説明

反射防止フィルム

【課題】機械的強度とフレキシビリティーを両立した反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材フィルムの少なくとも一方の面において、高屈折率酸化物薄膜層と低屈折率酸化物薄膜層を交互に積層させた反射防止フィルムにおいて、最外層の低屈折率酸化物薄膜層である酸化シリコン薄膜が、厚さ75nm以上100nm以下であり、厚さ方向でシリコンと酸素の組成比Si/Oが異なる実質的に2つの層、A層(透明基材フィルム側)とB層(外側)から構成され、A層とB層におけるシリコンと酸素の組成比Si/O(A)とSi/O(B)がSi/O(A)>Si/O(B)の関係にあることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
LCD、CRT、PDP、EL、またタッチパネル等の光学表示装置においては、太陽光や蛍光灯等の外光の写り込みを防止する反射防止フィルムが使用されることが多い。最近では屋内での使用のみではなく、デジタルカメラや携帯電話、デジタルビデオカメラ等のモバイル機器やカーナビゲーションの普及により、屋外での使用も増えてきている。
【0003】
屋外の使用においては、外光の写りこみはより大きく、限りなくゼロに近い反射率を有する反射防止フィルム、すなわちAR(Anti−Reflection)フィルムが求められている。一般的に、ARフィルムの形成には、数nmレベルで制御された薄膜の多層成膜が可能なドライコーティング技術が用いられる。中でも、スパッタリング法は、蒸着法やイオンプレーティング法、CVD法などの他のドライコーティング方法に比べて、耐擦傷性等に代表される膜の機械的強度が非常に優れた薄膜の形成が可能である。(例えば、特許文献1および2参照)
【0004】
一方で、反射防止フィルムとしては、実際に用いられる形態、および製造工程の要求から、柔軟性が求められることが多く、機械的強度と柔軟性の両立が課題となっている。これまで、いくつかの発明がなされてきたが、さらなる向上が求められている。
【特許文献1】特開2000−52492号公報
【特許文献2】特開2001−96669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
具体的には、スパッタリング法により形成した酸化シリコン薄膜は機械的強度が強く、反射防止積層体の最外層の薄膜として用いるのには最適な材料であるが、強度を高めようとすると柔軟性が不十分となり、柔軟性を高めようとすると機械的強度が不十分になるという欠点があった。それゆえ、柔軟性と機械的強度を両立させる必要があった。本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、反射防止フィルムにおいて、機械的強度と柔軟性を両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の反射防止フィルムは、透明基材フィルムの少なくとも片側にハードコートが形成され、前記ハードコート上に反射防止積層体が形成されており、前記反射防止積層体が高屈折率酸化物薄膜層と低屈折率酸化物薄膜層を交互に積層させた積層体からなり、前記反射防止積層体の最外層の薄膜が低屈折率酸化物薄膜層であり、前記低屈折率酸化物薄膜層が酸化シリコン薄膜であり、前記最外層の酸化シリコン薄膜が下記条件I〜IIIを全て満たすことを特徴とする。
I) 薄膜の厚さが75nm以上100nm以下である。
II) 厚さ方向でシリコンと酸素の組成比(Si/O)が異なる実質的に2つの層、A層(透明基材フィルム側)とB層(外側)から構成される。
III)A層におけるシリコンと酸素の組成比Si/O(A)と、B層におけるシリコンと酸素の組成比Si/O(B)が、
Si/O(A)>Si/O(B)
の関係にある。
【0007】
ここで、A層におけるシリコンと酸素の組成比Si/O(A)と、B層におけるシリコンと酸素の組成比Si/O(B)が、
0.60≧Si/O(A)>Si/O(B)
の関係にあることが好ましい。
【0008】
また、A層の厚さt(A)とB層の厚さt(B)の比t(A)/t(B)が、
4.5≧t(A)/t(B)≧0.8
の関係にあることが好ましい。
【0009】
また、前記高屈折率酸化物薄膜層が、酸化ニオブであることが好ましい。
【0010】
