説明

反射防止フィルム

【課題】低屈折率層に含まれる低屈折率粒子の配列を密にし、低反射化、及び黒の締まりのある反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材の少なくとも片面に、低屈折率層を積層した反射防止フィルムにおいて、電離放射線硬化型材料に、レベリング剤である有機変性ポリシロキサンと、少なくとも粒子の内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を含有してなる低屈折率コーティング剤を用いて形成されることを特徴とする反射防止フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルム及びその製造方法に関し、特に、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなどの画像表示装置、またガラスやプラスチックフィルムからなるウィンドウ、光学レンズ、眼鏡等の表面に使用される反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に画像表示装置においては、外光が表示画面上に映りこむことによって画像を認識しづらくなるという問題がある。さらに、最近では屋内だけでなく屋外にも持ち出される機会が増加し、表示画面上への外光の映り込みはより重要な問題になっている。
【0003】
表示画面上への映りこみは、反射率を下げる方法によって解決される。その手法として、反射防止フィルムには、屈折率の異なる層を積層する方法が用いられ、層数が増えるほど反射防止性能は向上する。
【0004】
しかし、層数の増加とともにコストも上がるため、コストを抑えつつ単層より良好な反射防止性能を発揮する2層または3層の積層体が使用されることが多い。また、屈折率の低い層には内部に空隙を含む微粒子を入れる方法などが知られているが、空隙を過剰に多くすると反射防止フィルムの機械的強度が下がり、反射防止フィルムの表面の耐擦傷性が劣化するという相反の関係がある。
【0005】
反射防止フィルムを製造する際には、物理蒸着(PVD)法や化学蒸着(CVD)法などのドライコーティング法とウェットコーティング法とが知られている。ドライコーティング法の場合は、低屈折率層、高屈折率層の膜厚を精密に制御できるという利点があるが、成膜を真空中で行うため、生産性が低く大量生産に適していないという問題がある。一方、ウェットコーティング法は、大面積化、連続生産、低コスト化が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−189621号公報
【特許文献2】特開平11−228631号公報
【特許文献3】特開2000−313709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、透明基材の表面に、紫外線硬化型材料と低屈折率粒子と溶媒を含む塗布液を用いて低屈折率層を形成するが、このとき、反射防止性能を上げるためには、最表面に設けられる低屈折率層に用いる多孔質シリカ微粒子の粒径を大きくする、もしくはフッ素系材料を含む層とすることが有効である。しかし、フッ素系材料を用いると面性の悪化、裏写りなどの懸念がある。
【0008】
裏写りとは、ロール・ツー・ロールで生産された反射防止層または低屈折率層の形成面が他方の面(反射防止層非形成面または低屈折率層非形成面)と接触した際に、反射防止フィルムの裏面にフッ素系材料成分が付着してしまうことが、反射防止フィルムの膜特性を低下させるだけでなく、その後の加工工程に大きな問題を発生させてしまうという問題がある。
【0009】
反射防止フィルムをディスプレイ部材として使用する場合、その裏面に偏光板を貼り合わせてディスプレイの最前面に反射防止フィルムを設置させるため、反射防止フィルムに求められる性能としては光学特性、機械特性、防汚性の全てにおいて十分な性能を有していなければならない。中でも、映り込みを抑えるために低反射化、及び、昨今の映像の鮮明化に伴う黒の締まり感が重要である。
【0010】
本発明は、低屈折率層に含まれる低屈折率粒子の配列を密にし、低反射化、及び黒の締まりのある反射防止フィルムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、透明基材の少なくとも片面に、低屈折率層を積層した反射防止フィルムにおいて、電離放射線硬化型材料に、レベリング剤である有機変性ポリシロキサンと、少なくとも粒子の内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を含有してなる低屈折率コーティング剤を用いて形成されることを特徴とする反射防止フィルムである。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、前記有機変性ポリシロキサンの添加量が0.5重量部以上2.5重量部以下であり、前記有機変性ポリシロキサンの添加前後で、表面張力変化が2.0mN/m以上6.0mN/m以下であり、表面粗さ変化が0.8nm以上2.2nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムである。
【0013】
本発明の請求項3に係る発明は、前記反射防止フィルムにおいて、表面粗さ(Ra)が0.3nm以上1.5nm以下であり、且つ、平均視感反射率が0.4%以上0.8%以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムである。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の反射防止フィルムと、当該反射防止フィルムの低屈折率層非形成面に第1の偏光板を備えたことを特徴とする反射防止性偏光板である。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、観察者側から順に、請求項4に記載の反射防止性偏光板と、液晶セル、第2の偏光板、バックライトユニットをこの順に備え、前記反射防止性偏光板の低屈折率層非形成面側に液晶セルを保持していることを特徴とする透過型液晶ディスプレイである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、平均視感反射率が低く、黒の締まり感のある低屈折率コーティング剤を用いて、反射防止フィルム及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例の反射防止フィルムの断面模式図である。
