説明

反射防止フィルム

【課題】本発明は、反射による干渉ムラを抑制することにより外観特性に優れるとともに、高い反射防止性能を有し、かつハードコート層の剥離の発生を低減することができる反射防止フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】反射防止フィルムは、ポリエステルフィルムと、該ポリエステルフィルム(1)上に形成された易接着層と、該易接着層上に形成されたハードコート層(2)と、該ハードコート層上に形成された低屈折率層(3)とを有して成り、
前記ハードコート層の屈折率が1.58〜1.85であり、
易接着層が形成されたポリエステルフィルムの易接着層側の反射率が4%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムに関する。このような反射防止フィルムは、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等のディスプレイ表示画面、窓、ショーウィンド等の住建部材の表面に好適に適用され、このようなものに適用すれば、ディスプレイ等の外からの光の反射を防止しうる。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチメディアの進展に伴い様々なディスプレイが普及してきている。そして、このようなディスプレイに対して各種機能を有する様々な機能性フィルムが要求されている。なかでも、光の反射防止を目的とした反射防止フィルムには大きな期待がよせられている。
【0003】
このような反射防止フィルムには、通常、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性等を有するポリエステルフィルムが用いられている。このようなポリエステルフィルムは、上述のような優れた性質を有するため、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、包装用テープ、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁性フィルム、ラミネート用フィルム、ディスプレイなどの画面用フィルム、各種部材の保護用フィルムとして用いられている。特に、プリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルム、テレビの反射防止フィルムのベースフィルム、プラズマテレビの前面光学フィルターの反射防止フィルム、近赤外線カットフィルム、電磁波シールドフィルムのベースフィルム等にも用いられている。
【0004】
反射防止フィルムなどの光学フィルムに用いられるベースフィルムは、ディスプレイからの光をできるだけ透過することができるように、優れた透明性が要求される。他方、ベースフィルムには、光学フィルムとしての性質を確保したり機能を高めたりするために、例えば表面保護のためのハードコート層が適用されるが、この場合、ベースフィルムは、このようなコーティング材料に対する優れた易接着性が要求される。
【0005】
しかしながら、通常使用されるポリエステルフィルムは、結晶性が高いため、一般的に上記コーティング材料などとの密着性を確保するのは困難であった。従って、例えば、ハードコート層との易接着性を確保するために、ポリエステルフィルムの表面へ易接着被膜を塗設する方法、ポリエステルフィルムの表面を、例えばコロナ処理、フレーム処理等の気相表面処理方法やプライマー等塗布による化学的表面処理方法等が用いられている。特に、ディスプレイ用途としてPETフィルムを用いる場合、高い透明性及び密着性が要求されるため、一般的にナノメートルオーダーの膜厚の易接着層を介在させていた(特許文献1)。
【0006】
このような易接着層が塗設されたポリエステルフィルムをベースフィルムとして用いた場合、前述の通り、高い透明性及びハードコート層との密着性を確保することができ、耐ブロッキング性も向上させることができる。
【0007】
しかしながら、このような易接着層が形成されたポリエステルフィルムを反射防止フィルムとして用いた場合、易接着層の屈折率とポリエステルフィルムの屈折率とのミスマッチ、易接着層の膜厚バラツキ等の要因により、その上にハードコート層等をコーティングした際に光学的な干渉ムラが発生するという問題点を有していた。
【0008】
また、上記屈折率ミスマッチのため、反射界面が増加し、反射率増大の不具合を生じていた。他方、易接着層を有しないポリエステルフィルムを用いることも考えられるが、この場合はハードコート層の剥離が懸念される。
【0009】
一方で反射防止フィルムの反射率を低減するために、ハードコート層と低屈折率層との屈折率差を大きくする手法が従来より提案されている。この構成を具現化するためには、ハードコート層を高屈折率化する手法もしくは低屈折率層を低屈折率化する手法が考えられる。またハードコート層を2層にし、第1ハードコート層の屈折率より高い第2ハードコート層を、第1ハードコート層と低屈折率層間に挿入する手法も提案されてきた(特許文献2)。これらの手法は、空気/低屈折率層及び低屈折率層/ハードコート層界面での光の反射を低減するには優れた方法であるが、ハードコート層/PET界面での光の反射は抑制できない。特にハードコート層を高屈折率化した場合は、使用するPETフィルムの易接着層とハードコート層界面の反射が逆に増大してしまい、反射防止フィルムトータルでの反射率が増大するという不具合が発生した。
【特許文献1】特開平9−220791号公報
【特許文献2】特開2004−69867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、反射による干渉ムラを抑制することにより外観特性に優れるとともに、高い反射防止性能を有し、かつ、ハードコート層の剥離の発生を低減することができる反射防止フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題につき鋭意研究を重ねた結果、ハードコート層がポリエステルフィルムから剥離を防止するためには、そのポリエステルフィルムを表面処理してハードコート層を接着するのでは接着性及び透明性の面から充分ではなく、ハードコート層とポリエステルフィルムとの間に、両者の接着を容易にする易接着層を介在させることが必要であろうとの考えに至った。
【0012】