また、前記透明基材フィルムがトリアセチルセルロースであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反射防止フィルムに求められる光学特性を損なうことなく、耐擦傷性に代表される機械的強度に優れるとともに、柔軟性も両立した反射防止フィルムが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
図1に本発明の反射防止フィルムの断面の構造の一例を示す。本発明の反射防止フィルム10は、透明基材フィルム1として用いるトリアセチルセルロースフィルムの少なくとも片面に、ハードコート層2が積層している。
【0013】
透明基材フィルム1としては、透明性を有するフィルムであればいかなるものでも良いが、光学表示装置用の反射防止フィルムにおいては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリルなどのフィルムがその光学特性や機械的強度などから利用されている。とりわけ、急速に普及してきたLCD用途にはTACフィルムが好ましい。反射防止フィルムにおいては柔軟性がとりわけ重要視されており、TACフィルムはその寸法変化のある特徴から、本発明では非常に有効である。透明基材フィルム1の厚さは、目的の用途に応じて、適宜選択すればよいが、通常、機械的強度やハンドリング性、また光学装置設計上の観点から、25〜300μm程度のものが好ましい。さらに、TACフィルムの場合は、40μmまたは80μmの厚さのものが広く使われる。さらに、透明基材フィルム1には必要に応じて、可塑剤や紫外線吸収剤、劣化防止剤等の添加物が含まれても良い。
【0014】
透明基材フィルム1上に形成するハードコート層2としては、電離線や紫外線硬化型の樹脂、あるいは熱硬化性樹脂が使用され、紫外線硬化型のアクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリル酸エステル類、メタクリルアミド等のアクリル系樹脂や有機珪素系樹脂やポリシロキサン樹脂が好適である。これらの材料の中には、硬化性を向上させるために、重合開始剤を添加してもよい。ハードコート層2の厚みとしては、物理膜厚0.5μm以上、好ましくは3〜20μmである。また、ハードコート層2には、平均粒子0.01〜3μmの透明粒子を分散させて、防眩処理(散乱により反射光を擬似的に低減させる処理)を施しても良い。
【0015】
ハードコート層2上に反射防止積層体を形成する前に、密着強度を向上させる目的でハードコート層2表面に、表面処理を施してもよい。このとき、表面処理方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、イオンビーム処理、大気圧プラズマ処理、ケン化処理等の処理が挙げられる。
【0016】
さらに密着強度を向上させる必要がある場合には、表面処理後、かつ反射防止積層体の形成前に、プライマー層7を設けてもよい。プライマー層の材料としては、例えば、シリコン、ニッケル、クロム、錫、金、銀、白金、亜鉛、チタン、タングステン、ジルコニウム、パラジウム等の金属、あるいは、これらの金属の2種類以上からなる合金、または、これらの酸化物、弗化物、硫化物、窒化物等が挙げられる。特に、たとえばシリコンを用いたSi,SiOx等のプライマー層は酸化物薄膜を用いた反射防止積層体のプライマー層として優れている。これらのプライマー層は、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着(CVD)法等のドライコーティング方法を用いることが好ましい。また、プライマー層の厚さは目的に応じて決定すればよいが、1〜20nm程度の範囲が通常用いられている。
【0017】
反射防止積層体9は、一般的にはスパッタリング法、蒸着法、化学蒸着(CVD)法等のドライコーティング方法で形成できる。これらのうちスパッタリング法は、緻密な膜の形成が可能であり、耐擦傷性等に代表される機械的強度に優れた薄膜が得られる。スパッタリング法の中でも、従来スパッタリング法の低成膜速度を大きく改善した反応性スパッタリング法が適している。反応性スパッタリング法とは、たとえば酸化シリコン薄膜の成膜においては、シリコンターゲットを利用し、併せて反応ガスとして酸素ガスを導入し、酸化シリコン薄膜を成膜する方法のことである。
【0018】
反射防止積層体9は、高屈折率酸化物薄膜層と低屈折率酸化物薄膜層を交互に積層させた積層体からなり、最外層の薄膜が低屈折率酸化物薄膜層である。特に、4層構成であると、コストと性能のバランスが良いため、高屈折率酸化物薄膜層と低屈折率酸化物薄膜層が交互に積層した4層の積層体からなることが好ましい。
