説明

反射防止フィルム

【課題】
反射防止膜の密着性が良好で反射率が低く、かつ反射色ムラが抑制された、低コストの反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】
本発明の反射防止フィルムは、屈折率が1.6〜1.7のポリエステルフィルム上に易接着層のみを介して気相製膜法によって積層された薄膜層を有し、前記薄膜層の屈折率が前記ポリエステルフィルムの屈折率より0.15以上小さく、かつ、前記易接着層が下記の条件1、条件2、または(条件1および条件2)を満足することを特徴とする、反射防止フィルムである。
条件1:易接着層の屈折率と前記ポリエステルフィルムの屈折率との差の絶対値が0.05以下である。
条件2:易接着層の厚みが5nm以上50nm未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルム上に易接着層のみを介して気相製膜法によって積層された薄膜層を有する反射防止フィルムに関し、詳しく、低コストで製造することができ、低反射で密着性が良好で、かつ反射色ムラの発生が抑制された反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の画像表示装置、あるいはタッチパネルにおける画像表示面には、反射防止フィルムが通常装着されている。
【0003】
ガラス板や樹脂板等の基板、あるいはプラスチックフィルム等の基材フィルムに反射防止膜を積層する方法として、反射防止膜の塗料を塗工、乾燥、硬化して反射防止膜を積層する方法(ウェットコーティング法)、真空蒸着、スパッタ、プラズマCVD等の気相製膜法(ドライコーティング法)によって反射防止膜を積層する方法、あるいは上記2つの方法を組み合わせた方法(ウェット・アンド・ドライ法)がある。
【0004】
上記ウェットコーティング法によって製造される反射防止フィルムは、一般的に基材フィルム上に高屈折率層と低屈折率層が積層された構成になっている。そして、高屈折率層には通常ハードコート性が付与されており、その厚みは1μm以上となっている。このため、基材フィルムと高屈折率層との屈折率差によって、あるいは高屈折率層の厚みムラによって、反射色ムラが発生しやすくなるという問題がある。また、高屈折率層と低屈折率層を塗り重ねることによる生産効率の低下や原材料のコスト増の問題がある。
【0005】
上記ウェット・アンド・ドライ法は、基材フィルムにウェットコーティング法によりハードコート層を積層し、その上に気相製膜法で反射防止膜を積層する方法が知られている(例えば特許文献1、2)。この方法は、比較的厚みの大きいハードコート層が基材フィルムと反射防止膜との間に設けられているため、基材フィルムとハードコート層との屈折率差によって、あるいはハードコート層の厚みムラによって、反射色のムラが発生しやすくなるという問題がある。また、ハードコート層と反射防止膜との密着性が十分に安定的に確保できないという問題がある。
【0006】
一方、上記の気相製膜法(ドライコーティング法)によって反射防止膜を積層する方法は、基材フィルム上に極薄膜の反射防止膜を均一に積層するのに有利であり、また生産効率的にも有利である。
【0007】
ガラス板や樹脂板等の基板、あるいはプラスチックフィルム等の基材フィルム上に気相製膜法によって酸化珪素膜やフッ化マグネシウム膜等の反射防止膜を積層することは知られている。例えば、ガラス基板にフッ化マグネシウム膜を真空蒸着法で積層することが特許文献3、4に記載されており、また、ポリエステルフィルム等の基材フィルムにフッ化マグネシウム膜や酸化珪素膜を真空蒸着法やプラズマCVD法で積層することが特許文献5、6に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−41230号公報
【特許文献2】特開平10−195636号公報
【特許文献3】特開平7−104102号公報
【特許文献4】特開平9−5502号公報
【特許文献5】特開2008−266728号公報
【特許文献6】特開2009−208429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献3、4に記載されているようなガラス基板等の耐熱基材に気相製膜法で反射防止膜を積層する場合は、ガラス基板を高熱にすることが可能であり、密着性が良好な反射防止膜が得られる。
【0010】
一方、特許文献5、6に記載されているような、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムからなる基材フィルムに気相製膜法で反射防止膜を積層する場合には、プラスチックフィルムは耐熱性が低いため比較的低温で製膜しなければならず、密着性が低下するという問題があった。
【0011】
ポリエステルフィルムと反射防止膜との密着性を向上させるために両者の間に易接着層を設けることが上記特許文献6に記載されているが、易接着層については具体的に記載されていない。
【0012】
