説明

反射防止フィルム、該反射防止フィルムを用いた偏光板及び、それらを用いた画像表示装置

【課題】 大量生産に適し、反射率が低く、耐擦傷性、密着性に優れた塗布型の反射防止フィルムを提供すること。
【解決手段】 (メタ)アクリロイル基含有する重合単位及び水酸基を含有する重合単位を含む特定化学構造の含フッ素共重合体及び、反応性有機官能基含有ポリシロキサン化合物を含有する組成物を硬化させて得られる低屈折率層を含むことを特徴とする反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルム、該反射防止フィルムを用いた偏光板及び、該反射防止フィルム又は該偏光板をディスプレイの最表面に用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するためにディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止フィルムは、高屈折率層の上に適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。低屈折率層素材としては反射防止性能の観点からできる限り屈折率の低い素材が望まれ、同時にディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。また低い反射率性能を発現するために膜厚の均一性も重要であり、塗布型材料においては、塗布性、レベリング性も重要なファクターになる。
【0004】
低屈折率層を形成するポリマーとして、低屈折率の含フッ素ポリマーを用いて、これを硬化させる手段としては、種々の方法が知られており、例えば特許文献1〜3に記載のごとく、水酸基等を有するポリマーを種々硬化剤によって硬化させることが一般に行われてきた。しかしながら、硬化剤と含フッ素ポリマーは相溶性の点で問題ある場合が多く、透明性、皮膜硬度の点で改良が望まれていた。
【0005】
この問題に対しては、メラミン系硬化剤と水酸基含有低屈折率ポリマーを予め加熱して部分縮合させる技術が開示されており(特許文献4)、皮膜の透明性を高めるにはある程度効果が認められるが、なお十分なレベルとはいい難い。
【0006】
一方、厚さ100nm前後の薄膜において高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、及び下層への密着性を高めることが重要である。材料の屈折率を下げる手段としては、前記の特許文献1〜3の様に(1)フッ素原子を導入する手段の他にも(2)密度を下げる(空隙を導入する)という手段があるがいずれも皮膜強度及び密着性が損なわれ耐擦傷性が低下するという問題がある。
【0007】
低屈折率性を保ちながら耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効である。滑り性付与に対してはフッ素の導入、珪素の導入等の手法が有効であり、これらの手段は表面張力を下げるために他の目的であるレベリング性付与にも効果が期待できる。低屈折率層に含フッ素ポリマーを用いる場合には、それ自体でも滑り性を有しているが、溶媒可溶化するために炭化水素系共重合成分を50質量%程度導入した、側鎖の短いフッ素系材料単独では十分な滑り性が得られず、ポリシロキサン化合物などのシリコーン系化合物と組み合わせることが従来より行われてきた(特許文献5〜7)。
【特許文献1】昭57−34107号公報
【特許文献2】昭61−275311号公報
【特許文献3】特開平8−92323号公報
【特許文献4】特開平10−25388号公報
【特許文献5】昭61−258852号公報
【特許文献6】昭62−185740号公報
【特許文献7】特開平2000−17028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
低屈折率層素材に対して少量のシリコーン系化合物を添加することにより、滑り性発現効果及び耐擦傷性改良効果は顕著に現れる。また、滑り性に加えて撥水性、防汚性等の効果も発現する。しかし一方で、低屈折率層素材との相溶性(皮膜の透明性に関係する)、経時又は高温条件下でのブリードアウト、接触媒体へのシリコーン成分の転写、これらに伴う性能の劣化、製造ラインの汚染等さまざまな問題があった。特に反射防止フィルムにおいては、相溶性不足によるヘイズ発生が光学性能を悪化させるため大きな問題である。また低屈折率層塗布後のフィルムを巻き取った際に、フィルムの裏面にシリコーン系化合物が付着することがあり、そのことがその後の加工工程に支障をきたすため大きな問題になっている。すなわち、シロキサン部位のみ効果的に表面に偏析させて、珪素に結合した残りの部位は低屈折率層皮膜中に効果的にアンカリングさせる技術が求められている。
【0009】
この問題に対して、シリコーン系マクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入した、含フッ素オレフィン共重合体及びその反射防止フィルム用途へ適用する技術(特開平11−189621号公報、特開平11−228631号公報および特開2000−313709号公報)が提案されている。これらの技術により皮膜の均一性、耐久性は大幅に向上するが、素材の滑り性を任意に制御しようとする際に、シリコーン系マクロアゾ開始剤量を増やす等、含フッ素オレフィン共重合体の製造段階において対処することが必要である。ポリシロキサン含有含フッ素オレフィン共重合体の製造において、ポリシロキサン含率を上げるためにシリコーン系マクロアゾ開始剤の量を増やすと、再沈殿によるポリマーの取り出し性が低下し、残存開始剤又は開始剤種同士のラジカルカップリングによって生成した成分の除去が著しく困難となるため、ポリシロキサン成分の導入量を制御することは必ずしも容易ではなかった。
【0010】
以上のような背景から、低屈折率層皮膜の均一性を損なうことなく、シリコーン成分の導入量を意のままに制御しうる技術が求められていた。
【0011】
本発明の目的は、第1に、大量生産に適した塗布型の反射防止フィルムを提供することであり、第2に、反射率が低く、耐擦傷性、密着性に優れた反射防止フィルムを提供することにあり、第3に、偏光子の保護フィルムとしてこのような反射防止フィルムを用いた偏光板を提供することに有り、第4に、その最表面にこのような反射防止フィルム又は偏光板に用いることにより、表面の耐擦傷性に優れ反射が防止された画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、下記[1]〜[5]の本発明によって達成された。
[1]下記一般式(1)で表される含フッ素共重合体及び、反応性有機官能基含有ポリシロキサン化合物を含有する組成物を硬化させて得られる低屈折率層を含むことを特徴とする反射防止フィルム。
一般式(1):
【0013】
【化1】