【図2】本発明の一実施例の反射防止フィルムを用いた反射防止性偏光板の断面模式図である。
【図3】本発明の一実施例の反射防止フィルムを備える透過型液晶ディスプレイを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の反射防止フィルムについて説明する。
【0019】
図1に本発明の反射防止フィルム(10)の断面模式図を示した。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(10)は、第1の透明基材(11)上にハードコート層(12)、ハードコート層(12)上に低屈折率層(13)を備えている。反射防止フィルム(10)の最表面は低屈折率層(13)である。低屈折率層(13)のみで反射防止性能を発現させるためには、可視光領域において波長の1/4となるような光学膜厚を有する層厚の低屈折率層(13)が設けられる。可視光領域において波長の1/4となるような光学膜厚を有する層厚の低屈折率層(13)を設けることにより、反射防止フィルム(10)の表面に入射する外光の反射を抑制することができる。
【0021】
また、第1の透明基材(11)上にハードコート層(12)を設けることにより、反射防止フィルム(10)の表面に高い表面硬度を付与することができ、耐擦傷性に優れた反射防止フィルム(10)とすることができる。
【0022】
なお、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(10)は、図1に示す反射防止フィルム(10)の構成に限定されるものではなく、例えば、低屈折率層(13)とハードコート層(12)の間に高屈折率層を設け、低屈折率層(13)と高屈折率層の積層構造とすることにより、反射防止フィルム(10)により高い反射防止性能を付与することができる。
【0023】
また、低屈折率層(13)とハードコート層(12)との間、ハードコート層(12)と第1の基材(11)の間に帯電防止層を設けることにより、反射防止フィルム(10)に帯電防止性能を付与することもできる。また、ハードコート層(12)や高屈折率層に導電性材料を添加することにより帯電防止性を付与してもよい。
【0024】
まず、透明基材(11、22、41、42)について説明する。
【0025】
本発明の透明基材(11、22、41、42)としては、プラスチックフィルムを好適に用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン6等のポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂フィルム、ポリウレタン(PUR)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等のビニル化合物、ポリアクリル酸(PMMA)、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル化合物またはフッ素系化合物の共重合体、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール等を用いることができるがこれらに限定されるものではなく、機械的強度や寸法安定性に優れるものであれば良い。また、密着性を良くするために前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理などを施しておいても良い。
【0026】
上述した透明基材の中でも、トリアセチルセルロースを用いることが特に好ましい。トリアセチルセルロースフィルムは複屈折が少なく、透明性が良好であることから、本発明の反射防止フィルムを液晶ディスプレイに用いるにあっては好適に使用することができる。トリアセチルセルロースフィルムの屈折率は約1.50であって、他の透明基材と比較して屈折率が低い。例えば、透明基材として広範に用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムは、1.60程度である。
【0027】
また、透明基材の厚みは特に制限を受けるものではないが、反射防止フィルム(10)としての適性や複数の層を積層させることを考えると、透明基材の厚みとしては、20μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。特に、トリアセチルセルロースを用いる場合は、35μm以上80μm以下の厚みを用いることが好ましい。
【0028】
次に、ハードコート層(12)について説明する。
【0029】
第1の透明基材(11)表面にハードコート層(12)を形成するが、ハードコート層(12)は、第1の透明基材(11)の表面硬度を向上させ、鉛筆等の荷重のかかる引っ掻きによる傷を付きにくくすることができ、第1の透明基材(11)の屈曲により低屈折率層(13)にクラックが入るのを抑制することができ、反射防止フィルム(10)の機械的強度を改善することができる。
【0030】
ハードコート層(12)は、電離放射線硬化型材料を含むハードコート層(12)の形成用塗液を第1の透明基材(11)上に塗布し、第1の透明基材(11)上に塗膜を形成し、塗膜に対し、必要に応じて乾燥を行い、その後、紫外線、電子線といった電離放射線を照射することにより電離放射線硬化型材料の硬化反応を行うことにより、ハードコート層(12)とすることができ、ロール・ツー・ロール方式によりハードコート層(12)が形成される。