ポリエステルフィルムと反射防止膜との間に易接着層を設けることによって、密着性の向上は期待できる。しかしながら、ポリエステルフィルム上に該ポリエステルフィルムに対して屈折率が0.15以上小さい薄膜層(反射防止膜)を易接着層のみを介して直接に積層する場合、単に易接着層を設けるだけでは、反射防止性が低下したり、あるいは反射色ムラが発生するなどの問題が新たに起こった。
【0013】
従って、本発明の目的は、反射防止膜の密着性が良好で反射率が低く、かつ反射色ムラが抑制された、低コストの反射防止フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、以下の発明によって達成された。
1)屈折率が1.6〜1.7のポリエステルフィルムと、
前記ポリエステルフィルムに直接積層された易接着層と、
前記易接着層の前記ポリエステルフィルム側とは反対側の面に、気相製膜法によって直接積層された薄膜層とを有し、
前記薄膜層の屈折率が前記ポリエステルフィルムの屈折率より0.15以上小さく、
かつ、前記易接着層が下記の条件1、条件2、または(条件1および条件2)を満足する、反射防止フィルム。
・条件1:易接着層の屈折率と前記ポリエステルフィルムの屈折率との差の絶対値が0.05以下である。
・条件2:易接着層の厚みが5nm以上50nm未満である。
2)前記薄膜層の厚みが50〜150nmの範囲である、前記1)の反射防止フィルム。
3)前記薄膜層の屈折率が1.2〜1.5の範囲である、前記1)または2)の反射防止フィルム。
4)前記薄膜層が金属フッ化物を含む、前記1)〜3)のいずれかの反射防止フィルム。
5)前記金属フッ化物がフッ化マグネシウムである、前記4)の反射防止フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、反射防止膜の密着性および反射防止性が良好で、かつ反射色ムラが抑制された反射防止フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、屈折率が比較的大きいポリエステルフィルム上に易接着層のみを介して比較的屈折率の小さい薄膜層(反射防止膜)を直接に積層するだけで、反射防止性の良好な反射防止フィルムが得られることから、反射防止フィルムの低コスト化が図られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明にかかる反射防止フィルムは、ポリエステルフィルムと、このポリエステルフィルムに直接積層された易接着層と、この易接着層のポリエステルフィルム側とは反対側の面に、気相製膜法によって直接積層された薄膜層とを有するものである。すなわち、ポリエステルフィルム上に易接着層のみを介して薄膜層が気相製膜法によって積層されたものである。
【0017】
本発明にかかるポリエステルフィルムの屈折率は1.6〜1.7であり、薄層膜の屈折率はポリエステルフィルムの屈折率より0.15以上小さいことが重要である。
【0018】
本発明は、ポリエステルフィルムの比較的大きな屈折率(屈折率1.6〜1.7)を利用し、ポリエステルフィルム上に該ポリエステルフィルムより屈折率が0.15以上小さい薄膜層を積層するだけで、反射率の低い反射防止フィルムが得られることに着目し、かかる反射防止フィルムの実現における課題を解決するものである。
【0019】
すなわち、本発明は、ポリエステルフィルムと薄膜層との密着性の課題を、易接着層を介在させることによって解決するとともに、易接着層を介在させたことによる新たな課題、すなわち反射率が高くなったり反射色ムラが発生したりするなどの課題を解決するものである。
【0020】
上記課題は、特定条件の易接着層を設けることによって解決される。ここで、特定条件の易接着層とは、下記の条件1、条件2、または(条件1および条件2)を満足する易接着層である。
・条件1:易接着層の屈折率と前記ポリエステルフィルムの屈折率との差の絶対値が0.05以下である。
・条件2:易接着層の厚みが5nm以上50nm未満である。
【0021】
易接着層が、上記条件1を外れる場合、すなわち、易接着層とポリエステルフィルムとの屈折率差の絶対値が0.05より大きくなると、反射防止フィルムの反射率が高くなったり、反射色ムラが発生したりするなどの不都合が生じる。このような不都合を抑制するという観点から、条件1の中でも、易接着層とポリエステルフィルムとの屈折率差の絶対値は、0.04以下が好ましく、0.03以下がより好ましく、特に0.02以下が好ましい。
【0022】
易接着層が、上記条件2を外れる場合、すなわち、易接着層の厚みが50nm以上となると反射防止フィルムの反射率が高くなったり、反射色ムラが発生したりするなどの不都合が生じ、逆に易接着層の厚みが5nm未満となると薄膜層の密着性が低下する。このような不都合を抑制するという観点から、条件2の中でも、易接着層の厚みは、40nm未満が好ましく、30nm未満がより好ましく、一方、易接着層の下限の厚みは10nm以上が好ましい。
【0023】
(ポリエステルフィルム)
本発明にかかるポリエステルフィルムとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物を材料とするフィルムの総称であって、例えば、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種を主要構成成分とするフィルムが挙げられる。これらのフィルムの中でも、品質、経済性などの総合的観点からポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0024】