【0014】
{一般式(1)中、Rf1は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表し、Rf2は炭素数1〜30の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、エーテル結合を有していてもよい。Lは単結合又は2価の連結基を表し、Xは水素原子又はメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一成分であっても複数の
成分で構成されていてもよい。Bは水酸基含有モノマーに基づく重合単位を表す。a〜eはそれぞれ各構成成分のモル分率(%)を表し、30≦a+b≦95、5≦a≦90、0≦b≦70、5≦c≦50、0≦d≦50、20<eを満たす値を表す。}
【0015】
[2]一般式(1)中のBが下記一般式(2)で表される重合単位である上記[1]に記載の反射防止フィルム。
一般式(2):
【0016】
【化2】

【0017】
{一般式(2)中、L'は2価の連結基を表す。}
【0018】
[3]反応性有機官能基含有ポリシロキサン化合物が、下記一般式(3)で表される化合物である上記[1]又は[2]に記載の反射防止フィルム。
一般式(3):
【0019】
【化3】

【0020】
{一般式(3)中、R1〜R4は炭素数1〜20の置換基を表し、それぞれの基が複数ある場合は、それらは互いに同じであっても異なっていてもよく、R1、R3、R4のうち少なくとも1つの基が反応性有機官能基である。xは1≦x≦4を満たす整数を表し、yは10≦y≦500を満たす整数を表し、zは0≦z≦500を満たす整数を表し、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。}
【0021】
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の反射防止フィルムが、偏光板における偏光子の2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
【0022】
[5]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の反射防止フィルム、又は上記[4]に記載の偏光板がディスプレイの最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明で用いられる含フッ素共重合体及び反応性有機官能基含有ポリシロキサン化合物を含有する組成物は、屈折率が低く、強度に優れた皮膜を形成する。この組成物を硬化させて得られる低屈折率層を含有する反射防止フィルムは、反射防止性能が高く、耐傷性にも優れており、基材との密着性にも優れる。この反射防止フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置は、外光の映り込みが十分に防止されているうえ、耐傷性も高いという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<反射防止フィルム>
本発明の反射防止フィルムは、一般式(1)で表される含フッ素共重合体と、反応性有機官能基を有するポリシロキサン化合物とを含有する組成物を硬化させることによって形成された低屈折率層を有している。該反射防止フィルムは反射防止層として低屈折率層のみからなる単層構成でもよく、また、中・高・低屈折率層、ハードコート層などと積層した多層構成の反射防止層を有していてもよい。好ましくは多層構成の形態であり、特に好ましくは中・高・低屈折率層の3層以上の層を積層してなる形態である。前もって透明な支持体上に反射防止層を形成して反射防止フィルムとしてから画像表示装置に配置することが好ましい。
【0025】
〔反射防止フィルムの代表的層構成〕
以下に、本発明の実施の一形態として好適な反射防止フィルムの基本的な構成を、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1(a)に模式的に示される断面図は、本発明の反射防止フィルムの一例であり、反射防止フィルム1aは、透明支持体2、ハードコート層3、高屈折率層4、そして低屈折率層5の順序の層構成を有する。高屈折率層4の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層5の屈折率は1.30〜1.44の範囲にあることが好ましい。
【0027】
本発明においてハードコート層は、このように高屈折率層とは別に設置されもよいし、高屈折率層の機能を併せ持つ高屈折率ハードコート層でもよい。またハードコート層は、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。さらにハードコート層はなくてもよい。従って、図1に示したハードコート層は必須ではないが、フィルム強度付与のためにこれらのハードコート層のいずれかが塗設されることが好ましい。低屈折率層は最外層に塗設される。
【0028】
図1(b)に模式的に示される断面図は、本発明の反射防止フィルムの別の一例であり、反射防止フィルム1bは、透明支持体2、ハードコート層3、中屈折率6、高屈折率層4、低屈折率層(最外層)5の順序の層構成を有する。透明支持体2、中屈折率層6、高屈折率層4及び低屈折率層5は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
【0029】
図1(b)のような層構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記数式(1)、高屈折率層が下記数式(2)、低屈折率層が下記数式(3)をそれぞれ満足することがより優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる点で好ましい。
数式(1):(hλ/4)×0.7<n11<(hλ/4)×1.3
数式(2):(iλ/4)×0.7<n22<(iλ/4)×1.3
数式(3):(jλ/4)×0.7<n33<(jλ/4)×1.3
【0030】
数式(1)〜(3)において、hは正の整数(一般に1、2又は3)であり、iは正の整数(一般に1、2又は3)であり、jは正の奇数(一般に1)である。n1、n2及びn3は、それぞれ中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層の屈折率であり、そして、d1、d2及びd3は、それぞれ中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層の層厚(nm)である。λは可視光線の波長(nm)であり、380〜680nmの範囲の値である。
【0031】
図1(b)のような層構成では、中屈折率層が下記数式(1−1)、高屈折率層が下記数式(2−1)、低屈折率層が下記数式(3−1)をそれぞれ満足することが、特に好ましい。ここで、λは500nm、hは1、iは2、jは1である。
数式(1−1):(hλ/4)×0.80<n11<(hλ/4)×1.00
数式(2−1):(iλ/4)×0.75<n22<(iλ/4)×0.95
数式(3−1):(jλ/4)×0.95<n33<(jλ/4)×1.05
【0032】
なお、ここで記載した高屈折率、中屈折率、低屈折率とは、層相互の相対的な屈折率の高低をいう。また、図1(b)では、高屈折率層を光干渉層として用いており、極めて優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる。
【0033】
〔低屈折率層〕
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層について以下に説明する。
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であり、好ま
しくは1.30〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は下記数式(3−2)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(3−2):(jλ/4)×0.7<n33<(jλ/4)×1.3
【0034】
式中、j、n3、d3及びλは前記のとおりであり、λは380〜680nmの範囲の値である。
なお、上記数式(3−2)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(3−2)を満たすj(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
【0035】
[含フッ素共重合体]
本発明における低屈折率層は、下記一般式(1)で表される含フッ素共重合体と、反応性有機官能基を有するポリシロキサン化合物とを含有する組成物を硬化させることによって形成される。
一般式(1):
【0036】
【化4】