【0019】
高屈折率酸化物薄膜層3および5の材料としては、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム等、あるいは、それらの混合物が挙げられる。特に、反射防止フィルム用途としては、通常、酸化ニオブや酸化チタンが広く用いられている。中でもスパッタリング用としては、薄膜中のピンホールの少なさから、酸化ニオブが適している。
【0020】
低屈折率酸化物薄膜層4および6の材料としては酸化シリコン、フッ化マグネシウム等が挙げられる。特に、反射防止フィルム用途としては、その光学特性、機械的強度、成膜適正、コスト等の観点から、酸化シリコンが最も適している。
【0021】
反射防止積層体における最外層の低屈折率酸化物薄膜層6の酸化シリコン薄膜の厚さは、実際の製品化において、その反射防止性能、コスト、機械的強度、生産性を考慮すると、75nm以上100nm以下の範囲にあることが好ましい。中でも特に、この範囲外であると、反射防止性能が低下することが問題となる。また一般的には、厚すぎると機械的強度は高いが柔軟性が不十分となり、逆に薄すぎると、柔軟性は高いが機械的強度が不十分になるといった傾向もある。
【0022】
本発明においては、最外層の低屈折率酸化物薄膜層6の酸化シリコン薄膜は前記の厚さ範囲内にあるとともに、その機械的強度と柔軟性を両立させるため、実質的に2つの層、A層6a(透明基材フィルム側)とB層6b(外側)からなる。さらにこのA層6aとB層6bのシリコンと酸素の組成比(Si/O)は、A層6aの組成比のほうがB層6bの組成比よりも高いことが必要である。酸化シリコン薄膜の特性について研究を重ねた結果、機械的強度については前記組成比が低いほうが良く、柔軟性については前記組成比が高いほうが良いことがわかった。この結果を応用し、前記のように透明基材フィルム側の層である、A層6aが柔軟性に富む特性をもち、外側の層である、B層6bが機械的に強い特徴を持つ、A層6aとB層6bを積層した状態にすることにより、反射防止フィルム全体として機械的強度と柔軟性を両立することが可能となった。技術的には、厚さ方向で徐々に組成比を変化させたり、段階的に変化させるなどすることも可能ではあるが、これらも巨視的に見れば本発明と同様、大きく二層の構成となっているとモデル化して解釈できる。
【0023】
前記A層6aのシリコンと酸素の組成比Si/O(A)とB層6bのシリコンと酸素の組成比Si/O(B)は、0.60≧Si/O(A)>Si/O(B)の範囲にあると好ましい。具体的には、Si/O(A)が0.60より大きいと光学的な吸収が増大し、一般的な反射防止フィルムとしては実製品上適用が制約されるようになる。
【0024】
さらに、前記A層6aの厚さt(A)とB層6bの厚さt(B)とには、4.5≧t(A)/t(B)≧0.8の範囲にあると好ましい。具体的には、4.5より大きい場合には機械的強度がもっとも望ましい特性には及ばず、また、0.8未満の場合には、柔軟性がもっとも望ましい特性には及ばない。
【0025】
A層6aとB層6bのように、組成比を変えて成膜するためには、たとえば、前記シリコンターゲットを用いた反応性スパッタリングの場合などには、導入する反応性ガスである酸素の量をコントロールすることにより達成できる。このほか、スパッタガスであるアルゴンガスの導入量や、放電の電力などによっても、コントロールすることは可能である。
【0026】
A層6aやB層6bの組成比を特定するためには、さまざまな分析機器が考えられるが、中でもX線光電子分光法(XPS)はもっとも一般的な分析機器のひとつであり、本発明に適用するのにも適している。本発明においては、具体的には、島津製作所製ESCA3200を使用し、組成比の特定を行った。具体的には、各元素のピークの強度比より算出できる。また深さ方向を分析する際には、イオンビームによるエッチングをしながら分析が出来る。
【0027】
本発明では、反射防止積層体9の最表面に防汚層8を設けてもよい。
防汚層は、反応性官能基と結合している珪素原子を1つ以上有するフッ素含有珪素化合物から得られた層、もしくはシロキサン結合を主鎖とした有機珪素化合物から得られた層、またはその両方から得られた層である。本発明における反応性官能基とは、最も外側の低屈折率酸化物薄膜層である酸化シリコン薄膜と反応し、結合しうる官能基を意味する。
