説明

反射防止フィルム

【課題】透明基材上に反射防止層を備える反射防止フィルムにあって、十分な反射防止機能と帯電防止機能を有し、全光線透過率が高く、干渉縞の発生の無い反射防止フィルムを提供するものである。
【解決手段】透明基材上に少なくともハードコート層と、屈折率が1.30以上1.45未満の範囲である低屈折率層を順に備える反射防止フィルムにおいて、前記低屈折率層がバインダマトリックス形成材料に、4級アンモニウム塩と、内部に20nm以上50nm以下の空隙を有するシリカ粒子を含み、且つ前記低屈折率層中に含まれる4級アンモニウム塩の重量比が5%以上20%未満、且つ内部に空隙を有するシリカ粒子の重量比が30%以上70%未満であることを特徴とする反射防止フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止機能及び帯電防止機能を備える反射防止フィルムに関する。さらには、LCD、PDP、CRT、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等のディスプレイの表示画面に適用される反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にディスプレイは、室内外での使用を問わず、外光などが入射する環境下で使用される。この外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。そのため、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することは必須であり、反射防止機能の高性能化、反射防止機能以外の機能の複合化が求められている。
【0003】
一般に反射防止機能は、透明基材上に金属酸化物等の透明薄膜からなる多層膜を反射防止層として形成することで得られる。これらの多層膜は、化学蒸着(CVD)法や、物理蒸着(PVD)法といったドライコーティング法により形成する方法が提案されている。また、反射防止層の形成方法として、大面積化、連続生産、低コスト化が可能であるウェットコーティング法も提案されている。
【0004】
また、これらの反射防止層を形成する透明基材は、その表面が比較的柔軟であることから、表面硬度を付与するために、一般にアクリル多官能化合物の重合体からなるハードコート層を設け、その上に反射防止層を形成するという手法が用いられている。このハードコート層はアクリル樹脂の特性により、高い表面硬度、光沢性、透明性、耐擦傷性を有するが、絶縁性が高いために帯電しやすく、ハードコート層を設けた製品表面への埃等の付着による汚れや、ディスプレイ製造工程において、帯電することにより障害が発生するといった問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−115234号公報
【特許文献2】特開2002−040209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
反射防止フィルムにあっては、透明基材とハードコート層の間もしくは反射防止層とハードコート層の間に新たに帯電防止層を設ける製造工程がコストアップに繋がることから、帯電防止機能を備えたハードコート層を積層した反射防止フィルム、もしくは、帯電防止機能を備えた反射防止フィルム(低屈折率層)の開発が望まれている。
【0007】
しかし、透明基材上にハードコート層、帯電防止機能を有する低屈折率層を順に備える反射防止フィルムでは使用する4級アンモニウム塩を加えると帯電防止効果も付与できるが、従来のハードコート層に添加する場合、使用する量が多くなる問題や、ハードコート層の最表面に4級アンモニウム塩が存在することになり、4級アンモニウム塩がハードコート層最表面に存在すると、低屈折率層とハードコート層との密着性が低下してしまう問題があった。
【0008】
低屈折率層に帯電防止機能を付与するにあっては、低屈折率層中に金属材料または金属酸化物材料からなる導電性粒子を含有させる方法が一般的である。しかしながら、低屈折率層中に導電性粒子や導電性高分子を含有させる場合には、相当量の導電剤を含有させる必要があり、このとき、低屈折率層の全光線透過率が低下するという問題が発生する。また、屈折率が上昇することにより、干渉縞が発生するという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明としては、透明基材上に少なくともハードコート層と、屈折率が1.30以上1.45未満の範囲である低屈折率層を順に備える反射防止フィルムにおいて、前記低屈折率層がバインダマトリックス形成材料に、4級アンモニウム塩と、内部に20nm以上50nm以下の空隙を有するシリカ粒子を含み、且つ前記低屈折率層中に含まれる4級アンモニウム塩の重量比が5%以上20%未満、且つ内部に空隙を有するシリカ粒子の重量比が30%以上70%未満であることを特徴とする反射防止フィルムである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明としては、前記低屈折率層表面の平均視感反射率が0.3%以上1.5%未満の範囲内であり、且つ、低屈折率層表面での表面抵抗値が1×10Ω/cm以上1×1010Ω/cm未満の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルムである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明としては、請求項1乃至2のいずれかに記載の反射防止フィルムと、当該反射防止フィルムの反射防止層非形成面に第1の偏光板を備えたことを特徴とする反射防止性偏光板である。
【0012】
