説明

反射防止膜、金属膜の加熱方法、及び、加熱装置

【課題】ガラス基板から入射して金属膜に到達する入射光(あるいはレーザ光)の金属膜による反射を確実に防止し得る反射防止膜を提供する。
【解決手段】複素屈折率NM=nM−i・kMを有する金属膜30と、屈折率NGを有するガラス基板11との間に形成された反射防止膜20は、金属膜側から、(A)屈折率N1を有する第1の誘電体層21、(B)第1の誘電体層21上に形成された、屈折率N2を有する第2の誘電体層22、及び、(C)第2の誘電体層22上に形成された、屈折率N3を有する第3の誘電体層23から構成され、N1<nM,N1>NG,N2<NG,N3>NGを満足し、以て、ガラス基板11から入射して金属膜30に到達する入射光の金属膜30による反射を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜、金属膜の加熱方法、及び、加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気中を進行する光が媒質に入射したとき、媒質の光入射面にあっては反射が生じる。この反射は、空気の屈折率と媒質の屈折率との間の差によって生じる。そして、このような反射を低減させる手段として、真空蒸着法等を用いて単層膜あるいは多層膜から成る反射防止膜を媒質の光入射面、例えば、ガラス基板の表面に設ける技術が採用されている。
【0003】
具体的には、例えば、特許第2590133号には、以下の表1に示す反射防止膜が開示されている。また、例えば、特開平1−168854号公報には、以下の表2に示す反射防止膜が開示されている。
【0004】

【0005】
ところで、例えば、ガラス基板(屈折率:1.51)に直接、モリブデンから成る金属膜を蒸着したときのガラスと金属膜との界面における反射率Rは、以下のとおりである。尚、モリブデンから成る金属膜の複素屈折率NM=nM−i・kMにおけるnMの値は3.53であり、kMの値は3.3である。
【0006】
R={(1.51−3.53)2+3.32}/(1.51+3.53)2+3.32
=0.41
【0007】
【特許文献1】特許第2590133号
【特許文献2】特開平1−168854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように界面における反射率Rが高いと、ガラス基板から入射して金属膜に到達し、金属膜において吸収されるべきレーザ光のエネルギーが、レーザ光源の元々のパワーに比べて半減するのみならず、強い反射光がレーザ光源に戻る結果、レーザ発振が不安定になったり、最悪の場合、レーザ光源の損傷を招く。上記の特許第2590133号に開示された反射防止膜にあっては、ガラス基板と金属膜との間に反射防止膜が設けられていないので、ガラス基板から入射して金属膜に到達する入射光の金属膜による反射を防止することはできない。また、特開平1−168854号公報に開示された反射防止膜にあっては、第2の低屈折率誘電体膜から入射した光が透明基板によって反射されることを防止することを意図しており、ガラス基板から入射して金属膜に到達する入射光の金属膜による反射を防止できるか否かに関しては、何ら言及されていない。
【0009】
従って、本発明の目的は、ガラス基板から入射して金属膜に到達する入射光(あるいはレーザ光)の金属膜による反射を確実に防止し得る反射防止膜、係る反射防止膜を備えた積層構造体における金属膜の加熱方法、並びに、係る金属膜の加熱方法の実施に適した加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の反射防止膜は、複素屈折率NM=nM−i・kMを有する金属膜と、屈折率NGを有するガラス基板との間に形成された反射防止膜であって、金属膜側から、
(A)屈折率N1を有する第1の誘電体層、
(B)第1の誘電体層上に形成された、屈折率N2を有する第2の誘電体層、及び、
(C)第2の誘電体層上に形成された、屈折率N3を有する第3の誘電体層、
から構成され、
1<nM,N1>NG,N2<NG,N3>NGを満足し、以て、ガラス基板から入射して金属膜に到達する入射光の金属膜による反射を防止することを特徴とする。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の金属膜の加熱方法は、
複素屈折率NM=nM−i・kMを有する金属膜と、反射防止膜と、屈折率NGを有するガラス基板が積層された積層構造体であって、反射防止膜は、金属膜側から、
(A)屈折率N1を有する第1の誘電体層、
(B)第1の誘電体層上に形成された、屈折率N2を有する第2の誘電体層、及び、
(C)第2の誘電体層上に形成された、屈折率N3を有する第3の誘電体層、
から構成され、
1<nM,N1>NG,N2<NG,N3>NGを満足する積層構造体における金属膜に、ガラス基板及び反射防止膜を介してレーザ光を照射することで、金属膜を加熱することを特徴とする。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の加熱装置は、
複素屈折率NM=nM−i・kMを有する金属膜と、反射防止膜と、屈折率NGを有するガラス基板が積層された積層構造体であって、反射防止膜は、金属膜側から、
(A)屈折率N1を有する第1の誘電体層、
(B)第1の誘電体層上に形成された、屈折率N2を有する第2の誘電体層、及び、
(C)第2の誘電体層上に形成された、屈折率N3を有する第3の誘電体層、
から構成され、
1<nM,N1>NG,N2<NG,N3>NGを満足する積層構造体における金属膜に、ガラス基板及び反射防止膜を介してレーザ光を照射することで、金属膜を加熱するための加熱装置であって、
(a)金属膜を下向きに、且つ、積層構造体との間に隙間を設けた状態で、積層構造体を載置する積層構造体載置ステージ、
(b)レーザ光源、及び、
(c)積層構造体載置ステージとレーザ光源とを相対的に移動させる移動装置、
を具備することを特徴とする。
【0013】
本発明の金属膜の加熱方法は、金属膜の表面に被着材料を載置あるいは形成しておき、レーザ光を照射することで金属膜を加熱して、この金属膜を一種の熱媒体として被着材料を加熱し、被着材料を蒸発、分解あるいは昇華させて、金属膜に対向して配置された被加工物上に被着材料を付着あるいは固着させるといった被加工物の加工方法に応用することができる。そして、このような被加工物の加工方法にあっては、積層構造体載置ステージ上に、金属膜と対向して被加工物を載置すればよい。
【0014】
本発明の反射防止膜、本発明の金属膜の加熱方法における反射防止膜、あるいは、本発明の加熱装置において使用される反射防止膜(以下、これらの反射防止膜を総称して、本発明等の反射防止膜と呼ぶ場合がある)においては、第1の誘電体層の有する屈折率N1は、以下の式(1)を満足することが好ましい。
1.51<N1<3.53 (1)
【0015】
あるいは又、本発明等の反射防止膜において、入射光(あるいはレーザ光)の波長をλとしたとき、金属膜及び第1の誘電体層の積層構造における反射率が最小となる最小膜厚を第1の誘電体層が有するときの光学アドミッタンスの値Y1と、ガラス基板、光学的厚さがλ/4である第3の誘電体層、及び、光学的厚さがλ/4である第2の誘電体層の積層構造から求められた光学アドミッタンスの値Y2とは、以下の式(2)を満足することが好ましい。「光学的厚さがλ/4」という表現の代わりに、「1/4波長」と表現をする場合もある。
