説明

反射光ムラ測定方法および装置

【課題】本発明の目的は、試料面上の光沢ムラ特性を評価できる反射光ムラの測定方法および装置を提供することである。本発明により、反射光ムラの簡易で精度良い測定方法および装置を提供する。
【解決手段】平行光を試料に入射する入射工程と、その試料の表面をテレセントリック光学系により測定する受光工程と、その入射工程の光軸かつ/またはその受光工程の光軸をその試料上の1点を中心として回転させその試料の法線に対して任意の角度に設定する工程と、その試料の反射光分布を測定する工程と、を含むことを特徴とする反射光ムラ測定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やプラスチック等の画質・質感に影響を与える、試料の反射光の特性を評価するための鏡面反射光ムラ測定方法および装置に関するものである。また、試料の鏡面反射光分布を簡易に短時間で測定、解析する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここでいう試料とは、紙、PET、RC紙(写真用支持体)、木、プラスチック、コンクリート、布、皮、金属等の面を形成できる支持体を総称する。また、この試料にインキを部分的に、または全面に塗布した印刷物にも適用できる。さらにこの技術は人間の皮膚や粘膜の測定にも適用可能である。ここでは試料として紙を、印刷物として紙のオフセット印刷物を例に説明する。
【0003】
紙に入射した光は表面で反射され、内部で散乱・反射され、また、入射光の一部は吸収される。このような光の反射、散乱、吸収は紙で発生する光の物理的現象である。特にグロスコート紙や写真用インクジェット用紙のような光沢の高い紙において、紙の表面で起きる鏡面反射は、人間が感じる光沢として、画質や質感といった見た目に強い影響を与える。
【0004】
鏡面反射とは、試料表面の法線から各々反対側に同じ角度で光の入射と、受光を行う反射を指し、正反射とも呼ばれる。
【0005】
また、光沢とは、主として反射光の強さによって定められる視知覚の属性である。多くの場合、光沢ムラと反射光分布は同義語であるが、光沢ムラには主観的な評価が含まれている場合がある。
【0006】
鏡面反射光や、光沢を定量的な測定で評価する試みが従来から行われてきた。鏡面光沢を測定する方法として、JIS Z8741鏡面光沢度−測定方法、JIS P8142紙及び板紙−75度鏡面光沢度の測定方法、およびこのP8142(平行光方式)等が知られている(非特許文献1、2)。測定される値は、この入射光の総量として測定される。測定結果は1つの測定値、ここでは光沢度として算出される。一般にこれら鏡面光沢を測定する方法の受光器は、フォトセル、光電管等の光の強さを電気信号に変える光電変換を行うものが用いられる。これらは試料の広いエリアの表面の反射光量を総量として測定する方法であり、微小エリア毎の分布の違いである鏡面反射光ムラ(光沢ムラ)は測定できない。
【0007】
紙のような試料では、その表面が完全に平滑であるわけではなく、従って、その法線も面全体の平均的な法線という考え方に加えて、微小エリアで見ればその微小エリアの面毎に法線は多少異なる。反射光においても、鏡面反射角度をピークに鏡面反射角度前後の角度でも強い反射光が得られることが知られている。
【0008】
このように入射角と受光角を各々変えて反射光量を測定する技術として、変角光度が知られている。変角光度を測定する装置として、ゴニオフォトメーターが知られている。測定される値は、設定した入射角度と設定した受光角度での反射光の総量として測定される。測定結果は1つの測定値、ここでは変角光度として算出される。一般にこれら鏡面光沢を測定する方法を任意の角度に拡張したものである。これらは試料の広いエリアの表面の反射光量を総量として測定する方法であり、微小エリア毎の分布の違いである反射光ムラ(光沢ムラ)は測定できない。
【0009】
従来技術で測定できる光沢の指標としては上記以外にも、写像性(像鮮明度)などがある。また、対比光沢度のように、鏡面光と拡散光の比で表す指標などの複合的な評価値がある。
【0010】
紙の光沢は、例えば上記の測定値で評価している。しかし、これら評価方法はある程度大きな範囲(例えば数mmφ〜数十mmφ)の反射光の総量を測定し評価している。一方、紙表面の光沢は決して完全に均一ではなく、ムラが存在する。特にグロスコート紙や写真用インクジェット用紙のような光沢の高い紙において、紙の表面で起きるこれら鏡面反射光ムラ(光沢ムラ)は、人間が感じるムラとして、画質や質感といった見た目に強い影響を与える。
【0011】