また、請求項4に記載の発明としては、観察者側から順に、請求項3に記載の反射防止性偏光板と、液晶セル、第2の偏光板、バックライトユニットをこの順に備え、前記反射防止性偏光板の反射防止層非形成面側に液晶セルを保持していることを特徴とする透過型液晶ディスプレイである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の反射防止フィルムとすることにより、請求項1に記載の発明によれば、低屈折率層を設け、該低屈折率層が内部に空隙を有するシリカ粒子を用いることにより反射防止機能を付与することができる。内部に空隙を有するシリカ粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができ、反射防止フィルムに十分な反射防止機能を発揮させることができる。
【0014】
また、4級アンモニウム塩を低屈折率層に含有させることにより低屈折率層に帯電防止機能を付与することができ、4級アンモニウム塩を低屈折率層に含有させることにより、金属材料や金属酸化物材料の添加によって帯電防止機能を付与する場合と比較して、低屈折率層の屈折率の上昇を防ぎながら帯電防止機能を付与することができる。さらに、全光線透過率の低下を防ぎながら、干渉縞の無い反射防止フィルムを作製することができる。
【0015】
また、低屈折率層に帯電防止機能を付与することで、ハードコート層に帯電防止機能を付与した場合と比較して、高価な帯電防止剤の使用量を削減することができ、コストを低減できる。且つ、反射防止機能及び、擦傷性を十分に得ることができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明によれば、優れた光学特性および物理的特性を示すとともに、優れた帯電防止性能をも発揮することができ、ほこり等の付着を防ぐことができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記請求項1〜請求項2の発明の効果を用いる、光学特性及び帯電防止機能を得ることができる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜請求項3の発明の効果を用いており、ディスプレイで表示する画像が鮮明であり、外光や照明のある環境で使用しても、画像の十分な視認性が得られる。
【0019】
よって、本発明による反射防止フィルムにあっては、透明基材上に帯電防止機能を有する低屈折率層を備えた反射防止フィルムとすることにより、十分な反射防止機能と帯電防止機能を有し、全光線透過率が高く、干渉縞の発生の無い反射防止フィルムを得ることができ、前記反射防止フィルムを用いれば、前記発明の効果を有する、透過型液晶ディスプレイを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例の反射防止フィルムの断面模式図である。
【図2】本発明の一実施例の反射防止フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の反射防止フィルムについて説明する。
【0022】
図1に本発明の反射防止フィルムの断面模式図を示した。
【0023】
本発明の反射防止フィルム(1)は、透明基材(11)上に少なくともハードコート層(12)、低屈折率層(13)となる順に備えられており、低屈折率層(13)は、アクリル系材料からなるバインダマトリックス形成材料(131)に、4級アンモニウム塩材料(132)と、内部に空隙を有するシリカ粒子(133)を含んでいることを特徴とする。
【0024】
まず、透明基材(11)について述べる。
【0025】
本発明の透明基材フィルムにおける透明基材は、種々の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。さらに、これらの有機高分子に公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより機能を付加させたものも使用できる。また、透明基材は上記の有機高分子から選ばれる1種または2種以上の混合物、または重合体からなるものでもよく、複数の層を積層させたものであってもよい。また、透明基材フィルムの厚みとしては、35μm以上120μm以下を用いることが好ましい。また、トリアセチルセルロースを用いる場合は、35μm以上80μm以下の厚みを用いることが好ましい。
【0026】
中でも、トリアセチルセルロースフィルムは複屈折が少なく、透明性が良好であることから、本発明の反射防止フィルムを液晶ディスプレイに用いるにあっては好適に使用することができる。トリアセチルセルロースフィルムの屈折率は約1.50であって、他の透明基材と比較して屈折率が低い。例えば、透明基材として広範に用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムは、1.60程度である。
【0027】
透明基材としてトリアセチルセルロースフィルムを用いた反射防止フィルムにあっては、透明基材の屈折率が低いことからハードコート層との屈折率差による干渉ムラが発生しやすい。本発明の反射防止フィルムにあっては、ハードコート層の屈折率の上昇を抑えることができるため、透明基材としてトリアセチルセルロースフィルムを用いた場合に好適に使用できる。また、低屈折率層に帯電防止機能を持たせることにより、ハードコート層にトリアセチルセルロースフィルムに近い屈折率を持つ樹脂を任意に選択することができる。
【0028】
次に、ハードコート層(12)について述べる。
【0029】
