説明

反応性外科手術用移植物

【課題】多孔性であり、組織の構造に合致し、そして最小侵襲性の様式で送達される、外科手術用移植物を処方に従って作製すること。
【解決手段】約10μm〜約500μmのサイズを有する微粒子を含有する第一の成分;および少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の成分を含む、噴霧可能な外科手術用移植物を提供する。ある実施形態において、上記第二の成分は、上記少なくとも1種の架橋試薬で表面修飾された微粒子を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外科手術用移植物に関し、そしてより特定すると、軟組織修復のための移植物に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの外科手術用移植物(例えば、外科手術用メッシュ)は、軟組織に対する支持を提供するために、インサイチュで使用され得る。外科手術用メッシュは、多孔性であっても非多孔性であってもよい。多孔性であるものは、移植後および治癒プロセス中に、組織の内方成長を可能にし得る。
【0003】
多孔性外科手術用移植物は、凍結乾燥、発泡体からの塩浸出、またはメッシュを布から形成することなどの方法によって、予め形成され得る。インサイチュで形成され得る他の移植物が開発されている。これらのインサイチュで形成する移植物は、最小侵襲性手順中に送達可能であり得、そして複雑な組織の構造に合致することが可能であり得る。このようなインサイチュで形成する移植物は、ヒドロゲルの形態を取り得る。これらのヒドロゲルは、組織の内方成長を可能にする多孔性の構造を欠き得、そして一体化された支持体よりむしろシールを形成し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多孔性であり、組織の構造に合致し、そして最小侵襲性の様式で送達される、外科手術用移植物を処方に従って作製することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1A)
約10μm〜約500μmのサイズを有する微粒子を含有する第一の成分;および
少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の成分、
を含む、外科手術用移植物。
(項目2A)
上記第二の成分が、上記少なくとも1種の架橋試薬で表面修飾された微粒子を含有する、上記項目に記載の外科手術用移植物。
(項目3A)
上記微粒子が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリヒドロキシ酸、多糖類、脂質、ポリアミド、ポリアミン、ビニルポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目4A)
上記微粒子がポリヒドロキシ酸を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目5A)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、ビオチン/アビジン結合、抗体/抗原結合、ペプチド結合する配列、ヌクレオチド塩基の対合、自己集合性ペプチド、鍵と鍵穴タンパク質結合、クリック化学、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される機構を利用して反応する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目6A)
上記第一の成分および第二の成分が、UVベースの系、糖ベースの系、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される機構を使用して架橋する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目7A)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、N−ヒドロキシスクシンイミド、反応性シリコーン、アクリレート、アルデヒド、イソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの反応性基をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目8A)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、アミンを含む反応性基を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目9A)
生物活性因子をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目10A)
上記生物活性因子が、麻酔薬、脈管形成薬、鎮痙薬、抗炎症薬、鎮痛薬、抗生物質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目11A)
上記外科手術用移植物が、インサイチュで形成するメッシュを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目12A)
上記外科手術用移植物が、インサイチュで形成する足場を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目13A)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、スクシンイミドエステルを含む反応性基を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目14A)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、溶液中にある、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目15A)
上記第一の成分と上記第二の成分との両方が溶液中にあり、そして該溶液中の上記微粒子の濃度が、約0.5重量%〜約50重量%であり、そして該溶液中の上記少なくとも1種の架橋試薬の濃度が、約5重量%〜約95重量%である、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目16A)
上記微粒子が、微小球、微小棒、微小繊維、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される形状を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目17A)
表面修飾されたタンパク質微粒子を含有する第一の成分;および
少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の成分、
を含み、該表面修飾されたタンパク質微粒子が、約10μm〜約500μmのサイズを有する、外科手術用移植物。
(項目18A)
上記第二の成分が、上記少なくとも1種の架橋試薬で表面修飾された微粒子を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目19A)
上記表面修飾されたタンパク質微粒子が、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、エラスチン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目20A)
上記表面修飾されたタンパク質微粒子がコラーゲンを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目21A)
上記架橋試薬が、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドアクリレート、スクシンイミジルグルタレート、N−ヒドロキシスクシンイミドヒドロキシブチレート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される反応性基を有するポリエチレングリコールを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目22A)
上記表面修飾されたタンパク質微粒子が生物活性因子を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目23A)
上記生物活性因子が、フィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンジン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるペプチドを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目24A)
上記外科手術用移植物が、インサイチュで形成するメッシュを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目25A)
