説明

反射シート及び反射板

【課題】従来よりも埃や汚れが付着しにくく、反射率が長期に渡り低下しにくい反射シートを提供する。
【解決手段】本発明の反射シートは、可視光領域の光の反射率95%以上を有する樹脂基材上に、平均粒径500nm以下からなる光触媒粒子で光触媒層を形成する。樹脂基材と光触媒層との間に保護層を形成するのがよく、樹脂基材は発泡ポリエチレンテレフタレート、光触媒層は酸化チタンからなるものとするのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を反射する反射シート、該反射シートを積層した反射板、及び該反射板を備えた電飾ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内又は屋外で用いる照明装置(照明器具)は、蛍光灯などの光源の裏方に反射板を備えており、光源から直接発する光の他、反射板で反射した光により屋内又は屋外を明るく照らすものである。
照明装置を長年使用していれば、埃や汚れが反射板に付着し、反射板の反射率を減少させるため屋内又は屋外の明るさは減少する。そこで、定期的にメンテナンスをし、付着した埃や汚れを落とし、明るさを取り戻す必要がある。
【0003】
上記のように照明装置のメンテナンスをする煩わしさを解消するため、反射率が60%以上の反射部材の外面に光触媒膜を具備した反射体を用いた照明器具があり、埃や汚れを付着しにくくして反射率の低下を防ぎ、メンテナンスを容易にしている(下記特許文献1参照)。
なお、光触媒とは、光を照射されると光触媒活性を発現して酸化作用を示し、有機物や空気汚染物質、更には細菌などを酸化分解することが知られており、また、光反応に基づいて表面を高度に親水化し、脱臭、防汚、抗菌、殺菌、有害物質除去、防曇作用などを発現することも知られているものである。
【0004】
【特許文献1】特開平9−180526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、研究を重ねた結果、従来よりも埃や汚れが付着しにくく、反射率が長期に渡り低下しにくい反射シートを開発した。
【0006】
そこで、本発明は、従来よりも埃や汚れが付着しにくく、反射率が長期に渡り低下しにくい反射シート、該反射シートを積層した反射板、及び該反射板を備えた電飾ディスプレイを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の反射シートは、可視光領域の光の反射率95%以上を有する樹脂基材上に、平均粒径500nm以下の光触媒粒子で光触媒層を形成したことを特徴とする。
【0008】
このようにすることにより、従来よりも埃や汚れが付着しにくく、反射率が長期に渡り低下しにくいものとなる。また、光触媒粒子の平均粒径を500nm以下とすることにより、樹脂基材の反射率を低下させることなく光触媒層を形成することができる。
【0009】
上記反射シートは、樹脂基材と光触媒層との間に、保護層を形成するのが好ましい。
これにより、樹脂基材が光触媒層の光触媒作用により侵食されるのを保護することができる。
【0010】
上記反射シートの樹脂基材は発泡ポリエチレンテレフタレートとし、光触媒層は酸化チタンからなるものとするのが好ましい。
【0011】
このような組合せとすることで、本発明の効果をよりよく発揮するものとなる。
【0012】
上記反射シートは、金属板の表面に積層して反射板とすることができ、また、該反射板を用いて照明器具や、表示板の裏面から蛍光灯により照明して表示する、いわゆる電飾ディスプレイを構成することができる。
【0013】
なお、一般的に「シート」とは、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、「フィルム」とは、JISにおける定義上、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが、任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かではなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとし、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、実施形態に基づいて本発明を説明する。
但し、以下に説明する実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明の範囲が以下の実施形態に制限されるものではない。
