説明

反射結像型電子顕微鏡及びそれを用いたパターン欠陥検査装置

【課題】同一視野でミラー電子顕微鏡観察と低エネルギー電子顕微鏡観察とを両立させ得る反射結像型電子顕微鏡を提供するとともに、この反射結像型電子顕微鏡を用いて、試料上に形成されたパターンの欠陥部を、高分解能でかつ高速で検出し得る欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】電子源1から出射した電子線を試料7に面状の照射電子線301として照射する照射レンズ系と、試料7から出射した反射電子線302を投影拡大して試料像を投影結像させる結像レンズ系と、照射電子線301と反射電子線302を分離するビームセパレータ4とを備えた反射結像型電子顕微鏡において、ビームセパレータ4は、電界と磁界を直交かつ重畳させたExB偏向器で構成され、照射電子線301に対する偏向角をほぼ一定に保ちながら、反射電子線302に対して、電界と磁界による偏向作用が打ち消しあう、ウィーン条件となるように偏向器を制御する制御手段28を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料(半導体試料等)の表面状態を観察するミラー電子顕微鏡等の反射結像型電子顕微鏡、およびそれを用いて試料に形成されたパターン欠陥を検査するパターン欠陥検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程において、ウェハ上に形成された回路パターンの欠陥を画像の比較検査により検出する方法として、電子線を試料に照射することにより、光学顕微鏡の分解能以下となる微小なエッチング残り、微小パターン欠陥などの形状欠陥の検出や微小導通孔の非開口不良等の電気的な欠陥の検出が可能となっている。
【0003】
ここで、点状の電子線を試料上で走査する走査型電子顕微鏡を用いた方式では、実用的な検査速度を得るためには限界があるので、矩形状の電子線を半導体ウェハに照射して、二次電子や後方散乱電子、または逆電界の形成によりウェハに照射されずに反射される電子をレンズにより結像させる等、いわゆるプロジェクション方式により高速に検査する装置が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−249393号公報
【特許文献2】特開平10−197462号公報
【特許文献3】特開2003−202217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、二次電子等やミラー電子によるプロジェクション方式は、下記の課題を有する。
【0006】
検出電子として二次電子や後方散乱電子を拡大投影させる装置は、低エネルギー電子顕微鏡と呼ばれている。この方式では、SEM(走査型電子顕微鏡)方式よりも大電流の電子線を一度に照射でき、かつ一括で画像を取得できるためSEM方式と比較して超高速に画像を形成できることが期待できる。ところが、二次電子の放出角度分布は広い角度に広がっており、しかもエネルギーも約1〜10eVと広がっている。このような電子を結像して試料の拡大像を形成するとき、大部分の二次電子をカットしないと十分な分解能が得られないことは、容易に判断することができる(参照文献:「LSIテスティングシンポジウム/1999会議録、P142」に記載の図6)。試料から放出した二次電子を加速するための負の試料印加電圧と二次電子の結像分解能との関係によると、試料印加電圧−5kVのとき、分解能はほぼ0.2μmである。
【0007】
そして、放出した二次電子がすべて画像形成に使用できるわけではなく、たとえば上記文献の計算では、対物レンズ通過後の像面において1.1mradの開き角以下のビームを使用した場合となっている。この開き角の範囲内の二次電子は、全体のたかだか10%程度である。さらに、結像に使用する二次電子のエネルギーの幅を1eVで計算しているが、放出される二次電子のエネルギー幅は実際には数eV以上の幅を持って放出しており、高エネルギー側の裾野はおよそ50eVまで存在する。そのような幅広いエネルギー分布を持つ二次電子のうち、たかだか1eVのエネルギー幅のもののみを抽出した場合はさらに数分の一に低減する。
【0008】
このように、電子線を面積ビームとして試料に大電流を照射して得られる二次電子を用いて一括で画像を形成しようとしても、実際に画像形成に寄与できる電子の割合が低いために画像のS/N比を確保することが困難となり、結局期待できるほどの検査時間の短縮は不可能である。画像形成に後方散乱電子を用いても、後方散乱電子は、照射ビーム電流に比べて二桁少ない放出量しか得られず、二次電子の場合と同様に高分解能と高速性の両立は困難である。
【0009】
二次電子や後方散乱電子に替わり、試料の直前で試料に当たらないで反射するミラー電子を拡大投影する装置は、ミラー電子顕微鏡と呼ばれている。このミラー電子を用いて欠陥を起因として生じる電位や形状の乱れを検出することによって、欠陥を検出することができる。パターンが凸形状か負帯電している場合には、試料直上に形成される等電位面は入射電子に対して凸面鏡レンズのように作用し、パターンが窪んだ形状か周りより正帯電している場合には、試料直上に形成される等電位面は入射電子に対して凹面鏡レンズとして作用する。このように、ミラー電子は試料直上に形成されるレンズにより若干軌道を変えるが、結像レンズの焦点条件を調整すれば、これらのミラー電子のほとんどを画像形成に用いることができる。すなわち、ミラー電子を用いれば、S/N比の高い画像が得られ、検査時間の短縮が期待できる。
【0010】
しかしながら、ミラー電子から得られる画像は試料直上の等電位面を反映したものであり、一般の電子顕微鏡像とは大きく異なるので、試料の正確な形状及び位置に対応した情報を得ることは困難である。したがって、ミラー電子の画像を取得する機能に加えて、試料の正確な形状及び位置情報を得る手段が必須である。
【0011】
ミラー電子を拡大投影して結像させるミラー電子顕微鏡の装置構成は、試料に電子線を照射する照射レンズ系と試料から反射される電子を結像する結像レンズ系および照射電子線と反射電子線を分離させるセパレータにより構成される。先に述べた二次電子や後方散乱電子を結像させる低エネルギー電子顕微鏡の従来例(特許文献1〜3)でも、同様の装置構成が記載されている。すなわち、照射レンズ系、結像レンズ系及び、セパレータとしては電界と磁界を直交させて動作させるEXB偏向器を用いている。
【0012】
しかしながら、先述の従来例では、ミラー電子顕微鏡と低エネルギー電子顕微鏡を両立できる装置はなく、ミラー電子画像と二次電子画像を同一視野で観察することはできない。ミラー電子顕微鏡では、電子源に印加する加速電圧Vを試料印加電圧Vよりとほぼ同電位に設定することにより、照射電子線は試料の直上で反転して反射電子線となり、対物レンズに入射するエネルギーeVと同じエネルギーeVで対物レンズを出射する。一方、低エネルギー電子顕微鏡では、電子源に印加する電圧Vを試料印加電圧Vよりも負電圧に設定することにより、電子線は試料に対して、e(V−V)のエネルギーで試料に入射する。試料から出射する二次電子あるいは後方散乱電子のエネルギーをeVと置くと、二次電子あるいは後方散乱電子はe(V+V)のエネルギーで対物レンズ出射後、セパレータへ入射する。したがって、ミラー電子顕微鏡を用いて試料像を取得するモードから、試料印加電圧Vを調整して、低エネルギー電子顕微鏡条件に設定しても、反射電子線がセパレータを通過するエネルギーが変化してしまうので、反射電子線に偏向作用が発生して拡大像が動いてしまい、二次電子像を観察することが困難となる。
【0013】
本発明は、上述の点に着目してなされたものであり、同一視野でミラー電子顕微鏡観察と低エネルギー電子顕微鏡観察とを両立させ得る反射結像型電子顕微鏡を提供するとともに、この反射結像型電子顕微鏡を用いて、試料上に形成されたパターンの欠陥部を、高分解能でかつ高速で検出し得る欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、以下の方法で達成できる。
【0015】
本発明は、ビームセパレータとして、ExB偏向器を採用する。ExB偏向器は、光軸の一方向から入射した電子線は直進し、光軸の反対方向側から入射した電子線は偏向される特徴がある。以下、本発明におけるビームセパレータについて説明する。
【0016】
ExB偏向器は、電界と磁界を直交かつ重畳して動作させて動作させる偏向器である。図2を用いて、この動作を説明する。加速電圧Vの電子線が図2に示す長さ2l、間隔dの平行平板電極型の静電偏向器に±Vの電圧を印加して偏向される偏向角θE0、および長さ2lの磁束密度Bの均一磁界偏向器/2で偏向される偏向角θM0は、それぞれ次式(1)、(2)で与えられる。
【0017】
【数1】

