説明

反応容器プレート及び反応処理方法

【課題】主流路、計量流路、注入流路及び反応容器を備えた反応容器プレートにおいて、注入流路を介して計量流路内の液体を反応容器内に注入する際の注入圧力を小さくする。
【解決手段】主流路13、主流路13から分岐した所定容量の計量流路15、一端17aが計量流路15に接続され他端17bが反応容器5に接続された注入流路17を備えている。カバー基板11は弾性体からなる。カバー基板11の注入流路形成部分は凹部18によって他の部分に比べて薄く形成されている。注入流路の一端17aは、計量流路15よりも細く形成されており、主流路13及び計量流路15に液体が導入されるときの液体導入圧力状態並びに主流路13内の液体がパージされるときのパージ圧力状態では液体を通さず、それらよりも大きい加圧の注入圧力状態でカバー基板11の注入流路形成部分がベース基板3から浮き上がって液体を通す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物学的分析、生化学的分析、又は化学分析一般の分野において、医療や化学の現場において各種の解析や分析を行なうのに適する反応容器プレート及びその反応容器プレートを処理するための反応処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生化学的分析や通常の化学分析に使用する小型の反応装置としては、マイクロマルチチャンバ装置が使用されている。そのような装置としては、例えば平板状の基板表面に複数のウエルを形成したマイクロタイタープレートなどのマイクロウエル反応容器プレートが用いられている(例えば特許文献1を参照。)。
【0003】
また、微量の液体を定量的に扱うことができる微量液体秤取構造として、第1流路及び第2流路と、上記第1流路の流路壁に開口する第3流路と、第2流路の流路壁に開口して第3流路の一端と第1流路を連結し第3流路よりも相対的に毛管引力が働きにくい性質を第4流路とを有する構造を備えたものがある(例えば特許文献2,3を参照。)。その微量液体秤取構造によれば、第1流路に導入された液体が第3流路内に引き込まれた後、第1流路に残存する上記液体を取り除き、その後、気体によって第1流路内を加圧して第4流路を介して第3流路内の上記液体を第2流路に注入することにより、第3流路の容積に応じた体積の液体を第2流路に秤取することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−177749号公報
【特許文献2】特開2004−163104号公報
【特許文献3】特開2005−114430号公報
【特許文献4】特許第3452717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2,3に開示された微量液体秤取構造では、第4流路は、第3流路よりも相対的に毛管引力が働きにくくするために、第3流路よりも流路断面積が小さく形成される。第4流路はその流路断面積が小さいために流路抵抗が大きく、第3流路に充填された液体を第2流路に第4流路を介して注入する際に大きな圧力及び流量が必要であった。また、第4流路を介しての第2流路への液体の注入に長い時間がかかるという問題もあった。
【0006】
本発明は、主流路、主流路から分岐した計量流路、計量流路に接続され計量流路よりも流路断面積が小さい注入流路、及び注入流路が接続された反応容器を備えた反応容器プレート及びその反応容器プレートを用いた反応処理方法において、注入流路を介して計量流路内の液体を反応容器内に注入する際の注入圧力を小さくすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる反応容器プレートは、ベース基板と、上記ベース基板の一表面にその一表面が貼り合わされたカバー基板と、上記ベース基板の上記一表面もしくは上記カバー基板の上記一表面又はその両方に形成された凹部からなる反応容器と、上記ベース基板の上記一表面もしくは上記カバー基板の上記一表面又はその両方に形成された溝からなり、上記反応容器に接続された反応容器流路と、を備え、上記反応容器流路は、主流路と、上記主流路から分岐した所定容量の計量流路と、一端が上記計量流路に接続され他端が上記反応容器に接続された注入流路を備え、上記カバー基板は少なくとも上記注入流路を形成している部分が弾性体によって形成されており、上記注入流路は、少なくとも一部分が上記計量流路よりも細く形成されており、上記注入流路にかかる圧力によって上記カバー基板の注入流路形成部分が上記ベース基板から浮き上がる又は元に戻ることでその流路断面積が可変になっており、上記主流路及び上記計量流路に液体が導入されるときの液体導入圧力状態並びに上記主流路内の上記液体がパージされるときのパージ圧力状態では上記液体を通さず、それらよりも大きい加圧の注入圧力状態で上記カバー基板の注入流路形成部分が上記ベース基板から浮き上がって上記液体を通すものである。
【0008】
本発明にかかる反応処理方法は、本発明の反応容器プレートを用いた反応処理方法であって、上記導入圧力で上記主流路及び上記計量流路に液体を充填し、上記主流路に気体を流して上記計量流路内に上記液体を残存させつつ上記主流路内の上記液体を除去し、上記主流路内を上記導入圧力よりも大きい注入圧力に加圧することより上記注入流路を介して上記計量流路内の上記液体を上記反応容器に注入する。
【0009】
本発明の反応容器プレートでは、注入流路は、注入流路にかかる圧力によってカバー基板の注入流路形成部分がベース基板から浮き上がる又は元に戻ることでその流路断面積が可変になっている。そして、注入流路は、主流路及び計量流路に液体が導入されるときの液体導入圧力状態並びに主流路内の上記液体がパージされるときのパージ圧力状態では上記液体を通さず、それらよりも大きい加圧の注入圧力状態でカバー基板の注入流路形成部分がベース基板から浮き上がって上記液体を通すようになっている。
本発明の反応容器プレート及びそれを用いた反応処理方法では、注入流路を介して計量流路内の液体を反応容器内に注入する際に、カバー基板の注入流路形成部分がベース基板から浮き上がって注入流路の流路断面積が大きくなるので、注入圧力を小さくすることができる。さらに、注入時間を短くすることもできる。
【0010】
本発明の反応容器プレートにおいて、上記カバー基板は全体が一体成形された弾性体によって形成されており、上記注入流路を形成している部分の厚みが上記主流路を形成している部分及び上記計量流路を形成している部分の厚みよりも薄く形成されている例を挙げることができる。
【0011】
また、上記注入流路の水滴に対する接触角は90度以上であり、上記注入流路と上記計量流路の境界の面積は上記カバー基板の注入流路形成部分が上記ベース基板から浮き上がっていない状態で1〜10000000μm2(平方マイクロメートル)である例を挙げることができる。ここで、注入流路が複数の流路により構成されている場合には、上記面積は注入流路を構成する複数の流路のそれぞれの上記計量流路との境界の面積を意味する。
【0012】
また、複数の上記反応容器を備え、それらの反応容器ごとに上記計量流路及び上記注入流路を備え、上記主流路に複数の上記計量流路が接続されているようにしてもよい。
【0013】
また、上記反応容器に接続された反応容器エアー抜き流路をさらに備えているようにしてもよい。
【0014】
また、上記反応容器とは別途設けられた封止容器と、上記封止容器に接続される封止容器流路と、液体を送液するためのシリンジと、上記シリンジを上記反応容器流路又は上記封止容器流路に接続するための切替えバルブと、をさらに備えているようにしてもよい。
【0015】
さらに、上記封止容器及び上記封止容器流路の組を複数備え、上記切替えバルブは上記シリンジをいずれの上記封止容器流路にも接続可能なものである例を挙げることができる。
【0016】
また、上記切替えバルブはロータリー式バルブである例を挙げることができる。
さらに、上記ロータリー式バルブはその回転中心に上記シリンジにつながるポートを備え、上記シリンジは上記ロータリー式バルブ上に配置されている例を挙げることができる。
【0017】
上記封止容器の一例は、サンプル液を収容するためのサンプル容器である。
さらに、上記サンプル容器は、尖端の鋭利な分注器具により貫通でき、かつ貫通後に上記分注器具を引き抜くとその貫通孔を弾性によって閉じることのできる弾性部材によって密封されている例を挙げることができる。
さらに、上記サンプル容器に予めサンプル前処理液又は試薬が収容されているようにしてもよい。
【0018】
上記サンプル容器とは別に、上記封止容器からなる試薬容器を1つ又は複数備えているようにしてもよい。上記試薬容器はサンプル液の反応に使用される試薬を予め収容しフィルムで封止されているか、又は開閉可能なキャップを備えて試薬を注入できるようになっている。試薬容器を被って試薬を封止しているフィルムは尖端の鋭利な分注器具で貫通可能なものであるものを例として挙げることができる。
【0019】
本発明の反応容器プレートが遺伝子の分析を対象とする場合には、上記封止容器からなり遺伝子増幅反応を行なうための遺伝子増幅容器を備えていることが好ましい。遺伝子増幅容器は所定の温度サイクルで温度制御するのに適した形状になっていることが好ましい。なお、反応容器を遺伝子増幅部とすることもできる。
【0020】
上記反応容器は少なくとも呈色反応、酵素反応、蛍光や化学発光又は生物発光を生じる反応のいずれかの反応を行なうためのものとすることができる。
【0021】
本発明の反応容器プレートを、遺伝子を含んだサンプルを測定するための反応容器プレートとする場合には、予め遺伝子増幅反応を行なったサンプルをこの反応容器プレートに導入してもよく、又はこの反応容器プレートの反応容器が遺伝子増幅反応を行なうことができるように、予め遺伝子増幅試薬が収容されるか、遺伝子増幅試薬を分注するように構成することができる。