防汚層は、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、プラズマ重合法等の真空ドライプロセスの他、マイクログラビア法、スクリーンコート法、ディップコート法等のウェットプロセスにより形成できる。防汚層の膜厚は、1〜30nm程度であり、好ましくは3〜15nm程度である。
防汚層表面における純水の接触角は、防水および防汚性の観点から、少なくとも90゜以上であることが反射防止膜の防汚性能上好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
〔実施例と比較例の共通条件〕
透明基材フィルム1には厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用い、その上に、紫外線硬化型アクリル系樹脂を塗布し、乾燥・紫外線硬化させて5μmのハードコート層2を設けた。その後、ハードコート層2上の表面処理として、グロー放電による処理を行った。その後、プライマー層として、スパッタリング法により5nm程度のシリコン層を設けた。その後、反応性スパッタリング法により、低屈折率酸化物薄膜層には酸化シリコンを用い、高屈折率酸化物薄膜層には酸化ニオブを用い、積層させることで反射防止積層体とした。反射防止積層体の層構成としては、ハードコート層2に近いほうから、酸化ニオブ/酸化シリコン/酸化ニオブ/酸化シリコンの順で構成した。各層の厚さは順に、15nm、25nm、105nmとし、最外層の低屈折率酸化物薄膜層6における酸化シリコン薄膜の厚さは実施例・比較例により異なるようにした。
【0030】
〔実施例1〕
最外層の酸化シリコン薄膜の厚さを85nm、A層6aの厚さを57nm、B層6bの厚さを28nmとした。この結果、厚さの比t(A)/t(B)=2.04となった。また、成膜時の酸素導入量およびアルゴン導入量を調整し、A層6aの組成比Si/O(A)は0.556、B層6bの組成比Si/O(B)は0.518とした。
【0031】
〔実施例2〕
最外層の酸化シリコン薄膜の厚さを85nm、A層6aの厚さを57nm、B層6bの厚さを28nmとした。この結果、厚さの比t(A)/t(B)=2.04となった。また、成膜時の酸素導入量およびアルゴン導入量を調整し、A層6aの組成比Si/O(A)は0.625、B層6bの組成比Si/O(B)は0.515とした。
【0032】
〔実施例3〕
最外層の酸化シリコン薄膜の厚さを85nm、A層6aの厚さを72nm、B層6bの厚さを13nmとした。この結果、厚さの比t(A)/t(B)=5.54となった。また、成膜時の酸素導入量およびアルゴン導入量を調整し、A層6aの組成比Si/O(A)は0.552、B層6bの組成比Si/O(B)は0.521とした。
【0033】
〔実施例4〕
最外層の酸化シリコン薄膜の厚さを85nm、A層6aの厚さを35nm、B層6bの厚さを50nmとした。この結果、厚さの比t(A)/t(B)=0.7となった。また、成膜時の酸素導入量およびアルゴン導入量を調整し、A層6aの組成比Si/O(A)は0.559、B層6bの組成比Si/O(B)は0.518とした。
【0034】
〔比較例1〕
最外層の酸化シリコン薄膜の厚さを85nm、A層6aの厚さを85nm、B層6bの厚さを0nmとした。また、成膜時の酸素導入量およびアルゴン導入量を調整し、A層6aの組成比Si/O(A)は0.549とした。
【0035】
〔比較例2〕
最外層の酸化シリコン薄膜の厚さを85nm、A層6aの厚さを0nm、B層6bの厚さを85nmとした。また、成膜時の酸素導入量およびアルゴン導入量を調整し、B層6bの組成比Si/O(B)は0.515とした。
【0036】
〔比較例3〕
最外層の酸化シリコン薄膜の厚さを70nm、A層6aの厚さを47nm、B層6bの厚さを23nmとした。この結果、厚さの比t(A)/t(B)=2.04となった。また、成膜時の酸素導入量およびアルゴン導入量を調整し、A層6aの組成比Si/O(A)は0.552、B層6bの組成比Si/O(B)は0.521とした。
【0037】
〔比較例4〕
最外層の酸化シリコン薄膜の厚さを110nm、A層6aの厚さを73nm、B層6bの厚さを37nmとした。この結果、厚さの比t(A)/t(B)=1.97となった。また、成膜時の酸素導入量およびアルゴン導入量を調整し、A層6aの組成比Si/O(A)は0.556、B層6bの組成比Si/O(B)は0.515とした。
【0038】
〔実施例1〕