【0018】
【数2】

【0019】

ここで、偏向器内の電界強度Eと磁束密度Bの間で電界による偏向と磁界による偏向が打ち消しあうような条件、
【0020】
【数3】

【0021】
をウィーン条件と呼び、図2でウィーン条件に設定されたEXB偏向器に上方から入射した電子線は直進し、下方から入射した電子線は、θE0+θM0=2θE0の偏向を受ける。
【0022】
ミラー電子顕微鏡では、例えば、照射電子線に対しては、電界及び磁界が同じ方向に作用する偏向器の条件で用い、反射電子線に対しては、電界と磁界の作用が打ち消しあって、偏向器内を電子線が直進するウィーン条件で用いる。照射電子線が偏向器に入射するエネルギーおよび反射電子線となるミラー電子線が偏向器に入射するエネルギーは等しくeVとなり、エネルギーeVの電子線に対する静電偏向器および磁界偏向器の偏向角をそれぞれθE0およびθM0とおくと、照射電子線に対する偏向角θINおよび反射電子線に対する偏向角、θOUTは、以下のようになる。
【0023】
【数4】

【0024】
この照射系の偏向角θINは、照射系の光軸と結像系の光軸との間の角度であり、装置に固有の角度である。
【0025】
一方、低エネルギー電子顕微鏡では、照射電子線が偏向器に入射するエネルギーはeV、二次電子や後方散乱電子で形成される反射電子線が偏向器に入射するエネルギーはeVとなる。このエネルギー条件に対しても、反射電子線に対してはウィーン条件となり、入射電子線に対してはθINとなるような動作条件を以下で求める。
【0026】
エネルギーeVの電子線に対する静電偏向器および磁界偏向器の偏向角をそれぞれθE1およびθM1とおくと、反射電子線に対してウィーン条件、θE1=θM1が成り立つ。一方、照射電子線に対しては、加速電圧の変化を考慮して以下の条件を満足しなければならない。
【0027】
【数5】