【0037】
一般式(1)中、Rf1は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表し、Rf2は炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜15の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基であり、エーテル結合を有していてもよい。
【0038】
Rf1を有する重合単位およびRf2を有する重合単位はいずれも含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位であり、具体的な含フッ素ビニルモノマーの例としては、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類{例えばペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)}、ペルフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類{例えばペルフルオロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)}を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0039】
屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から、特に好ましくはヘキサフルオロプロピレン単独、又は、ヘキサフルオロプロピレンとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類もしくはペルフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類の併用である。
【0040】
また、本発明に用いられる共重合体は、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位を必須の構成成分として有する。一般式(1)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。
【0041】
連結基Lの好ましい例としては、*−(CH22−O−**、*−(CH22−NH−**、*−(CH24−O−**、*−(CH26−O−**、*−(CH22−O−(CH22−O−**、−CONH−(CH23−O−**、*−CH2CH(OH)CH2−O−*、*−CH2CH2OCONH(CH23−O−**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す)等が挙げられる。Xは水素原子又はメチル基を表し、硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0042】
共重合体への(メタ)アクリロイル基の導入法は、特に限定されるものではないが、例えば:
(1)水酸基、アミノ基等の求核基を有するポリマーを合成した後に、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸とメタンスルホン酸の混合酸無水物等を作用させる方法、
(2)上記求核基を有するポリマーに、硫酸等の触媒存在下、(メタ)アクリル酸を作用させる方法、
(3)上記求核基を有するポリマーにメタクリロイルオキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、
(4)エポキシ基を有するポリマーを合成した後に(メタ)アクリル酸を作用させる方法、
(5)カルボキシル基を有するポリマーにグリシジルメタクリレート等のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、
(6)3−クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーを重合させた後で脱塩化水素を行う方法、
などが挙げられる。
【0043】
これらの中で本発明では、特に水酸基を含有するポリマーに対して、(1)又は(2)の手法によって(メタ)アクリロイル基を導入することが好ましい。
【0044】
これらの(メタ)アクリロイル基含有重合単位の組成比を高めれば、皮膜強度は向上するが屈折率も高くなる。(メタ)アクリロイル基含有重合単位は、含フッ素ビニルモノマー重合単位の種類によって組成比を変えることができ、5〜50モル%を占め、10〜50モル%を占めることが好ましく、15〜40モル%を占めることが特に好ましい。
【0045】
一般式(1)中、Aは任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体に基づく構成成分であれば特に制限はなく、低屈折率化、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶媒への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜50モル%の範囲で導入されていることが好ましく、0〜40モル%の範囲であることがより好ましく、0〜30モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0046】
Aとして併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、含フッ素ビニルエーテル類、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N,N−ジメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N,N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
【0047】
上記併用可能なビニルモノマーのうち、さらなる低屈折率化という観点から、ビニルエーテル類又は含フッ素ビニルエーテル類を導入するのが好ましい。
【0048】
さらに本発明で用いられる共重合体は、一般式(1)中のBで表される水酸基含有モノマーに基づく重合単位(以下、B成分とも言う。)を必須の構成成分として有する。B成
分は、水酸基によって層間での相互作用を誘起させて基材との密着性を高める効果の他、溶媒との相溶性向上効果も付与することができる。
【0049】
水酸基含有ビニルモノマーとしては、水酸基含有ビニルエーテル類が特に好ましく、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等が好適である。これら水酸基含有ビニルエーテルは単独で導入してもよいし、2種以上を組み合わせてもよく、その含率は20モル%より多いことが必要であり、20モル%より多く60モル%以下の範囲であることが好ましく、25〜50モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0050】
a、b、c、d、eはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦a+b≦95、5≦a≦90、0≦b≦70、5≦c≦50、0≦d≦50、20<eを満たす値を表す。好ましくは、35≦a+b≦70、30≦a≦60、0≦b≦30、10≦c≦50、0≦d≦40、20<e≦60の場合であり、特に好ましくは40≦a+b≦60、40≦a≦55、0≦b≦20、15≦c≦40、0≦d≦30、25≦e≦50の場合である。
【0051】
一般式(1)で表わされる含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)は、103〜106であることが好ましく、より好ましくは5×103〜5×105であり、特に好ましくは104〜105の場合である。
【0052】
本発明に用いられる含フッ素共重合体の特に好ましい形態として、一般式(1’)が挙げられる。一般式(1’)においてRf1、Rf2、L、X、A、a、b、c、d、eは一般式(1)と同じ意味を表し、好ましい範囲も同じである。
L'は2価の連結基を表す。L’の好ましい具体例は、一般式(1)におけるLの好ましい例と同じである。
【0053】
以下に下記一般式(1’)で示される、本発明のペルフルオロオレフィン共重合体における各重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(1’):
【0054】
【化5】

【0055】
【化6】

【0056】
【化7】

【0057】
【化8】

【0058】
【化9】

【0059】
【化10】

【0060】
【化11】

【0061】
【化12】

【0062】
表1に本発明で有用なポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。なお、表1には重合単位の組み合わせとして表記するが、表中の記号、Q、N、O、M1、H及びa〜eは、何れも前記一般式(1’)に示されるものである。
【0063】
【表1】

