説明

反射防止フィルム

【課題】透過率が高く、かつ反射像が明確には映り込まない反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】反射防止フィルムに関する。ポリエステルフィルム1の表面に屈折率が1.45〜1.65、ヘイズが1〜10%の第1ハードコート層2を設ける。この第1ハードコート層2の表面に屈折率が第1ハードコート層2よりも大きく、ヘイズが0.1〜1%の第2ハードコート層3を設ける。この第2ハードコート層3の表面に屈折率が1.30〜1.45の低屈折率層4を設けて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ(CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等)の表示画面表面に適用される反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
防眩性フィルムは一般に、CRT、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射による像の映り込みを防止するために、ディスプレイの最表面に配置される。防眩性フィルムは、表面凹凸や内部ヘイズによる散乱を利用して、映り込んだ画像をぼやけさせる効果を持つ。さらに表面の映り込みを低減するには、防眩性フィルムの防眩層の上に低屈折率層を形成することで、表面の反射率を低減した防眩性反射防止フィルムがある。
【0003】
一方、防眩性の強い反射防止フィルムを用いる場合、通常、防眩性が上がるほどヘイズは大きくなるため、フィルムの透過特性の低下が問題となる場合がある。特に近年、画像表示装置の高精細化にともない、優れた透過特性を有する防眩性フィルムに対する要求が高まってきている。しかしながら、これまで優れた透過特性と防眩性を併せ持った防眩性フィルムはこれまで存在しなかった。
【0004】
例えば、特開2007−133384号公報(特許文献1)、特開2000−258606号公報(特許文献2)において、防眩層における光拡散性粒子の重量比率が3〜30%あるいは5〜30%である防眩性フィルムが記載されているが、これは優れた防眩性を有しているものの、ヘイズが7〜65%と高く、表示画像がぼけるという欠点を有している。また、特開平9−113709号公報(特許文献3)においては、表面凹凸を有する光拡散フィルムが記載されているが、これは光拡散性の凸部の面積が10〜90%と大きいために、透過特性が十分でない。
【0005】
一方、特開2001−350001号公報(特許文献4)などにおいては、反射率が低くかつ優れた透明性を有しているものの、蛍光灯などの反射像が映り込み、視認性が悪いという欠点がある。
【特許文献1】特開2007−133384号公報
【特許文献2】特開2000−258606号公報
【特許文献3】特開平9−113709号公報
【特許文献4】特開2001−350001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、透過率が高く、かつ反射像が明確には映り込まない反射防止フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る反射防止フィルムは、ポリエステルフィルム1の表面に屈折率が1.45〜1.65、ヘイズが1〜10%の第1ハードコート層2を設け、この第1ハードコート層2の表面に屈折率が第1ハードコート層2よりも大きく、ヘイズが0.1〜1%の第2ハードコート層3を設け、この第2ハードコート層3の表面に屈折率が1.30〜1.45の低屈折率層4を設けて形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、第2ハードコート層3の屈折率が第1ハードコート層2の屈折率+0.3以下であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、第2ハードコート層3の光学膜厚が120〜600nmであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が高屈折率粒子として第1ハードコート層2と第2ハードコート層3のうちのいずれか一方又は両方に含有されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、第1ハードコート層2と第2ハードコート層3のうちのいずれか一方又は両方が帯電防止性を有していることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか1項において、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が導電性ナノ粒子として第1ハードコート層2と第2ハードコート層3のうちのいずれか一方又は両方に含有されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか1項において、第1ハードコート層2と第2ハードコート層3のうちのいずれか一方又は両方のシート抵抗が1014Ω/□以下であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれか1項において、低屈折率層4の表面に防汚層5が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る反射防止フィルムによれば、透過率が高く、かつ反射像が明確には映り込まないものである。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、反射防止フィルムの反射率を低くすることができるものである。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、反射防止フィルムの反射率をさらに低くすることができるものである。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、第1ハードコート層と第2ハードコート層のうちのいずれか一方又は両方の屈折率を増大させ、反射干渉ムラを少なくすることができ、外観特性に優れると共に、反射防止性能を高く得ることができるものである。