本発明にかかるポリエステルフィルムの屈折率は1.6〜1.7の範囲である。低反射率の反射防止フィルムを得るという観点から、ポリエステルフィルムの屈折率は上記範囲の中でも大きい方が好ましく、具体的には1.61以上が好ましく、1.62以上がより好ましく、更に1.63以上が好ましく、特に1.64以上が好ましい。一方、ポリエステルフィルム上に積層される易接着層は後述するように樹脂を含むことが好ましく、樹脂を含む易接着層の屈折率調整の容易性の観点(易接着層の条件1を比較的容易に満足させるという観点)から、ポリエステルフィルムの屈折率はあまり大きくないことが好ましく、ポリエステルフィルムの上限の屈折率は具体的には、1.69以下が好ましく、1.68以下がより好ましい。
【0025】
ポリエステルフィルムの厚みは、30〜300μmの範囲が適当であり、40〜200μmの範囲が好ましく、50〜150μmの範囲がより好ましい。
【0026】
(薄膜層)
本発明にかかる薄膜層は、気相製膜法で形成されたものである。気相製膜法としては、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等が挙げられ、これらの方法を単独もしくは組み合わせて用いることができる。これらの中でも、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法が好ましく用いられる。
【0027】
薄層膜の屈折率は、ポリエステルフィルムの屈折率より0.15以上小さいことが必要である。反射率の低い反射防止フィルムを得るという観点から、薄膜層の屈折率はポリエステルフィルムの屈折率より0.20以上小さいことが好ましく、0.25以上小さいことがより好ましい。薄膜層の屈折率の下限は、ポリエステルフィルムの屈折率より0.4程度小さいことである。
【0028】
薄膜層の屈折率は、具体的には1.5以下が好ましく、1.45以下がより好ましく、特に1.4以下が好ましい。薄膜層の下限の屈折率は1.2以上であることが好ましく、1.25以上であることがより好ましく、特に1.3以上であることが好ましい。
【0029】
上記のように屈折率の比較的小さい薄膜層を構成する物質としては、金属酸化物や金属フッ化物が挙げられる。金属酸化物としては、例えば酸化珪素が挙げられ、金属フッ化物としては、例えばフッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、クリオライト(NaAlF)、チオライト(NaAlF1)、フッ化ナトリウム(NaF)等が挙げられる。
【0030】
上記の薄膜層を構成する物質の中でも金属フッ化物が好ましく、金属フッ化物の中でも特にフッ化マグネシウムが好ましい。
【0031】
金属フッ化物は屈折率が比較的小さく、屈折率が1.6〜1.7のポリエステルフィルム上に金属フッ化物を含む薄膜層を本発明の特定の易接着層のみを介して積層することによって反射率の低い反射防止フィルムを得ることができる。
【0032】
しかし一方、金属フッ化物の薄膜層は、酸化珪素などの薄膜層に比べてポリエステルフィルムに対する密着性が得られにくいという問題がある。従って、本発明の反射防止フィルムは、薄膜層が金属フッ化物で形成される場合に好適であり、特に薄膜層がフッ化マグネシウムで形成される場合に好適である。
【0033】
薄膜層の厚みは、50〜150nmの範囲が好ましく、80〜120nmの範囲がより好ましく、特に90〜110nmの範囲が好ましい。薄膜層の厚みが上記の範囲を外れると反射率が高くなる傾向にあり、好ましくない。
【0034】
(易接着層)
本発明にかかる易接着層は、下記の条件1、条件2、または(条件1および条件2)を満足する必要がある。
・条件1:易接着層の屈折率と前記ポリエステルフィルムの屈折率との差の絶対値が0.05以下である。
・条件2:易接着層の厚みが5nm以上50nm未満である。
【0035】
以下、条件1の易接着層について詳しく説明する。かかる易接着層は、ポリエステルフィルムとの屈折率差の絶対値が0.05以下であり、好ましくは屈折率差の絶対値が0.04以下であり、より好ましくは屈折率差の絶対値が0.03以下であり、特に好ましくは屈折率差の絶対値が0.02以下である。
【0036】
条件1の易接着層は屈折率が比較的大きい易接着層であり、かかる易接着層は比較的屈折率の大きい樹脂や金属酸化物微粒子等の高屈折率材料を含有させることによって得ることができる。
【0037】
ポリエステルフィルムに易接着層を設けることは知られているが、これらの易接着層はポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を主成分とするもので、屈折率は通常1.45〜1.54程度と比較的小さいものである。
【0038】
