説明

反応装置、トナーの製造方法及びトナー

【課題】原材料の固形分を含むスラリーを加熱する場合でも、加熱温度を詳細に規定することなく原材料の堆積及びショートパスを防止することができる、その反応装置を用いたトナーの製造方法、並びにその反応装置を用いて製造したトナーを提供する。
【解決手段】反応管100の中心軸方向における一方の端部から連続的に供給されて流れる固形分を含むスラリー状の原材料に熱を加える反応装置10であって、原材料の流れ方向に反応管100の内部を複数の小区画に区切る複数の多孔板110を備え、多孔板110の直径をDとし、反応管100の内壁面の直径をD’とし、原材料の流れ方向における多孔板110の間隔をSとしたとき、(1/2)・D’≦D<D’、かつ、0.2≦S/D’≦5.0の条件を満たすように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形分を含むスラリーを原材料を加熱して反応させる反応装置、その反応装置を用いたトナーの製造方法、並びにその反応装置を用いて製造したトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学反応に用いられる基本的な反応装置は2種類に分別される。第1の反応装置は、特許文献1に記載のような攪拌槽内の組成および温度が均一になるように充分に混合された状態の完全混合特性を有する攪拌槽型反応装置である。通常は複数の区画に分かれており、各区画において攪拌を行う。第2の反応装置は、原材料を反応させながら無攪拌で管を通過させる管型反応装置である。
【0003】
後者の管型反応装置では、無攪拌のため低コストで導入できるという利点があるが、触媒などの充填物が無い場合、中心流速が大きく壁面流速が小さいという流速分布の影響により、管の中心部分において原材料の滞留時間が短くなってしまう、いわゆる「ショートパス」と呼ばれる現象が発生する。そのため、反応率低下の問題があり、反応率を向上させるべく十分な滞留時間を確保するためには装置を大型化する必要がある。また、加熱による密度変化により、定常的な流れを保つことが難しいという問題がある。
【0004】
また、管型反応装置において液体やスラリー材料の滞留時間を管の中心軸に直交する面内において均一にする場合、特許文献2に記載されているような気−液の反応で使用される複数の多孔板を有する多孔板塔を使用する方法が考えられる。一般的に流体が開口率が一定の多孔板を通過するとき、その通過前後は流速が均一に近付くことが知られている。しかし、この方法では効果は十分ではなく、まだ中心流速が大きく壁面流速が小さい状態である。
更に、上記多孔板によって流速を均一にする効果を向上させるために、特許文献3などに記載されているように内側に位置する多孔板の開口率よりも外側(管壁側)に位置する多孔板の開口率を大きくする方法がある。しかし、この方法では、原材料の流れが滞る部分が多くなり、特に原材料が固形分を含むスラリーの場合は堆積物が多くなるため、清掃頻度を増やす必要がある。
【0005】
上記原材料が固形分を含むスラリーの場合の例として、近年電子写真の分野でも化学反応を伴う重合トナーの製造方法が知られている。例えば、特許文献4に記載されたトナーの製造方法は、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーを固形分として含む有機溶媒及び水系媒体のスラリーを原材料として用い、そのイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーを有機溶媒及び水系媒体の中でアミンと重付加反応させる高分子量化工程を含むものである。
【0006】
従来、ポリエステルの重合を行って重合トナーを製造する方法においては、特許文献5や特許文献6に記載されているように、安定した分子量分布のトナーバインダーを製造し、低温定着性と耐オフセット性とを両立させるために原材料を加熱する加熱工程が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献5や特許文献6に記載されている加熱工程は、高温反応であるポリエステル縮重合に関しては容易な技術であるが、前述したような固形分を含む有機溶媒と水系媒体とが混在するスラリーの反応系に対しては様々な条件を鋭意検討しないと適応できない技術であり、特許文献7に記載されているように重合体の反応温度や熟成温度などの条件を詳細に規定する必要がある。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、原材料の固形分を含むスラリーを加熱する場合でも、加熱温度を詳細に規定することなく原材料の堆積及びショートパスを防止することができる、その反応装置を用いたトナーの製造方法、並びにその反応装置を用いて製造したトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、反応管の中心軸方向における一方の端部から連続的に供給されて流れる固形分を含むスラリー状の原材料に熱を加える反応装置であって、前記原材料の流れ方向に前記反応管の内部を複数の小区画に区切る複数の多孔板を備え、前記多孔板の直径をDとし、前記反応管の内壁面の直径をD’とし、前記原材料の流れ方向における前記多孔板の間隔をSとしたとき、(1/2)・D’≦D<D’、かつ、0.2≦S/D’≦5.0の条件を満たすように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記所定の条件を満たすように構成された複数の多孔板で仕切られた複数の小区画それぞれにおいて、反応管の中心部の原材料の一部が反応管の内壁面側に移動して反応管の内壁面と多孔板の外周縁との隙間を通って流れていく。従って、原材料の固形分を含むスラリーを加熱する場合でも、その原材料のスリラーに含まれる固形分を上記隙間から流して多孔板上に堆積するのを抑制することができる。しかも、反応管内における原材料の滞留時間を反応管の中心軸方向に直交する面内で均一化させることができ、原材料のショートパスを低減することができる。以上のように、原材料の固形分を含むスラリーを加熱する場合でも、加熱温度を詳細に規定することなく原材料の堆積及びショートパスを防止することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る反応装置の要部の概略構成を示す部分断面図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る反応装置の要部の概略構成を示す部分断面図。
【図3】本発明の更に他の実施形態に係る反応装置の要部の概略構成を示す部分断面図。
【図4】(a)及び(b)はそれぞれ、本発明の更に他の実施形態に係る反応装置の要部の概略構成を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施の形態を説明する。
まず、本発明の実施形態に係る反応装置の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る反応装置の要部の概略構成を示す部分断面図である。本実施形態の反応装置10は、反応管(反応器)100の中心軸方向(図示の例では上下方向)における一方の端部(図示の例では上端部)100aから連続的に供給されて流れる固形分を含むスラリー状の原材料に熱を加える連続式管型の反応装置である。この反応装置10は、原材料の流れ方向(図示の例では上方から下方に向かう方向)に反応管100の内部を複数の小区画に区切るように、厚さ方向に貫通した多数の孔(貫通孔)を有する複数枚の円板状の多孔板111,112,113を備えている。なお、以下の説明において、複数枚の円板状それぞれを区別しないで参照する場合は、符号110を用いる。
【0013】
多孔板110が有する孔の形状に関しては特に規定はないが、孔の径に関しては、原材料が固形分を含む場合に孔の閉塞を防ぐために十分大きくする必要がある(後述の他の実施形態に置いても同様)。例えば、固形成分としてトナー粒子を含むスラリーの場合、多孔板110の孔の直径は10[mm]以上が好ましい。
【0014】
ここで、図1のように多孔板110の直径(多孔板径)をDとし、反応管100の内径をD’としたとき、反応管100内における原材料の滞留時間が反応管100の中心軸方向に直交する面内で均一になるように、多孔板110の直径Dは1/2D’以上に設定されている。多孔板110の直径Dが1/2D’より小さい場合は、上記原材料の滞留時間を均一にする効果が低減する。また、多孔板110の直径Dは反応器100の内壁の直径(内径)D’よりも小さく設定されている。これにより、反応管100の内壁付近の流速が遅い部分の堆積物を防止することができる。また、多孔板110の直径Dと反応管100の内径D’との間の関係を示す条件としては、(1/2)・D’≦D<(9/10)・D’が好ましく、(1/2)・D’≦D<(4/5)・D’が更に好ましい。
【0015】
