説明

反射型マスクおよびマスクブランク、その製造方法

【課題】パーティクルの発生が少なく、洗浄耐性の優れた遮光枠を有する反射型マスクブランク及び反射型マスク、その製造方法を提供する。
【解決手段】多層反射層02を掘り込んだ遮光枠を有する反射型マスクにおいて、多層反射層の側面に、電解めっき法により側壁保護層を形成することで、パーティクルの発生を低減することができる。さらに本発明のマスクとすることで、マスク洗浄工程における多層反射層の劣化を抑制することが可能となり、高品質の反射型マスクを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型マスクブランク及び反射型マスク、反射型マスクブランクの製造方法に係り、特に極端紫外線(Extreme Ultra Violet;以下「EUV」と表記する。)を光源とするEUVリソグラフィを用いた半導体製造装置などに利用される反射型マスクブランク及び反射型マスク、反射型マスクブランクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(EUVリソグラフィの説明)
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、波長が13.5nm近傍のEUVを光源に用いたEUVリソグラフィが提案されている。EUVリソグラフィは光源波長が短く光吸収性が非常に高いため、真空中で行われる必要がある。またEUVの波長領域においては、ほとんどの物質の屈折率は1よりもわずかに小さい値である。このため、EUVリソグラフィにおいては従来から用いられてきた透過型の屈折光学系を使用することができず、反射光学系となる。従って、原版となるフォトマスク(以下、マスクと呼ぶ)も、従来の透過型のマスクは使用できないため、反射型のマスクとする必要がある。
【0003】
(EUVマスクとブランク構造の説明)
このような反射型マスクの元となる反射型マスクブランクは、低熱膨張基板の上に露光光源波長に対して高い反射率を示す多層反射層と、露光光源波長の吸収層が順次形成されており、更に基板の裏面には露光機内における静電チャックのための裏面導電膜が形成されている。また、前記多層反射層と、吸収層の間に緩衝層を有する構造を持つEUVマスクもある。反射形マスクブランクから反射形マスクへ加工する際には、EBリソグラフィとエッチング技術により吸収層を部分的に除去し、緩衝層を有する構造の場合はこれも同じく除去し、吸収部と反射部からなる回路パターンを形成する。このように作製された前記反射型マスクによって反射された光像が反射光学系を経て半導体基板上に転写される。
【0004】
(EUVマスクの吸収層の膜厚と反射率の説明)
反射光学系を用いた露光方法では、マスク面に対して垂直方向から所定角度傾いた入射角(通常6°)で照射されるため、吸収層の膜厚が厚い場合、パターン自身の影が生じてしまい、この影となった部分における反射強度は、影になっていない部分よりも小さいため、コントラストが低下し、転写パターンのエッジ部のぼやけや設計寸法からのずれが生じてしまう。これはシャドーイングと呼ばれ、反射マスクの原理的課題の一つである。
【0005】
このようなパターンエッジ部のぼやけや設計寸法からのずれを防ぐためには、吸収層の膜厚は小さくし、パターンの高さを低くすることが有効であるが、吸収層の膜厚が小さくなると、吸収層における遮光性が低下し、転写コントラストが低下し、転写パターンの精度低下となる。つまり吸収層を薄くし過ぎると転写パターンの精度を保つための必要なコントラストが得られなくなってしまう。つまり、吸収層の膜厚は厚すぎても薄すぎても問題になるので、現在は概ね50〜90nmの間になっており、EUV光(極端紫外光)の吸収層での反射率は0.5〜2%程度である。
【0006】
(隣接するチップの多重露光の説明)
一方、反射型マスクを用いて半導体基板上に転写回路パターンを形成する際、一枚の半導体基板上には複数の回路パターンのチップが形成される。隣接するチップ間において、チップ外周部が重なる領域が存在する場合がある。これはウェハ1枚あたりに取れるチップを出来るだけ増加したいという生産性向上のために、チップを高密度に配置するためである。この場合、この領域については複数回(最大で4回)に渡り露光(多重露光)されることになる。この転写パターンのチップ外周部はマスク上でも外周部であり、通常、吸収層の部分である。しかしながら、上述したように吸収層上でのEUV光の反射率は、0.5〜2%程度あるために、多重露光によりチップ外周部が感光してしまう問題があった。このため、マスク上のチップ外周部は通常の吸収層よりもEUV光の遮光性の高い領域(以下、遮光枠と呼ぶ)の必要性が出てきた。
【0007】