しかし、ハードコート層とポリエステルフィルムとの間に易接着層を介在させた場合、ハードコート層と易接着層との界面で反射した光により、干渉ムラが発生することが問題となる。本発明者らは、更に検討を重ねた結果、易接着層を有するポリエステルフィルムの易接着層側の反射率を所定の値以上とすることにより、干渉ムラの発生を低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、ポリエステルフィルムと、該ポリエステルフィルム上に形成された易接着層と、該易接着層上に形成されたハードコート層と、該ハードコート層上に形成された低屈折率層とを有して成る反射防止フィルムであって、
前記ハードコート層の屈折率が1.58〜1.85であり、
易接着層が形成されたポリエステルフィルムの易接着層側の反射率が4%以上、特に好ましくは4%〜8%であることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
【0014】
また、本発明は、別の態様として、屈折率1.60〜2.00の第2ハードコート層を前記ハードコート層と前記低屈折率層との間にさらに有してなり、前記第2ハードコート層の屈折率は、前記ハードコート層の屈折率より高いことを特徴とする反射防止フィルムを提供する。特に、第2ハードコート層の光学膜厚が80nm〜600nmであることが好ましい。
【0015】
尚、この反射率は、日立製作所製U−4100を使用して、フィルムの裏面をスチールウールで研磨した後、黒色塗料で塗装して、裏面反射を無視して5°の正反射率の条件で測定することによって得られる値である。
【0016】
更に、本発明は、上述の反射防止フィルムを製造する方法であって、
易接着層を有するポリエステルフィルムを準備する工程、
易接着層上にハードコート層を形成する工程、および
ハードコート層上に低屈折率層を形成する工程
を含んで成る方法
提供する。この方法は、必要に応じて、ハードコート層上に第2ハードコート層を形成する工程、及び/又は低屈折率層上に防汚層を形成する工程を更に含んでよい。
【発明の効果】
【0017】
上述の本発明に係る反射防止フィルムによれば、反射率が4%以上であるフィルムを使用するので、易接着皮膜による反射干渉ムラを少なくすることができ、外観特性に優れ、さらには反射防止性能を高くすることができると共に、ハードコート層の剥離の発生を低減することができる。ポリエステルフィルムの表面を化学処理してハードコート層を形成するのではなく、ハードコート層とポリエステルフィルムとの間に易接着層を介在させたことにより、ハードコート層の剥離の発生を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る反射防止フィルムを図面を参照しながらより詳細に説明する。図1に、本発明の反射防止フィルムの一例を模式的に示す。本発明に係る反射防止フィルムは、易接着層を有する透明基材としてのポリエステルフィルム1と、ポリエステルフィルムの易接着層上に形成されたハードコート層2と、ハードコート層2上に接着された低屈折率層3と、を備える。尚、図1では、ポリエステルフィルムとハードコート層との間に位置する易接着層の図示を省略している。通常、ポリエステルフィルムの上に易接着層が形成された複合体が市販されており、本発明の反射防止フィルムにおいても、それを利用できる。必要に応じて、図1に示すように、低屈折率層3上に形成された防汚層4を有してよい。
【0019】
反射防止フィルムとは、波長を打ち消し合うことにより反射率を低減する、すなわち反射を防止するものである。これは、低屈折率層と防汚層との界面で反射した光と、低屈折率層とハードコート層との界面で反射した光とを相殺的に干渉させ、振幅を打ち消し合わせて、反射率を低減させている。このような相殺的な干渉は、低屈折率層及びベースフィルムの屈折率、並びに低屈折率層の膜厚を適宜選択することによりなされる。
【0020】
本発明の反射防止フィルムにおいて、易接着層の屈折率を1.58〜1.75とするのが好ましい。この場合、ハードコート層と易接着層の屈折率差がより適切に抑えられ、その結果、上記効果がより顕著となる。
【0021】
本発明で用いるポリエステルフィルム1を形成するポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸成分(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸等)とグリコール成分(例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等)とから構成される芳香族ポリエステルが好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレートが好ましい。また、上記に例示した成分の共重合ポリエステルであってもよい。
【0022】
本発明の反射防止フィルムにおいて、ポリエステルフィルムは、製膜時のフィルムの巻き取り性や、ハードコート層を形成する際のフィルムの搬送性等を良くするため、必要に応じて、滑剤としての有機または無機の微粒子を含有させることができる。かかる微粒子としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂微粒子、架橋ポリスチレン樹脂微粒子、尿素樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子、架橋シリコーン樹脂微粒子等を例示できる。また、微粒子に加えて、あるいはそれに代えて、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、他の樹脂等も、フィルムの透明性を損なわない範囲で任意に含有させることができる。
【0023】
本発明の反射防止フィルムにおいて、ポリエステルフィルムは、ヘイズが3%以下、好ましくは1.5%以下であることが好ましい。ヘイズが3%を超えると各種ディスプレイ用途において視認性を損なうなど光学用途として適さないことがある。この観点において、ヘイズ3%以下の高い透明性を保持しながら、ロール状態での耐ブロッキング性、易滑性、ハードコート層との密着性を向上させるために、易接着層(好ましくはナノメートルオーダーの厚さ、より好ましくは5nm〜80nm)がコーティングされたポリエステルフィルムを本発明の反射防止フィルムにおいて使用する。
【0024】