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、第1ハードコート層と第2ハードコート層のうちのいずれか一方又は両方が静電気等により帯電するのを防止し、埃を付着させにくくすることができるものである。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、導電性ナノ粒子により、第1ハードコート層と第2ハードコート層のうちのいずれか一方又は両方に導電性を付与することができ、帯電防止性を有する第1ハードコート層及び/又は第2ハードコート層を容易に設けることができるものである。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、第1ハードコート層と第2ハードコート層のうちのいずれか一方又は両方の帯電防止性を向上させることができるものである。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、指紋付着などによる汚染を少なくし、かつその除去性を高めることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は本発明に係る反射防止フィルムの一例を示す断面図である。この反射防止フィルムは、透明基材として用いられるポリエステルフィルム1の表面に第1ハードコート層2を設け、この第1ハードコート層2の表面に第2ハードコート層3を設け、この第2ハードコート層3の表面に低屈折率層4を設けて形成されている。
【0025】
図2は本発明に係る反射防止フィルムの他の一例を示す断面図である。この反射防止フィルムは、低屈折率層4の表面に防汚層5が設けられている。
【0026】
本発明で用いるポリエステルフィルム1は、ポリエステルとして、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分と、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール成分とから構成される芳香族ポリエステルが好ましく、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレートが好ましい。また、上記に例示した複数の成分等の共重合ポリエステルであってもよい。
【0027】
上記ポリエステルフィルム1には、製膜時のフィルムの巻き取り性や、第1ハードコート層2や粘着剤等を塗設する際のフィルムの搬送性等を良くするため、必要に応じて、滑剤としての有機または無機の微粒子を含有させることができる。かかる微粒子としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂微粒子、架橋ポリスチレン樹脂微粒子、尿素樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子、架橋シリコーン樹脂微粒子等が例示される。また、微粒子以外にも着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、他の樹脂等も透明性を損なわない範囲で任意に含有させることができる。
【0028】
本発明におけるポリエステルフィルム1はヘイズが3%以下、好ましくは1.5%以下であることが好ましい。ヘイズが3%を超えると各種ディスプレイ用途において視認性を損なうなど光学用途として適さないことがある。この観点において、ヘイズが3%以下の高い透明性を保持しながら、ロール状態での耐ブロッキング性、易滑性、第1ハードコート層2との密着性を向上させるために、ナノメートルオーダーの易接着層がコーティングされたポリエステルフィルム1が従来から一般的に用いられる。
【0029】
また、本発明で用いるポリエステルフィルム1の厚みは、特に限定されるものではないが、50〜200μmが好ましい。
【0030】
第1ハードコート層2と第2ハードコート層3のうちのいずれか一方又は両方(以下「第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3」ともいう。)の硬度を向上させるためには反応性硬化型樹脂、すなわち熱硬化型樹脂及び/又は電離放射線硬化型樹脂を用いることが望ましい。前記熱硬化型樹脂には、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が使用される。これらの樹脂に必要に応じて架橋剤、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、溶剤を加えて使用する。
【0031】
電離放射線硬化型樹脂としては、好ましくはアクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマー、及び反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びに多官能モノマー、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものが使用できる。
【0032】
さらに上記の電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂とするには、この中に光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤の例にはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類が含まれる。光重合開始剤に加えて光増感剤を用いてもよい。光増感剤の例にはn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、チオキサントンが含まれる。
【0033】
一方で、光重合反応は、第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3の塗布及び乾燥後、紫外線照射により実施することが好ましい。
【0034】