このような問題を解決するために、反射型マスクの吸収層から多層反射層までを掘り込んだ溝を形成することで多層反射層の反射率を低下させることにより、露光光源波長に対する遮光性の高い遮光枠を設けた反射型マスクが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−212220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、マスクパターン作成後の多層反射層の掘り込みはシリコン(Si)とモリブデン(Mo)の合計80層を加工する必要があり、加工面からのパーティクル発生は避けられず、欠陥面でのマスク品質の低下を招いてしまう。またマスク製造工程における酸やアルカリなどを用いた洗浄によって、露出している多層反射層の側面(SiとMo)が侵食されてパーティクルが発生し、本反射型マスクや洗浄装置を汚染してしまう問題が発生する。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、欠陥の少なく、パターン転写精度の高い反射型マスクを提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基板と、前記基板表面に形成された多層反射層と、前記多層反射層の上に形成された保護層と、前記保護層の上に形成された吸収層を具備し、前記吸収層に形成された回路パターン領域の外側の少なくとも一部に、前記吸収層および前記保護層および前記多層反射層が除去されたEUV光の反射率の低い遮光枠を有する反射型マスクにおいて、前記遮光枠内に露出した多層反射層の側面に、洗浄薬液に対して耐性を有する金属からなる保護膜が形成されていることを特徴とする反射型マスクとしたものである(請求項1)。
【0012】
本発明は、前記側壁保護膜の膜厚が2nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクとしたものである。
【0013】
本発明は、前記側壁保護膜の材料は、少なくとも金、白金、パラジウム、銀、銅、鉛、スズ、ニッケル、クロムのいずれかよりなることを特徴とする請求項1〜2に記載の反射型マスクとしたものである。
【0014】
本発明は、前記側壁保護膜の形成方法は、電解めっき法を用いて、少なくとも多層反射層の側面に形成することを特徴とする請求項1〜3に記載の反射型マスクとしたものである。
【0015】
本発明は、請求項1〜4の反射型マスクの製造方法は、該反射型マスクの端面に電極パッドを取り付け、めっき液中にて、電圧を印加することで、遮光枠として除去された部分に露出した多層反射層の側面に金属の側壁保護膜を形成させることを特徴とする反射型マスクの製造方法としたものである。
【0016】
本発明は、基板と、前記基板表面に形成された多層反射層と、前記多層反射層の上に形成されたキャッピング層と、前記キャッピング層の上に形成された吸収層を具備し、前記吸収層に形成された回路パターン領域の外側の少なくとも一部に、前記吸収層および前記キャッピング層および前記多層反射層が除去されたEUV光の反射率の低い遮光枠を有する反射型マスクにおいて、前記基板と前記多層反射層の間にシード層を有し、前記遮光枠内には、シード層から金属めっきを成長させイオン化傾向がニッケル以上の金属めっきによる側壁保護層を有することを特徴とする反射型マスクとしたものである。
【0017】
本発明は、請求項6記載のシード層の材料は、少なくとも金、白金、パラジウム、銀、銅、鉛、スズ、ニッケル、クロム、アルミニウムのいずれかよりなることを特徴とする反射型マスクとしたものである。
【0018】
本発明は、請求項6〜7記載のシード層は、反射型マスクブランク作成時に、PVD法(Physical Vapor Deposition)、CVD法(Physical Vapor Deposition)、蒸着法、無電解めっき法のいずれかによって成膜されることを特徴とする反射型マスクおよび反射型マスクブランクの製造方法としたものである。
【0019】
本発明は、請求項6記載の遮光枠内の側壁保護層は、少なくとも多層反射層の側面を被服するだけの高さを有することを特徴とする反射型マスクとしたものである。
【0020】
本発明は、請求項9記載の反射型マスクの製造方法は、該反射型マスクの端面のシード層部分に電極パッドを取り付け、めっき液中にて、電圧を印加することで、遮光枠として除去された部分に露出したシード層上に金属からなる側壁保護層を形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法としたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、多層反射層を除去し遮光枠を形成したEUVマスクにおいて、多層反射層の側面からのパーティクルの発生やマスクの洗浄工程による多層反射層の腐食を防ぐことが可能となる為、マスク欠陥品質の低下を抑えることが可能となり、高い精度の転写パターンを形成できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の反射型マスクの構造の概略断面図を示す図である。