上記外科手術用移植物が、インサイチュで形成する足場を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目26A)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、アミンを含む反応性基を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目27A)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、スクシンイミドエステルを含む反応性基を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目28A)
多孔性外科手術用移植物を形成するためのシステムであって、
約10μm〜約500μmのサイズを有する微粒子を含有する第一の溶液;および
少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の溶液;
を備え、
該第一の溶液および該第二の溶液は、組織上に導入されること;ならびに
該少なくとも1種の架橋試薬が該微粒子とインサイチュで反応し、これによって、多孔性外科手術用移植物を形成すること、
を特徴とする、システム。
(項目29A)
上記第一の溶液が、上記微粒子に封入された生物活性因子をさらに含有する、上記項目に記載のシステム。
(項目30A)
上記生物活性因子が、幹細胞、軟骨細胞、免疫応答性細胞、神経細胞、グリア細胞、脂肪細胞、心臓細胞、筋肉細胞、内皮細胞、骨芽細胞、脈管細胞、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目31A)
上記生物活性因子が局所麻酔薬を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目32A)
上記生物活性因子が局所鎮痛薬を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目33A)
上記第一の溶液が、生物活性因子で表面修飾された微粒子を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目34A)
上記第一の溶液および第二の溶液が、噴霧によって上記組織上に導入されることを特徴とする、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目35A)
上記生物活性因子が、増殖因子、成長因子、ペプチド、DNA、siRNA、タンパク質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目1B)
約10μm〜約500μmのサイズを有する微粒子を含有する第一の成分;および
少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の成分、
を含む、外科手術用移植物。
(項目2B)
上記第二の成分が、上記少なくとも1種の架橋試薬で表面修飾された微粒子を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目3B)
上記微粒子が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリヒドロキシ酸、多糖類、脂質、ポリアミド、ポリアミン、ビニルポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目4B)
上記微粒子がポリヒドロキシ酸を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目5B)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、ビオチン/アビジン結合、抗体/抗原結合、ペプチド結合する配列、ヌクレオチド塩基の対合、自己集合性ペプチド、鍵と鍵穴タンパク質結合、クリック化学、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される機構を利用して反応する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目6B)
上記第一の成分および第二の成分が、UVベースの系、糖ベースの系、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される機構を使用して架橋する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目7B)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、N−ヒドロキシスクシンイミド、反応性シリコーン、アクリレート、アルデヒド、イソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの反応性基をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目8B)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、アミンを含む反応性基を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目9B)
生物活性因子をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目10B)
上記生物活性因子が、麻酔薬、脈管形成薬、鎮痙薬、抗炎症薬、鎮痛薬、抗生物質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目11B)
上記外科手術用移植物が、インサイチュで形成するメッシュを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目12B)
上記外科手術用移植物が、インサイチュで形成する足場を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目13B)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、スクシンイミドエステルを含む反応性基を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目14B)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、溶液中にある、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目15B)
上記第一の成分と上記第二の成分との両方が溶液中にあり、そして該溶液中の上記微粒子の濃度が、約0.5重量%〜約50重量%であり、そして該溶液中の上記少なくとも1種の架橋試薬の濃度が、約5重量%〜約95重量%である、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目16B)
上記微粒子が、微小球、微小棒、微小繊維、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される形状を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目17B)
表面修飾されたタンパク質微粒子を含有する第一の成分;および
少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の成分、
を含み、該表面修飾されたタンパク質微粒子が、約10μm〜約500μmのサイズを有する、外科手術用移植物。
(項目18B)
上記第二の成分が、上記少なくとも1種の架橋試薬で表面修飾された微粒子を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目19B)
上記表面修飾されたタンパク質微粒子が、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、エラスチン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目20B)
上記表面修飾されたタンパク質微粒子がコラーゲンを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目21B)
上記架橋試薬が、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドアクリレート、スクシンイミジルグルタレート、N−ヒドロキシスクシンイミドヒドロキシブチレート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される反応性基を有するポリエチレングリコールを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目22B)
上記表面修飾されたタンパク質微粒子が生物活性因子を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目23B)