しかしながら、このような易接着層がコーティングされたポリエステルフィルムを用いた場合、易接着層の屈折率は基材のポリエステルの屈折率と異なるのが一般的である。易接着層とハードコート層の屈折率の差が大きい場合、ハードコート層をコーティングした際に、易接着層及びハードコート層2の膜厚ムラ等の原因により、外観干渉ムラを発生する等の問題がある。易接着層付きポリエステルフィルム、例えばPETフィルムの上に屈折率が1.58〜1.85の屈折率のハードコート層を設けた場合、光学的にはハードコート/易接着層及び易接着層/PETの界面で反射を生じ、反射防止フィルムの反射率特性及び干渉ムラ特性を悪化させる。この反射を抑制するには易接着層による光学的な悪影響を抑制する必要がある。易接着層付きポリエステルフィルムの反射率は、使用する易接着層の屈折率がポリエステルフィルムの屈折率(例えばPETフィルムの場合、n=1.69)から小さくなるにつれ、かつ、易接着層の膜厚が100nmに近づく程小さくなる。逆に、易接着層の光学的悪影響を除外した場合、反射率はポリエステルフィルムの反射率(例えばPET単体のフィルムの場合、6.5%)に近づいていく。本発明ではこのような事項を考慮して、使用するポリエステルフィルムとして、ハードコート層と接する側の易接着層付きポリエステルフィルムの反射率が4%以上であるフィルムを使用し、易接着層の悪影響を抑制することを特徴とする。
【0025】
易接着層付きポリエステルフィルム(例えばPETフィルム)の反射率を上述のように上げるためには、易接着層の膜厚を5nm以上80nm以下に制御することが好ましい。5nm以下であると易接着材料がポリエステルフィルム上に均質に被覆できずポリエステルフィルムとハードコート層の安定した密着性確保が困難となる。80nm以上になると易接着層での反射が大きくなり反射防止フィルムとしての反射率の増大、干渉ムラの悪化等の課題が生じる。また、易接着層付きポリエステルフィルム(例えばPETフィルム)の反射率を上げるためには、易接着層の屈折率を1.55〜1.75にすることが好ましい。1.58以下または1.75以上であるとハードコート材料及びポリエステルフィルムの屈折率との差が大きくなり反射防止フィルムとしての反射率の増大、干渉ムラの悪化等の課題を生じる。
【0026】
また、本発明で用いるポリエステルフィルム1の厚みは、特に限定されるものではないが、50〜200μmが好ましい。
【0027】
本発明において、ハードコート層2は、透明プラスチック基材であるポリエステルフィルム1よりも硬度の高い被膜であって、ポリエステルフィルム1の表面の硬度を向上させ、鉛筆等の荷重のかかる引っ掻きによる傷を防止し、また、ポリエステルフィルム1の屈曲による低屈折率層3のクラック発生を抑制して反射防止フィルムの機械的強度を改善するものである。
【0028】
本発明において、ハードコート層2の鉛筆硬度はH以上、より好ましくは2H以上にするのが好ましいが、ハードコート層2の硬度を向上させるためには、反応性硬化型樹脂、例えば、熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一方をハードコート材料(ハードコート層形成用組成物)として用いてハードコート層2を形成するのが好ましい。
【0029】
前記熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を使用することができ、これらの熱硬化性樹脂に必要に応じて架橋剤、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、溶剤を加えて使用することもできる。熱硬化性樹脂を用いてハードコート層を形成する場合は、熱硬化性樹脂をポリエステルフィルムの易接着層の表面に塗布した後、加熱により乾燥硬化させるようにするのが好ましい。
【0030】
また、前記電離放射線硬化型樹脂としては、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマー、及び反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びに多官能モノマー、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものが使用することができる。
【0031】
さらに、上記の電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂とするには、この中に光重合開始剤を配合することが好ましい。光重合開始剤としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類などを例示することができる。また、光重合開始剤に加えて光増感剤を用いてもよい。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、チオキサントンなどを例示することができる。光重合反応する紫外線硬化型樹脂を用いてハードコート層2を形成する場合は、紫外線硬化型樹脂をポリエステルフィルムの易接着層の表面に塗布し乾燥した後、紫外線照射により硬化させるようにするのが好ましい。
【0032】
ハードコート層2はポリエステルフィルム1と屈折率が近似していることが好ましい。反射率低減の理由から実用的には1.58〜1.85が好ましい。また、ハードコート層2の膜厚は1〜2μm以上あれば十分な強度が得られる。
【0033】
以上の成分からなるハードコート層2の屈折率は、通常1.49〜1.52程度であるが、本発明の反射防止フィルムでは、ハードコート層2に高屈折率粒子を含有させて屈折率を増大させて反射防止性能を高める。そのために、ハードコート層材料中に高屈折率粒子、即ち、高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子を添加することができる。
【0034】
本発明において高屈折率粒子とは、屈折率が1.6以上であるのが好ましく、粒径が0.5nm〜200nmであるのが好ましい。
ポリエステルフィルムを基材(ベース)とする反射防止フィルムにおいて、低反射率化のためのハードコート層の好ましい屈折率は上述のように1.58〜1.85であり、本発明ではこの屈折率を有するハードコート層2を形成するために、高屈折率粒子の配合量をハードコート層に対して例えば5〜70体積%となるように調整することができる。
【0035】
前記高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子としては、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる一つあるいは二つ以上の酸化物を含んで成る粒子を用いることができる。具体的には、例えば、ZnO(屈折率1.90)、TiO(屈折率2.3〜2.7)、CeO(屈折率1.95)、Sb(屈折率1.71)、SnO、ITO(屈折率1.95)、Y(屈折率1.87)、La(屈折率1.95)、ZrO(屈折率2.05)、Al(屈折率1.63)等の微粉末が挙げられる。