また、反応管100内の原材料の流れ方向(中心軸に沿った方向)における多孔板110の間隔をSとした場合、反応管100の内径D’に対する多孔板110の間隔Sの比(S/D’)が0.2≦S/D’≦5.0の範囲内になるように構成されている。この0.2≦S/D’≦5.0を満たすように構成することにより、反応管100内における原材料の滞留時間が反応管100の中心軸方向に直交する面内でより均一になる効果が得られる。ここで、上記S/D’が0.2より小さい場合は多孔板110の孔を通過した原材料の流れが広がる前に、再び次の多孔板110の孔に到達してしまい、滞留時間の均一化の効果が得られないだけでなく、流速が遅い部分いわゆる「淀み」の部分が増え、堆積物が増加する。逆に、上記S/D’が5.0より大きい場合は、上記滞留時間の均一化の効果は得られなくなる。また、上記S/D’は0.2以上且つ3.0以下の範囲が好ましく、0.5以上且つ2.0以下の範囲が更に好ましい。
【0016】
反応管100内における原材料の流れ方向における多孔板110の設置開始位置は特に限定はないが、原材料の流速差により乱れた流れを整流するため反応管100の入口に可能な限り接近させ設置することが望ましい。
【0017】
また、反応装置10の反応管100は垂直に設置することが好ましく、原材料である固形分を含むスラリーは反応管100の下部から上部に向かう方向、又は上部から下部の方向に流れることが好ましい。反応管100の中心軸に直交する横方向や同中心軸に対して斜め方向に流すと、反応管100の壁面に、原材料の固形分の堆積が増加する。
【0018】
図2は、本発明の他の実施形態に係る反応装置の要部の概略構成を示す部分断面図である。図2の構成例では、上記(1/2)・D’≦D<D’、かつ、0.2≦S/D’≦5.0の条件を満たすとともに、複数の多孔板110(114〜117)それぞれの中心部の厚みをtとし、多孔板110の外周部の厚みをt’としたとき、t’<tの条件を満たすように、多孔板110の表面に中心部から外周部にかけて傾斜を設けている。このようにt’<tを満たすように多孔板110の表面に傾斜を設けることにより、原材料の液体やスラリーが中心部付近で受けるせん断力を大きくし、壁面付近で受けるせん断力を小さくすることができる。これにより、反応管100の中心軸に直交する面における中心部付近の原材料の流速が下がり、反応管100の壁面付近の流速が上がる。従って、反応管100内における原材料の滞留時間が反応管100の中心軸方向に直交する面内でより均一になり、前述のショートパスを低減できる。ここで、滞在時間の均一化の効果は、多孔板110の中心部の厚みtは大きいほど、また、壁面厚みt’は小さいほど大きくなる。
【0019】
また、図2に示すように、上記t’<tの条件を満たすように多孔板110(114〜117)それぞれの上面に直線的な傾斜を設けることにより、固形分を含むスラリーを原材料として使用した場合に、多孔板110の傾斜した面に原材料中の固形分が堆積したとしても、その堆積物を多孔板110の傾斜面で滑り落とすことできる。従って、多孔板110における原材料の固形分の堆積をより確実に防止できる。
【0020】
なお、図2の例のように多孔板110の厚みが中心部と他の部分とで異なる場合、多孔板110(114〜117)の間隔Sは、多孔板の中心位置の上部から、その隣の多孔板の中心位置の上部までの長さとする。
【0021】
図3は、本発明の更に他の実施形態に係る反応装置の要部の概略構成を示す部分断面図である。複数の多孔板の一部もしくは全てを、右捻りの螺旋状の板121及び左捻りの螺旋状の板122を互いに90°ずつずらして直列に交互に配置した形状を有する部材(以下「螺旋構造部材」という。)120に置き換えることもできる。図3の構成例では、多孔板の全てを螺旋構造部材120に置き換えている。
【0022】
上記螺旋構造部材120を構成する右および左捻りの螺旋状の板121,122は、その構造上、原材料の堆積を防止できる。また、反応管100内における原材料の滞留時間を反応管100の中心軸方向に直交する面内で均一化させて原材料のショートパスを低減することができる。
【0023】
ここで、上記螺旋状の板121,122の捻り角度は小さいと上記滞留時間の均一化の効果が無く、一方、捻り角度が180°以上になると作成するのが困難になる。そのため、上記螺旋状の板121,122の捻り角度は90°〜180°の範囲内が好ましく、180°に近いほど好ましい。
また、上記螺旋構造部材120に置き換える多孔板の枚数が増えるほど、より確実に堆積物を低減できるとともに上記滞留時間の均一化を図ることができる。
【0024】
また、図3のように原材料の流れ方向と直交する方向(図中の水平方向)における螺旋状の板121,122の長さをLとし、反応管100の内壁面の直径(内径)をD’とした場合、(1/2)・D’≦L≦D’を満たす構成が好ましい。更に、L=D’を満たす構成がより好ましい。LがD’に等しくない場合すなわち螺旋状の板121,122の最外周縁と反応管100の内壁面との間に隙間が存在する場合は、堆積物が生じやすくなる。
【0025】
また、原材料の流れ方向(図中の鉛直方向(上下方向))における螺旋状の板121,122それぞれの長さをL’としたとき、螺旋状の板121,122の鉛直方向の長さL’は、1.5Lより大きくするのが好ましい。この場合は、より確実に堆積物を抑制することができる。但し、螺旋状の板121,122の鉛直方向の長さL’が3.0Lを超えると滞留時間の均一化の効果は無くなる。また、小さい場合は、板を捻ることが困難になる。従って、螺旋状の板121,122の鉛直方向の長さL’は1.5L〜3.0Lの範囲内が好ましく、1.5L〜2.0Lの範囲内が更に好ましい。
【0026】
また、螺旋状の板121,122の厚さは自重で破損しなければ薄いほど好ましい。薄いほど固形分の堆積する部分が小さくなり、堆積防止が可能になる。
【0027】
図4(a)及び(b)はそれぞれ、本発明の更に他の実施形態に係る反応装置の要部の概略構成を示す部分断面図である。図4(a)及び(b)の構成例では、反応管100の内部に、前述の多孔板110と、右捻りの螺旋状の板121及び左捻りの螺旋状の板122を有する螺旋構造部材120とを備えている。反応管100内の原材料流れ方向(図示の例では矢印Bで示す上向き方向)における多孔板110の位置は、図4(a)に示すように螺旋構造部材120の下流側でもいいし、図4(b)に示すように螺旋構造部材120の上流側でもよい。また、図4の構成例の場合は、前述の多孔板110の間隔Sの代わりに、多孔板110と螺旋構造部材120との間隔S’を用いて上記構成の条件を規定する。例えば、図4(a)に示すように螺旋構造部材120の下流側に多孔板110が位置する場合は、螺旋構造部材120の上側の螺旋状の板121の上端から多孔板110の中心位置の上面までの長さS’を、前述の多孔板110の間隔Sの代わりに用いる。また、図4(b)に示すように螺旋構造部材120の上流側に多孔板110が位置する場合は、螺旋構造部材120の下側の螺旋状の板122の下端から多孔板110の中心位置の上面までの長さS’を、前述の多孔板110の間隔Sの代わりに用いる。
【0028】
次に、上記構成の反応装置10を用いたトナーの製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態に係るトナーの製造方法は、次の(1)〜(3)に示す第一の工程〜第三の工程を有する。
(1)活性水素基を有する化合物とその化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体とを含む結着樹脂を有するトナー材料を有機溶媒中で溶解又は分散させて第一の液を調製する第一の工程。
(2)第一の液を水系媒体中で乳化又は分散させて第二の液を調製する第二の工程。
(3)第二の液から有機溶媒を除去した後の液、又は第二の液から有機溶媒を除去しているの途中の液を、加熱することにより、第三の液を得る第三の工程。
【0029】
そして、前記第三の工程は、前述の実施形態で説明した反応装置10のいずれかに第二の液を通過させることによって行う。
【0030】
第一の液は、酸価が2〜30KOHmg/gであることが好ましい。第一の液の酸価が2KOHmg/g未満であると、トナーの紙に対する接着性が低下することがあり、30KOHmg/gを超えると、トナーの粒度分布が広くなることがある。
【0031】
活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体は、加熱により活性水素基を有する化合物と反応を促進させることができる。
【0032】
活性水素基としては、特に限定されないが、水酸基(アルコール性水酸基又はフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーと反応させてウレア変性ポリエステルが得られることから、アミノ基が好ましい。
【0033】
活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体としては、特に限定されないが、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、クロロカルボニル基等を有するポリエステル、ポリオール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アミノ基を有する化合物と反応させてウレア変性ポリエステルが得られることから、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーが好ましい。