以上の成分からなる第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3の屈折率は通常1.45〜1.52程度であるが、第1ハードコート層2の屈折率は1.45〜1.65であり、第2ハードコート層3の屈折率は第1ハードコート層よりも大きい。第1ハードコート層2及び第2ハードコート層3の屈折率が上記範囲を逸脱すると、反射防止フィルムの透過率が低くなったり、反射像が明確に映り込んでしまったりするものである。そして、第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3の屈折率を増大させるためにハードコート層形成用樹脂組成物(ハードコート材料)中に高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子を添加することができる。具体的には、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が高屈折率粒子として第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3に含有されているのが好ましい。これにより、第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3の屈折率を増大させ、反射干渉ムラを少なくすることができ、外観特性に優れると共に、反射防止性能を高く得ることができるものである。
【0035】
また、第2ハードコート層3の屈折率は、第1ハードコート層2の屈折率よりも大きいが、第1ハードコート層2の屈折率+0.3以下であることが好ましい。これにより、反射防止フィルムの反射率を低くすることができるものである。
【0036】
また、第1ハードコート層2のヘイズは1〜10%であり、第2ハードコート層3のヘイズは0.1〜1%である。ここで、ヘイズを上記範囲内に収めるにあたっては、例えば、ハードコート材料に防眩性材料(アクリル粒子)等を分散させ、その含有量を調整することによって、ヘイズの値を調整することができる。第1ハードコート層2及び第2ハードコート層3のヘイズが上記範囲を逸脱すると、反射防止フィルムの透過率が低くなったり、反射像が明確に映り込んでしまったりするものである。
【0037】
また、第2ハードコート層2の光学膜厚は120〜600nmであることが好ましい。これにより、反射防止フィルムの反射率をさらに低くすることができるものである。なお、以下において単に「膜厚」といえば、実膜厚(物理膜厚)を意味するものとする。
【0038】
また、第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3が帯電防止性を有しているのが好ましく、これにより、第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3が静電気等により帯電するのを防止し、埃を付着させにくくすることができるものである。第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3に帯電防止性を付与するためには、ハードコート層形成用樹脂組成物中に導電性の金属や金属酸化物の超微粒子を添加することにより可能となる。具体的には、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物(ITO、SnO、ATO、PTO、Sb等の超微粒子)が導電性ナノ粒子として第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3に含有されているのが好ましい。このような導電性ナノ粒子により、第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3に導電性を付与することができ、帯電防止性を有する第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3を容易に設けることができるものである。
【0039】
さらに、前記高屈折率超微粒子と導電性超微粒子を凝集なく併用することにより、高屈折率かつ帯電防止性に優れた第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3を得ることが可能となる。具体的には、第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3のシート抵抗は1014Ω/□以下(下限は10Ω/□)であることが好ましく、これにより、第1ハードコート層2及び/又は第2ハードコート層3の帯電防止性を向上させることができるものである。
【0040】
本発明において低屈折率層4は、屈折率が1.30〜1.45であり、1.30〜1.40であることが好ましい。低屈折率層4の屈折率が上記範囲を逸脱すると、反射防止フィルムの透過率が低くなったり、反射像が明確に映り込んでしまったりするものである。低屈折率層の厚み(d)は低屈折率層の屈折率をn、波長をλとすると、nd=λ/4であることが好ましい。具体的には、nd=50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。
【0041】
低屈折率層4を形成するための低屈折率コーティング材料の主成分であるバインダー材料は、シリコンアルコキシド系であっても、飽和炭化水素、ポリエーテルを主鎖として有するポリマー(UV硬化型樹脂、熱硬化型樹脂)であっても良い。その中にフッ素原子を含む単位を含有しても良い。
【0042】