【0064】
[ポリシロキサン化合物]
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層は、前記一般式(1)で表される含フッ素共重合体と、反応性有機官能基を有するポリシロキサン化合物とを含有する組成物を硬化させることによって形成される。この反応性有機官能基含有ポリシロキサン化合物は、添加量を適宜調節することにより、シロキサン成分の導入量を自在に制御することができる。さらに、シロキサンの表面偏在性および反応性有機官能基の存在により、シロキサン部位のみを効果的に表面に偏析させて低屈折率層皮膜中に効果的にアンカリングさせることができる。該ポリシロキサン化合物は、一般式(3)で表されるものであることが好ましい。
一般式(3):
【0065】
【化13】

【0066】
上記一般式(3)中、R1〜R4は炭素数1〜20の置換基を表し、好ましくは炭素数1〜10の置換基であり、それぞれの基が複数ある場合それらは互いに同じであっても異なっていてもよく、R1、R3、R4のうち少なくとも一つの基が反応性有機官能基である。
【0067】
上記の反応性有機官能基とは、低屈折率層を形成するペルフルオロオレフィン共重合体、又は任意成分として使用される硬化剤中の架橋反応性基と反応し結合を形成し得る基を表し、例えば、活性水素原子を有する基(例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β−ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、カチオン重合可能な基(例えばエポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等)、ラジカル種による付加又は重合が可能な不飽和2重結合を有する基(例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基等)、加水分解性シリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、酸無水物、イソシアネート基、求核剤によって置換され得る基(例えば活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)等が挙げられる。これらの反応性基は低屈折率層中へのポリシロキサン成分の相溶性、ブリードアウト防止等に重要であり、低屈折率層に含まれるペルフルオロオレフィン共重合体、又は任意成分である硬化剤の反応性に合わせて適宜選択され、中でも、一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0068】
本発明では特に、一般式(3)中の反応性有機官能基と同じ官能基をペルフルオロオレフィン共重合体、又は任意成分として使用される硬化剤が有していることが好ましく、特に好ましくはこれらの官能基がカチオン開環重合反応性基(特にエポキシ基又はオキセタニル基が好ましい)又はラジカル重合反応性基{特に(メタ)アクリロイル基}の場合である。
【0069】
一般式(3)において、R2は、炭素数1〜20の置換又は無置換の有機基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、ヘキシル基等)、フッ素化アルキル基(トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等)又は炭素数6〜20のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)であり、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、フッ素化アルキル基又はフェニル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0070】
xは1≦x≦4を満たす整数を表わす。yは10≦y≦500を満たす整数を表わし、
好ましくは50≦y≦400であり、特に好ましくは100≦y≦300の場合である。zは0≦z≦500を満たす整数を表わし、好ましくは0≦z≦yであり、特に好ましくは0≦z≦0.5yの場合である。
【0071】
一般式(3)で表わされる化合物中のポリシロキサン構造は、その繰り返し単位{−OSi(R22−}が単一の置換基(R2)のみで構成された単独重合体であっても、異なる置換基を有する繰り返し単位の組み合わせによって構成されたランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0072】
一般式(3)で表わされるポリシロキサン化合物の質量平均分子量(Mw)は、103〜106であることが好ましく、より好ましくは5×103〜5×105であり、特に好ましくは104〜105の場合である。
【0073】
上記一般式(3)で表されるポリシロキサン化合物は、市販されているもの、例えば“KF−100T”、“X−22−169AS”、“KF−102”、“X−22−3701IE”、“X−22−164B”、“X−22−5002”、“X−22−173B”、“X−22−174D”、“X−22−167B”、“X−22−161AS”{(商品名)、以上信越化学工業(株)製};“AK−5”、“AK−30”、“AK−32”{(商品名)、以上東亜合成(株)製};「サイラプレーンFM0275」、「サイラプレーンFM0721」{(商品名)、以上チッソ(株)製}等を用いることもでき、また市販の水酸基、アミノ基、メルカプト基等の反応性基を有するポリシロキサン化合物に対して官能基を導入する等の手法によって合成することもできる。
【0074】
以下に、本発明に有用な一般式(3)で表わされるポリシロキサン化合物の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
【化14】