【0036】
本発明の反射防止フィルムにおいて、更に、ハードコート層に帯電防止性を付与し、反射防止フィルムとしての帯電防止性、埃付着性防止を可能にするのが好ましい。ハードコート層2に帯電防止性を付与するためにはハードコート層に導電性ナノ粒子を帯電防止剤として含有させればよい。具体的には、ハードコート層材料中に導電性ナノ粒子、即ち、導電性の金属や金属酸化物で粒径が例えば0.5〜200nmの超微粒子を添加することにより可能となる。導電性ナノ粒子としてはインジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる一つあるいは二つ以上の酸化物を含んで成る粒子を用いるのが好ましく、具体的には、酸化インジウム(ITO)、酸化錫(SnO)、アンチモン/錫酸化物(ATO)、鉛/チタン酸化物(PTO)、アンチモン酸化物(Sb)の超微粒子を用いるのが好ましい。
【0037】
本発明の反射防止フィルムにおいて、前記高屈折率粒子と導電性ナノ粒子を凝集なく併用することにより、高屈折率かつ帯電防止性に優れたハードコート層を得ることが可能となる。ハードコート層が帯電防止性を得るためにはそのシート抵抗を1015Ω/□以下とすることが好ましい。尚、ハードコート層のシート抵抗は小さいほど帯電防止性が向上するので、特に、下限は設定されないが、シート抵抗を小さくするのには限界があるために、ハードコート層のシート抵抗の下限は実質的に106Ω/□となる。また、ハードコート層のシート抵抗値は導電性ナノ粒子の配合量等によって調整することができ、例えば、導電性ナノ粒子の配合量をハードコート層に対して例えば5〜70質量%となるように調整することができる。
【0038】
本願において、屈折率1.58〜1.85のハードコート層2と前記低屈折率層との間に、屈折率1.60〜2.00の第2ハードコート層2’(不図示)をさらに備え、第2ハードコート層2’の屈折率が、ハードコート層2の屈折率より高くなるよう構成することが好ましい。第2ハードコート層2’の高屈折率化については、ハードコート層材料中に高屈折率粒子、すなわち高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子を添加することにより屈折率を増大させて反射防止性能を高めることができる。前記ハードコート層2と低屈折率層との間に、屈折率1.60〜2.00の第2ハードコート層2’をさらに設け、第2ハードコート層2’の屈折率が、ハードコート層2の屈折率より高くなるよう構成することにより、低屈折率層/第2ハードコート層界面を透過する光の量を低減することができ、ハードコート層2と易接着層との界面での光の反射を抑制することができる。したがって、上記構成により、反射防止性能を高くすることができる。
【0039】
本発明において第2ハードコート層2’の光学膜厚が80nm〜600nmであることが好ましい。また第2ハードコート層’の光学膜厚を80nm〜600nmとすることにより、さらに反射防止性能を高くすることができる。ここで、光学膜厚とは膜の屈折率と実膜厚を掛けたものである。中屈折率(1.5前後)のハードコート層2上に高屈折率層を挿入することによる低反射率化のためには光学膜厚は通常50〜200nm程度であることが適当とされてきた(特開2004−69867等)。これはPET基材の易接着層の屈折率及び膜厚が光学的に無視できない反射防止フィルムの場合、ハードコート層は中屈折率である必要が出てくる。このような構成で第2ハードコート層を挿入すると、ハードコート層と第2ハードコート層の屈折率差が大きいため第2ハードコート層の光学膜厚はλ/4(140nm)前後の50〜200nm程度でないと反射率低減効果は発現しない。加えて従来構成の場合、例えば低屈折率層と第2ハードコート層の光学膜厚が共に140nm(λ/4)であると、低屈折率層及び第2ハードコート層界面の反射光の位相差が180°となり、560nmでの最小反射率は低減できるものの、位相差が180°以外の400〜550nm付近及び650〜800nm付近の反射率は逆に増大してしまい、結果として青及び赤色の反射色の強いフィルムとなってしまう。加えて50〜200nmの制御幅の狭い精密膜厚制御が必要となり生産歩留まりに課題が生じてしまう。
【0040】
本発明の構成をとると、PET基材の易接着層の影響が光学的に無視できるため、ハードコート層自体の高屈折率化により、反射率低減効果が生じる。加えて第2ハードコート層の屈折率をハードコート層の屈折率より更に高めることにより、PET基材から傾斜的に屈折率差を付与することが可能となる。従って本発明の構成では実質的には高屈折率層+低屈折率層の2層の組み合わせの原理で反射防止が可能となり、第2ハードコート層の厳密な膜厚制御は不要となる。また擬似2層構成による低反射率化であるため550nmでの最小反射率低減だけでなく、400〜800nmの可視域全てにおいて低反射率化が可能となる。加えて第2ハードコート層2’の光学膜厚制御管理幅が80nm〜600nmと広くなるため、従来構成より生産歩留まりも飛躍的に向上させることができる。
【0041】
上述のようなハードコート層の表面に低屈折率層を形成するために低屈折率コーティング剤を塗工するなどして低屈折率層を形成するが、その前に、ハードコート層の表面処理を行うことが好ましい。この表面処理を行うことによりハードコート層と低屈折率層とのぬれ性、密着性を向上させることが可能となる。表面処理法としてはポリエステルフィルム1に施す表面改質処理と同様であって、プラズマ放電処理、コロナ処理、フレーム処理のような物理的表面処理とカップリング剤、酸、アルカリによる化学的表面処理が用いられている。
【0042】
本発明の反射防止フィルムにおいて、低屈折率層はポリエステルフィルム及びハードコート層よりも屈折率が小さい層である。この低屈折率層3は、屈折率が1.30〜1.45であることが好ましく、1.30〜1.40であることが更に好ましい。
低屈折率層の厚みdは、低屈折率層の屈折率をn、入射する光の波長をλとすると、nd=λ/4を満たすことが好ましい。具体的には、低屈折率層の厚みは50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることが更に好ましい。
【0043】