上記生物活性因子が、フィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンジン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるペプチドを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目24B)
上記外科手術用移植物が、インサイチュで形成するメッシュを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目25B)
上記外科手術用移植物が、インサイチュで形成する足場を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目26B)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、アミンを含む反応性基を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目27B)
上記第一の成分、上記第二の成分、またはこれらの両方が、スクシンイミドエステルを含む反応性基を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目28B)
約10μm〜約500μmのサイズを有する微粒子を含有する第一の溶液を形成する工程;
少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の溶液を形成する工程;
該第一の溶液および該第二の溶液を組織上に導入する工程;ならびに
該少なくとも1種の架橋試薬を該微粒子とインサイチュで反応させる工程であって、これによって、多孔性外科手術用移植物を形成する、工程、
を包含する、方法。
(項目29B)
上記第一の溶液を形成する工程が、生物活性因子を上記微粒子に封入する工程をさらに包含する、上記項目に記載の方法。
(項目30B)
上記生物活性因子が、幹細胞、軟骨細胞、免疫応答性細胞、神経細胞、グリア細胞、脂肪細胞、心臓細胞、筋肉細胞、内皮細胞、骨芽細胞、脈管細胞、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目31B)
上記生物活性因子が局所麻酔薬を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目32B)
上記生物活性因子が局所鎮痛薬を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目33B)
上記第一の溶液を形成する工程が、上記微粒子の表面を生物活性因子で修飾する工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目34B)
上記第一の溶液および第二の溶液を組織上に導入する工程が、組織上に噴霧する工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目35B)
上記生物活性因子が、増殖因子、成長因子、ペプチド、DNA、siRNA、タンパク質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0006】
(摘要)
本開示は、噴霧可能な外科手術用移植物に関する。この移植物は、微粒子を含有する第一の成分、および少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の成分を含む。この少なくとも1種の架橋試薬は、これらの微粒子と反応して、この外科手術用移植物を形成する。
【0007】
(要旨)
本開示は、外科手術用移植物およびその作製方法を提供する。ある実施形態において、本開示の外科手術用移植物は、約10μm〜約500μmのサイズを有する微粒子を含有する第一の成分、および少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の成分を備え得る。ある実施形態において、この第一の成分、この第二の成分、またはこれらの両方は、溶液中にあり得る。
【0008】
他の実施形態において、本開示の外科手術用移植物は、表面修飾されたタンパク質微粒子を含有する第一の成分、および少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の成分を含み得、これらの表面修飾されたタンパク質微粒子は、約10μm〜約500μmのサイズを有する。
【0009】
移植物を形成するための方法もまた、本明細書中に提供される。ある実施形態において、本開示の方法は、約10μm〜約500μmのサイズを有する微粒子を含有する第一の溶液を形成する工程、少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の溶液を形成する工程、この第一の溶液およびこの第二の溶液を組織上に導入する工程、ならびにこの少なくとも1種の架橋試薬をこれらの微粒子とインサイチュで反応させる工程であって、これによって、多孔性外科手術用移植物を形成する、工程を包含し得る。
【0010】
本開示の種々の実施形態が、以下の図面を参照しながら本明細書中で以下に記載される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、多孔性であり、組織の構造に合致し、そして最小侵襲性の様式で送達される、外科手術用移植物が処方に従って作製される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1Aは、軟骨修復のための本開示の外科手術用移植物の使用を図示する図である。
【図1B】図1Bは、軟骨修復のための本開示の外科手術用移植物の使用を図示する図である。
【図1C】図1Cは、軟骨修復のための本開示の外科手術用移植物の使用を図示する図である。
【図1D】図1Dは、軟骨修復のための本開示の外科手術用移植物の使用を図示する図である。
【図2A】図2Aは、ヘルニア修復のための本開示の外科手術用移植物の使用を図示する図である。
【図2B】図2Bは、ヘルニア修復のための本開示の外科手術用移植物の使用を図示する図である。
【図2C】図2Cは、ヘルニア修復のための本開示の外科手術用移植物の使用を図示する図である。
【図2D】図2Dは、ヘルニア修復のための本開示の外科手術用移植物の使用を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、少なくとも2つの成分(すなわち、微粒子を含有する第一の成分、および少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の成分)を含むヒドロゲルを提供する。これらの微粒子成分および架橋剤は、接触の際に反応して、連続気泡(open)多孔性マトリックスを形成する。ある実施形態において、この多孔性マトリックスは、インサイチュで形成され得、これによって、移植物を形成し得る。
【0014】
本明細書中で使用される場合、用語「微粒子」は、約10μm〜約500μm、ある実施形態においては約50μm〜約250μmの直径を有する、任意のナノサイズ、メソサイズ、またはマイクロサイズの粒子を包含し得る。微粒子は、任意の形状(微小棒、微小繊維、微小ビーズ、不規則な形状、球状、非球状、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる)のものであり得る。これらの微粒子の構造は、中実であっても、半中実であっても、中空であっても、これらの任意の組み合わせであってもよい。
【0015】
これらの微粒子は、天然生分解性ポリマー;脂質;合成により修飾された天然ポリマー;合成分解性ポリマー;非生分解性ポリマー;および上記のものの組み合わせが挙げられる材料から形成され得る。
【0016】
