説明

反射防止フィルム

【課題】前面板用途に適した、400〜600μmもしくはその整数倍のピッチをもたない、または周期性のないハードコート面を持ち、帯電防止機能、高い耐擦傷性を有し、反射防止機能に優れたモアレ発生のない反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材と、該透明基材の一方の主面側にウエットコーティング法でハードコート層と該ハードコート層よりも上側に低屈折率層を配置された反射防止層からなる反射防止フィルムにおいて、ハードコート層は、バインダマトリックス形成材料と、フッ素系添加剤を含んでおり、且つ、400〜600μmもしくはその整数倍のピッチをもたない、または表面の凹凸に周期性がなく、表面粗さ(Ra)が0.0025μm以上0.004μm以下の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面板用途に適した周期性のないことを特徴とするハードコート面を持ち、帯電防止機能、高い耐擦傷性を有し、反射防止機能に優れた反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル(PDP)等に代表される高精細かつ大画面ディスプレイの開発が急速に進んでいる。ディスプレイの表示面には、その視認性を高めるために、画面への蛍光灯など外光の映り込みを防止するため反射防止機能を有する反射防止層を表面に配置する必要がある。
【0003】
反射防止フィルムなど光学フィルムの製造過程において、塗工方法は、大面積化、および連続生産ができ、低コスト化が可能なウエットコーティング法が注目されている。また近年、プラズマディスプレイパネルなどの光学フィルムがその一部に用いられているディスプレイを有する薄型テレビジョンなどの価格競争は極めて熾烈であり、これらに用いられる光学用フィルムのコストダウンの要求も極めて高くなってきている。
【0004】
しかしながら、溶剤を用いたオールウェット塗布は生産性の観点からは非常に有利である反面、塗布直後の溶剤乾燥を一定に保つことが非常に困難であったり、塗工機の振動等が原因で、面状ムラが生じやすい。ここで言う面状ムラの代表的なものとしては溶剤乾燥速度差に起因する乾燥ムラや乾燥風で引き起こされる厚みムラである風ムラ、振動ムラが挙げられ、これらが周期性をもった凸凹であると、パネル化した際にハードコート層の周期的な凹凸とTVの画素ピッチと干渉することによりモアレが発生し、品質問題となる。
【0005】
モアレとは、モアレまたはモワレは干渉縞ともいい、規則正しい繰り返し模様を複数重ね合わせた時に、それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様のことである。モアレそのものも周期を持ち、この周期は元になる模様の周期の組み合わせで決まる。物理学的にいうと、モアレとは二つの空間周波数のうなり現象といえる。
【0006】
オールウェット塗布においてより生産性を向上させるために、塗布速度を高くすることは必須の技術である。だが単純に、塗布速度を高くすると相対的に乾燥風の風速も高くなり、また支持体の高速移動に伴う同伴風の影響も受け、風ムラは悪化することになる。こうして従来では光学性能、膜物性のバラツキを抑えた反射防止膜を得るためには、塗布速度をあまり高くすることはできなかった。
【0007】
一方、前述したムラや周期的な凹凸を低減させるためには、レベリング性を向上させることが有効であることが知られている。レベリング性を向上させる一つの手段として、塗布組成物中にレベリング剤を添加する方法が提案されている。
【0008】
塗布物にレベリング剤を添加すると塗膜形成過程での表面張力変化を小さく、または低下させて熱対流を防止して膜の均一性を改良するという機構に基づいている(非特許文献1)。目的とする塗布組成物中の溶剤、樹脂、各種添加剤との相溶性などにより最適なレベリング剤種は異なるが、溶剤を用いて塗布する場合にはフッ素系レベリング剤を用いるのが有効である。
【0009】
フッ素系レベリング剤の主な特徴は、塗料の表面張力を低下させる能力にある。表面欠陥は表面張力に由来し、これらの添加剤により克服することができるので非常に有益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−223193号公報
【特許文献2】特開2006−227353号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】コーティング用添加剤の最新技術、桐生春雄監修、シーエムシー、2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前面板用途に適した、400〜600μmもしくはその整数倍のピッチをもたない、または周期性のないハードコート面を持ち、帯電防止機能、高い耐擦傷性を有し、反射防止機能に優れたモアレ発生のない反射防止フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、透明基材と、該透明基材の一方の主面側にウエットコーティング法でハードコート層と該ハードコート層よりも上側に低屈折率層を配置された反射防止層からなる反射防止フィルムにおいて、前記ハードコート層は、バインダマトリックス形成材料と、フッ素系添加剤を含んでおり、且つ、400〜600μmもしくはその整数倍のピッチをもたない、または表面の凹凸に周期性がなく、表面粗さ(Ra)が0.0025μm以上0.004μm以下の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルムである。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記ハードコート層のバインダマトリックス形成材料の固形分濃度が45%〜50%であり、塗液粘度が3.5以上4.5mPa・sであり、且つ、フッ素系添加剤をバインダマトリックス形成材料の固形分濃度に対して0.1%以上0.5%以下の範囲にて含有しているハードコート塗液を用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前面板用途に適した、400〜600μmもしくはその整数倍のピッチをもたないまたは、表面の凹凸に周期性のない面をもち、外観ムラの少ない光学用途に適し、TVの画素ピッチと干渉せずにモアレのない優れた外観のディスプレイ用前面板を得ることが可能になる反射防止フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の反射防止フィルムの層構成の一例の断面模式図である。
【図2】本発明の実施例−光学節を用いたピッチ測定の実験方法を現した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の反射防止フィルムについて説明する。
【0018】
図1に本発明の反射防止フィルムの断面模式図を示した。透明基材(1)の少なくとも一方の面にハードコート層(2)と低屈折率層(3)を順に備える。透明基材(1)にハードコート層(2)を設けることにより、反射防止フィルム表面に高い表面硬度を付与することができ、耐擦傷性に優れた反射防止フィルムとすることができる。
【0019】
また、ハードコート層(2)上には低屈折率層(3)が設けられる。可視光領域において波長の1/4となるような光学膜厚を有する層厚の低屈折率層を設けることにより、反射防止フィルム表面に入射する外光の反射を抑制することができる。また、ハードコート層(2)に帯電防止性を有していてもよい。
【0020】
次に、前記反射防止フィルムの製造方法について具体的に説明する。
【0021】
本発明の反射防止フィルムにおける透明基材としては、種々の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。中でも、トリアセチルセルロースにあっては、複屈折率が小さく、透明性が良好であることから液晶ディスプレイに対し好適に用いることができる。なお、透明基材の厚みは25μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0022】
さらに、これらの有機高分子に公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより透明基材に機能を付加させたものも使用できる。また、透明基材は上記の有機高分子から選ばれる1種または2種以上の混合物、または重合体からなるものでもよく、複数の層を積層させたものであってもよい。
【0023】
ハードコート層を設けることで、透明プラスチック基材表面の硬度を向上させ、鉛筆等の荷重のかかる引っ掻きによる傷を防止し、また、透明プラスチックフィルム基材の屈曲による反射防止層のクラック発生を抑制することができ、反射防止フィルムの機械的強度が改善できる。
【0024】
ハードコート層は1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する多官能性モノマーを主成分とする重合物からなる。多官能性モノマーとしては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ−(メタ)アクリロイルオキシプロピネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2,3−ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル[2.2.1]ヘプタン、ポリ1,2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオール(メタ)アクリレート、3,8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ[5.2.10]デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エボキシ変成ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。多官能モノマーは、一種類のみを使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、必要で有れば単官能モノマーと併用して共重合させることもできる。ハードコート層は透明プラスチックフィルム基材と屈折率が同等もしくは近似していることがより好ましい。
【0025】