遺伝子増幅反応にはPCR法やLAMP法などを含む。DNAを増幅するPCR法に着目すれば、前処理なしで血液などのサンプルから直接PCR反応を行なわせる方法も提案されている。そこでは、遺伝子を含むサンプル中の目的とする遺伝子を増幅する核酸合成法において、遺伝子を含むサンプル中の遺伝子包含体もしくは遺伝子を含むサンプルそのものを遺伝子増幅反応液に添加して、添加後の該反応液のpHが8.5−9.5(25℃)で遺伝子を含むサンプル中の目的とする遺伝子を増幅する(特許文献4参照。)。
【0022】
上記反応容器はその底部又は上方から光学的に測定が可能なように光透過性の材質にて構成されているようにしてもよい。
上記反応容器は上記反応容器流路に導入される液体に遺伝子が含まれている場合にその遺伝子と反応するプローブを備えているようにしてもよい。
さらに、上記プローブは蛍光標識されたものでもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる反応容器プレートでは、ベース基板とカバー基板によって形成された反応容器と反応容器に接続された反応容器流路を備え、反応容器流路は、主流路と、主流路から分岐した所定容量の計量流路と、一端が上記計量流路に接続され他端が上記反応容器に接続された注入流路を備え、カバー基板は少なくとも注入流路を形成している部分が弾性体によって形成されているようにした。さらに、注入流路は、少なくとも一部分が計量流路よりも細く形成されており、注入流路にかかる圧力によってカバー基板の注入流路形成部分がベース基板から浮き上がる又は元に戻ることでその流路断面積が可変になっており、主流路及び計量流路に液体が導入されるときの液体導入圧力状態並びに主流路内の上記液体がパージされるときのパージ圧力状態では上記液体を通さず、それらよりも大きい加圧の注入圧力状態で上記カバー基板の注入流路形成部分が上記ベース基板から浮き上がって上記液体を通すものであるようにした。これにより、注入流路を介して計量流路内の液体を反応容器内に注入する際に、カバー基板の注入流路形成部分がベース基板から浮き上がって注入流路の流路断面積が大きくなるので、注入圧力を小さくすることができる。さらに、注入時間を短くすることもできる。
【0024】
本発明にかかる反応処理方法では、本発明の反応容器プレートを用い、導入圧力で主流路及び計量流路に液体を充填し、主流路に気体を流して計量流路内に上記液体を残存させつつ主流路内の上記液体を除去し、主流路内を導入圧力よりも大きい注入圧力に加圧することより注入流路を介して計量流路内の上記液体を上記反応容器に注入するようにした。本発明の反応容器プレートは、注入流路を介して計量流路内の液体を反応容器内に注入する際に、カバー基板の注入流路形成部分がベース基板から浮き上がって注入流路の流路断面積が大きくなるので、本発明の反応処理方法において注入圧力を小さくすることができる。さらに、注入時間を短くすることもできる。
【0025】
本発明の反応容器プレートにおいて、カバー基板は全体が一体成形された弾性体によって形成されており、注入流路を形成している部分の厚みが主流路を形成している部分及び計量流路を形成している部分の厚みよりも薄く形成されているようにすれば、注入圧力状態においてカバー基板の注入流路を形成している部分のみがベース基板から浮き上がるようにすることができる。さらに、カバー基板は全体が一体成形で形成されていることにより、複数の部材を組み合わせてカバー基板を作製する場合に比べて、カバー基板の作製が簡単になる。
【0026】
また、注入流路の水滴に対する接触角は90度以上であり、注入流路と計量流路の境界の面積はカバー基板の注入流路形成部分がベース基板から浮き上がっていない状態で1〜10000000μm2であるようにすれば、主流路及び計量流路に液体が導入されるときに液体が注入流路に浸入しにくくなり、主流路及び計量流路に液体を導入するときの導入圧力を大きくすることができる。
【0027】
また、複数の反応容器を備え、それらの反応容器ごとに計量流路及び注入流路を備え、主流路に複数の計量流路が接続されているようにすれば、複数の計量流路に液体を順次導入することができ、その後、注入流路を介して複数の反応容器に液体を同時に注入することができる。
【0028】
また、上記反応容器に接続された反応容器エアー抜き流路をさらに備えているようにすれば、注入流路を介しての反応容器への液体の注入の際に反応容器と反応容器エアー抜き流路の間で気体を流通させることができる。これにより、反応容器への液体の注入を円滑に行なうことができる。また、反応容器エアー抜き流路は、反応容器への液体の注入の際に、反応容器エアー抜き流路から反応容器内の気体を吸引して反応容器内を減圧させて液体を注入させる注入方法に用いることもできる。
【0029】
また、反応容器とは別途設けられた封止容器と、封止容器に接続された封止容器流路と、液体を送液するためのシリンジと、シリンジを主流路又は封止容器流路に接続するための切替えバルブを備えているようにすれば、そのシリンジ及び切替えバルブを用いて封止容器内の液体を主流路に注入することができる。
ここで、上記シリンジは、計量流路への液体の充填後に行なう主流路内の液体を気体によって除去するパージ処理時、及び、パージ処理後に主流路内を気体によって注入圧力に加圧する注入処理時において、主流路内に気体を送り込む送気機構として用いることもできる。上述のように、注入流路の流路断面積が可変でない場合には大きな注入圧力が必要になるので、送気機構としてのシリンジのサイズを大きくする必要があり、反応容器プレート全体のサイズも大きくしなければならなかった。本発明の反応容器プレートによれば、注入流路の流路断面積が可変であり、注入流路の流路断面積が可変でない場合に比べて注入圧力を小さくすることができるので、送気機構としてのシリンジのサイズを小さくすることができ、反応容器プレート全体のサイズも小さくすることができる。
【0030】
切替えバルブはロータリー式バルブとすることができる。その場合、ロータリー式バルブの回転中心にシリンジにつながるポートを配置すれば、流路構成が簡単になる。
さらに、ロータリー式バルブはその回転中心にシリンジにつながるポートを備え、シリンジはロータリー式バルブ上に配置されているようにすれば、上記ポート−シリンジ間の流路を短くする又は無くすことができ、構造が簡単になる。さらに、切替えバルブ上の領域を有効に利用することができ、シリンジを切替えバルブ上とは異なる領域に配置する場合に比べて、反応容器プレートの平面サイズの縮小化を図ることもできる。
【0031】
また、反応容器とは別途設けられた封止容器と、封止容器に接続された封止容器流路と、シリンジを反応容器流路又は封止容器流路に接続するための切替えバルブをさらに備えているようにしてもよい。
例えば、封止容器はサンプル液を収容するためのサンプル容器であるようにすれば、サンプルを収容するための容器を別途準備する必要がなくなる。
【0032】
さらに、サンプル容器は、尖端の鋭利な分注器具により貫通でき、かつ貫通後に分注器具を引き抜くとその貫通孔を弾性によって閉じることのできる弾性部材によって密封されているようにすれば、弾性部材を介してサンプル容器内にサンプル液を注入することができ、その後サンプル液がサンプル容器外に漏れるのを防止することができる。
さらに、サンプル容器に予めサンプル前処理液又は試薬が収容されているようにすれば、サンプル容器にサンプル前処理液又は試薬を分注する必要がなくなる。
【0033】
サンプル容器とは別に、封止容器からなる試薬容器を1つ又は複数備え、試薬容器はサンプル液の反応に使用される試薬を予め収容しフィルムで封止されているか、又は開閉可能なキャップを備えて試薬を注入できるようになっているようにすれば、試薬を収容するための容器を別途準備する必要がなくなる。
【0034】
封止容器からなり遺伝子増幅反応を行なうための遺伝子増幅容器も備えているようにすれば、測定対象の遺伝子を微量にしか含んでいないサンプル液でもPCR法やLAMP法など遺伝子増幅反応によって反応容器プレート上で遺伝子を増幅して分析精度を高めることができるようになる。
【0035】
また、本発明の反応容器プレートが遺伝子を含んだサンプルを測定するための反応容器プレートである場合、反応容器で遺伝子増幅反応を行なうことができるようになっていれば、反応容器プレート外で遺伝子増幅反応を行なったサンプルを準備する必要がなくなる。
【0036】
また、反応容器はその底部又は上方から光学的に測定が可能なように光透過性の材質にて構成されているようにすれば、反応容器内の液体を他の容器へ移動させることなく光学的に測定することができる。
【0037】
また、反応容器は反応容器流路に導入される液体に遺伝子が含まれている場合にその遺伝子と反応するプローブを備えているようにすれば、反応容器内でプローブに対応する塩基配列をもつ遺伝子の検出を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は反応容器プレートの一実施例を示す図であり(A)は概略的な平面図、(B)は(A)のA−A位置での断面に計量流路15、注入流路17、サンプル容器エアー抜き流路19,21、液体ドレイン空間29、エアードレイン空間31及びベローズ53の断面を加えた概略的な断面図、(C)はシリンジ51及びベローズ53近傍を拡大して示す概略的な断面図である。図2はこの実施例を分解して示す断面図及び切替えバルブの概略的な分解斜視図である。図3はこの実施例の1つの反応容器近傍を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は断面図である。図4はサンプル容器を拡大して示した図であり(A)は平面図、(B)は(A)のB−B位置での断面図である。図5は試薬容器を拡大して示した図であり(A)は平面図、(B)は(A)のC−C位置での断面図である。図6はエアー吸引用容器を拡大して示した図であり(A)は平面図、(B)は(A)のD−D位置での断面図である。