反射光ムラ(光沢ムラ)とは、試料の微小エリアの反射光量の分布である。ここで微小エリアとは、例えば1mmφ以下である。ただし、後述するように、鏡面反射の測定では光を斜めから入射、受光するため、1mmφの光束を入射、受光した場合でも試料面上でのエリアは広がってしまう。ここで示した微小エリアとは、例えば1mmφ以下の光束を入射、受光することを意味する。
【0012】
微小エリアの鏡面反射光ムラ(光沢ムラ)を測定する従来技術として、特許文献1には、約0.4mmφの光束(スポットサイズ)を紙試料の法線に対して75度で入射し、鏡面反射光を75度方向から測定する方法が報告されている。この測定装置または試料をXYステージ等で移動させることで鏡面反射光ムラ(光沢ムラ)が測定できる。しかし、この方法では試料上の測定範囲すべてに移動しながら測定するため、測定が簡易とはいえない。また、光束(スポットサイズ)を小さくすることが難しい。例えば、0.1mmφ以下の光束(スポットサイズ)での測定は装置製作上の問題から難しい。
【0013】
一方、CCDカメラのような2次元の光量分布が測定できる撮像装置を用いれば、試料上の測定範囲すべてを微小エリアの光量分布として測定することは容易である。紙の汚れや印刷の濃度のムラは、試料表面をCCDカメラのような2次元の光量分布が測定できる撮像装置で測定し解析できる。しかし、これは拡散反射の光を測定しており、例えば試料法線方向斜め45度から照明し、法線方向(0度)からCCDカメラで測定する方法が広く用いられてきた。簡単に説明すれば、試料をカメラで撮影(測定)し、各点の光量を読み出せばよい。
【0014】
しかし、一般的な照明装置の光は、その光束は光源から拡がっていく。このため、測定する試料の各位置に入射する光束の向き(入射角度)は異なってしまう。
【0015】
また、CCDカメラ、カメラとレンズシステムには画角があり、物体(試料)の各位置と撮像装置の受光センサ上の各位置を結ぶ光束の向き(受光角度)は異なってしまう。
【0016】
このように、測定する試料上の入射と受光の関係が位置毎に異なり、目的とする反射の条件を満たすのは、装置を設定した試料の1点(中央)のみとなる。つまり、照明とカメラを鏡面反射角度に設置して測定する場合、鏡面反射の条件を満たすのは、厳密には、照明の光軸とカメラの光軸が試料上で交わる点のみとなる。
【0017】
さらに、反射光ムラの測定目的には、反射光ムラのパターンの測定がある。紙の表面の光沢に見られるムラのパターンは、種々の紙により異なる。一般に、反射光ムラは鏡面反射角度(正反射角度)のみで測定されてきた。
【0018】
このように、試料の反射光ムラを面として測定することは困難であった。また、より評価しやすい反射光ムラのパターンを測定する技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平4−20845号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】JIS Z8741鏡面光沢度−測定方法
【非特許文献2】JIS P8142紙及び板紙−75度鏡面光沢度の測定方法(平行光方式)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、従来の測定方法では得られなかった反射光ムラ(光沢ムラ)を面として簡易に精度良く測定・評価できる測定方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は上記に鑑み鋭意研究した結果、本発明の反射光ムラ測定方法および装置を発明するに至った。
【0023】
すなわち、(1)平行光を試料に入射する入射工程と、その試料の表面をテレセントリック光学系により測定する受光工程と、その入射工程の光軸かつ/またはその受光工程の光軸をその試料上の1点を中心として回転させその試料の法線に対して任意の角度に設定する工程と、その試料の反射光分布を測定する工程と、を含むことを特徴とする反射光ムラ測定方法である。
【0024】
(2)その入射工程の光軸とその受光工程の光軸を0度より大きい鏡面反射角度とする工程と、鏡面反射角度からその入射工程の光軸またはその受光工程の光軸の一方の角度を変化させてその試料の反射光分布を測定する工程と、を含むことを特徴とする上記(1)記載の反射光ムラ測定方法である。
【0025】
(3)平行光を試料に入射する入射手段と、その試料の表面をテレセントリック光学系により測定する受光手段と、その入射手段の光軸かつ/またはその受光手段の光軸をその試料上の1点を中心として回転させその試料の法線に対して任意の角度に設定する手段と、その試料の反射光分布を測定する手段と、を含むことを特徴とする反射光ムラ測定装置である。