本発明にかかる条件1の易接着層の1つの態様は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂に、芳香族環、硫黄原子、臭素原子等を導入することにより高屈折率化した樹脂を用いる態様である。上記の高屈折率化した樹脂の含有量は、易接着層の固形分総量100質量%に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、特に70質量%以上であることが好ましい。上限の含有量は98質量%程度である。
【0039】
上記の高屈折率化した樹脂としては、分子中に芳香族環を有するポリエステル樹脂が好ましく、更に分子中に縮合芳香族環を有するポリエステル樹脂が好ましい。上記縮合芳香族環としては、例えば、ナフタレン環、フルオレン環等が挙げられる。
【0040】
ポリエステル樹脂は、一般的にカルボン酸成分とグリコール成分から重縮合して得られる。上記の分子中にナフタレン環を有するポリエステル樹脂は、カルボン酸成分として、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレン環を有するジカルボン酸を用いることによって合成することができる。分子中にナフタレン環を有するポリエステル樹脂の屈折率は、全カルボン酸成分中のナフタレン環を有するジカルボン酸の比率を調整することによって制御することができる。
【0041】
上記の分子中にフルオレン環を有するポリエステル樹脂は、カルボン酸成分および/またはグリコール成分として、フルオレン環を有する化合物を用いることによって合成することができる。上記フルオレン環を有する化合物の含有量を調整することによって該ポリエステル樹脂の屈折率を制御することができる。分子中にフルオレン環を有するポリエステル樹脂は、例えば、国際公開番号WO2009/145075号に詳しく記載されており、それを参照して合成することができる。
【0042】
上記ポリエステル樹脂は水溶性あるいは水分散性であることが好ましい。水溶性あるいは水分散性のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の合成に用いられるカルボン酸成分の中に、3価以上の多価カルボン酸あるいはスルホ基を有するジカルボン酸を含ませることによって合成することができる。
【0043】
本発明にかかる条件1の易接着層の他の態様は、金属酸化物微粒子を含有させる態様である。この態様の易接着層は、樹脂中に金属酸化物微粒子が分散した層であり、樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(好ましくはアクリル樹脂ポリオール等のOH基を有するアクリル樹脂)、ポリエステル樹脂(好ましくはポリエステル樹脂ポリオール等のOH基を有するポリエステル樹脂)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。
【0044】
金属酸化物微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化鉄、アンチモン酸亜鉛、酸化錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、リンドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛等を用いることができる。
上記の樹脂と金属酸化物微粒子の含有比率は、質量比で100:10〜100:400の範囲が適当であり、100:20〜100:300の範囲が好ましく、特に100:30〜100:200の範囲が好ましい。
【0045】
本発明にかかる条件1の易接着層の厚みは特に限定されないが、200nm未満が好ましく、150nm未満がより好ましく、更に100nm未満が好ましく、特に50nm未満が好ましい。下限の厚みは5nm以上であり、10nm以上が好ましい。
【0046】
次に、本発明にかかる条件2の易接着層について説明する。かかる易接着層は、厚みが5nm以上50nm未満の範囲である。この易接着層の厚みは、上記厚みの範囲内でも小さい方が好ましく、具体的には40nm未満が好ましく、30nm未満がより好ましい。易接着層の下限の厚みは10nm以上が好ましい。
【0047】
条件2の易接着層の屈折率は特に限定されないが、1.45以上1.60未満の範囲が好ましく、1.47〜1.59の範囲がより好ましく、特に1.48〜1.58の範囲が好ましい。
【0048】
条件2の易接着層は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を主成分として含む層であることが好ましい。すなわち、易接着層の固形分総量100質量%に対して上記樹脂を50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましく、特に70質量%以上含有することが好ましい。上限は98質量%程度である。
【0049】
本発明の易接着層は、条件1および条件2を同時に満足する易接着層であることが特に好ましい。
【0050】
次に、条件1および条件2の易接着層に共通する内容について説明する。
【0051】