図1から図6を参照して反応容器プレートの一実施例について説明する。
【0039】
反応容器プレート1は容器ベース(ベース基板)3の一表面に開口部をもつ複数の反応容器5を備えている。この実施例では6×6個の反応容器5が千鳥状に配列されている。反応容器5内に試薬7及びワックス9が収容されている。
【0040】
反応容器5を含む容器ベース3の材質は特に限定されるものではないが、反応容器プレート1を使い捨て可能として用いる場合には、安価に入手可能な素材があることが好ましい。そのような素材として、例えばポリプロピレン、ポリカーボネートなどの樹脂素材が好ましい。反応容器5内の物質の検出を吸光度、蛍光、化学発光又は生物発光などにより行なう場合には、底面側から光学的な検出ができるようにするために光透過性の樹脂で形成されていることが好ましい。特に蛍光検出を行なう場合には、容器ベース3の材質として低自蛍光性(それ自身からの蛍光発生が少ない性質のこと)で光透過性の樹脂、例えばポリカーボネートなどの素材で形成されていることが好ましい。容器ベース3の厚さは0.2〜4.0mm(ミリメートル)、好ましくは1.0〜2.0mmである。蛍光検出用の低自蛍光性の観点からは容器ベース3の厚さは薄い方が好ましい。
【0041】
図1及び図3を参照して説明すると、容器ベース3上に反応容器5の配列領域を覆って流路ベース(カバー基板)11が配置されている。流路ベース11は例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)やシリコーンゴムなどの弾性体からなる。流路ベース11の厚みは例えば1.0〜5.0mmである。流路ベース11は容器ベース3との接合面に溝を備えている。その溝と容器ベース3の表面によって、主流路13、計量流路15、注入流路17、反応容器エアー抜き流路19,21、ドレイン空間エアー抜き流路23,25が形成されている。主流路13、計量流路15及び注入流路17は反応容器流路を構成する。流路ベース11の容器ベース3との接合面には、反応容器5上に配置された凹部27も形成されている。図1(A)及び図3(A),(B)では流路ベース11について溝及び凹部のみを図示している。
【0042】
主流路13は1本の流路からなり、すべての反応容器5の近傍を通るように折れ曲がって形成されている。主流路13の一端は容器ベース3に設けられた貫通孔からなる流路13aに接続されている。流路13aは後述する切替えバルブ63のポートに接続されている。主流路13の他端は容器ベース3に形成された液体ドレイン空間29に接続されている。主流路13を構成する溝の寸法は例えば深さが400μm(マイクロメートル)、幅が500μmである。また、主流路13は、計量流路15が接続されている位置の下流側の所定長さ部分、例えば250μmの部分は幅が他の部分に比べて細く形成されており、例えばその幅は250μmである。
【0043】
計量流路15は主流路13から分岐して反応容器5ごとに設けられている。計量流路15の主流路13とは反対側の端部は反応容器5の近傍に配置されている。計量流路15を構成する溝の深さは例えば主流路13側の基端部15aが400μm、主流路13とは反対側の先端部15bが10μmである。計量流路15は内部容量が所定容量、例えば2.5μL(マイクロリットル)に形成されている。計量流路15の主流路13に接続されている部分の幅寸法は、上述の主流路13の細くなっている部分よりも太く、例えば500μmに形成されている。これにより、主流路13の一端から流れてくる液体に対して、計量流路15が分岐している部分では主流路13の方が計量流路15よりも流路抵抗が大きくなっている。主流路13の一端から流れてくる液体は、まず計量流路15に流れ込み、計量流路15が液体で充填された後、主流路13の細くなっている部分を介して下流側へ流れるようになっている。
【0044】
注入流路17も反応容器5ごとに設けられている。図1及び図2では注入流路17を簡略化して図示している。図3を参照して説明すると、注入流路17の一端17aは計量流路15の先端部15bに接続されている。注入流路17の他端17bは反応容器5上に配置された凹部27に接続されて反応容器5上に導かれている。注入流路17の一端17aは、反応容器5内と注入流路17内で圧力差がない状態で反応容器5内の液密を保つ寸法で形成されている。この実施例では、注入流路17の一端17aは複数の溝により構成されており、その溝の寸法は例えば深さが10μm、幅が20μm、ピッチが20μmであり、500μmの幅領域に13本の溝が形成されている。ここでは、注入流路17の一端17aを構成する溝と計量流路15の境界の面積、すなわち注入流路17の一端17aを構成する溝の断面積は200μm2である。また、注入流路17の他端17bは1つの溝により構成されており、その溝の寸法は幅が例えば500μm、深さが10μmである。また、凹部27は深さが例えば400μmであり、平面形状は反応容器5よりも小さい円形である。
【0045】
図3を参照して説明すると、流路ベース11は、注入流路17の一端17a上の位置であって容器ベース3とは反対側の面に形成された凹部18を備えている。図1(A)では凹部18の図示を省略している。凹部18により、注入流路17の一端17aを形成している部分及びその周囲の容器ベース11の厚みは他の部分よりも薄く形成されている。凹部18の底面における容器ベース11の厚みは、計量流路15の先端部15b又は注入流路17の他端17bを形成している部分において、例えば数十μmである。これにより、注入流路17の一端17aにかかる圧力によって流路ベース11の注入流路17の形成部分が容器ベース3浮き上がる又は元に戻ることで、注入流路17の一端17aの流路断面積が可変になっている。
【0046】
図1及び図2も参照して説明すると、反応容器エアー抜き流路19は反応容器5ごとに設けられている。反応容器エアー抜き流路19の一端は反応容器5上に配置された凹部27に注入流路17とは異なる位置で接続されて反応容器5上に配置されている。反応容器エアー抜き流路19は、反応容器5内と反応容器エアー抜き流路19内で圧力差がない状態で反応容器5内の液密を保つ寸法で形成されている。反応容器エアー抜き流路19の他端は反応容器エアー抜き流路21に接続されている。この実施例では、反応容器エアー抜き流路19は複数の溝により構成されており、その溝の寸法は例えば深さが10μm、幅が20μm、ピッチが20μmであり、500μmの幅領域に13本の溝が形成されている。
【0047】
反応容器エアー抜き流路21はこの実施例では複数本設けられている。それぞれの反応容器エアー抜き流路21には複数の反応容器エアー抜き流路19が接続されている。反応容器エアー抜き流路21は反応容器エアー抜き流路19を容器ベース3に形成されたエアードレイン空間31に接続するためのものである。反応容器エアー抜き流路21を構成する溝の寸法は例えば深さが400μm、幅が500μmである。
【0048】
ドレイン空間エアー抜き流路23は液体ドレイン空間29を後述する切替えバルブ63のポートに接続するためのものである。ドレイン空間エアー抜き流路23の一端は液体ドレイン空間29上に配置されている。ドレイン空間エアー抜き流路23の他端は容器ベース3に設けられた貫通孔からなる流路23aに接続されている。流路23aは後述する切替えバルブ63のポートに接続されている。ドレイン空間エアー抜き流路23を構成する溝の寸法は例えば深さが400μm、幅が500μmである。
【0049】
ドレイン空間エアー抜き流路25はエアードレイン空間31を後述する切替えバルブ63のポートに接続するためのものである。ドレイン空間エアー抜き流路25の一端はエアードレイン空間31上に配置されている。ドレイン空間エアー抜き流路25の他端は容器ベース3に設けられた貫通孔からなる流路25aに接続されている。流路25aは後述する切替えバルブ63のポートに接続されている。ドレイン空間エアー抜き流路25を構成する溝の寸法は例えば深さが400μm、幅が500μmである。
【0050】
流路ベース11上に流路カバー33(図1(A)での図示は省略している。)が配置されている。流路カバー33は流路ベース11を容器ベース3に固定するためのものである。流路カバー33には反応容器5上の位置に貫通孔が形成されている。
【0051】
図1及び図4を参照して説明すると、反応容器5の配列領域及びドレイン空間29,31とは異なる位置で容器ベース3にサンプル容器35、試薬容器37及びエアー吸引用容器39が形成されている。サンプル容器35、試薬容器37及びエアー吸引用容器39は本発明の反応容器プレートの封止容器を構成する。
【0052】
サンプル容器35近傍の容器ベース3に、サンプル容器35の底部から裏面に貫通しているサンプル流路35aと表面から裏面に貫通しているサンプル容器エアー抜き流路35bが形成されている。サンプル容器35の開口部周囲の容器ベース3上に突起部35cが配置されている。サンプル容器エアー抜き流路35b上の突起部35cに貫通孔からなるサンプル容器エアー抜き流路35dが形成されている。突起部35cの表面にサンプル容器35とサンプル容器エアー抜き流路35dを連通しているサンプル容器エアー抜き流路35eが形成されている。
【0053】