低屈折率層4の屈折率を低減するには、バインダー材料に低屈折率の微粒子(屈折率:1.20〜1.45)を添加することにより実現できる。微粒子の平均粒子径は0.5〜200nmであることが好ましい。なお、微粒子の平均粒子径は、微粒子の分散液について光拡散法を使用することによって測定することができる。そして微粒子の平均粒子径が200nmよりも大きくなると、得られる低屈折率層4においてレイリー散乱によって光が乱反射され低屈折率層4が白っぽく見え、その透過率が低下することがある。逆に微粒子の平均粒子径が0.5nmよりも小さくなると、微粒子の分散性が低下し、コーティング液中で凝集を生じてしまう。また一方、微粒子の添加量は20〜99体積%であることが好ましい。20体積%未満であると低屈折率化の効果が少なく、微粒子の添加量が多いほど低屈折率化の効果が大きい。本発明に係る反射防止フィルムをディスプレイ等の最表面に配置して使用する場合、実使用に耐えうる表面硬度、耐摩耗性が必要となる。このような場合は低屈折率層4として高い膜硬度が必要となる。しかしながら一般的に粒子充填複合材料は粒径の等しい(完全な単分散の)球状微粒子を最密充填したときの、微粒子の最大体積分率は、Horsfieldの充填モデルによると、0.74となり、幾何学的な関係から、必然的に24体積%粒子間間隙が生じてしまう。従って理想的には低屈折率コーティング剤に24体積%のバインダー材料を添加したとき(76体積%の微粒子)、微粒子間の空隙は全てバインダー材料で置換され、高充填かつ非常に緻密な低屈折率層4の薄膜が得られることになる。しかしながら実際には、微粒子は粒度分布を持っており、また微粒子/バインダー材料界面のぬれ性不足、ナノサイズの粒子径のため、コーティング液中または溶剤乾燥過程で凝集等を生じている。従って実際には、微粒子の添加量が70体積%以上の領域では低屈折率層4中で、微粒子の充填不良を生じ、微粒子間にバインダー材料未充填に起因する空隙を生じることになる。
【0043】
この微粒子高充填領域で生じた、低屈折率層4内でのバインダー未充填部分は、薄膜の強度、耐摩耗性能を著しく低下させる。従って、低屈折率微粒子添加による低屈折率層4の屈折率低減手法は、70体積%以上の微粒子高充填領域では、耐摩耗性と完全にトレードオフの関係になり、実用上利用困難である。
【0044】
低屈折率微粒子としては、屈折率が1.5以下であることが望ましい。具体的にはシリカ微粒子、中空シリカ微粒子、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物微粒子が好ましい。これら微粒子を1種類もしくは2種類以上混合して使用する。これら微粒子をバインダー樹脂に相溶性を持たせるため表面処理を施して分散させる。
【0045】
本発明では、反射防止フィルムの防汚性、指紋除去性を向上させるために、低屈折率層4の表面に防汚層5を設けて、この防汚層5で低屈折率層4をコーティングするのが好ましい。防汚層5の厚みは光学特性に影響を与えないため、30nm以下にするのが好ましい。また、防汚層5の形成処理は、シリコーン系またはフッ素含有化合物を被覆し、低屈折率層4の表面と化学的に結合させるようにして行う。また、防汚層5を形成する材料としては、アルコキシシラノ基を有するフッ素化合物、反応性シリコーンオイル等基材との反応性を有するものが耐摩耗性、耐薬品性、耐経時劣化性を向上することができて好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0047】
ポリエステルフィルム(透明基板フィルム)1としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製「A4100」(188μm厚)を用いた。
【0048】
第1ハードコート層2及び第2ハードコート層3は、次のようにして形成した。すなわち、アクリル系紫外線硬化型樹脂(大日精化工業(株)製「セイカビームPET−HC15」、有効成分(固形分)60質量%)中に、後述する防眩性粒子、高屈折率ナノ粒子、導電性ナノ粒子、反応性シリケートを分散させてハードコート材料を調製し、このハードコート材料(混合液)をワイヤーバーコーター#10番でポリエステルフィルム1の表面に塗布し、80℃、1分間乾燥させた後、UV照射(600mJ/cm)により硬化させて第1ハードコート層2を形成し、さらにハードコート材料の組成を変更してこれを第1ハードコート層2の表面に上記と同様の条件で塗布・乾燥させた後、UV照射により硬化させて第2ハードコート層3を形成した。
【0049】
防眩性粒子(アクリル粒子)としては、綜研化学(株)製「MX−300」(平均粒子径3.0μm)を用い、高屈折率ナノ粒子としては、酸化チタン粒子であるテイカ(株)製「760T」(分散溶剤:トルエン、固形分48質量%)を用い、導電性ナノ粒子としては、ATO粒子である触媒化成工業(株)製「ELCOM P−特殊品A」(分散溶剤:MEK/トルエン(4/1)、固形分30質量%)を用い、反応性シリケートとしては、GE東芝シリコーン(株)製「TSL8370」及び三菱化学(株)製「MS51」を用いた。
【0050】
低屈折率層4は低屈折率コーティング剤を第2ハードコート層3の表面に塗布して形成した。低屈折率コーティング剤は、次のようにして調製した。まずテトラエトキシシラン208質量部にメタノール356質量部を加え、さらに水18質量部及び0.01Nの塩酸水溶液18質量部を加え、これをディスパーで混合し、混合液を得た。そしてこの混合液を25℃恒温槽中で2時間攪拌して重量平均分子量を850に調整したシリコーンレジン(A)として使用し、次に、低屈折率微粒子として以下の低屈折率ナノ粒子をシリコーンレジン(A)に加え、低屈折率ナノ粒子/シリコーンレジンが縮合固形物換算で所望の体積比となるように配合し、その後、全固形分が1質量%となるようにメタノールで希釈することによって、低屈折率コーティング剤を調製した。そしてこの低屈折率コーティング剤を膜厚100nmとなるようにワイヤーバーコーター#10番で上記第2ハードコート層3の表面に塗布した後、120℃、15分間乾燥させて低屈折率層4を形成した。低屈折率ナノ粒子としては、中空シリカIPA(イソプロパノール)分散ゾル(スルーリアCS−60IPA、固形分20質量%、触媒化成工業(株)製)を用いた。
【0051】
(実施例1)