|Y1−Y2|/α≦0.04 (2)
ここで、本発明等の反射防止膜において、光学アドミッタンスの値Y1及びY2は、以下の式(3)、式(4)で表すことができる。但し、式(2)及び式(3)中、α≡(nM2+kM2+N12)/(2nM)である。
1=α−{(nM−α)2+kM21/2 (3)
2=(NG×N22)/N32 (4)
【0016】
以上の好ましい構成、形態を含む本発明の反射防止膜、本発明の金属膜の加熱方法、あるいは、本発明の加熱装置(以下、これらを総称して、単に、本発明と呼ぶ場合がある)にあっては、本発明等の反射防止膜における金属膜はモリブデン(Mo)から成り、第2の誘電体層はMgF2から成り、
M=3.53±0.10
M=3.30±0.10
G=1.51±0.10
2=1.38±0.10
であり、
4.29≦N1+N3≦4.40
を満足することが望ましい。そして、この場合、(第1の誘電体層を構成する材料,第3の誘電体層を構成する材料)の組合せとして、(TiO2,SiOX)、(Nb25,Ta25)、(Nb25,ZrO2)、(CeO2,Ta25)、(CeO2,ZrO2)、(Ta25,Nb25)、(Ta25,CeO2)、(ZrO2,Nb25)、(ZrO2,CeO2)、又は、(HfO2,ZnS)を挙げることができる。
【0017】
あるいは又、本発明にあっては、本発明等の反射防止膜における金属膜はクロム(Cr)から成り、第2の誘電体層はMgF2から成り、
M=3.18±0.10
M=4.41±0.10
G=1.51±0.10
2=1.38±0.10
であり、
4.69≦N1+N3≦4.75
を満足することが望ましい。そして、この場合、(第1の誘電体層を構成する材料,第3の誘電体層を構成する材料)の組合せとして、(TiO2,ZnS)又は(ZnS,TiO2)を挙げることができる。
【0018】
あるいは又、本発明にあっては、本発明等の反射防止膜における金属膜はニッケル合金(より具体的には、ニッケル、クロム、モリブデン、ニオブ、鉄等から成るニッケル合金であり、インコネル(登録商標)として知られている合金である)から成り、第2の誘電体層はMgF2から成り、
M=2.94±0.10
M=2.92±0.10
G=1.51±0.10
2=1.38±0.10
であり、
4.14≦N1+N3≦4.22
を満足することが望ましい。そして、この場合、(第1の誘電体層を構成する材料,第3の誘電体層を構成する材料)の組合せとして、(TiO2,Y23)を挙げることができる。
【0019】
あるいは又、本発明にあっては、本発明等の反射防止膜における金属膜はモリブデン(Mo)から成り、第2の誘電体層はSiOXから成り、
M=3.53±0.10
M=3.30±0.10
G=1.51±0.10
2=1.46±0.10
であり、
4.46≦N1+N3≦4.52
を満足することが望ましい。そして、この場合、(第1の誘電体層を構成する材料,第3の誘電体層を構成する材料)の組合せとして、(Nb25,Nb25)、(Nb25,CeO2)、(CeO2,CeO2)、又は、(CeO2,Nb25)を挙げることができる。
【0020】
また、本発明にあっては、以下の式(5)を満足することが望ましい。
7.08≦nM+N1+N3≦8.28 (5)
【0021】
本発明にあっては、第3の誘電体層が形成された面とは反対側のガラス基板の面には、第2の反射防止膜が形成されていることが好ましく、これによって、ガラス基板に入射する入射光(あるいはレーザ光)がガラス基板の表面で反射されることを確実に防止することができる。更には、第2の反射防止膜、ガラス基板、第3の誘電体層、第2の誘電体層、第1の誘電体層及び金属膜の積層構造体におけるガラス基板の曲率半径は、1.0×105m以上であることが望ましく、このような規定を設けることで、積層構造体の反りに起因して金属膜の加熱方法の実行が困難になるといった現象の発生を防止することができる。
【0022】
本発明の金属膜の加熱方法あるいは本発明の加熱装置において、レーザ光として、波長808nm、885nm、915nm、976nm、980nmのレーザ光を例示することができる。また、レーザ光源として係るレーザ光を出射し得るレーザ光源、例えば、連続出力数十ワットの超高出力半導体レーザ(例えば、InAlGaAs半導体レーザ)を用いればよい。本発明の加熱装置においては、積層構造体載置ステージとレーザ光源とを相対的に移動させるが、レーザ光源を固定して積層構造体載置ステージを移動させてもよいし、積層構造体載置ステージを固定してレーザ光源を移動させてもよいし、積層構造体載置ステージ及びレーザ光源を移動させてもよい。積層構造体載置ステージを移動させる場合、積層構造体載置ステージとして、例えば、半導体装置の製造において使用されている周知のX−Yステージを用いればよく、この場合、移動装置はX−Yステージに組み込まれている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の反射防止膜においては、金属膜の加熱方法、及び、加熱装置においては、ガラス基板と金属膜との間に3層構成の反射防止膜を形成することで、ガラス基板を通して金属膜を加熱する際、ガラス基板の屈折率と金属膜の屈折率との差異に起因するガラス基板と金属膜との界面における反射率を低減することができる。その結果、入射光(あるいはレーザ光)の金属膜内における吸収効率を向上させることができるだけでなく、入射光(あるいはレーザ光)の戻り光を低減することができ、光源の安定動作を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【実施例1】
【0025】
実施例1は、本発明の反射防止膜、金属膜の加熱方法、及び、加熱装置に関する。実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例5における反射防止膜20は、その模式的な一部断面図を図1の(A)及び(B)に示すように、複素屈折率NM=nM−i・kMを有する金属膜30と、屈折率NGを有するガラス基板11との間に形成されており、金属膜側から、
(A)屈折率N1を有する第1の誘電体層21、
(B)第1の誘電体層21上に形成された、屈折率N2を有する第2の誘電体層22、及び、
(C)第2の誘電体層22上に形成された、屈折率N3を有する第3の誘電体層23、
から構成されている。
【0026】
そして、N1<nM,N1>NG,N2<NG,N3>NGを満足し、以て、ガラス基板11から入射して金属膜30に到達する入射光の金属膜30による反射を防止する。
【0027】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例5において、ガラス基板11として、コーニング社の液晶表示装置用のガラス基板EAGLE2000(登録商標)を用いた。尚、このガラス基板11の屈折率NGは、波長589nmにおいて、1.5068であり、熱膨張係数は31.8×10-7(0゜C〜300゜C)、ヤング率Eは6.95×1010Pa(7.09×103kgw/mm2)である。
【0028】
また、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例5において、入射光(あるいはレーザ光)として、波長λ=808nmのレーザ光を用い、レーザ光源として係るレーザ光を出射し得る、連続出力数十ワットの超高出力半導体レーザ(InAlGaAs半導体レーザ)を用いた。