本発明の易接着層は、上述したように少なくとも樹脂を含んでいることが好ましい。樹脂を含む易接着層は、詳しくは後述するが、ポリエステルフィルムの製造工程内でインラインで易接着層を積層することが可能であり、生産性の点で有益である。易接着層における樹脂の含有量は、易接着層の固形分総量100質量%に対して20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、特に50質量%以上であることが好ましい。上限は98質量%程度である。
【0052】
本発明の易接着層は、架橋剤を含有することが好ましい。かかる架橋剤としては、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系架橋剤、アクリルアミド系架橋剤、ポリアミド系樹脂、アミドエポキシ化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。
【0053】
本発明の易接着層には、更に粒子を含有することが好ましい。易接着層が粒子を含有することによって、易滑性や耐ブロッキング性が向上するので好ましい。かかる粒子としては特に限定されないが、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック、ゼオライト粒子などの無機粒子や、アクリル粒子、シリコーン粒子、ポリイミド粒子、テフロン(登録商標)粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋重合体粒子、コアシェル粒子などの有機粒子が挙げられる。
【0054】
本発明の易接着層は、ポリエステルフィルム上にウェットコーティング法で積層されることが好ましく、更にポリエステルフィルムの製造工程内で易接着層を積層する、いわゆる、インラインコーティング法が好ましい。ウェットコーティング法としては、例えばリバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0055】
ポリエステルフィルム上に本発明の易接着層を塗布する際には、塗布性や密着性を向上させるための予備処理として、ポリエステルフィルム表面にコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理等を施しておくことが好ましい。
【0056】
上述のインラインコーティング法について、ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)フィルムを用いた態様について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
PETフィルムの原料である極限粘度0.5〜0.8dl/gのPETペレットを真空乾燥した後、押し出し機に供給し260〜300℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化せしめて未延伸PETフィルムを作製する。この未延伸PETフィルムを70〜100℃に加熱されたロール間で縦方向(フィルムの進行方向を指し「長手方向」ともいう)に2.5〜5倍延伸する。この延伸で得られた一軸延伸PETフィルムの少なくとも片面に空気中でコロナ放電処理を施し、該表面の濡れ張力を47mN/m以上とし、その処理面に本発明の易接着層の塗布液を塗布する。
【0058】
次に、塗布液が塗布された一軸延伸PETフィルムをクリップで把持して乾燥ゾーンに導き、一軸延伸PETフィルムのTg未満の温度で乾燥した後、Tg以上の温度に上げ、再度Tg近傍の温度で乾燥、引き続き連続的に70〜150℃の加熱ゾーンで横方向(フィルムの進行方向とは直交する方向を指し「幅方向」ともいう)に2.5〜5倍延伸し、続いて180〜240℃の加熱ゾーンで5〜40秒間熱処理を施し、結晶配向の完了したPETフィルムに易接着層が積層されたポリエステルフィルムが得られる。尚、上記熱処理中に必要に応じて3〜12%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は縦、横逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また縦、横延伸後、縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。
【0059】
(反射防止フィルム)
本発明の反射防止フィルムは、ポリエステルフィルム、易接着層、および薄膜層が、他の層を介在せずにこの順に積層されたものである。上記易接着層と薄膜層は、ポリエステルフィルムの片面のみに設けられてもよいし、両面に設けられてもよい。また、薄膜層の上(薄膜層のポリエステルフィルム側とは反対面)、あるいはポリエステルフィルムの薄膜層が積層された側とは反対面に、他の層を積層することができる。
【0060】
薄膜層の上に積層することができる他の層としては、視感反射率や反射色等の光学特性に影響を与えない層であることが好ましい。かかる層としては、薄膜層の膜物性を補強するための層が挙げられ、例えば、含フッ素シリコーン膜や酸化珪素膜が挙げられる。これらの層の厚みは1〜20nmであることが好ましい。
【0061】
ポリエステルフィルムの薄膜層が積層された側とは反対面に積層することができる他の層としては、近赤外線遮蔽層、色調調整層、電磁波シールド層、防眩層、粘着剤層等が挙げられる。