【0028】
ミラー電子顕微鏡条件では、θIN=2θEOだから、θEOとθE1の関係は、以下のようになる。
【0029】
【数6】

【0030】
これを変形して、
【0031】
【数7】

【0032】
ここで、低エネルギー電子顕微鏡の反射電子線のエネルギーeVは、試料印加電圧をV、二次電子あるいは後方散乱電子の初期エネルギーをVとおくと、eV=e(V+V)で与えられるが、一般には二次電子のエネルギーは数eVと小さいので、二次電子結像の場合にはeV=eVとしてもよい。
【0033】
静電偏向器による偏向角は偏向版の印加電圧に比例し、磁界偏向器の磁束密度Bがコイルにより誘起される場合は、磁束密度Bはコイルに流す励磁電流に比例する。したがって、ミラー電子顕微鏡条件から低エネルギー電子顕微鏡へのモードの切替は、試料印加電圧Vの切替と同時に、EXB偏向器の偏向電圧及びコイル供給電流に(7)式で与えられるγの値を乗じた偏向電圧及び供給電流を与えれば、ミラー電子像から二次電子像へ像の逃げなく観察することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、同一視野でミラー電子顕微鏡観察と低エネルギー電子顕微鏡観察とを両立させ得る反射結像型電子顕微鏡を実現するとともに、この反射結像型電子顕微鏡を用いて、試料上に形成されたパターンの欠陥部を、高分解能でかつ高速で検出し得る欠陥検査装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例になる反射結像型電子顕微鏡の装置構成を示す。
【0037】
電子光学系101において、セパレータとしてEXB偏向器4を反射電子線302の結像面近傍に配置させる。照射系の光軸と試料(例えば、ウェハ)7に垂直な結像系の光軸とは、互いにθINの角度で交叉している。コンデンサレンズ3と対物レンズ10の間にはビームセパレータとしてExB偏向器4が配置されており、電子源1より放出された照射電子線301は、ExB偏向器4によりウェハ7に垂直な光軸に偏向される。EXB偏向器4により偏向された照射電子線301は、コンデンサレンズ3により対物レンズの焦点面近傍に集束され、試料上7をほぼ平行な照射電子線で照射することができる。
【0038】
試料室102において、試料7には、電子源1に印加される加速電圧V0とほぼ等しいか、わずかに高い負の電位が試料7を保持するステージ8を通じて、試料印加電源34によって印加されている。試料と対向する円孔電極9には円孔電極印加電源33により、試料7に対して数kVから数十kVの範囲の正電圧が印加されており、この円孔電極9と試料7との間の減速電界によって面状の照射電子線301の大部分が試料7に衝突する直前で引き戻されてミラー電子となり、試料7の形状や電位、磁界などを反映した方向や強度を持って再び対物レンズ10に入射する。
【0039】
このミラー電子による反射電子線302は、対物レンズ10により拡大されて、ExB偏向器4近傍にミラー投影像を結ぶ。このExB偏向器4は反射電子線にはウィーン条件で作用する。すなわち、反射電子線302に対しては、ExB偏向器4は偏向作用を持たず、また、ミラー像がExB偏向器4近傍に結像投影されるので、ExB偏向器4による偏向収差もほとんど発生しない。この対物レンズ10によるミラー像は、中間レンズ13および投影レンズ14により投影され、シンチレータ15上に拡大されたミラー電子像が形成される。このミラー電子像はシンチレータ15により光学像に変換され、光学レンズ16あるいは光ファイバー束16によりCCDカメラ17上に投影され、CCDカメラ17により電気信号に変換されたミラー像がモニタ22により表示される。
【0040】
図3に、ExB偏向器4を光軸垂直方向から見た断面を示す。本例では、8極電磁極構造の例を示す。各電磁極51は、パーマロイなどの磁性体で構成されている。各電磁極は電位を与えられることによって電極として動作し、各電磁極51のボビン52にN回巻かれているコイル53に励磁電流を流すことによって磁極として動作する。図3に示す電圧配分で各電磁極に電圧VXを印加すると電子はx方向に偏向作用を受ける。
【0041】
また、図4に示すような電流配分で電流IYを各コイルに流すと、図3の紙面の裏側から表へ運動する電子はx方向の正方向、紙面の表から裏側へ運動する電子は、x方向の負方向へ偏向作用を受ける。各電極の電圧および電流配分は実際の電磁極形状に電位あるいは磁位を与えた電磁界計算により均一な電磁界が発生するように最適化されており、例えば、図中の定数αは、α=0.414に設定されている。
【0042】
図5は、ExB偏向器4の光軸を含む断面図である。ExB偏向器をビームセパレータとして用いる場合、照射系と結像系の交叉角θINは二つの光学系が互いに干渉しない配置関係を考慮すると、30度程度は取る必要がある。照射電子線301を30°偏向しても電磁極に当たらないようにするためには、開口部の直径を電磁極長さより大きくしなければならないが、開口を広げると偏向させる電圧を増加させなければならないので、電磁極51の形状は、電子軌道にほぼ沿った末広がりの円錐形状とした。また、電磁極の上下にはシールド電磁極54を設け、電磁界の滲みだしを抑えるとともに、電界と磁界が同一の空間で作用するようにして、空間内で常にウィーン条件が成り立つ完全なExB偏向器として動作するようにした。
【0043】
次に、このExB偏向器4を用いた照射電子線301の調整手順について説明する。加速電圧V0が一定の条件では、ウィーン条件を満たすような電磁極印加電圧VXと電磁極供給電流IYの比は一定であるので、計算機シミュレーションなどの手法を用いてV0と強度比の関係はあらかじめ求められて、制御部28に記憶されている。加速電圧V0を制御部28にインプットすれば、制御部28は電子源印加電源31から電子源1へV0を印加するとともに、ExB偏向器用電圧電源36から電磁極に印加する電圧VXとExB偏向器用電流電源37から電磁極に供給する電流IYの強度比を一定にする制御を行う。VXとIYの強度比を一定のまま、手動あるいは自動で増加させていくとともに、試料7をアース電位にして電流計を接続し、加速電圧V0の照射電子線を試料7に照射して吸収される電流を計測することによって、照射電子線が試料7に到達する条件、すなわち照射電子線のExB偏向器4による偏向角θINを求めることができる。
【0044】
次に、試料印加電源34から試料を保持するステージ8を通じて試料7に印加する電圧を、電子線の加速電圧V0とほぼ等しいかわずかに高い負の電圧に、制御部28が設定することにより、照射電子線は試料7の直上で向きを変えてミラー電子線になる条件となる。このミラー電子による反射電子線に対してExB偏向器4が完全なウィーン条件になっていれば、反射電子線はExB偏向器4内を直進して、CCDカメラ17あるいは結像系光路上に置かれたファラデーカップなどの検出手段により検出されるが、もし反射電子線が検出されていなければ、制御部28はExB偏向器4を照射電子線の偏向角θINを一定に保ったまま、電圧VXと電流IYの比率を変える制御を行う。電圧の増分ΔVと電流の増分ΔIは、
【0045】
【数8】