【0031】
ハードコート層(12)の形成用塗液に加えられる電離放射線硬化型材料としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0032】
なお、本発明の実施の形態において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0033】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0036】
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層(12)の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこれらのもの限定されるものではない。
【0037】
ハードコート層(12)を形成するための塗液を紫外線により硬化させる場合には、ハードコート層(12)の形成用塗液に光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化型材料100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下、好ましくは1重量部以上7重量部以下である。
【0038】
さらに、ハードコート層(12)の形成用塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、塗液には添加剤として、表面調整剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤等を加えることもできる。
【0039】
また、反射防止フィルム(10)には、静電気を帯びやすく埃の付着などから外観上の問題となることがある。そのため、静電気を防止するための導電性材料を添加し、帯電防止性能を付与することができる。例えば、ハードコート層(12)に金属酸化物微粒子を分散させることによって帯電防止性を付与することができる。金属酸化物微粒子としては、透明導電膜に用いられるATO(アンチモンドープ酸化スズ)やITO(酸化インジウム酸化スズ)、酸化スズ、酸化チタン、五酸化アンチモンなどを用いることができる。また、導電性材料として、4級アンモニウム塩や導電性ポリマーを用いることもできる。
【0040】
ハードコート層(12)の形成用塗液の塗布方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0041】
ハードコート層(12)の形成用塗液が第1の透明基材(11)表面に塗布された後、必要に応じて第1の透明基材(11)表面の塗膜中の溶媒を除去するために乾燥工程が設けられる。
【0042】
第1の透明基材(11)表面の塗膜に対し、活性エネルギー線を照射することにより塗膜は硬化され、ハードコート層(12)が形成される。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、あるいはガンマ線などを用いることができる。活性エネルギー線として電子線あるいはガンマ線を用いた場合、必ずしもハードコート層(12)の形成用塗液に光重合開始剤や光開始助剤を含有する必要はない。紫外線を発生する光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。また、電子線としては、コックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。
【0043】
なお、本発明の反射防止フィルムにおいて、形成されるハードコート層の膜厚は5μm以上12μm以下であることが好ましく、鉛筆硬度は、物理的な耐擦傷性を備えるために、H以上であることが好ましい。
【0044】
次に、低屈折率層(13)について説明する。
【0045】
第1の透明基材(11)表面に形成されたハードコート層(12)表面上に低屈折率層(13)を形成する。
【0046】
低屈折率層(13)は、電離放射線硬化型材料と、低屈折率粒子と、レベリング剤と、撥水性能を有するシリコーン系材料と、溶媒とを含む形成用塗液を塗布し塗膜を形成する塗布工程と、塗膜を乾燥する乾燥工程と、塗膜に紫外線を照射する紫外線照射工程によって形成される。
【0047】
低屈折率層(13)の形成用塗液に加えられる電離放射線硬化型材料としては、ハードコート層(12)の形成用塗液の場合と同様に、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような単官能または多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0048】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0051】
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。
具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0052】
低屈折率層(13)の形成用塗液に加えられる低屈折粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlF3またはAlF3(いずれも、屈折率1.4)、または、NaAlF(氷晶石、屈折率1.33)等の低屈折材料からなる低屈折率粒子を用いることができる。
【0053】
低屈折率粒子においては、粒子の内部に空隙を有する低屈折率粒子を好適に用いることができる。粒子の内部に空隙を有する粒子においては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。具体的には、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を用いることができる。
【0054】