なお、ハードコート層を形成する塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、塗液には添加剤として、防汚剤、表面調整剤、レベリング剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、光増感剤等を加えることもできる。
【0026】
低屈折率層としては、低屈折率コーティング剤に使用する内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子は、屈折率が1.20〜1.44であればよく、特に限定されるものではない。有機珪素化合物から成るマトリックス中に、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を添加することにより、低屈折率化が可能となる。内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子は内部に空気を含有しているために、それ自身の屈折率は、通常のシリカ(屈折率=1.46)と比較して著しく低い(屈折率=1.44〜1.34)内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子は、多孔性シリカ微粒子を有機珪素化合物等で表面を被覆し、その細孔入口を閉塞して作製される。
【0027】
また、この内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子をマトリックス中に添加した場合、このシリカ微粒子は中空であるために、マトリックスがシリカ微粒子内部に浸漬することが無く、屈折率の上昇を防ぐことが出来る。内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子の平均粒径は、0.5〜200nmの範囲内であれは良い。この平均粒径が200nmよりも大きくなると、低屈折率層の表面においてレイリー散乱によって光が散乱され、白っぽく見え、その透明性が低下する。また、この平均粒径が0.5nm未満であると、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子が凝集しやすくなってしまう。
【0028】
低屈折率コーティング剤に加えられるバインダマトリックス形成材料としては、ケイ素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。さらには、一般式(1)RSi(OR)4−x(但し、式中Rはアルキル基を示し、xは0≦x≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。
【0029】
一般式(1)で表されるケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等を用いることができる。ケイ素アルコキシドの加水分解物は、一般式(1)で示される金属アルコキシドを原料として得られるものであればよく、例えば塩酸にて加水分解することで得られるものである。
【0030】
さらには、低屈折率層のバインダマトリックス形成材料としては、一般式(1)で表されるケイ素アルコキシドに、一般式(2)R´Si(OR)4−z(但し、式中R´はアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物をさらに含有することにより反射防止フィルムの低屈折率層表面に防汚性を付与することができ、さらに、低屈折率層の屈折率をさらに低下することができる。
【0031】
一般式(2)で示されるケイ素アルコキシドとしては、例えば、オクタデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
また、バインダマトリックス形成材料として、電離放射線硬化型材料を用いることもできる。電離放射線硬化型材料としては、ハードコート剤で挙げた電離放射線硬化型材料を用いることができる。また、低屈折率のフッ素系電離放射線硬化型材料を用いて低屈折率層を形成するにあっては、必ずしも低屈折率粒子を添加する必要はない。また、電離放射線硬化型材料を用いる場合にあっても、低屈折率層表面に防汚性を発現する材料を添加することが好ましい。なお、バインダマトリックスとして電離放射線硬化型材料を用い、紫外線を照射することにより低屈折率層を形成する場合には、低屈折率コーティング剤に光重合開始剤が加えられる。
【0033】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。以上により、低屈折率層は形成される。
【0034】
バインダマトリックス形成材料として、ケイ素アルコキシドの加水分解物を用いた場合には、ケイ素アルコキシドの加水分解物と低屈折率粒子とを含むコーティング剤を塗布しハードコート層上に塗膜を形成し、該塗膜に対し乾燥・加熱し、ケイ素アルコキシドの脱水縮合反応をおこなうことにより低屈折率層を形成することができる。また、バインダマトリックス形成材料として電離放射線硬化型材料を用いた場合には、電離放射線硬化型材料と低屈折率粒子とを含む塗液を塗布しハードコート層上に塗膜を形成し、該塗膜に対し、必要に応じて乾燥をおこない、その後、紫外線、電子線といった電離放射線を照射することにより電離放射線硬化型材料の硬化反応をおこなうことにより、低屈折率層を形成することができる。
【0035】
