説明

反応容器ホルダおよび分析装置

【課題】回転部材から反応容器の底面に伝達される熱の伝達効率の低下を抑制することができる反応容器ホルダおよびこの反応容器ホルダを備えた分析装置を提供すること。
【解決手段】試薬と検体との反応液を収容する反応容器7を保持する容器保持部8bを複数有する保持部材ユニット8Aと、保持部材ユニット8Aを上方から着脱自在に固定して回転する円状の回転部材9とを有し、熱源Hから回転部材9を介して反応容器7に熱を伝達することによって反応容器7を一定温度に保つ反応容器ホルダ6において、回転部材9は、保持部材ユニット8Aを固定した際に、保持部材ユニット8Aによって保持された反応容器7の底面の下方、かつ容器保持部8bの底部よりも上方に上面9cが位置する段差部9bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試薬と検体との反応液を収容する複数の反応容器を一定温度に保つ反応容器ホルダおよびこの反応容器ホルダを備えた分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、人間の体温程度の温度に保って検体と試薬とを反応させた反応液を光学的に測定することによって検体の分析を行っている。このため、分析装置は、反応液を収容する複数の反応容器を一定温度に保って回転する反応容器ホルダを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような反応容器ホルダは、反応容器を保持する保持部を複数有する保持部材と、この保持部材を上方から着脱自在に固定して回転する円状の回転部材とを有し、回転部材から保持部材を取り外して保持部材を清掃できるようにしたものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−58250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した保持部材と回転部材とを有する従来の反応容器ホルダでは、空の保持部材に反応容器を保持させた後に、保持部材を回転部材に取り付けて固定させているので、保持部材に反応容器を保持させた状態、あるいは回転部材への保持部材の固定状態によっては、反応容器の底面と回転部材との間に隙間が発生してしまう場合がある。このような隙間が発生すると回転部材から反応容器の底面に伝達される熱の伝達効率が低下してしまう問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みて為されたものであって、回転部材から反応容器の底面に伝達される熱の伝達効率の低下を抑制することができる反応容器ホルダおよびこの反応容器ホルダを備えた分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる反応容器ホルダは、試薬と検体とを含む液体試料を収容する反応容器を保持する保持部を複数有する保持部材と、該保持部材を上方から着脱自在に固定して回転する円状の回転部材とを有し、熱源から前記回転部材を介して前記反応容器に熱を伝達することによって前記反応容器を一定温度に保つ反応容器ホルダにおいて、前記回転部材は、前記保持部材を固定した際に、段差の上面が前記保持部内で該保持部の底部よりも上方に位置する段差部を有することを特徴とする。
【0007】
また、この発明にかかる反応容器ホルダは、上記の発明において、前記段差部は、前記回転部材の外縁に周方向に沿って形成された凸部であり、前記保持部材を前記回転部材に固定した際に、前記保持部と嵌合することを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる反応容器ホルダは、上記の発明において、前記段差部は、上方が狭くなる角錐台あるいは円錐台に形成されることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる反応容器ホルダは、上記の発明において、前記保持部は、外周側の側壁を下方に突出させた突出片を有し、前記突出片は、前記保持部材を前記回転部材に固定した際に、前記段差部と係合することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる反応容器ホルダは、上記の発明において、前記段差部は、段差の上面に弾性を有する熱伝導材が被着されていることを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分析装置は、前記反応容器に収容された検体と試薬との反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する分析装置であって、前記反応容器ホルダを用いて前記反応液を光学的に分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、試薬と検体とを含む液体試料を収容する反応容器を保持する保持部を複数有する保持部材と、該保持部材を上方から着脱自在に固定して回転する円状の回転部材とを有し、熱源から前記回転部材を介して前記反応容器に熱を伝達することによって前記反応容器を一定温度に保つ反応容器ホルダにおいて、前記回転部材は、前記保持部材を固定した際に、段差の上面が前記保持部内で該保持部の底部よりも上方に位置する段差部を有している。