【0076】
【化15】

【0077】
【化16】

【0078】
【化17】

【0079】
本発明において、上記一般式(3)で表わされる化合物は、低屈折率層を形成する全固形分に対して0.01〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加する場合であり、特に好ましくは0.5〜5質量%の範囲で添加する場合である。
一般式(3)で表わされる化合物は、低屈折率層表面を25℃、湿度60%RHの条件下、動摩擦測定機“HEIDON−14”で、直径5mmのステンレス剛球を用い、荷重0.98N、速度60cm/分で測定される動摩擦係数が0.2以下となるように添加されることが好ましく、より好ましくは動摩擦係数が0.15以下となるように添加される場合である。
【0080】
また、ポリシロキサン化合物と含フッ素共重合体との比は、好ましくは、質量比で0.05:100〜20:100、より好ましくは0.5:100〜5:100である。また、該共重合体由来の成分は皮膜固形分の70質量%以上を占めることが好ましく、80質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることが特に好ましい。
【0081】
[含フッ素共重合体の合成]
本発明に用いられる含フッ素共重合体の合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合によって水酸基含有重合体等の前駆体を合成した後、前記高分子反応によって(メタ)アクリロイル基を導入することにより行うことができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行うことができる。
【0082】
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971年)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」(化学同人、昭和47年刊)、124〜154頁に記載されている。
【0083】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶媒は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶媒のそれぞれ単独、又は2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
【0084】
重合温度は、生成する共重合体の分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
【0085】
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
【0086】
得られた共重合体の再沈殿溶媒としては、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール等が好ましい。
【0087】
[その他の添加剤]
本発明の低屈折率層形成用組成物は、通常、液の形態をとり、前記含フッ素共重合体及び反応性有機官能基含有ポリシロキサン化合物を必須の構成成分とし、必要に応じて、各種添加剤及びラジカル重合開始剤を適当な溶媒に溶解して作製される。この際固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
【0088】
前記したとおり、低屈折率層の透明性、および、皮膜硬度の観点からは硬化剤等の添加剤を添加することは必ずしも有利ではないが、高屈折率層を設けるときには、該高屈折率層との界面密着性等の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸もしくはその無水物等の硬化剤、又はシリカ等の無機微粒子を少量添加することもできる。これらを添加する場合には低屈折率層皮膜の全固形分に対して0〜30質量%の範囲であることが好ましく、0〜20質量%の範囲であることがより好ましく、0〜10質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0089】
(ラジカル重合開始剤)
ラジカル重合開始剤としては、熱の作用によりラジカルを発生するもの、又は光の作用によりラジカルを発生するもののいずれの形態も可能である。
【0090】
熱の作用によりラジカル重合を開始する化合物としては、有機又は無機過酸化物、有機
アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾビス(イソブチロニトリル)、2−アゾビス(プロピオニトリル)、2−アゾビス(シクロヘキサンジニトリル)等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0091】
光の作用によりラジカル重合を開始する化合物を使用する場合は、活性エネルギー線の照射によって皮膜の硬化が行われる。このような光ラジカル重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。
【0092】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
【0093】
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。これらの光ラジカル重合開始剤と併用して増感色素も好ましく用いることができる。
【0094】
熱又は光の作用によってラジカル重合を開始する化合物の添加量としては、炭素−炭素二重結合の重合を開始できる量であればよいが、一般的には低屈折率層形成用組成物中の全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%であり、特に好ましくは2〜5質量%の場合である。
【0095】
低屈折率層形成用組成物に含まれる溶媒としては、含フッ素共重合体を含む組成物が沈殿を生じることなく、均一に溶解又は分散されるものであれば特に制限はなく2種類以上の溶媒を併用することもできる。好ましい例としては、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール等)、芳香族炭化水素類(例えばトルエン、キシレン等)、水などを挙げることができる。
【0096】
その他低屈折率層形成用組成物には各種シランカップリング剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜添加してもよい。
【0097】
低屈折率層の膜厚は、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましく、30nm〜500nmであることが最も好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
【0098】
〔高・中屈折率層〕
本発明の反射防止フィルムが、多層膜の態様をとる場合、一般に、低屈折率層は、低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(すなわち、高屈折率層、中屈折率層)と共に用いられる。
【0099】
上記低屈折率層より高い屈折率を有する層を形成するための有機材料としては、熱可塑性皮膜(例えば、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン以外の芳香環、複素環、脂環式環状基を有するポリマー、又はフッ素以外のハロゲン基を有するポリマー);熱皮膜形成用組成物(例えば、メラミン皮膜、フェノール皮膜、又はエポキシ皮膜などを硬化剤とする皮膜組成物);ウレタン形成性組成物(例えば、脂環式又は芳香族イソシアネート及びポリオールの組み合わせ);及びラジカル重合性組成物{上記の化合物(ポリマー等)に二重結合を導入することにより、ラジカル硬化を可能にした変性皮膜又はプレポリマーを含む組成物)などを挙げることができる。高い皮膜形成性を有する材料が好ましい。
【0100】
上記のより高い屈折率を有する層は、有機材料中に分散した無機系微粒子も使用することができる。無機系微粒子を使用するときの有機材料としては、一般に、無機系微粒子が高屈折率を有するため、有機材料が単独で用いられる場合よりも低屈折率のものを用いることができる。そのような材料として、上記に述べた有機材料の他、アクリル系を含むビニル系共重合体、ポリエステル、アルキド皮膜、繊維素系重合体、ウレタン皮膜及びこれらを硬化せしめる各種の硬化剤、硬化性官能基を有する組成物など、透明性があり無機系微粒子を安定に分散せしめる各種の有機材料を挙げることができる。
【0101】
さらに、有機置換された珪素系化合物をこれに含めることができる。これらの珪素系化合物は、下記一般式(4)で表される化合物、又はその加水分解生成物である。
一般式(4):(R41m)(R42n)SiZ(4-m-n)
(ここでR41及びR42は、それぞれアルキル基、アルケニル基、アリル基、又はハロゲン原子、エポキシ、アミノ、メルカプト、メタクリロイル又はシアノで置換された炭化水素基を表し、Zは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン原子〜アシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な基を表し、m+nは1又は2であり、且つm及びnはそれぞれ0、1又は2である。)
【0102】
これらに分散される無機系微粒子の好ましい無機化合物としては、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンなどの金属元素の酸化物を挙げることができる。これらの化合物は、微粒子状で、すなわち粉末又は、水及び/もしくはその他の溶媒中へのコロイド状分散体として、市販されている。これらをさらに上記の有機材料又は有機珪素化合物中に混合分散して使用する。
【0103】