【0034】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーは、ヒドロキシル基を有するポリエステルとポリイソシアネートを、必要に応じて、有機溶媒を添加して、40〜140[℃]で反応させることにより得られる。
【0035】
有機溶媒としては、ポリイソシアネートに対して不活性であれば、特に限定されないが、トルエン、キシレン等の芳香族類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0036】
また、ヒドロキシル基を有するポリエステルは、前述と同様にして、ポリアルコールとポリカルボン酸を重縮合することにより得られる。
【0037】
ポリアルコールとしては、特に限定されないが、2価のアルコール、3価以上のアルコール、2価のアルコールと3価以上のアルコールの混合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、2価のアルコール又は2価のアルコールと3価以上のアルコールの混合物が好ましい。
【0038】
2価のアルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジアルコール;脂環式ジアルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したもの等の脂環式ジアルコールのアルキレンオキサイド付加物;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。中でも、炭素数が2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数が2〜12のアルキレングリコールの混合物が特に好ましい。
【0039】
3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上の多価脂肪族アルコール;トリスフェノール体(トリスフェノールPA(本州化学工業社製)等)、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の3価以上のポリフェノール類;3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したもの等の3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0040】
ポリカルボン酸としては、特に限定されないが、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸、2価のカルボン酸と3価以上のカルボン酸の混合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、2価のカルボン酸又はジカルボン酸と3価以上のカルボン酸の混合物が好ましい。
【0041】
2価のカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等のアルキレンジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸等のアルケニレンジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。中でも、炭素数が4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数が8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0042】
3価以上のカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の芳香族カルボン酸等が挙げられる。中でも、炭素数が9〜20の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。
【0043】
なお、ポリカルボン酸の代わりに、ポリカルボン酸の無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。低級アルキルエステルとしては、特に限定されないが、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0044】
ヒドロキシル基を有するポリエステルを合成する際のポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリアルコールのヒドロキシル基の当量比は、1〜2であることが好ましく、1〜1.5がさらに好ましく、1.02〜1.3が特に好ましい。
【0045】
ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジイソシアナト−3,3'−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4'−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリイソシアナトシクロアルキルイソシアヌレート等のイソシアヌレート類等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0046】
なお、ポリイソシアネートの代わりに、ポリイソシアネートのイソシアネート基をフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたものを用いることもできる。
【0047】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを合成する際のヒドロキシル基を有するポリエステルのヒドロキシル基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比は、1〜5であることが好ましく、1.2〜4がさらに好ましく、1.5〜2.5が特に好ましい。
【0048】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリイソシアネート由来の構成単位の含有量は、0.5〜40[質量%]であることが好ましく、1〜30[質量%]がさらに好ましく、2〜20[質量%]が特に好ましい。
【0049】
アミノ基を有する化合物としては、特に限定されないが、ジアミン、3価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、ジアミン、ジアミンと少量の3価以上のアミンの混合物が好ましい。
【0050】
ジアミンとしては、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン;エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。3価以上のアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、等が挙げられる。アミノアルコールとしては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン等が挙げられる。アミノメルカプタンとしては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。アミノ酸としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられる。
【0051】
なお、アミノ基を有する化合物の代わりに、アミノ基を有する化合物のアミノ基をブロックしたケチミン、オキサゾリン等を用いてもよい。
【0052】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物を反応させる際のアミノ基を有する化合物のアミノ基に対するポリエステルプレポリマーのイソシアネート基の当量比は、0.5〜2であることが好ましく、2/3〜1.5がさらに好ましく、5/6〜1.2が特に好ましい。
【0053】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物を反応させる際に、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート等の触媒を用いてもよい。
【0054】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物の反応温度は、通常、0〜150[℃]であり、40〜98[℃]が好ましい。
【0055】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物の反応時間は、通常、10分〜40時間であり、2〜24時間が好ましい。
【0056】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物の反応を停止させるためには、反応停止剤を用いることが好ましい。これにより、ウレア変性ポリエステルの分子量を制御することができる。
【0057】
反応停止剤としては、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等のモノアミン又はこれらのアミノ基をブロックしたケチミン、オキサゾリン等が挙げられる。
【0058】
