脂を共押出などの方法で積層し、延伸し、表層部には内層部よりも微細な気泡を形成させた複合白色PETフィルム、PET樹脂にチタンホワイト、亜鉛華、硫酸バリウム等の白色顔料を大量に練り込んだ白色PETフィルムなどを好ましく用いることができる。これらの白色PETフィルムの厚みは、所望の反射能が確保される限り特に限定されないが、通常、50〜800μm、好ましくは70〜400μm、より好ましくは90〜250μmである。
【0013】
上記の様なアルミニウム箔ラミネートPETフィルムのPET面上に熱軟化温度が180℃以下のポリエステル系接着剤を塗工し、これに白色反射PETフィルムの非反射面側を接着して反射シートを得る。接着方式としては、ポリエステル系樹脂を接着剤として熱溶融接着(ホットメルト接着)させても、また、ポリエステル樹脂にヘキサメチレンジイソシアネートやビスフェノールAジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物を混合して架橋硬化接着させてもよい(この場合、例えば、40℃以上に加熱して貼り合せし、硬化を促進してもよい)。
【0014】
図2は、この様にして得られた本発明の反射シートの概念断面説明図である。アルミニウム箔ラミネートPETフィルム14は、アルミニウム箔層11、接着剤層12、PETフィルム層13からなる。アルミニウム箔ラミネートPETフィルム14のPET面上にポリエステル系接着剤層15が形成され、その上に白色反射PETフィルム層16が接着され、本発明の反射シートが構成されている。
【0015】
この様にして得られた反射シートのアルミニウム箔のひび割れの評価は、例えば、直角の角を持つ金属ブロックの角を利用して反射シートの90°折り曲げと180°伸ばし戻しを4回繰り返し、ひびが入ったか否かを目視で観察することによって行うことができる。
【0016】
図3は、ポリエステル系接着剤の熱軟化温度の測定の様子を表した概念平面説明図である。接着剤試験片21の厚さは50μmであり、その狭い部分の巾は15mmで、その部分の長さは15mmである。このような接着剤試験片21を予め作成して、熱軟化温度の測定に供する。接着剤試験片21を固定具22に固定し、450gの荷重23を取り付けて、図示されていない昇温オーブンに入れ、2℃/分の昇温速度で加熱して行き、荷重が落下する時の温度を「熱軟化温度」と定義する。
【0017】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
白色反射フィルムとして厚さ188μmの白色PETフィルムE−60L(東レ株式会社製)を用い、また、アルミニウム箔ラミネートPETフィルムとして厚さ12μmのアルミニウム箔を厚さ12.5μmのPETフィルムに貼り合せた市販品(接着剤層厚さ約2〜3μm)を用いた。種々の熱軟化温度を有するポリエステル系接着剤として、種々のポリエステル系樹脂にジイソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート又はビスフェノールAジイソシアネート)を該樹脂に対して5〜15重量%添加混合して接着剤とし、種々の接着剤層厚さでアルミニウム箔ラミネートPETフィルムのPET面上に塗工し、上記白色PETフィルムの非反射面を貼り合せて、数日間放置して接着剤を架橋硬化させ、反射シートを作成した。表1に接着剤層の厚さと熱軟化温度との関係で、アルミニウム箔の折り曲げ時のひび割れの発生状況を示した。熱軟化温度の範囲は、例えば、「180−200」は「180℃を超え且つ200℃以下」の範囲を表し、他も同様である。表1において、×は3回以下の折り曲げでひび割れが生じ、△は4回の折り曲げでひび割れが生じ、○は4回の折り曲げでひび割れ無しであったことを表す。
【0019】
【表1】

【0020】
また、熱軟化温度140℃以下のポリエステル系接着剤を用いて、接着剤層の厚さ6μmで貼り合せて得た反射シートを適当なサイズに裁断して、その反射面の一部でランプとしての直径2mmの冷陰極管を囲む様に、2ヶ所で90°に折り曲げては伸ばして戻す作業を4回繰り返し、90°に角度調節して、サイドライト型バックライト方式の液晶表示装置を実際に組み立て、カーナビゲーターを製作した。このカーナビゲーターにおいては、ノイズの障害が無く、ノイズ遮断効果があることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の反射シートは、アースのためのアルミニウム箔層を有するものであり、アルミニウム箔のひび割れ無しに反射板とランプリフレクタを一枚の反射シートを折り曲げて構成し、コストダウンを図った一体化方式のサイドライト型液晶表示装置バックライトの組み立てを可能とする。従って、本発明の反射シートは、カーナビゲーターを始めとして、ワープロ、パソコン、電子手帳、携帯電話、PHS、液晶テレビ等の各種機器の表示装置用や看板等のその他の各種照明装置用の反射板(反射シート)として用いることができ、優れた各種表示装置や各種照明装置等の面光源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、一体化方式のサイドライト型バックライトの概念断面図である。
【図2】図2は、本発明の反射シートの概念断面説明図である。
【図3】図3は、ポリエステル系接着剤の熱軟化温度の測定の様子を表した概念平面説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ランプ
2 反射シート
3 導光板
14 アルミニウム箔ラミネートPETフィルム
15 ポリエステル系接着剤層
16 白色反射PETフィルム層
21 接着剤試験片
22 固定具
23 荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ50μmで且つ狭い部分の巾及び長さがそれぞれ15mmの接着剤試験片の上辺部を固定し下辺部に450gの荷重をかけて昇温オーブン中で2℃/分の昇温速度で加熱していった時に荷重が落下する時の温度を熱軟化温度と定義したとして、アルミニウム箔ラミネートポリエチレンテレフタレートフィルムのポリエチレンテレフタレート面に白色反射ポリエチレンテレフタレートフィルムの非反射面側を熱軟化温度が180℃以下のポリエステル系接着剤で貼り合せたことを特徴とする反射シート。
【請求項2】
ポリエステル系接着剤の層の厚さが2〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載の反射シート。
【請求項3】
ポリエステル系接着剤の熱軟化温度が140℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射シート。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の反射シートを反射板として用いたことを特徴とする面光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−308839(P2006−308839A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130949(P2005−130949)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(592091220)株式会社コスモテック (13)
【Fターム(参考)】