上記のより高い屈折率を有する層を形成する材料として、被膜形成性で溶媒に分散し得るか、それ自身が液状である無機系材料{例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えば、キレート化合物)、無機ポリマー}を挙げることができる。
【0104】
これらの好適な例としては、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−i−プロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−s−ブトキシド、チタンテトラ−t−ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−i−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−
ブトキシド、ジルコニウムテトラ−s−ブトキシド及びジルコニウムテトラ−t−ブトキシドなどの金属アルコレート化合物;ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジブトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジエトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ビス(アセチルアセトンジルコニウム)、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−プロポキシドモノメチルアセトアセテート及びトリ−n−ブトキシドジルコニウムモノエチルアセトアセテートなどのキレート化合物;さらには炭素ジルコニルアンモニウム、又はジルコニウムを主成分とする無機ポリマーなどを挙げることができる。
【0105】
上記に述べた他に、屈折率が比較的低いが上記の化合物と併用できるものとして、特に各種のアルキルシリケート類又はその加水分解物、微粒子状シリカ、特にコロイド状に分散したシリカゲルも使用することができる。
【0106】
高屈折率層の屈折率は、一般に1.50〜2.00の範囲にあり、反射防止層が中屈折率層も有する場合には、高屈折率層の屈折率は1.70〜2.20であることが好ましい。屈折率は、アッベ屈折率計を用いる測定や、層表面からの光の反射率からの見積もりにより求めることができる。
【0107】
高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.5μmであることが最も好ましい。高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な高屈折率層の表面強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0108】
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。高屈折率層に無機微粒子とポリマーを用い、中屈折率層は、高屈折率層よりも屈折率を低めに調節して形成することが特に好ましい。中屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましい。
【0109】
〔その他の層〕
反射防止フィルムには、さらに、ハードコート層、防湿層、帯電防止層、下塗り層や保護層を設けてもよい。
【0110】
[ハードコート層]
ハードコート層は、透明支持体に耐擦傷性を付与するために設けられる。ハードコート層は、透明支持体とその上の層との接着を強化する機能も有する。ハードコート層は、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコーン系ポリマーやシリカ系化合物を用いて形成することができる。顔料をハードコート層に添加してよい。
【0111】
アクリル系ポリマーは、多官能アクリレートモノマー(例えば、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系ポリマーの例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコーン系ポリマーとしては、シラン化合物(例えば、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン等)と、反応性基(例えば、エポキシ、メタクリル等)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。2種類以上のポリマーを組み合わせて用いてもよい。シリカ系化合物としては、コロイダルシリカが好ましく用いられる。
【0112】
ハードコート層の表面強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。透明支持体の上には、ハードコート層に加えて、接着層、シールド層、滑り層や帯電防止層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0113】
〔透明支持体〕
反射防止層を、CRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合以外において、反射防止層を透明支持体上に形成し、反射防止フィルムとして用いてもよい。透明支持体としては、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4'−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリスチレン(例えば、シンジオタクチックポリスチレン等)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンが含まれる。トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0114】
透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。
【0115】
透明支持体には、赤外線吸収剤又は紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0116】
滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO2、TiO2、BaSO4、CaCO3、タルク及びカオリンが含まれる。透明支持体に、表面処理を実施してもよい。
【0117】
表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理及びオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理及び火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
【0118】
〔反射防止層の形成〕
反射防止フィルムの反射防止層が、単層又は前記のように多層の構成をとる場合は、各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)等により、透明支持体上に塗布して形成することができる。2層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書及び原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0119】
本発明の反射防止フィルムにおける各層の硬化は、電離放射線及び/又は熱の作用によ
って行われる。電離放射線の照射は、高圧水銀ランプを用いて行うことが好ましい。この際、例えば酸素濃度0.5%以下の条件で紫外線照射を行うことが好ましく、より好ましくは酸素濃度0.3%以下の条件であり、特に好ましくは0.2%以下の条件である。照射エネルギーは硬化反応が十分に進むに必要な量であればよく、具体的には、300mJ/cm2〜1500mJ/cm2の範囲であることが好ましく、より好ましくは400mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲であり、特に好ましくは500mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲である。
【0120】
加熱を行う場合には30〜200℃程度の温度範囲が好ましく、より好ましくは80〜180℃であり、特に好ましくは100〜150℃の場合である。加熱時間は30秒〜100時間の範囲が好ましく、より好ましくは1分〜1時間であり、特に好ましくは2分〜15分である。
【0121】
反射防止フィルムの反射率は低いほど好ましい。具体的には450〜650nmの波長領域での鏡面平均反射率が2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.7%以下であることが最も好ましい。反射防止フィルム(下記のアンチグレア機能がない場合)のヘイズは、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。
【0122】
反射防止フィルムの表面強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0123】
反射防止フィルムは、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止フィルムの表面に凹凸を形成することにより得られる。微粒子を使用した低屈折率層では、微粒子により反射防止フィルムの表面に凹凸が形成できる。微粒子により得られるアンチグレア機能では不充分な場合は、低屈折率層、高屈折率層、中屈折率層又はハードコート層に、比較的大きな粒子(粒径:50nm〜200nmを少量(0.1〜50質量%)添加してもよい。反射防止フィルムがアンチグレア機能を有する場合、反射防止フィルムのヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