サンプル容器エアー抜き流路35eは例えば幅5〜200μm、深さ5〜200μmの寸法の1本又は複数本の細孔によって形成されており、サンプル容器35内とサンプル容器エアー抜き流路35d内で圧力差がない状態でサンプル容器35の液密を保つためのものである。突起部35c上にサンプル容器35及びエアー抜き流路35dを覆って弾性部材であるセプタム41が形成されている。セプタム41は例えばシリコーンゴムやPDMSなどの弾性材料によって形成されており、尖端が鋭利な分注器具により貫通でき、かつ貫通後に分注器具を引き抜くとその貫通孔を弾性によって閉じることができる。セプタム41上にセプタム41を固定するためのセプタムストッパ43が配置されている。セプタムストッパ43はサンプル容器35上に開口部をもつ。この実施例ではサンプル容器35内に予め試薬45が収容されている。
【0054】
図5に示すように、試薬容器37近傍の容器ベース3に、試薬容器37の底部から裏面に貫通している試薬流路37aと表面から裏面に貫通している試薬容器エアー抜き流路37bが形成されている。試薬容器37の開口部周囲の容器ベース3上に突起部37cが配置されている。試薬容器エアー抜き流路37b上の突起部37cに貫通孔からなる試薬容器エアー抜き流路37dが形成されている。突起部37cの表面に試薬容器37と試薬容器エアー抜き流路37dを連通している試薬容器エアー抜き流路37eが形成されている。
【0055】
試薬容器エアー抜き流路37eは例えば幅5〜200μm、深さ5〜200μmの寸法の1本又は複数本の細孔によって形成されており、試薬容器37内と試薬容器エアー抜き流路37d内で圧力差がない状態で試薬容器37の液密を保つためのものである。突起部37c上に試薬容器37及びエアー抜き流路37dを覆って例えばアルミニウムからなるフィルム47が形成されている。試薬容器37内に希釈水49が収容されている。
【0056】
図6に示すように、エアー吸引用容器39は試薬容器37と同様の構成をもつ。すなわち、エアー吸引用容器39近傍の容器ベース3に、エアー吸引用容器39の底部から裏面に貫通しているエアー吸引用流路39aと表面から裏面に貫通しているエアー吸引用容器エアー抜き流路39bが形成されている。エアー吸引用容器39の開口部周囲の容器ベース3上にエアー吸引用容器エアー抜き流路39d,39eを備えた突起部39cが配置されている。突起部39c上に例えばアルミニウムからなるフィルム47が形成されている。エアー吸引用容器39内には液体及び固体は収容されておらず、エアーが充満している。
【0057】
図1及び図2を参照して説明を続けると、反応容器5の配列領域、ドレイン空間29,31及び容器35,37,39とは異なる位置の容器ベース3の表面にシリンジ51が設けられている。シリンジ51は容器ベース3に形成されたシリンダ51aとシリンダ51a内に配置されたプランジャ51bとカバー体51dにより形成されている。容器ベース3にシリンダ51aの底部に設けられた吐出口から裏面に貫通しているシリンジ流路51cが形成されている。
【0058】
カバー体51dはプランジャ51bの摺動方向に可撓性をもち、シリンダ51aとプランジャ51bに接続されている。カバー体51dは、シリンダ51aの内壁のプランジャ51bが接触する部分をシリンダ51a外の雰囲気とは気密性を保って遮断するためのものであり、シリンダ51aとプランジャ51bとカバー体51dで囲まれた封止空間51eを形成している。シリンダ51aに接続される側のカバー体51dの端部はシリンダキャップ51fによりシリンダ51aの上端に気密性を確保して固定されている。また、プランジャ51bに接続される側のカバー体51dの端部は接着剤によりプランジャ51bの上面に気密性を確保して接続されている。ただし、カバー体51dをシリンダ51a、プランジャ51bに接続する方法及び位置はこれに限定されるものではない。
【0059】
このように、カバー体51dは、シリンダ51aとプランジャ51bに接続されてシリンダ51aとプランジャ51bとカバー体51dで囲まれた封止空間51eを形成しているので、シリンダ51aとプランジャ51bの間を介しての、外部からの異物の進入や、液体の外部への環境汚染が防ぐことができる。なお、カバー体51dはプランジャ51bの摺動方向に可撓性をもつので、プランジャ51bの摺動動作は可能である。
【0060】
この実施例ではプランジャ51bとカバー体51dは別々の部材により形成されているが、プランジャとカバー体は一体成形されたものであってもよい。一体成形されたプランジャとカバー体の材料として例えばシリコーンゴムを挙げることができる。
【0061】
容器ベース3には、反応容器5の配列領域、ドレイン空間29,31、容器35,37,39及びシリンジ51とは異なる位置にベローズ53も設けられている。ベローズ53は内部空間が封止されており、伸縮することにより内部容量が受動的に可変なものであり、例えば容器ベース3に設けられた貫通孔53a内に配置されている。
【0062】
反応容器5の配列領域とは異なる位置で容器ベース3の裏面に容器ボトム55が取り付けられている。容器ボトム55にはベローズ53に連通する位置にエアー抜き流路53bが設けられている。ベローズ53は容器ボトム55の表面に密着して接続されている。容器ボトム55は流路13a,23a,25a,35a,35b,37a,37b,39a,39b,51c,53bを所定のポート位置に導くためのものである。
【0063】
容器ベース3容器及びボトム55に、一端が封止空間51eに接続され、他端がベローズ53にされたシリンジエアー抜き流路53cが設けられている。図1(A)でのシリンジエアー抜き流路53cの図示は省略している。
このように、一端が封止空間51eに接続され、他端がベローズ53されているシリンジエアー抜き流路53cを備えているので、封止空間51eを反応容器プレート1外部雰囲気とは遮断しつつ、プランジャ51bが摺動するときに封止空間51eの内部容量の変化にともなう封止空間51e内部の圧力変化を緩和することができ、プランジャ51bを円滑に摺動させることができる。
【0064】
容器ボトム55の容器ベース3とは反対側の面に円盤状のシール板57、ロータアッパー59及びロータベース61からなるロータリー式の切替えバルブ63が設けられている。切替えバルブ63はロック65により容器ボトム55に取り付けられている。
【0065】
シール板57は、その周縁部近傍に設けられ、流路13a,35a,37a,39aのいずれかに接続される貫通孔57aと、それよりも内側の同心円上で流路23a,25a,35b,37b,39b,53bのうち少なくとも2つ接続される貫通溝57bと、中心に設けられ、シリンジ流路51cに接続される貫通孔57cを備えている。
ロータアッパー59は、シール板57の貫通孔57aと同じ位置に設けられた貫通孔59aと、シール板57の貫通溝57bに対応して表面に設けられた溝59bと、中心に設けられた貫通孔59cを備えている。
ロータベース61はその表面に、ロータアッパー59の周縁部と中心に配置された2つの貫通孔59a,59cを接続するための溝61aを備えている。
【0066】
切替えバルブ63の回転により、シリンジ流路51cが流路13a,35a,37a,39aのいずれかに接続されるのと同時に、エアー抜き流路53bが流路23a,25a,35b,37b,39bのうちの少なくともいずれかに接続される。
図1(A)に示した切替えバルブ63の位置は、シリンジ流路51cは流路13a,35a,37a,39aのいずれにも接続されておらず、エアー抜き流路53bも流路23a,25a,35b,37b,39bのいずれとも接続されていない初期状態の位置を示している。
【0067】
反応容器プレート1では、注入流路17は反応容器5内と注入流路17内で圧力差がない状態で反応容器5の液密を保つように形成されている。反応容器エアー抜き流路19も反応容器5内と反応容器エアー抜き流路19内で圧力差がない状態で反応容器5の液密を保つように形成されている。反応容器流路の主流路13と、主流路13が接続された液体ドレイン空間29及びドレイン空間エアー抜き流路23は切替えバルブ63の切替えにより密閉可能になっている。容器35,37,39はセプタム41又はフィルム47で封止されている。容器35,37,39に接続された流路35a,35b,37a,37b,39a,39bは切替えバルブ63の切替えにより密閉可能になっている。エアー抜き流路53bの一端はベローズ53に接続されて密閉されている。このように、反応容器プレート1内部の容器及び流路は密閉系で形成されている。なお、ベローズ53を備えていない構成であってエアー抜き流路53bが反応容器プレート1外部の雰囲気と接続されている場合であっても、切替えバルブ63の切替えによりエアー抜き流路53bを反応容器プレート1内部の容器及びエアー抜き流路53b以外の流路とは遮断できるので、液体が収容される又は液体が流される容器及び流路を密閉系にすることができる。
【0068】
図7は図1に示した反応容器プレート1を処理するための反応処理装置を反応容器プレート1とともに示す断面図である。反応容器プレート1の構造は図1と同じなのでその説明は省略する。
反応処理装置は反応容器5の温度調整をするための温調機構67と、シリンジ51を駆動するためのシリンジ駆動ユニット69と、切替えバルブ63を切り替えるための切替えバルブ駆動ユニット71を備えている。
【0069】
図8から図14は、サンプル容器35からサンプル液を反応容器5に導入する動作を説明するための平面図である。図15はその動作時における注入流路の動作を説明するための断面図である。図1及び図8から図15を参照してこの動作を説明する。
【0070】
図示しない尖端が鋭利な分注器具を用い、サンプル容器35上のセプタム41を貫通して例えば5μLのサンプル液をサンプル容器35内に分注する。サンプル液を分注後、分注器具を引き抜く。分注器具を引き抜いたときのセプタム41の貫通孔はセプタム41の弾性により閉じられる。