なお、トナー材料は、結着樹脂として、ウレア変性ポリエステルを含んでもよい。このようなウレア変性ポリエステルは、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物を、必要に応じて、有機溶媒を添加して、0〜140[℃]で反応させることにより得られる。
【0059】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性であれば、特に限定されないが、トルエン、キシレン等の芳香族類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0060】
トナー材料は、着色剤、離型剤をさらに含んでいてもよい。
【0061】
着色剤(顔料又は染料)としては、特に限定されないが、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロロオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0062】
トナー材料中の着色剤の含有量は、通常、1〜15[質量%]であり、3〜10[質量%]が好ましい。着色剤の含有量が1[質量%]未満であると、トナーの着色力が低下することがあり、15[質量%]を超えると、母体粒子中で顔料の分散不良が発生し、トナーの着色力が低下したり、トナーの電気特性が低下したりすることがある。
【0063】
顔料は、樹脂と複合化して、マスターバッチとしてもよい。樹脂としては、特に限定されないが、ポリエステル;ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン系単独重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のメタクリル酸系単独重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のビニル系単独重合体;エポキシ樹脂;エポキシポリオール樹脂;ポリウレタン;ポリアミド;ポリビニルブチラール;ポリアクリル酸;ロジン;変性ロジン;テルペン樹脂;脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂;芳香族系石油樹脂;塩素化パラフィン;パラフィンワックス等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0064】
マスターバッチは、顔料と樹脂に、高せん断力を印加して混合混練することにより得られる。この際、顔料と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶媒を添加することが好ましい。また、顔料のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がないことから、フラッシング法を用いてマスターバッチを製造することが好ましい。フラッシング法は、顔料の水性ペーストを、樹脂と有機溶媒と共に混合混練し、顔料を樹脂に移行させた後、水及び有機溶媒を除去する方法である。混合混練する際には、三本ロールミル等の高せん断分散装置を用いることが好ましい。
【0065】
離型剤としては、特に限定されないが、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス;パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素;カルボニル基を有するワックス等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、カルボニル基を有するワックスが好ましい。
【0066】
カルボニル基を有するワックスとしては、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート等のポリアルカン酸エステル;トリメリット酸トリステアリル、マレイン酸ジステアリル等のポリアルカノールエステル;エチレンジアミンジベヘニルアミド等のポリアルカン酸アミド;トリメリット酸トリステアリルアミド等のポリアルキルアミド;ジステアリルケトン等のジアルキルケトン等が挙げられ、ポリアルカン酸エステルが好ましい。
【0067】
離型剤の融点は、通常、40〜160[℃]であり、50〜120[℃]が好ましく、60〜90[℃]がさらに好ましい。離型剤の融点が40[℃]未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、160[℃]を超えると、トナーを低温で定着させると、コールドオフセットが起こることがある。
【0068】
また、離型剤の融点より20[℃]高い温度における溶融粘度は、5〜1000[cps]であることが好ましく、10〜100[cps]がさらに好ましい。離型剤の融点より20[℃]高い温度における溶融粘度が1000[cps]を超えると、トナーの耐ホットオフセット性及び低温定着性を向上させる効果が不十分になることがある。また、トナー材料中の離型剤の含有量は、通常、0〜40[質量%]であり、3〜30[質量%]が好ましい。
【0069】
第一の液を調製する際に用いられる有機溶媒としては、結着樹脂及び/又は結着樹脂の前駆体が可溶であれば、特に限定されないが、トルエン、キシレン等の芳香族類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0070】
なお、トナー材料が結着樹脂の前駆体を含む場合は、有機溶媒が結着樹脂の前駆体に対して不活性である必要がある。
【0071】
第二の液の体積平均粒径は、通常、3〜8[μm]であり、3〜7[μm]が好ましく、4〜7[μm]が特に好ましい。また、第二の液の個数平均粒径に対する体積平均粒径の比は、通常、1.00〜1.20であり、1.00〜1.17が好ましく、1.00〜1.15が特に好ましい。これにより、フルカラー複写機等を用いて、画像を形成する場合に、飛散やカブリの発生を抑制することができ、長期的に現像性が良好で高画質な画像を形成することができる。
【0072】
なお、第二の液の体積平均粒径及び個数平均粒径は、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いて測定することができる。
【0073】
第二の液を調製する際に、分散剤を含む水系媒体中に第一の液を分散させる方法としては、特に限定されないが、機械的剪断力により分散させる方法等が挙げられる。このとき、結着樹脂及び/又は結着樹脂の前駆体以外のトナー材料は、第一の液を水系媒体中に分散させる際に混合してもよいが、第一の液を調製する際に混合することが好ましい。水系媒体は、水を含むが、水と混和することが可能な有機溶媒をさらに含んでもよい。
【0074】
水と混和することが可能な有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール;ジメチルホルムアミド;テトラヒドロフラン;メチルセロソルブ等のセロソルブ;アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0075】
分散剤としては、特に限定されないが、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等の陰イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型の陽イオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の4級アンモニウム塩型の陽イオン性界面活性剤;脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等の非イオン性界面活性剤;アラニン、ドデシルビス(アミノエチル)グリシン、ビス(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0076】
また、分散剤として、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いると、分散剤の添加量を減少させることができる。
【0077】
フルオロアルキル基を有する陰イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、炭素数が2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及びその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0078】
フルオロアルキル基を有する陰イオン性界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102、(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(DIC社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F−150(ネオス社製)等が挙げられる。
【0079】
フルオロアルキル基を有する陽イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級又は3級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0080】