【0046】
の関係が成り立つように制御する。εはおおむね1である。この電圧と電流の比率の制御により、反射電子線がExB偏向器4を直進して、CCDカメラ17に到達する条件を決定する。以上の調整により、ミラー電子顕微鏡条件におけるExB偏向器4の制御電圧VXおよび制御電流IYを決定する。
【0047】
次に、ミラー電子顕微鏡モードから低エネルギー電子顕微鏡モードに切り替える手順について説明する。試料電圧印加電源33からステージ8を通じて試料7に供給する試料印加電圧−VSを電子源印加電源31から電子源1に供給する電子源印加電圧-Vより正電圧側に設定することにより、照射電子線はe(V−VS)のエネルギーで試料7に照射される。−VSの電位の試料7から放出された二次電子は試料7と対向する円孔電極9との区間で加速され、アース電位である対物レンズ最終段電極11を通過後はeV1のエネルギーで結像系に入射する。ここで、二次電子の初期エネルギーをVとおくと、V1=VS+Vで表されるが、VSは通常数kVから数十kV程度に設定されるのに対してVは高々数Vであり、V1=VSで近似することができる。
【0048】
ExB偏向器4の電磁極供給電圧VXおよび電磁極供給電流IYには、制御部28では(7)式で与えられるγを乗じたγVXおよびγIYが演算され、ExB偏向器用電圧電源36およびExB偏向器用電流電源37を通じてExB偏向器4の各電磁極へγVXの電圧およびγIYの電流が供給される。対物レンズ10、中間レンズ13および投影レンズ14についても、反射電子線のエネルギーがeVからeV1へ変化するので、磁界レンズの場合には、磁界コイルの巻き数をN、加速電圧Vの励磁電流をI、加速電圧Vの励磁電流をIと置くと、レンズ励磁EXが、
【0049】
【数9】

【0050】
と一定になるように、対物レンズ電源35、中間レンズ電源38、投影レンズ電源39からそれぞれ対物レンズ10、中間レンズ13、投影レンズ14に供給する励磁電流を√V/√V倍だけ乗じて設定する。電子レンズが静電レンズの場合には、あらかじめ数値計算などで加速電圧の変化に対して焦点距離が等しくなるような印加電圧値を制御部28に記憶しておき、制御部28から各静電レンズに設定する。また、結像系内の偏向器6についても、同様の手順で加速電圧の補正を行う。
【0051】
以上の操作により、反射電子線の加速電圧が変化しても、反射電子線に対するExB偏向器4のウィーン条件を保つと同時に、結像レンズの焦点距離を一定に保つことができるので、ミラー電子顕微鏡モードから低エネルギー電子顕微鏡モードの切替でも、同一視野を同一倍率で観察することが可能となる。
【0052】
なお、上記の動作は、ExB偏向器4のx方向の偏向方向について説明したが、y方向への偏向成分の補正についても8極の電磁極にy方向の偏向成分の電圧あるいは電流を供給することによって同様の手順で行うことができる。例えば、ExB偏向器に周辺の磁界レンズからの磁束の漏れが生じている場合には、このようなy方向の電磁界を重畳させる回転補正が必要である。
【0053】
また、図4においては、各コイルの巻き数は等しくN回としたが、磁極に流す電流Iとの関係がNIが一定になる範囲で電流IおよびNを変化させてもよい。
【0054】
(実施例2)
図6に示す本発明の第2の実施例は、結像系のExB偏向器4より後方に結像系偏向器6を配置した構成である。
【0055】
ミラー電子顕微鏡観察モードでは、例えば、照射電子線に対しては、電界及び磁界が同じ方向に作用するExB偏向器4の条件で用い、反射電子線に対しては、電界と磁界の作用が打ち消しあって、ExB偏向器4内を電子線が直進するウィーン条件で用いる。照射電子線がExB偏向器4に入射するエネルギーおよびミラー電子から構成される反射電子線がExB偏向器4に入射するエネルギーは、等しくeVとなる。
【0056】
一方、低エネルギー電子顕微鏡観察モードでは、照射電子線がExB偏向器4に入射するエネルギーはeV、二次電子や後方散乱電子から構成される反射電子線がExB偏向器4に入射するエネルギーはeVとなる。したがって、ExB偏向器4を同じ強さで動作させると、エネルギーeVの電子線に対する静電偏向器の偏向角をθE0と置くと、エネルギーeVの反射電子線の偏向角θOUTは、次式で表される。
【0057】
【数10】