【0071】
シリンジ駆動ユニット69をシリンジ51のプランジャ51bに接続し、切替えバルブ駆動ユニット71を切替えバルブ63に接続する。
図8に示すように、図1(A)に示した切替えバルブ63の状態から切替えバルブ63を回転させてサンプル流路35aとシリンジ流路51cを接続し、サンプル容器エアー抜き流路35bをエアー抜き流路53bに接続する。このとき、エアー抜き流路37b,39bもエアー抜き流路53bに接続される。サンプル容器35には例えば45μLの試薬45が収容されている。
【0072】
シリンジ51のプランジャ51bを摺動させてサンプル容器35内のサンプル液及び試薬45を混合させる。その後、サンプル容器35内の混合液を切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内に例えば10μLだけ吸引する。このとき、サンプル容器35はエアー抜き流路35e,35d,35b、切替えバルブ63及びエアー抜き流路53bを介してベローズ53に接続されているので、サンプル容器35内の気体容量の変化にともなってベローズ53が伸縮する。また、プランジャ51bの摺動により、カバー体51dが変形して封止空間51e(図1(C)参照。)の内部容量が変化する。封止空間51eはシリンジエアー抜き流路53cを介してベローズ53に接続されているので、封止空間51eの内部容量の変化によってもベローズ53が伸縮する。以下に説明する動作工程でも、プランジャ51bの摺動による封止空間51eの内部容量の変化にともなってベローズ53が伸縮する。
【0073】
図9に示すように、切替えバルブ63を回転させて試薬流路37aとシリンジ流路51cを接続し、試薬容器エアー抜き流路37bをエアー抜き流路53bに接続する。試薬容器37には例えば190μLの希釈水49が収容されている。切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内に吸引した混合液を試薬容器37内に注入し、シリンジ51を摺動させて混合液と希釈水49と混合する。その希釈混合液を切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内に例えば全部、すなわち200μL吸引する。このとき、試薬容器37はエアー抜き流路37e,37d,37b、切替えバルブ63及びエアー抜き流路53bを介してベローズ53に接続されているので、試薬容器37内の気体容量の変化にともなってベローズ53が伸縮する。
【0074】
図10に示すように、切替えバルブ63を回転させて、主流路13の一端に接続された流路13aとシリンジ流路51cを接続し、液体ドレイン空間29、エアードレイン空間31に接続された流路23a,25aをエアー抜き流路53bに接続する。シリンジ51を押出し方向に駆動させて、切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内に吸引した希釈混合液を主流路13に送る。流路13a側から主流路13に注入された希釈混合液は、シボ及び矢印によって示すように、流路13a側から順に計量流路15を満たし、液体ドレイン空間29に到達する。希釈混合液が主流路13及び計量流路15に導入されるときの導入圧力状態では、注入流路17は、気体は通すが希釈混合液を通さない。したがって、図15(A)にも示すように、計量流路15に充填された希釈混合液(シボ参照)は反応容器5には注入されない。計量流路15への希釈混合液の充填にともなって計量流路15の気体は注入流路17を介して反応容器5内へ移動する。この気体の移動にともない、反応容器5内の気体の一部は反応容器エアー抜き流路19,21へ移動する。さらに反応容器エアー抜き流路19からベローズ53までの流路内の気体は順次ベローズ53側へ移動する(白抜き矢印参照)。また、液体ドレイン空間29に希釈混合液が注入されることにより、液体ドレイン空間29からベローズ53までの流路内の気体は順次ベローズ53側へ移動する(白抜き矢印参照)。これにより、ベローズ53は膨張する。
【0075】
図11に示すように、切替えバルブ63を回転させてエアー吸引用流路39aとシリンジ流路51cを接続し、エアー吸引用容器エアー抜き流路39bをエアー抜き流路53bに接続する。シリンジ51を吸引側に駆動させてエアー吸引用容器39内の気体を切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内に吸引する。このとき、エアー吸引用容器39はエアー抜き流路39e,39d,39b、切替えバルブ63及びエアー抜き流路53bを介してベローズ53に接続されているので、エアー吸引用容器39内の減圧にともなってベローズ53が収縮する(白抜き矢印参照)。
【0076】
図12に示すように、切替えバルブ63を回転させて、図10の接続状態と同じく、流路13aとシリンジ流路51cを接続し、流路23a,25aをエアー抜き流路53bに接続する。シリンジ51を押出し方向に駆動させて、切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内の気体を主流路13に送って主流路13内の希釈混合液をパージする(白抜き矢印参照)。このときのパージ圧力状態では注入流路17は希釈混合液を通さないので、計量流路15内には希釈混合液が残存している(図12及び図15(A)のシボ参照。)。パージされた希釈混合液は液体ドレイン空間29内に収容される。また、液体ドレイン空間29に希釈混合液が注入されることにより、液体ドレイン空間29からベローズ53までの流路内の気体は順次ベローズ53側へ移動する(白抜き矢印参照)。これにより、ベローズ53は膨張する。
【0077】
図13に示すように、切替えバルブ63を回転させて、図11の接続状態と同じく、エアー吸引用流路39aとシリンジ流路51cを接続し、エアー吸引用容器エアー抜き流路39bをエアー抜き流路53bに接続する。シリンジ51を吸引側に駆動させてエアー吸引用容器39内の気体を切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内に吸引する。このとき、図11を参照して説明したのと同様に、ベローズ53が収縮する(白抜き矢印参照)。
【0078】
図14に示すように、切替えバルブ63を回転させて、流路13aとシリンジ流路51cを接続し、流路25aをエアー抜き流路53bに接続する。この接続状態は、主流路13の下流側端が接続された液体ドレイン空間29が切替えバルブ63内の流路に接続されていない点で図10及び図12に示した接続状態とは異なる。シリンジ51を押出し方向に駆動させる。主流路13の下流側端はベローズ53には接続されていないので、主流路13内が液体導入圧力及びパージ導入圧力よりも大きい注入圧力で加圧される。そして、計量流路15内の希釈混合液も加圧され、注入流路17の一端17aに液体導入圧力及びパージ導入圧力よりも大きい注入圧力がかかる。これにより、図15(B)に示すように、弾性体からなる流路ベース11の凹部18の底部部分が容器ベース3から浮き上がり、注入流路17の一端17aの流路断面積が大きくなる。そして、計量流路15内の希釈混合液が注入流路17を通って反応容器5内に注入される。
【0079】
注入流路17の一端17aの流路断面積が大きくなることにより注入流路17の流路抵抗が小さくなるので、注入流路の流路断面積が可変でない場合に比べて、注入圧力を小さくすることができ、さらに注入時間が短くなる。
【0080】
希釈混合液が反応容器5内に注入された後は主流路13内の気体の一部は計量流路15及び注入流路17を介して反応容器5内に流れ込む。このとき、反応容器5は反応容器エアー抜き流路19,21、エアードレイン空間31、ドレイン空間エアー抜き流路25a及びエアー抜き流路53bを介してベローズ53に接続されているので、反応容器5、ベローズ53間の気体は順次ベローズ53側へ移動する(白抜き矢印参照)。これにより、ベローズ53は膨張する。主流路13への送気が終わると、図15(C)に示すように、浮き上がった流路ベース11の凹部18の底部部分が元に戻る。なお、流路抵抗は液体の方が気体よりも大きいので、主流路13への気体の送気圧力によっては、計量流路15内の希釈混合液が反応容器5内に注入された後、主流路13への送気が継続されていても、浮き上がった流路ベース11の凹部18の底部部分が元に戻る。
【0081】
切替えバルブ63を図1の接続状態にして反応容器プレート1内部の容器、流路及びドレイン空間を密閉した後、温調機構67により反応容器5を加熱してワックス9を融解させる。これにより、反応容器5に注入された希釈混合液はワックス9の下に入り、希釈混合液と試薬7が混ざり反応する。このように、反応容器プレート1によれば反応処理を密閉系で行なうことができる。
また、希釈混合液を反応容器5内に注入する前に、温調機構67により反応容器5を加熱してワックス9を融解させておき、反応容器5内への希釈混合液の注入時にワックス9が融解しているようにしてもよい。この場合、反応容器5に注入された希釈混合液は直ちにワックス9の下に入り、希釈混合液と試薬7が混ざり反応する。切替えバルブ63の接続状態が図14の状態であっても、ベローズ53により密閉系は確保されている。希釈混合液の注入後に切替えバルブ63を図1の接続状態にすれば、反応容器プレート1内部の容器、流路及びドレイン空間を密閉することができる。ここで切替えバルブ63を図1の接続状態に切り替えるタイミングは、希釈混合液の注入直後から希釈混合液と試薬7の反応終了までのいずれのタイミングであってもよいし、希釈混合液と試薬7の反応終了後であってもよい。