フルオロアルキル基を有する陽イオン性界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキン工業社製)、メガファックF−150、F−824(DIC社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
【0081】
分散剤として、樹脂粒子及び/又は無機粒子を用いてもよい。これにより、油滴同士の合一が抑制されるため、第一の液を均一に分散させることができる。
【0082】
樹脂粒子を構成する材料としては、特に限定されないが、ビニル系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、微細な球状の樹脂粒子の水性分散液が得られやすいことから、ビニル系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステルが好ましい。
【0083】
ビニル系樹脂としては、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0084】
樹脂粒子は、表面に帯電制御剤を固定させるために、カルボキシル基を有する樹脂を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を有する樹脂を含むことがさらに好ましい。
【0085】
無機粒子を構成する材料としては、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられ、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、コロイド状酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトが好ましく、水中でリン酸ナトリウムと塩化カルシウムを塩基性条件下で反応させて合成したヒドロキシアパタイトが特に好ましい。
【0086】
なお、分散剤として、リン酸三カルシウム塩等の酸又はアルカリに可溶な物質を用いる場合は、例えば、塩酸により分散剤を溶解させた後、水洗することにより、分散剤を除去することができる。
【0087】
分散剤として、高分子系保護コロイドを用いてもよい。高分子系保護コロイドとしては、特に限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有する単量体又はその誘導体;アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等のビニルアルキルエーテル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルアルコールとカルボン酸のエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸のアミド化合物又はこれらのメチロール化物;アクリル酸塩化物、メタクリル酸塩化物等の塩化カルボニル基を有する単量体;ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等の窒素原子又はその複素環を有する単量体等の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。これら以外の高分子系保護コロイドとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等のポリオキシエチレン類;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類等が挙げられる。
【0088】
第二の液から有機溶媒を除去して粒子を生成させる方法としては、特に限定されないが、第二の液を徐々に昇温して、有機溶媒を蒸発させる方法、第二の液を乾燥雰囲気中に噴霧して、有機溶媒及び水系媒体を蒸発させる方法等が挙げられる。
【0089】
第二の液が噴霧される乾燥雰囲気としては、特に限定されないが、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等が加熱されている気流が挙げられる。このとき、気流は、有機溶媒及び水系媒体の中で最も高い沸点以上の温度に加熱されていることが好ましい。
【0090】
なお、第二の液を乾燥雰囲気中に噴霧して、有機溶媒及び水系媒体を蒸発させる際には、スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルン等を用いることができる。
【0091】
第二の液から有機溶剤を除去した後の液を加熱する際の残有機溶剤濃度、又は第二の液から有機溶剤を除去している途中の液を加熱する際の残有機溶剤濃度は、0〜15%の範囲内が好ましい。この範囲よりも高い残有機溶剤濃度の場合は、粒子同士の凝集が起こる傾向がある。
【0092】
第三の液に有機溶剤が残っている場合は再度有機溶剤の除去を行った後、洗浄を行う。有機溶剤が残っていない場合はそのまま洗浄を行う。洗浄後は帯電制御剤の添加を行う。
【0093】
粒子を洗浄する方法としては、分散剤を除去することが可能であれば、特に限定されないが、濾別しながら、水を追加して洗浄する方法が挙げられる。このとき、洗浄後のケーキを水中に分散させ、pHを3.0〜6.0とした後、濾別することが好ましい。これにより、分散剤を効率的に除去することができる。pHが3.0未満であると、不純物が析出することがあり、6.0を超えると、分散剤を効率的に除去しにくくなることがある。
【0094】
添加される帯電制御剤としては、特に限定されないが、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩基等の官能基を有する高分子化合物等が挙げられる。
【0095】
帯電制御剤の市販品としては、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)等が挙げられる。
【0096】
帯電制御剤は、粒子の表面に均一に固定させることを考慮すると、フルオロ基を有する4級アンモニウム塩が好ましい。フルオロ基を有する4級アンモニウム塩は、カルボキシル基に対する親和性に優れることに加え、アルコールを含む水に溶解しやすい。なお、フルオロ基を有する4級アンモニウム塩は、含金属アゾ染料と併用してもよい。
【0097】
フルオロ基を有する4級アンモニウム塩としては、特に限定されないが、次の一般式(式中、Rfは、パーフルオロアルキル基であり、Xは、2価の有機基であり、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、フルオロ基又は炭化水素基であり、Yは、対イオンであり、mは、1以上の整数である。)で表される化合物が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0098】
【化1】

【0099】
Rfの炭素数は、通常、3〜60であり、3〜30が好ましく、3〜15がさらに好ましい。Rfとしては、特に限定されないが、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF10−、CF(CF11−、CF(CF12−、CF(CF13−、CF(CF14−、CF(CF15−、CF(CF16−、CF(CF17−、(CFCF(CF−等が挙げられる。
【0100】
としては、特に限定されないが、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、チオシアン酸イオン、有機酸イオン等が挙げられる。中でも、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオンが好ましい。
【0101】
Xとしては、特に限定されないが、−SO−、−CO−、−(CH−、−SON(R)−(CH−、−(CH−CH(OH)−(CH−等が挙げられる。ここで、xは、1〜6の整数であり、Rは、炭素数が1〜10のアルキル基である。中でも、−SO−、−CO−、−(CH−、−SON(C)−(CH−又は−CHCH(OH)CH−が好ましく、−SO−又は−CO−が特に好ましい。
【0102】
mは、1〜20であることが好ましく、1〜10がさらに好ましい。
【0103】
〜Rにおける炭化水素基としては、特に限定されないが、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられ、置換基で置換されていてもよい。
【0104】
アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましい。アルキル基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、n−デシル基、イソデシル基等が挙げられる。
【0105】
アルケニル基は、炭素数が2〜10であることが好ましい。アルケニル基としては、特に限定されないが、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等が挙げられる。
【0106】