このため、前記反応容器の底面が前記保持部の底部より高い位置に保持されていた場合、あるいは前記保持部の底部が前記回転部材に対して所定よりも高い位置に固定された場合においても、前記反応容器の底部と回転部材との間に発生する隙間を低減することができるので、回転部材から反応容器の底面に伝達される熱の伝達効率の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明にかかる反応容器ホルダおよび分析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。実施の形態にかかる分析装置1は、測定部2および制御装置20を有する。測定部2は、検体および試薬を反応容器7内にそれぞれ分注し、反応容器7で生じる反応を光学的に測定する。制御装置20は、測定部2を含む分析装置1全体の制御を行うとともに測定部2における測定結果の分析を行う。
【0015】
測定部2は、検体テーブル4、検体分注機構5、反応容器ホルダ6、攪拌装置10、測光装置11、洗浄装置12、試薬テーブル13および試薬分注機構14を有する。
【0016】
検体テーブル4は、図示しない駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、検体を収容した検体容器4aが着脱自在に収納される。
【0017】
検体分注機構5は、反応容器ホルダ6に保持された複数の反応容器7に検体を分注する手段であり、検体テーブル4の複数の検体容器4aから検体を順次反応容器7に分注する。
【0018】
反応容器ホルダ6は、図示しない駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、複数の反応容器7を一定温度に保って保持することによって反応容器7内に分注される試薬と検体とを含む液体試料を一定温度に保つ。反応容器ホルダ6は、保持部材8および回転部材9を有する。
【0019】
保持部材8は、複数の保持部材ユニット8Aからなり、各保持部材ユニット8Aは、ねじ6aによって回転部材9の周方向に沿って着脱自在に固定される。保持部材ユニット8Aは、略直方体形状の反応容器7を保持する複数の容器保持部8bを有する。
【0020】
回転部材9は、図示しない駆動機構によって、反応容器ホルダ6の中心を通る鉛直線を回転軸として回転する円状の部材である。回転部材9は、図2に示すように、段差部9bを有する。段差部9bは、回転部材9の外縁に周方向に沿って形成された略直方体形状の凸部である。段差部9bの上面9cは、保持部材ユニット8Aを固定した際に、容器保持部8b内で容器保持部8bの底部よりも上方に段差の上面9cが位置する。回転部材9の下方には、熱源Hが設けられている。熱源Hから出される熱は、回転部材9を介して反応容器7に伝達される。
【0021】
攪拌装置10は、反応容器7に収容された試薬と検体とを含む液体試料を攪拌する。
【0022】
測光装置11は、反応容器7に収容された検体と試薬とを反応させた反応液を分析する分析光を出射する光源と、反応液を透過した分析光を分光して受光する受光器とを有する。測光装置11は、反応容器7内の反応液の光学的特性を測定し、測定結果を制御装置20に出力する。
【0023】
洗浄装置12は、測光装置11による測定が終了した反応容器7内の洗浄を行う。
【0024】
試薬テーブル13は、図示しない駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、試薬を収容した試薬容器13aが着脱自在に収納される。
【0025】
試薬分注機構14は、反応容器ホルダ6に保持された複数の反応容器7に試薬を分注する手段であり、試薬テーブル13の所定の試薬容器13aから試薬を順次反応容器7に分注する。
【0026】
制御装置20は、制御部21、分析部22、入力部23および表示部24を有する。制御部21は、測定部2および制御装置20内の上述した各部と接続され、マイクロコンピュータ等によって実現される。制御部21は、分析装置1の各部の作動を制御する。
【0027】