このように、反応容器プレート1によれば、反応処理を密閉系で行なうことができ、反応処理前及び反応処理後も密閉系にすることができる。
【0082】
この実施例では流路13,15,17,19,21,23を形成するための溝は流路ベース11に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、それらの流路の全部又は一部分を形成するための溝を容器ベース3表面に形成してもよい。
【0083】
また、この実施例では流路ベース11全体が弾性体によって形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、流路ベース(カバー基板)は少なくとも注入流路を形成している部分が弾性体によって形成されているものであればよい。
【0084】
図16は反応容器プレートの他の実施例の反応容器近傍を拡大して示す概略的な断面図である。この実施例は、反応容器ベースと流路ベースの間に流路スペーサを配置した以外の構成は図1から図14を参照して説明した上記実施例と同じである。
【0085】
容器ベース3上に反応容器5の配列領域を覆って流路スペーサ73が配置され、さらにその上に流路ベース11、流路カバー33がその順に配置されている。流路スペーサ73は例えばPDMSやシリコーンゴムからなる。流路スペーサ73の厚みは例えば0.5〜5.0mmである。流路スペーサ73は反応容器5内に突出している凸部75を反応容器5ごとに備えている。凸部75は断面が略台形に形成されており、例えば基端部の幅は1.0〜2.8mm、先端部の幅は0.2〜0.5mmであり、先端部が基端部に比べて細くなっている。また、凸部75の表面には超撥水処理が施されている。ただし、凸部75の表面に必ずしも撥水処理が施されていなくてもよい。
【0086】
さらに、流路スペーサ73は凸部75の先端部から反対側の面に貫通している貫通孔からなる注入流路77を凸部75の形成位置ごとに備えている。注入流路77の内径は例えば500μmである。注入流路77の流路ベース11側の開口は流路ベース11の注入流路17に接続されている。なお、この実施例では図1から図14を参照して説明した上記実施例と比較して流路ベース11に凹部27を備えていない。
さらに、流路スペーサ73は流路ベース11の反応容器エアー抜き流路19と反応容器5を連通させるための貫通孔からなる反応容器エアー抜き流路79も備えている。
【0087】
また、図示は省略するが、流路スペーサ73は、主流路13の両端部、反応容器エアー抜き流路21のエアードレイン空間31側の端部、及びドレイン空間エアー抜き流路23,25の両端部に貫通孔を備え、それらの流路13,21,23,25を容器ベース3に設けられた容器29,31又は流路23a,25bに接続している。
【0088】
この実施例では、注入流路77の注入流路15とは反対側の端部(注入流路の他端)は反応容器5の内側上面に突出して形成された凸部75の先端に配置されているので、注入流路15,77を通って反応容器5に注入される液体が反応容器5に滴下しやすくなる。
【0089】
さらに、液体が注入流路77を通って凸部75の先端から吐出される際に凸部75の先端に形成される液滴が反応容器5の側壁に接触するように凸部75の先端を反応容器5の側壁近傍に配置すれば、反応容器5の側壁を伝って液体を反応容器5内に注入することができ、より確実に反応容器5内に液体を注入することができる。ただし、凸部75の形成位置は、凸部75の先端に形成される液滴が反応容器5の側壁には接触しない位置であってもよい。
【0090】
図17は反応容器プレートのさらに他の実施例の反応容器近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
この実施例は、図16を参照して説明した実施例と比べて、反応容器5の内部に突起部81をさらに備えている。突起部81の先端は凸部75の先端の下方に配置されている。これにより、凸部75の先端に形成される液滴を反応容器5内に導きやすくなる。特に、突起部81の少なくとも先端の表面に親水性処理を施しておけば、特に有効である。
【0091】
図18は反応容器プレートのさらに他の実施例の反応容器近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
この実施例は、図17を参照して説明した実施例と比べて、反応容器5の側壁に形成された段差部83と、反応容器5の上面とは間隔をもって段差部83の上面に形成された凸条部85をさらに備えている。段差部83及び凸条部85は上方から見て環状に形成されている。凸条部85の先端は反応容器5の側壁とは間隔をもって配置されている。
凸条部85の先端が反応容器5の上面及び側面とは間隔をもって配置されていることにより、反応容器5の内部に収容された液体が反応容器の側壁を伝って反応容器5の上面に到達するのを防止することができる。この効果は凸条部85の少なくとも先端部分に撥水処理を施しておくと特に有効である。
【0092】
図18に示した段差部83及び凸条部85を備えた構成は図16に示した実施例にも適用することができる。
また、図16、図17又は図18を参照して説明した各実施例では、流路13,15,17,19,21,23を形成するための溝は流路ベース11に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、それらの流路の全部又は一部分を形成するための溝は、流路スペーサ73の流路ベース11側表面、流路スペーサ73の容器ベース11側表面、容器ベース3表面のいずれに形成されていてもよい。
【0093】
また、シリンジ51について、シリンダ51aの一部分が切替えバルブ63の一部分によって形成されていてもよい。
図19は反応容器プレートのさらに他の実施例を示す図であり(A)は概略的な平面図、(B)は(A)のE−E位置での断面に計量流路15、注入流路17、サンプル容器エアー抜き流路19,21、液体ドレイン空間29、エアードレイン空間31及びベローズ53の断面を加えた概略的な断面図、(C)はシリンジ51及びベローズ53近傍を拡大して示す概略的な断面図である。図20は切替えバルブの概略的な分解図であり、(A)はシール板の平面図及び断面図、(B)はロータアッパーの平面図及び断面図、(C)はロータベースの平面図及び断面図を示す。
【0094】
この実施例では、シリンジ87のシリンダ87aは、例えばポリプロピレン、ポリカーボネートなどの樹脂素材により形成されており、切替えバルブ95のロータアッパー91と一体成形されたものである。
シリンジ87は、容器ベース3及び容器ボトム55に形成された貫通孔内に配置されたシリンダ87aと、シリンダ87a内に配置されたプランジャ87bとカバー体87dにより形成されている。
【0095】
カバー体87dはプランジャ87bの摺動方向に可撓性をもち、シリンダ87aとプランジャ87bに接続されている。カバー体87dは、シリンダ87aの内壁のプランジャ87bが接触する部分をシリンダ87a外の雰囲気とは気密性を保って遮断するためのものであり、シリンダ87aとプランジャ87bとカバー体87dで囲まれた封止空間87eを形成している。
【0096】
シリンダ87aに接続される側のカバー体87dの端部はシリンダキャップ87fによりシリンダ87aの上端に気密性を確保して固定されている。また、プランジャ87bに接続される側のカバー体87dの端部は接着剤によりプランジャ87bの上面に気密性を確保して接続されている。ただし、カバー体87dをシリンダ87a、プランジャ87bに接続する方法及び位置はこれに限定されるものではない。また、プランジャとカバー体は一体成形されたものであってもよい。一体成形されたプランジャとカバー体の材料として例えばシリコーンゴムを挙げることができる。
【0097】
このように、カバー体87dは、シリンダ87aとプランジャ87bに接続されてシリンダ87aとプランジャ87bとカバー体87dで囲まれた封止空間87eを形成しているので、シリンダ87aとプランジャ87bの間を介しての、外部からの異物の進入や、液体の外部への環境汚染が防ぐことができる。なお、カバー体87dはプランジャ87bの摺動方向に可撓性をもつので、プランジャ87bの摺動動作は可能である。
【0098】
図20も参照してシリンジエアー抜き流路53c及び切替えバルブ95について説明する。
切替えバルブ95は、円盤状のシール板89、ロータアッパー91及びロータベース93によって形成されている。切替えバルブ95はロック65により容器ボトム55に取り付けられている。
【0099】
シール板89は、その周縁部近傍に設けられ、流路13a,35a,37a,39aのいずれかに接続される貫通孔89aと、それよりも内側の同心円上で流路23a,25a,35b,37b,39b,53bのうち少なくとも2つ接続される貫通溝89bと、中心に設けられ、シリンダ87aが挿入される貫通孔89cを備えている。容器ボトム55に対向するシール板89の面にはフッ素樹脂層(図示は省略)が形成されている。
【0100】
ロータアッパー91は、その一表面の中央部に設けられた円筒状のシリンダ87aと、シール板89の貫通孔89aと同じ位置に設けられた貫通孔91aと、シール板89の貫通溝89bに対応して表面に設けられた溝91bと、溝91b内に設けられた貫通孔91cと、中心に設けられた貫通孔91dを備えている。貫通孔91dは、シリンダ87aの底部に設けられており、シリンダ87aの吐出口を構成する。
【0101】
ロータアッパー91には、シリンダ87aの上端面からロータアッパー91の裏面まで貫通している貫通孔からなるシリンジエアー抜き流路53cも形成されている。シリンダ87aの上端面にはシリンダ87aの内壁からシリンジエアー抜き流路53cにつながる切欠きが形成されている。この切欠きにより、図19(C)に示すように、シリンダ87aの上端面がカバー体87dで覆われた状態で封止空間87eとシリンジエアー抜き流路53cが連通する。