微粒子を形成するために使用され得る代表的な天然生分解性ポリマーとしては、多糖類、脂質、タンパク質、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。適切な多糖類としては、アルギネート、デキストラン、キチン、ヒアルロン酸、セルロース、フカン、およびグリコサミノグリカン、ならびにこれらの化学誘導体(例えば、アミノ化デキストラン、アミノ化セルロースおよびアミノ化ヒアルロン酸)が挙げられる。多糖類はまた、修飾され得る(化学基(例えば、アルキル、アルキレン)の置換および/または付加、ヒドロキシル化、酸化、ならびに当業者の知識の範囲内である他の修飾が挙げられる)。適切な脂質としては、グリセリド;クチン;レシチン;トコフェロール(α−トコフェロール、β−トコフェロールおよびγ−トコフェロールが挙げられる);植物油(例えば、オリーブ油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、パーム油、ナタネ油、扁桃油、カシュー油、ハシバミ油、マカダミア油、モンゴンゴ油、松果油、ピスタシオ油、クルミ油、ヒョウタン油、バッファローゴーアド(buffalo gourd)油、カボチャ種子油、スイカ種子油、アサイー(acai)油、クロフサスグリ種子油、ルリチシャ種子油、メマツヨイグサ油、イナゴマメ莢油、アマランス油、アンズ油、リンゴ種子油、アルガン(argan)油、チョウセンアザミ油、アボカド油、ババス油、ベン油、ボルネオタローナッツ(borneo tallow nut)油、ケープチェスナッツ(cape chestnut)油、カカオ脂、アルガロバ油、オナモミ油、ケシの実油、コフネヤシ油、ディーカ(dika)油、アマナズナ(false flax)油、アマニ油、ブドウ種子油、アサ油、カポック種子油、ラレマンティア(lallemantia)油、マルーラ(marula)油、メドウフォーム(meadowfoam)種子油、カラシ油、ナツメグ脂、ナツメグ油、オクラ種子油(ハイビスカス種子油)、パパヤ種子油、エゴマ種子油、ペキ(pequi)油、松果油、ケシの実油、プルーン莢油、キノア油、ニガー種子油、米糠油、ロイル(royle)油、ライムギ油、サチャインチ(sacha inchi)油、チャ油(ツバキ油)、アザミ油、トマト種子油、および麦芽油);ならびにこれらの組み合わせなどが挙げられる。適切なタンパク質としては、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、絹、エラスチン、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0017】
微粒子を形成するために利用され得る、合成により修飾された天然ポリマーとしては、セルロース誘導体(例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース)、キトサン、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。適切なセルロース誘導体の例としては、アミノ化セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩が挙げられる。これらは本明細書中でまとめて、「セルロース」と称され得る。合成により修飾された天然ポリマーとしてはまた、組換え合成タンパク質、組換え合成ペプチド、ならびにこれらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられる。
【0018】
微粒子を形成するために利用され得る代表的な合成分解性ポリマーとしては、ラクトンモノマー(例えば、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、ε−カプロラクトン、バレロラクトン、δ−バレロラクトン、およびこれらの組み合わせなど)から調製されたポリヒドロキシ酸;カーボネート(例えば、トリメチレンカーボネート、これらの組み合わせ、テトラメチレンカーボネート、これらの組み合わせなど);ジオキサノン(例えば、1,4−ジオキサノンおよびp−ジオキサノン);1,ジオキセパノン(例えば、1,4−ジオキセパン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オン);ならびにこれらの組み合わせなどが挙げられる。これらから形成されるポリマーとしては、ポリラクチド;ポリ(乳酸);ポリグリコリド;ポリ(グリコール酸);ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(ジオキサノン);ポリ(ヒドロキシ酪酸);ポリ(ヒドロキシ吉草酸);ポリ(ラクチド−co−(ε−カプロラクトン));ポリ(グリコリド−co−(ε−カプロラクトン));ポリカーボネート;およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0019】
微粒子を形成するために利用され得る他のポリマーとしては、ポリ(偽アミノ酸);ポリ(アミノ酸);ポリ(ヒドロキシアルカノエート);ポリアルキレンオキサレート;ポリオキサエステル;ポリ酸無水物;ポリオルトエステル;ならびにこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、および組み合わせなどが挙げられる。
【0020】
生体で迅速に腐食するポリマー(例えば、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ酸無水物およびポリオルトエステル(これらは、その表面に露出したカルボン酸基を有する))もまた、特に、ポリマーの滑らかな表面がインビボで腐食するので、微粒子を形成するために使用され得る。
【0021】
微粒子が作製され得る適切な非生体吸収性材料のいくつかの非限定的な例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン(アタクチック、アイソタクチック、シンジオタクチック、およびこれらの組み合わせを含む));ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシド;超高分子量ポリエチレン;ポリエチレンとポリプロピレンとのコポリマー;ポリイソブチレンとエチレン−αオレフィンとのコポリマー;フッ素化ポリオレフィン(例えば、ポリフルオロエチレン、ポリフルオロプロピレン、フルオロPEG、およびポリテトラフルオロエチレン);ポリアミド(例えば、ナイロンおよびポリカプロラクタム);ポリアミン;ポリイミン;ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート);脂肪族ポリエステル;ポリエーテル;ポリエーテル−エステル(例えば、ポリブタエステル);ポリテトラメチレンエーテルグリコール;1,4−ブタンジオール;ポリウレタン;アクリルポリマーおよびアクリルコポリマー;メタクリルポリマー;生体適合性ハロゲン化ビニルのポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル);ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテル);ポリハロゲン化ビニリデン(例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデン);ポリアクリロニトリル;ポリアリールエーテルケトン;ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族(例えば、ポリスチレン);ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル);ビニルポリマー(ビニルモノマー同士のコポリマーおよびビニルモノマーとオレフィンとのコポリマーが挙げられ、例えば、エチレン−メタクリル酸メチルコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、およびエチレン−酢酸ビニルコポリマー);ホスホロコリン(phosphorocholine)ベースのビニルポリマー;ポリビニルピロリドン;2−ヒドロキシエチルメタクリル酸;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリホスファジン;ポリイミド;エポキシ樹脂;アラミド、レーヨン;レーヨン−トリアセテート;スパンデックス;シリコーン;ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー(PLURONICSとして市販されているものが挙げられる);ならびにこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0022】
これらの微粒子(ある実施形態においては微小球)は、当業者の知識の範囲内である任意の方法(噴霧乾燥、エマルジョン、二重エマルジョン、押し出し、超音波発生、およびこれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない)により調製され得る。これらの微粒子は、単一のサイズのものであっても様々なサイズ(広いサイズ分布または狭いサイズ分布のいずれかを有する)のものであってもよい。
【0023】
これらの微粒子は、反応性であり得る。この反応性は、これらの微粒子を官能基化することによって得られ得る。これらの微粒子は、架橋試薬と反応し得る任意の基で官能基化され得る。利用され得る反応性基としては、例えば、NH、COOH、SO、COH、アルデヒド、スルホン、ビニルスルホン、イソシアネート、酸無水物、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。利用され得る他の反応性基としては、例えば、-CON(COCH、−CON(COCH、−COH、−CHO、−CHOCH、−N=C=O、−SOCH=CH、−N(COCH)、−S−S−(CN)、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0024】