【0015】
本発明の一実施形態の反射シートは、可視光領域の光の反射率95%以上を有する樹脂基材上に光触媒層を備えたものである。
【0016】
(樹脂基材)
樹脂基材としては、可視光領域(400nm〜800nm)の光の反射率95%以上を有する、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂シートを用いることができる。
なかでも、発泡ポリエチレンテレフタレート(発泡PET)のシートを用いるのが好ましい。
【0017】
樹脂基材の厚さは、特に限定するものではないが、12μm〜500μm、好ましくは25μm〜300μm、より好ましくは50μm〜200μm以下とする。
【0018】
(光触媒層)
光触媒層は、光触媒粒子を含むコート液を樹脂基材上に塗布し、乾燥させて形成することができる。但し、この形成方法に限定するものではない。
【0019】
(光触媒粒子)
光触媒粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉛、酸化第二鉄、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム等の金属酸化
物粒子を挙げることができる。これらに、Fe,Co,Cu,Zn,Ru,Rh,Pd,Ag,Pt,Au等を付加してもよい。中でも、酸化チタンが、無害で化学的に安定しておりかつ安価であるため好ましい。酸化チタンは、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ブルックライト型二酸化チタンのいずれも使用できるが、光触媒反応の高活性なアナターゼ型二酸化チタンを主成分とするのが好ましい。
光触媒粒子の粒径は、動的散乱測定法による平均粒径が1nm〜500nm、好ましくは5nm〜300nm、より好ましくは10nm〜100nmのものを用いることができる。
平均粒径が500nmを超えると反射率は小さくなり、また、平均粒径が1nm以下より小さいと反射率は高くなるが、光触媒作用が低下するので上記の範囲とするのがよい。
なお、本発明では、平均粒径とは体積平均粒径を示す。
【0020】
(コート液)
コート液は、有機溶媒及び水を含む溶媒と光触媒粒子とを混合して調整したものを用いることができ、有機溶媒及び水を含む溶媒にシランカップリング剤等の無機バインダーを含ませるのが好ましい。無機バインダーは、光触媒粒子の密着を高め、光触媒による層の強度を向上させることができる。
【0021】
有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の一価低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、及びそれらエステルであるセルソルブ、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、イソブタノール、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等を用いることができる。中でも、一価低級アルコールのイソプロピルアルコール又はエチルアルコールを用いるのが好ましい。
【0022】
無機バインダーとしては、シリカ化合物を用いるのが好ましく、そのシリカ化合物としては、4,3,2官能のアルコキシシラン、およびこれらアルコキシシラン類の縮合物、加水分解物、シリコンワニス等が使用できる。3,2官能のアルコキシシランは、一般的にはシランカップリング剤と呼ばれることも多いが、本発明ではシリコン1分子に1つ以上のアルコキシ基が結合している化合物をアルコキシシランと称する。
【0023】
具体的に例示すると4官能アルコキシシランとしてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、3官能のアルコキシシランとしてはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドプロポキシトリメトキシシラン、グリシロプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2官能のアルコキシシランとしてはジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0024】
縮合物としては、エチルシリケート40、エチルシリケート48、メチルシリケート51等の4官能アルコキシシランの縮合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