【図2】本発明の反射型マスクの構造の概略平面図を示す図である。
【図3】本発明の遮光枠部の多層反射層側面への保護膜の作製工程を示す概略図である。
【図4】本発明の遮光枠部の多層反射層側面への保護膜の作製工程を示す概略図である。
【図5】本発明の実施例1の反射型マスクの作製工程(パターン形成まで)を示す概略断面図である。
【図6】本発明の実施例1の反射型マスク(パターン形成まで)を示す概略平面図である。
【図7】本発明の実施例1の反射型マスクの作製工程(遮光枠形成)を示す概略断面図である。
【図8】本発明の実施例1の反射型マスク(遮光枠形成)を示す概略平面図である。
【図9】本発明の実施例2の反射型マスク(a)と従来の反射型マスク(b)を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(本発明の反射型マスクの構成)
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
まず、本発明の反射型マスクブランクの構成について説明する。図1(a)(b)は、本発明の反射型マスクの構造の概略断面図で、図2(c)は図1(a)を、図2(d)は図1(b)を上から見た概略平面図である。即ち、本発明の反射型マスクの構成は、101、102のいずれを用いてもよい。
【0025】
図1(a)に示す反射型マスク101は、基板1の表面に、多層反射層2、キャッピング層3、吸収層4が順次形成されている。基板の裏面には導電膜5が形成された構造となっている。図1(b)に示す反射型マスク102は基板1の表面に、導電性を有するシード層7、多層反射層2、キャッピング層3、吸収層4が順次形成されている。基板の裏面には導電膜5が形成された構造となっている。
【0026】
図1(a)(b)の反射型マスク101、102には、吸収層4が加工されたパターン領域10と、その外周部に、吸収層4、キャッピング層3、多層反射層2まで除去された遮光枠11を有する。
【0027】
図1(a)の反射型マスク101には、多層反射層2の側面には、金属からなる側壁保護層6により被覆されており、図1(b)の反射型マスク102には、多層反射層2の高さの遮光枠11の掘り込み部が、側壁保護層8によって全て充填された構造となっている。
【0028】
(本発明の反射型マスクの構成の詳細:多層反射層、キャッピング層、緩衝層)
図1(a)、(b)の多層反射層2は、13.5nm近傍のEUV光に対して60%程度の反射率を達成できるように設計されており、MoとSiが交互に40〜50ペア積層した積層膜で、さらに最上層のキャッピング層3はルテニウム(Ru)あるいは約10nm厚のシリコン(Si)で構成されている。Ru層の下に隣接する層はSi層である。MoやSiが使われている理由は、EUV光に対する吸収(消衰係数)が小さく、且つMoとSiのEUV光での屈折率差が大きいために、SiとMoの界面での反射率を高く出来るためである。キャッピング層3がRuの場合は、吸収層4の加工におけるストッパーやマスク洗浄時の薬液に対する保護層としての役割を果たしている。キャッピング層3がSiの場合は、吸収層4と間に、緩衝層が有る場合もある。緩衝層は、吸収層4のエッチングやパターン修正時に、緩衝層の下に隣接する多層反射層2の最上層であるSi層を保護するために設けられており、クロム(Cr)の窒素化合物(CrN)で構成されている。
【0029】
(本発明の反射型マスクの構成の詳細:吸収層)
図1(a)(b)の吸収層4は、13.5nm近傍のEUVに対して吸収率の高いタンタル(Ta)の窒素化合物(TaN)で構成されている。他の材料として、タンタルホウ素窒化物(TaBN)、タンタルシリコン(TaSi)、タンタル(Ta)や、それらの酸化物(TaBON、TaSiO、TaO)でも良い。
【0030】
図1(a)(b)の吸収層4は、上層に波長190〜260nmの紫外光(DUV光)に対して反射防止機能を有する低反射層を設けた2層構造から成る吸収層であっても良い。低反射層は、マスクの欠陥検査機の検査波長に対して、コントラストを高くし、検査性を向上させるためのものである。
【0031】
(本発明の反射型マスクの構成の詳細:裏面導電膜)
図1(a)(b)の導電膜5は、一般にはCrNで構成されているが、導電性があれば良いので、金属材料からなる材料であれば、使用する材料の種類や組成は必要に応じて決定すれば良い。
【0032】
(本発明の反射型マスクの構成の詳細:多層反射層の掘り込み)
