説明

反射防止フィルム

【課題】十分な反射防止性能を有し、かつ帯電防止性能にも優れるとともに、耐熱性や耐擦傷性及び鉛筆硬度に優れる反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材フィルム上にハードコート層と低屈折率層がこの順に積層されている反射防止フィルムであって、前記低屈折率層は、(a)多官能(メタ)アクリレート、(b)中空シリカ微粒子及び(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体を含有し、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部あたり、(b)中空シリカ微粒子40〜250質量部及び(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体1〜25質量部を含むとともに、(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体中のπ共役系導電性高分子とドーパントの質量比が1:1〜1:5に設定された低屈折率層用塗液の硬化物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイパネル(LCD)等に適用され、十分な反射防止性能を有し、かつ帯電防止性能にも優れた反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル等の電子画像表示装置(電子ディスプレイ)は、テレビやモニター用途として著しい進歩を遂げ、広く普及している。これら電子画像表示装置は、大型化に伴い、外光の映り込みによる表示される画像の視認性の低下が問題となっている。そのため、透明基材フィルムの表面に反射防止層を設けて形成された反射防止フィルムをディスプレイ表面に貼り合わせ、画像の視認性を高める方法が一般的に採用されている。さらに、静電気によるディスプレイ表面への塵埃などの付着を防止するために、これらの反射防止フィルムには帯電防止性能を有していることが求められている。
【0003】
例えば、透明基材フィルムの上に、ハードコート層と、該透明基材フィルムおよびハードコート層より屈折率の低い低屈折率層と、を順に積層し、低屈折率層が中空シリカ微粒子と多官能(メタ)アクリレートとを含有する反射防止フィルムが知られている(特許文献1を参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の反射防止フィルムは帯電防止性能を発現するための帯電防止剤等の材料を含んでいないため、ディスプレイ表面に塵埃が付着しやすく、汚れが目立ってしまい、画像が見づらくなってしまう。さらに、ディスプレイ製造工程において、塵埃の混入により不具合が発生してしまうこともある。
【0005】
帯電防止性を付与するために、π共役系導電性高分子が各種の帯電防止剤や電極材料等の工業材料として使用されている。このπ共役系導電性高分子は、ドーパントと呼ばれる物質をドーピングすることによって、高い導電性が付与される。例えば、π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体と多官能(メタ)アクリレートとを含有するコーティング剤組成物が知られている(特許文献2を参照)。
【0006】
しかしながら、π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体は屈折率がおよそ1.5と高いことから、高屈折率な層を形成するための材料として使用されるのが一般的であった。
【0007】
そのため、透明基材フィルム、ハードコート層および低屈折率層からなり、帯電防止性能を有する反射防止フィルムを作成するためには、π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体をハードコート層に添加する方法が知られているが(特許文献3を参照)、十分な帯電防止性能を得るためには、π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体を多量に含有させる必要があり、その結果、全光線透過率が低下したり、製造コストが高くなるといった問題がある。
【0008】
加えて、反射防止フィルムには、その製造時や使用時における十分な耐熱性や耐擦傷性及び鉛筆硬度が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−292831号公報
【特許文献2】特開2008−222850号公報
【特許文献3】特開2010−2820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的とするところは、反射防止性能を有し、かつ帯電防止性能にも優れるとともに、耐熱性や耐擦傷性及び鉛筆硬度に優れる反射防止フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、第1の発明の反射防止フィルムは、透明基材フィルム上にハードコート層と低屈折率層がこの順に積層されている反射防止フィルムであって、前記低屈折率層は、(a)多官能(メタ)アクリレート、(b)中空シリカ微粒子及び(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体を含有し、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部あたり、(b)中空シリカ微粒子40〜250質量部及び(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体1〜25質量部を含むとともに、(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体中のπ共役系導電性高分子とドーパントの質量比が1:1〜1:5に設定された低屈折率層用塗液の硬化物であることを特徴とする。