【0058】
この反射電子線の偏向角は、結像系のExB偏向器4の後方に配置する偏向器6による偏向角が−θOUTの強さになるように動作させれば、偏向方向をもとに戻すことができる。さらに、偏向器6として2段偏向器を用いれば、1段目の偏向器の偏向角θD1と2段目の偏向器の偏向角θD2との間に、θD1=θD2+θOUTが成り立つように動作させれば、反射電子線の偏向方向及び光軸からのずれを概ねもとに戻すことができる。
【0059】
(実施例3)
図7に示す本発明の第3の実施例は、ミラー電子顕微鏡と走査電子顕微鏡の観察を両立させた構成である。
【0060】
ミラー電子顕微鏡モードからミラー走査電子顕微鏡モードへは、制御部28からコンデンサ電源32を通じてコンデンサレンズ3の結像条件を切り替えることにより、試料上を面ビームで照射する条件から試料上でスポットになるように動作させる。具体的には、コンデンサレンズ3の結像位置を対物レンズ10の焦点面位置から反射電子線の結像位置に概ね一致させるように動作させればよい。同時に、偏向信号発生器44、偏向増幅器43を通じて、走査偏向器41を駆動して、試料上を照射電子線が走査するとともに、試料7から跳ね返されたミラー電子や二次電子を検出する二次電子検出器42を結像系光路内に挿入して検出し、信号増幅器45で増幅する。増幅された映像信号は表示装置46に供給されて輝度変調信号となる。表示装置46には、ビーム走査と同期した偏向信号が偏向信号発生器44により供給され、走査顕微鏡モードによるミラー電子像が表示装置46に形成される。
【0061】
ミラー電子像から二次電子像への観察は、試料電圧印加電源33からステージ8を通じて試料7に供給する試料印加電圧−VSを電子源印加電圧-Vより正電圧側に設定することにより、照射電子線はe(V−VS)のエネルギーで試料7に照射される。同時に、コンデンサレンズ3を制御して、試料上を照射する電子線をスポット状にする調整を行って、試料7に電子線を照射して得られた二次電子や後方散乱電子を二次電子検出器42で検出することにより、走査電子顕微鏡モードによる二次電子走査像を得る。
【0062】
(実施例4)
図8に示す本発明の第4の実施例は、ミラー電子顕微鏡を高速ウェハ検査に適用した構成である。
【0063】
電子源1より放出された照射電子線301は、コンデンサレンズ3により収束され試料上をほぼ平行に照射される。電子源1には、先端半径が1μm程度のZr/O/W型のショットキー電子源を用いた。この電子源を用いることにより、大電流ビーム(例えば、1.5μA)で、かつエネルギー幅が0.5eV以下の均一な面状電子線を安定に形成できる。
【0064】
セパレータとしてのExB偏向器4を反射電子線302の結像面近傍に配置させる。照射電子線は301は、ExB偏向器4によりウェハ7に垂直な光軸に偏向される。ExB偏向器4は上方からの電子線に対してのみ偏向作用を持つ。ExB偏向器4より偏向された電子線は、対物レンズ10により試料(ウェハ)表面に垂直な方向に面状の電子線が形成される。
【0065】
欠陥検査には、ミラー電子顕微鏡モードを使用する。ミラー電子は試料直上に形成される等電位面の歪により軌道を変えるが、結像レンズの焦点条件を調整すれば、これらのミラー電子のほとんどを画像形成に用いることができる。すなわち、ミラー電子を用いれば、S/N比の高い画像が得られ、検査時間の短縮が期待できる。
【0066】
ユーザーがミラー電子顕微鏡モードに設定すると、試料印加電源33によって試料7には、電子線の加速電圧とほぼ等しいか、わずかに高い負の電位が印加されて、試料7の表面には形成された半導体パターン形状や帯電の状態を反映した電界が形成される。この電界によって面状電子線の大部分が試料7に衝突する直前で引き戻され、ミラー電子として試料7のパターン情報を反映した方向や強度を持って上がってくる。
【0067】
このミラー電子は、対物レンズ10により収束作用を受ける。ビームセパレータとしてのExB偏向器4は下方から進行した反射電子線に対しては偏向作用を持たないように設定されており、反射電子線はそのまま垂直に上昇し、中間レンズ13、投影レンズ14により拡大投影されて、CCDカメラ17を含む画像検出部上にウェハ7表面の画像を結像させる。これにより、試料7表面の局部的な帯電電位の変化や凹凸等の構造の違いが画像として形成される。この画像は電気信号に変換され画像処理部103に送られる。
【0068】
画像処理部103は、画像信号記憶部18及び19、演算部20、欠陥判定部21より構成されている。画像記憶部18と19は同一パターンの隣接部の画像を記憶するようになっており、両者の画像を演算部20で演算して両画像の異なる場所を検出する。この結果を欠陥判定部21により欠陥として判定しその座標を記憶部23に記憶する。なお、取り込まれた画像信号はモニタ22により画像表示される。
【0069】
試料7である半導体ウェハ表面上に形成された同一設計パターンを有する隣接チップA、B間でのパターンの比較検査をする場合には、先ず、チップA内の被検査領域についての電子線画像信号を取り込んで、記憶部18内に記憶させる。次に、隣接するチップB内の上記と対応する被検査領域についての画像信号を取り込んで、記憶部19内に記憶させながら、それと同時に、記憶部18内の記憶画像信号と比較する。さらに、次のチップC内の対応する被検査領域についての画像信号を取得し、それを記憶部18に上書き記憶させながら、それと同時に、記憶部19内のチップB内の被検査領域についての記憶画像信号と比較する。このような動作を繰り返して、全ての被検査チップ内の互いに対応する被検査領域についての画像信号を順次記憶させながら、比較して行く。
【0070】