最外層の酸化シリコン薄膜の厚さを85nm、A層6aの厚さを57nm、B層6bの厚さを28nmとした。この結果、厚さの比t(A)/t(B)=2.04となった。また、成膜時の酸素導入量およびアルゴン導入量を調整し、A層6aの組成比Si/O(A)は0.518、B層6bの組成比Si/O(B)は0.556とした。
【0039】
〔評価〕
前記実施例および比較例で得られたサンプルを以下の方法で評価した。結果は表1に示す。
【0040】
(1)反射率・透過率
日立製作所製U4000形の分光光度計を用い測定した。反射率・透過率ともに、正反射5°のユニットを使用した。反射率の測定の際には、サンプルの裏面は艶消し黒塗りスプレーにより裏面反射キャンセルのための処理をした。
【0041】
(2)機械的強度
機械的強度の評価として、スチールウール#0000を擦傷試験機に固定し、300gfの荷重をかけて、10往復の擦傷試験を各サンプルに対して行い、サンプルの磨耗状態(傷本数)を目視で観察し、比較評価とした。判定基準を以下に示す。
◎:キズ無し
○:キズ10本未満
×:キズ10本以上
【0042】
(3)柔軟性
フレキシビリティーの評価として、フィルムを曲げた際に生じる反射防止積層体面のクラックの状態を目視で観察し、比較評価とした。判定基準を以下に示す。
◎:φ8mm未満
○:φ12mm未満
×:φ12mm以上
【0043】
【表1】

【0044】
前記実施例および比較例の結果、本発明である実施例は比較例と比べ、反射防止フィルムに求められる光学特性を全く損なうことなく、機械的強度と柔軟性を両立することが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の反射防止フィルムの一例の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1:透明基材フィルム
2:ハードコート層
3、5:高屈折率酸化物薄膜層
4、6:低屈折率酸化物薄膜層
6a:A層
6b:B層
7:プライマー層
8:防汚層
9:反射防止積層体
10:反射防止フィルム




【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルムの少なくとも一方の面にハードコートが形成され、
前記ハードコート上に反射防止積層体が形成されており、
前記反射防止積層体が高屈折率酸化物薄膜層と低屈折率酸化物薄膜層を交互に積層させた積層体からなり、
前記反射防止積層体の最外層の薄膜が低屈折率酸化物薄膜層であり、
前記低屈折率酸化物薄膜層が酸化シリコン薄膜であり、
前記最外層の酸化シリコン薄膜が下記条件I〜IIIを満たすことを特徴とする反射防止フィルム。
I) 酸化シリコン薄膜の厚さが75nm以上100nm以下である。
II) 厚さ方向でシリコンと酸素の組成比(Si/O)が異なる実質的に2つの層、A層(透明基材フィルム側)とB層(外側)から構成される。
III)A層におけるシリコンと酸素の組成比Si/O(A)と、B層におけるシリコンと酸素の組成比Si/O(B)が、
Si/O(A)>Si/O(B)
の関係にある。
【請求項2】
A層におけるシリコンと酸素の組成比Si/O(A)と、B層におけるシリコンと酸素の組成比Si/O(B)が、
0.60≧Si/O(A)>Si/O(B)
の関係にあることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
A層の厚さt(A)とB層の厚さt(B)の比t(A)/t(B)が、
4.5≧t(A)/t(B)≧0.8
の関係にあることを特徴とする請求項1または2記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記高屈折率酸化物薄膜層が、酸化ニオブであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記透明基材フィルムが、トリアセチルセルロースであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の反射防止フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−268418(P2008−268418A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109169(P2007−109169)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】