第2の発明の反射防止フィルムは、第1の発明において、前記π共役系導電性高分子がポリチオフェン類であることを特徴とする。
第3の発明の反射防止フィルムは、第2の発明において、前記ポリチオフェン類がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であることを特徴とする。
第4の発明の反射防止フィルムは、第1の発明において、前記π共役系導電性高分子がポリピロール類又はポリアニリン類であることを特徴とする。
第5の発明の反射防止フィルムは、第1から第4のいずれか1項に記載の発明において、前記ドーパントがポリアニオンであることを特徴とする。
第6の発明の反射防止フィルムは、第5の発明において、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
第1の発明の反射防止フィルムは、透明基材フィルム上にハードコート層と低屈折率層がこの順に積層されている。そして、前記低屈折率層は、(a)多官能(メタ)アクリレート、(b)中空シリカ微粒子及び(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体を含有する低屈折率層用塗液の硬化物である。該低屈折率層用塗液は、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部あたり、(b)中空シリカ微粒子40〜250質量部及び(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体1〜25質量部を含むとともに、(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体中のπ共役系導電性高分子とドーパントの質量比が1:1〜1:5に設定されている。
当該低屈折率層が反射防止効果を有するため、反射防止フィルムをプラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル等の電子画像表示装置のディスプレイ表面に貼合せた場合に、蛍光灯などの外部光源から照射された光線の反射を抑え、ディスプレイに表示される画像の視認性を高めることができる。同時に、低屈折率層にはπ共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体が含まれていることから、反射防止フィルムが帯電防止作用を有し、ディスプレイ表面に貼られた反射防止フィルムへの静電気による塵埃などの付着を抑えることができる。その上、主に(a)多官能(メタ)アクリレートの硬化物の有する性質に基づいて反射防止フィルムの耐擦傷性を向上させることができる。
加えて、(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体中のπ共役系導電性高分子とドーパントの質量比が1:1〜1:5に設定されていることから、良好な導電性を発現することにより帯電防止作用を向上できるとともに、良好な耐熱性を発揮することができる。
第2の発明の反射防止フィルムは、前記π共役系導電性高分子がポリチオフェン類であることから、第1の発明の効果に加えて、より少ない含有量で良好な導電性を発現することができる。
第3の発明の反射防止フィルムは、前記ポリチオフェン類がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であることから、第2の発明の効果に加えて、さらに少ない含有量で良好な導電性を発現することができる上に、材料を容易に入手することが可能である。
第4の発明の反射防止フィルムは、前記π共役系導電性高分子がポリピロール類又はポリアニリン類であることから、第1の発明の効果に加えて、より少ない含有量で良好な導電性を発現することができる。
第5の発明の反射防止フィルムは、前記ドーパントがポリアニオンであることから、第1から第4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、より少ない含有量で良好な導電性を発現することができる。
第6の発明の反射防止フィルムは、ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸であることから第5の発明の効果に加えて、より少ない含有量で良好な導電性を発現できる上に、材料を容易に入手することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。本実施形態の反射防止フィルムは、透明基材フィルム上にハードコート層と低屈折率層がこの順に積層されている。次に、この反射防止フィルムの構成要素について順に説明する。
【0014】
<透明基材フィルム>
反射防止フィルムに用いられる透明基材フィルムは透明性を有している限り特に制限されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)で代表されるポリエステル系樹脂や、トリアセチルセルロース(TAC)系樹脂など、従来からディスプレイ用フィルム基材として使用されている公知の透明樹脂を制限なく使用できる。
【0015】