本発明のハードコート層形成用塗液にあっては、電離放射線硬化型材料であるアクリル系材料を含んでいてもよい。多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0030】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
前記2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0033】
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。
【0034】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0035】
また、ハードコート層形成用塗液にあっては、光重合開始剤を含んでいてもよい。透明基材上にハードコート層形成用塗液を湿式成膜法により塗布し塗膜を形成後、電離放射線として紫外線を用い、紫外線照射により塗膜を硬化するにあっては、塗液に光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。また、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を用いることができる。
【0036】
また、ハードコート層形成用塗液には、必要に応じて、溶媒が加えられる。溶媒を加えることにより、塗工適性を向上させることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。
【0037】
ハードコート層形成用塗液にあっては、ハードコート層形成用塗液を塗布し、形成される塗膜においてハジキ、ムラといった塗膜欠陥の発生を防止するために、表面調整剤と呼ばれる添加剤を加えても良い。表面調整剤は、その働きに応じて、レベリング剤、消泡剤、界面張力調整剤、表面張力調整剤とも呼ばれるが、いずれも形成される塗膜(防眩層)の表面張力を低下させる働きを備える。
【0038】
また、ハードコート層形成用塗液においては、塗液中に先に述べた表面調整剤のほかにも、他の添加剤を加えても良い。機能性添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、密着性向上剤、硬化剤などを用いることができる。
【0039】
以上の材料を調整して得られるハードコート層形成用塗液を湿式成膜法により透明基材上に塗布し、塗膜を形成し、必要に応じて塗膜の乾燥をおこなったあとに、電離放射線である紫外線もしくは電子線を照射することにより、ハードコート層が形成される。
【0040】
このとき、湿式成膜法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0041】
ハードコート層形成用塗液を透明基材上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、ハードコート層が形成される。電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。
【0042】
なお、硬化によりハードコート層を形成する工程の前後に乾燥工程もしくは加熱工程を設けてもよい。特に、塗液が溶媒を含む場合、形成された塗膜の溶媒を除去するために電離放射線を照射する前に乾燥工程を設ける必要がある。乾燥手段としては加熱、送風、熱風などが例示される。
【0043】
なお、本発明の反射防止フィルムにおいて、形成されるハードコート層の膜厚は3μm以上10μm以下であることが好ましく、鉛筆硬度は、物理的な耐擦傷性を備えるために、H以上であることが好ましい。
【0044】
次に、低屈折率層(13)について述べる。
【0045】
本発明の反射防止フィルムにあっては、低屈折率層がバインダマトリックス形成材料(131)と、4級アンモニウム塩材料(132)と、内部に空隙を有するシリカ粒子(133)を含むことを特徴とする。
【0046】
具体的には、低屈折率層は、バインダマトリックス形成材料と、4級アンモニウム塩材料と、内部に空隙を有するシリカ粒子を含む、低屈折率層形成塗液をハードコート層表面に塗布し、湿式成膜法により形成される。このとき反射防止フィルムに十分な反射防止機能を発揮させるために、低屈折率層膜厚(d)は、その膜厚(d)に低屈折率層の屈折率(n)をかけることによって得られる光学膜厚(nd)が可視光の波長の1/4と等しくなるように設計される。低屈折率層としてはバインダマトリックス中に、内部に20nm以上50nm以下の空隙を有するシリカ粒子を分散させたものを用いることができる。
なお、低屈折率層の膜厚としては、50nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0047】
内部に空隙を有するシリカ粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子としては、多孔質シリカ粒子やシェル(殻)構造のシリカ粒子を用いることができる。
【0048】
本発明の低屈折率層に用いられる内部に空隙を有するシリカ粒子としては、平均粒径が10nm以上100nm以下であることが好ましい。平均粒径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、低屈折率層が白化して反射防止フィルムの透明性が低下する傾向にある。一方、粒径が10nm未満の場合、粒子の凝集による低屈折率層における粒子の不均一性等の問題が生じる。
【0049】
また、内部に空隙を有するシリカ粒子の空隙としては、20nm以上50nm以下であることが好ましい。空隙が50nmを超える場合、十分な耐擦傷性が得ることができずディスプレイ表面に設ける反射防止フィルムに適さなくなってしまうためである。一方、空隙が20nm未満の場合、屈折率が1.45以上となってしまい平均視感反射率が1.5%以上となるためである。