低屈折率コーティング剤は、バインダー材料および必要に応じて存在する微粒子を含んで成る。この場合、バインダー材料自身が低屈折率である場合と、バインダー材料に低屈折率の微粒子を含有して調製する場合がある。バインダー材料はシリコンアルコキシド系のものであっても、飽和炭化水素、ポリエーテルを主鎖として有するポリマー(例えばUV硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等)であってもよい。ポリマー鎖中にフッ素原子を含む単位を含有してもよい。
【0044】
シリコンアルコキシド系のものの好ましい例は、RSi(OR´)で表される珪素アルコキシド(ここで、R、R´は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+nは4であり、m及びnはそれぞれ整数である。)の1種またはそれ以上を基本骨格とするオリゴマー、ポリマー(共重合体を含む)である。そのようなアルコキシドとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等を例示できる。このようなアルコキシドのアルコキシ基が加水分解して縮合することによって、オリゴマーやポリマーをえることができる。
【0045】
上述の珪素アルコキシドの加水分解は、珪素アルコキシドを適当な溶媒中に溶解して行う。使用する溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のアルコール、ケトン、エステル類、ハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、或いはこれらの混合物が挙げられる。上記アルコキシドは上記溶媒中に、該アルコキシドが100%加水分解及び縮合したとして生じるSiO2換算で0.1%以上、好ましくは0.1〜10重量%になるように溶解する。SiO2ゾルの濃度が0.1重量%未満であると形成されるゾル膜が所望の特性が充分に発揮できず、一方、10重量%を越えると透明均質膜の形成が困難となる。又、本発明においては、上述の固形分以内であるならば、他の有機物や無機物バインダーを併用することも可能である。
【0046】
この溶液に加水分解に必要な量以上の水を加え、15〜35℃、好ましくは22〜28℃の温度で、0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間撹拌を行う。上記加水分解においては、触媒を用いることが好ましく、これらの触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸又は酢酸等の酸が好ましく、これらの酸を約0.001〜20.0N、好ましくは0.005〜5.0N程度の水溶液として加え、該水溶液中の水分を加水分解用の水分とすることができる。以上の如くして得られたSiO2ゾルは、無色透明な液体であり、ポットライフが約1ケ月の安定な溶液であり、基材に対して濡れ性が良く、塗布適性に優れている。
【0047】
本発明の反射防止フィルムの製造に際しては、上記のSiO2ゾルに、反応性有機珪素化合物又はその部分加水分解物を添加するのが好ましい。該反応性有機珪素化合物としては、上述の珪素アルコキシドのような反応性有機珪素化合物の他に、熱又は電離放射線によって反応架橋する複数の基、例えば、重合性二重結合基を有する分子量5000以下の有機珪素化合物が好ましい材料として挙げられる。このような有機珪素化合物は、片末端ビニル官能性ポリシラン、両末端ビニル官能性ポリシラン、片末端ビニル官能ポリシロキサン、両末端ビニル官能性ポリシロキサン、或いはこれらの化合物を反応させたビニル官能性ポリシラン、又はビニル官能性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0048】
上述の飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。また、ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。このような飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーは架橋していることが好ましい。架橋しているバインダー材料のポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例には、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが含まれる。
【0049】
二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりまたはそれに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダー材料のポリマーに導入してもよい。架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、本発明において架橋基とは、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果、反応性を示すものであってもよい。
【0050】
上記バインダー材料の重合反応および架橋反応に使用する重合開始剤は、熱重合開始剤よりも光重合開始剤の方がより好ましい。光重合開始剤の例には、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
【0051】
上述のように、バインダー材料は、珪素アルコキシドのような反応性有機珪素化合物であることが好ましい。必要に応じて存在する微粒子である低屈折率微粒子として例えば中空シリカを用いた場合、珪素アルコキシドおよび上述の他の反応性有機珪素化合物をバインダー材料に用いれば、中空シリカ粒子とのぬれ性、分散性が良好である。他の反応性有機珪素化合物としては、熱又は電離放射線によって反応架橋する複数の基、例えば、重合性二重結合基を有する分子量5000以下の有機珪素化合物が好ましい材料として挙げられる。このような反応性有機珪素化合物は、片末端ビニル官能性ポリシラン、両末端ビニル官能性ポリシラン、片末端ビニル官能ポリシロキサン、両末端ビニル官能性ポリシロキサン、或いはこれらの化合物を反応させたビニル官能性ポリシラン、又はビニル官能性ポリシロキサン等が挙げられる。具体的な化合物を例示すれば下記の通りである:化合物(A)〜(D)。
【0052】
CH2=CH−(R12Si)n−CH=CH2 (A)
(R、Rは炭素数1〜10のアルキル基)
【0053】
【化1】


【0054】