アリール基は、炭素数が6〜24であることが好ましい。アリール基としては、特に限定されないが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、スチリル基、メシチル基、シンナミル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基等が挙げられる。
【0107】
帯電制御剤の添加量は、結着樹脂に対して、通常、0.1〜10[質量%]であり、0.2〜5[質量%]が好ましい。帯電制御剤の添加量が10[質量%]を超えると、トナーと現像ローラの静電的引力が増大して、トナーの流動性が低下したり、画像濃度が低下したりすることがある。
【0108】
なお、帯電制御剤を添加して生成した母体粒子を、通常、濾過し、乾燥した後、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を添加することにより、トナーが得られる。
【0109】
流動性向上剤を構成する材料としては、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0110】
流動性向上剤の一次粒子径は、通常、5[nm]〜2[μm]であり、5〜500[nm]が好ましい。また、流動性向上剤のBET比表面積は、通常、20〜500[m/g]である。
また、トナー中の流動性向上剤の含有量は、通常、0.01〜5[質量%]であり、0.01〜2[質量%]が好ましい。
また、流動性向上剤は、表面処理剤を用いて、疎水性を向上させることが好ましい。表面処理剤としては、特に限定されないが、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0111】
クリーニング性向上剤としては、特に限定されないが、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩;ポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子等の樹脂粒子等が挙げられる。樹脂粒子は、通常、粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01〜1[μm]である。
【0112】
なお、母体粒子を添加剤と混合し、必要に応じて、機械的衝撃力を混合物に印加することにより、母体粒子の表面に添加剤を固定することができる。
【0113】
機械的衝撃力を混合物に印加する方法としては、特に限定されないが、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を加える方法、高速の気流中に混合物を投入して、加速させ、混合物同士又は複合化した混合物を衝突板に衝突させる方法等が挙げられる。
【0114】
機械的衝撃力を混合物に印加する装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢等が挙げられる。
【0115】
本発明のトナーの製造方法を用いて製造されるトナーは、磁性粒子としてのキャリアと混合して、二成分系現像剤として用いてもよい。このとき、キャリアに対するトナーの質量比は、通常、1〜10[%]であり、3〜9[%]が好ましい。
【0116】
キャリアとしては、特に限定されないが、粒径が20〜200[μm]程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉等が挙げられる。
【0117】
また、キャリアは、表面に被覆層が形成されていてもよい。被覆層を構成する材料としては、特に限定されないが、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等のアミノ系樹脂;アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリスチレン、スチレン・アクリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン・アクリル共重合体、フッ化ビニリデン・フッ化ビニル共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体のターポリマー等のフルオロターポリマー等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;シリコーン樹脂等が使用できる。
【0118】
また、被覆層は、必要に応じて、導電粉を含んでもよい。導電粉を構成する材料としては、特に限定されないが、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0119】
導電粉の平均粒径は、通常、1[μm]以下である。導電粉の平均粒径が1[μm]を超えると、被覆層の電気抵抗を制御しにくくなることがある。
【0120】
なお、本発明のトナーの製造方法を用いて製造されるトナーは、キャリアと混合せず、磁性一成分現像剤又は非磁性一成分現像剤として用いてもよい。
【0121】
また、上記第二の液から有機溶剤を除去した液の密度もしくは上記第二の液から有機溶剤を除去している途中の液の密度をdとし、第三の液の密度をd’としたとき、その密度変化率は|d−d’|/d×100≦1で表わされる。この密度変化率を1[%]以下にすることにより、反応管100内における対流を防止し、トナーの原材料の安定的な流れを維持することができる。密度変化の主な原因として温度変化があり、これを抑制する方法としては、第二の液を反応装置10に供給する前に第二の液の温度を反応装置10と同じ温度にする方法がある。
【実施例】
【0122】
以下、本発明のより具体的な実施例について説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明中における「部」は、質量部を意味する。
【0123】
[プレポリマーの製造]
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物795部、イソフタル酸200部、テレフタル酸65部及びジブチルスズオキサイド2部を投入し、窒素気流下、常圧、210[℃]で8時間縮合反応させた。次に、10〜15[mmHg]の減圧下、脱水しながら5時間反応を継続させた後、80[℃]まで冷却し、酢酸エチル中でイソホロンジイソシアネート170部と2時間反応させ、プレポリマー(1)を得た。
【0124】
[第一の液の調製]
タンクに、カルナバワックスの35質量%酢酸エチル分散液170部、ポリエステル120部、PY155(クラリアント社製)20部、酢酸エチル70部及びイソホロンジアミン2部を投入し、2時間攪拌混合した。次に、高能率分散機エバラマイルダー(荏原製作所社製)を用いて、1時間循環混合して第一の液(1)を得た。第一の液(1)の酸価は、4.5KOHmg/gであった。
また、別のタンクに、プレポリマー(1)25部及び酢酸エチル25部を投入し、4時間攪拌混合し、第一の液(2)を得た。
【0125】
[水系媒体の調製]
タンクに、水945部、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体の20[質量%]、水分散液40部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50[質量%]、水溶液エレミノールMON−7(三洋化成工業社製)160部、及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、水系媒体(1)を得た。
【0126】
[実施例1]
第一の液(1)を3560[g/分]、プレポリマー(1)を440[g/分]、水系媒体(1)を6000[g/分]の供給速度で、パイプラインホモミキサー(プライミクス社製)に供給し、第二の液を得た。第二の液は、体積平均粒径が5.9[μm]、個数平均粒径に対する体積平均粒径の比が1.13であった。次に、第二の液を45[℃]まで昇温して、攪拌翼を外周端の周速が10.5[m/秒]となるように回転させながら、大気圧下(101.3kPa)、5時間有機溶媒を除去して、粒子を生成させ、スラリー(1)を得た。さらに、スラリー(1)を反応装置10に連続的に供給して第三の液(1)を得た。反応装置10の反応管100は内径150[mm]、長さ3000[mm]の直管の内部に10枚の多孔板110を設置したものである。この多孔板110の中心厚みをt、外周部の厚みをt’、多孔板径をD、多孔板間隔をSとした場合、t=20[mm]、t’=20[mm]、D=140[mm]、S/D’=0.5とした。多孔板110の孔の大きさ及び位置についてはJISZ8766に記載のものと同等とした。また、多孔板110は傾斜の無い平板とした。なお、反応管100内部の温度は65[℃]になるよう反応管100の外部から加熱を行った。反応管100の容積と第三の液の流量から計算した平均滞留時間は1時間に設定した。反応管100の入口(反応装置入口)の温度は25[℃]、密度は1.043[g/cm]、反応管100の出口(反応装置出口)の温度は65[℃]、密度は1.030[g/cm]であった。
【0127】