【0026】
(4)その入射手段の光軸とその受光手段の光軸を0度より大きい鏡面反射角度とする手段と、鏡面反射角度からその入射手段の光軸またはその受光手段の光軸の一方の角度を変化させてその試料の反射光分布を測定する手段と、を含むことを特徴とする上記(3)記載の反射光ムラ測定装置である。
【0027】
平行光とは、光が光軸に平行である光束である。平行光は光源とコリメータレンズ光学系を用いて得られる。
【0028】
テレセントリック光学系とは、光軸と主光線が平行とみなせるようにした光学系である。テレセントリック光学系には、物体側テレセントリック光学系、像側テレセントリック光学系および両側テレセントリック光学系がある。本発明では、物体側テレセントリック光学系または両側テレセントリック光学系を用いる。
【0029】
テレセントリック光学系では、画角が限り無く0度に近く、ディストーション(歪曲収差)が小さいので、被写体の寸法や位置を正確に捉えることが可能である。つまり、通常のレンズと異なり主光線が光軸に平行なので、物体の上下ブレが生じた場合でも撮影されるサイズが変動しない。このため、主に測量やゲージ用途に用いられている。
【0030】
本発明では、入射光を平行光としたため、入射光の角度はすべて光軸と等しく、試料の測定面上のすべての位置で一定となる。さらに、受光をテレセントリック光学系としたことで、受光の角度もすべて光軸と等しく、試料の測定面上のすべての位置で一定となる。このため、この方法を用いた測定では試料の測定位置すべてで同じ条件の反射となる。この方法で測定された各位置の光量は一定角度条件の反射光を意味し、反射光分布が面として一度に測定でき、従来の測定方法では得られなかった反射光ムラ(光沢ムラ)を簡易に精度良く測定・評価できる測定方法および装置を提供できる。
【0031】
さらに本発明では、受光センサとして2次元のCCD撮像装置等を用いることができ、これらはセンサとしてひとつひとつは微小な画素が多数配列しており、テレセントリック光学系の倍率等の設定で、試料上の各微小エリアとして数百μmφから数μmφ程度まで測定できる。このように、これまで難しかった微小エリア毎の反射光を簡易に精度良く測定できる。
【0032】
テレセントリック光学系には同軸落射照明テレセントリック光学系が知られている。これは、撮影する方向(光軸)から(同軸落射)照明することで測定物に影をつくらないための方法である。ここで目的とする紙などの反射光ムラ測定は、その入射工程の光軸とその受光工程の光軸がその試料の法線に対して各々0度より大きい角度をとることが好ましい。
【0033】
紙の光沢度測定に準拠するためには、入射角度は75度、受光角度は75度の位置関係が好ましい。また、プラスチックの光沢度測定に準拠するためには、入射角度は60度、受光角度は60度の位置関係が好ましい。
【0034】
鏡面反射光ムラは鏡面反射光分布であり、これが測定できると、これらを処理することで人間が感じる主観的な光沢感を評価することができる。
【0035】
さらに、鏡面反射光分布は試料の微小エリアの鏡面反射光の集まりであるため、これらをエリアで平均すれば試料の鏡面反射光平均値を導き出せる。これは光沢の指標となる。
【0036】
反射光分布を測定する目的には、鏡面反射角度での鏡面反射光ムラ、鏡面反射光分布があるが、一方で、光沢ムラのパターンを得る目的がある。このように光沢ムラのパターンを評価する場合、入射の光軸と受光の光軸は、鏡面反射角度の条件よりも評価しやすい条件が存在する場合がある。
【0037】
光沢ムラのパターンを評価しやすい条件は、鏡面反射角度の条件に近く、所望の鏡面反射角度において、その入射の光軸または受光の光軸の角度を調整することで得られる。
【0038】
鏡面反射角度から入射の光軸または受光の光軸を変化させるが、これらは、紙であれば鏡面反射角度±10度以内である。
【0039】
入射工程の光軸または受光工程の光軸の一方を設定値に固定して、もう一方を鏡面反射角度から離れる方向に移動し、反射光ムラを測定できる。ここで、入射工程の光軸と受光工程の光軸を同時に動かすことはない。
【0040】
紙の反射光平均値は、鏡面反射光平均値をピークにその前後の角度で減少する。この角度範囲は紙の種類の違いにより±数度から±10度程度まであり、所望の紙サンプルの光沢ムラのパターンを評価したい場合の反射光分布測定の角度条件を決定することで、本発明は簡易で精度の高い測定方法、測定装置を提供することができる。
【0041】
このように、本発明の反射光ムラ測定方法および装置は、1回の測定で試料の広い面積の反射光ムラ(光沢ムラ)、特に鏡面反射光分布を測定でき、さらに光沢ムラパターンが判別しやすい反射光分布が測定できる。これにより測定の効率と精度を上げることができる。