【0062】
本発明によれば、低コストで反射防止性の良好な反射防止フィルムが得られる。反射防止性は視感反射率で表すことができるが、本発明の反射防止フィルムは、視感反射率が1.0%以下であることが好ましい。このような反射防止フィルムは、ポリエステルフィルム上に、本発明の易接着層(条件1、条件2、または(条件1および条件2)を満足する易接着層)のみを介して、気相製膜法でフッ化マグネシウム等の薄膜層を積層することによって得られる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、本実施例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
【0064】
(1)ポリエステルフィルムの屈折率の測定
JIS K7105(1999年)に準じてアッベ屈折率計で測定し、長手方向および幅方向の屈折率の平均値をポリエステルフィルムの屈折率とした。
【0065】
(2)易接着層の厚み
易接着層が積層されたポリエステルフィルムの断面を超薄切片に切り出し、RuO4 染色、OsO4 染色、あるいは両者の二重染色による染色超薄切片法により、TEM(透過型電子顕微鏡)で断面構造が目視可能な以下の条件にて観察し、その断面写真から易接着層の厚みを測定する。
・測定装置:透過型電子顕微鏡(日立(株)製 H−7100FA型)
・測定条件:加速電圧 100kV
・試料調整:凍結超薄切片法
・倍率:30万倍。
【0066】
(3)易接着層の屈折率の測定
屈折率が既知のポリエステルフィルム上に易接着層(厚み約100nm)が積層された状態で、易接着層側の反射率と、易接着層の厚みを上記(2)の方法で測定する。このようにして得られた易接着層側の反射率と易接着層の厚みとポリエステルフィルムの屈折率とから易接着層の屈折率を算出する。
上記反射率は、易接着層とは反対側のポリエステルフィルム面に#320〜400の耐水サンドペーパーで均一に傷をつけた後、黒色塗料(黒マジックインキ(登録商標)液)を塗布して、易接着層とは反対側の面からの反射を完全になくした状態にして、島津製作所(株)の分光光度計UV−3150を用いて550nmの反射率を測定する。
【0067】
(4)薄膜層の厚みの測定
サンプルの断面を超薄切片に切り出し、透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)で加速電圧100kVにて観察(10万倍の倍率で観察)し、その断面写真から薄膜層の厚みを測定する。
【0068】
(5)薄膜層の屈折率の測定
屈折率が既知のポリエステルフィルム上に薄膜層(厚み約100nm)が積層された状態で、薄膜層側の反射率と、薄膜層の厚みを上記(4)の方法で測定する。このようにして得られた薄膜層側の反射率と薄膜層の厚みとポリエステルフィルムの屈折率とから薄膜層の屈折率を算出する。
上記反射率は、薄膜層とは反対側のポリエステルフィルム面に#320〜400の耐水サンドペーパーで均一に傷をつけた後、黒色塗料(黒マジックインキ(登録商標)液)を塗布して、薄膜層とは反対側の面からの反射を完全になくした状態にして、島津製作所(株)の分光光度計UV−3150を用いて550nmの反射率を測定する。
【0069】
(6)反射防止フィルムの視感反射率の測定
<評価用サンプルの作成>
サンプルの薄膜層が積層された側とは反対面を粘着剤でガラス板に貼り付け、該ガラス板の反対面(反射防止フィルムサンプルが貼り付けられた面とは反対側の面)に黒テープ(日東電工製 No.21トク(BC))を貼り付けて評価用サンプルを作製する。
<測定>
分光光度計(島津製作所製、UV3150PC)を用いて、測定面から5度の入射角で波長380〜780nmの範囲で反射率(片面反射)を算出し、視感反射率(JIS Z8701−1999において規定されている反射の刺激値Y)を求めた。分光光度計で分光立体角を測定し、JIS Z8701−1999に従って反射率(片面光線反射)を算出する。算出式は以下の通りである。
・T=K・ ∫S(λ)・y(λ)・ R(λ) ・dλ (ただし、積分区間は380〜780nm)
T:片面光線反射率
S(λ) :色の表示に用いる標準の光の分布
y(λ) :XYZ表示系における等色関数
R(λ) :分光立体角反射率。
【0070】
(6)反射色ムラの目視の評価
各サンプルを150mm×150mmに切り出し、ポリエステルフィルムに対して薄膜層とは反対側の面に黒粘着テープ(日東電工製“ビニルテープNo.21 トクハバ 黒”)を貼り付けて評価用サンプルを作製する。このサンプルを暗室三波長蛍光灯下にて目視で薄膜層面の反射色ムラを観察し、以下の基準で評価した。
○:反射色ムラの発生が殆ど認められない。
×:反射色ムラの発生が認められる。
【0071】
(7)密着性
各サンプルを60℃−90%RHの雰囲気下に500時間放置した後、各サンプルの薄膜層面に1mmのクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、指で強く押し付けた後、90度方向に急速に剥離し、残存した個数により、以下の基準で密着性を評価した。