その他の反応性有機珪素化合物しては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン化合物が挙げられる。
【0055】
上述のように、バインダー材料に低屈折率微粒子(屈折率:1.20〜1.45)を添加することにより低屈折率層の屈折率を低減できる。低屈折率微粒子の平均粒子径は0.5〜200nmであることが好ましい。この平均粒径が200nmよりも大きくなると、得られる低屈折率層3においてレイリー散乱によって光が乱反射され、低屈折率層3が白っぽく見え、そのヘイズ値が増大することがある。0.5nm以下であると、低屈折率微粒子の分散性が低下し、低屈折率コーティング剤の液中で凝集を生じてしまう。また、低屈折率微粒子の添加量は低屈折率層3の全量に対して20〜99体積%であることが好ましい。20体積%以下であると低屈折率化の効果が少なく、微粒子の添加量が多いほど低屈折率化の効果が大きい。
【0056】
さらに低屈折率層3に防汚性を付与するために、バインダー材料の一部を撥水、撥油性材料に置き換えてもよい。撥水、撥油性材料は一般にワックス系の材料等が挙げられるが、特に、含フッ素化合物を含有することが望ましい。フッ素化合物を含有したときの効果は、低屈折率層の表面が汚れから保護され、また付着した汚れ、指紋等の除去性に優れる。さらに表面の摩擦抵抗を低減でき、耐摩耗性向上の効果も期待できる。
【0057】
本発明の反射防止フィルムをディスプレイ等の最表面に配置して使用する場合、実使用に耐えうる表面硬度、耐摩耗性が必要となる。このような場合は低屈折率層として高い膜硬度が必要となる。しかしながら、一般的に粒子充填複合材料は粒径の等しい(完全な単分散の)球状微粒子を最密充填したときの、微粒子の最大体積分率は、Horsfieldの充填モデルによると、0.74となり、幾何学的な関係から、必然的に26体積%粒子間間隙が生じてしまう。従って、理想的には低屈折層に26体積%のバインダー材料を添加したとき(74体積%の低屈折率微粒子)、低屈折率微粒子間の空隙は全てバインダー材料で置換され、高充填かつ非常に緻密な低屈折率層の薄膜が得られることになる。しかしながら、実際には、微粒子は粒度分布を持っており、また、低屈折率微粒子/バインダー材料の界面のぬれ性不足、ナノサイズの粒子径のため、低屈折率コーティング剤の液中または溶剤乾燥過程で凝集等を生じている。従って、実際には、低屈折率微粒子の添加量が70体積%以上の領域では低屈折率層中で、低屈折率微粒子の充填不良を生じ、低屈折率微粒子間にバインダー材料の未充填に起因する空隙を生じることになる。
【0058】
この低屈折率微粒子の高充填領域で生じた低屈折率層内でのバインダー材料の未充填部分は、薄膜の強度、耐摩耗性能を著しく低下させる。従って、低屈折率微粒子の添加による低屈折率層の屈折率低減手法は、70体積%以上の低屈折率微粒子の高充填領域では、耐摩耗性と完全にトレードオフの関係になり、実用上利用困難である。
【0059】
本発明の反射防止フィルムにおいて、低屈折率微粒子を用いる場合、低屈折率微粒子としては、屈折率が1.5以下であることが望ましい。具体的にはシリカ微粒子、中空シリカ微粒子、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物微粒子が好ましい。これら微粒子を1種類もしくは2種類以上混合して使用する。これら低屈折率微粒子をバインダー材料の樹脂等に相溶性を持たせるため表面処理を施して分散させる。
【0060】
低屈折率層中に含有される低屈折率微粒子が1種類以上の低屈折率微粒子から構成されており、低屈折率微粒子として少なくとも中空シリカゾルを含有することが好ましい。本発明において、中空粒子とは外殻によって包囲された空洞を有する微粒子である。また、中空粒子自体の屈折率は1.20〜1.45であることが好ましく、この中空粒子の屈折率は特開2001−233611号公報に開示されている方法によって測定することができる。また、中空粒子の平均粒子径は0.5〜200nmであることが好ましい。中空粒子の外殻を構成する材料は、シリカのほか、金属酸化物であることも好ましい。中空粒子は、その平均粒子径に比べて外殻の厚みが薄いものを用いるのが好ましく、また、低屈折率層中に占める中空シリカ微粒子(内部の空洞も含む)の体積が多いこと(40体積%以上)が好ましい。このような中空粒子は、例えば、特開2001−233611号公報に開示されており、そこに開示されている中空粒子を、低屈折率コーティング剤を調製する際に使用することができる。
【0061】
中空粒子の外殻を構成する材料を具体的に挙げると、SiO、SiO、TiO、TiOx、SnO、CeO、Sb、ITO、ATO、Al等の単独材料又はこれらの材料のいずれかの組み合わせの混合物の形態の材料である。また、これらの材料のいずれかの組み合わせの複合酸化物であってもよい。なお、SiOは、酸化雰囲気中で焼成した場合に、SiOとなるものが好ましい。
【0062】
前記低屈折率コーティング剤は液相法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、リバースコーティング法、トランスファーロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キャストコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等)により表面処理を行ったハードコート層上に塗工されることが好ましい。塗工後加熱乾燥により塗膜中の溶剤を揮発させ、その後、加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等を行い塗膜を硬化させて低屈折率層を形成することができる。
【0063】
本発明では、反射防止フィルムの防汚性、指紋除去性を更に向上させるためには、低屈折率層の最表面への防汚層を形成してコーティングするのが好ましい。防汚層の厚みは光学特性に影響を与えないため、30nm以下にするのが好ましい。また、防汚層の形成処理は、シリコーン系またはフッ素含有化合物を被覆し、低屈折率層の表面と化学的に結合させるようにして行なう。また、防汚層を形成する材料としては、アルコキシシラノ基を有するフッ素化合物、反応性シリコーンオイル等基材との反応性を有するものが耐摩耗性、耐薬品性、耐経時劣化性を向上することができて好ましい。
【0064】