加水分解物としては、アルコキシシラン類を有機溶媒と水及び触媒を使用して加水分解させたものが使用できる。これらのシリカ化合物の内、特にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、エチルシリケート40、エチルシリケート48、メチルシリケート51及びそれらの加水分解生成物であるアルコール性シリカゾルは膜を強固に固定でき、かつ比較的安価であることから特に好適である。かかるアルコール性シリカゾルの製造方法は、特に限定されることはなく、コート液内でアルコキシシランの加水分解反応を行ってもよいし、アルコキシシランを加水分解又は部分加水分解し、既にアルコール性シリカゾルとなったものをコート液に添加してもよい。
【0026】
コート液は、溶媒に粉末状の光触媒粒子を混合して調整することができるが、スラリー状或いはゾル状に調整した光触媒粒子を混合して調整することもできる。これらは市販の二酸化チタンゾルなどを用いてもよい。
【0027】
コート液の組成は、溶媒80〜99重量部に対して光触媒20〜1重量部、中でも溶媒90〜99重量部に対して光触媒10〜1重量部、中でも特に溶媒95〜99重量部に対して光触媒5〜1重量部とするのが好ましい。
【0028】
光触媒層は、例えば、コート液を樹脂基材上に直接塗布する方法や光触媒層転写フィルムを作製して転写法によって樹脂基材に転写する方法などにより形成できる。
【0029】
樹脂基材上に直接塗布する方法による場合、塗布する手段は、特に限定するものではないが、例えば、グラビアコート、スプレーコート、ディップコート等、各種の塗布方法を選択しうる。中でも、グラビアロールコータを用いるのが好ましい。コート液の塗布は、一回のみならず、複数回行ってもよい。
【0030】
コート液を塗布した後、加熱乾燥させて光触媒層とすることができる。この際の乾燥加熱は、加熱温度80〜150℃、乾燥熱風風速1〜20m/秒、乾燥時間10〜120秒の条件で行うのがよい。
光触媒層の乾燥が完了した後、所要時間エージングを行うのが好ましい。これにより、コーティングした光触媒層の剥離強度を向上させることができる。エージングは、30〜60℃で30時間以上行うのが好ましい。
【0031】
光触媒層の厚さは、0.01μm〜1.0μm以上、好ましくは0.05μm〜0.5μm、より好ましくは0.1μm〜0.2μmとする。
【0032】
光触媒層転写フィルムを作製する場合、光触媒層転写フィルムは、例えば、剥離性保護フィルム上にコート液を塗布して光触媒層を形成し、その上に接着層を形成して作製することができる。
塗布する手段は、特に限定するものではないが、例えば、グラビアコート、スプレーコート、ディップコート等、各種の塗布方法を選択しうる。中でも、グラビアロールコータを用いるのが好ましい。コート液の塗布は、一回のみならず、複数回行ってもよい。
【0033】
剥離性保護フィルム(シートも含む)としては、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレンその他の合成樹脂の単層或いは複数層からなるフィルムが好適に用いることができる。紙類を用いることもできる。
剥離性保護フィルムの面上には、適宜表面処理を施してもよい。例えば、光触媒層との剥離性を向上させるため、シリコン、フッ素その他の離型剤を塗布して表面処理を施すことができる。
【0034】
(接着層)
接着層は、樹脂基材に接着させるための層であり、樹脂基材の材質に応じて適宜選択することができる。例えば、アクリル樹脂、アクリル変性シリコン樹脂化合物、シリコン変性アクリル樹脂化合物などを主要成分として含む接着剤を用いて形成することができる。
塗布する手段は、特に限定するものではないが、例えば、グラビアコート、スプレーコート、ディップコート等、各種の塗布方法を選択しうる。中でも、グラビアロールコータを用いるのが好ましい。
【0035】
接着層の厚さは、特に限定するものではないが、0.1μm〜50μm、好ましくは0.5μm〜20μm、より好ましくは1μm〜10μmとする。
なお、接着層(接着剤)内に光触媒粒子を含有させてもよい。
【0036】
樹脂基材上に光触媒層を形成する際、樹脂基材と光触媒層との間に、光触媒層の光触媒作用から基材を保護する保護層を形成してもよい。保護層は、基材と光触媒層との密着性を強固とすると共に、光触媒作用によって基材表面が侵されることから保護する役割を果たすことができる。
【0037】
(保護層)