透明基材フィルムの厚みは、好ましくは25〜400μm、さらに好ましくは50〜200μmである。なお、透明基材フィルムには、各種の添加剤が含まれていても良い。そのような添加剤としては例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤等が挙げられる。
【0016】
<ハードコート層>
ハードコート層は活性エネルギー線硬化性樹脂及び溶媒を含むハードコート層用塗液の硬化物である。前記活性エネルギー線硬化性樹脂とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することにより、硬化反応を生じる樹脂であり、その種類は特に限定されない。具体的には、例えば、単官能(メタ)アクリレート〔ここで、本明細書では(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を含む総称を意味する〕、多官能(メタ)アクリレート、そしてテトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物等の硬化物が挙げられる。ハードコート層の硬度を向上させるという観点より、活性エネルギー線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを主成分として含む組成物が好ましい。
【0017】
前記活性エネルギー線硬化性多官能(メタ)アクリレートとしては特に制限されず、例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン等の多官能アルコールのアクリル誘導体や、ポリエチレングリコールジアクリレート及びポリウレタンアクリレート等が好ましい。
【0018】
前記ハードコート層用塗液には任意の溶媒を用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、メチルグリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類等が挙げられる。
【0019】
また、前記ハードコート層用塗液は、金属酸化物微粒子を含むことができる。前記金属酸化物微粒子としては、例えば、シリカ(二酸化珪素、S)、ITO(インジウムー錫複合酸化物、屈折率2.0)、ATO(アンチモン−錫複合酸化物、屈折率2.1)、酸化錫(屈折率2.0)、酸化アンチモン(屈折率2.1)、アンチモン酸亜鉛(屈折率1.7)、酸化亜鉛(屈折率2.1)、酸化ジルコニウム(屈折率2.1)、酸化チタン(屈折率2.4)及び酸化アルミニウム(屈折率1.6)等が挙げられる。
【0020】
前記金属酸化物微粒子が含まれる場合には、前記金属酸化物微粒子の添加量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して1〜400質量部程度であることが好ましい。
【0021】
さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分をハードコート層に添加することができる。そのようなその他の成分としては、例えば重合体、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。
【0022】
また、透明基材フィルムとハードコートの密着性を高めるために、透明基材フィルムとハードコート層の間に公知の干渉防止層を設けてもよい。なお、干渉防止層は、透明基材フィルムの製造時に公知の方法で透明基材フィルム表面に形成することができる。
【0023】
ハードコート層の膜厚は1μm〜20μmが好ましい。ハードコート層の膜厚が1μm未満の場合には、十分な鉛筆硬度が得られないため好ましくない。一方、膜厚が20μmを超える場合には、耐屈曲性の低下等の問題が生じるため好ましくない。
【0024】
(ハードコート層の製造方法)
このようなハードコート層の形成方法は特に限定されるものではない。例えば、ロールコート法、コイルバー法、ダイコート法等、一般的なウエットコート法によりハードコート層用塗液が透明基材フィルム上に塗布され、乾燥させた後に、紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射により硬化される。また、ハードコート層用塗液を透明基材フィルム表面に塗布する前に、透明基材フィルム表面にコロナ放電処理等の前処理を施してもよい。
【0025】
<低屈折率層>
低屈折率層は、(a)多官能(メタ)アクリレート、(b)中空シリカ微粒子及び(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体(導電性高分子、錯体)を含有する低屈折率層用塗液の硬化物であり、透明基材フィルムおよびハードコート層よりも低い屈折率を有する。低屈折率層の厚みは、kλ/4とすることが光の干渉作用により表面反射が減少し、透過率が向上するため好ましい。ここで、λは光の波長400〜650nm、kは1又は3を表す。このように低屈折率層の厚みをkλ/4とすることで反射防止の効果をより高めることができる。kが1の場合と3の場合とを比較すると、kが1のときには、反射防止性能が相対的に高く、kが3のときには耐擦傷性が高くなる。
【0026】
低屈折率層の屈折率は1.20〜1.44であることが好ましい。屈折率が1.20未満の低屈折率層を形成する場合、多官能(メタ)アクリレートの含有率を低くしなければならないため、低屈折率層は十分な塗膜強度を有することが難しくなる。一方、屈折率が1.44を超える場合には、ハードコート層との屈折率差が小さくなり、十分な反射防止性能が得られない。