反応管100を通過した第三の液(1)はフィルタープレスで加圧濾過した後、濾液の伝導度が100[μS/cm]まで貫通洗浄し、濾過ケーキ(1)を得た。次に、固形分濃度が20[質量%]になるように、濾過ケーキ(1)に水を加え、ディスパーを用いて分散させた後、pHが4.0になるように、10[質量%]の塩酸を加え、30分間洗浄し、洗浄液を得た。さらに、洗浄液をフィルタープレスで加圧濾過した後、濾液の電気伝導度が100[μS/cm]まで貫通洗浄し、濾過ケーキ(2)を得た。次に、固形分濃度が25[質量%]になるように、濾過ケーキ(2)に水を加え、ディスパーを用いて分散させ、洗浄スラリー(1)を得た。
【0128】
次に、固形分に対して、0.2[質量%]の帯電制御剤が添加されるように、N、N、N−トリメチル−[3−(4−ぺルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウムヨージドのフタージェント310(ネオス社製)の1[質量%]メタノール水溶液を添加し、30分間攪拌し、母体粒子を生成させ、スラリー(2)を得た。さらに、遠心分離機を用いて、スラリー(2)を固液分離した後、減圧乾燥機を用いて、40[℃]で24時間乾燥した。
【0129】
次に、母体粒子100部に疎水性シリカUFP−35(電気化学工業社製)0.5部、疎水性シリカH2000(クラリアントジャパン社製)0.5部及び疎水性酸化チタンMT150IB(テイカ社製)0.5部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合した後、目開きが37[μm]のスクリーンを用いて粗大粒子を除去し、トナー(1)を得た。
【0130】
[実施例2]
多孔板110の枚数を2枚にし、S/D’=5.0とした以外は実施例1と同様にしてトナー(2)を得た。反応管100の入口の温度は25[℃]、密度は1.042[g/cm]、反応管100の出口の温度は65[℃]、密度は1.031[g/cm]であった。
【0131】
[実施例3]
S/D’=0.2とした以外は実施例1と同様にしてトナー(3)を得た。反応管100の入口の温度は25[℃]、密度は1.043[g/cm]、反応管100の出口の温度は65[℃]、密度は1.031[g/cm]であった。
【0132】
[実施例4]
多孔板110の中心厚みをtとし、多孔板110の外周部の厚みをt’とした場合、t=20[mm]、t’=5[mm]とし、反応管100の内部の温度を70[℃]とし、反応管100に供給する前に熱交換器で45[℃]に加熱した以外は実施例1と同様にしてトナー(4)を得た。反応管100の入口の温度は65[℃]、密度は1.037[g/cm]、反応管100の出口の温度は70[℃]、密度は1.026[g/cm]であった。
【0133】
[実施例5]
反応装置10の反応管100に第三の液を供給する前に熱交換器で65[℃]に加熱し、多孔板110の枚数を5枚にした以外は実施例1と同様にしてトナー(5)を得た。反応管100の入口の温度は65[℃]、密度は1.030[g/cm]、反応管100の出口の温度は65[℃]、密度は1.032[g/cm]であった。
【0134】
[実施例6]
多孔板110の5枚を取り出し、その5枚の多孔板110の代わりに、180°右捻りおよび左捻りの螺旋状の板121,122を90°ずつずらして直列に交互に2枚配置した形状の螺旋構造体120を設置した以外は実施例1と同様にしてトナー(6)を得た。螺旋状の板121,122の原材料流れ方向に垂直な方向における長さLを150[mm]とし、螺旋状の板121,122の原材料流れ方向における長さL’を225[mm]とした。反応管100の入口の温度は25[℃]、密度は1.043[g/cm]、反応管100の出口の温度は65[℃]、密度は1.025[g/cm]であった。
【0135】
[実施例7]
螺旋状の板121,122の原材料流れ方向に垂直な方向における長さLを80[mm]、螺旋状の板121,122の原材料流れ方向における長さL’を160[mm]とし、第三の液を反応管100に供給する前に熱交換器で55[℃]に加熱した以外は実施例6と同様にしてトナー(7)を得た。反応管100の入口の温度は55[℃]、密度は1.035[g/cm]、反応管100の出口の温度は65[℃]、密度は1.025[g/cm]であった。
【0136】
[実施例8]
反応管100の内径を300[mm]、反応管100の長さを7000[mm]とし、多孔板110の中心厚みをt、多孔板110の外周部の厚みをt’、多孔板110の直径をDとした場合、t=39[mm]、t’=0.5[mm]、D=200[mm]とし、多孔板110の孔の大きさ及び位置についてはJISZ8766に記載のD=200[mm]のものと同等とし、多孔板110の枚数を2枚にし、反応管100の容積と第三の液の流量とから計算した平均滞留時間を6時間に設定した以外は実施例1と同様にしてトナー(8)を得た。反応管100の入口の温度は25[℃]、密度は1.043[g/cm]、反応管100の出口の温度は65[℃]、の密度は1.026[g/cm]であった。
【0137】
[実施例9]
第一の液の調整にPY155(クラリアント社製)の代わりにPR1022(大日本インキ化学工業製)を用い、多孔板110の外周部の厚みを38[mm]にし、多孔板110の直径Dを150[mm]にし、多孔板110の孔の大きさ及び位置についてはJISZ8766に記載のD=150[mm]のものと同等とした以外は実施例8と同様にして、トナー(9)を得た。反応管100の入口の温度は25[℃]、密度は1.042[g/cm]、反応管100の出口の温度は65[℃]、密度は1.026[g/cm]であった。
【0138】
[実施例10]
反応器100の内部の温度を40[℃]にした以外は実施例9と同様にしてトナー(10)を得た。反応管100の入口の温度は25[℃]、密度は1.042[g/cm]、反応管100の出口の温度は40[℃]、密度は1.035[g/cm]であった。
【0139】
[実施例11]
第一の調整にプレポリマーおよびイソホロンジアミンを使用する代わりに、第一の液(1)にスチレンモノマー67部、アクリル酸2?エチルヘキシル 25部、架橋材1,6?ヘキサンジオールジアクリレート 0.4部、及び重合開始剤 2,2´?アゾビス?(2,4?ジメチルバレロニトリル) 2部を添加した以外は、実施例5と同様にして、トナー(11)を得た。反応管100の入口の温度は65[℃]、密度は1.031[g/cm]、反応管100の出口の温度は65[℃]、密度は1.032[g/cm]であった。
【0140】
[比較例1]
多孔板110の径DをD=150[mm]とした以外は実施例1と同様にしてトナー(12)を得た。反応管100の入口の温度は25[℃]、密度は1.040[g/cm]、反応管100の出口の温度は65[℃]、密度は1.025[g/cm]であった。
【0141】
[比較例2]
S/D’=0.1を満たすように多孔板110の間隔Sを設定した以外は実施例1と同様にしてトナー(13)を得た。反応管100の入口の温度は25[℃]、密度は1.042[g/cm]、反応管100の出口の温度は65[℃]の密度は1.025[g/cm]であった。
【0142】
[比較例3]
S/D’=5.1を満たすように多孔板110の間隔Sを設定した以外は実施例2と同様にしてトナー(14)を得た。反応管100の入口の温度は25[℃]、密度は1.041[g/cm]、反応管100の出口の温度は65[℃]の密度は1.025[g/cm]であった。
【0143】
[比較例4]
多孔板110を0枚とした以外は実施例1と同様にしてトナー(15)を得た。反応管100の入口の温度は25[℃]、密度は1.042[g/cm]、反応管100の出口の温度は65[℃]、密度は1.024[g/cm]であった。
【0144】
表1に、上記実施例1〜11及び比較例1〜4それぞれにおける堆積量、最低無次元滞留時間、耐高温オフセット温度の評価結果を示す。なお、堆積量、最低無次元滞留時間及び耐高温オフセット温度の評価方法を以下に示す。
【0145】
[堆積量測定方法]
第二の液の溶剤を除去したものを65[℃]の反応装置に24時間供給し続けた後、液を抜き、堆積物を掻き出し乾燥させた後重量を測定した。重量を反応装置の容積で割ったものを堆積量とした。このとき、堆積量が50[g/反応装置容積m]以下である場合を◎、50[g/反応装置容積m]以上100[g/反応装置容積m]未満である場合を○、100[g/反応装置容積m]以上である場合を×として、判定した。
【0146】
[最低無次元滞留時間測定方法]
反応装置に水を充填した後、0.006%NaCl水溶液を供給し、反応装置出口の電気伝導度が上がる時間を最低滞留時間とした。反応装置の容積と供給流量から計算した滞留時間を設定滞留時間とし、最低滞留時間を設定滞留時間で割ったものを最低無次元滞留時間とし、ショートパスの指標とした。このとき、最低無次元滞留時間が0.7以上である場合を◎、0.4以上0.7未満である場合を○、0.4未満である場合を×として、判定した。
【0147】
[高温オフセット測定方法]
定着ローラとして、テフロン(登録商標)ローラを使用した複写機MF2200(リコー社製)の定着部を改造した定着装置を用いて、タイプ6200紙(リコー社製)に複写テストを行なった。具体的には、上記定着装置の定着温度を変化させて高温オフセット温度(定着上限温度)を求めた。また、評価条件は、紙送りの線速度を50[mm/秒]、面圧を2.0[kgf/cm]、ニップ幅を4.5[mm]とした。このとき高温オフセット温度は、190[℃]以上である場合を◎、180[℃]以上190[℃]未満である場合を○、180[℃]未満である場合を×として、判定した。