この吸収膜4、キャッピング層3、多層反射層2の加工・除去には、一般には、EBリソ、フォトリソグラフィ、エッチング等の微細加工技術を用いられるが、ダイシング(機械的に切削加工)やリフトオフ法でも良い。
【0033】
ドライエッチングによって、多層反射層2の掘り込み分を形成する方法の例として、リソグラフィにより遮光枠11となる部分のみを開口したレジストパターニングを行い、ドライエッチング処理を行なうことにより形成することが可能である。この際、エッチングガスには、多層反射層の材料であるMoとSiのエッチングに適している塩素、フッ素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を含むガスを用いたプラズマエッチング法が可能であるが、MoとSiの両方に対してエッチング効果が得られるフッ素を使うのが望ましい。
【0034】
ウェットエッチングによって、多層反射層2の掘り込み部を形成する方法の例として、リソグラフィにより遮光枠11となる部分のみを開口したレジストパターニングを行い、ウェットエッチング処理を行うことにより形成することが可能である。この際、エッチング液には、多層反射層の材料であるMoとSiのエッチングに適している硝酸またはフッ硝酸が有効であるが、この限りではない。
【0035】
(本発明の反射型マスクの構成の詳細:側壁保護層)
次いで、図1(a)に示した反射型マスク101の多層反射層2の掘り込み部に対して側壁保護層6を形成する方法を図2に示す。図3(a)に示すように、多層反射層2を掘り込んだ反射型マスク101の周辺部の多層反射層2の側面の一部および多層反射層2の掘り込み部のマスク中心側の側面の一部に、カソード電極24を取り付け、反射型マスク101全体とアノード電極23をめっき浴22に浸漬させる。次いで、アノード電極23とカソード電極24に電流を流し、多層反射層2の側壁全体に金属のめっきが成長し、側壁保護層6が形成される。
【0036】
多層反射層2の側面にカソード電極24を取り付けるが、MoとSiとでは、Moの方が導電性は2桁高い。従って、金属のめっきは、側面のMoから成長するが、成長とともにMoとSiの両方が被覆される。
【0037】
この際、めっき材料として、金、白金、パラジウム、銀、銅、鉛、スズ、ニッケル、クロムがめっき特性が優れ、かつイオン化傾向の小さく化学的に安定なものが望ましい。何故なら、その後のマスクの洗浄工程において、洗浄耐性に優れるためである。
【0038】
めっき浴は、上記の金属や金属化合物(錯体)を含み、安定にめっきをできるように、必要に応じて添加剤等を含んで構成されても良い。
【0039】
電極の材質は次のようなものを採用することができる。
カソード電極は、多層反射層やめっき浴に悪影響を与えないものであれば、導電性を有する物質から任意に選択することができる。
アノード電極はめっきを行う金属の種類に応じて選択することができる。
例えば、銅めっきであれば銅が主材料に、ニッケルであればニッケルが主材料の電極を使用することができる。
このようなアノード電極を選択することで、アノードの金属が溶出し、めっきの(金属)材料が供給すされるため、めっきを安定して行うことができる。
【0040】
めっきの途中で、めっきが析出(堆積)していない側の多層反射層側壁に、一旦カソード電極の位置を変える工程を含んでも良い。ただし、その作業がなくても、多層反射層側面にめっきが行われるため、遮光枠部分の幅やめっき状態によって、カソード電極位置を変更する作業を省略することもできる。
【0041】
多層反射層2の側面にカソード電極24を取り付ける方法としては、多層反射層2や、めっき浴に悪影響を与えないような、接着剤による固定が挙げられる。
このほかにも、多層反射層に接触するように、めっき浴や治具にカソード電極を固定したものを用いても良い。
めっき中にカソード電極が多層反射層2から離れないようにカソード電極を固定できる方法を適宜使用することができる。
【0042】
側壁保護層6の膜厚は、マスクの洗浄工程における洗浄耐性によって決まるが、少なくとも2nmは必要である。何故なら、金属めっきによる側壁保護膜がこれより薄い場合、一部にピットなどの被覆されない領域が発生する可能性あるためである。少なくとも2nmあれば、ピットは発生しない。
【0043】
図1(b)に示した反射型マスク102の多層反射層2の掘り込み部に対して側壁保護層8を形成する方法を図4に示す。図4(a)に示すように、多層反射層2を掘り込んだ反射型マスク102の周辺部のシード層の側面の一部に、カソード電極24を取り付け、反射型マスク101全体とアノード電極23をめっき浴22に浸漬させる。次いで、アノード電極23とカソード電極24に電流を流し、多層反射層2の掘り込み部のシード層7が露出した箇所から金属のめっきが成長し、例えば図4(b)のように側壁保護層8が形成される。