低屈折率層(13)の形成用塗液に加えられる低屈折率シリカ粒子としては、粒径が1nm以上100nm以下であることが好ましい。さらには、粒径が60nm以上80nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0055】
前記低屈折率シリカ粒子の粒径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、低屈折率層(13)が白化して反射防止フィルム(10)の透明性が低下する傾向にある。一方、低屈折率シリカ粒子の粒径が1nm未満の場合、粒子の凝集による低屈折率層(13)における粒子の不均一性等の問題が生じる。
【0056】
内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率シリカ粒子とすることができる。内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子としては、多孔質シリカ粒子やシェル(殻)構造のシリカ粒子を用いることができる。
【0057】
また、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子の空隙としては、20nm以上80nm以下であることが好ましい。空隙が80nmを超える場合、十分な耐擦傷性が得ることができずディスプレイ表面に設ける反射防止フィルムに適さなくなってしまうためである。一方、空隙が20nm未満の場合、屈折率が1.45以上となってしまい平均視感反射率が1.0%以上となるためである。
【0058】
なお、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子の一例としては、球状の形状を保持したまま、硝子の屈折率1.45に比べて低い屈折率1.35であり、半径20nm以上25nm以下、密度(ρ1)の球状の構造が中心部分にあり、周囲を厚み10nm以上15nm以下の異なる密度(ρ2)の層が覆っており、(ρ1/ρ2)の値が0.5、0.1、0.0を示し、低屈折率シリカ粒子の中心部分は外部のシリカの1/10程度の密度となるような構造モデルである。
【0059】
低屈折率層(13)の形成用塗液に加えられるレべリング剤としては、有機変性ポリシロキサンを用いることが好ましい。さらには、(化1)の化学式で示されるポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン溶液を用いることが好ましい。
【0060】
なお、レべリング剤として上記以外に、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられる。
【0061】
【化1】

【0062】
また、有機変性ポリシロキサンを加えることにより、乾燥過程での表面張力を下げことができる。有機変性ポリシロキサンの添加量としては、0.5重量部以上2.0重量部以下の範囲内が好ましい。有機変性ポリシロキサンの添加量が0.5重量部以下の場合は、表面張力の低下が小さく、表面粗さへの影響が生じない。一方、有機変性ポリシロキサンの添加量が2.0重量部以上の場合は、低屈折率層表面でのレベリング剤のブリード及び、表面の白化が起こるためである。
【0063】
また、有機変性ポリシロキサンの添加前後において、表面張力変化が2.0mN/m以上6.0mN/m以下の範囲内であり、且つ、表面粗さ変化が0.8nm以上2.2nm以下の範囲内であることが好ましい。表面張力変化が2.0mN/m以下の場合は、黒の締りへの効果が少なく白ボケしているように見えてしまう。一方、表面張力変化が6.0mN/m以上の場合は、液ダレや装置振動の影響を受けやすくなることにより発生する面性不良が生じてしまう。
【0064】
さらに、表面粗さ変化が0.8nm以下の場合は、黒の締りへの効果が少なく、白ボケしているように見えてしまう。一方、表面粗さ変化が2.2nm以上の場合は、フィルム自体の表面粗さが近くなるため効果が少ない。
【0065】
低屈折率層(13)の形成用塗液に加えられる撥水性能を有するシリコーン系材料としては、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキルポリエーテル変性シリコーンオイルを用いることが好ましい。
【0066】
また、撥水性能を有するシリコーン系材料としては、フッ素を含有せず、(メタ)アクリル基を持たない有機ケイ素化合物を用いることもできる。具体的には、アルキルアルコキシシラン化合物、シランシロキサン化合物、ポリエステル基を含有するシラン化合物、ポリエーテル基を有するシラン化合物、シロキサン化合物を用いることもできる。
【0067】
低屈折率層(13)の形成用塗液には、溶媒が加えられる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、光重合開始剤も添加される。
【0068】
光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化型材料100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下、好ましくは1重量部以上7重量部以下である。
【0069】
低屈折率層(13)は、電離放射線硬化型材料と、低屈折率シリカ粒子と、レベリング剤と、撥水性能を有するシリコーン系材料と溶媒とを含む低屈折率層(13)の形成用塗液を塗布し塗膜を形成する塗布工程と、塗膜を乾燥する乾燥工程と、塗膜に紫外線を照射する紫外線照射工程によって形成される。また、低屈折率層の膜厚としては、95nm以上110nm以下の範囲であることが好ましい。
【0070】
本発明の反射防止フィルム(10)の製造方法において、低屈折率層(13)はロール・ツー・ロール方式により形成される。低屈折率層(13)の形成用塗液の塗布方法としては、ハードコート層(12)の形成用塗液の場合と同様に、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0071】