【0148】
[総合評価]
反応装置付着量、最低無次元滞留時間、高温オフセットの評価項目において、◎を4点、○を2点として、合計点数が6点以上8点未満の場合を△、8点以上10点未満を○、10点以上を◎として判断した。なお、いずれか一つの項目でも×の評価であった場合は、総合評価を×として判断した。
【0149】
【表1】

【0150】
表1に示す通り、実施例の反応装置ではトナーの固形分を含むスラリーにおいても堆積およびショートパスを低減でき、実施例の反応装置を使用して製造したトナーは耐高温オフセット性を有している。
【0151】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
反応管100の中心軸方向における一方の端部から連続的に供給されて流れる固形分を含むスラリー状の原材料に熱を加える反応装置10であって、原材料の流れ方向に反応管100の内部を複数の小区画に区切る複数の多孔板110を備え、多孔板110の直径をDとし、反応管100の内壁面の直径をD’とし、原材料の流れ方向における多孔板110の間隔をSとしたとき、(1/2)・D’≦D<D’、かつ、0.2≦S/D’≦5.0の条件を満たすように構成した。これによれば、上記実施形態について説明したように、上記所定の条件を満たすように構成された複数の多孔板110で仕切られた複数の小区画それぞれにおいて、反応管100の中心部の原材料の一部が反応管の内壁面側に移動して反応管100の内壁面と多孔板110の外周縁との隙間を通って流れていく。従って、原材料のスリラーに含まれる固形分を上記隙間から流して多孔板110上に堆積するのを抑制することができる。しかも、反応管100内における原材料の滞留時間を反応管100の中心軸方向に直交する面内で均一化させることができ、原材料のショートパスを低減することができる。以上のように、原材料の固形分を含むスラリーを加熱する場合でも、加熱温度を詳細に規定することなく原材料の堆積及びショートパスを防止することができる。
(態様B)
上記態様Aにおいて、多孔板110の中心部の厚みをtとし、多孔板110の外周部の厚みをt’としたとき、t’<tの条件を満たすように、多孔板110の表面に傾斜を設けた。これによれば、上記実施形態について説明したように、固形分を含むスラリーを原材料として使用した場合に、多孔板110の傾斜した面に原材料中の固形分が堆積したとしても、その堆積物を多孔板110の傾斜面で滑り落とすことできる。従って、多孔板110における原材料の固形分の堆積をより確実に防止できる。
(態様C)
上記態様A又は態様Bにおいて、複数の多孔板110の一部もしくは全てを、右捻りおよび左捻りの螺旋状の板を90°ずつずらして直列に交互に配置した形状の螺旋構成部材120に置き換え、原材料の流れ方向に垂直な方向における螺旋状の板121,122の長さをL’としたとき、(1/2)・D’≦L’≦D’を満たすように構成した。これによれば、上記実施形態について説明したように、反応管100内に導入された原材料が、螺旋状の板121,122の表面に沿って反応管100の中央部から内壁面側に移動しながら螺旋状に滞留することなく流れる。従って、原材料の堆積を防止できるとともに、反応管100内における原材料の滞留時間を反応管100の中心軸方向に直交する面内で均一化させて原材料のショートパスを低減することができる。
(態様D)
上記態様Cにおいて、前記原材料の流れ方向における螺旋状の板121,122の長さL’が1.5Lより大きい。これによれば、上記実施形態について説明したように、反応管100内に導入された原材料が螺旋状の板121,122の表面に沿って流れる距離を確保することができるため、より確実に堆積物を抑制することができる。
(態様E)
トナーの製造方法であって、活性水素基を有する化合物と該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体とを含む結着樹脂を有するトナー材料を有機溶媒中で溶解又は分散させて第一の液を調製する第一の工程と、第一の液を水系媒体中で乳化又は分散させて第二の液を調製する第二の工程と、第二の液から有機溶媒を除去した後の液、又は第二の液から有機溶媒を除去しているの途中の液を、加熱することにより、第三の液を得る第三の工程とを含み、前記第三の工程を、上記態様A乃至態様Dのいずれかの反応装置に前記第二の液を通過させることによって行う。これによれば、上記実施形態について説明したように、加熱温度を詳細に規定することなく、原材料の堆積及びショートパスを防止しつつ、トナーの固形分を含むスラリーからなる第二の液(原材料)に対して所定の加熱処理を連続的に行い、原材料の堆積及びショートパスを防止しつつ第三の液を得ることができ、安定した耐高温オフセット性を有するトナーを製造することができる。
(態様F)
上記態様Eにおいて、第二の液から有機溶剤を除去した後の液又は第二の液から有機溶媒を除去しているの途中の液の密度をdとし、第三の液の密度をd’としたとき、|d−d’|/d×100≦1を満たす。これによれば、上記実施形態について説明したように、第三の液を得るときの密度変化率を1[%]以下にすることにより、反応管100内における対流を防止し、原材料の安定的な流れを維持することができる。
(態様G)
上記態様E又は態様Fのトナーの製造方法により上記反応装置を用いて連続的に加熱工程を実施することにより製造されたトナーである。これによれば、上記実施形態について説明したように、安定した耐高温オフセット性を有するトナーを提供できる。
【符号の説明】
【0152】
10 反応装置
100 反応管
110(111〜117) 多孔板
120 螺旋構造体
121,122 螺旋状の板
【先行技術文献】
【特許文献】
【0153】
【特許文献1】特開2003−316074号公報
【特許文献2】特開平10−15381号公報
【特許文献3】特開平07−060107号公報
【特許文献4】特開平11−133665号公報
【特許文献5】特許第2579150号公報
【特許文献6】特開2001−158819号公報
【特許文献7】特開2005−010368号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応管の中心軸方向における一方の端部から連続的に供給されて流れる固形分を含むスラリー状の原材料に熱を加える反応装置であって、
前記原材料の流れ方向に前記反応管の内部を複数の小区画に区切る複数の多孔板を備え、
前記多孔板の直径をDとし、前記反応管の内壁面の直径をD’とし、前記原材料の流れ方向における前記多孔板の間隔をSとしたとき、
(1/2)・D’≦D<D’、かつ、0.2≦S/D’≦5.0の条件を満たすように構成したことを特徴とする反応装置。
【請求項2】
請求項1の反応装置において、
前記多孔板の中心部の厚みをtとし、該多孔板の外周部の厚みをt’としたとき、
t’<tの条件を満たすように、該多孔板の表面に傾斜を設けたことを特徴とする反応装置。
【請求項3】
請求項1又は2の反応装置において、
前記複数の多孔板の一部もしくは全てを、右捻りおよび左捻りの螺旋状の板を90°ずつずらして直列に交互に配置した形状のものに置き換え、
前記原材料の流れ方向に垂直な方向における前記螺旋状の板の長さをLとしたとき、
(1/2)・D’≦L≦D’を満たすように構成したことを特徴とする反応装置。
【請求項4】
請求項3の反応装置において、
前記原材料の流れ方向における前記螺旋状の板の長さが1.5Lより大きいことを特徴とする反応装置。
【請求項5】
活性水素基を有する化合物と該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体とを含む結着樹脂を有するトナー材料を有機溶媒中で溶解又は分散させて第一の液を調製する第一の工程と、
前記第一の液を水系媒体中で乳化又は分散させて第二の液を調製する第二の工程と、
前記第二の液から有機溶媒を除去した後の液、又は前記第二の液から有機溶媒を除去しているの途中の液を、加熱することにより、第三の液を得る第三の工程と、を含み、
前記第三の工程を、請求項1乃至請求項4のいずれかの反応装置に前記第二の液を通過させることによって行うことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項6】
請求項5のトナーの製造方法において、
前記第二の液から有機溶剤を除去した後の液又は前記第二の液から有機溶媒を除去しているの途中の液の密度をdとし、前記第三の液の密度をd’としたとき、|d−d’|/d×100≦1を満たすことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6のトナーの製造方法で製造されたトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−52358(P2013−52358A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192719(P2011−192719)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】