【0044】
シード層へのカソード電極の取付けについては、上記の多層反射層へのカソード電極取付けと同様に行うことができる。
【0045】
シード層7の材料は、導電性を有する必要があるため、金、白金、パラジウム、銀、銅、鉛、スズ、ニッケル、クロム、アルミニウムのいずれかが可能である。
【0046】
シード層7は、ブランク作製工程において、基板1に多層反射層2を成膜する前に、基板表面に成膜させておく必要がある。シード層7の成膜方法は、PVD法(Physical Vapor Deposition)、CVD法(Physical Vapor Deposition)、蒸着法、無電解めっき法のいずれかであれば良い。
【0047】
本発明の反射型マスク102の側壁保護層8の膜厚は、多層反射層2の側面を完全に被覆させる必要があるため、少なくとも多層反射層2の厚さ以上の膜厚があれば良い。
【0048】
本発明の反射型マスク101、102は、パターン領域10のパターン形成は、遮光枠形成後であっても、遮光枠形成前であっても構わない。
【0049】
このようにして、EUV光に対する反射率が吸収層領域よりも充分に小さい遮光枠を有する反射型マスクにおいて、遮光枠部からのパーティクルの発生を低減した反射型マスクを得る。
【実施例1】
【0050】
以下、本発明の反射型マスクの製造方法の実施例を説明する。図5(a)に本実施例で用意した反射型マスクブランク201を用意した。このブランクは、基板1の上に、波長13.5nmのEUV光に対して反射率が64%程度となるように設計されたMoとSiの40ペアの多層反射層2を、2.5nm厚のRuのキャッピング層3、70nm厚のTaSiからなる吸収層4を、順次形成されている。
【0051】
本ブランクに対し、ポジ型化学増幅レジスト9(FEP171:富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ)を300nmの膜厚で塗布し(図5(b))、電子線描画機機(JBX9000:日本電子)によって描画後、110度10分のPEBおよびスプレー現像(SFG3000:シグマメルテック)によりレジストパターン9aを形成した(図5(c))。
【0052】
次いで、ドライエッチング装置を用いて、CFプラズマとClプラズマにより、吸収層4をエッチングし(図5(d))、レジスト剥離洗浄することで、図5(e)に示す評価パターン(パターン領域10)を有する反射型マスク211を作製した。評価パターンは、マスクの欠陥品質をマスク検査機によって評価できるように、寸法200nmの1:1のライン&スペースパターンをマスク中心に配置した。パターン領域10の大きさは、10x10cmとした。上面から見た図を図6に示す。
【0053】
次いで、上記評価パターンを有する反射型マスク211のパターン領域10(図7(a))に対して、遮光枠を形成する工程を行った。反射型マスク211にi線レジスト29を500nmの膜厚で塗布し(図7(b))、そこへi線描画機(ALTA)により描画、現像を行うことにより、後に遮光枠となる領域を抜いたレジストパターン29aを形成した(図7(c))。このときレジストパターンの開口幅は5mmとし、マスク中心部に10x10cmのメインパターン領域から3μmの距離に配置した。
【0054】
次いで、ドライエッチング装置を用いてCFプラズマにより、上記レジストの開口部の多層反射層2をエッチングし(図7(e))、硫酸系の剥離液とアンモニア過酸化水素水により、レジスト剥離・洗浄を実施し、ドライエッチングで残ったレジストを除去した(図7(f))。
【0055】
次いで、上記のように加工した多層反射層2の掘り込み部を有する反射型マスクの側面の一部および多層反射層2の掘り込み部のマスク中心側の側面の一部に、カソード電極を取り付け、反射型マスク全体とニッケル製アノード電極を、スルファミン酸ニッケル溶液で満たしためっき浴に浸漬させた。アノード電極とカソード電極に電流を流し、多層反射層2の側壁全体に金属のめっきが成長し、側壁保護層6が形成した(図7(g))。
【0056】
めっきの条件は次の通りである。使用しためっき浴の成分は、スルファミン酸ニッケル溶液の濃度を500g/Lにして、緩衝材としてホウ酸を30g/L、ピット防止剤を0.1g/Lを添加した。また、めっき浴温度40度で、30秒間0.2Aの電流を流した。
【0057】
図7は、このようにして作製した反射型マスク101(図7(g))を上面から見た図である。メインパターン領域10の周辺部に遮光枠11が形成されており、遮光枠の淵の多層反射層の側面には、側壁保護膜6が形成されている。
【実施例2】
【0058】