ある実施形態において、これらの微粒子は溶液中にあり得、これによって、ある実施形態において第一の溶液と称され得るものを形成し得る。任意の生体適合性溶媒が、この第一の溶液を形成するために使用され得る。ある実施形態において、この第一の溶液は、微粒子を緩衝溶液中に希釈することによって形成され得る。この緩衝溶液は、例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩類溶液、水、およびこれらの組み合わせなどであり得る。溶液中の微粒子の濃度は、約0.5%〜約50%、ある実施形態においては約1%〜約25%であり得る。
【0025】
ある実施形態において、1より多くの型の微粒子(例えば、コラーゲン微粒子とエラスチン微粒子との混合物)が緩衝溶液中に存在し得る。
【0026】
本開示の組成物はまた、少なくとも1種の架橋試薬を第二の成分として含有する。架橋試薬は、当業者の知識の範囲内である任意の架橋方法によって、微粒子成分の架橋をもたらし得る。架橋試薬としては、反応性NHS化学をベースとするもの、UVベースの架橋剤、糖ベースの架橋剤、シリコーン結合剤、およびこれらの組み合わせなどが挙げられ得る。
【0027】
架橋試薬として使用され得る反応性成分としては、反応性シリコーン、イソシアネート、N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)、シアノアクリレート、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリセルアルデヒド、およびジアルデヒド)、ゲニピン(genipin)、ならびに微粒子、組織、または両方に対していくらかの親和性を有する化学を有する他の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される場合、スクシンイミドはまた、スルホスクシンイミド、スクシンイミドエステルおよびスルホスクシンイミドエステル(N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(「SNHS」)、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミド(「ENHS」)、N−ヒドロキシスクシンイミドアクリレート、スクシンイミジルグルタレート、N−ヒドロキシスクシンイミドヒドロキシブチレートが挙げられる)、ならびにこれらの組み合わせなどを包含する。ある実施形態において、反応性成分は、米国特許第6,566,406号、同第6,818,018号、同第7,009,034号、同第7,025,990号、同第7,211,651号、同第7,332,566号(これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるような任意の反応性成分であり得る。この反応性成分は、当業者の知識の範囲内である任意の方法(米国特許第6,566,406号、同第6,818,018号、同第7,009,034号、同第7,025,990号、同第7,211,651号、および/または同第7,332,566号(これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示される方法が挙げられる)を利用して、他の任意の成分と合わせられ得る。本開示に従って利用される架橋試薬はまた、任意の天然架橋試薬または合成架橋試薬(上に列挙されたものなどのアルデヒド;ジイミド;ジイソシアネート;シアナミド;カルボジイミド;アジプイミド酸ジメチル;デンプン;およびこれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない)を包含し得る。
【0028】
適切な架橋試薬は、ある実施形態において、アミン反応性基(例えば、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ジイミダゾール、イミドエステル、ヒドロキシスクシンイミドエステル、およびアルデヒド)を含み得る。例としては、芳香族ジイソシアネート(例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ベンゾイルイソシアネート、およびm−テトラメチルキシリレンジイソシアネート);脂肪族ジイソシアネート(例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、およびブタンジイソシアネート);ならびに脂環式ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリメチル1,3−フェニレンジイソシアネート)、またはDESMODURS(登録商標)としてBayer Material Scienceから市販されているものが挙げられるが、これらに限定されない。他の適切なイソシアネートとしては、例えば、パラ−フェニレンジイソシアネート、p−フェニルアセチルイソシアネート、m−フェニルアセチルイソシアネート、m−フェノキシアセチルイソシアネート、p−フェノキシアセチルイソシアネート、およびm−ヒドロシンナミルイソシアネートが挙げられる。
【0029】
ある実施形態において、この架橋試薬としては、ジイソシアネートで末端キャップされたマクロマーが挙げられ得る。適切なマクロマーとしては、ポリエーテル、ポリエステル、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。ポリエーテル、ポリエステル、またはポリ(エーテル−エステル)マクロマーをジイソシアネートで末端キャップする方法は、当業者の知識の範囲内である。例えば、ポリエーテル、ポリエステル、またはポリ(エーテル−エステル)マクロマーは、適切なジイソシアネートと、約1:2〜約1:6、ある実施形態においては約1:3〜約1:5、他の実施形態においては約1:4の、ポリエーテル、ポリエステルまたはポリ(エーテル−エステル)マクロマー対ジイソシアネートのモル比で合わせられ得、そして約55℃〜約75℃、ある実施形態においては約60℃〜約70℃、他の実施形態においては約65℃の適切な温度で加熱され得る。これらの成分を、当業者の知識の範囲内である手段(かき混ぜ、混合、ブレンド、超音波処理、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる)を利用して撹拌することが望ましくあり得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、末端キャップ反応は、不活性雰囲気下で(例えば、窒素ガス下で)行われ得る。触媒(アルコキシド、オクタン酸第一スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる)が、いくつかの実施形態において、末端キャップ反応の速度を増大させるために利用され得る。
【0031】
ある実施形態において、この反応を行う際に過剰なジイソシアネートを利用することが望ましくあり得る。過剰なジイソシアネートの使用は、重合反応を抑制し得、これによって、結果として生じるイソシアネートで官能基化された第二の成分の、最終的な分子量を調整することが可能になる。いくつかの実施形態において、結果として生じるジイソシアネートで官能基化された化合物は、次いで、石油エーテルでの熱抽出により得られ得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、架橋試薬として利用され得る適切なマクロマーとしては、以下の式のもの:
【0033】
【化1】

が挙げられ、この式において、Rは、上記のようなポリエーテル、ポリエステルまたはポリエーテル−エステルであり;そしてXは、上記のような芳香族基、脂肪族基、または脂環式基である。
【0034】
他の実施形態において、架橋試薬として使用され得るジイソシアネート化合物は、以下の式のもの:
OCN−X−HNCOO−(R−A)−R−OOCNH−X−NCO
であり得、この式において、Xは、脂肪族基または芳香族基であり;Aは、分解性の基であり、ある実施形態においては、脂肪族二酸から誘導される分解性の基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そしてジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;そしてnは、1〜10である。いくつかの実施形態において、Xは、トルエン、ヘキサメチレン、テトラメチレン、リジン、エチル化リジンイソホロン、キシレン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ジベンジルジイソシアネート、オキシビス(フェニルイソシアネート)、テトラメチルキシリレン、または必要に応じてこれらの組み合わせから誘導され得る。
【0035】
これらの架橋試薬は、実際には少なくとも二官能性であり得、すなわち、線状分子を形成し得る。ある実施形態において、この架橋試薬は、多官能性であり得、マクロマー分子(例えば、マルチアームポリエチレングリコール(PEG))を形成し得る。
【0036】
ある実施形態において、この架橋試薬は、微粒子に存在する第一級アミンと反応し得るスクシンイミド反応性基を有する、マルチアームポリエチレングリコールであり得る。
【0037】