保護層は、無機酸化物粒子、シリコン樹脂、シリコン樹脂の前躯体、シリカ前躯体などから形成することができる。アクリルシリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂、アルコキシランのいずれか或いはこれらの2種類以上の組み合わせから形成するのが好ましい。
保護層を形成する手段は、特に限定するものではないが、例えば、グラビアコート、スプレーコート、ディップコート等の各種塗布方法を選択することができる。
【0038】
保護層の厚さは、特に限定するものではないが、0.01μm〜50μm、好ましくは0.05μm〜20μm、より好ましくは0.1μm〜10μmとする。
【0039】
樹脂基材上に形成した光触媒層は、メチレンブルー分解指数に換算して1(μモル/分)〜50(μモル/分)、好ましくは5(μモル/分)〜30(μモル/分)以下を示すのがよい。メチレンブルー分解指数は、光触媒の配合量を変えることにより調整できる。
なお、メチレンブルー分解指数は、以下のように測定できる。
【0040】
<メチレンブルー湿式分解速度測定法による分解指数評価>
「光触媒製品フォーラム」策定によるメチレンブルー湿式分解速度測定法に従い評価をする。測定の詳細手順は次の通りである。
なお、屋内用の防汚効果を発現させる為にはメチレンブルー分解指数としては1.0以上を有することが望ましいが、分解指数が高くなる程、光触媒の持つ分解力も高いことを示すので、長期に渡る耐久性の観点からは30以下が好ましい。
【0041】
〔測定方法〕
詳細は、「光触媒製品フォーラム」が策定する「光触媒製品における湿式分解性能試験方法(2004.05.28改訂)」を参照されたい。
【0042】
被分解有機物としてメチレンブルー(C1618S・Cl)を用いる。
ブラックライト蛍光ランプには、ピーク波長352nmで半値幅が40nmの光を放出するブラックライト蛍光ランプ(蛍光体としてBaSi:Pbを使用し、可視光吸収ガラス管を使用した蛍光ランプ)であって、直管形20Wのものを用いる。
紫外線照度計としては、ピーク感度波長が360nmである受光器を備えた紫外線照度計(株式会社トプコン製「UVR−2 (受光器UD−36)」)を用いる。
【0043】
1、試験片の調製
製品の平らな部分を60±2mm角の大きさに切り取り、これを標準の大きさの試験片とする。試験片3個と、同じ大きさのガラス板1個を準備する。
2、試験片の清浄化
試験片全面を溶剤(エタノール)で洗浄した後、精製水で洗浄し、標準状態の実験室で24時間以上乾燥させる。洗浄後の試験片に、ブラックライト蛍光ランプにて、1mW/cm以上の紫外線を24時間以上照射し、洗浄後も残留した有機物汚れを光触媒により分解させる。
3、メチレンブルー吸着液、メチレンブルー試験液の調製
メチレンブルー三水和物を精製水に完全に溶解させ、希釈する。
メチレンブルー吸着液は、0.02±0.002mmol/L、メチレンブルー試験液は0.01±0.001mmol/Lの濃度とする。
4、試験片の実験準備
試験セルの、試験片と接する面にシリコーングリースを塗布し、全ての試験片の試験面(;光触媒加工が施されている表面)の中央に置いて、上から押しつけて固定する。
5、紫外線強度の調整
ガラス板に試験セルを固定し、この試験セル内にメチレンブルー試験液35.0±0.3molを入れ、乾燥を防ぐためにカバーガラスで蓋をする。
試験セルの中心と紫外線照度計受光部の中心とが一致するように、紫外線照度計をあて、カバーガラス、メチレンブルー試験液、ガラス板を通過した紫外線の強度を測定し、試験片表面での紫外線強度が1.0±0.05mW/cmとなるような、すなわち式(1)を満たすようなブラックライト蛍光ランプと試験片の位置関係を決める。同時に試験する試験片の個数分について、試験片表面での紫外線強度が1.0±0.05mW/cmとなるような位置関係を決める。
【0044】
I(mW/cm)×100/Tglass(%)=1.0(mW/cm) ・・・式(1)
【0045】
ここで、I:紫外線照度計の読み(mW/cm)、Tglass:ガラス板の360nmにおける透過率(%)
カバーガラス:カバーガラスの材質や厚みは特に規定しないが、紫外線を通しやすくするためには薄い物が望ましい。
カバーガラスの大きさは、50±2mm角の正方形を標準とする。
ブラックライト蛍光ランプ:ブラックライト蛍光ランプは、電源を入れた直後は出力が安定しないため、試験20分以上前に電源を入れて、試験開始時には安定させておく。
6、メチレンブルーの吸着