なお、低屈折率コーティング剤には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、塗液には添加剤として、防汚剤、表面調整剤、レベリング剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、光増感剤等を加えることもできる。
【0036】
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層は、高屈折率層を持たない場合には、低屈折率層の屈折率(n)と低屈折率層の層厚(d)をかけることにより得られる低屈折率層の光学膜厚(nd)が可視光波長の1/4となるように設けられる。このとき、低屈折率層の光学膜厚は115nm以上135nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0037】
低屈折率層の光学膜厚を115nm以上135nm以下の範囲内とし、λ=500nmとしたときλ/4付近となるように低屈折率層の光学膜厚を設計することにより、反射色相が小さく、低屈折率コーティング剤を用いて塗布法により形成される低屈折率層の膜厚変動による色ムラの発生の少ない反射防止フィルムとすることができる。
【実施例】
【0038】
本発明を実施例に基づき、詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
以下にハードコート塗液の調整例を示す。
【0040】
(ハードコート塗液の調整(HC−1))
PETA(ライトアクリルレートPE−3A;固形分の濃度100%)にIPAを用いて固形分濃度50%に希釈した。また硬化剤としてIrgacure184をPETAに対して5%加え調整した。そこにフッ素系添加剤F−470(DIC株式会社製)を固形分に対して0.1%添加した。
【0041】
(ハードコート塗液の調整(HC−2))
PETA(ライトアクリルレートPE−3A;固形分の濃度100%)にIPAを用いて固形分濃度50%に希釈した。また硬化剤としてIrgacure184をPETAに対して5%加え調整した。そこにフッ素系添加剤F−470(DIC株式会社製)を固形分に対して0.5%添加した。
【0042】
(ハードコート塗液の調整(HC−3))
PETA(ライトアクリルレートPE−3A;固形分の濃度100%)にIPAを用いて固形分濃度50%に希釈した。また硬化剤としてIrgacure184をPETAに対して5%加え調整した。そこにフッ素系添加剤F−470(DIC株式会社製)を固形分に対して1.0%添加した。
【0043】
(ハードコート塗液の調整(HC−4))
比較として、HC−1と同様に、PETA(ライトアクリルレートPE−3A;固形分の濃度100%)にIPAを用いて固形分濃度50%に希釈した。また硬化剤としてIrgacure184をPETAに対して5%加え調整した。そこにフッ素系添加剤ではなく、アクリル系添加剤BYK350(ビック・ケミー社製)を0.5%添加したものを調整した。
【0044】
(低屈折率コーティング剤の調整)
多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径50nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン)14.94重量部、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:DPEA−12、日本化薬製)1.99重量部、重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名;Irgacure184)0.07重量部、TSF4460(商品名、GE東芝シリコーン(株)製:アルキルポリエーテル変性シリコーンオイル)0.20重量部を、溶媒であるメチルイソブチルケトン82重量部で希釈して低屈折率層形成用塗液を調整した。
【0045】
(実施例1)
「ハードコート層の形成」
透明プラスチックフィルム基材としてTACフィルム(厚さ80μm)を用いた。ハードコート塗液(HC−1)をマイクログラビア法を用いてTACフィルム上に膜厚6μmで塗布し、乾燥、UV照射し、塗設した。
【0046】
「低屈折率層の形成」
前記ハードコート層の形成において得られたハードコート層上に、マイクログラビア法を用いて低屈折率コーティング剤を塗布し、乾燥、UV照射し、塗設し反射防止フィルム1を作製した。
【0047】
(実施例2〜3)
ハードコート塗液(HC−1)の代わりにハードコート塗液(HC−2〜3)を使用する以外は実施例1と同様に反射防止フィルム2〜3を作製した。
【0048】
(比較例1)
ハードコート塗液(HC−1)の代わりにハードコート塗液(HC−4)を使用する以外は実施例1と同様に反射防止フィルム4を作製した。
【0049】
「ハードコート塗液の表面張力測定」
上記実施例で得られたハードコート塗液の表面張力測定を行った。協和界面科学製自動表面張力計(CBVP−Z)、白金プレート法を用いて測定を行った。測定結果を(表1)に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
(表1)に示す通り、F470の添加量を増やすことにより、表面張力が低下していることがわかり、レベリング性が変化していることがわかる。
【0052】
「面状評価」