【0027】
(多官能(メタ)アクリレート)
前記多官能(メタ)アクリレートは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することにより、硬化反応を生じる樹脂であり、その種類は特に制限されない。使用される樹脂は単官能(メタ)アクリレートでもよいが、塗膜の強度や耐擦傷性を向上させるという観点から、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。ここで、多官能(メタ)アクリレートとは分子内に2個以上のアクリロイル基(CH=CHCO−)又はメタクリロイル基(CH=C(CH)CO−)を有する樹脂を意味し、2〜6官能のアクリレートが好ましく用いられる。また、低屈折率層の屈折率をより低くするため、含フッ素多官能(メタ)アクリレートを使用することもできる。
【0028】
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,10-ジアクリロイルオキシ-2,9-ジヒドロキシ-4,4,5,5,6,6,7,7,-オクタフルオロデカンが挙げられる。
【0029】
(中空シリカ微粒子)
前記中空シリカ微粒子は、シリカ(二酸化珪素、S)がほぼ球状に形成され、その外殻内に中空部を有する微粒子である。中空シリカ微粒子の平均粒子径は好ましくは10〜100nm、より好ましくは20〜60nmである。中空シリカ微粒子の平均粒子径が10nmより小さい場合、中空シリカ微粒子の製造が難しくなって好ましくない。一方、平均粒子径が100nmより大きい場合には、低屈折率層の膜厚(約100nm)よりも大きくなってしまうため、低屈折率層表面での光の散乱が大きくなり、反射防止フィルムの透明性が損なわれてしまう。
【0030】
この中空シリカ微粒子は、有機溶剤に分散された市販のものをそのまま使用することができ、或いは市販の各種シリカ粉体を有機溶剤に分散して使用することもできる。該中空シリカ微粒子は、例えば特開2006−21938号公報に開示された製造方法により合成することもできる。この方法に基づいて、後述する実施例の中空シリカ微粒子(ゾル)が製造されている。また、中空シリカ微粒子の表面を、重合性二重結合を有するシランカップリング剤によって変性した変性中空シリカ微粒子を使用することもできる。
【0031】
(π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体)
π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体とは、π共役系導電性高分子をドーパントによりドーピングしたものを示す。その屈折率はおよそ1.49〜1.52である。π共役系導電性高分子を単独で用いても導電性は発現されないが、ドーパントによりドーピングすることによって、π共役系導電性高分子上を自由に動くことが可能な電子が生じ、導電性が得られるようになる。
【0032】
π共役系導電性高分子は、分子構造中にπ共役構造(二重結合が単結合を隔てて隣接している構造)を有する高分子化合物である。ここで高分子化合物とは、分子量が10,000以上の化合物のことを示す。π共役系導電性高分子としては、公知のものを使用することができる。このうち、導電性及び外部環境における安定性の点からポリチオフェン類、ポリピロール類又はポリアニリン類を用いるのが好ましい。特により少ない添加量で良好な導電性を発現できるという点でポリチオフェン類を用いるのが好ましい。
【0033】
ポリチオフェン類の具体例としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)等が挙げられる。中でも、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェンがより好ましい。
ポリピロール類の具体例としては、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)等が挙げられる。
ポリアニリン類の具体例としては、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)等が挙げられる。
【0034】
ドーパント(dopant)は、π共役系導電性高分子をドーピング(錯体形成)することにより、π共役系導電性高分子上を自由に動くことが可能な電子を生じさせ、π共役系導電性高分子に導電性を発現させる物質である。ドーパントは、公知のものを使用することができる。このうち、π共役系導電性高分子をドーピングした際の導電性をより高めることができるという点から、ポリアニオンをドーパントとすることが特に好ましい。
【0035】
ポリアニオンとは分子内にアニオン性基を有する化合物である。ポリアニオンの具体例として、例えばポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸などが挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。π共役系導電性高分子とドーパントの組み合わせは特に制限されないが、導電性、外部環境における安定性および入手の容易性の点からポリチオフェン類とポリアニオンの組み合わせが好ましく、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の組み合わせがより好ましい。
【0036】