3個の試験片上の試験セルの中に、メチレンブルー吸着液35.0±0.3mlを注入してカバーガラスで蓋をし、光が照射されないように注意を払いながら、吸着飽和状態に達するまでメチレンブルーを吸着させた。12時間吸着後、液を取り出し、吸光スペクトルを測定する。
この吸光度がメチレンブルー試験液の吸光度より高い場合は、吸着を完了する。
吸光度がメチレンブルー試験液の吸光度より低い場合は、メチレンブルー吸着液を新しいもの(濃度0.02±0.002mmol/l)に交換し、再度12時間吸着して吸光スペクトルを測定する。この様にして、吸着操作後のメチレンブルー吸着液の濃度がメチレンブルー試験液の濃度より高くなるまで、繰り返す。
なお、吸光スペクトルの測定は、対照セルに精製水を入れて、測定を行なう。測定セルに必要な分量のメチレンブルー試験液または吸着液をピペットで試験セルから採取し、600〜700nmの波長域での吸光スペクトルを1nm間隔で分光光度計にて測定する。
7、初期吸光スペクトルの測定
メチレンブルー試験液の吸光スペクトルを測定し、これを初期吸光スペクトルとする。
8、紫外線照射によるメチレンブルー分解
メチレンブルーの吸着が終了したら、試験片上の試験セル中のメチレンブルー吸着液を取り出し、新しいメチレンブルー試験液35.0±0.3mlを注入する。全ての試験片に、1.0±0.05mW/cmの紫外線を20分照射する。照射後直ちに、メチレンブルー試験液の吸光スペクトルを測定する。
このような手順で紫外線を20分照射して吸光スペクトルを測定する作業を、照射時間の合計が3時間になるまで(9回)繰り返す。
【0046】
(反射板)
反射シートを、金属板上に積層して反射板を形成することができる。反射シートを金属板上に積層する方法は、特に限定するものではないが、例えば、金属板上に接着剤を塗布し、反射シートの樹脂基材側を貼付することにより、反射板を形成することができる。
【0047】
(金属板)
金属板としては、鋼板、ステンレス鋼板、アルミ板などを用いることができ、これらは、市販されているものを用いることができる。
【0048】
(接着剤)
接着剤は、金属板の材質に応じて適宜選択することができる。例えば、アクリル樹脂、アクリル変性シリコン樹脂化合物、シリコン変性アクリル樹脂化合物などを主要成分として含むものを用いて形成することができる。
接着剤を塗布する手段は、特に限定するものではないが、例えば、グラビアコート、スプレーコート、ディップコート等、各種の塗布方法を選択しうる。中でも、グラビアロールコータを用いるのが好ましい。
【0049】
塗布した接着剤の厚さは、特に限定するものではないが、0.1μm〜50μm、好ましくは0.5μm〜20μm、より好ましくは1μm〜10μmとする。
【0050】
反射板は、電飾ディスプレイや蛍光灯などに用いることができ、これらは、光触媒作用により汚れや埃が付着するのを防止できるため、長期に渡り高い反射率を維持できるものとなる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例を挙げて説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に示さない限り「%」は「重量%」を示す。
【0052】
(実施例1)
樹脂基材として発泡PETである東レ(株)社製「ルミラーE60L」を用い、この上に保護層として多木化学(株)社製「タイノックプライマーA」(固形分としてシリコン変性樹脂20%、コロイダルシリカ30%に溶媒としてエタノール20%、2−プロパノール20%、純粋10%を配合したもの)を♯230グラビアロッドを用いたグラビアコーターにより塗布した後、乾燥させ、その上にコート液を♯230グラビアロッドを用いたグラビアコーターにより塗布し、乾燥させて光触媒層を形成し、反射シートとした。なお、コート液としては、平均粒径20nmの酸化チタン(TiO)を含み、TiO濃度5%の多木化学(株)社製「CZP−MP6」を用いた。
乾燥後の保護層は0.2μm、光触媒層は0.2μmの厚さであった。
【0053】
(実施例2)
樹脂基材として発泡PETである東レ(株)社製「ルミラーE60L」を用い、この上に保護層として多木化学(株)社製「タイノックプライマーA」(固形分としてシリコン変性樹脂20%、コロイダルシリカ30%に溶媒としてエタノール20%、2−プロパノール20%、純粋10%を配合したもの)を♯230グラビアロッドを用いたグラビアコーターにより塗布した後、乾燥させ、その上にコート液を♯230グラビアロッドを用いたグラビアコーターにより塗布し、乾燥させて光触媒層を形成し、反射シートとした。なお、コート液としては、平均粒径300nmの酸化チタン(TiO)を含み、TiO濃度10%の多木化学(株)社製「CZP−MP3」を用いた。