上記の方法以外に、予め、標準となる良品(欠陥のない)試料についての所望の検査領域の電子線画像信号を記憶部18内に記憶させておく方法を採ることも可能である。その場合には、予め制御部28に上記良品試料についての検査領域および検査条件を入力しておき、これらの入力データに基づき上記良品試料についての検査を実行し、所望の検査領域についての取得画像信号を記憶部18内に記憶する。次に、検査対象となるウェハ7をステージ8上にロードして、先と同様の手順で検査を実行する。
【0071】
そして、上記と対応する検査領域についての取得画像信号を記憶部19内に取り込むと同時に、この検査対象試料についての画像信号と先に記憶部18内に記憶された上記良品試料についての画像信号とを比較する。これにより上記検査対象試料の上記所望の検査領域についてのパターン欠陥の有無を検出する。なお、上記標準(良品)試料としては、上記検査対象試料とは別の予めパターン欠陥が無いことが判っているウェハを用いても良いし、上記検査対象試料表面の予めパターン欠陥が無いことが判っている領域(チップ)を用いても良い。例えば、半導体試料(ウェハ)表面にパターンを形成する際、ウェハ全面にわたり下層パターンと上層パターン間での合わせずれ不良が発生することがある。このような場合には、比較対象が同一ウェハ内あるいは同一チップ内のパターン同士であると、上記のようなウェハ全面にわたり発生した不良(欠陥)は見落とされてしまう。
【0072】
しかし、本実施例によれば、予め良品(無欠陥)であることが判っている領域の画像信号を記憶しておき、この記憶画像信号と検査対象領域の画像信号とを比較するので、上記したようなウェハ全面にわたり発生した不良をも精度良く検出することができる。
【0073】
記憶部18、19内に記憶された両画像信号は、それぞれ演算部20内に取り込まれ、そこで、既に求めてある欠陥判定条件に基づき、各種統計量(具体的には、画像濃度の平均値、分散等の統計量)、周辺画素間での差分値等が算出される。これらの処理を施された両画像信号は、欠陥判定部21内に転送されて、そこで比較されて両画像信号間での差信号が抽出される。これらの差信号と、既に求めて記憶してある欠陥判定条件とを比較して欠陥判定がなされ、欠陥と判定されたパターン領域の画像信号とそれ以外の領域の画像信号とが分別されるとともに、欠陥部のアドレスが記憶部23に記憶される。
【0074】
装置各部の動作命令および動作条件は、制御部28から入出力される。制御部28には、予め電子線発生時の加速電圧、電子線偏向幅・偏向速度、試料ステージ移動速度、画像検出素子からの画像信号取り込みタイミング等々の諸条件が入力されており、ステージ位置測定器27、試料高さ測定器26からの信号を基にして、補正信号を生成し、電子線が常に正しい位置に照射されるように、対物レンズ電源35や偏向器29に供給する偏向器電源24に補正信号を送る。ステージ制御系30は、制御部28から指令を受けて試料移動ステージ8を制御する。
【0075】
検査時には、試料(半導体ウェハ)7を搭載したステージ8はx方向に一定速度で連続移動する。ステージ8は連続移動しているので、電子線は照射系偏向器5によってステージ8の移動に追従して偏向走査させる。
【0076】
電子線の照射領域あるいは照射位置は、ステージ8に設けられたステージ位置測定器27、試料高さ測定器26等により常時モニタされる。これらのモニタ情報が制御部28に転送されて詳細に位置ずれ量が把握され、正確に補正される。これにより、パターンの比較検査に必要な正確な位置合わせが高速・高精度で行われ得る。
【0077】
また、半導体ウェハ7の表面高さを、電子線以外の手段でリアルタイムに測定し、電子線を照射するための対物レンズ10や中間レンズ13、投影レンズ14の焦点距離をダイナミックに補正する。電子線以外の手段としては、例えば、レーザ干渉方式や反射光の位置変化を計測する方式等による光学式の高さ測定器26がある。これにより、常に被検査領域の表面に焦点のあった電子線像を形成することができる。また、予め検査前にウェハ7の反りを測定しておき、その測定データを基に上記の焦点距離補正をするようにして、実検査時にはウェハ7の表面高さ測定を行う必要がないようにしてもよい。
【0078】
また、上述の検査は低エネルギー電子顕微鏡モードを用いることも可能である。例えば、ライン&スペースパターンの底部で発生する形状欠陥は、エネルギーの高い電子線を試料に照射して得られた二次電子を検出するほうが検出効率が高くなる場合がある。ユーザーが低エネルギー電子顕微鏡モードを選択すると、試料電圧印加電源33から試料に供給する試料印加電圧−VSを電子源印加電源31から電子源1に供給する電子源印加電圧−Vより正電圧側に設定することにより、照射電子線はe(V−VS)のエネルギーで試料7に照射される。−VSの電位の試料7から放出された二次電子は試料7と対向する円孔電極9との区間で加速され、アース電位である対物レンズ最終段電極11を通過後、eV1のエネルギーで結像系に入射する。ここで、二次電子の初期エネルギーVとおくと、V1=VS+Vで表されるが、VSは通常数kVから数十kV程度に設定されるのに対してVは高々数Vであり、V1=VSで近似することができる。ExB偏向器4の制御電圧Vおよび制御電流Iには、(7)式で与えられるγVおよびγIが改めて設定されて供給される。
【0079】
対物レンズ10、中間レンズ13および投影レンズ14についても、反射電子線のエネルギーがeVからeV1へ変化するので、磁界レンズの場合には、磁界コイルの巻き数をN、加速電圧Vの励磁電流をI、加速電圧Vの励磁電流をIと置くと、レンズ励磁EXが、
【0080】
【数11】