【0029】
実施例1にあっては、金属膜30をモリブデン(Mo)から構成した。尚、波長823nmにおけるモリブデンから成る金属膜30の複素屈折率NM=nM−i・kMにおいて、nMの値は3.53であり、kMの値は3.3である。即ち、
M=3.53−i・3.3
である。また、熱膨張係数は、37×10-7〜53×10-7(20゜C〜100゜C)である。
【0030】
更には、第1の誘電体層21を構成する材料を、二酸化チタン(TiO2)とした。ここで、TiO2から成る第1の誘電体層21の屈折率N1の値は2.4であり、以下の式(1)を満足している。後述する実施例2〜実施例5においても同様である。また、実施例1においては、第2の誘電体層22を、膜厚1/4波長、屈折率N2=1.38のフッ化マグネシウム(MgF2)から構成し、第3の誘電体層23を、膜厚1/4波長、屈折率N3=1.90の酸化珪素(SiOX)から構成した。
【0031】
1.51<N1<3.53 (1)
【0032】
一般に、複素屈折率NM=nM−i・kMを有する金属膜30上に、屈折率N1を有する第1の誘電体層21を成膜した積層構造における光学アドミッタンス(等価アドミッタンスとも呼ばれる)の軌跡は、複素平面上で中心O(x0,y0)を中心とし、始点A(nM,−kM)を通過する円である。ここで、
0=(nM2+kM2+N12)/(2×nM
0=0
であり、この光学アドミッタンスの軌跡である円(光学アドミッタンス軌跡円と呼ぶ)は、以下の式(6)で表現することができる。
【0033】
(x−x02+y2=x02−N12 (6)
【0034】
従って、モリブデンから成る金属膜30上に任意の膜厚のTiO2から成る第1の誘電体層21を成膜した積層構造における光学アドミッタンス軌跡円の中心O(x0,y0)、始点A(xA,yA)、半径r、方程式は、以下のとおりである。
【0035】
0=(3.532+3.32+2.42)/(2×3.53)
= 4.12
0= 0
A= 3.53
A=−3.3
r = 3.35
(x−4.12)2+y2=3.352
【0036】
そして、この光学アドミッタンス軌跡円は、実数軸(x軸)と点B(0.77,0)で交わる。ここで、光学アドミッタンスの値Y1が実数となる点Bが最小反射率を与える。尚、金属膜30及び第1の誘電体層21の積層構造における反射率が最小となる最小膜厚を第1の誘電体層21が有するときの光学アドミッタンスの値Y1(以下、このような光学アドミッタンスの値Y1を、単に、光学アドミッタンスの値Y1と呼ぶ場合がある)は、以下の式(3)から求めることができる。但し、α≡x0≡(nM2+kM2+N12)/(2×nM)である。
【0037】
1=α−{(nM−α)2+kM21/2 (3)
=0.77
【0038】
ところで、空気の光学アドミッタンスの値は1.0であるから、モリブデンから成る金属膜30上に所定の膜厚のTiO2から成る第1の誘電体層21を成膜した積層構造における点Bでの光学アドミッタンスの値は、空気の光学アドミッタンスの値に近いことを意味している。また二酸化チタンより高い屈折率を有する誘電体材料があれば、更に一層、空気の光学アドミッタンスの値に近い光学アドミッタンスの値が得られることが判る。
【0039】
一般に、複素屈折率NM=nM−i・kMを有する金属膜30上に、屈折率N1を有する第1の誘電体層21を成膜した積層構造における反射率が最小となるときの第1の誘電体層21の最小膜厚dmin(単位:nm)は、以下のように計算することができる。即ち、位相厚さの最小値をδmin(単位:rad)とすると、
tan(2δmin)={2×(−kM)×N1}/(nM2+kM2−N12) (7−1)
δ’min=(π+2δmin) (rad)
min=(δ’min×λ)/(2π×N1) (7−2)
【0040】
式(7−1)及び式(7−2)から、実施例1における最小反射率を与えるTiO2から成る第1の誘電体層21の最小膜厚dminは、65nmとなる。
【0041】
一方、屈折率1.51のガラス基板11上に、屈折率N3=1.90、膜厚1/4波長のSiOXから成る第3の誘電体層23を形成し、更に、第3の誘電体層23の上に、屈折率N2=1.38、膜厚1/4波長のMgF2から成る第2の誘電体層22を形成したときの光学アドミッタンスの値Y2、即ち、ガラス基板11、光学的厚さがλ/4である第3の誘電体層23、及び、光学的厚さがλ/4である第2の誘電体層22の積層構造から求められた光学アドミッタンスの値Y2は、以下の式(4)で求めることができる。
2=(NG×N22)/N32 (4)
=0.80
【0042】
この光学アドミッタンスの値Y2は、光学アドミッタンスの値Y1と略一致している。即ち、以下の式(2)を満足している。後述する実施例2〜実施例5においても同様である。よって、第2の誘電体層22の屈折率(N2)を1.38、膜厚を1/4波長とし、第3の誘電体層23の屈折率(N3)を1.90、膜厚を1/4波長とすれば、金属膜30を下地とする3層構造の反射防止膜における光学アドミッタンスの値は、ガラス基板11の光学アドミッタンスの値に近い値となり、金属膜30とガラス基板11の界面における反射率を最小化することができる。その結果、ガラス基板11を通して金属膜30を加熱する際、ガラス基板11の屈折率と金属膜30の屈折率との差異に起因するガラス基板11と金属膜30との界面における反射率を低減することができ、入射光(あるいはレーザ光)の金属膜30内における吸収効率を向上させることができるだけでなく、入射光(あるいはレーザ光)の戻り光を低減することができ、光源の安定動作を図ることができる。
【0043】
|Y1−Y2|/α≦0.04 (2)
【0044】
ここで、実施例1にあっては、
M=3.53±0.10
M=3.30±0.10
G=1.51±0.10
2=1.38±0.10
であり、
4.29≦N1+N3≦4.40
を満足している。また、
7.08≦nM+N1+N3≦ 8.28
を満足している。
【0045】
以上の結果を、表3に実施例1−1として纏めた。また、実施例1において、ガラス基板11、モリブデンから成る金属膜30、弗化マグネシウム(MgF2)から成る第2の誘電体層22の諸元を固定しておき、第1の誘電体層21の屈折率N1、及び、第3の誘電体層23の屈折率N3を変更した実施例を、実施例1−2、実施例1−3、実施例1−4として表3及び表4に纏めた。
【0046】
即ち、実施例1−2においては、第1の誘電体層21を、膜厚1/4波長、屈折率N12.2の五酸化二オブ(Nb25)あるいは酸化セリウム(Ce02)から構成した。一方、第3の誘電体層23を、膜厚1/4波長、屈折率N32.1の五酸化タンタル(Ta25)あるいは二酸化ジルコニウム(ZrO2)から構成した。
【0047】
従って、モリブデンから成る金属膜30上に任意の膜厚の第1の誘電体層21を成膜した積層構造における光学アドミッタンス軌跡円の中心O(x0,y0)、始点A(xA,yA)、半径r、方程式は、以下のとおりである。
【0048】
0=(3.532+3.32+2.22)/(2×3.53)
= 3.99
0= 0
A= 3.53
A=−3.3
r = 3.33
(x−3.99)2+y2=3.332
【0049】