乾燥後の保護層は0.2μm、光触媒層は0.2μmの厚さであった。
【0054】
(比較例1)
発泡PETである東レ(株)社製「ルミラーE60L」を比較対象として用いた。
【0055】
(比較例2)
樹脂基材として発泡PETである東レ(株)社製「ルミラーE60L」を用い、この上に保護層として多木化学(株)社製「タイノックプライマーA」(固形分としてシリコン変性樹脂20%、コロイダルシリカ30%に溶媒としてエタノール20%、2−プロパノール20%、純粋10%を配合したもの)を♯230グラビアロッドを用いたグラビアコーターにより塗布した後、乾燥させ、その上にコート液を♯230グラビアロッドを用いたグラビアコーターにより塗布し、乾燥させて光触媒層を形成し、反射シートとした。なお、コート液としては、平均粒径600nmの酸化チタン(TiO)を含み、TiO濃度10%の多木化学(株)社製「CZP−MP1」を用いた。
乾燥後の保護層は0.2μm、光触媒層は0.2μmの厚さであった。
【0056】
(反射率測定)
上記実施例1,2及び比較例1,2について、反射率を測定した。
反射率は、分光光度計(「U−4000」(株)日立計測器サービス製)を用い、これに積分球を取り付け、波長300〜800nmの光に対する反射率を測定した。なお、アルミナ白板の反射率を100%として測定した。
その結果を図1及び表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
図1及び表1に示すように、実施例1,2の反射率(曝露前)は、樹脂基材の反射率(比較例1参照)からほとんど変化しなかった。しかし、平均粒径600nmの光触媒粒子で光触媒層を形成した比較例2は、反射率が低下した。
【0059】
(曝露試験)
実施例1,2及び比較例1,2を用いて曝露試験を行った。
実施例1,2及び比較例1,2を21cm×30cmの大きさに裁断し、これを2台のフォークリフトが1時間あたり10回行き来する箇所に1ヶ月間(30日間)放置した。
空気中の埃量は、RION社製パーティクルカウンター「KR−11A」により測定したところ10〜1010(粒径0.3μm〜0.5μm)個/リットルであった。
なお、試験期間中の気温は20〜30℃、湿度40〜70%であった。
その結果を、上記表1に示す。
【0060】
(表面状態)
曝露試験後の表面状態を目視で観察した。
その結果を、上記表1に示す。
(結果)
実施例1,2及び比較例2では、曝露試験後でも波長800nmにおける反射率に変化はなかった。しかし、比較例1では、曝露試験後の波長800nmにおける反射率は大きく低下した。
また、実施例1,2及び比較例2では、曝露試験後の表面には埃が付着していなかった。しかし、比較例1では、面全体に渡って斑点状の埃が付着していた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例1,2及び比較例1,2の曝露試験前の反射率を示し、縦軸は反射率(%)、横軸は波長(nm)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光領域の光の反射率95%以上を有する樹脂基材上に、平均粒径500nm以下からなる光触媒粒子で光触媒層を形成した反射シート。
【請求項2】
樹脂基材と光触媒層との間に、保護層を形成した請求項1に記載の反射シート。
【請求項3】
樹脂基材は、発泡ポリエチレンテレフタレートである請求項1又は2に記載の反射シート。
【請求項4】
光触媒層は、酸化チタンからなる請求項1〜3のいずれかに記載の反射シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の反射シートを金属板に積層した反射板。
【請求項6】
請求項5に記載の反射板を備えた電飾ディスプレイ。
【請求項7】
請求項5に記載の反射板を備えた照明器具。

【図1】
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【公開番号】特開2007−187795(P2007−187795A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4702(P2006−4702)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】