【0050】
なお、内部に空隙を有するシリカ粒子の一例としては、球状の形状を保持したまま、硝子の屈折率1.45に比べて低い屈折率1.30であり、半径20nm以上25nm以下、密度(ρ1)の球状の構造が中心部分にあり、周囲を厚み10nm以上15nm以下の異なる密度(ρ2)の層が覆っており、(ρ1/ρ2)の値が0.5、0.1、0.0を示し、シリカ粒子の中心部分は外部のシリカの1/10程度の密度となるような構造モデルである。
【0051】
本発明の低屈折率層は、低屈折率層の屈折率が1.30以上1.45未満の範囲であることが好ましい。低屈折率層の屈折率を1.30以上1.45未満の範囲内とすることにより、反射防止フィルムに反射防止機能を付与することができる。低屈折率層の屈折率が1.45を超える場合にあっては得られる反射防止フィルムが十分な反射防止機能を得られなくなってしまうことがある。一方、低屈折率層の屈折率は低い方が好ましいが、1.30を下回るようにするには、内部の空隙を有するシリカ粒子を大量に添加する必要があり、低屈折率層の形成は困難となってしまう。
【0052】
また、低屈折率層表面の平均視感反射率が0.3%以上1.5%未満の範囲内であり、且つ、低屈折率層表面での表面抵抗値が1×10Ω/cm以上1×1010Ω/cm未満の範囲内であることが好ましい。
【0053】
低屈折率層表面の平均視感反射率が1.5%を超える場合にあっては、十分な反射防止機能を有する反射防止フィルムとすることができなくなってしまう。また、低屈折率層表面の平均視感反射率は低いほど高い反射防止機能を備えることから、低いほど好ましい。
しかし、平均視感反射率が0.3%を下回るように低屈折率層を形成しようとすると、内部に空隙を有するシリカ粒子を大量に添加する必要があり、硬化に困難を来す。
【0054】
平均視感反射率は、低屈折率層表面の分光反射率曲線から求められる。本発明の反射防止フィルムの分光反射率曲線は、反射防止フィルムの低屈折率層と反対側の面を黒色塗料で艶消し処理した後におこなわれ、低屈折率層表面に対しての垂直方向から入射角度は5度に設定され、光源としてC光源を用い、2度視野の条件下で求められる。視感平均反射率は、可視光の各波長の反射率を比視感度により校正し、平均した反射率の値である。このとき、比視感度は明所視標準比視感度が用いられる。
【0055】
また、本発明の反射防止フィルムにあっては、内部に空隙を有するシリカ粒子の含有量は低屈折率層中の重量比30%以上70%未満の範囲内であることが望ましい。より好ましくは重量比40%以上65%未満の範囲内であることが望ましい。これは、内部に空隙を有するシリカ粒子の含有量が重量比30%未満の場合、平均視感反射率が1.5%以上となるためである。また内部に空隙を有するシリカ粒子含有量が重量比70%以上の場合、十分な耐擦傷性を得ることができずディスプレイ表面に設ける反射防止フィルムに適さなくなってしまう。
【0056】
また、本発明の反射防止フィルムは、全光線透過率が94.0%以上であることが好ましく、4級アンモニウム塩材料を含む低屈折率層を形成することにより、全光線透過率を低下することなく反射防止フィルムに帯電防止機能を付与することができ、全光線透過率を94.0%以上とすることができる。
導電性を備える金属酸化物粒子を添加して、反射防止フィルムの表面抵抗値が1×1010(Ω/cm)以下となるように帯電防止性能を付与しようとした場合には、全光線透過率を94.0%以上とすることは困難となる。全光線透過率が94.0%に満たない反射防止フィルムにあってディスプレイ表面に設ける反射防止フィルムに適さなくなってしまう。
【0057】
また、本発明の反射防止フィルムにあっては、低屈折率層に占める4級アンモニウム塩の含有量は重量比5%以上20%未満の範囲であることが望ましい。このことは、4級アンモニウム塩含有量が重量比5%未満の場合、表面抵抗値が1×1010Ω/cm以上となるためである。また4級アンモニウム塩含有量が重量比20%以上の場合、十分な耐擦傷性を持たなくなるためである。
【0058】
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層形成用塗液に用いる4級アンモニウム塩としては、4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料を好適に用いることができる。4級アンモニウム塩材料は−Nの構造を示し、4級アンモニウムカチオン(−N)とアニオン(X)を備えることによりハードコート層に導電性を発現させる。このとき、Xとしては、Cl、Br、I、F、HSO、SO2−、NO、PO3−、HPO2−、HPO、SO、OH等を挙げることができる。
【0059】
4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料としては、4級アンモニウム塩(−N)を官能基として分子内に含む多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0060】
4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料として具体的には、ライトエステルDQ−100(共栄社化学株式会社製)や、NR−121X−9IPA(コルコート社製、固形分10%)等を用いることができる。
【0061】
本発明の低屈折率層におけるバインダマトリックス形成材料としては、電離放射線硬化型材料や、熱硬化型材料を用いることができる。
【0062】
バインダマトリックス形成材料として用いられる電離放射線硬化型材料としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0063】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