防汚層を形成するための防汚材料としては、例えば、GE東芝シリコーン製長鎖フルオロアルキルシランコーティング剤「XC98−B2472」を希釈溶剤IPA(イソプロパノール)を用い、固形分0.2%まで希釈し、この混合液を膜厚15nmになるようにワイヤーバーコーター#10番で低屈折率層の表面に塗布した後、120℃、15分間乾燥させることによって、防汚層を形成することができる。
また、防汚層の性能評価としては、指紋拭き取り性を挙げることができる。すなわち、防汚層に指紋を付着させ、表面を汚した直後に、キムワイプ(十条キンバリー(株)製)で50往復して拭取る。拭取った部分にセロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を貼り付けて剥がし、40cmの距離より目視で観察し、汚れの除去度を評価することができる。
【実施例】
【0065】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
ポリエステルフィルム(易接着層付き透明基板フィルム)としては、以下のものを使用した:
(1)ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人(株)製「o3F916W」(PETフィルム厚:100μm、易接着層厚み:15nm、易接着層の屈折率1.56、易接着層側屈折率:5.5%)
(2)ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製「EME-016」(PETフィルム厚:100μm、易接着層厚み:90nm、易接着層の屈折率:1.61、易接着層側屈折率:6.1%)
【0066】
ハードコート層2は、アクリル系紫外線硬化型樹脂(大日精化工業(株)製「セイカビームPET−HC15」有効成分(固形分)60%)中に各種ナノ粒子を分散させてハードコート材料、即ち、ハードコート層形成用組成物を調製し、このハードコート材料(混合液)をワイヤーバーコーター#10番で上述のポリエステルフィルムの易接着皮膜層に塗布し、80℃、1分間乾燥させた後、UV照射(600mJ/cm)により硬化させて形成した。
【0067】
上記各種ナノ粒子のうち、高屈折率粒子としては、テイカ(株)製酸化チタン粒子「760T」(分散溶剤:トルエン、固形分48%)を、また、導電性ナノ粒子としては、触媒化成工業(株)製ATO粒子「ELCOM P−特殊品A」(分散溶剤:MEK/トルエン(4/1)、固形分30%)を用いた。
【0068】
低屈折率層は低屈折率コーティング剤をハードコート層2の表面に塗布して形成した。低屈折率コーティング剤は、テトラエトキシシラン208質量部にメタノール356質量部を加え、更に水18質量部及び0.01Nの塩酸水溶液18質量部を加え、これをディスパーで混合して混合液を得、この混合液を25℃恒温槽中で2時間攪拌して重量平均分子量を850に調整したシリコーンレジン(A)として使用し、次に、低屈折率微粒子として以下の低屈折率ナノ粒子(1)および(2)をシリコーンレジン(A)に加え、低屈折率ナノ粒子/シリコーンレジンが縮合固形物換算で所望の体積比となるように配合し、その後、全固形分が1%になるようにメタノールで希釈することによって、低屈折率コーティング剤を調整した。この低屈折率コーティング剤を膜厚100nmになるようにワイヤーバーコーター#10番で上記ハードコート層2の表面に塗布した後、120℃、15分間乾燥させて形成した。
【0069】
低屈折率ナノ粒子(1)としては、中空シリカIPA(イソプロパノール)分散ゾル(スルーリアCS−60IPA、固形分20重量%、触媒化成工業株式会社製)を用いた。また、低屈折率ナノ粒子(2)としては、オルガノシリカゾル(IPA−ST、固形分30重量%、日産化学(株)製)を用いた。
【0070】
(実施例1)
PETフィルム上o3F916W上に、酸化チタン粒子(760T)を30質量%分散させたハードコート材料をコーティングし、膜厚3μmの硬化膜(ハードコート層2)を得た。その上にシリコーンレジン(A)マトリックスに対しトータル量の60体積%のCS−60IPAを分散させた低屈折率コーティング剤を、膜厚約100nmになるようにワイヤーバーコーターでコーティングした。この後、120℃、15分の条件で硬化させ反射防止フィルムを作成した。
【0071】
(実施例2)
PETフィルムにEME016を使用した以外は実施例1と同様にして反射防止フィルムを作成した。
【0072】
(実施例3)
酸化チタン粒子(760T)が80質量%分散させたハードコート材料を用いた以外は実施例2と同様にして反射防止フィルムを作成した。
【0073】
(実施例4)
ハードコート材料中に分散させる粒子として酸化チタン粒子(760T)が30質量%、ATO粒子(ELECOM−P特殊品A)を50質量%とした以外は実施例2と同様にして反射防止フィルムを作成した。
【0074】
(実施例5)
中空シリカ粒子(CS60IPA)が40体積%配合された低屈折率コーティング剤を用いた以外は実施例2と同様にして反射防止フィルムを作成した。
【0075】
(実施例6)
低屈折率コーティング剤中に分散させる粒子を中空シリカ粒子の代わりに、オルガノシリカゾル(IPA−ST)を60体積%配合した以外は実施例2と同様にして反射防止フィルムを作成した。
【0076】
(実施例7)
PETフィルムEME016上に実施例2記載のハードコート層(第1ハードコート層)成膜後、酸化チタン粒子(760T)を40質量%分散させたハードコート材料をコーティングし、光学膜厚560nmの第2ハードコート層を得た。その上にシリコーンレジン(A)マトリックスに対しトータル量の60体積%のCS−60IPAを分散させた低屈折率コーティング剤を、膜厚約100nmになるようにワイヤーバーコーターでコーティングした。この後、120℃、15分の条件で硬化させ反射防止フィルムを作成した。
【0077】
(実施例8)
実施例2記載の第1ハードコート層成膜後、酸化チタン粒子(760T)を70質量%分散させたハードコート材料をコーティングし、光学膜厚140nmの第2ハードコート層を得た以外は、実施例7と同様にして反射防止フィルムを作成した。
【0078】
(実施例9)
第2ハードコート層の光学膜厚を560nmになるようにコーティングした以外は実施例8と同様にして反射防止フィルムを作成した。
【0079】
(実施例10)
実施例2にて作成した反射防止フィルム上に防汚材料を膜厚約15nmになるようにワイヤーバーコーターでコーティングして防汚層を形成した。この後、120℃、15分の条件で硬化させ反射防止フィルムを作成した。尚、防汚材料としては、XC98−B2472(GE東芝シリコーン社製、製品番号:XC98−B2472、長鎖フルオロアルキルシランコーティング剤)を使用した。