○:90/100(残存個数/測定個数)以上
×:90/100(残存個数/測定個数)未満。
【0072】
(易接着層を形成するための樹脂)
<ポリエステル樹脂1、2>
ポリエステル樹脂中のフルオレン環の含有量を調整することにより、屈折率が1.64の水分散性のポリエステル樹脂1と、屈折率が1.62の水分散性のポリエステル樹脂2を調製した。
<ポリエステル樹脂3>
ポリエステル樹脂中のナフタレン環の含有量を調整することにより、屈折率が1.58の水分散性のポリエステル樹脂3を調製した。
を調製した。
<アクリル樹脂>
屈折率が1.52の水分散性のアクリル樹脂を用意した。
【0073】
[製造例1]
屈折率1.65で厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の一方の面に、下記の易接着層Aを乾燥厚みが80nmとなるように積層して、易接着層付きPETフィルムを得た。
上記で得られた易接着層付きPETフィルムの易接着層の厚みは80nmで、易接着層の屈折率は1.64であった。
<易接着層A>
屈折率1.64のポリエステル樹脂1を100質量部、メラミン系架橋剤を5質量部、コロイダルシリカを1質量部含有する。
上記メラミン系架橋剤としてメチロール型メラミン系架橋剤(三和ケミカル(株)製の「ニカラック MW12LF」)、上記コロイダルシリカとして(日産化学工業(株)製の「スノーテックスOL」)をそれぞれ用いた。尚、以下の実施例および比較例においてメラミン系架橋剤およびコロイダルシリカとは、上記化合物を指す。
【0074】
[製造例2]
製造例1の易接着層Aの厚みを20nmに変更する以外は、製造例1と同様にして易接着層付きPETフィルムを得た。
上記で得られた易接着層付きPETフィルムの易接着層の厚みは20nmで、易接着層の屈折率は1.64であった。
【0075】
[製造例3]
屈折率1.65で厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の一方の面に、下記の易接着層Bを乾燥厚みが20nmとなるように積層して、易接着層付きPETフィルムを得た。
上記で得られた易接着層付きPETフィルムの易接着層の厚みは20nmで、易接着層の屈折率は1.62であった。
<易接着層B>
屈折率1.62のポリエステル樹脂2を100質量部、メラミン系架橋剤を5質量部、コロイダルシリカを1質量部含有する。
【0076】
[製造例4]
屈折率1.65で厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の一方の面に、下記の易接着層Cを乾燥厚みが80nmとなるように積層して、易接着層付きPETフィルムを得た。
上記で得られた易接着層付きPETフィルムの易接着層の厚みは80nmで、易接着層の屈折率は1.58であった。
<易接着層C>
屈折率1.58のポリエステル樹脂3を100質量部、メラミン系架橋剤を5質量部、コロイダルシリカを1質量部含有する。
【0077】
[製造例5]
製造例4の易接着層Cの厚みを35nmに変更する以外は、製造例4と同様にして易接着層付きPETフィルムを得た。
上記で得られた易接着層付きPETフィルムの易接着層の厚みは35nmで、易接着層の屈折率は1.58であった。
【0078】
[製造例6]
製造例4の易接着層Cの厚みを20nmに変更する以外は、製造例4と同様にして易接着層付きPETフィルムを得た。
上記で得られた易接着層付きPETフィルムの易接着層の厚みは20nmで、易接着層の屈折率は1.58であった。
【0079】
[製造例7]
屈折率1.65で厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の一方の面に、下記の易接着層Dを乾燥厚みが80nmとなるように積層して、易接着層付きPETフィルムを得た。
上記で得られた易接着層付きPETフィルムの易接着層の厚みは80nmで、易接着層の屈折率は1.52であった。
<易接着層D>
屈折率1.52のアクリル樹脂を100質量部、メラミン系架橋剤を5質量部、コロイダルシリカを1質量部含有する。
【0080】
[製造例8]
製造例7の易接着層Dの厚みを20nmに変更する以外は、製造例7と同様にして易接着層付きPETフィルムを得た。
上記で得られた易接着層付きPETフィルムの易接着層の厚みは20nmで、易接着層の屈折率は1.52であった。
【0081】
[製造例9]
製造例7の易接着層Dの厚みを0.5μm(500nm)に変更する以外は、製造例7と同様にして易接着層付きPETフィルムを得た。
上記で得られた易接着層付きPETフィルムの易接着層の厚みは0.5μmで、易接着層の屈折率は1.52であった。
【0082】
[製造例10]
易接着層が積層されていないPETフィルム(屈折率1.65、厚み100μm)を用意した。
【0083】
[製造例11]
製造例1で得られた易接着層付きPETフィルムの易接着層上に、下記のハードコート層(屈折率1.54)を厚みが5μmとなるように積層して、ハードコート層付きPETフィルムを製造した。