前記2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0066】
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。
【0067】
バインダマトリックス形成材料として用いられる熱硬化型材料としては、珪素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。さらには、一般式(1)RSi(OR)4−x(但し、式中Rはアルキル基を示し、xは0≦x≦3を満たす整数である)で示される珪素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。
【0068】
一般式(1)で表される珪素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等を用いることができる。珪素アルコキシドの加水分解物は、一般式(I)で示される金属アルコキシドを原料として得られるものであればよく、例えば塩酸にて加水分解することで得られるものである。
【0069】
バインダマトリックス形成材料として熱硬化型材料である珪素アルコキシドの加水分解物を用いた場合には、フッ素化合物として一般式(2)R´Si(OR)4−z(但し、式中R´はアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)で示される珪素アルコキシドの加水分解物をさらに含有することにより反射防止フィルムの低屈折率層表面に防汚性を付与することができ、さらに、低屈折率層の屈折率をさらに低下することができる。
【0070】
一般式(2)で示される珪素アルコキシドとしては、例えば、オクタデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0071】
また、バインダマトリックス形成材料として電離放射線硬化型材料を用い、紫外線を照射することにより低屈折率層を形成する場合には、低屈折率層形成用塗液に、さらに光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
【0072】
なお、低屈折率層形成溶塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、塗液には添加剤として、表面調整剤、レベリング剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、光増感剤等を加えることもできる。
【0073】
また、低屈折率層形成用塗液には防汚性の付与等を考慮してフッ素化合物、シリコーン化合物が加えられる。
【0074】
以上の材料を調整して得られる低屈折率層形成用塗液を湿式成膜法により透明基材上に塗布し、塗膜を形成し、低屈折率層を形成することができる。バインダマトリックス形成材料として電離放射線硬化型材料を用いた場合にあっては、必要に応じて塗膜の乾燥をおこなったあとに、電離放射線である紫外線もしくは電子線を照射することにより、低屈折率層が形成される。また、バインダマトリックス形成材料として熱硬化型材料である金属アルコキシドを用いた場合には、乾燥、加熱等により低屈折率層が形成される。
【0075】
このとき、湿式成膜法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0076】
以上により、本発明の反射防止フィルムにあっては、低屈折率層が4級アンモニウム塩を含むことにより低屈折率層が帯電防止機能を有する。新たに独立した帯電防止層を設けることなく、低屈折率層に帯電防止機能を付与することにより、本発明の反射防止フィルムの製造工程を簡便に製造することができる。
【0077】
本発明の反射防止フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイの構成について説明する。
【0078】
図2に本発明の反射防止フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイを示した。図2(a)の透過型液晶ディスプレイにおいては、本発明の反射防止フィルム(1)を、一方の面に貼り合わせた第1の偏光板(2)を低屈折率層非形成面に備えた反射防止性偏光板(200)、液晶セル(3)、第2の偏光板(4)、バックライトユニット(5)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(1)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0079】
図2(a)にあっては、反射防止フィルム(1)の透明基材(11)と第1の偏光板(2)の透明基材を別々に備える透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0080】
バックライトユニット(5)は、光源と光拡散板を備える。液晶セル(3)は、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(3)を挟むように設けられる第1、第2の偏光板にあっては、透明基材(21、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
【0081】