【0102】
ロータベース93は、ロータアッパー91の裏面と貼り合わされる表面に、ロータアッパー91に形成された貫通孔91aと貫通孔91dを接続するための溝93aと、ロータアッパー91に形成されたシリンジエアー抜き流路53cと91cを接続するための溝93bを備えている。
【0103】
シール板89、ロータアッパー91、ロータベース93は、図19に示すように、シール板89の貫通孔89cにシリンダ87aが挿入され、重ね合わされて配置されて、切替えバルブ95を形成する。
シリンダ87aの吐出口を構成する、ロータアッパー91の貫通孔91dは、ロータベース93の溝93a及びロータアッパー91の貫通孔91aを介して、シール板89の貫通孔89aに接続される。
封止空間87e(図19参照)は、シリンジエアー抜き流路53c、ロータベース93の溝93b、ロータアッパー91の貫通孔91c及び貫通溝91bを介して、シール板89の貫通溝89bに接続される。
【0104】
図19及び図20を参照して流路接続について説明する。
切替えバルブ95の回転により、シリンダ87aの吐出口を構成する、ロータアッパー91の貫通孔91dが溝93a、貫通孔91a及び貫通孔89aを介して、流路13a,35a,37a,39aのいずれかに接続される。
また、貫通孔91dが流路13a,35a,37a,39aのいずれかに接続されるのと同時に、エアー抜き流路53bが貫通溝89b,91bを介して流路23a,25a,35b,37b,39bのうちの少なくともいずれかに接続される。このとき、封止空間87eはシリンダエアー抜き流路53c、溝93b、貫通孔91c及び貫通溝89b,91bを介してエアー抜き流路53bに接続される。
【0105】
この実施例によれば、シリンジ87と切替えバルブ95の間の流路を無くすことができ、流路構成が簡単になる。
また、流路に継ぎ目がある場合には、継ぎ目部分で液体や気体の漏れが発生したり、継ぎ目部分に液だまりが発生したりすることがある。この実施例ではシリンダ87aとロータアッパー91は一体成形されているので、シリンジ87と切替えバルブ95の間に流路の継ぎ目が無く、シリンジ87と切替えバルブ95の間での漏れや液だまりの発生を無くすことができる。
また、継ぎ目部分での液だまりが発生すると、送液する液体の容量減少の懸念や、液だまりの液体と送液される他の液体との混合による液体のキャリーオーバーや汚染、濃度変動の懸念などが生じるが、この実施例ではシリンジ87と切替えバルブ95の間でのこれらの懸念もなくすことができる。
【0106】
また、切替えバルブ上にシリンジを配置する場合、図1に示したようにシリンジ51と切替えバルブ63の間に流路51cが形成されていると、流路51cが形成されている部分にはシリンダ51aを形成することができないが、図19に示した実施例ではシリンジ87と切替えバルブ95の間に流路がないので、シリンダ51a,81aの平面サイズが同じであってもシリンダ87aの容量をシリンダ51aに比べて大きくすることができる。
【0107】
また、シリンダ87aをシリンダ51aと同じ容量で形成する場合、シリンダ87aの高さをシリンダ51aと同じ平面サイズでシリンダ51aに比べて低くしたり、シリンダ87aの平面サイズをシリンダ51aと同じ高さでシリンダ51aに比べて小さくしたりすることができる。
例えば反応容器プレート1全体の平面サイズの制限からシリンダ51aの上端面を反応容器プレート1全体の上面から突出して配置しなければならない場合であっても、シリンダ87aの高さをシリンダ51aと同じ容量及び平面サイズでシリンダ51aに比べて低くすることができるので、シリンダ87aの上端面を反応容器プレート1全体の上面と同じ位置かそれよりも低い位置に配置することができる。これにより、シリンダの上端面が反応容器プレート全体の上面から突出している場合の不具合、例えば複数の反応容器プレートを積み重ねて保管する場合の不具合や、反応容器プレートの包装が大きくなる等の不具合をなくすことができる。
また、シリンダ87aの平面サイズをシリンダ51aと同じ容量でシリンダ51aに比べて小さくすれば、反応容器プレート1全体の平面サイズの縮小も可能である。
【0108】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、形状、材料、配置、個数、寸法、流路構成などは一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0109】
例えば、エアー抜き流路53bに接続されたベローズ53は内部容量が受動的に可変な容量可変部材であれば他の構造であってもよい。そのような構造として例えば可撓材料からなる袋状のものや、シリンジ状のものなどを挙げることができる。
また、ベローズ53等の容量可変部材は必ずしも備えていなくてもよい。
また、容器35,37,39に試薬等の液体を予め収容しないのであれば、エアー抜き流路の一部分に細孔からなる流路35e,37e,39eを必ずしも備えている必要はない。
【0110】
また、上記の実施例では、封止容器としての容器35,37,39に連通して設けられたエアー抜き流路35b,37b,39bは切替えバルブ63を介してエアー抜き流路53bに接続されるが、封止容器に連通して設けられるエアー抜き流路は反応容器プレート外部、又はベローズ53等の容量可変部に直接接続されていてもよい。
また、容器35,37,39の封止方法として開閉可能なキャップを用いてもよい。
【0111】
また、上記実施例では容器ベース3は1つの部品により形成されているが、容器ベースは複数の部品によって形成されていてもよい。
また、反応容器5内の試薬は乾燥試薬でもよい。
また、サンプル容器35内や反応容器5内に予め試薬は収容されていなくてもよい。
また、上記実施例では試薬容器37に希釈水49が収容されているが、希釈水49に変えて試薬を収容するようにしてもよい。
【0112】
また、容器ベース3に遺伝子増幅反応を行なうための遺伝子増幅容器を備えているようにしてもよい。例えば、試薬容器37を空の状態にしておけば、遺伝子増幅容器として用いることができる。
【0113】
また、反応容器5内に遺伝子増幅反応を行なうための試薬を収容しておけば、反応容器5内で遺伝子増幅反応を行なうことができる。
また、主流路13に導入される液体に遺伝子が含まれている場合、反応容器5内にその遺伝子と反応するプローブを備えているようにしてもよい。
【0114】
また、上記実施例では、シリンジ51は切替えバルブ63上に配置されているが、シリンジ51を配置する位置は切替えバルブ63上に限定されるものではなく、どこでもよい。
また、上記実施例では切替えバルブとしてロータリー式の切替えバルブ63を用いているが、切替えバルブはこれに限定されるものではなく、種々の流路切替えバルブを用いることができる。また、切替えバルブを複数備えていてもよい。
【0115】
また、上記実施例では、1本の主流路13を備え、すべての計量流路15が主流路13に接続されているが、流路構成はこれに限定されるものではない。例えば、複数本の主流路を設け、各主流路に1つ又は複数の計量流路を接続するようにしてもよい。
【0116】
上記実施例において、主流路は密閉可能なものであるが、主流路の両端が開閉可能になっていることにより主流路が密閉可能になっている例を挙げることができる。ここで、「主流路の両端が開閉可能になっている」とは、主流路の端部に他の空間が接続され、この他の空間の、主流路とは反対側の端部が開閉可能になっている場合も含む。例えば、上記実施例では、流路13aや、液体ドレイン空間29、ドレイン空間エアー抜き流路23及び流路23aが上記他の空間に相当する。
また、上記実施例において、反応容器エアー抜き流路は密閉可能なものであるが、反応容器エアー抜き流路の反応容器とは反対側の端部が開閉可能になっていることにより反応容器エアー抜き流路が密閉可能になっている例を挙げることができる。ここで、「反応容器エアー抜き流路の反応容器とは反対側の端部が開閉可能になっている」とは、反応容器エアー抜き流路の反応容器とは反対側の端部に他の空間が接続され、この他の空間の、反応容器エアー抜き流路とは反対側の端部が開閉可能になっている場合も含む。例えば、上記実施例では、エアードレイン空間31、ドレイン空間エアー抜き流路25及び流路25aが上記他の空間に相当する。
このような態様では、主流路及び計量流路に液体が導入され、次に主流路内の上記液体がパージされ、さらに計量流路内に残存する上記液体が反応容器内に注入された後、主流路の両端、及び反応容器エアー抜き流路の反応容器とは反対側の端部が閉じられて主流路及び反応容器エアー抜き流路が密閉される。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は種々の化学反応や生物化学反応の測定に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】反応容器プレートの一実施例を示す図であり(A)は概略的な平面図、(B)は(A)のA−A位置での断面にベローズ、ドレイン空間、計量流路、注入流路及びサンプル容器エアー抜き流路の断面を加えた概略的な断面図、(C)はシリンジ51及びベローズ53近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
【図2】同実施例を分解して示す断面図及び切替えバルブの概略的な分解斜視図である。
【図3】同実施例の1つの反応容器近傍を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は断面図である。