そして、この光学アドミッタンス軌跡円は、実数軸(x軸)と点B(0.66,0)で交わる。ここで、点Bが最小反射率を与える。式(3)から求められた光学アドミッタンスの値Y1は、0.66である。また、最小反射率を与える第1の誘電体層21の最小膜厚dminを式(7−1)及び式(7−2)から計算すると、72nmとなる。
【0050】
一方、屈折率1.51のガラス基板11上に、屈折率N3=2.10、膜厚1/4波長のTa25あるいはZrO2から成る第3の誘電体層23を形成し、更に、この第3の誘電体層23上に、屈折率N2=1.38、膜厚1/4波長のMgF2から成る第2の誘電体層22を形成したときの光学アドミッタンスの値Y2、即ち、ガラス基板11、光学的厚さがλ/4である第3の誘電体層23、及び、光学的厚さがλ/4である第2の誘電体層22の積層構造から求められた光学アドミッタンスの値Y2は、式(4)から求めることができ、Y2=0.65である。
【0051】
この光学アドミッタンスの値Y2は、光学アドミッタンスの値Y1と略一致している。よって、第2の誘電体層22の屈折率を1.38、膜厚を1/4波長とし、第3の誘電体層23の屈折率を2.10、膜厚を1/4波長とすれば、金属膜を下地とする3層構造の反射防止膜における光学アドミッタンスの値は、ガラス基板11の光学アドミッタンスの値に近い値となり、金属膜30とガラス基板11の界面における反射率を最小化することができる。
【0052】
また、実施例1−3においては、第1の誘電体層21を、膜厚1/4波長、屈折率N12.1の五酸化タンタル(Ta25)あるいは二酸化ジルコニウム(ZrO2)から構成した。一方、第3の誘電体層23を、膜厚1/4波長、屈折率N32.2の五酸化二オブ(Nb25)あるいは酸化セリウム(Ce02)から構成した。
【0053】
従って、モリブデンから成る金属膜30上に任意の膜厚の第1の誘電体層21を成膜した積層構造における光学アドミッタンス軌跡円の中心O(x0,y0)、始点A(xA,yA)、半径r、方程式は、以下のとおりである。
【0054】
0=(3.532+3.32+2.12)/(2×3.53)
= 3.93
0= 0
A= 3.53
A=−3.3
r = 3.32
(x−3.93)2+y2=3.322
【0055】
そして、この光学アドミッタンス軌跡円は、実数軸(x軸)と点B(0.61,0)で交わる。ここで、点Bが最小反射率を与える。式(3)から求められた光学アドミッタンスの値Y1は、0.61である。また、最小反射率を与える第1の誘電体層21の最小膜厚dminを式(7−1)及び式(7−2)から計算すると、77nmとなる。
【0056】
一方、屈折率1.51のガラス基板11上に、屈折率N3=2.20、膜厚1/4波長のNb25あるいはCe02から成る第3の誘電体層23を形成し、更に、この第3の誘電体層23上に、屈折率N2=1.38、膜厚1/4波長のMgF2から成る第2の誘電体層22を形成したときの光学アドミッタンスの値Y2、即ち、ガラス基板11、光学的厚さがλ/4である第3の誘電体層23、及び、光学的厚さがλ/4である第2の誘電体層22の積層構造から求められた光学アドミッタンスの値Y2は、式(4)から求めることができ、Y2=0.59である。
【0057】
この光学アドミッタンスの値Y2は、光学アドミッタンスの値Y1と略一致している。よって、第2の誘電体層22の屈折率を1.38、膜厚を1/4波長とし、第3の誘電体層23の屈折率を2.20、膜厚を1/4波長とすれば、金属膜を下地とする3層構造の反射防止膜における光学アドミッタンスの値は、ガラス基板11の光学アドミッタンスの値に近い値となり、金属膜30とガラス基板11の界面における反射率を最小化することができる。
【0058】
更には、実施例1−4においては、第1の誘電体層21を、膜厚1/4波長、屈折率N11.98の二酸化ハフニウム(HfO2)から構成した。一方、第3の誘電体層23を、膜厚1/4波長、屈折率N32.3である硫化亜鉛(ZnS)から構成した。
【0059】
従って、モリブデンから成る金属膜30上に任意の膜厚の第1の誘電体層21を成膜した積層構造における光学アドミッタンス軌跡円の中心O(x0,y0)、始点A(xA,yA)、半径r、方程式は、以下のとおりである。
【0060】
0=(3.532+3.32+1.982)/(2×3.53)
= 3.86
0= 0
A= 3.53
A=−3.3
r = 3.32
(x−3.86)2+y2=3.322
【0061】
そして、この光学アドミッタンス軌跡円は、実数軸(x軸)と点B(0.55,0)で交わる。ここで、点Bが最小反射率を与える。式(3)から求められた光学アドミッタンスの値Y1は、0.55である。また、最小反射率を与える第1の誘電体層21の最小膜厚dminを式(7−1)及び式(7−2)から計算すると、83nmとなる。
【0062】
一方、屈折率1.51のガラス基板11上に、屈折率N3=2.30、膜厚1/4波長のZnSから成る第3の誘電体層23を形成し、更に、この第3の誘電体層23上に、屈折率N2=1.38、膜厚1/4波長のMgF2から成る第2の誘電体層22を形成したときの光学アドミッタンスの値Y2、即ち、ガラス基板11、光学的厚さがλ/4である第3の誘電体層23、及び、光学的厚さがλ/4である第2の誘電体層22の積層構造から求められた光学アドミッタンスの値Y2は、式(4)から求めることができ、Y2=0.54である。
【0063】
この光学アドミッタンスの値Y2は、光学アドミッタンスの値Y1と略一致している。よって、第2の誘電体層22の屈折率を1.38、膜厚を1/4波長とし、第3の誘電体層23の屈折率を2.30、膜厚を1/4波長とすれば、金属膜を下地とする3層構造の反射防止膜における光学アドミッタンスの値は、ガラス基板11の光学アドミッタンスの値に近い値となり、金属膜30とガラス基板11の界面における反射率を最小化することができる。
【0064】
実施例1における加熱装置60の概念図を図2に示す。この加熱装置60は、積層構造体10における金属膜30に、ガラス基板11及び反射防止膜20を介してレーザ光を照射することで、金属膜30を加熱するための加熱装置である。尚、上述したとおり、積層構造体10は、複素屈折率NM=nM−i・kMを有する金属膜30と、反射防止膜20と、屈折率NGを有するガラス基板11が積層された積層構造体である。
【0065】
そして、この加熱装置60は、金属膜30を下向きに、且つ、積層構造体10との間に隙間を設けた状態で、積層構造体10を載置する積層構造体載置ステージ61、レーザ光源63、及び、積層構造体載置ステージ61とレーザ光源63とを相対的に移動させる移動装置を具備する。尚、前述したとおり、レーザ光(入射光)として、波長λ=808nmのレーザ光を用い、レーザ光源63として係るレーザ光を出射し得る、連続出力数十ワットの超高出力半導体レーザ(InAlGaAs半導体レーザ)を用いた。また、実施例1の加熱装置60においては、レーザ光源63を固定して積層構造体載置ステージ61を移動させるが、この積層構造体載置ステージ61は、半導体装置の製造において使用されている周知のX−Yステージから構成され、移動装置はX−Yステージに組み込まれている。積層構造体載置ステージ61の頂面には、真空吸着装置(図示せず)が組み込まれた積層構造体載置部62が設けられている。積層構造体載置部62は額縁状の平面形状を有し、積層構造体載置部62の頂面において、積層構造体10を真空吸着する。また、積層構造体載置部62の内側において露出した積層構造体載置ステージ61の頂面の部分にも真空吸着装置(図示せず)が設けられている。