分析部22は、測光装置11が測定した反応容器7内の反応液の光学的特性から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部21に出力する。入力部23は、制御部21へ検査項目等を入力する操作を行う操作部であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。表示部24は、分析内容、分析結果あるいは警告等を表示するもので、ディスプレイパネル等によって実現される。
【0028】
以上のように構成される分析装置1は、回転する反応容器ホルダ6によって周方向に沿って移送される複数の反応容器7に試薬分注機構14が試薬容器13aから試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器7は、反応容器ホルダ6によって周方向に沿って移送され、検体分注機構5によって検体テーブル4に保持された複数の検体容器4aから検体が順次分注される。その後、検体が分注された反応容器7は、反応容器ホルダ6によって攪拌装置10へ搬送され、分注された試薬と検体が順次攪拌されて反応する。このようにして検体と試薬とが反応した反応液を収容した反応容器7は、反応容器ホルダ6が再び回転したときに測光装置11を通過し、光源から出射された分析光が透過する。このとき、反応液を透過した分析光は、光学的特性を測定され、分析部22によって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、洗浄装置12によって洗浄される。分析装置1は、このような一連の分析動作を連続して行う。
【0029】
つぎに、図3および図4を参照して、作業者が回転部材9に保持部材ユニット8Aを固定する手順について説明する。まず、作業者は、複数の容器保持部8bに反応容器7を挿入し、机等の平坦な作業平面S上で保持部材ユニット8Aを正立させる。これにより、反応容器7は、容器保持部8bの底部近傍に反応容器7の底面を位置させた状態で保持部材ユニット8Aに保持される(図3(a)参照)。なお、反応容器7は、図3(a)に示すように、反応容器7の底面を容器保持部8bの底部よりも上方に位置して保持される場合がある。その後、容器保持部8bと段差部9bとが嵌合するように保持部材ユニット8Aを上方から回転部材9に組み付ける(図3(b)参照)。
【0030】
次に、作業者は、ねじ6aの締め付けを開始する。これにより、保持部材ユニット8Aが回転部材9に固定される位置に向けて下降を開始し、この下降の途中で段差部9bの上面9cが反応容器7の底面に当接する(図4(a)参照)。図4(a)に示すように、段差部9bが上面9cを容器保持部8bの底部よりも上方に位置するように容器保持部8bと嵌合することによって、反応容器7が底面を容器保持部8bの底部よりも上方に位置して保持されている場合においても、段差部9bの上面9cが反応容器7の底面に当接する。その後、ねじ6aの締め付けとともに、保持部材ユニット8Aが反応容器7を段差部9bの上面9cに残したまま下降し、ねじ6aの締め付けにかかる抵抗が強くなった時、保持部材ユニット8Aは回転部材9に固定される(図4(b)参照)。
【0031】
この実施の形態では、回転部材9は、保持部材ユニット8Aを固定した際に、段差部9bの上面9cが容器保持部8b内で容器保持部8bの底部よりも上方に位置するため、反応容器7の底面が容器保持部8bの底部より高い位置に保持されていた場合、あるいは容器保持部8bの底部が回転部材9に対して所定よりも高い位置に固定された場合においても、反応容器7の底部と回転部材9との間の隙間の発生を低減することができる。従って、回転部材9から反応容器7の底面に伝達される熱の伝達効率の低下を抑制することができる。
【0032】
また、この実施の形態では、容器保持部8bと段差部9bとを嵌合させて保持部材ユニット8Aを回転部材9に固定しているため、保持部材8を回転部材9に対して正しい位置に固定させることができる。
【0033】
(変形例1)
ここで、実施の形態の変形例1について説明する。この変形例1では、回転部材9の段差部は、例えば、図5に示す段差部9dのように、上方が狭くなる角錐台形状に形成する。このような段差部9dでは、段差部9dの傾斜する側面に導かれて容器保持部8bと段差部9dとが嵌合するため、容器保持部8bと段差部9dとを容易に嵌合することができる。なお、段差部9dは、上方が狭くなる円錐台形状に形成してもよい。
【0034】
(変形例2)