【図4】同実施例のサンプル容器を拡大して示した図であり(A)は平面図、(B)は(A)のB−B位置での断面図である。
【図5】同実施例の試薬容器を拡大して示した図であり(A)は平面図、(B)は(A)のC−C位置での断面図である。
【図6】同実施例のエアー吸引用容器を拡大して示した図であり(A)は平面図、(B)は(A)のD−D位置での断面図である。
【図7】反応容器プレートを処理するための反応処理装置を反応容器プレートとともに示した概略的な断面図である。
【図8】サンプル容器からサンプル液を反応容器に導入する動作を説明するための平面図である。
【図9】図8に続く動作を説明するための平面図である。
【図10】図9に続く動作を説明するための平面図である。
【図11】図10に続く動作を説明するための平面図である。
【図12】図11に続く動作を説明するための平面図である。
【図13】図12に続く動作を説明するための平面図である。
【図14】図13に続く動作を説明するための平面図である。
【図15】サンプル容器からサンプル液を反応容器に導入する動作時における注入流路の動作を説明するための断面図である。
【図16】反応容器プレートの他の実施例の反応容器近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
【図17】反応容器プレートのさらに他の実施例の反応容器近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
【図18】反応容器プレートのさらに他の実施例の反応容器近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
【図19】反応容器プレートのさらに他の実施例を示す図であり(A)は概略的な平面図、(B)は(A)のE−E位置での断面に計量流路15、注入流路17、サンプル容器エアー抜き流路19,21、液体ドレイン空間29、エアードレイン空間31及びベローズ53の断面を加えた概略的な断面図、(C)はシリンジ51及びベローズ53近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
【図20】同実施例の切替えバルブの概略的な分解図であり、(A)はシール板の平面図及び断面図、(B)はロータアッパーの平面図及び断面図、(C)はロータベースの平面図及び断面図を示す。
【符号の説明】
【0119】
1 反応容器プレート
3 容器ベース
5 反応容器
11 流路ベース
13 主流路
15 計量流路
15a 計量流路の基端部
15b 計量流路の先端部
17 注入流路
17a 注入流路の一端
17b 注入流路の他端
18 凹部
19,21 反応容器エアー抜き流路
35 サンプル容器
35b,35d,35e サンプル容器エアー抜き流路
37 試薬容器
37b,37d,37e 試薬容器エアー抜き流路
39 エアー吸引用容器
39b,39d,39e エアー吸引用容器エアー抜き流路
51,87 シリンジ
51a,87a シリンダ
51b,87b プランジャ
51d,87d カバー体
51e,87e 封止空間
53 ベローズ(容量可変部)
53c シリンジエアー抜き流路
63,95 切替えバルブ
73 流路スペーサ
75 凸部
77 注入流路
79 反応容器エアー抜き流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、前記ベース基板の一表面にその一表面が貼り合わされたカバー基板と、前記ベース基板の前記一表面もしくは前記カバー基板の前記一表面又はその両方に形成された凹部からなる反応容器と、前記ベース基板の前記一表面もしくは前記カバー基板の前記一表面又はその両方に形成された溝からなり、前記反応容器に接続された反応容器流路と、を備え、
前記反応容器流路は、主流路と、前記主流路から分岐した所定容量の計量流路と、一端が前記計量流路に接続され他端が前記反応容器に接続された注入流路を備え、
前記カバー基板は少なくとも前記注入流路を形成している部分が弾性体によって形成されており、
前記注入流路は、少なくとも一部分が前記計量流路よりも細く形成されており、前記注入流路にかかる圧力によって前記カバー基板の注入流路形成部分が前記ベース基板から浮き上がる又は元に戻ることでその流路断面積が可変になっており、前記主流路及び前記計量流路に液体が導入されるときの液体導入圧力状態並びに前記主流路内の前記液体がパージされるときのパージ圧力状態では前記液体を通さず、それらよりも大きい加圧の注入圧力状態で前記カバー基板の注入流路形成部分が前記ベース基板から浮き上がって前記液体を通すものである反応容器プレート。
【請求項2】
前記カバー基板は全体が一体成形された弾性体によって形成されており、前記注入流路を形成している部分の厚みが前記主流路を形成している部分及び前記計量流路を形成している部分の厚みよりも薄く形成されている請求項1に記載の反応容器プレート。
【請求項3】
前記注入流路の水滴に対する接触角は90度以上であり、前記注入流路と前記計量流路の境界の面積は前記カバー基板の注入流路形成部分が前記ベース基板から浮き上がっていない状態で1〜10000000μm2である請求項1又は2に記載の反応容器プレート。
【請求項4】
複数の前記反応容器を備え、それらの反応容器ごとに前記計量流路及び前記注入流路を備え、前記主流路に複数の前記計量流路が接続されている請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項5】
前記反応容器に接続された反応容器エアー抜き流路をさらに備えている請求項1から4のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項6】
前記反応容器とは別途設けられた封止容器と、
前記封止容器に接続される封止容器流路と、
液体を送液するためのシリンジと、
前記シリンジを前記反応容器流路又は前記封止容器流路に接続するための切替えバルブと、をさらに備えている請求項1から5のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項7】
前記封止容器及び前記封止容器流路の組を複数備え、
前記切替えバルブは前記シリンジをいずれの前記封止容器流路にも接続可能なものである請求項1から6のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項8】
前記切替えバルブはロータリー式バルブである請求項6又は7に記載の反応容器プレート。
【請求項9】
前記ロータリー式バルブはその回転中心に前記シリンジにつながるポートを備え、
前記シリンジは前記ロータリー式バルブ上に配置されている請求項8に記載の反応容器プレート。
【請求項10】
前記封止容器はサンプル液を収容するためのサンプル容器である請求項6から9のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項11】
前記サンプル容器は、尖端の鋭利な分注器具により貫通でき、かつ貫通後に前記分注器具を引き抜くとその貫通孔を弾性によって閉じることのできる弾性部材によって密封されている請求項10に記載の反応容器プレート。
【請求項12】
前記封止容器に予めサンプル前処理液又は試薬が収容されている請求項6から11のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項13】
前記封止容器からなり遺伝子増幅反応を行なうための遺伝子増幅容器も備えている請求項6から12のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項14】
前記反応容器は少なくとも呈色反応、酵素反応、蛍光や化学発光又は生物発光を生じる反応のいずれかの反応を行なうためのものである請求項1から13のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項15】
遺伝子を含んだサンプルを測定するための反応容器プレートであり、前記反応容器で遺伝子増幅反応を行なうことができるようになっている請求項1から14のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項16】
前記反応容器はその底部又は上方から光学的に測定が可能なように光透過性の材質にて構成されている請求項1から15のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項17】
前記反応容器は、前記反応容器に注入される液体に遺伝子が含まれている場合にその遺伝子と反応するプローブを備えている請求項1から16のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項18】
請求項1から17いずれか一項に記載の前記反応容器プレートを用いた反応処理方法であって、
前記導入圧力で前記主流路及び前記計量流路に液体を充填し、
前記主流路に気体を流して前記計量流路内に前記液体を残存させつつ前記主流路内の前記液体を除去し、
前記主流路内を前記導入圧力よりも大きい注入圧力に加圧することより前記注入流路を介して前記計量流路内の前記液体を前記反応容器に注入することを特徴とする反応処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−85862(P2009−85862A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258461(P2007−258461)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】