この架橋試薬は、微粒子と同様に、溶液中にあり得る。任意の生体適合性溶媒が、このような溶液を形成するために使用され得る。ある実施形態において、この溶液は、水性であり得る。この溶液中の架橋試薬の濃度は、例えば、約5重量%〜約95重量%であり得る。あるいは、この架橋試薬は、溶液中での希釈を必要としない液体(例えば、NHS反応性基で官能基化された低分子量ポリエチレングリコール(ある実施形態において約2000の分子量を有する))であり得る。
【0038】
生物学的架橋系(抗体/抗原;ビオチン/アビジン;相補的にペプチド結合する配列;ヌクレオチド塩基の対合および架橋;ハイブリッド「クリック(click)」化学方法;化学的架橋(例えば、Huisgen環化付加、Diels−Alder反応、チオール−アルケン反応、およびマレイミド−チオール反応);鍵と鍵穴タンパク質結合化学;自己集合性ペプチド、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる)もまた利用され得る。
【0039】
ある実施形態において、架橋試薬は、クリック反応性を有する(クリック化学により反応し得る)ことが既知である少なくとも1つの反応性基を有するポリマーであり得る。クリック化学とは、高選択的で高収率の反応を起こし得る高い化学ポテンシャルエネルギーを有する反応性基の集合をいう。本開示に従って利用され得るクリック化学反応の例としては、米国特許出願番号12/368415(この全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されるものが挙げられる。
【0040】
ある実施形態において、微粒子成分は、ビオチンおよび/またはアビジンを含有する。例えば、いくつかの実施形態において、架橋性成分がアビジンを含有し得、そして微粒子成分がビオチンを含有し得る。他の実施形態において、架橋性成分がビオチンを含有し得、そして微粒子成分がアビジンを含有し得る。
【0041】
ある実施形態において、これらの微粒子および/または架橋試薬は、インサイチュで反応して、メッシュ、足場、栓、空隙充填材、および類似の構造体などを形成し得る。
【0042】
これらの微粒子および/または架橋試薬はまた、生物活性因子または治療剤のための送達機構として機能し得る。生物活性因子は、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質混合物を包含する。従って、生物活性因子は、それ自体で薬理学的活性を有しても有さなくてもよい(例えば、色素)。あるいは、生物活性因子は、治療効果もしくは予防効果を提供する任意の剤であり得るか、組織成長、細胞増殖、および/もしくは細胞分化に影響を与えるかまたは関与する化合物であり得るか、接着防止化合物であり得るか、生物学的作用(例えば、免疫応答)を引き起こし得る化合物であり得るか、あるいは1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る。種々の生物活性因子が、外科手術用移植物を形成する溶液のいずれかまたは両方に組み込まれ得る。
【0043】
本開示に従って利用され得る生物活性因子のクラスの例としては、例えば、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬、凝固因子、および酵素が挙げられる。生物活性因子の組み合わせが使用され得ることもまた意図される。
【0044】
他の任意の生物活性因子としては、局所麻酔薬;非ステロイド性抗受精剤;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、およびモルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、およびd−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗癌剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、およびフェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性剤;化学療法剤;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン薬;ならびに免疫学的剤が挙げられる。
【0045】
適切な生物活性因子の他の例としては、例えば、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにそのアナログ、ムテイン、および活性フラグメント、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および癌抑制因子、血液タンパク質(例えば、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン)、性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原およびウイルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質;TGF−β;タンパク質インヒビター;タンパク質アンタゴニスト;タンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0046】
ある実施形態において、この生物活性因子は、低分子薬物(例えば、麻酔薬、脈管形成薬、鎮痙薬、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド、およびこれらの組み合わせなど)であり得る。ある実施形態において、この生物活性因子は、巨大分子薬物(例えば、タンパク質、増殖因子または成長因子)であり得る。他の実施形態において、この生物活性因子は、特定の細胞型(例えば、平滑筋肉細胞、幹細胞、および免疫細胞など)を誘引し得るかまたは漸増させ得る、生物学的リガンドまたは細胞特異的リガンドである。
【0047】
ある実施形態において、これらの微粒子の表面は、生物活性ペプチド(フィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンジン、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる)で修飾され得る。ある実施形態において、これらの微粒子は、疼痛;腫瘍学;新脈管形成;創傷治癒;痙縮;凝固;感染;およびこれらの組み合わせなどのための薬物または生物活性因子を内部に含み得るか、あるいはこれらの薬物または生物活性因子を含むように表面修飾され得る。ある実施形態において、これらの表面修飾された微粒子は、アミノ化またはチオール化されたポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)であり得る。ある実施形態において、これらの微粒子は、細胞治療剤(幹細胞;軟骨細胞;免疫応答性細胞;神経細胞;グリア細胞;脈管細胞;およびこれらの組み合わせなどが挙げられる)を封入し得る。これらの微粒子はまた、局所麻酔薬(例えば、ブピバカイン)を含有し得る。
【0048】
この生物活性因子は、バルク充填(bulk loading)またはポスト充填(post loading)によって、微粒子内に含まれ得る。ある実施形態において、これらの微粒子は、この生物活性因子を含有するように表面処理され得る。ある実施形態において、この生物活性物質は、第一の溶液または第二の溶液のいずれかを希釈するために使用される緩衝液または他の溶液に組み込まれ得る。
【0049】
本開示のヒドロゲルを形成するための架橋試薬と合わせられる微粒子の量は、このヒドロゲルの意図される用途に依存して調整され得る。ある実施形態において、これらの微粒子は、本開示のヒドロゲルの約75重量%〜約99重量%、ある実施形態においては本開示のヒドロゲルの約90重量%〜約98重量%の量で存在し得、そしてこの架橋試薬は、本開示のヒドロゲルの約1重量%〜約25重量%、ある実施形態においては本開示のヒドロゲルの約2重量%〜約10重量%の量で存在し得る。
【0050】
一旦形成されると、このヒドロゲルは、水を取り込むにつれて、ヒドロゲル系を形成する。ヒドロゲル系は、約99%までの水、ある実施形態においては約90%〜約99%の水、ある実施形態においては約93%〜約97%の水を含有し得る。
【0051】
第一の成分および第二の成分の送達は、観血外科手術中または最小侵襲性外科手術中であり得る。従って、本開示の得られるヒドロゲルは、多孔性の、組織の構造に合致する外科手術用移植物を形成し得る。微粒子成分および架橋剤は、ある実施形態においては最小侵襲性手順(例えば、これらの2つの成分の内視鏡的配置、腹腔鏡的配置、関節鏡的配置、腔内配置、および/または経腔配置)によって、インビボに導入され得る。ある実施形態において、これらの成分は溶液中にあり得、そして少なくとも2つのレザバ(各溶液に対して1つずつ)を備えるアプリケータで塗布され得る。これらのレザバは、例えば、注射器、単一管腔管または多管腔管、カテーテル、可撓性ポーチまたはバッグ、あるいは内容物を混合チャンバ内に押し得るかもしくは押し出し得、そして/またはこれらの成分を混合先端を通して排出し得る他の導管であり得る。この混合先端は、このミキサーの遠位端に静止成形用取付具または噴霧用取付具を取り付けられて、好ましい送達を補助し得る。気体、流体または他の形態の推進剤が、これらの溶液を送達するために使用され得る。