【0080】
(比較例1)
PETフィルムにo3PF8Wを用いた以外は実施例1と同様にしてハードコート層2及び低屈折率層3を積層した反射防止フィルムを作成した。
【0081】
(比較例2)
ハードコート材料中に酸化チタンを含有しない以外は実施例と同様にして反射防止フィルムを作成した。
【0082】
(比較例3)
PETフィルムo3PF8W上に酸化チタンを含有しないハードコート材料を用い、第1ハードコート層成膜後、酸化チタン粒子(760T)を40質量%分散させたハードコート材料をコーティングし、光学膜厚140nmの第2ハードコート層を得た。その上にシリコーンレジン(A)マトリックスに対しトータル量の60体積%のCS−60IPAを分散させた低屈折率コーティング剤を、膜厚約100nmになるようにワイヤーバーコーターでコーティングした。この後、120℃、15分の条件で硬化させ反射防止フィルムを作成した。
【0083】
実施例1〜10、比較例1〜3で得た反射防止フィルムの評価結果を表1および2に示す。尚、各評価方法(指紋除去性については上記参照)は以下の通りである。
【0084】
外観干渉ムラ:A4サイズのサンプル裏面を黒塗りしたあと、3波長蛍光灯下で外観特性を目視観察する。
【0085】
視感反射率:(株)日立ハイテクノロジーズ製、分光光度計U−4100を用い、JIS R−3106 に基づき、サンプル裏面を黒塗りしたあとに、5度の正反射で測定する。
分光反射率(450nm、650nm):(株)日立ハイテクノロジーズ製、分光光度計U−4100を用い、JIS R−3106 に基づき、サンプル裏面を黒塗りしたあとに、450nmm及び650nmでの5度の正反射で測定する。
【0086】
密着性(クロスカットテープ試験):サンプルをJIS D0202−1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行う。セロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を用い、指の腹でフィルムに密着させた後剥離する。判定は100マスの内、剥離しないマス目の数で表し、剥離しない場合を100/100、完全に剥離する場合を0/100として表す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
上記実施例および比較例の結果から、ポリエステルフィルムの表面に屈折率が1.58〜1.85のハードコート層を形成した反射防止フィルムにおいて、ハードコート層と接する側の易接着層付きポリエステルフィルムの反射率が4%以上であるポリエステルフィルムを使用することにより反射干渉ムラを抑制し、外観特性に優れるとともに反射防止性能を向上させることができ、かつハードコート層の剥離を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 ポリエステルフィルム
2 ハードコート層
3 低屈折率層
4 防汚層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムと、該ポリエステルフィルム上に形成された易接着層と、該易接着層上に形成されたハードコート層と、該ハードコート層上に形成された低屈折率層とを有して成る反射防止フィルムであって、
前記ハードコート層の屈折率が1.58〜1.85であり、
易接着層が形成されたポリエステルフィルムの易接着層側の反射率が4%以上であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記易接着層の膜厚が、5nm〜80nmであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記易接着層の屈折率が1.58〜1.75であることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層が、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも1つを含む酸化物から成る高屈折率粒子を含んでなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層は帯電防止剤を含んで成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記帯電防止剤が、インジウム、亜鉛、錫、及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも1つを含む酸化物からなる導電性ナノ粒子であることを特徴とする請求項5記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記ハードコート層のシート抵抗が、1015Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
低屈折率層の屈折率は、1.30〜1.45であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
さらに、屈折率1.60〜2.00の第2ハードコート層を前記ハードコート層と前記低屈折率層との間に有してなり、前記第2ハードコート層の屈折率は、前記ハードコート層の屈折率より高いことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
第2ハードコート層の光学膜厚が80nm〜600nmであることを特徴とする請求項9記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
前記低屈折率層上に防汚層を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止フィルムを製造する方法であって、
易接着層を有するポリエステルフィルムを準備する工程、
易接着層上にハードコート層を形成する工程、および
ハードコート層上に低屈折率層を形成する工程
を含んで成る方法。
【請求項13】
低屈折率層上に防汚層を形成する工程を更に含む、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−31769(P2009−31769A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162019(P2008−162019)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】