【0081】
と一定になるように励磁電流Iを制御する。電子レンズが静電レンズの場合には、あらかじめ数値計算などで加速電圧の変化に対して焦点距離が等しくなるような強度をレンズに設定する。結像系内の偏向器6についても、同様の手順で加速電圧の補正を行う。
【0082】
さらに、低エネルギー電子顕微鏡モードでは、二次電子や後方散乱電子の散乱方向を制限する角度制限絞り12を対物レンズの焦点面あるいは対物レンズの焦点面を中間レンズで投影させた結像面上に配置して、レンズ収差の小さな高分解能像を得ることができる。また、二次電子や後方散乱電子は、角度制限絞り12を通過後、強度が大幅に減衰するので、シンチレータ15の前方に二次電子や後方散乱電子を増倍するマルチチャンネルプレートか、シンチレータ15の後方にシンチレータ光強度を増倍するイメージインテンシファイア49を配置することにより、CCDカメラ17で検出する信号強度を増加させることが可能となる。本実施例では、光学レンズ48光路内にイメージインテンシファイア49を配置する構成としており、低エネルギー電子顕微鏡モード選択時にはイメージインテンシファイア49の増幅率を大きくとることにより、明るい像が得られるようにしたが、低エネルギー電子顕微鏡モード選択時にイメージインテンシファイア49を挿入する構成としてもよい。
【0083】
ミラー電子顕微鏡モードあるいは低エネルギー電子顕微鏡モードで自動欠陥検査を行った後、欠陥部の詳細な観察を行って欠陥の種類を同定する。低エネルギー電子顕微鏡モードで観察する場合は、試料の形状を忠実に反映した画像が得られるので、欠陥の正確な大きさや形状を判定することができる。他方、ミラー電子顕微鏡モードでは、試料表面の電位分布の情報を詳細に観察することが可能となる。ユーザーは試料の観察時に同一視野で低エネルギー電子顕微鏡モードとミラー電子顕微鏡モードを切り替えることができるので、欠陥の種類を正確に判定することが可能となった。
【0084】
以上詳述したように、本発明によれば、同一視野でミラー電子顕微鏡観察と低エネルギー電子顕微鏡観察とを両立させ得る反射結像型電子顕微鏡を実現できるとともに、この反射結像型電子顕微鏡を用いて、試料上に形成されたパターンの欠陥部を、高分解能でかつ高速で検出し得る欠陥検査装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施例になる反射結像型電子顕微鏡の構成を説明する図。
【図2】本発明におけるビームセパレータとしてのExB偏向器の動作を説明する図。
【図3】8極型ExB偏向器における電圧配分を説明する図。
【図4】8極型ExB偏向器における電流配分を説明する図。
【図5】8極型ExB偏向器の断面図。
【図6】本発明の第2の実施例の装置構成を説明する図
【図7】本発明の第3の実施例の装置構成を説明する図
【図8】本発明の第4の実施例の装置構成を説明する図
【符号の説明】
【0086】
1…電子源、2…電子銃レンズ、3…コンデンサレンズ、4…ビームセパレータ、5…照射系偏向器、6…結像系偏向器、7…試料、8…ステージ、9…円孔電極、10…対物レンズ、11…対物レンズ最終電極、12…角度制限絞り、13…中間レンズ、14…投影レンズ、15…シンチレータ、16…光ファイバー束、17…CCDカメラ、18…画像記憶部、19…画像記憶部、20…演算部、21…欠陥判定部、22…モニタ、23…加速電源、24…偏向器電源、25…対物レンズ電源、26…試料高さ測定器、27…ステージ位置測定器、28…制御部、29…偏向器、30…ステージ制御系、31…電子源印加電源、32…コンデンサレンズ電源、33…円孔電極印加電源、34…試料印加電源、35…対物レンズ電源、36…ExB偏向器用電圧電源、37…ExB偏向器用電流電源、38…中間レンズ電源、39…投影レンズ電源、41…走査偏向器、42…二次電子検出器、43…偏向増幅器、44…走査信号発生器、45…信号増幅器、46…表示装置、47…照射系絞り、48…光学レンズ、49…イメージインテンシファイア、51…電磁極、52…ボビン、53…コイル、54…シールド、101…電子光学系、102…試料室、103…画像処理部、301…照射電子線、302…反射電子線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源から出射した電子線を試料に二次元的な広がりを有する面状の照射電子線として照射する照射レンズ系と、前記照射電子線を前記試料に照射して前記試料から出射した反射電子線を投影拡大して試料像を投影結像させる結像レンズ系と、前記照射電子線と前記反射電子線を分離するビームセパレータとを備えた反射結像型電子顕微鏡において、前記反射電子線については前記ビームセパレータを直進させるとともに、前記照射電子線に対しては前記照射電子線の前記ビームセパレータによる偏向角をほぼ一定に保つように制御する制御手段を設けてなることを特徴とする反射結像型電子顕微鏡。
【請求項2】
電子源に加速電圧を印加する電子源電圧印加手段と、試料を保持するステージに試料印加電圧を印加する試料電圧印加手段と、前記電子源から出射した電子線を試料に二次元的な広がりを有する面状の照射電子線として照射する照射レンズ系と、前記照射電子線を前記試料に照射して前記試料から出射した反射電子線を投影拡大して試料像を投影結像させる結像レンズ系と、前記照射電子線と前記反射電子線を分離するビームセパレータとを備えた反射結像型電子顕微鏡において、前記加速電圧と前記試料印加電圧を制御することにより、前記反射電子線を、前記試料に衝突せずに前記試料の表面付近で引き戻されたミラー電子と、前記試料に衝突して前記試料から発生する二次電子もしくは後方散乱電子とに切替える手段と、前記反射電子線に対しては前記ビームセパレータ内を直進させるとともに、前記照射電子線に対しては前記照射電子線の前記ビームセパレータによる偏向角をほぼ一定に保つように制御する制御手段とを設けてなることを特徴とする反射結像型電子顕微鏡。
【請求項3】
前記ビームセパレータは、電界と磁界を直交かつ重畳させたExB偏向器で構成され、前記制御手段は、前記照射電子線に対する偏向角をほぼ一定に保ちながら、前記反射電子線に対して、電界と磁界による偏向作用が打ち消し合うウィーン条件となるように偏向器に供給する電圧および電流を制御してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射結像型電子顕微鏡。
【請求項4】
前記ミラー電子を検出し拡大投影するミラー電子顕微鏡モードと、前記二次電子もしくは後方散乱電子を検出し拡大投影する低エネルギー電子顕微鏡モードとを有し、かつ、前記ミラー電子顕微鏡モードと前記低エネルギー電子顕微鏡モードとを切替える手段を設けてなることを特徴とする請求項2又は3に記載の反射結像型電子顕微鏡。
【請求項5】
前記ミラー電子顕微鏡モードから前記低エネルギー電子顕微鏡モードへの切替えは、前記試料印加電圧を前記電子源印加電圧より正電位にすることによって行なうことを特徴とする請求項4に記載の反射結像型電子顕微鏡。
【請求項6】
前記ミラー電子顕微鏡モードから前記低エネルギー電子顕微鏡モードへの切替えは、前記試料印加電圧の切替えと同時に、ExB偏向器に入射する電子線のエネルギーをeV0、低エネルギー電子顕微鏡モードでの出射電子線がExB偏向器に入射するエネルギーをeV1とすると、ExB偏向器の偏向電圧および供給電流に、次式で与えられるγの値
【数1】