π共役系導電性高分子とドーパントの質量比は1:1〜1:5であることが必要である。π共役系導電性高分子とドーパントの質量比が1:1よりも小さい場合には、π共役系導電性高分子が十分にドーピングされず、複合体の導電性が低下する。一方、1:5よりも大きい場合には、過剰に存在するドーパントの影響により、複合体の耐熱性が悪化する。π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体としては、市販のものを使用してもよいし、公知の方法により合成したものを使用してもよい。また、π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体の水分散体を有機溶剤で置き換えて使用してもよい。
【0037】
低屈折率層用塗液における多官能(メタ)アクリレート、中空シリカ微粒子、およびπ共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体の各々の含有量は、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部あたり、(b)中空シリカ微粒子40〜250質量部及び(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体1〜25質量部である。中空シリカ微粒子の含有量が40質量部よりも少ない場合には、反射防止フィルムの十分な反射防止性能が得られず、250質量部よりも多い場合には、多官能(メタ)アクリレートの含有率が低下するため反射防止フィルムの耐擦傷性が低下する。
【0038】
また、π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体の含有量が1質量部よりも少ない場合には、反射防止フィルムの十分な帯電防止性能が得られず、25質量部よりも多い場合には、複合体に対する多官能(メタ)アクリレートの含有率が相対的に減少するために、反射防止フィルムの耐擦傷性が低下する。
【0039】
(希釈溶剤)
前記低屈折率層用塗液には任意の溶媒を用いることができる。溶媒として具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、メチルグリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。
【0040】
(その他の成分)
また、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分を低屈折率層用塗液に添加することができる。そのようなその他の成分としては、例えば重合体、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。
【0041】
(低屈折率層の形成方法)
低屈折率層を形成する方法は特に制限されないが、透明基材フィルム上に積層されたハードコート層の表面に、低屈折率層用塗液をロールコート法、スピンコート法、コイルバー法、ディップコート法、ダイコート法等の塗布方法により塗布した後、紫外線を照射する方法が挙げられる。このような方法により、低屈折率層用塗液が硬化して硬化物が得られ、低屈折率層が形成される。低屈折率層用塗液の塗布方法としては、ロールコート法等の低屈折率層を連続的に形成できる方法が生産性の点より好ましい。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、各例における部は質量部を示し、%は質量%を表す。
【0043】
〔ハードコート層用塗液の製造〕
(ハードコート層用塗液HC−1の製造)
光重合性ウレタンアクリレート[日本合成化学工業(株)製、商品名:紫光UV7600B]50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製、商品名:DPHA]20質量部、光重合開始剤[チバスペシャリティケミカル(株)製、商品名:IRGACURE184]3質量部及びイソプロピルアルコール30質量部を混合して、ハードコート層用塗液HC−1を得た。
【0044】
(ハードコート層用塗液HC−2の製造)
シリカ微粒子(SiO、平均粒子径:10nm)35質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製、商品名:DPHA]25質量部、光重合開始剤[チバスペシャリティケミカル(株)製、商品名:IRGACURE184]5質量部及びメチルエチルケトン40質量部を混合して、ハードコート層用塗液HC−2を得た。
【0045】
(ハードコート層用塗液HC−3の製造)
酸化ジルコニウム微粒子62質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製、商品名:DPHA]19質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート[新中村化学(株)製]19質量部、光重合開始剤[チバスペシャリティケミカル(株)製、商品名:IRGACURE184]5質量部及びイソブチルアルコール23質量部を混合して、ハードコート層用塗液HC−3を得た。
【0046】
(ハードコート層用塗液HC−4の製造)
アンチモン酸亜鉛微粒子(平均粒子径:30nm)5質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製、商品名:DPHA]65質量部、光重合開始剤[チバスペシャリティケミカル(株)製、商品名:IRGACURE184]5質量部及びメチルエチルケトン30質量部を混合して、ハードコート層用塗液HC−4を得た。