【0066】
そして、本発明の金属膜の加熱方法においては、積層構造体10における金属膜30に、ガラス基板11及び反射防止膜20を介してレーザ光を照射することで、金属膜30を加熱する。具体的には、板状の被加工物50を、積層構造体載置ステージ61の頂面において図示しないアライメント装置によって位置合わせした後、図示しない真空吸着装置によって被加工物50を積層構造体載置ステージ61上に固定する。また、表面に被着材料51が載置あるいは形成された金属膜30を備えた積層構造体10を、金属膜30を積層構造体載置ステージ61の頂面と対向した状態で積層構造体載置部62上に載置し、図示しないアライメント装置によって積層構造体10を位置合わせした後、図示しない真空吸着装置によって積層構造体10を積層構造体載置部62上に固定する。そして、レーザ光源63を作動させてレーザ光を照射することで、ガラス基板11及び反射防止膜20を介して金属膜30を加熱して、この金属膜30を一種の熱媒体として被着材料51を加熱し、被着材料51を蒸発、分解あるいは昇華させて、金属膜30に対向して配置された被加工物50上に被着材料51を付着あるいは固着させる。このような加工方法によれば、所謂マスクレスで、被加工物50の所望の微小領域上に被着材料51を付着あるいは固着させることができる。尚、このような加工方法にあっては、被着材料51が蒸発あるいは昇華する温度よりも、金属膜30の溶融温度が高いことが要求される。積層構造体10や被加工物50が置かれた加熱装置60の内部の雰囲気は、被着材料51等に依存して、大気雰囲気であってもよいし、真空雰囲気であってもよいし、不活性ガス雰囲気であってもよい。
【0067】
尚、以上に説明した実施例1の加熱装置、金属膜の加熱方法、加工方法を、以下に説明する実施例2〜実施例5においても適用することができる。
【実施例2】
【0068】
実施例2は実施例1の変形である。実施例2にあっては、金属膜30をクロム(Cr)から構成し、第2の誘電体層22を、膜厚1/4波長、屈折率N2=1.38のMgF2から構成した。尚、波長808nmにおけるクロムから成る金属膜30の複素屈折率NM=nM−i・kMにおいて、nMの値は3.18であり、kMの値は4.41である。即ち、
M=3.18−i・4.41
である。ここで、
M=3.18±0.10
M=4.41±0.10
G=1.51±0.10
2=1.38±0.10
であり、
4.69≦N1+N3≦4.75
を満足している。また、
7.08≦nM+N1+N3≦8.28
を満足している。
【0069】
更には、実施例2−1においては、第1の誘電体層21を、膜厚1/4波長、屈折率N12.4の二酸化チタン(TiO2,)から構成した。一方、第3の誘電体層23を、膜厚1/4波長、屈折率N32.3である硫化亜鉛(ZnS)から構成した。
【0070】
従って、クロムから成る金属膜30上に任意の膜厚の第1の誘電体層21を成膜した積層構造における光学アドミッタンス軌跡円の中心O(x0,y0)、始点A(xA,yA)、半径r、方程式は、以下のとおりである。
【0071】
0=(3.182+4.412+2.42)/(2×3.18)
= 5.55
0= 0
A= 3.18
A=−4.41
r = 5.01
(x−5.55)2+y2=5.012
【0072】
そして、この光学アドミッタンス軌跡円は、実数軸(x軸)と点B(0.55,0)で交わる。ここで、点Bが最小反射率を与える。式(3)から求められた光学アドミッタンスの値Y1は、0.55である。また、最小反射率を与える第1の誘電体層21の最小膜厚dminを式(7−1)及び式(7−2)から計算すると、65nmとなる。
【0073】
一方、屈折率1.51のガラス基板11上に、屈折率N3=2.30、膜厚1/4波長のZnSから成る第3の誘電体層23を形成し、更に、この第3の誘電体層23上に、屈折率N2=1.38、膜厚1/4波長のMgF2から成る第2の誘電体層22を形成したときの光学アドミッタンスの値Y2、即ち、ガラス基板11、光学的厚さがλ/4である第3の誘電体層23、及び、光学的厚さがλ/4である第2の誘電体層22の積層構造から求められた光学アドミッタンスの値Y2は、式(4)から求めることができ、Y2=0.54である。
【0074】
この光学アドミッタンスの値Y2は、光学アドミッタンスの値Y1と略一致している。よって、第2の誘電体層22の屈折率を1.38、膜厚を1/4波長とし、第3の誘電体層23の屈折率を2.30、膜厚を1/4波長とすれば、金属膜を下地とする3層構造の反射防止膜における光学アドミッタンスの値は、ガラス基板11の光学アドミッタンスの値に近い値となり、金属膜30とガラス基板11の界面における反射率を最小化することができる。
【0075】
また、実施例2−2においては、第1の誘電体層21を、膜厚1/4波長、屈折率N12.3の硫化亜鉛(ZnS)から構成した。一方、第3の誘電体層23を、膜厚1/4波長、屈折率N32.4である二酸化チタン(TiO2)から構成した。
【0076】
従って、クロムから成る金属膜30上に任意の膜厚の第1の誘電体層21を成膜した積層構造における光学アドミッタンス軌跡円の中心O(x0,y0)、始点A(xA,yA)、半径r、方程式は、以下のとおりである。
【0077】
0=(3.182+4.412+2.32)/(2×3.18)
= 5.48
0= 0
A= 3.18
A=−4.41
r = 4.97
(x−5.48)2+y2=4.972
【0078】
そして、この光学アドミッタンス軌跡円は、実数軸(x軸)と点B(0.51,0)で交わる。ここで、点Bが最小反射率を与える。式(3)から求められた光学アドミッタンスの値Y1は、0.51である。また、最小反射率を与える第1の誘電体層21の最小膜厚dminを式(7−1)及び式(7−2)から計算すると、68nmとなる。
【0079】
一方、屈折率1.51のガラス基板11上に、屈折率N3=2.40、膜厚1/4波長のTiO2から成る第3の誘電体層23を形成し、更に、この第3の誘電体層23上に、屈折率N2=1.38、膜厚1/4波長のMgF2から成る第2の誘電体層22を形成したときの光学アドミッタンスの値Y2、即ち、ガラス基板11、光学的厚さがλ/4である第3の誘電体層23、及び、光学的厚さがλ/4である第2の誘電体層22の積層構造から求められた光学アドミッタンスの値Y2は、式(4)から求めることができ、Y2=0.50である。
【0080】
この光学アドミッタンスの値Y2は、光学アドミッタンスの値Y1と略一致している。よって、第2の誘電体層22の屈折率を1.38、膜厚を1/4波長とし、第3の誘電体層23の屈折率を2.40、膜厚を1/4波長とすれば、金属膜を下地とする3層構造の反射防止膜における光学アドミッタンスの値は、ガラス基板11の光学アドミッタンスの値に近い値となり、金属膜30とガラス基板11の界面における反射率を最小化することができる。
【0081】
以上の結果を、表5に纏めた。
【実施例3】
【0082】
実施例3も実施例1の変形である。実施例3にあっては、金属膜30をニッケル合金(より具体的には、ニッケル、クロム、モリブデン、ニオブ、鉄等から成るニッケル合金であり、インコネル(登録商標)として知られている合金である)から構成し、第2の誘電体層を、膜厚1/4波長、屈折率N2=1.38のMgF2から構成した。尚、波長808nmにおけるニッケル合金から成る金属膜30の複素屈折率NM=nM−i・kMにおいて、nMの値は2.94であり、kMの値は2.92である。即ち、