【0052】
ある実施形態において、これらのヒドロゲルは、最小侵襲性の様式で(例えば、腹腔鏡により)送達され得る。腹腔鏡外科手術手順は、細長外科手術用デバイスと組み合わせたアクセスポートの使用により、体腔内で実施される最小侵襲性手順である。身体組織の最初の開口部は、内視鏡デバイスまたは腹腔鏡デバイスが、身体の内部へ移動することを可能にする。開口部としては、身体の自然な通路、または組織穿孔デバイス(例えば、トロカール)により作製された開口部が挙げられる。腹腔鏡手順中、狭い穿孔部または切開部が作製されて、体腔に対する外傷を最小にし、そして患者の回復時間を短縮する。
【0053】
接触すると、微粒子上に位置する反応性基と架橋試薬上に位置する反応性基とが反応して、多孔性外科手術用移植物またはマトリックスを形成し得る。架橋試薬、微粒子、またはこれらの両方はまた、インサイチュで組織と反応し得る。これらの微粒子は、外科手術用移植物に重量および体積を加え得、これによって、損傷領域に対する構造的支持を提供し得る。これらの微粒子がこの架橋試薬と架橋するにつれて、これらの微粒子間の空間が、組織の内方成長のための多孔性領域を提供する。この多孔性の領域はまた、この移植物にある程度の可撓性を与えて、この移植物が周囲の組織と一緒に曲がることを可能にする。得られる移植物中の細孔は、約1μm〜約100μm、ある実施形態においては約5μm〜約50μmの直径を有し得る。
【0054】
微粒子と架橋試薬との架橋の速度は、種々の手段(例えば、pH、紫外光(UV)、可視光、温度、およびこれらの組み合わせなど)によって制御され得る。上記手段のうちのいくつか(例えば、任意の可視光またはUV光)の強度もまた、架橋の速度を制御するために使用され得る。架橋の速度を制御することによって、移植物の厚さが制御され得る。架橋化学および架橋密度に依存して、得られるマトリックスは、永続的でも分解性でもよく、硬くてもエラストマーでもよく、膨潤性でも安定でも収縮性でもよい。
【0055】
ここで図面を特に詳細に参照すると、図面において、同じ番号は類似の要素または同一の要素を確認する役に立ち、図1Aは、膝20の斜視図であり、大腿骨22、脛骨24、膝蓋骨26、および軟骨28を備える。軟骨28は、裂傷30を有する。図1Bは、脛骨24および軟骨28の上面図である。軟骨28の裂傷30が明らかに見える。軟骨28の裂傷30の修復が図1Cに図示されており、混合チャンバ34および噴霧用先端36を有する多管腔配管32を利用する。第一の溶液および第二の溶液38a/38b(それぞれ微粒子および架橋試薬を含有する)が、多管腔配管32を使用して分離され得、そして混合チャンバ34内で混合され得、その後、軟骨28の裂傷30内に噴霧され得、これによって、これらの溶液が混合して、ヒドロゲル組成物40を形成する。図1Dは、軟骨28の裂傷30内に形成された多孔性外科手術用移植物40を図示する。
【0056】
ここで図2A〜図2Dを参照すると、外科手術修復手順を実施する際に本開示の外科手術用移植物を使用する代替の方法が示され、記載されている。図2Aを参照すると、ヘルニアは、裂傷50を腹壁52に有し得る。腹壁52は、外面52aおよび腹膜52bにより規定される。表面組織56(腹壁52の外面52aを覆う)は、この裂傷50により即座に影響を受けても受けなくてもよい。腹壁52の腹膜52bの下に位置する内部器官54は、腹壁52に位置する筋肉の何らかの形態の激しい活動または使用が内部器官54を裂傷50に押し込むまで、突出しないかもしれない。裂傷50のサイズおよび位置に依存して、器官54を突出させるために、激しい活動は必要ではないかもしれない。図2Bに示されるように、ヘルニアは、内部器官54が腹壁52の裂傷50内に突出する場合に起こる。時折、この突出は、表面組織56に膨らみ58を作り出す。
【0057】
この欠損を補正する目的で、図2Cに図示されるように、切開61が裂傷50のすぐ近くに、腹壁52を貫いて作製され、そして多管腔注射器または他のデバイス62が、トロカール60または類似の腹腔鏡デバイスを使用して挿入される。多管腔注射器62は、ミキサー64および噴霧用先端66を備え得、第一の溶液および第二の溶液68a/68b(それぞれ、微粒子および架橋試薬を含有する)を混合して、裂傷50内に混合物68として噴霧する。図2Dに示されるように、溶液68a/68bは架橋して、多孔性外科手術用移植物70を形成する。
【0058】
上で説明されたように、これらの溶液は、インサイチュで噴霧されて外科手術用移植物を形成し得る。この外科手術用移植物は、機械的支持を提供し得、同時に組織の内方成長を促進し得る。この外科手術用移植物は、例えば、腹壁ヘルニア;鼡径ヘルニア修復;軟骨;骨;皮膚充填材;皮膚フラップ;トロカール切開部位;吻合;および神経欠損などの修復に使用され得る。
【0059】
以下の実施例は、本開示の実施形態を説明するために提示される。これらの実施例は、説明であることのみを意図されており、本開示の範囲を制限することは意図されない。また、部および百分率は、他に示されない限り、重量に基づく。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
エマルジョンベースの方法が、第一の溶液のためのコラーゲンまたは血清アルブミンの微小球を形成するために使用され得る。これらの微小球を、約20mg/ml〜約200mg/mlの濃度で緩衝液に懸濁させ、そしてこれらの懸濁した微小球を第一の注射器に入れる。
【0061】
第二の溶液を、緩衝液中約50mg/ml〜約100mg/mlの濃度のマルチアーム反応性PEG NHSエステル架橋試薬から調製し得る。この第二の溶液を第二の注射器に入れる。
【0062】
これらの注射器を、静的ミキサーおよび噴霧用先端を備えるアプリケータに装着する。接触の際に、タンパク質微小球の表面の第一級アミンがPEG NHSエステルと架橋し、そして連続細孔構造を有する不溶性ヒドロゲル網目構造を形成する。架橋の速度は、この溶液のpHにより制御される。
【0063】
(実施例2)
第二の溶液を、緩衝液中約50mg/ml〜約100mg/mlの濃度の分解性官能基化イソシアネート架橋試薬から形成すること以外は、上記実施例1のプロセスに従う。
【0064】
(実施例3)
コラーゲンおよびエラスチンの微小球を第一の溶液において利用すること以外は、上記実施例1のプロセスに従う。これらの微小球を、エマルジョンベースの方法を使用して形成する。
【0065】
(実施例4)
微小球を、ポリエチレンテレフタレート(PET)からエマルジョンベースの方法を使用して形成すること以外は、実施例1のプロセスに従う。これらの微小球を、アミン基および/またはチオール基を含むように表面修飾する。これらの微小球を、約20mg/ml〜約200mg/mlの濃度で緩衝液に懸濁させ、そして第一の注射器に入れる。
【0066】
(実施例5)
微粒子を、上記実施例1に従って形成し得、そしてビオチンおよび/またはアビジンを含むように表面修飾し得る。これらの微粒子を、約20mg/ml〜約200mg/mlの濃度で緩衝液に懸濁させ、そして第一の注射器に入れる。
【0067】
第二の溶液がアビジン架橋試薬を有し、この場合、微粒子成分がビオチンを含有する。または第二の溶液がビオチン架橋試薬を有し、この場合、微粒子成分がアビジンを含有する。
【0068】
ビオチンとアビジンとは、混合すると架橋し、これによって、本開示の移植物を形成する。
【0069】
本開示の数個の実施形態が記載されたが、本開示はこれらの実施形態に限定されることを意図されない。なぜなら、本開示は当業者が許容するのと同程度まで範囲が広いこと、および本明細書も同様に読まれることが意図されるからである。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、本開示の実施形態の例示であると解釈されるべきである。外科手術用移植物を形成するために使用される成分およびこれらの成分を送達する方法の、種々の改変ならびに変更は、上記詳細な説明から当業者に明らかになる。このような改変および変更は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に入ることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
20 膝
22 大腿骨
24 脛骨
26 膝蓋骨
28 軟骨
30 裂傷
32 多管腔配管
34 混合チャンバ
36 噴霧用先端
38a、38b 溶液
40 多孔性外科手術用移植物
50 裂傷
52 腹壁
52a 外面
52b 腹膜
54 内部器官
56 表面組織

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10μm〜約500μmのサイズを有する微粒子を含有する第一の成分;および
少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の成分、
を含む、外科手術用移植物。
【請求項2】
