説明

反射型偏光板、光学部材及び液晶表示装置

【課題】本発明の目的は、現行の偏光板と同等の光学特性を保持しながら、輝度が高い偏光板を提供することにある。
【解決手段】光学干渉繊維を同一方向面状に並べ、光学透明樹脂に内包させ板状に加工することによって反射型偏光板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイとして使用される液晶表示装置、並びに液晶表示装置に好適な光学部材及び反射型偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に使用される偏光板としては、通常ヨウ素で着色され、1軸延伸されたポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)フィルムを偏光子として、その片面、または両面にトリアセチルセルロース(以下、TACと略す)フィルムを偏光板の保護フィルムとして貼り合せる方法、又は偏光子の片面においてアクリル樹脂等でコーティング層を設ける方法、或いは偏光子の片面にノルボルネンやポリカーボネートなどの位相差フィルムをTACの代わりに貼り合せる等の吸収型偏光板が用いられている。この吸収型偏光板は、偏光板の透過軸方向の光しか透過せず、残りの成分の光は吸収してしまう特性であり、理想条件でも50%(内表面反射4%を有するため最大光透過率46%が限界)であり、バックライトの有効活用、および輝度を高めることは液晶表示装置の命題ともなっている。
【0003】
この命題を解決する方法の一つとして、光学反射干渉特性を利用した反射型偏光板がある。例えば、特許文献1には、コレステリック液晶層と1/4波長板を組み合わせた反射型偏光板が示されている。コレステリック液晶を1/4波長板を組み合わせた反射型偏光板は、コレステリック液晶の螺旋ピッチに対応した波長の右(又は左)円偏光を透過して、1/4波長板で直線偏光に変換し、左(又は右)円偏光を反射する。しかし、この反射型偏光板では、可視光全域にわたって、この特性を実現することは、困難であることと、コレステリック液晶層の界面層間接着強度が弱いために、容易に層間剥離を生じてしまうという問題を抱えている。
【0004】
特許文献2、3には、一つは複屈折を有する多層膜の干渉を用いた偏光素子が記載されており、屈折率の異なる2種類のポリマーフィルムの配向多層膜での偏光分離を行う方法が開示されている。また、非特許文献1には、原理は上記と同様であるが、単純なポリマーブレンドを利用した偏光分離方法も提案されている。また、最近では、特許文献4に、ポリマーブレンドの代わりにファイバーを利用した方法も報告されている。偏光分離方式における反射型偏光板では、透過しない偏光成分において反射するという特性があり、その反射した光が液晶表示装置のバックライト側に設置されている拡散反射フィルムとの多重反射を繰り返すことで、偏光板の透過軸方向の光と一致する光をもう一度取り出すことが可能であり、透過率60%以上を実現することが出来る。しかし、特許文献4及び非特許文献2にも記載されているが、反射型偏光板を実現するためには、ブレンドされるポリマーの屈折率とバルクとなる基材の屈折率を厳密に一致させる必要や、ブレンドポリマー、ファイバーの形状や配置を厳密に制御する必要があり、製造上の大きな問題点となっている。また、反射型偏光板の一つとして、実際に3M社からD−BEF(輝度上昇フィルム)という商品として市販されている。しかし、D−BEFにおいても、可視の広い領域に渡って偏光特性を確保する必要があるために、全体で400から800もの積層がなされている。この厚み制御と数百層ものポリマーフィルムの積層をおこなうこと、更には各層ごとの屈折率制御、フィルムの幅方向での均一な特性制御という技術的に困難な点が多い。
【0005】
【特許文献1】特開平8−271731号公報
【特許文献2】米国特許第3610729号公報
【特許文献3】米国特許第5486949号公報
【特許文献4】国際公開第2005/8302号公報
【非特許文献1】ジャーナル オブ アプライド フィジックス 37巻、1998年、第4389頁
【非特許文献2】月刊ディスプレイ 2005年4月号第13頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、液晶表示素子の光の透過率向上として、吸収型偏光板と反射型偏光板(輝度上昇フィルム)を2枚用いる構成をとっているが、反射型偏光板は、技術的に困難な面が多く、製造負荷の高い部材となっている。
本発明の目的は、製造が比較的簡単で、層間剥離などの問題が生じ難い反射型偏光板を提供することにある。
【0007】
また、この反射型偏光板に他の光学機能を示す光学層を積層することにより、液晶表示装置の光の利用効率を高めることが出来る光学部材を提供することにある。
さらに、この反射型偏光板が積層された光学部材を用いて、バックライト光の利用効率が高められた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために偏光板用の高分子材料、形状等を鋭意検討した。その結果、光学干渉繊維を同一方向面状に並べ、光学透明樹脂に内包させ板状に加工するという、比較的簡易な方法で輝度向上に有用な反射型偏光板を製造できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記の〔1〕〜〔11〕により達成することが出来た。
〔1〕(a)(a)少なくとも2種の熱可塑性樹脂で構成され、交互層状の断面構造を有する繊維であって、かつ少なくとも該2種の熱可塑性樹脂は、該繊維の長さ方向に対する断面方向の波長589nmにおける屈折率差が0.01以下である光学干渉繊維(A)と、
(b)前記繊維(A)の長さ方向に対する断面方向の屈折率とほぼ一致する屈折率を有する光学透明樹脂(B)、