次に、実施例1にて作製した側壁保護膜を有する遮光枠付きの反射型マスク101(図9(a))と、実施例1のめっき工程を行わなかった従来型の遮光枠付き反射型マスク131(図9(b))の両方を用意し、10x10cmに200nmのライン&スペースパターンを敷き詰めたメインパターン領域を、マスク検査装置(KLA)にて検査を実施した。その結果、本発明の遮光枠付き反射型マスクは、従来の遮光枠付き反射型マスクに比べて、マスク作製直後(洗浄1回後)で、欠陥数は約1/70に低減していた。また、本発明の遮光枠付き反射型マスクは、洗浄を繰り返しても欠陥数が増えないが、従来の遮光枠付き反射型マスクは、洗浄回数の増加に伴い欠陥数が増加した。これらの結果を表1に示す。
【0059】
この結果から、遮光枠の多層反射層の側壁が洗浄するほど荒れが生じ、パーティクルが発生していると考えられる。
【0060】
【表1】

【符号の説明】
【0061】
1…基板
2…多層反射層
3…キャッピング層
4…吸収層
5…裏面導電膜
6…側壁保護膜
7…シード層
8…側壁保護層
9…レジスト
10…パターン領域
11…遮光枠
21…容器
22…めっき浴
23…アノード電極
24…カソード電極
25…電源
29…レジスト
101…本発明の反射型マスク
102…本発明の反射型マスク
111…保護膜をつける前の反射型マスク
112…保護膜をつける前の反射型マスク
131…従来型の遮光枠付き反射型マスク
201…反射型マスクブランク
211…パターン領域に回路パターンが形成された反射型マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板表面に形成された多層反射層と、前記多層反射層の上に形成された保護層と、前記保護層の上に形成された吸収層を具備し、前記吸収層に形成された回路パターン領域の外側の少なくとも一部に、前記吸収層および前記保護層および前記多層反射層が除去されたEUV光の反射率の低い遮光枠を有する反射型マスクにおいて、前記遮光枠内に露出した多層反射層の側面に、洗浄薬液に対して耐性を有する金属からなる保護膜が形成されていることを特徴とする反射型マスク。
【請求項2】
前記保護膜の膜厚が2nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスク。
【請求項3】
前記保護膜の材料は、少なくとも金、白金、パラジウム、銀、銅、鉛、スズ、ニッケル、クロムのいずれかよりなることを特徴とする請求項1〜2に記載の反射型マスク。
【請求項4】
前記保護膜の形成方法は、電解めっき法を用いて、少なくとも多層反射層の側面に形成することを特徴とする請求項1〜3に記載の反射型マスク。
【請求項5】
請求項1〜4の反射型マスクの製造方法は、該反射型マスクの端面に電極パッドを取り付け、めっき液中にて、電圧を印加することで、遮光枠として除去された部分に露出した多層反射層の側面に金属の保護膜を形成させることを特徴とする反射型マスクの製造方法。

【請求項6】
基板と、前記基板表面に形成された多層反射層と、前記多層反射層の上に形成された保護層と、前記保護層の上に形成された吸収層を具備し、前記吸収層に形成された回路パターン領域の外側の少なくとも一部に、前記吸収層および前記保護層および前記多層反射層が除去されたEUV光の反射率の低い遮光枠を有する反射型マスクにおいて、前記基板と前記多層反射層の間にシード層を有し、前記遮光枠内には、シード層から成長したイオン化傾向がニッケル以上の金属めっき層を有することを特徴とする反射型マスク。
【請求項7】
請求項6記載のシード層の材料は、少なくとも金、白金、パラジウム、銀、銅、鉛、スズ、ニッケル、クロム、アルミニウムのいずれかよりなることを特徴とする反射型マスク。
【請求項8】
請求項6〜7記載のシード層は、反射型マスクブランク作成時に、PVD法(Physical Vapor Deposition)、CVD法(Physical Vapor Deposition)、蒸着法、無電解めっき法のいずれかによって成膜されることを特徴とする反射型マスクおよび反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項9】
請求項6記載の遮光枠内の金属めっき層は、少なくとも多層反射層の側面を被覆するだけの高さを有することを特徴とする反射型マスク。
【請求項10】
請求項9記載の反射型マスクの製造方法は、該反射型マスクの端面のシード層部分に電極パッドを取り付け、めっき液中にて、電圧を印加することで、遮光枠として除去された部分に露出したシード層上に金属めっき層(保護膜)を形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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