M=2.94−i・2.92
である。ここで、
M=2.94±0.10
M=2.92±0.10
G=1.51±0.10
2=1.38±0.10
であり、
4.14≦N1+N3≦4.22
を満足している。また、
7.08≦nM+N1+N3≦8.28
を満足している。
【0083】
ここで、実施例3においては、第1の誘電体層21を、膜厚1/4波長、屈折率N12.4の二酸化チタン(TiO2)から構成した。一方、第3の誘電体層23を、膜厚1/4波長、屈折率N31.85であるY23から構成した。
【0084】
従って、ニッケル合金から成る金属膜30上に任意の膜厚の第1の誘電体層21を成膜した積層構造における光学アドミッタンス軌跡円の中心O(x0,y0)、始点A(xA,yA)、半径r、方程式は、以下のとおりである。
【0085】
0=(2.942+2.922+2.42)/(2×2.94)
= 3.90
0= 0
A= 2.94
A=−2.92
r = 3.07
(x−3.90)2+y2=3.072
【0086】
そして、この光学アドミッタンス軌跡円は、実数軸(x軸)と点B(0.83,0)で交わる。ここで、点Bが最小反射率を与える。式(3)から求められた光学アドミッタンスの値Y1は、0.83である。また、最小反射率を与える第1の誘電体層21の最小膜厚dminを式(7−1)及び式(7−2)から計算すると、60nmとなる。
【0087】
一方、屈折率1.51のガラス基板11上に、屈折率N3=1.85、膜厚1/4波長のY23から成る第3の誘電体層23を形成し、更に、この第3の誘電体層23上に、屈折率N2=1.38、膜厚1/4波長のMgF2から成る第2の誘電体層22を形成したときの光学アドミッタンスの値Y2、即ち、ガラス基板11、光学的厚さがλ/4である第3の誘電体層23、及び、光学的厚さがλ/4である第2の誘電体層22の積層構造から求められた光学アドミッタンスの値Y2は、式(4)から求めることができ、Y2=0.84である。
【0088】
この光学アドミッタンスの値Y2は、光学アドミッタンスの値Y1と略一致している。よって、第2の誘電体層22の屈折率を1.38、膜厚を1/4波長とし、第3の誘電体層23の屈折率を1.85、膜厚を1/4波長とすれば、金属膜を下地とする3層構造の反射防止膜における光学アドミッタンスの値は、ガラス基板11の光学アドミッタンスの値に近い値となり、金属膜30とガラス基板11の界面における反射率を最小化することができる。
【0089】
以上の結果を、表6に纏めた。
【実施例4】
【0090】
実施例4も実施例1の変形である。実施例4にあっては、実施例1と同様に、金属膜30をモリブデン(Mo)から構成し、第2の誘電体層22をSiOXから構成した。尚、
M=3.53±0.10
M=3.30±0.10
G=1.51±0.10
2=1.46±0.10
であり、
4.46≦N1+N3≦4.52
を満足している。また、
7.08≦nM+N1+N3≦8.28
を満足している。
【0091】
一方、実施例4においては、第1の誘電体層21を、膜厚1/4波長の五酸化二オブ(Nb25)あるいは酸化セリウム(Ce02)から構成した。また、膜厚1/4波長の第2の誘電体層22をSiOXから構成し、膜厚1/4波長の第3の誘電体層23を二酸化チタン(TiO2)から構成した。ここで、N1=2.2、N2=1.46、N3=2.4である。
【0092】
従って、モリブデンから成る金属膜30上に任意の膜厚の第1の誘電体層21を成膜した積層構造における光学アドミッタンス軌跡円の中心O(x0,y0)、始点A(xA,yA)、半径r、方程式は、以下のとおりである。
【0093】
0=(3.532+3.32+2.22)/(2×3.53)
= 3.99
0= 0
A= 3.53
A=−3.3
r = 3.33
(x−3.99)2+y2=3.332
【0094】
そして、この光学アドミッタンス軌跡円は、実数軸(x軸)と点B(0.66,0)で交わる。ここで、点Bが最小反射率を与える。式(3)から求められた光学アドミッタンスの値Y1は、0.66である。また、最小反射率を与える第1の誘電体層21の最小膜厚dminを式(7−1)及び式(7−2)から計算すると、72nmとなる。
【0095】
一方、屈折率1.51のガラス基板11上に、屈折率N3=2.2、膜厚1/4波長のNb25あるいはCe02から成る第3の誘電体層23を形成し、更に、この第3の誘電体層23上に、屈折率N2=1.46、膜厚1/4波長のSiOXから成る第2の誘電体層22を形成したときの光学アドミッタンスの値Y2、即ち、ガラス基板11、光学的厚さがλ/4である第3の誘電体層23、及び、光学的厚さがλ/4である第2の誘電体層22の積層構造から求められた光学アドミッタンスの値Y2は、式(4)から求めることができ、Y2=0.67である。
【0096】
この光学アドミッタンスの値Y2は、光学アドミッタンスの値Y1と略一致している。よって、第2の誘電体層22の屈折率を1.46、膜厚を1/4波長とし、第3の誘電体層23の屈折率を2.2、膜厚を1/4波長とすれば、金属膜を下地とする3層構造の反射防止膜における光学アドミッタンスの値は、ガラス基板11の光学アドミッタンスの値に近い値となり、金属膜30とガラス基板11の界面における反射率を最小化することができる。
【0097】
以上の結果を、表6に纏めた。
【0098】

【0099】

【0100】

【0101】

【実施例5】
【0102】
実施例5も実施例1の変形である。実施例5にあっても、実施例1と同様に、金属膜30をモリブデン(Mo)から構成し、第1の誘電体層21、第2の誘電体層22、第3の誘電体層23を、実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3、実施例1−4、実施例2−1、実施例2−2と同様とした。
【0103】
実施例1において説明した構成にあっては、ガラス基板11に入射する入射光(あるいはレーザ光)は、ガラス基板11の表面で約4%、反射される。実施例5にあっては、その模式的な一部断面図を図1の(B)に示すように、更に、第3の誘電体層23が形成された面とは反対側のガラス基板11の面には、第2の反射防止膜40が形成されている。第2の反射防止膜40は、より具体的には、ガラス基板側から、下層41及び上層42の2層構造を有する。ここで、上層42は、屈折率1.38のMgF2から成り、その光学的厚さはλ/4(=146nm)である。また、下層41は、屈折率1.7のSiOXYから成り、その光学的厚さはλ/4(=119nm)である。
【0104】