前記第二の成分が、前記少なくとも1種の架橋試薬で表面修飾された微粒子を含有する、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項3】
前記微粒子が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリヒドロキシ酸、多糖類、脂質、ポリアミド、ポリアミン、ビニルポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含有する、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項4】
前記微粒子がポリヒドロキシ酸を含有する、請求項3に記載の外科手術用移植物。
【請求項5】
前記第一の成分、前記第二の成分、またはこれらの両方が、ビオチン/アビジン結合、抗体/抗原結合、ペプチド結合する配列、ヌクレオチド塩基の対合、自己集合性ペプチド、鍵と鍵穴タンパク質結合、クリック化学、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される機構を利用して反応する、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項6】
前記第一の成分および第二の成分が、UVベースの系、糖ベースの系、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される機構を使用して架橋する、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項7】
前記第一の成分、前記第二の成分、またはこれらの両方が、N−ヒドロキシスクシンイミド、反応性シリコーン、アクリレート、アルデヒド、イソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの反応性基をさらに含む、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項8】
前記第一の成分、前記第二の成分、またはこれらの両方が、アミンを含む反応性基を有する、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項9】
生物活性因子をさらに含有する、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項10】
前記生物活性因子が、麻酔薬、脈管形成薬、鎮痙薬、抗炎症薬、鎮痛薬、抗生物質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9に記載の外科手術用移植物。
【請求項11】
前記外科手術用移植物が、インサイチュで形成するメッシュを含む、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項12】
前記外科手術用移植物が、インサイチュで形成する足場を含む、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項13】
前記第一の成分、前記第二の成分、またはこれらの両方が、スクシンイミドエステルを含む反応性基を有する、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項14】
前記第一の成分、前記第二の成分、またはこれらの両方が、溶液中にある、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項15】
前記第一の成分と前記第二の成分との両方が溶液中にあり、そして該溶液中の前記微粒子の濃度が、約0.5重量%〜約50重量%であり、そして該溶液中の前記少なくとも1種の架橋試薬の濃度が、約5重量%〜約95重量%である、請求項14に記載の外科手術用移植物。
【請求項16】
前記微粒子が、微小球、微小棒、微小繊維、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される形状を有する、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項17】
表面修飾されたタンパク質微粒子を含有する第一の成分;および
少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の成分、
を含み、該表面修飾されたタンパク質微粒子が、約10μm〜約500μmのサイズを有する、外科手術用移植物。
【請求項18】
前記第二の成分が、前記少なくとも1種の架橋試薬で表面修飾された微粒子を含有する、請求項17に記載の外科手術用移植物。
【請求項19】
前記表面修飾されたタンパク質微粒子が、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、エラスチン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17に記載の外科手術用移植物。
【請求項20】
前記表面修飾されたタンパク質微粒子がコラーゲンを含有する、請求項17に記載の外科手術用移植物。
【請求項21】
前記架橋試薬が、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドアクリレート、スクシンイミジルグルタレート、N−ヒドロキシスクシンイミドヒドロキシブチレート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される反応性基を有するポリエチレングリコールを含有する、請求項17に記載の外科手術用移植物。
【請求項22】
前記表面修飾されたタンパク質微粒子が生物活性因子を含有する、請求項17に記載の外科手術用移植物。
【請求項23】
前記生物活性因子が、フィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンジン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるペプチドを含有する、請求項22に記載の外科手術用移植物。
【請求項24】
前記外科手術用移植物が、インサイチュで形成するメッシュを含む、請求項17に記載の外科手術用移植物。
【請求項25】
前記外科手術用移植物が、インサイチュで形成する足場を含む、請求項17に記載の外科手術用移植物。
【請求項26】
前記第一の成分、前記第二の成分、またはこれらの両方が、アミンを含む反応性基を有する、請求項17に記載の外科手術用移植物。
【請求項27】
前記第一の成分、前記第二の成分、またはこれらの両方が、スクシンイミドエステルを含む反応性基を有する、請求項17に記載の外科手術用移植物。
【請求項28】
多孔性外科手術用移植物を形成するためのシステムであって、
約10μm〜約500μmのサイズを有する微粒子を含有する第一の溶液;および
少なくとも1種の架橋試薬を含有する第二の溶液;
を備え、
該第一の溶液および該第二の溶液は、組織上に導入されること;ならびに
該少なくとも1種の架橋試薬が該微粒子とインサイチュで反応し、これによって、多孔性外科手術用移植物を形成すること、
を特徴とする、システム。
【請求項29】
前記第一の溶液が、前記微粒子に封入された生物活性因子をさらに含有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記生物活性因子が、幹細胞、軟骨細胞、免疫応答性細胞、神経細胞、グリア細胞、脂肪細胞、心臓細胞、筋肉細胞、内皮細胞、骨芽細胞、脈管細胞、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記生物活性因子が局所麻酔薬を含有する、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記生物活性因子が局所鎮痛薬を含有する、請求項29に記載のシステム。
【請求項33】
前記第一の溶液が、生物活性因子で表面修飾された微粒子を含有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項34】
前記第一の溶液および第二の溶液が、噴霧によって前記組織上に導入されることを特徴とする、請求項28に記載のシステム。
【請求項35】
前記生物活性因子が、増殖因子、成長因子、ペプチド、DNA、siRNA、タンパク質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項29に記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公開番号】特開2011−235106(P2011−235106A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106734(P2011−106734)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【出願人】(508102510)ソフラディム プロダクション ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】