【0047】
〔変性中空シリカ微粒子(ゾル)の製造〕
第1工程として、平均粒子径5nm、シリカ(SiO)濃度20%のシリカゾルと純水とを混合して反応母液を調製し、80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同反応母液にSiOとして1.17%の珪酸ナトリウム水溶液と、アルミナ(Al)として0.83%のアルミン酸ナトリウム水溶液とを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは、珪酸ナトリウム及びアルミン酸ナトリウムの添加直後12.5に上昇し、その後ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20%のSiO・Al一次粒子分散液(核粒子分散液)を調製した。
【0048】
次いで、第2工程として、このSiO・Al一次粒子分散液を採取し、純水を加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、濃度0.5%の硫酸ナトリウムを添加した。続いて、SiOとして濃度1.17%の珪酸ナトリウム水溶液と、Alとして濃度0.5%のアルミン酸ナトリウム水溶液とを添加して複合酸化物微粒子分散液(核粒子に第1シリカ被覆層を形成した微粒子分散液)を得た。そして、これを限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13%の複合酸化物微粒子分散液とした。
【0049】
第3工程として、この複合酸化物微粒子分散液に純水を加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lとを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、洗浄して固形分濃度20%のシリカ系微粒子(1)の水分散液を得た。
【0050】
第4工程として、前記固形分濃度20%のシリカ系微粒子(1)の水分散液と、純水、エタノール及び28%アンモニア水との混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiOが28%)を添加してシリカ被膜(第2シリカ被覆層)を形成した。続いて、純水5Lを加えながら、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20%のシリカ系微粒子(2)の分散液を調製した。
【0051】
最後に第5工程として、再びシリカ系微粒子(2)の分散液を200℃にて11時間水熱処理した。その後、純水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20%に調整した。そして、限外濾過膜を用いて、この分散液の分散媒をエタノールに置換し、固形分濃度20%のオルガノゾルを得た。このオルガノゾルは、平均粒子径が60nmで、比表面積が110m/gの中空シリカ微粒子が分散されたオルガノゾル(以下、「中空シリカゾルA」と称する。)であった。
【0052】
該中空シリカゾルA(シリカ固形分濃度20%)200gを用意し、限外濾過膜にて、メタノールへの溶媒置換を行い、SiO分が20%のオルガノゾル100g(水分量はSiO分に対して0.5%)を調製した。そこへ28%アンモニア水溶液を前記オルガノゾル100gに対してアンモニアとして100ppmとなるように加え、十分に混合し、次にγ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔商品名:KBM5103、信越化学(株)製〕3.6gを添加し、反応液とした。
【0053】
これを50℃に加温し、撹拌しながら50℃で6時間加熱を行った。加熱終了後、反応液を常温まで冷却し、さらにロータリーエバポレーターでイソプロピルアルコールへ溶媒置換を行い、SiO濃度20%の被覆中空微粒子からなるオルガノゾルを得た。このオルガノゾルは、平均粒子径が60nm、屈折率1.25、空隙率40〜45%で、比表面積が130m/g、熱質量測定法(TG)による質量減少割合が3.6%の変性中空シリカ微粒子が分散されたオルガノゾル(変性中空シリカ微粒子ゾル)であった。
【0054】
〔低屈折率層用塗液の調製〕
(低屈折率層用塗液(L−1)の調製)
(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬(株)製、商品名:DPHA、6官能アクリレート〕を100質量部、(b)前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で150質量部、(c)ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸=1/2.5の複合体を固形分換算で1質量部、光重合開始剤〔チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:IRGACURE907〕を12.5質量部及びイソプロピルアルコールを4308質量部混合して低屈折率層用塗液L−1を調製した。
【0055】
(実施例1−1)
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔東洋紡績(株)製、商品名:A4300〕の上に前記ハードコート層用塗液HC−1を乾燥膜厚1.1μm程度になるようにグラビアコート法で塗布し、乾燥後、400mJ/cmの紫外線を照射して硬化させることにより、ハードコート層を得た。次に、このハードコート層上に、前記低屈折率層用塗液L−1を、硬化後の光学膜厚がkλ/4(k:1、λ:550nm)になるようにグラビアコート法で塗布し、乾燥後、窒素雰囲気下で400mJ/cmの紫外線を照射して硬化させることにより、反射防止フィルムを作製した。