低屈折率層(13)は、ハードコート層(12)上の塗膜に対し、紫外線を照射することにより塗膜は硬化され形成される。紫外線を発生する光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。
【0072】
また、反射防止フィルム(10)は、平均視感反射率が0.4%以上0.8%以下の範囲内であり、且つ、全光線透過率が95%以上であることが好ましい。平均視感反射率が0.8%を越える場合は、反射防止性能が低下してしまい、外光の映り込みが発生しやすくなる。一方、平均視感反射率が0.4%未満の場合は、高い反射防止性能を実現するために高屈折率層、低屈折率を積層する必要があり、コスト高となる。また、全光線透過率が95%未満の場合には、透過型液晶ディスプレイ等の画像装置の表面に設けるのに適さなくなってしまう。
【0073】
平均視感反射率は、低屈折率層表面の分光反射率曲線から求められる。本発明の反射防止フィルムの分光反射率曲線は、反射防止フィルムの低屈折率層と反対側の面を黒色塗料で艶消し処理した後におこなわれ、低屈折率層表面に対しての垂直方向から入射角度は5度に設定され、光源としてC光源を用い、2度視野の条件下で求められる。平均視感反射率は、可視光の各波長の反射率を比視感度により校正し、平均した反射率の値である。このとき、比視感度は明所視標準比視感度が用いられる。
【0074】
また、表面粗さ(Ra)が0.3nm以上1.5nm以下の範囲内であることが好ましい。表面粗さが0.3nm以下の場合は、フィルム自体の表面粗さがに近くなるため効果が少なく、一方、表面粗さが1.5nm以上の場合は、黒の締まりが弱く、白ボケしているように見えてしまう。
【0075】
次に、本発明の反射防止フィルム(10)を用いた第1の偏光板(20)について説明する。
【0076】
図2に本発明の反射防止フィルム(10)を用いた反射防止性偏光板(210)について説明する。
【0077】
図2の反射防止性偏光板(20)は、第1の透明基材(11)の一方の面にハードコート層(12)と、低屈折率層(13)が順に備えている反射防止フィルム(10)であり、低屈折率層非形成面側に、第1の偏光層(23)と、第2の透明基材(22)を順に備えた反射防止性偏光板(210)となる。
【0078】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(10)は、ディスプレイ部材、画像装置の一部として用いることができる。
【0079】
本発明の反射防止フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイの構成について説明する。
【0080】
図3に本発明の反射防止フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイを示した。図3(a)の透過型液晶ディスプレイにおいては、本発明の反射防止フィルム(10)を、一方の面に貼り合わせた第1の偏光板(20)を低屈折率層非形成面に備えた反射防止性偏光板(200)、液晶セル(30)、第2の偏光板(40)、バックライトユニット(50)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(10)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0081】
図3(a)にあっては、反射防止フィルム(10)の透明基材(11)と第1の偏光板(20)の透明基材を別々に備える透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0082】
バックライトユニット(50)は、光源と光拡散板を備える。液晶セル(30)は、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(30)を挟むように設けられる第1、第2の偏光板にあっては、透明基材(21、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
【0083】
また、図3(b)にあっては、透明基材(11)の一方の面に低屈折率層(13)を備えた反射防止フィルム(10)と、当該反射防止フィルムの低屈折率層非形成面に、偏光層(23)、透明基材(22)を順に備えて、反射防止性偏光板(210)を形成し、反射防止性偏光板(210)、液晶セル(30)、第2の偏光板(40)、バックライトユニット(50)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(10)の低屈折率層(13)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0084】
図3(b)にあっては、反射防止フィルムの反射防止層非形成面に、第1の偏光板として、偏光層(23)と透明基材(22)を、この順に備えた反射防止性偏光板(210)を備えた透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0085】
図3(b)においても、図3(a)と同様に、バックライトユニット(50)は、光源と光拡散板を備える。液晶セルは、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(30)を挟むように設けられる第1、第2の偏光板にあっては、透明基材(11、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
【0086】
また、本発明の透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。
【0087】
以上により、本発明の反射防止フィルムを用いた、透過型液晶ディスプレイが製造される。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0089】
(実施例1)
図1から図3に示すように、第1の透明基材(11)としては、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用意した。