上記実施例1〜3および比較例1で得られた反射防止フィルムの裏面を黒く塗りつぶし、タングステン灯下で反射防止フィルム表面の状態を目視観察した結果を(表1)に示す。面内のムラが均一な場合は○、ムラの改善がみられるものの十分でないものは△、ムラがひどい場合には×とした。
【0053】
「表面粗さ(Ra)測定」
全自動微細形状測定器ET400A(Kosaka Laboratory)を用いて、表面粗さの測定をおこなった。
【0054】
「モアレ評価」
A3サイズのガラス板の両面に実施例1〜4で得られた反射防止フィルム1〜4を粘着フィルムを用いて貼り合わせて、46インチのTVを用いて、画面を緑色にし、モアレ評価をおこなった。モアレが強く見える場合は×、薄く見える場合は△、見えないものは○とした。
【0055】
「光学節を用いたピッチ測定」
15cm×15cmのガラス板に実施例1〜4で得られた反射防止フィルム1〜4を粘着フィルムを用いて貼り合わせた。
【0056】
図2のような光学節を用いて、ピッチの測定をおこなった。モアレピッチは次の式で示すような関係がある。
無限になる条件 ピッチB = ピッチC
ピッチA/(d+Δ)= ピッチB/d
ピッチC=d×ピッチA/(d+Δ)
【0057】
図2の光学節1ピッチAを固定し、ガラス張り合わせサンプル2のピッチB、光学節3ピッチCを固定したスタンドを前後に動かし、モアレが見えなくなった位置のdとΔの値から、上記式より、ピッチCを求め、ピッチB(サンプル)を算出した。Aの光学節は500μmを用いた。
【0058】
「耐擦傷性」
スチールウール(#0000)を用い、250g荷重で反射防止フィルムの低屈折率層表面を10往復擦り、傷の有無を目視にて確認した。
【0059】
目視にて確認した評価の判定は、傷が確認されなかったものを「○印」、キズが20本未満確認されたものを「△印」、傷が20本以上確認されたものを「×印」とした。
【0060】
条件としては、評価環境条件を25℃、50%RHとし、こすり材を試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に、スチールウールを巻いて動かないようにバンド固定し、移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、荷重:200g/cmと、300g/cmと、400g/cmと、500g/cmと、1000g/cmを加え、先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:10往復をおこなう。その後、こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視にて確認した。
【0061】
目視にて確認した評価の判定は、非常に注意深く見ても、全く傷が見えないものを「◎印」、非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見えるものを「○印」、弱い傷が見えるものを「○△印」、中程度の傷が見えるものを「△印」、一目見ただけで分かる傷があるものを「×印」とした。
【0062】
(表2)に評価結果を示す。
【0063】
【表2】

【0064】
(表2)に示す通り、アクリル系添加剤では、400〜600μmまたはその整数倍の周期的な凸凹が発生したことにより、モアレが発生したのに対し、フッ素系添加剤を添加することにより、レベリング性が増し、ムラのなく、周期的な凸凹のない、つまりモアレのない面が確認できた。しかしながら、実施例3ではムラは一番優れているものの、耐擦傷性が劣化していた。
【符号の説明】
【0065】
1 ・・・透明基材
2 ・・・ハードコート層
3 ・・・低屈折率層
10・・・光学節 パターン(X) ピッチA
20・・・実施例1〜3、比較例1のガラス張り合わせサンプル ピッチB
30・・・光学節 パターン(X) ピッチC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、該透明基材の一方の主面側にウエットコーティング法でハードコート層と該ハードコート層よりも上側に低屈折率層を配置された反射防止層からなる反射防止フィルムにおいて、
前記ハードコート層は、バインダマトリックス形成材料と、フッ素系添加剤を含んでおり、且つ、400〜600μmもしくはその整数倍のピッチをもたない、または表面の凹凸に周期性がなく、表面粗さ(Ra)が0.0025μm以上0.004μm以下の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記ハードコート層のバインダマトリックス形成材料の固形分濃度が45%〜50%であり、塗液粘度が3.5以上4.5mPa・sであり、且つ、フッ素系添加剤をバインダマトリックス形成材料の固形分濃度に対して0.1%以上0.5%以下の範囲にて含有しているハードコート塗液を用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−164457(P2011−164457A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28748(P2010−28748)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】