とを含有し、光学干渉繊維(A)は同一方向面状に配置されてなる反射型偏光板。
〔2〕前記繊維(A)が光学透明樹脂(B)により内包固定化されている上記〔1〕の反射型偏光板。
〔3〕少なくとも2種の熱可塑性樹脂で構成される交互層状の断面構造が5層以上からなり、且つ各層の厚さが0.02〜1.0μmの範囲にあることを特徴とする上記〔1〕、〔2〕の反射型偏光板。
〔4〕前記少なくとも2種の熱可塑性樹脂の屈折率差が0.02以上であることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕の反射型偏光板。
〔5〕前記繊維(A)を構成する繊維の平均径が、0.7μm以上100μm以下であることを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕の偏光板。
〔6〕前記光学透明樹脂(B)が、熱可塑性樹脂であることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕の反射型偏光板。
〔7〕前記光学透明樹脂(B)が、硬化型樹脂であることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕の反射型偏光板。
〔8〕上記〔1〕〜〔7〕の反射型偏光板と、他の光学機能を示す光学層との積層体からなることを特徴とする光学部材。
〔9〕前記光学層が吸収型偏光板である上記〔8〕の光学部材。
〔10〕前記光学層が位相差層であることを特徴とする上記〔8〕の光学部材。
〔11〕上記〔9〕又は〔10〕の光学部材が、液晶セルの片側又は両側に配置されてなることを特徴とする液晶表示装置。
【0010】
本発明者は、鋭意研究の結果、今までフィルム内で実現しようとしてきた多層構造や、コレステリック液晶の塗布コートでの光学干渉機能の発現方法から、光学干渉の機能を有する部分を繊維内の構造に持たせ、その繊維を並べることにより面内の均一性を発現させることを検討した。これにより、繊維の長さ方向の光学干渉機能を安定的に発現させることを実現すると共に、その光学干渉繊維を一方向面状に並べ、光学透明樹脂により固定化することで、幅方向の光学干渉効果を均一に発現させることが可能となり、反射型偏光板の構成方法を実現することができた。また、繊維を並べるという手法により、フィルムの幅方向の制約が、装置のサイズに依存するものとなり、フィルムの延伸加工や、コーティング加工での幅方向の困難であった技術点に制約されない製造方法を実現することができた。
【0011】
このように本発明の反射型偏光板により、他の光学機能を有する光学層と積層することで、光学部材を提供することができる。また、反射型偏光板を積層した光学部材を液晶セルと組み合わせることで、光の利用効率を向上させ、輝度が高く、消費電力を小さくすることができる液晶表示装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学干渉繊維(A)を同一方向面状に並べ、硬化型樹脂などの光学透明樹脂に内包する形態を取ることで、反射型偏光板を容易に得ることが可能となった。
そのような反射型偏光板は、吸収型偏光板と様々な位相差フィルムや光学補償フィルムと組み合わせることで、円偏光フィルム、楕円偏光フィルム、視野角拡大偏光フィルムを提供可能であり、また、反透過反射型液晶表示装置、透過型液晶表示装置等と組み合わせて、液晶表示装置の光の利用効率を高め、輝度が高く、電力消費を小さくすることができる液晶表示装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔光学干渉繊維(A)〕
光学干渉繊維とは、光学的な反射、干渉効果により可視光領域の波長の色を干渉、発色するものである。光学干渉繊維の例としては、特許第3356438号公報、特開平11−124773号公報、特開2005−15962号公報に示されている。光学干渉繊維は、2種以上の熱可塑性樹脂成分で構成される交互層状の断面構造を有する繊維であり、その熱可塑性樹脂の屈折率が異なることで、光学的距離である屈折率と各層の厚みとの積による干渉効果を発現するものである。
【0014】
光学干渉効果には、2種の熱可塑性樹脂層の屈折率差、各層の光学的距離(屈折率×各層の厚み)及び積層数が大きく影響する。
まず、光学干渉繊維を構成する2種の熱可塑性樹脂については、屈折率の高い方の樹脂(高屈折率樹脂ということがある)は、1.55〜1.88の屈折率であり、屈折率の低い方の樹脂(低屈折率樹脂ということがある)は1.35〜1.55の屈折率の範囲にあるものを適宜選定するのが好ましい。特に、2種の樹脂の屈折率差としては、少なくとも0.02以上、好ましくは、0.07以上、もっとも好ましくは、0.15以上である。樹脂の組み合わせとしては、屈折率の高い繊維形成性を有する熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステルやポリカーボネートが好ましい。これらの樹脂の屈折率は、例えば、ポリエチレンテレフタレートでは、1.58、ポリエチレンナフタレート1.63、ポリブチレンテレフタレート、1.55、ポリカーボネートでは、1.59と高い値を有している。さらにこれらの樹脂を用いて、繊維としたとき、繊維軸方向に高い配向が発生し、大きな複屈折を有することとなる。複屈折として、ポリエチレンナフタレートでは0.22、ポリエチレンナフタレートでは0.153、ポリカーボネートでは0.20などの高い値を有している。一方、低屈折率の熱可塑性樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート(屈折率1.49)等のメタクリレート類、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ナイロン6(1.53)など脂肪族ポリアミドを挙げることが出来る。これらの樹脂の中で、ポリメチルメタクリレートではほとんど0の複屈折率であり、ナイロン6では0.08等高屈折性樹脂に比して低い値を取る。