【0042】
反射光ムラから、人間が感じる主観的な光沢感を評価する指標を新たに導き出すこともできる。
【0043】
本発明の反射光ムラ測定方法および装置は、人間の皮膚や粘膜の反射光ムラを測定することも可能であり、医療や化粧品の開発において有用な情報を得ることを可能とする。
【0044】
特に、本発明の反射光ムラ測定方法および装置を用いることで、所望の反射光ムラを持つ材料の開発において有用な情報を得ることを可能とする。
【発明の効果】
【0045】
本発明により、試料の反射光ムラを直接求めるための簡易で精度の高い測定方法を提供することができる。この測定方法により、反射光の試料面上でのムラが測定でき、印刷用紙や印刷方式の開発において有用な情報を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】反射光ムラ測定方法および装置の全体概略図。
【図2】入射装置の構成図。
【図3】受光装置の構成図。
【図4】RCグロスIJ紙の反射光ムラの測定結果。
【図5】グロスコート紙の反射光ムラの測定結果。
【図6】上質紙の反射光ムラの測定結果。
【図7】反射光ムラの測定結果(データ合成の場合)。
【図8】角度に対する反射光平均値と反射光分布の標準偏差を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の反射光ムラ測定方法および装置を、図面を使って説明する。本発明の反射光ムラ測定方法および装置は、例えば図1のように構成される。
【0048】
図1は、測定する試料2の面の法線に対して、各々反対側に等しい角度で鏡面反射の関係となるように、入射装置1と受光装置3を設置するものである。試料2の法線方向を0度とし、入射装置1の光軸が試料法線と成す角を入射角、受光装置3の光軸が試料法線と成す角を受光角とする。
【0049】
入射装置1と受光装置3は試料2の1点を軸に回転できる機構を有する。これにより、入射装置1と受光装置3は試料2の法線に対して任意に入射角と受光角を設定できる。
【0050】
紙の鏡面反射光分布を測定する場合、JIS光沢度測定に準拠するためには、入射装置1は75度、受光装置3は75度の位置関係が好ましい。また、プラスチックの光沢度測定に準拠するためには、入射装置1は60度、受光装置3は60度の位置関係が好ましい。
【0051】
例えば、入射装置1を入射角75度、受光装置3は法線の反対側に受光角75度に設定する。
【0052】
入射角と受光角は試料に対して鏡面反射の関係とするが、紙のように完全な鏡面ではない試料では、鏡面反射はその前後の角度に分布することが知られている。このため、入射角または受光角は鏡面反射角度前後に数度ずらして設定することが可能である。例えば、入射装置1を75度、受光装置3は法線の反対側に70度、71度、72度、73度、74度、75度というように各々測定できる。
【0053】
入射装置1は、例えば図2に示すように光源11、点像チャート12、そして点像を光源として平行光を生成するコリメータレンズ13、およびその他複数のレンズで構成することができる。
【0054】
点像チャート12は、例えば金属板に穴を空けて作成することができる。ガラス板に金属蒸着し、点像のみ光を透過させるように作成することができる。
【0055】
図2に示した入射装置1は、セットした点像チャート12をコリメータレンズ13で平行光とし、この平行光を試料2に入射させる。
【0056】
試料2は、図1に示すようにサンプルベッド21上にセットされる。サンプルベッド21は、試料が透明であったり、薄いために透けたりする場合に光を反射しないように加工されていることが望ましく、黒塗装で製作したり、試料2に接する面にライトトラップや黒のビロード等を設けることが望ましい。
【0057】
サンプルベッド21は、精度良く移動できることが望ましい。これは、XYステージで構成できる。特に、入射・受光の光軸方向(Y軸と呼ぶ)には移動できることが望ましい。本発明では、試料の広いエリアの鏡面反射ムラが一度に測定できるが、これは試料面上で焦点が合っている範囲においてである。受光角75度のような受光条件では、カメラ撮影をかなり斜めから撮影した場合に相当し、焦点の合うのは中央の一部となる。このため、試料を焦点の合う範囲に順次移動させることで、さらに広いエリアの鏡面反射光ムラが測定できる。
【0058】
受光装置3は、例えば図3に示すように、試料2に入射した照明光の鏡面反射光を受光し、レンズ群31で結像させる。結像した像の光量分布を受光センサ33に結像させ光量分布を測定する。受光センサ33はCCDセンサや撮像管のようなアレイ型のセンサを用いてこの光量分布を2次元(面、画像)のデータとして取り込む。受光センサ33は装置としてCCDカメラを用いることができる。