得られた反射防止フィルムについて、視感度反射率、表面抵抗率、表面硬度、耐熱性及び耐擦傷性の評価を以下に記載する方法で行い、それらの評価結果を表1に示した。
【0056】
(視感度反射率)
測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗りつぶしたものを分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U−best560〕により、光の波長380nm〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定した。得られる380nm〜780nmの分光反射率と、CIE標準イルミナントD65の相対分光分布を用いて、JIS Z8701で想定されているXYZ表色系における、反射による物体色の三刺激値Yを視感度反射率(%)とした。
【0057】
(表面抵抗率)
デジタル絶縁計〔東亜DKK(株)製、商品名:SM−8220〕を用いて、反射防止フィルムの表面抵抗率(Ω/□)を測定した。なお、表5において、「RANGE OVER」は表面抵抗率が測定限界を超えるほど高くなったことを意味する。
【0058】
(鉛筆硬度)
安田精機(株)製鉛筆硬度試験機を用いてJIS K5600−5−4に従って、鉛筆硬度を測定した。
【0059】
(耐熱性)
反射防止フィルムを80℃に設定された恒温槽の中に放置し、1000時間後に恒温槽から取り出して表面抵抗率を測定した。恒温槽に入れる前に測定した表面抵抗率と比較して、表面抵抗率の上昇が2桁以内に抑えられていれば○、表面抵抗率が3桁以上上昇した場合には×とした。
【0060】
(耐擦傷性)
(株)本光製作所製消しゴム摩耗試験機の先端に、#0000のスチールウールを固定し、2.5N(250gf)及び1N(100gf)の荷重をかけて、反射防止フィルム表面上を10回往復摩擦したあとの表面の傷を目視で観察し、以下のA〜Eの6段階で評価した。
A:傷なし、A':傷1〜3本、B:傷4〜10本、C:傷11〜20本、D:傷21〜30本、E:31本以上
【0061】
(実施例1−2〜実施例1−14)
実施例1−1のハードコート層用塗液として表1に示すハードコート層用塗液HC−1〜HC−4を用い、低屈折率層用塗液L−1の代わりに、表1に示す(a)〜(c)成分を含む低屈折率層用塗液L−2〜L−14を用いた以外は、実施例1−1と同様にして反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムについて、視感度反射率、表面抵抗率、鉛筆硬度、耐熱性及び耐擦傷性の評価結果を表1に示した。
なお、下記表1〜5に示されている(a)多官能(メタ)アクリレートは以下のとおりである。
DPHA: ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬(株)製、商品名:DPHA、6官能アクリレート〕
UV7600B: 〔日本合成化学工業(株)製、商品名:紫光UV7600B、6官能ウレタンアクリレート〕
PE−3A: ペンタエリスリトールトリアクリレート〔共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレートPE−3A、3官能アクリレート〕
OD2H2A: 1,10-ジアクリロイルオキシ-2,9-ジヒドロキシ-4,4,5,5,6,6,7,7,-オクタフルオロデカン
【表1】

【0062】
表1に示したように、実施例1−1〜実施例1−14では、良好な反射防止性能を有し、帯電防止性能にも優れ、かつ耐熱性、鉛筆硬度及び耐擦傷性も良好な反射防止フィルムを得ることができた。
【0063】
(実施例2−1〜実施例2−4)
実施例1−1のハードコート層用塗液として、表2に示すハードコート層用塗液HC−1〜HC−4を用い、実施例1−1の低屈折率層用塗液L−1の代わりに、表2に示す組成からなる低屈折率層用塗液L−15〜L−18を用いた以外は実施例1−1と同様にして反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムについて、視感度反射率、表面抵抗率、鉛筆硬度、耐熱性及び耐擦傷性の評価結果を表2に示した。
【表2】

【0064】
表2に示したように、実施例2−1〜実施例2−4では、良好な反射防止性能を有し、帯電防止性能にも優れ、かつ耐熱性、鉛筆硬度及び耐擦傷性も良好な反射防止フィルムを得ることができた。
【0065】
(実施例3−1〜実施例3−5)
実施例1−1のハードコート層用塗液として、表3に示すハードコート層用塗液HC−1〜HC−4を用い、実施例1−1の低屈折率層用塗液L−1の代わりに、表3に示す組成からなる低屈折率層用塗液L−19〜L−23を用いた以外は実施例1−1と同様にして反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムについて、視感度反射率、表面抵抗率、耐熱性及び耐擦傷性の評価結果を表3に示した。
【表3】

【0066】
表3に示したように、実施例3−1〜実施例3−5では、良好な反射防止性能を有し、帯電防止性能にも優れ、かつ耐熱性、鉛筆硬度及び耐擦傷性も良好な反射防止フィルムを得ることができた。
【0067】
(実施例4−1〜実施例4−5)