【0090】
第1の透明基材(11)表面に形成される、ハードコート層(12)には、電離放射線硬化型材料として日本合成化学社製、紫光、UV−7605Bを100重量部、光重合開始剤としてチバガイギー社製イルガキュア184を4重量部、溶媒として酢酸メチルを50重量部と、2−ブタノンを50重量部混合し、ハードコート層(12)の形成用塗液を調液した。透明基材(11)であるトリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層(12)の形成用塗液を塗布し、乾燥、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚10μmの透明なハードコート層(12)を形成させた。
【0091】
さらに、ハードコート層(12)の表面に形成される、低屈折率層(13)の形成用塗液には、レベリング剤として有機変性ポリシロキサンを0.5重量部、低屈折率シリカ粒子(平均粒子径80nm)を36重量部、電離放射線硬化型材料としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を1.6重量部、撥水性能を有するシリコーン系材料として東芝GEシリコーン社製TSF44を0.2重量部、光重合開始剤としてチバ・ジャパン社製イルガキュア184を0.2重量部、溶媒としてイソプロピルアルコールを72.2重量部と、メチルイソブチルケトンを13.8重量部用意した。
【0092】
得られた低屈折率層の形成用塗液をハードコート層(12)上に塗布し、塗膜を形成し、その後、オーブンで60℃の温度で乾燥をおこない、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量384mJ/mで紫外線照射をおこなって硬化させて低屈折率層(13)を形成し、反射防止フィルム(10)を作製した。
【0093】
(実施例2)
(実施例1)において、低屈折率層(13)を形成する際のレベリング剤である有機変性ポリシロキサンを2.0重量部に変更した以外は(実施例1)と同様に反射防止フィルム(10)を製造した。
【0094】
(比較例1)
(実施例1)と同様に、第1の透明基材(11)としては、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用意した。
【0095】
第1の透明基材(11)表面に形成される、ハードコート層(12)には、電離放射線硬化型材料として日本合成化学社製、紫光、UV−7605Bを100重量部、光重合開始剤としてチバ・ジャパン社製イルガキュア184を4重量部、溶媒として酢酸メチルを50重量部、2−ブタノンを50重量部混合し、ハードコート層(12)の形成用塗液を調液した。透明基材(11)であるトリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層の形成用塗液を塗布し、乾燥、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚10μmの透明なハードコート層(12)を形成させた。
【0096】
さらに、ハードコート層(12)の表面に形成される、低屈折率層(13)の形成用塗液には、低屈折率シリカ粒子(平均粒子径50nm)を36重量部、電離放射線硬化型材料としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を1.6重量部、撥水性能を有するシリコーン系材料として東芝GEシリコーン社製TSF44を0.2重量部、光重合開始剤としてチバ・ジャパン社製イルガキュア184を0.2重量部、溶媒としてイソプロピルアルコールを72.2重量部と、メチルイソブチルケトンを13.8重量部用意した。
【0097】
得られた低屈折率層の形成用塗液をハードコート層(12)上に塗布し、塗膜を形成し、その後、オーブンで60℃の温度で乾燥をおこない、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量384mJ/mで紫外線照射をおこなって硬化させて低屈折率層(13)を形成し、反射防止フィルム(10)を作製した。
【0098】
(比較例2)
(比較例1)において、低屈折率層(13)を形成する際の低屈折率シリカ粒子の粒径を80nmに変更した以外は(比較例1)と同様に反射防止フィルム(10)を製造した。
【0099】
(比較例3)
(実施例1)と同様に、第1の透明基材(11)としては、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用意した。
【0100】
第1の透明基材(11)表面に形成される、ハードコート層(12)には、電離放射線硬化型材料として日本合成化学社製、紫光、UV−7605Bを100重量部、光重合開始剤としてチバガイギー社製イルガキュア184を4重量部、溶媒として酢酸メチルを50重量部と、2−ブタノンを50重量部混合し、ハードコート層(12)の形成用塗液を調液した。透明基材(11)であるトリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層(12)の形成用塗液を塗布し、乾燥、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚10μmの透明なハードコート層(12)を形成させた。
【0101】
さらに、ハードコート層(12)の表面に形成される、低屈折率層(13)の形成用塗液には、レベリング剤として有機変性ポリシロキサンを0.2重量部、低屈折率シリカ粒子(平均粒子径80nm)を36重量部、電離放射線硬化型材料としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を1.6重量部、撥水性能を有するシリコーン系材料として東芝GEシリコーン社製TSF44を0.2重量部、光重合開始剤としてチバ・ジャパン社製イルガキュア184を0.2重量部、溶媒としてイソプロピルアルコールを72.2重量部と、メチルイソブチルケトンを13.8重量部用意した。