【0059】
また、受光センサ33はフォトセルや光電管等を用いた微小面積の点のデータを測定する光量測定器を用いる場合には、光量分布を測定するために測定位置を変えて測定する。例えば、測定位置を変える方法としては、プログラムで自動的に可動させることができるXYステージを用いる。
【0060】
受光装置3のレンズ群31はテレセントリック光学系である。受光装置3の光軸は、試料2の法線と入射装置1に対して鏡面反射の条件とする。
【0061】
この測定装置で測定した2次元(面、画像)の光量分布データは、試料面の各微小位置の反射光である。この反射光をエリアで平均すると反射光平均値が得られる。これら反射光、つまり光沢が試料の各微小位置でどのように分布しているか、つまりムラが測定できる。
【0062】
この測定条件が鏡面反射角度であれば、測定した2次元(面、画像)の光量分布データは、試料面の各微小位置の鏡面反射光である。この鏡面反射光をエリアで平均すると鏡面反射光平均値が得られる。
【0063】
測定された反射光分布からウィーナースペクトルを求めることができる。ウィーナースペクトルは自己相関関数のフーリエ変換対であり、画像工学ではノイズ(ムラ、バラツキ)の解析に利用されてきた。本発明の反射光ムラ測定方法および装置を用いて光沢を空間周波数解析できる。
【0064】
ここまで試料として紙を例に発明の実施の形態を示したが、この他に、本発明の方法は印刷物や人間の皮膚や粘膜の測定に適用することが可能である。人間の皮膚や粘膜を測定することで、医療や診断、化粧品の開発に活用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例)
入射装置1、サンプルベッド21、受光装置3は光学部品を組み合わせて製作した。サンプルベッド21はXYステージであり、かつ上下方向に移動可能である。この機構によりセットした紙サンプル、試料2の厚さに合わせて試料表面高さも調整できる。
【0067】
試料をセットし、平行光を入射し、鏡面反射光をテレセントリック光学系の受光装置で測定し、試料の反射光ムラ、鏡面反射光ムラを測定した。
【0068】
入射装置1の構成を図2を用いて説明する。光源11はLEDランプを用い、光ファイバーを経由して入射装置1の所定の位置に設置した。点像チャートは金属板に空けた100μmのピンホールである。コリメータレンズ13で点光源を平行光として入射できる。光源11の明るさは調整可能である。
【0069】
受光装置3の構成を図3を用いて説明する。受光センサ33はCCDカメラであり、(有)三井オプトロニクス製CCDカメラDensitoCam(S285)を用いた。受光した鏡面反射光をレンズで結像させる。この結像をCCDカメラで測定できるように作製した。CCDカメラは有効画素数1392×1040画素、画素サイズ6.45×6.45μm、14bit階調である。測定した画像(光量分布)はコンピュータに転送される。検出信号は、事前に光学反射濃度が既知のチャート、今回はKODAK社グレイスケールを使用し、検出信号と反射濃度の関係から光量に換算した。この結果、検出信号は光量とほぼ線形な比例関係が得られたため、以下、光量として検出信号値で表記する。最小値が0、最大値が65536である(階調は14bit)。
【0070】
受光装置3のレンズ群はテレセントリック光学系である。ここではエドモンド・オプティクス・ジャパン株式会社製TECHSPEC“SILVER”テレセントリックレンズ58430−Lを用いた。
【0071】
(測定実施例1)
代表的サンプルの鏡面反射光ムラの測定結果を以下に示す。
【0072】
試料として3種類の紙の測定結果を示す。
【0073】
試料aは、写真用インクジェット用紙でグロス(光沢)タイプである。これはポリエチレンを紙にラミネートしたRC紙をベースとしたインクジェット用紙であり、光沢の写真印画紙とほぼ同じ光沢感のある紙である。以下、RCグロスIJ紙と表記し、aで識別し、測定結果を図4に示す。
【0074】
試料bは、印刷用コート紙でグロス(光沢)タイプである。これは顔料を塗布し光沢を上げるためにカレンダ処理した印刷用紙である。カレンダーや女性月刊誌の写真ページに使用される光沢のある紙である。以下、グロスコート紙と表記し、bで識別し、測定結果を図5に示す。
【0075】
試料cは、印刷用上質紙である。これは顔料を塗布していない、光沢がない印刷用紙である。文字の多いページや光沢の少ない写真ページに使用される光沢の少ない紙である。以下、上質紙と表記し、cで識別し、測定結果を図6に示す。