を乗じた偏向電圧および供給電流を与えることによって行なうことを特徴とする請求項4に記載の反射結像型電子顕微鏡。
【請求項7】
電子源に加速電圧を印加する電子源電圧印加手段と、試料を保持するステージに試料印加電圧を印加する試料電圧印加手段と、前記電子源から出射した照射電子線を照射レンズにより対物レンズの焦点面に結像させて、前記試料に二次元的な広がりを有する面状の照射電子線を照射する照射レンズ系と、前記照射電子線を前記試料に照射して前記試料から出射した反射電子線を投影拡大して試料像を投影結像させる結像レンズ系と、前記照射電子線と前記反射電子線を分離するビームセパレータと、前記反射電子線に対しては前記ビームセパレータを直進させるとともに、前記照射電子線に対しては前記照射電子線の前記ビームセパレータによる偏向角をほぼ一定に保つように制御する制御手段とを備えた反射結像型電子顕微鏡にあって、前記面状の照射電子線を、負の電位を印加された試料表面の複数の照射領域に順次照射し、前記試料から発生した反射電子線を結像せしめて、前記複数の照射領域の全域もしくは一部の拡大電子像を順次形成し、前記拡大電子像を電気的な画像信号に変換する画像検出手段と、前記画像信号を基に前記試料に形成されたパターン欠陥を検出する画像処理手段とを設けてなることを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項8】
前記ビームセパレータは、電界と磁界を直交かつ重畳させたExB偏向器で構成され、前記制御手段は、前記照射電子線に対する偏向角をほぼ一定に保ちながら、前記反射電子線に対しては、電界と磁界による偏向作用が打ち消し合うウィーン条件となるように偏向器に供給する電圧および電流を制御してなることを特徴とする請求項7に記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項9】
前記加速電圧と前記試料印加電圧を制御することにより、前記反射電子線を、前記試料に衝突せずに前記試料の表面付近で引き戻されたミラー電子と、前記試料に衝突して前記試料から発生する二次電子もしくは後方散乱電子とに切替える手段とを設けてなることを特徴とする請求項7又は8に記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項10】
前記ミラー電子を検出し拡大投影するミラー電子顕微鏡モードと、前記二次電子もしくは後方散乱電子を検出し拡大投影する低エネルギー電子顕微鏡モードとを有し、かつ、前記ミラー電子顕微鏡モードと前記低エネルギー電子顕微鏡モードとを切替えることにより、前記試料に形成されたパターン欠陥を検出するよう構成したことを特徴とする請求項9に記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項11】
前記ミラー電子顕微鏡モードから前記低エネルギー電子顕微鏡モードへの切替えは、前記試料印加電圧の切替えと同時に、ExB偏向器に入射する電子線のエネルギーをeV0、低エネルギー電子顕微鏡モードでの出射電子線がExB偏向器に入射するエネルギーをeV1とすると、ExB偏向器の偏向電圧および供給電流に、次式で与えられるγの値
【数2】

を乗じた偏向電圧および供給電流を与えることによって行なうことを特徴とする請求項10に記載の反射結像型電子顕微鏡。
【請求項12】
前記画像処理手段は、前記複数の照射領域についての画像信号同士を比較するか、または予め記憶しておいた標準となる試料の所望とする検査領域における画像信号と比較することにより、前記試料に形成されたパターン欠陥を検出し、画像表示するよう構成されていることを特徴とする請求項7に記載の反射結像型電子顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−32107(P2006−32107A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208871(P2004−208871)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】