PETフィルム上に、防眩性粒子(アクリル粒子)を20質量%分散させたハードコート材料をコーティングし、膜厚3μmの第1ハードコート層2を得た。この第1ハードコート層2の屈折率は1.45、ヘイズは2.9%であった。次に第1ハードコート層2の上に、酸化チタン粒子「760T」を20質量%、反応性シリケート「TSL8370」を1質量%、「MS51」を1質量%分散させたハードコート材料をコーティングし、光学膜厚120nmの第2ハードコート層3を得た。この第2ハードコート層3の屈折率は1.75、ヘイズは0.2であった。その後、第2ハードコート層3の上にシリコーンレジン(A)マトリックスに対しトータル量の60体積%の「CS−60IPA」を分散させた低屈折率コーティング剤を、膜厚100nmとなるようにワイヤーバーコーターでコーティングした。この後、120℃、15分の条件で硬化させて低屈折率層4を設けることによって、図1のような反射防止フィルムを製造した。低屈折率層4の屈折率は1.39であった。
【0052】
(実施例2)
PETフィルム上に、防眩性粒子(アクリル粒子)を40質量%分散させたハードコート材料をコーティングし、膜厚3μmの第1ハードコート層2を得た。この第1ハードコート層2の屈折率は1.65、ヘイズは4.4%であった。次に第1ハードコート層2の上に、酸化チタン粒子「760T」を40質量%、反応性シリケート「TSL8370」を1質量%、「MS51」を1質量%分散させたハードコート材料をコーティングし、光学膜厚600nmの第2ハードコート層3を得た。この第2ハードコート層3の屈折率は1.95、ヘイズは0.3であった。その後、第2ハードコート層3の上にシリコーンレジン(A)マトリックスに対しトータル量の60体積%の「CS−60IPA」を分散させた低屈折率コーティング剤を、膜厚100nmとなるようにワイヤーバーコーターでコーティングした。この後、120℃、15分の条件で硬化させて低屈折率層4を設けることによって、図1のような反射防止フィルムを製造した。低屈折率層4の屈折率は1.39であった。
【0053】
(実施例3)
実施例1にて製造した反射防止フィルムの低屈折率層4の上に防汚材料を膜厚5nmとなるようにワイヤーバーコーター♯10番で塗布し、これを120℃、15分間の条件で乾燥硬化させて防汚層5を設けることによって、図2のような反射防止フィルムを製造した。防汚材料としては、長鎖フルオロアルキルシランコーティング剤であるGE東芝シリコーン製「XC98−B2472」を固形分0.1質量%となるまで、希釈溶剤であるIPA(イソプロピルアルコール)で希釈したものを用いた。
【0054】
(実施例4)
実施例2にて製造した反射防止フィルムの低屈折率層4の上に実施例3と同様に防汚層5を設けることによって、図2のような反射防止フィルムを製造した。
【0055】
(比較例1)
第2ハードコート層3を設けないようにした以外は、実施例1と同様にして、第1ハードコート層2及び低屈折率層4を設けて反射防止フィルムを製造した。
【0056】
(比較例2)
第2ハードコート層3を設けないようにした以外は、実施例2と同様にして、第1ハードコート層2及び低屈折率層4を設けて反射防止フィルムを製造した。
【0057】
下記[表1]に実施例1〜4及び比較例1、2の反射防止フィルム(サンプル)の評価結果を示す。なお、各評価方法は以下の通りである。
【0058】
反射率:(株)日立ハイテクノロジーズ製分光光度計「U−4100」を用い、JIS R−3106に基づき、サンプル裏面を黒塗りした後に、5度の正反射で測定した。
【0059】
ヘイズ:日本電色(株)製「NDH2000」を用いて測定した。
【0060】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る反射防止フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る反射防止フィルムの他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 ポリエステルフィルム
2 第1ハードコート層
3 第2ハードコート層
4 低屈折率層
5 防汚層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの表面に屈折率が1.45〜1.65、ヘイズが1〜10%の第1ハードコート層を設け、この第1ハードコート層の表面に屈折率が第1ハードコート層よりも大きく、ヘイズが0.1〜1%の第2ハードコート層を設け、この第2ハードコート層の表面に屈折率が1.30〜1.45の低屈折率層を設けて形成されていることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
第2ハードコート層の屈折率が第1ハードコート層の屈折率+0.3以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
第2ハードコート層の光学膜厚が120〜600nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が高屈折率粒子として第1ハードコート層と第2ハードコート層のうちのいずれか一方又は両方に含有されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
第1ハードコート層と第2ハードコート層のうちのいずれか一方又は両方が帯電防止性を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
インジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が導電性ナノ粒子として第1ハードコート層と第2ハードコート層のうちのいずれか一方又は両方に含有されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
第1ハードコート層と第2ハードコート層のうちのいずれか一方又は両方のシート抵抗が1014Ω/□以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
低屈折率層の表面に防汚層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−32735(P2010−32735A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194134(P2008−194134)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】