<ハードコート層>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50質量部、ポリエステルアクリレート20質量部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート10質量部、アンチモンドープ酸化錫(ATO)20質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア(登録商標)184」)3質量部、シリコーン系レベリング剤(共栄社化学(株)製「グラノール440」)を固形分換算で0.5質量部含む。
【0084】
[実施例1〜6および比較例1〜5]
上記の製造例1〜9で得られた易接着層付きPETフィルムの易接着層上に、フッ化マグネシウム(MgF)からなる薄膜層を厚みが100nmとなるように下記条件で真空蒸着して積層し、反射防止フィルムを製造した。このようにして得られたフッ化マグネシウムからなる薄膜層の屈折率は1.38で、厚みは100nmであった。
【0085】
また、製造例10で用意した易接着層が積層されていないPETフィルムの一方の面に、上記と同様にフッ化マグネシウムからなる薄膜層を積層して反射防止フィルムを製造した。
【0086】
さらに、製造例11で得られたハードコート層付きPETフィルムのハードコート層上に、上記と同様にフッ化マグネシウムからなる薄膜層を積層して反射防止フィルムを製造した。
【0087】
実施例1〜6および比較例1〜5と製造例1〜11の関係を表1に示す。
【0088】
<真空蒸着の条件>
電子ビーム蒸発源を備えた巻き取り式真空蒸着装置を用いて、製造例1〜11で得られた長尺のPETフィルムの最表層にフッ化マグネシウムを蒸着した。真空蒸着装置にPETフィルムをセットした後、5×10−3Pa以下に真空排気した。PETフィルムは130N/mの張力をかけながら1.0m/minの速度で搬送した。フッ化マグネシウムの蒸発速度は、水晶振動子式膜厚計を用いてモニタリングした。PETフィルム最表層に得られるフッ化マグネシウム蒸着薄膜層の膜厚が100nmとなるよう、電子ビーム蒸発源の電子ビーム電流を調整してフッ化マグネシウムの蒸発速度を制御して、目的とするフッ化マグネシウム薄膜層を得た。
【0089】
<反射防止フィルムの評価>
上記で得られた実施例および比較例の反射防止フィルムについて、視感反射率、反射色ムラ、および密着性を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
本発明の実施例1は本発明の易接着層の条件1を満足し、実施例2、3は本発明の易接着層の条件1および条件2を満足し、実施例4〜6は本発明の易接着層の条件2を満足しており、従って本発明の実施例1〜6は、視感反射率が低く、反射色ムラの発生がなく、かつ密着性が良好である。
【0092】
一方、比較例1〜3は、易接着層とポリエステルフィルム(PETフィルム)との屈折率差の絶対値が0.05を越えており、かつ易接着層の厚みも50nm以上であり、本発明の易接着層の条件1および条件2のいずれも満足していない。従って、比較例1〜3は、視感反射率が高く、反射防止性に劣るものである。特に比較例3の易接着層は、厚みが500nmと大きいために、反射色ムラの発生があった。
【0093】
比較例4は、易接着層が積層されていないポリエステルフィルム(PETフィルム)を用いているために、密着性が劣っていた。
【0094】
比較例5は、ハードコート層を介して薄膜層が積層された例であるが、視感反射率が高く、反射色ムラの発生があり、また密着性も劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が1.6〜1.7のポリエステルフィルムと、
前記ポリエステルフィルム上に直接積層された易接着層と、
前記易接着層の、前記ポリエステルフィルム側とは反対側の面に、気相製膜法によって直接積層された薄膜層とを有し、
前記薄膜層の屈折率が前記ポリエステルフィルムの屈折率より0.15以上小さく、
かつ、前記易接着層が下記の条件1、条件2、または(条件1および条件2)を満足する、反射防止フィルム。
条件1:易接着層の屈折率と前記ポリエステルフィルムの屈折率との差の絶対値が0.05以下である。
条件2:易接着層の厚みが5nm以上50nm未満である。
【請求項2】
前記薄膜層の厚みが50〜150nmの範囲である、請求項1の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記薄膜層の屈折率が1.2〜1.5の範囲である、請求項1または2の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記薄膜層が金属フッ化物を含む、請求項1〜3のいずれかの反射防止フィルム。
【請求項5】
前記金属フッ化物がフッ化マグネシウムである、請求項4の反射防止フィルム。

【公開番号】特開2012−68427(P2012−68427A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213104(P2010−213104)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】