【0015】
また、交互層状の断面構造に必要とされる樹脂層の厚みは、0.02〜1.0μmの範囲であることが好ましい。厚みが0.02μm未満の場合や、1.0μmを超える場合には、期待する光学干渉効果を可視光領域で得ることが困難となる。さらに、厚みは、0.05〜0.15μmの範囲であることが好ましい。また、2種の成分における光学距離、すなわち、層の厚みと屈折率の積が等しいとき、さらに高い光学干渉効果を得ることが出来る。特に、1次の反射に等しい2種の光学距離の和の2倍が、特定波長の距離と等しいとき、その特定波長における最大の干渉効果を得ることが出来る。本発明においては、可視光領域、特に400〜700nmにおいて、均等な干渉効果を得るように調節することが必要である。この光学干渉機能をモノフィラメントで実現しても良いが、例えば可視光に対して450nm近傍、550nm近傍、650nm近傍に極大を有する光学干渉繊維を組み合わせ、可視光領域(400から700nm)でほぼ均等な光学干渉を得るマルチフィラメンを使用しても構わない。
【0016】
さらに、交互層状の断面構造が必要な層数としては、5から120層であることが好ましい。層数が5層より少なくなると、干渉効果が小さいばかりでなく、干渉色が見る角度によって大きく変化してしまう。一方、120層を越えると、口金構造が複雑になり、製糸が困難になると共に、層流に流れが発生しやすくなり、層状構造が不均一となってしまう。交互層状の断面構造としては、10から100層以下がより好ましく、さらには10から80層以下がもっとも好ましい。
【0017】
光学干渉繊維の断面形状としては、特に問わないが、扁平構造であり、その扁平断面の長軸方向と平行に交互層状の断面構造の長軸が配置されることが好ましい。繊維が、扁平断面形状であり、その長軸方向に平行に交互層状の断面構造の長軸を有すると、扁平長軸方向と繊維の長さ方向で形成する表面に対して垂直方向から観たとき、光干渉性による反射光をもっとも強く観測することが出来る。このとき、扁平断面形状からなる光学干渉繊維を加工する際、繊維に作用する張力や摩擦力等の外部応力により扁平断面形状の長軸が応力のかかる面に対して平行に揃う自己方位コントロール性を発現させることが可能となる。この時、光の入射光が扁平長軸方向と繊維の長さ方向で形成する表面になるように調整することで、光学干渉機能を最大化することが出来る。この繊維の自己方位コントロール性をファイバーに付与させるためには、扁平率2以上15以下であることが必要である。扁平率が2以下の繊維では、良好な自己方位コントロール性が得られず、繊維に作用する張力や摩擦力等の外部応力により繊維の積層体にて、最密充填される形状に集合し、光学干渉機能を発現する繊維の交互層状の断面構造の配向は、ランダム配置となり、十分な光学干渉機能を得ることが出来ない。一方、扁平率が15を越えると過度に薄平な形状となるため、断面形態を保ち難くなり、一部が断面内で折れ曲がる等の欠陥が生じる。光学干渉繊維の扁平率としては、2.5以上13以下がより好ましく、3以上10以下がもっとも好ましい。
【0018】
光学干渉繊維における、2種以上の熱可塑性樹脂成分のそれぞれにおける断面方向の屈折率差に関しては波長589nmのとき0.01以下が好ましい。2種以上の熱可塑性樹脂成分のそれぞれにおける断面方向の屈折率差が大きい場合、本発明における繊維を偏光素子として形成した場合、偏光素子の透過軸と光学干渉繊維の断面方向は一致することとなるが、交互層状の断面構造の断面方向の屈折率が異なる場合、層間の屈折率差に対する反射光が発生するために透過光量が減少すると共に、偏光素子としての偏光機能を低下させる原因となる。波長589nmにおいて屈折率差を最小とするのは、波長589nmはNaD線に対応するので、NaD線を用いた光源で屈折率を観測することが容易に可能なことと、視感度の強い緑色を呈する波長で屈折率差を最小に調整することで、可視光における偏光特性を良好に保ち、視覚的な色味の影響を最小化させる効果がある。本発明における光学干渉繊維において、2種以上の熱可塑性樹脂のそれぞれにおける断面方向の屈折率差としては、波長500〜700nmの範囲にて平均屈折率差が0.01以下であることがより好ましく、もっとも好ましいのは、波長400〜700nmの範囲にて平均屈折率差が0.01以下である。2種以上の熱可塑性樹脂成分のそれぞれにおける断面方向の屈折率差を調整する方法としては、光学干渉繊維を延伸加工することで、特定の延伸倍率とすることで、断面方向の屈折率を合せることが可能であり、延伸倍率に関しては用いる樹脂の種類により調節が必要となる。光学干渉繊維の延伸加工としては、該未延伸繊維を高屈折率樹脂と低屈折率樹脂のガラス転移温度以上であって、結晶温度以下の温度の加熱浴中で、2〜20倍に延伸することが良い。延伸倍率に関しては、延伸倍率が2倍より小さいと光学干渉を有する所定の層の厚みを実現することが困難であり、延伸倍率が20倍を越えると繊維破断や繊維のボイドが発生するために、光の散乱が生じ偏光素子の特性を低下させる原因となる。
【0019】
光学干渉繊維径(或いは断面の長軸の長さ)としては、1μm以上50μm以下が好ましい。光学干渉繊維径が1μm未満であると、光学干渉機能に必要な交互層状の断面構造をとることが困難になり、繊維径が50μmを超えると繊維加工の樹脂吐出のコントロールが困難になるために、均質な繊維を得ることが難しくなる。より好ましくは、2μm以上40μm以下、さらに好ましくは、3μm以上30μm以下である。
【0020】