【0124】
反射防止フィルムは、偏光板や、ディスプレイ装置、例えば液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用する。
【0125】
<偏光板>
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0126】
[偏光膜]
偏光膜としては、公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。
【0127】
偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は、以下の方法により作製される。
すなわち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を、保持手段により保持しつつ
張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45゜傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0128】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落0020〜0030に詳しい記載がある。
【0129】
<画像表示装置>
本発明の反射防止フィルムまたは、本発明の偏光板は、画像表示装置のディスプレイの最表面に用いることができる。偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0130】
VAモードの液晶セルには、
(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、
(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル{“SID97,Digest of tech.Papers”(予稿集)、28集(1997年)、p.845記載}、
(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び、
(4)SURVAIVALモードの液晶セル(「LCDインターナショナル98」で発表)が含まれる。
【0131】
VAモードの液晶セル用には、2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムを、本発明の反射防止フィルムと組み合わせて作製した偏光板が好ましく用いられる。2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムの作製方法については、例えば、特開2001−249223号公報、特開2003−170492号公報などに記載の方法を用いることが好ましい。
【0132】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許第4,583,825号、同第5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0133】
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」{東レリサーチセンター発行(2001年)}などに記載されている。
【0134】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを、偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【0135】
本発明の反射防止フィルムは、さらに、ケースカバー、光学用レンズ、眼鏡用レンズ、ウインドウシールド、ライトカバーやヘルメットシールドにも利用できる。
【実施例】
【0136】
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0137】
<反射防止フィルムの作製>
〔含フッ素ポリマーの合成〕
合成例1:含フッ素共重合体(P−1)の合成
内容量100mLのステンレス製撹拌機付オートクレーブに、酢酸エチル30mL、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)6.7g、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)9.9g、エチルビニルエーテル(EVE)0.9g、及び過酸化ジラウロイル0.10gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)16gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は6.4kg/cm2であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が3.7kg/cm2に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。
【0138】
反応液を大過剰のメタノールに投入し、デカンテーションにより溶媒を除去して沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解して、メタノールから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後、HFP−PPVE−HEVE−EVEの共重合体を21g得た。
【0139】
次に上記共重合体15g、アクリル酸10.6g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.13g、及び重合禁止剤「イルガノックス1010」(商品名){チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}84mgをメチルイソブチルケトン30gに溶解し、100℃で5時間加熱した。反応液を大過剰のヘキサンに投入することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去することにより含フッ素共重合体(P−1)を20g得た。得られた共重合体(P−1)の質量平均分子量は5.0万であり、屈折率は1.415であった。
【0140】
合成例2:含フッ素共重合体(P−13)の合成
(1)M1−1)の合成
1H,1H−ペルフルオロペンタノールの100g及び硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウム20gを混合したところに、69gの水酸化ナトリウムを100mLの水に溶解した水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温で30分間撹拌した。さらに、クロロエチルビニルエーテルの183.8g及びトルエン150mLを加え80℃で5時間加熱撹拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗し、有機層を抽出、硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下溶媒を留去した。更に減圧蒸留により生成することにより目的の含フッ素ビニルエーテル化合物100gを得た(沸点73〜76℃、1064Pa)。
【0141】
(2)P−13の合成
内容量100mLのステンレス製撹拌機付オートクレーブに、酢酸エチル30mL、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)6.5g、(M1−1)を3.0g、及び過酸化ジラウロイル0.10gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)16gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は6.5kg/cm2であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が3.8kg/cm2に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。反応液を大過剰のメタノールに投入し、デカンテーションにより溶媒を除去して沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してメタノールから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後、HFP−HEVE−(M1−1)の共重合体を20g得た。
【0142】
次に得られた共重合体15g、アクリル酸10.6g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.13g及び重合禁止剤「イルガノックス1010」(商品名){チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}84mgをメチルイソブチルケトン30gに溶解し、100℃で5時間加熱した。反応液を大過剰のヘキサンに投入することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去することにより含フッ素共重合体(P−13)を15g得た。得られた共重合体(P−13)の質量平均分子量は6.0万であり、屈折率は1.396であった。
【0143】
本発明の他の含フッ素共重合体も上記合成例と同様にして合成される。
【0144】
比較合成例1〜3:比較共重合体(A−1)〜(A−3)の合成
合成例1において、下記一般式(1−1)及び表2に示すような共重合体成分となるように仕込み組成を変更する以外は合成例1と同様の操作で、比較共重合体(A−1)〜(A−3)を得た。なお、比較共重合体(A−1)〜(A−3)は、何れもランダム共重合体であり、表2におけるa,b,c,d,eは、それぞれ各構成成分のモル分率(モル%)を表す。
一般式(1−1):
【0145】
【化18】