また、図2(b)にあっては、透明基材(11)の一方の面に低屈折率層(13)を備えた反射防止フィルム(1)と、当該反射防止フィルムの低屈折率層非形成面に、偏光層(23)、透明基材(22)を順に備えて、反射防止性偏光板(210)を形成し、反射防止性偏光板(210)、液晶セル(3)、第2の偏光板(4)、バックライトユニット(5)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(1)の低屈折率層(13)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0082】
図2(b)にあっては、反射防止フィルムの反射防止層非形成面に、第1の偏光板として、偏光層(23)と透明基材(22)を、この順に備えた反射防止性偏光板(210)を備えた透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0083】
図2(b)においても、図2(a)と同様に、バックライトユニット(5)は、光源と光拡散板を備える。液晶セルは、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(3)を挟むように設けられる第1、第2の偏光板にあっては、透明基材(11、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
【0084】
また、本発明の透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。
【0085】
以上により、本発明の反射防止フィルムを用いた、透過型液晶ディスプレイが製造される。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
(実施例1)
(ハードコート層形成用塗液)
ジペンタエリスリトールトリアクリレート22.5重量%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート22.5重量%、ウレタンアクリレート50重量%、イルガキュア184(チバジャパン株式会社製(光重合開始剤))5重量%を用い、これをメチルエチルケトンに溶解してハードコート層形成塗液を調整した。
【0088】
(ハードコート層の形成)
トリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム製:膜厚80μm)の片面にハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
【0089】
(低屈折率層形成用塗液)
4級アンモニウム塩として、4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料(共栄社化学製 商品名:ライトエステルDQ100)1重量%、内部に空隙を有するシリカ粒子として、多孔質シリカ微粒子の分散液(平均粒子径50nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン)14.94重量%、バインダマトリックス形成材料として、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:DPEA−12、日本化薬製)2重量%、光重合開始剤(チバジャパン株式会社製、商品名;イルガキュア184)0.07重量%を、溶媒であるメチルイソブチルケトン82重量%で希釈して低屈折率層形成用塗液を調整した。
【0090】
(低屈折率層の形成)
上記方法にて形成した帯電防止層上に低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布した。紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量192mJ/mで紫外線照射をおこなって硬化させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0091】
(実施例1)の4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料の量を1重量%、多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径50nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン)の量を14.94重量%を基準として、それぞれの4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料の量、内部に空隙を有するシリカ粒子分散液の量の値を主として変化させて(比較例1)〜(比較例5)の反射防止フィルムを作製した。
【0092】
具体的な内容について以下に説明する。
【0093】
(比較例1)は、(実施例1)の4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料の量を0.1重量%に変化させた例である。
【0094】
(比較例2)は、(実施例1)の4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料の量を2重量%に変化させた例である。
【0095】
(比較例3)は、(実施例1)の4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料の量を3.43重量%、内部に空隙を有するシリカ粒子分散液の量を12.5重量%に変化させた例である。
【0096】
(比較例4)は、(実施例1)の4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料の量を6重量%、内部に空隙を有するシリカ粒子分散液の量を6重量%、バインダマトリックス形成材料の量を5.9重量%に変化させた例である。
【0097】