光学干渉繊維としては、図1―(a)〜(d)に示す形状が代表的な例として挙げられるが、層状構造が2段に分割されているもの、繊維の中で層状構造が2分割、3分割されているものでも、光学干渉機能を有する交互層状構造を有するものであれば良い。図1―(a)は、扁平断面の長軸方向に互いに屈折率の異なる2種類の樹脂が交互に積層された形状を、図1―(b)は、扁平断面形状がドーナツ状に積層された形状、図1―(c)は、交互積層の中間部に前記樹脂、又は他の樹脂による補強部を介在させた形状を、図1−(d)は、外周部に補強部を設けた形状を示している。
【0021】
光学干渉繊維は、上記繊維が一方向に面状に配置される。配置は繊維を1層または2層以上の多層に一方向に並べた状態のものがよい。最適となる積層数については、1層でも比較的高い偏光性能を得ることが可能であるが、1層で隙間無く繊維を並べることは非常に難しい技術である。該繊維を用いる場合の積層数としては、2層以上100層以下が好ましく、より好ましくは3層以上100層以下、最も好ましくは5層以上100層以下である。積層する光学干渉繊維としては、可視光の波長にて光学干渉機能を均質に得るために、光学干渉効果の最大となる波長が400〜500nmの繊維、500〜600nmの繊維、600〜700nmの繊維を組み合わせて積層しても良く、可視光の光学干渉の効果を得るためであれば、繊維の組み合わせの種類に制限は無いが、あまり種類が多くなると積層数が多くなりすぎて、透過光量が低下するので10種類以下が良い。
【0022】
〔光学透明樹脂(B)〕
本発明においては、光学干渉繊維(A)と光学透明樹脂(B)から基本的に形成されている。例えば光学干渉繊維(A)は光学透明樹脂(B)によって包みこまれ固定化された板状などの形態を取る。これは、光学干渉繊維(A)のみであると一方向に並べた状態が保持できず、偏光性能を継続して発現できないからである。光学透明樹脂(B)は、光学干渉繊維(A)を固定化保持する重要な役割を担う。
【0023】
光学透明樹脂(B)としては、光学干渉繊維(A)を配置させ、最終的に固定する役割を果たし、偏光板としての基材としての役割を担う。そのため、光学透明樹脂(B)は、可視領域に吸収が少ないか又は吸収が実質なく、光学干渉繊維(A)を構成するそれぞれの繊維に対して良好な密着性を示すものが好ましい。また、光学透明樹脂は、偏光板の基材として機能する。したがって、基材自体に複屈折があると、偏光板をクロスニコル配置した場合の光りぬけの欠点となりえるので、複屈折の発現性が低い熱可塑性樹脂、熱または光硬化型樹脂などの材料が好ましい。なお本発明における光学透明樹脂とは、可視領域において透明であることが必要不可欠であり、具体的には、波長400nm〜800nmにおいて、光学透明樹脂を厚み50μmのフィルムとした場合、このフィルムで測定した光線透過率が80%以上である必要があり、好ましくは85%以上、もっとも好ましくは90%以上である樹脂をいう。
【0024】
以下に光学透明樹脂(B)の材料のいくつかを例示する。
熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリ(メチルメタクリレート)などのアクリル樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンオキシドなどのポリエーテル、ポリビニルアルコールなどのビニル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、これらを構成するモノマーを2種以上用いた共重合体、さらにはポリ(メチルメタクリレート)、とポリ塩化ビニルの重量比82対18混合物、ポリ(メチルメタクリレート)とポリフェニレンオキシドの重量比65対35混合物、スチレン・無水マレイン酸共重合体とポリカーボネートの重量比77対23混合物などの非複屈折性のポリマーブレンドなどが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
光学透明樹脂としては、硬化型樹脂もひとつとして挙げられる。これは、例えば光学干渉繊維(A)に該樹脂を塗布後速やかに硬化する点において、加工性に優れた材料として好ましい。硬化型樹脂において、外部励起エネルギーにより架橋反応などを経て硬化することにより得られる架橋型樹脂が代表として挙げられる。これらは、紫外線や電子線等の活性線照射によって硬化する活性線硬化型樹脂と熱により架橋反応を開始する熱架橋型樹脂等であるが、そのいずれでも構わない。
【0026】
活性線硬化型樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が代表として挙げられる。その例としては紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型メタクリル酸エステル系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂及び紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂などが挙げられる。特に、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂が良く、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタエリスリトール等の光重合モノマーオリゴマーが好まれる。
【0027】
電子線硬化型樹脂の例としては、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂などが挙げられる。
【0028】
熱硬化型樹脂の例としては、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂が挙げられ、またその混合物でもよい。
【0029】