実施例1−1のハードコート層用塗液として、表4に示すハードコート層用塗液HC−1〜HC−4を用い、実施例1−1の低屈折率層用塗液L−1の代わりに、表4に示す組成からなる低屈折率層用塗液L−24〜L−28を用いた以外は実施例1−1と同様にして反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムについて、視感度反射率、表面抵抗率、耐熱性及び耐擦傷性の評価結果を表4に示した。
【表4】

【0068】
表4に示したように、実施例4−1〜実施例4−5では、良好な反射防止性能を有し、帯電防止性能にも優れ、かつ耐熱性、鉛筆硬度及び耐擦傷性も良好な反射防止フィルムを得ることができた。また、表1の実施例1−3と表4の実施例4−1〜実施例4−5に示すように、同じ添加量とした場合に、π共役系導電性高分子としてポリチオフェン類を用いた場合に最も良好な導電性が得られた。
【0069】
(比較例1−1〜比較例1−7)
比較例1−1〜比較例1−6では、実施例1−1のハードコート層用塗液として、表4に示すハードコート層用塗液HC−1〜HC−4を用い、実施例1−1の低屈折率層用塗液L−1の代わりに、表5に示す組成からなる低屈折率層用塗液L−29〜L−34を用いた以外は実施例1−1と同様にして反射防止フィルムを得た。また、比較例1−7ではハードコート層を積層せずに、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に直接、低屈折率層用塗液L−1を塗布し、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムについて、視感度反射率、表面抵抗率、耐熱性及び耐擦傷性の評価結果を表5に示した。
【表5】

【0070】
表5に示したように、比較例1−1では、π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体を有していないことから、表面低効率が測定限界を超えるほど高い、つまり帯電防止性能が発現されないという結果に到った。また、比較例1−2では、π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体の含有量が多いため、相対的に多官能(メタ)アクリレートの含有量が減少し、耐擦傷性が悪化するという結果であった。比較例1−3では、中空シリカ微粒子の含有量が過少であるため、低屈折率層の屈折率が十分に低下せず、視感度反射率が高くなって反射防止性能が劣るという結果を招いた。また、比較例1−4では、中空シリカ微粒子の含有量が過剰であるため、相対的に多官能(メタ)アクリレートの含有量が減少し、耐擦傷性が悪化するという結果に到った。比較例1−5では、π共役系導電性高分子に対してドーパントの量が過少であるため、π共役系導電性高分子が十分にドーピングされず、導電性が低くなったため、表面低効率が上昇、つまり帯電防止性が低下した。比較例1−6では、π共役系導電性高分子に対してドーパントの量が多過ぎるため、過剰に存在するドーパントの影響により、耐熱性が悪化した。さらに、比較例1−7ではハードコート層を積層していないため、鉛筆硬度が悪化するという結果を招いた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルム上にハードコート層と低屈折率層がこの順に積層されている反射防止フィルムであって、
前記低屈折率層は、(a)多官能(メタ)アクリレート、(b)中空シリカ微粒子及び(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体を含有し、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部あたり、(b)中空シリカ微粒子40〜250質量部及び(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体1〜25質量部を含むとともに、(c)π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体中のπ共役系導電性高分子とドーパントの質量比が1:1〜1:5に設定された低屈折率層用塗液の硬化物であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記π共役系導電性高分子がポリチオフェン類であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記ポリチオフェン類がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であることを特徴とする請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記π共役系導電性高分子がポリピロール類又はポリアニリン類であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記ドーパントがポリアニオンであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸であることを特徴とする請求項5に記載の反射防止フィルム。


【公開番号】特開2012−48195(P2012−48195A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87997(P2011−87997)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】