【0102】
得られた低屈折率層の形成用塗液をハードコート層(12)上に塗布し、塗膜を形成し、その後、オーブンで60℃の温度で乾燥をおこない、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量384mJ/mで紫外線照射をおこなって硬化させて低屈折率層(13)を形成し、反射防止フィルム(10)を作製した。
【0103】
(比較例4)
(比較例3)において、低屈折率層(13)を形成する際のレベリング剤である有機変性ポリシロキサンを3.0重量部に変更した以外は(比較例3)と同様に反射防止フィルム(10)を製造した。
【0104】
(評価)
(実施例1)、(実施例2)、及び、(比較例1)〜(比較例4)で得られた反射防止フィルム(10)を以下の方法で評価した。評価結果は、(表1)に示す。
【0105】
(表面張力)
全自動表面張力計(協和界面科学社製 CBVP−Z)を用いて、Wilhelmy法により、シャーレに評価塗液をとり、評価塗液に一度プレートを接触させたのち再度接触させることにより測定した。
【0106】
(黒の締まり)
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面について、三波長蛍光灯を照射し、反射光において目視評価した。なお、評価の際には透明基材であるトリアセチルセルロースフィルムのうち低屈折率層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置をおこなった。
なお、黒の締まりとは、黒色がどれだけ黒色に見えるかの度合いを指し、黒の締まりが弱いと黒色が白ボケしているように見える。
【0107】
目視評価における、判定方法としては、白ボケがないとき「○印」、僅かに白ボケがあるとき「△印」、白ボケがあるとき「×印」とする。
【0108】
(表面粗さ)
走査型プローブ顕微鏡(日本ビーコ社製 Dimension D3100)を用いて、走査範囲1μm四方にて測定した。
【0109】
(平均視感反射率)
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面について、自動分光光度計(日立製作所製、U−4100、測定波長360〜800nm)を用い、入射角5°における分光反射率を測定した。また、得られた分光反射率曲線から平均視感反射率を求めた。なお、測定の際には透明基材であるトリアセチルセルロースフィルムのうち低屈折率層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置をおこなった。
【0110】
【表1】

【0111】
(表1)に示すように、(比較例1)では、黒の締まりが良好であるものの平均視感反射率が高い。(比較例2)では外観において白ボケが発生してしまい黒の締まりが悪かった。(比較例3)では外観における白ボケが僅かに発生してしまい黒の締まりが悪く、表面粗さ変化量も小さかった。(比較例4)では外観においてレベリング剤が低屈折率層表面にブリードしてきたしまった。それに対して、(実施例1)及び、(実施例2)においては、平均視感反射率が低く黒の締まりが良好であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の反射防止フィルムは、画像表示装置、またガラスやプラスチックフィルムから
なるウィンドウ、光学レンズ、眼鏡等の表面に使用される。
【符号の説明】
【0113】
10 反射防止フィルム
11 第1の透明基材
12 ハードコート層
13 低屈折率層
20 第1の偏光板
22 第2の透明基材
23 第1の偏光層
200 反射防止性偏光板
210 反射防止性偏光板
30 液晶セル
40 第2の偏光板
41 第3の透明基材
42 第4の透明基材
43 第2の偏光層
50 バックライトユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも片面に、低屈折率層を積層した反射防止フィルムにおいて、電離放射線硬化型材料に、レベリング剤である有機変性ポリシロキサンと、少なくとも粒子の内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を含有してなる低屈折率コーティング剤を用いて形成されることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記有機変性ポリシロキサンの添加量が0.5重量部以上2.5重量部以下であり、
前記有機変性ポリシロキサンの添加前後で、表面張力変化が2.0mN/m以上6.0mN/m以下であり、表面粗さ変化が0.8nm以上2.2nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記反射防止フィルムにおいて、表面粗さ(Ra)が0.3nm以上1.5nm以下であり、且つ、平均視感反射率が0.4%以上0.8%以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の反射防止フィルムと、当該反射防止フィルムの低屈折率層非形成面に第1の偏光板を備えたことを特徴とする反射防止性偏光板。
【請求項5】
観察者側から順に、請求項4に記載の反射防止性偏光板と、液晶セル、第2の偏光板、バックライトユニットをこの順に備え、前記反射防止性偏光板の低屈折率層非形成面側に液晶セルを保持していることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−81120(P2011−81120A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232265(P2009−232265)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】