本発明においては、上記いずれの硬化型樹脂においても、好適にもちいることができるが、光学干渉繊維(A)の断面方向の屈折率とほぼ一致する屈折率を有する光学透明樹脂を選択する必要がある。ここで、ほぼ一致するとは、光学干渉繊維(A)の断面方向の屈折率の値との差が0.01以内であることをいう。このように光学干渉繊維(A)の断面方向の屈折率とほぼ一致する屈折率を有する光学透明樹脂(B)を用いることにより、透過率の高い偏光板が得られる。
【0030】
〔反射型偏光板〕
本発明の反射型偏光板は、吸収型偏光板を備えた液晶パネルの観測者側とは反対側であるバックライト側に配置することにより、光の利用効率を高めることで、輝度が高く、電力消費を小さくすることができるものであり、ツイストネマチックモード、垂直配向モード、OCB(Optically Compensated Bend)配向モード、インプレインスイッチングモード等のTFT液晶表示装置などのバックライトと吸収型偏光板を用いたすべての液晶モードに用いることができる。
【0031】
本発明の偏光板の厚さとしては、通常1以上300μm以下、好ましくは5以上250μm以下、最も好ましくは10以上200μmである。1μmより薄いと、反射型偏光板としての偏光機能を確保することが困難になり、またハンドリングの面からも難しい。また、300μmより厚いと、得られた反射型偏光板が曲げに対してクラックを生じるなどの問題があり、ロール状態で扱うことができないことや、カッティングすることが非常に困難になる問題がある。
【0032】
本発明の反射型偏光板をフィルムとして加工する際、光学干渉繊維(A)の配向方向はフィルムの搬送方向に規定されるものではなく、必要に応じて搬送方向に垂直、または所定の角度において配向固定化することができる。反射型偏光板をフィルムとして取り扱う場合、フィルムは巻き取りを行いロール状の形態としても良く、ロールフィルムの長さ、幅は制約を持たない。
【0033】
本発明の偏光板の製造方法としては、光学干渉繊維(A)に例えば光学透明樹脂として前記硬化型樹脂を必要に応じ溶媒等を用いて塗布し、硬化、乾燥等を経て製造する方法が挙げられる。生産性の点を考慮すると、塗布後速やかに硬化樹脂層を形成するものが好ましく、汎用的に用いられる材料、加工設備の面を考慮して、紫外線硬化樹脂がより好ましい。
【0034】
また、上記光学干渉繊維(A)をポリマーフィルムやガラス基板などの下地基材上に一列あるいは多数列に積み上げて並べ、これに硬化型樹脂を塗布しついで硬化させることもできる。この場合、本発明の偏光板はポリマーフィルムやガラス基板と一体となって用いてもよいが、ポリマーフィルムやガラス基板を剥ぎ取って使用してもよい。
【0035】
光学干渉繊維(A)を並べる下地基材として、位相差フィルムを用いても良く、本発明の反射型偏光板を位相差フィルムから剥ぎ取る必要はなく、位相差フィルム一体型偏光板を同時に作成することができる。
【0036】
また、光学干渉繊維(A)を並べる下地基材として、吸収型偏光板を用いても良く、本発明の反射型偏光板を吸収型偏光板から剥ぎ取る必要はなく、吸収型偏光板一体型反射型偏光板を同時に作成することができる。このとき、偏光板の透過軸は、同じ方向に調節して、反射型偏光板と透過型偏光板を積層する構成になるようにしなければならない。
【0037】
さらに、光学干渉繊維(A)を並べる下地基材として、プリズムシート(フィルム)を用いても良く、本発明の反射型偏光板をプリズムシート(フィルム)から剥ぎ取る必要はなく、プリズムシート(フィルム)一体型反射型偏光板を同時に作成することができる。
【0038】
本発明の反射型偏光板は、表面処理をしてもよい。表面処理としては、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
【0039】
ハードコート処理は傷つき防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度やすべり特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。また、アクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂自体を本発明の架橋性樹脂と用いることで、ハードコート機能を有する偏光板としても構わない。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着性防止を目的に施される。
【0040】
また、アンチグレア処理は、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて、表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。
【0041】
本発明の反射型偏光板を、液晶表示装置として、強誘電性液晶、反強誘電性液晶を用いたものに使用しても良い。
【0042】
〔吸収型偏光板〕
本発明の反射型偏光板は、偏光を有する光学機能を示す光学層との積層体からなる光学部材として有用である。例えば、偏光を有する光学機能を示す光学層としては吸収型偏光板が挙げられる。
本発明における吸収型偏光板とは、一方向の光を吸収し、その光に対して90°方位の光は透過する特性を有する偏光板であり、二色性色素等を吸着配向させた熱可塑性樹脂フィルムがその一例として挙げられる。
【0043】