【0146】
【表2】

【0147】
[硬化皮膜の作製]
本発明の共重合体(P−1、P−13)及び比較化合物(A−1〜A−3)を、それぞれメチルイソブチルケトンに30質量%の濃度になるように溶解し、下記構造式のラジカル開始剤(UV1)を、各共重合体に対して5質量%添加した液を作製した。これらの皮膜形成用組成物をガラス基盤上に塗布・乾燥した後、500mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射、さらに120℃で10分間加熱することにより厚さ約20μmの皮膜を形成した。
【0148】
【化19】

【0149】
〔反射防止フィルムの作製〕
実施例1―1〜1−11及び比較例1−1〜1−5
[低屈折率層形成用組成物の調製]
下記表3に示す各成分を混合し、メチルエチルケトンに溶解して固形分5質量%の低屈折率層形成用組成物を作製した。表3中の( )内の数値は各成分の固形分の質量部を表わす。なお、硬化触媒は上記UV1を用いた。
【0150】
【表3】

【0151】
[ハードコート層形成用組成物(HC−1)の調製]
{ハードコート層形成用組成物(HC−1)の組成}
“PET−30” 50.0g
「イルガキュア184」 2.0g
“SX−350”(30質量%) 1.5g
架橋アクリル−スチレン粒子(30質量%) 13.9g
“KBM−5103” 10.0g
トルエン 38.5g
【0152】
上記の混合液を、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層形成用組成物(HC−1)を調製した。
【0153】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
“PET−30”:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物{日本化薬(株)製}
「イルガキュア184」:重合開始剤{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}
“SX−350”:平均粒径3.5μm架橋ポリスチレン粒子{屈折率1.60、綜研化学(株)製、30質量%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用}。
架橋アクリル−スチレン粒子:平均粒径3.5μm{屈折率1.55、綜研化学(株)製、30質量%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用}。
“KBM−5103”:アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン{信越化学工業(株)製}。
【0154】
[反射防止フィルムの作製]
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}を、ロール形態で巻き出して、直接、上記のハードコート層形成用組成物(HC−1)を、線数180本/in、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールと、ドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下酸素濃度0.1体積%で160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量110mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの層を形成し、巻き取った。このようにして作製した試料得られたハードコート層の表面粗さは、Ra=0.18μm、Rz=1.40μm、ヘイズ35%であった。
【0155】
このようにして得られたハードコート層の上に、上記低屈折率層形成用組成物(本発明Ln1〜11及び比較例Ln12〜16)を用いて低屈折率層膜厚が95nmになるように調節して試料(101)〜(116)を作製した。低屈折率層の乾燥条件は120℃、10分とし、紫外線硬化条件は、酸素濃度が0.01体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度120mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。得られたそれぞれの反射防止フィルムに用いられた、ハードコート層形成用組成物及
び低屈折率層形成用組成物の組み合わせを表4に示す。
【0156】
[反射防止フィルムの鹸化処理]
得られた反射防止フィルムは以下の鹸化標準条件で処理・乾燥した。
(1)アルカリ浴:1.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液、55℃−120秒
(2)第1水洗浴:水道水、60秒
(3)中和浴:0.05mol/L硫酸、30℃−20秒
(4)第2水洗浴:水道水、60秒
(5)乾燥:120℃−60秒
【0157】
〔反射防止フィルムの評価〕
このようにして得られた鹸化済みの反射防止フィルムを用いて、以下の評価を行った。得られた結果を表4に示す。
【0158】
(評価1)平均反射率の測定
分光光度計“V−550”{日本分光(株)製}を用い、380〜780nmの波長領域において、積分球を用いて、入射角5°における分光反射率を測定した。分光反射率の評価において、450〜650nmの平均反射率を用いた。
測定は、反射防止フィルムの裏面を粗面化処理した後、黒色のインクで光吸収処理(380〜780nmにおける透過率が10%未満)を行い、黒色の台上にて行った。
【0159】
(評価2)耐擦傷性(1)−スチールウール耐性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH、
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール“No.0000”{(株)日本スチールウール製}を巻いて、動かないようバンド固定した。その上で下記条件の往復こすり運動を与えた。
移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、
荷重:200g/cm2
先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
○:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○△:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
△:弱い傷が見える。
△×:中程度の傷が見える。
×:一目見ただけで分かる傷がある。
【0160】
(評価3)耐擦傷性(2)−消しゴム擦り耐傷性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にプラスチック消しゴム{(株)トンボ鉛筆製“MONO”}を固定した。
移動距離(片道):4cm、こすり速度:2cm/秒、荷重:500g/cm2、先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:100往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
○:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○△:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
△:弱い傷が見える。
△×:中程度の傷が見える。
×:一目見ただけで分かる傷がある。
××:一面膜が傷ついている。
【0161】
(評価4)「マジックインキ」付着性評価
表面の耐汚染性の指標として、光学材料を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、サンプル表面に「マジックインキ」(商品名)を付着させてから、それをクリーニングクロスで拭き取ったときの状態を観察して、以下のように「マジックインキ」付着性を評価した。
◎:「マジックインキ」の跡が完全に拭き取れる。
○:「マジックインキ」の跡がわずかに見える。
△:「マジックインキ」の跡が少し見える。
×:「マジックインキ」の跡がほとんど拭き取れない。
【0162】
(評価5)密着性評価
碁盤目―「セロテープ」(商品名)剥離試験をJIS K−5400に準拠して行った。100分割した桝目の内の剥がれずに残った数(x)をx/100の形で表記した。
【0163】
【表4】

【0164】
本実施例で明らかなように、本発明の反射防止フィルムは、比較例1−1及び1−2と比較して、低屈折率層を構成する含フッ素共重合体の水酸基含率が高いため、密着性に優れていることがわかる。また、比較例1−3と比較して、低屈折率層を構成する含フッ素共重合体のアクリロイル化率が高いため、膜強度が高いことがわかる。さらに、本発明の反射防止フィルムは、ポリシロキサン化合物を有するため、ポリシロキサン化合物を有しない比較例1−4及び比較例1−5と比較して耐傷性に優れていることがわかる。
【0165】
<画像表示装置>
実施例2−1〜2−11及び比較例2−1〜2−5
上記実施例1−1〜1−11及び比較例1−1〜1−5で作製した反射防止フィルムを、日本電気(株)より入手したパーソナルコンピューター“PC9821NS/340W”の液晶ディスプレイ表面に貼り付け、画像表面装置サンプルを作製し、その表面反射による風景映り込み程度を目視にて評価した。
【0166】
本発明の実施例1−1〜1−11の反射防止フィルムを設置した画像表示装置は、周囲の風景映り込みが殆どなく、快適な視認性を示しかつ充分な表面強度を有するものであったのに対し、比較例1−1〜1−5の反射防止フィルムを設置した画像表示装置は、周囲の映り込みはある程度低減できるものの表面強度に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、本発明の反射防止膜が複合膜の場合の層構成を示す断面模式図であり、(a)は4層構成、(b)は5層構成の例を示す。
【符号の説明】
【0168】
1a:反射防止フィルム
1b:反射防止フィルム
2:透明支持体
3:ハードコート層
4:高屈折率層
5:低屈折率層(最外層)
6:中屈折率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される含フッ素共重合体及び、
反応性有機官能基含有ポリシロキサン化合物
を含有する組成物を硬化させて得られる低屈折率層を含むことを特徴とする反射防止フィルム。
一般式(1):
【化1】

{一般式(1)中、Rf1は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表し、Rf2は炭素数1〜30の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、エーテル結合を有していてもよい。Lは単結合又は2価の連結基を表し、Xは水素原子又はメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。Bは水酸基含有モノマーに基づく重合単位を表す。a〜eはそれぞれ各構成成分のモル分率(%)を表し、30≦a+b≦95、5≦a≦90、0≦b≦70、5≦c≦50、0≦d≦50、20<eを満たす値を表す。}
【請求項2】
一般式(1)中のBが下記一般式(2)で表される重合単位である請求項1に記載の反射防止フィルム。
一般式(2):
【化2】

{一般式(2)中、L'は2価の連結基を表す。}
【請求項3】
反応性有機官能基含有ポリシロキサン化合物が、下記一般式(3)で表される化合物である請求項1又は2に記載の反射防止フィルム。
一般式(3):
【化3】

{一般式(3)中、R1〜R4は炭素数1〜20の置換基を表し、それぞれの基が複数ある場合は、それらは互いに同じであっても異なっていてもよく、R1、R3、R4のうち少なくとも1つの基が反応性有機官能基である。xは1≦x≦4を満たす整数を表し、yは10≦y≦500を満たす整数を表し、zは0≦z≦500を満たす整数を表し、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。}
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルムが、偏光板における偏光子の2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルム、又は請求項4に記載の偏光板がディスプレイの最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−33891(P2007−33891A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217403(P2005−217403)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】