このように第2の反射防止膜40を形成することよって、ガラス基板11に入射する入射光(あるいはレーザ光)のガラス基板11の表面における反射を低減できるだけでなく、ガラス基板11が両面を被覆されることによって膜応力の釣り合いがとれる結果、ガラス基板11の片面のみを被覆した場合に発生し得る膜応力に起因したガラス基板11の湾曲の低減を図ることができる。一般に、金属膜の膜応力は誘電体層の膜応力に比べて大きい。湾曲したガラス基板11の曲率半径を、以下の式(8−1)及び式(8−2)で示されるストーニー(Stoney)の公式で見積もると、図3に示すとおりとなる。尚、図3の横軸は、モリブデンから成る厚さ100nmの金属膜の応力(σ)の対数値であり、図3の縦軸はガラス基板11の曲率半径(R)の対数値である。また、図3中、「A」はガラス基板11の厚さが5mmの場合を示し、「B」はガラス基板11の厚さが0.7mmの場合を示す。スパッタリング法に基づき成膜されたモリブデンから成る金属膜30の応力は、成膜条件にも依存するが、−5×108Pa〜1×109Paの範囲にある。応力σの値を1×109Pa(1GPa)と仮定すると、厚さ0.7mmのガラス基板11の場合(図3の「B」参照)、曲率半径Rは概ね100mとなる。このような大きな曲率半径であっても、ガラス基板11の寸法が大きいと、ガラス基板11の中央部における変形量はミリメートルのオーダーとなる。従って、金属膜30の膜応力が大きい場合、ガラス基板11を厚くする必要がある。ここで、第2の反射防止膜40、ガラス基板11、第3の誘電体層23、第2の誘電体層22、第1の誘電体層21及び金属膜30の積層構造体におけるガラス基板11の曲率半径は、1.0×105m以上であることが望ましい。
【0105】
σ ={(Ms×hs2)/(6×hf)}×K (8−1)
s=E/(1−γ) (8−2)
【0106】
ここで、
s:基板の厚さ
f:膜厚
s:二軸弾性率
E :基板のヤング率
γ :ポアソン比
【0107】
尚、ガラス基板11の一方の側には金属膜30を含めて4層が形成され、他方の側には2層が形成されているが、更に厳密に膜応力の釣り合いを保つために、ガラス基板11の他方の側に更に2層の薄膜(ダミー膜)を成膜してもよい。この場合には、光学的厚さがλ/2の整数倍のダミー膜を、例えば上層上に形成することが好ましい。
【0108】
実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3、実施例1−4、実施例2−1及び実施例2−2の積層構造体10を構成するガラス基板11の他方の側に第2の反射防止膜40を形成した構造における反射率(p偏光成分の反射率Rp及びs偏光成分の反射率Rs)のシミュレーション結果を、それぞれ、図4の(A)、図4の(B)、図5の(A)、図5の(B)、図6の(A)及び図6の(B)に示す。これらの6つの実施例のいづれにあっても、界面反射率は1%以下である。
【0109】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ガラス基板、3層構造の反射防止膜、金属膜を構成する材料は例示であり、適宜、変更することができる。
【0110】
屈折率NG=1.51を有するガラス基板11、屈折率N3=2.4、膜厚1/4波長のTiO2から成る第3の誘電体層23、及び、屈折率N2=1.38、膜厚1/4波長のMgF2から成る第2の誘電体層22の積層構造(積層構造Aと呼ぶ)から求められた光学アドミッタンスの値Y2の値は0.5である。それ故、「0.5」が光学アドミッタンスの値Y2の下限値である場合を想定すると、この場合には、光学アドミッタンスの値Y1の下限値も0.5となる。従って、光学アドミッタンス軌跡円は、以下の式(9−1)で表現することができ、x0=0.5,y0=0を代入して式(9−1)を変形すると式(9−2)を得ることができる。
【0111】
02+y02−x0{(nM2+kM2+N12)/nM}+N12=0 (9−1)
(nM−6.01)2+kM2=5.512 (9−2)
【0112】
ここで、金属膜を構成する材料の複素屈折率の値nM,kMを式(9−2)の左辺に代入したときの値(計算値Aと呼ぶ)と、5.512とを比較した結果を、以下の表7に示す。このように、光学アドミッタンスの値Y2の下限値が0.5であると想定した場合には、「計算値A−5.512」の値が負となる金属材料を選択することで、光学アドミッタンスの値Y1の値を光学アドミッタンスの値Y2と一致させることが可能となる。
【0113】

【0114】
第1の誘電体層21、第2の誘電体層22、第3の誘電体層23、金属膜30の成膜方法は、これらの層あるいは膜を構成する材料、所望とする屈折率等を考慮して、適宜、決定すればよい。成膜方法として、例えば、メッキ法、溶液沈殿法、陽極酸化法、ゾル−ゲル法、ラングミュア法(LB法)といった各種の湿式成膜法;常圧CVD法や減圧CVD、熱CVD法、プラズマCVD(PECVD)法、レーザCVD法、光CVD法、ECR−CVD法、MOCVD法を含む各種の化学的気相成長法(CVD法);熱蒸発蒸着法、プラズマスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、イオンプレーティング法、IVD法(イオン・ベーパー・デポジション法)を含む各種の物理的気相成長法(PVD法)を挙げることができる。ここで、熱蒸発蒸着法として、抵抗加熱法、電子ビーム加熱法、レーザ加熱法、アーク放電法、高周波加熱法、フラッシュ蒸着法、分子線エピタキシャル(MBE)成長法を挙げることができる。また、プラズマスパッタリング法として、平板型2極スパッタリング法、直流スパッタリング法、高周波スパッタリング法、ダブルカソードスパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法を挙げることができる。更には、イオンプレーティング法として、DC(Direct Current)法、RF法、多陰極法、活性化反応法、HCD(Hollow Cathode Discharge)法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法を挙げることができる。また、第1の誘電体層21、第2の誘電体層22、第3の誘電体層23、金属膜30の屈折率の測定方法として、例えば、分光エリプソメーターを利用した偏光解析法を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1の(A)及び(B)は、実施例1及び実施例5の積層構造体の模式的な一部断面図である。
【図2】図2は、実施例1における加熱装置の概念図である。
【図3】図3は、ガラス基板の厚さと、モリブデンから成る厚さ100nmの金属膜の応力と、ガラス基板の曲率半径の関係を示すグラフである。
【図4】図4の(A)及び(B)は、実施例1−1及び実施例1−2において説明した積層構造体を構成するガラス基板の他方の側に第2の反射防止膜を形成した構造における反射率(p偏光成分の反射率Rp及びs偏光成分の反射率Rs)のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図5】図5の(A)及び(B)は、実施例1−3及び実施例1−4において説明した積層構造体を構成するガラス基板の他方の側に第2の反射防止膜を形成した構造における反射率(p偏光成分の反射率Rp及びs偏光成分の反射率Rs)のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図6】図6の(A)及び(B)は、実施例2−1及び実施例2−2において説明した積層構造体を構成するガラス基板の他方の側に第2の反射防止膜を形成した構造における反射率(p偏光成分の反射率Rp及びs偏光成分の反射率Rs)のシミュレーション結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0116】