吸収型偏光板に適用される熱可塑性樹脂の材料としては、光学透明であり、二色性色素を吸着し配向させることが出来る熱可塑性樹脂から形成されるフィルムがよい。熱可塑性樹脂としては例えば、ポリビニルアルコール(以下、単にPVAという)、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ビニル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂が挙げられる。その中でも、特にPVA、またはその誘導体が好ましい。PVAの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等が挙げられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものが挙げられる(以下、PVA、またはその誘導体のことをPVA系樹脂ということがある)。PVAまたはその誘導体の重合度としては、1000から40000程度、かつケン化度としては80から100モル%程度のものが用いられる。ここで、偏光子として使用するためには、PVAまたはその誘導体の重合度、ケン化度共に高い方が耐久性に優れた素子が得られるので、重合度1200以上30000以下、ケン化度90以上100モル%以下のPVAまたはその誘導体が好ましく、重合度1500以上20000以下、ケン化度98から以上100モル%以下がより好ましい。
【0044】
吸収型偏光板の代表的な例として、ヨウ素を吸着配向させたPVA系樹脂フィルムが挙げられる。PVA系樹脂フィルムへのヨウ素の染色においては、ヨウ素水溶液を用いることができ、ヨウ素及び溶解助剤として例えばヨウ化カリウム等によりヨウ素イオンを含有させた水溶液などが用いられる。ヨウ素の濃度は0.01から0.5重量%程度、ヨウ化カリウム濃度は0.01から10重量%で用いるのが好ましい。ヨウ素染色処理にあたり、ヨウ素溶液の温度は通常20から50℃であり、浸漬時間は10から300秒間程度の範囲である。尚、PVA系樹脂フィルム中におけるヨウ素含有量は、偏光子が良好な偏光度を示すように、通常、1から4重量%程度となるように調節するのが好ましい。このようなヨウ素染色処理に当たっては、ヨウ素溶液の濃度、PVA系樹脂フィルムのヨウ素溶液への浸漬温度、浸漬時間等の条件を調節することにより、PVA系樹脂フィルム中におけるヨウ素含有量が前記範囲になるように調節することが出来る。ついで、ヨウ素染色を行ったPVA系樹脂フィルムには、ホウ酸処理を行う。ホウ酸処理は、ヨウ素により染色されたPVA系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸濃度は2から15重量%程度で行うことが好ましく、ホウ酸水溶液の温度は50から85℃の範囲、浸漬時間は30から1000秒程度で行うことが好ましい。ホウ酸水溶液には、ヨウ化カリウムによりヨウ素イオンを含有させることが出来る。ヨウ化カリウムを含有するホウ酸水溶液は、着色の少ない偏光板、つまり可視光のほぼ全波長域に渡って吸光度がほぼ一定のいわゆるニュートラルグレーの偏光板を得ることが出来る。
【0045】
二色性色素が二色性染料である場合、二色性染料としては、例えば酸性染料、直接染料等の水溶性染料が好ましく、その構造としては、例えばアゾ系染料、スチルベン系染料、アントラキノン系染料、メチン系染料、シアニン系染料等が使用できる。具体的な例としては、例えば特開昭59−145255号公報や特開昭60−156759号公報記載のジスアゾ化合物、特開平3−78703号公報記載のトリスアゾ化合物及びカラーインデックスゼネリックネームで表されるCI Direct Yellow 12 、CI Direct Yellow 44 、CI Direct Orange 26、CI Direct Orange 39 、CI Direct Red 2 、CI Direct Red 23、CI Direct Red 31、CI Direct Red 79、CI Direct Red 81、CI Direct Vilet 9 、CI DirectVilet 35、CI Direct Vilet 51、CI Direct Blue 15 、CI Direct Blue 78 、CIDirect Blue 90 、CI Direct Blue 168、CI Direct Blue 202、CI Direct Blue203、CI Direct Brown 2 、CI Direct Black 17、CI Direct Black 19、CI Direct Black 118 、CI Direct Black 132 等があげられる。尚、これらの水溶性染料は、偏光能を与えうる色素成分の含有率が95%、より好ましくは99%以上(いずれも重量比)であることが望ましく、無機塩や未反応物等の目的色素成分以外の不純物はイオン交換膜法、再結晶法等の方法により除去される。実際の使用に際しては、単一染料では特有の波長域のみしか偏光特性を有しないため、最も一般的に用いられる400〜700nmの可視光線の全波長域にわたって優れた偏光特性を有する偏光素膜を得るために、この波長域内で異なる範囲に吸収特性を有する2種類以上の水溶性染料を適宜配合して使用するのが好ましい。具体的な組み合わせの例としては、CI Direct Orange 39 、CI Direct Red 81、特開昭59−145255号公報の実施例23に記載のグリーンブルー、特開平3−78703号公報記載のブルーの4種類配合等がある。二色性染料の染色方法としては、染料の濃度が0.02から0.1重量%の染料水溶液を用い、温度30から50℃で、100から600秒間程度の範囲で、PVA系樹脂フィルムを浸漬する。染色後のPVA系樹脂繊維は、上記ヨウ素の場合と同様にホウ酸濃度は2から15重量%程度のホウ酸水溶液に浸漬することが好ましい。
【0046】
〔位相差層〕
本発明の反射型偏光板は、偏光以外の他の光学機能を示す光学層との積層体からなる光学部材としても有用である。例えば、偏光以外の他の光学機能を示す光学層としては位相差層が挙げられる。
本発明における位相差層とは、位相差を与える層であり、透明熱可塑性合成高分子フィルムを延伸加工した位相差フィルムがその一例として挙げられる。