【0076】
本発明の反射光ムラ測定方法および装置に基づき製作した測定機で上記試料を測定した。各資料の鏡面反射光ムラを図4から図6に示す。
【0077】
図4から図6は3次元グラフで表示した図である。x軸(図の左右)は0〜600で光軸方向に対して左右の位置である。y軸(図の奥行)は0〜10で光軸方向の位置である。z軸(図の上下)は光量値(センサの検出信号値)であり、0〜60000である。
【0078】
各試料は、主観的な光沢感が明らかに異なる。主観的な光沢感の高い試料から順に、RCグロスIJ紙>グロスコート紙>印刷用上質紙である。反射光ムラはグロスコート紙が大きい。
【0079】
図7は上記グロスコート紙の連続した部分の測定結果を合成したものである。焦点の合う10ラインのデータをその分だけサンプルベッドを移動させ21回測定し合成し、3次元グラフで表示した図である。x軸(図の左右)は0〜600で光軸方向に対して左右の位置である。y軸(図の奥行)は0〜210(10ラインを21回合成)で光軸方向の位置である。z軸(図の上下)は光量値(センサの検出信号値)であり、0〜60000である。
【0080】
(測定実施例2)
サンプルの反射光ムラのパターンの測定結果を以下に示す。
【0081】
試料は別の印刷用コート紙でグロス(光沢)タイプである。
【0082】
試料を75度の鏡面反射角度の条件で反射光ムラを測定し、同時に鏡面反射光平均値を算出した。受光角度を1度ずつ減らして同様に反射光ムラを測定し、同時に反射光平均値を算出した。
【0083】
反射光ムラのパターン、光沢ムラのパターンはここでは72度が評価しやすかった。ここでは光沢ムラのパターンの評価として、各角度で測定した反射光分布の標準偏差を算出した。
【0084】
角度に対する反射光平均値と反射光分布の標準偏差を図8に示す。反射光分布の標準偏差は72度付近で大きくなることがわかる。
【0085】
鏡面反射角度付近の反射光分布を測定することで、反射光ムラのパターンがより解析しやすくなる。
【0086】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明はこの実施例には限定されず、種々変形可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明により、試料の反射光ムラを直接求めるための簡易で精度の高い測定方法が提供される。この測定方法により、反射光の試料面上でのムラが測定でき、印刷用紙や印刷方式の開発において有用な情報を得ることを可能とする。
【符号の説明】
【0088】
1 入射装置
2 試料
3 受光装置
11 光源
12 点像チャート
13 コリメータレンズ
21 サンプルベッド
31 テレセントリック光学系
33 受光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行光を試料に入射する入射工程と;該試料の表面をテレセントリック光学系により測定する受光工程と;該入射工程の光軸かつ/または該受光工程の光軸を該試料上の1点を中心として回転させ該試料の法線に対して任意の角度に設定する工程と;該試料の反射光分布を測定する工程と;を含むことを特徴とする反射光ムラ測定方法。
【請求項2】
該入射工程の光軸と該受光工程の光軸を0度より大きい鏡面反射角度とする工程と;鏡面反射角度から該入射工程の光軸または該受光工程の光軸の一方の角度を変化させて該試料の反射光分布を測定する工程と;を含むことを特徴とする請求項1に記載の反射光ムラ測定方法。
【請求項3】
平行光を試料に入射する入射手段と;該試料の表面をテレセントリック光学系により測定する受光手段と;該入射手段の光軸かつ/または該受光手段の光軸を該試料上の1点を中心として回転させ該試料の法線に対して任意の角度に設定する手段と;該試料の反射光分布を測定する手段と;を含むことを特徴とする反射光ムラ測定装置。
【請求項4】
該入射手段の光軸と該受光手段の光軸を0度より大きい鏡面反射角度とする手段と;鏡面反射角度から該入射手段の光軸または該受光手段の光軸の一方の角度を変化させて該試料の反射光分布を測定する手段と;を含むことを特徴とする請求項3に記載の反射光ムラ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−220224(P2012−220224A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83243(P2011−83243)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】