10・・・積層構造体、11・・・ガラス基板、20・・・反射防止膜、21・・・第1の誘電体層、22・・・第2の誘電体層、23・・・第3の誘電体層、30・・・金属膜、40・・・第2の反射防止膜、41・・・下層、42・・・上層、50・・・被加工物、51・・・被着材料、60・・・加熱装置、61・・・積層構造体載置ステージ、62・・・積層構造体載置部、63・・・レーザ光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複素屈折率NM=nM−i・kMを有する金属膜と、屈折率NGを有するガラス基板との間に形成された反射防止膜であって、
金属膜側から、
(A)屈折率N1を有する第1の誘電体層、
(B)第1の誘電体層上に形成された、屈折率N2を有する第2の誘電体層、及び、
(C)第2の誘電体層上に形成された、屈折率N3を有する第3の誘電体層、
から構成され、
1<nM,N1>NG,N2<NG,N3>NGを満足し、以て、ガラス基板から入射して金属膜に到達する入射光の金属膜による反射を防止することを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】
1.51<N1<3.53を満足することを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項3】
入射光の波長をλとしたとき、金属膜及び第1の誘電体層の積層構造における反射率が最小となる最小膜厚を第1の誘電体層が有するときの光学アドミッタンスの値Y1と、ガラス基板、光学的厚さがλ/4である第3の誘電体層、及び、光学的厚さがλ/4である第2の誘電体層の積層構造から求められた光学アドミッタンスの値Y2とは、
|Y1−Y2|/α≦0.04
[但し、α≡(nM2+kM2+N12)/(2nM)]
を満足することを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項4】
光学アドミッタンスの値Y1及びY2は、
1=α−{(nM−α)2+kM21/2
2=(NG×N22)/N32
で表されることを特徴とする請求項3に記載の反射防止膜。
【請求項5】
金属膜はモリブデンから成り、第2の誘電体層はMgF2から成り、
M=3.53±0.10
M=3.30±0.10
G=1.51±0.10
2=1.38±0.10
であり、
4.29≦N1+N3≦4.40
を満足することを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項6】
(第1の誘電体層を構成する材料,第3の誘電体層を構成する材料)の組合せは、(TiO2,SiOX)、(Nb25,Ta25)、(Nb25,ZrO2)、(CeO2,Ta25)、(CeO2,ZrO2)、(Ta25,Nb25)、(Ta25,CeO2)、(ZrO2,Nb25)、(ZrO2,CeO2)、又は、(HfO2,ZnS)であることを特徴とする請求項5に記載の反射防止膜。
【請求項7】
金属膜はクロムから成り、第2の誘電体層はMgF2から成り、
M=3.18±0.10
M=4.41±0.10
G=1.51±0.10
2=1.38±0.10
であり、
4.69≦N1+N3≦4.75
を満足することを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項8】
(第1の誘電体層を構成する材料,第3の誘電体層を構成する材料)の組合せは、(TiO2,ZnS)又は(ZnS,TiO2)であることを特徴とする請求項7に記載の反射防止膜。
【請求項9】
金属膜はニッケル合金から成り、第2の誘電体層はMgF2から成り、
M=2.94±0.10
M=2.92±0.10
G=1.51±0.10
2=1.38±0.10
であり、
4.14≦N1+N3≦4.22
を満足することを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項10】
(第1の誘電体層を構成する材料,第3の誘電体層を構成する材料)の組合せは、(TiO2,Y23)であることを特徴とする請求項9に記載の反射防止膜。
【請求項11】
金属膜はモリブデンから成り、第2の誘電体層はSiOXから成り、
M=3.53±0.10
M=3.30±0.10
G=1.51±0.10
2=1.46±0.10
であり、
4.46≦N1+N3≦4.52
を満足することを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項12】
(第1の誘電体層を構成する材料,第3の誘電体層を構成する材料)の組合せは、(Nb25,Nb25)、(Nb25,CeO2)、(CeO2,CeO2)、又は、(CeO2,Nb25)であることを特徴とする請求項11に記載の反射防止膜。
【請求項13】
7.08≦nM+N1+N3≦8.28
を満足することを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項14】
第3の誘電体層が形成された面とは反対側のガラス基板の面には、第2の反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項15】
第2の反射防止膜、ガラス基板、第3の誘電体層、第2の誘電体層、第1の誘電体層及び金属膜の積層構造体におけるガラス基板の曲率半径は、1.0×105m以上であることを特徴とする請求項14に記載の反射防止膜。
【請求項16】
複素屈折率NM=nM−i・kMを有する金属膜と、反射防止膜と、屈折率NGを有するガラス基板が積層された積層構造体であって、
反射防止膜は、金属膜側から、
(A)屈折率N1を有する第1の誘電体層、
(B)第1の誘電体層上に形成された、屈折率N2を有する第2の誘電体層、及び、
(C)第2の誘電体層上に形成された、屈折率N3を有する第3の誘電体層、
から構成され、
1<nM,N1>NG,N2<NG,N3>NGを満足する積層構造体における金属膜に、ガラス基板及び反射防止膜を介してレーザ光を照射することで、金属膜を加熱することを特徴とする金属膜の加熱方法。
【請求項17】
複素屈折率NM=nM−i・kMを有する金属膜と、反射防止膜と、屈折率NGを有するガラス基板が積層された積層構造体であって、
反射防止膜は、金属膜側から、
(A)屈折率N1を有する第1の誘電体層、
(B)第1の誘電体層上に形成された、屈折率N2を有する第2の誘電体層、及び、
(C)第2の誘電体層上に形成された、屈折率N3を有する第3の誘電体層、
から構成され、
1<nM,N1>NG,N2<NG,N3>NGを満足する積層構造体における金属膜に、ガラス基板及び反射防止膜を介してレーザ光を照射することで、金属膜を加熱するための加熱装置であって、
(a)金属膜を下向きに、且つ、積層構造体との間に隙間を設けた状態で、積層構造体を載置する積層構造体載置ステージ、
(b)レーザ光源、及び、
(c)積層構造体載置ステージとレーザ光源とを相対的に移動させる移動装置、
を具備することを特徴とする加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−32949(P2008−32949A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205518(P2006−205518)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】