【0047】
位相差フィルムは透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。位相差フィルムを与える材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、または、前記ポリマーのブレンド物なども前記位相差フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。このとき位相差フィルムとしては、薄膜且つ十分な強度を有することが必要とされ、この点において適した材料としては、ポリカーボネート系ポリマー、ノルボルネン系樹脂ポリマー、ノルボルネン系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリスルホン系ポリマーなどが好ましいものとして挙げられる。
【0048】
位相差フィルムは透明性が良好であり、へーズ値は5%以下、全光線透過率は85%以上であることが好ましい。位相差フィルムのガラス転移点温度は、通常160〜260℃、好ましくは170〜250℃、特に好ましくは、180〜240℃が良く、それ以下の温度では、寸法安定性が悪く、また、それ以上の温度では、延伸工程の温度制御が非常に困難になるために製造が困難となる。位相差フィルムは、位相差を有する複屈折フィルムであるが、その光学特性である複屈折はレターデーション値で表され、特に、面内レターデーション(R値)と厚み方向のレターデーション(K値)に分けられる。これらR値とK値は、それぞれ下記式(a)と(b)で定義される。
R=Δn・d=(nx−ny)・d (a)
K=((nx+ny)/2−nz)・d (b)
である。R値、K値の単位は、nmである。nx、ny、nzは、ここでは以下のように定義される。
nx:フィルム面内における最大屈折率
ny:フィルム面内における最大屈折率を示す方向に直交する方位の屈折率
nz:フィルム法線方向の屈折率
(主延伸方向とは一軸延伸の場合には延伸方向、二軸延伸の場合には配向度が上がるように延伸した方向を意味しており、化学構造的には高分子主鎖の配向方向を指す。)
位相差フィルムは位相差を有する光学的一軸または二軸性フィルムであっても構わない。
【0049】
その他の位相差層としては、屈折率異方性を有し層面の法線方向に光軸を有する層とし、リタデーションが正波長分散特性の反射波長が紫外線領域にあるツイスト配向した重合性のカイラルネマチック(コレステリック)液晶層やホメオトロピック配向した重合性のディスコティック液晶層、或いは、コーティングした際に層に対して法線方向に位相差を有するとして機能する材料からなるコーティングされた層、或いは厚の厚み方向に屈折率楕円体が放射線状に配置したハイブリッドな構造を有する位相差層もあるが、そのいずれであっても構わない。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、本明細書中に記載の材料特性値等は以下の評価法によって得られたものである。
【0051】
(1)光線透過率、偏光度の測定
光線透過率Tは、400〜700nmの波長域で10nmおきに求めた分光透過率t(λ)から、式1により算出した。尚、式中、P(λ)は標準光(C光源)の分光分布、y(λ)は2度視野X、Y、Z系に基づく等色関数である。分光透過率t(λ)は分光光度計((株)日立製作所、U−4000)を用いて測定した。
【数1】

【0052】
偏光度Pは、2枚の偏光板 をそれぞれの吸収軸方向が同一になるように重ねた場合の透過率をTp(パラニコル透過率)とし、2枚の偏光板 をそれぞれの吸収軸が直交するように重ねた場合の透過率をTc(クロスニコル透過率)とし、式2により算出した。
【数2】

【0053】
(2)厚み測定
アンリツ社製の電子マイクロで測定した。
【0054】
(3)繊維の断面方向の屈折率測定
偏光顕微鏡を用いて、光源に干渉フィルタ(589nm)を設置して、直線偏光光源となるように調整した。
繊維をスライドガラスにとり、直線偏光が繊維の断面方向と平行になるように設置した。
屈折調整液を用いて、1.500から1.600まで、0.002STEPにて、顕微鏡を覗きながら、屈折調整液を繊維を順次滴下していくことで、繊維の外形が無くなるところを観測した。
【0055】
[実施例1]
テレフタル酸を10モル%、スルフォイソフタル酸のナトリウムを1モル%共重合したポリエチレンナフタレート(極限粘度は、0.58;ナフタレンジカルボン酸89モル%、以下、共重合PENという)とナイロン6(極限粘度1.3)とを、交互積層体部の層数が61層で、周りを共重合PENが被覆している構造となるように溶融紡糸し、1000m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸繊維を、ローラー延伸機で、2.0倍に延伸した。得られたファイバーは、8フィラメントからなるマルチファイバーであり、その断面形状は図1−(d)に示す形態であり、繊維断面方向の長軸長さ60μm、短軸長さ19μm、扁平率3.2、交互積層部の層間は、共重合PEN層の厚み0.09μm、ナイロン層の厚み0.10μmであった。このとき、この光学干渉繊維の干渉効果としては、波長640nmを最大の反射特性を有する赤から橙系の干渉色が確認された(光学干渉繊維(赤))。上記同様に延伸条件等を調整して、共重合PENとナイロン6からなる光学干渉繊維として、緑系色に対する波長580nmの反射特性が最大となる繊維(繊維断面方向の長軸長さ50μm、短軸長さ15μm、扁平率3.3、交互積層部の層間は、共重合PEN層の厚み0.08μm、ナイロン層の厚み0.08μm、光学干渉繊維(緑1))、緑系色に対する波長530nmの反射特性が最大となる繊維(繊維断面方向の長軸長さ49μm、短軸長さ14μm、扁平率3.5、交互積層部の層間は、共重合PEN層の厚み0.07μm、ナイロン層の厚み0.08μm、光学干渉繊維(緑2))、青色に対する波長460nmの反射特性が最大となる繊維(繊維断面方向の長軸長さ45μm、短軸長さ11μm、扁平率4.1、交互積層部の層間は、共重合PEN層の厚み0.06μm、ナイロン層の厚み0.06μm、光学干渉繊維(青))を得た(いずれも8フィラメントからなるマルチフィラメント)。これらいずれの光学干渉繊維の波長589nmにおける断面方向の屈折率は、いずれも1.524〜1.526であった。また、共重合PENの屈折率1.62であり、ナイロン6の屈折率1.53であり、2種の熱可塑性樹脂の屈折率差は0.09である。