(比較例5)は、(実施例1)の4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料の量を0.8重量%、内部に空隙を有するシリカ粒子分散液の量を30重量%、溶媒の量を67重量%に変化させた例である。
【0098】
特に説明のないものについては、(実施例1)での操作に準じるものとする。
【0099】
(表1)に、(実施例1)及び、(比較例1)〜(比較例5)の反射防止フィルムの4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料の量、内部に空隙を有するシリカ粒子分散液の量、バインダマトリックス材料の量、溶媒の量を示す。
【0100】
【表1】

【0101】
<実施例1>、及び<比較例1>〜<比較例5>で得られた反射防止フィルムについて、以下の方法で評価をおこなった。
【0102】
(平均視感反射率)
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面について、自動分光光度計(日立製作所製、U−4000)を用い、入射角5°における分光反射率を測定した。また、得られた分光反射率曲線から平均視感反射率を求めた。なお、測定の際には透明基材であるトリアセチルセルロースフィルムのうち低屈折率層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置をおこなった。
【0103】
(表面抵抗値)
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面の表面抵抗値を、JIS−K6911−1994に準拠して測定した。
【0104】
(全光線透過率およびヘイズ値)
得られた反射防止フィルムについて、写像性測定器[日本電色工業(株)製、NDH−2000]を使用して、JIS−K7105−1981に準拠して、全光線透過率及びヘイズ値を測定した。
【0105】
(密着性)
得られた反射防止フィルムについて、塗料一般試験法JIS−K5400−1990の付着性試験方法(碁盤目テープ法)に準拠して、低屈折率層表面の塗膜の残存数にて評価した。
【0106】
評価の判定は、全てが剥離せずに残存したときを「○印」、20マス以下の剥離が確認されたものを「△印」、20マス以上の剥離が確認されたものを「×印」とした。
【0107】
(耐擦傷性)
スチールウール(#0000)を用い、250g荷重で反射防止フィルムの低屈折率層表面を10往復擦り、傷の有無を目視にて確認した。
【0108】
目視にて確認した評価の判定は、傷が確認されなかったものを「○印」、キズが20本未満確認されたものを「△印」、傷が20本以上確認されたものを「×印」とした。
【0109】
(干渉縞)
得られた反射防止フィルムについて、透明基材であるトリアセチルセルロースフィルムのうち低屈折率層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布したのち、蛍光灯直下で低屈折率層表面の干渉縞を目視にて確認した。
【0110】
目視にて確認した評価は、干渉縞が確認されなかったものを「○印」、干渉縞が確認されたものを「×印」とした。
【0111】
(表2)に評価結果を示す。
【0112】
【表2】

【0113】
(実施例1)にあっては、(比較例1)〜(比較例5)の反射防止フィルムと比較して、十分な反射防止機能と帯電防止機能を有し、全光線透過率が高く、耐擦傷性に優れ、干渉縞の発生の無い反射防止フィルムとすることができた。
【符号の説明】
【0114】
1 反射防止フィルム
11 透明基材
12 ハードコート層
13 低屈折率層
131 バインダマトリックス形成材料
132 4級アンモニウム塩材料
133 内部に空隙を有するシリカ粒子
2 第1の偏光板
21 透明基材
22 透明基材
23 偏光層
200 反射防止性偏光板
210 反射防止性偏光板
3 液晶セル
4 第2の偏光板
41 透明基材
42 透明基材
43 偏光層
5 バックライトユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に少なくともハードコート層と、屈折率が1.30以上1.45未満の範囲である低屈折率層を順に備える反射防止フィルムにおいて、前記低屈折率層がバインダマトリックス形成材料と、4級アンモニウム塩と、内部に20nm以上50nm以下の空隙を有するシリカ粒子を含み、且つ前記低屈折率層中に含まれる4級アンモニウム塩の重量比が5%以上20%未満、且つ内部に空隙を有するシリカ粒子の重量比が30%以上70%未満であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記低屈折率層表面の平均視感反射率が0.3%以上1.5%未満の範囲内であり、且つ、低屈折率層表面での表面抵抗値が1×10Ω/cm以上1×1010Ω/cm未満の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の反射防止フィルムと、当該反射防止フィルムの低屈折率層非形成面に第1の偏光板を備えたことを特徴とする反射防止性偏光板。
【請求項4】
観察者側から順に、請求項3に記載の反射防止性偏光板と、液晶セル、第2の偏光板、バックライトユニットをこの順に備え、前記反射防止性偏光板の低屈折率層非形成面側に液晶セルを保持していることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−64871(P2011−64871A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214345(P2009−214345)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】