つぎに、実施の形態の変形例2について説明する。この変形例2では、回転部材9の段差部は、例えば、図6に示す段差部9fのように、弾性を有する熱伝導材9gが、段差部9fの上面9hに被着される。熱伝導材9gは、熱伝導性を有する接着材によって段差部9fの上面9hに被着されてもよいし、熱伝導材9g自体が段差部9fの上面9hに直接被着されてもよい。この場合、段差部9fの上面9hが反応容器7の底面に当接すると、熱伝導材9gが弾性変形するので、反応容器7の底面と段差部9fとをより密着させることができる。
【0035】
(変形例3)
つぎに、実施の形態の変形例3について説明する。この変形例3では、図7に示すように、保持部材ユニット8Aの容器保持部8bは、水平方向で向かい合う側壁8c,8dの外周側の側壁8dを下方に突出させた突出片8eを有する。回転部材9から外した保持部材ユニット8Aに反応容器7を容器保持部8bに挿入した場合、反応容器7は、突出片8eの底部近傍に反応容器7の底面を位置させた状態で保持部材ユニット8Aに保持される。保持部材ユニット8Aを回転部材9に固定した際に、突出片8eが、段差部9iと係合することにより、段差部9iの上面9kが容器保持部8b内で突出片8eの底部よりも上方に位置する。このため、反応容器7が反応容器7の底面を突出片8eの底部より高い位置にして保持されていた場合、あるいは保持部材ユニット8Aが、突出片8eの底部を回転部材9に対して所定よりも高い位置にして固定された場合においても、反応容器7の底部と回転部材9との間の隙間の発生を低減することができる。
【0036】
なお、この実施の形態では、保持部材8は、複数の保持部材ユニット8Aからなるものを例示したが、一体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施の形態にかかる分析装置の構成を示す摸式図である。
【図2】図1に示した反応容器ホルダのA部拡大断面図である。
【図3】図1に示した回転部材に保持部材ユニットを固定する手順を説明する図である。
【図4】図1に示した回転部材に保持部材ユニットを固定する手順を説明する図である。
【図5】図1に示した反応容器ホルダの変形例1を説明する図である。
【図6】図1に示した反応容器ホルダの変形例2を説明する図である。
【図7】図1に示した反応容器ホルダの変形例3を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
1 分析装置
2 測定部
4 検体テーブル
5 検体分注機構
6 反応容器ホルダ
6a ねじ
7 反応容器
8 保持部材
8A 保持部材ユニット
8a、9a ねじ穴
8b 容器保持部
8c、8d 壁
8e 突出片
9 回転部材
9b、9d、9f、9i 段差部
9c、9e、9h、9k 面
10 攪拌装置
11 測光装置
12 洗浄装置
13 試薬テーブル
13a 試薬容器
14 試薬分注機構
20 制御装置
H 熱源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬と検体とを含む液体試料を収容する反応容器を保持する保持部を複数有する保持部材と、該保持部材を上方から着脱自在に固定して回転する円状の回転部材とを有し、熱源から前記回転部材を介して前記反応容器に熱を伝達することによって前記反応容器を一定温度に保つ反応容器ホルダにおいて、
前記回転部材は、前記保持部材を固定した際に、段差の上面が前記保持部内で該保持部の底部よりも上方に位置する段差部を有することを特徴とする反応容器ホルダ。
【請求項2】
前記段差部は、前記回転部材の外縁に周方向に沿って形成された凸部であり、前記保持部材を前記回転部材に固定した際に、前記保持部と嵌合することを特徴とする請求項1に記載の反応容器ホルダ。
【請求項3】
前記段差部は、上方が狭くなる角錐台あるいは円錐台に形成されることを特徴とする請求項2に記載の反応容器ホルダ。
【請求項4】
前記保持部は、外周側の側壁を下方に突出させた突出片を有し、
前記突出片は、前記保持部材を前記回転部材に固定した際に、前記段差部と係合することを特徴とする請求項1に記載の反応容器ホルダ。
【請求項5】
前記段差部は、段差の上面に弾性を有する熱伝導材が被着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の反応容器ホルダ。
【請求項6】
前記反応容器に収容された検体と試薬との反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する分析装置であって、請求項1〜5のいずれか1つに記載の反応容器ホルダを用いて前記反応液を光学的に分析することを特徴とする分析装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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