【0056】
このマルチフィラメントである光学干渉繊維(赤)、光学干渉繊維(青)、光学干渉繊維(緑1)、(緑2)を2巻(繊維の層として、各約3層ずつ、計約12層)、ガラス板上に隙間無く同一方向に並べて、厚み180μmの繊維層を得た。
【0057】
次に、BPEF−A:50重量部、UA:450重量部、希釈溶剤としてトルエン:40重量部、光開始剤として「イルガキュア」184:15重量部、レベリング剤として、SH28PA:0.18重量部を順次加えて均一になるまで攪拌したものを調液した。
BPEF−A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート(大阪ガス製)
UA:ウレタンアクリレート(新中村化学製「NKオリゴU−15HA」)
「イルガキュア」184(チバガイギー社製)
SH28PA(東レ・ダウコーニング社製)
【0058】
調液した溶液を上記にて準備した光学干渉繊維の積層体の上に均一に塗布して、該光学干渉繊維が該溶液により内包される状態を形成させた。これに強度160wの高圧水銀ランプで積算光量700mJ/cmの紫外線を照射し、該溶液を硬化させて光学透明樹脂によって該光学干渉繊維が内包された、厚みが190μmである偏光板を得た。このとき、光学透明樹脂の屈折率は1.526であった。
こうして得られた反射型偏光板の光線透過率は45.0%、偏光度は99.9%であった。
【0059】
また、上記で得られた偏光板を市販の半透過型液晶表示装置を用いて、下記のような構成の液晶表示装置を作製し、偏光板がクロスニコルになるように配置し、ノーマリーホワイト時の輝度の増加を測定したところ、17%の輝度上昇効果を確認した。
構成:吸収型偏光板/位相差フィルム/液晶セル/位相差フィルム/吸収型偏光板/反射型偏光板/バックライト/拡散反射フィルム
なお、位相差フィルムとしては、帝人化成(株)製の「ピュアエース」WR−W142、吸収型偏光板としては、サンリッツ(株)UHLC2−5618を用いた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の反射型偏光板は、液晶表示装置のディスプレイなどに好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1(a)〜(d)は本発明における光学干渉機能を有する繊維を表す概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも2種の熱可塑性樹脂で構成され、交互層状の断面構造を有する繊維であって、かつ少なくとも該2種の熱可塑性樹脂は、該繊維の長さ方向に対する断面方向の波長589nmにおける屈折率差が0.01以下である光学干渉繊維(A)と、
(b)前記繊維(A)の長さ方向に対する断面方向の屈折率とほぼ一致する屈折率を有する光学透明樹脂(B)、
とを含有し、光学干渉繊維(A)は同一方向面状に配置されてなる反射型偏光板。
【請求項2】
前記繊維(A)が光学透明樹脂(B)により内包固定化されている請求項1記載の反射型偏光板。
【請求項3】
少なくとも2種の熱可塑性樹脂で構成される交互層状の断面構造が5層以上からなり、且つ各層の厚さが0.02〜1.0μmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2記載の反射型偏光板。
【請求項4】
前記少なくとも2種の熱可塑性樹脂の屈折率差が0.02以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射型偏光板。
【請求項5】
前記繊維(A)を構成する繊維の平均径が、0.7μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板。
【請求項6】
前記光学透明樹脂(B)が、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射型偏光板。
【請求項7】
前記光学透明樹脂(B)が、硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射型偏光板。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の反射型偏光板と、他の光学機能を示す光学層との積層体からなることを特徴とする光学部材。
【請求項9】
前記光学層が吸収型偏光板である請求項8記載の光学部材。
【請求項10】
前記光学層が位相差層であることを特徴とする請求項8記載の光学部材。
【請求項11】
請求項9又は10記載の光学部材が、液晶セルの片側又は両側に配置されてなることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−233244(P2007−233244A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57685(P2006−57685)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】