反転印刷用インキ組成物、それを用いた印刷方法および表示装置の製造方法
【課題】均一な膜厚かつ高精細なパターニングで印刷を行うことができる反転印刷用インキ組成物,印刷方法および表示装置の製造方法を提供する
【解決手段】ブランケット21に塗布される反転印刷用インキ組成物22は、芳香族炭化水素および直鎖炭化水素を含有する溶媒に赤色発光層,緑色発光層を構成する高分子材料および低分子材料を溶解させたものである。直鎖炭化水素は、ブランケット21に対する反転印刷用インキ組成物22の接触角を小さくする。低分子材料は、反転印刷用インキ組成物22(転写層22a,パターン層)のブランケット21上でのフィルム化を抑える。
【解決手段】ブランケット21に塗布される反転印刷用インキ組成物22は、芳香族炭化水素および直鎖炭化水素を含有する溶媒に赤色発光層,緑色発光層を構成する高分子材料および低分子材料を溶解させたものである。直鎖炭化水素は、ブランケット21に対する反転印刷用インキ組成物22の接触角を小さくする。低分子材料は、反転印刷用インキ組成物22(転写層22a,パターン層)のブランケット21上でのフィルム化を抑える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えば有機EL(Electroluminescence)表示装置の有機層の形成に用いる反転印刷用インキ組成物、それを用いた印刷方法および表示装置の製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信産業の発達が加速するのに伴い、高性能な表示素子が要求されている。例えば有機EL(ElectroLuminescence)表示素子は、自発発光型表示素子であり視野角の広さ、コントラスト、応答速度の点において優れている。
【0003】
有機EL素子を構成する発光層等の材料は、低分子材料と高分子材料に大別される。低分子材料は主に真空蒸着法等の乾式法(蒸着法)により成膜され、高分子材料は、主にスピンコーティング、インクジェット、ノズルコート、凸版印刷および反転オフセット印刷等の湿式法により成膜される。材料の実用性やコストの点から、赤色発光層および緑色発光層を湿式法によりパターニングして形成し、その上層に蒸着法により、共通層としての青色発光層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1,2)。赤色発光層および緑色発光層をパターニングして形成する方法としては、低コストであることから反転オフセット印刷法がよく用いられている(例えば、特許文献3,4)
【0004】
反転オフセット印刷は、次の工程により行う。まず、インキ(溶媒に赤色発光層または緑色発光層の構成材料を溶解させたもの)をブランケットの表面全面に塗布して転写層を形成する。次いで、この転写層に発光層に対応するパターンの凹部が形成された反転印刷用版を接触させて、ブランケット側にパターン層を形成する。このパターン層は、版の凹部に対応してパターニングされたものとなる。最後に、このパターン層が形成されたブランケットを被印刷基板に接触させることにより、赤色発光層または緑色発光層の印刷が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4062352号公報
【特許文献2】特許第3899566号公報
【特許文献3】特開2005−310465号公報
【特許文献4】特開2005−126608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ブランケットの表面はシリコーンゴム等の軟質材からなるため、ブランケットの表面にインキを塗布する際に膜厚ムラが生じ易く、均一な膜厚での印刷を行うことが難しかった。また、赤色発光層または緑色発光層の材料である高分子材料を含むインキは、ブランケット上で容易にフィルム化してしまうため、高精細なパターニングを行うことが困難であった。
【0007】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、均一な膜厚、かつ高精細なパターニングでの印刷が可能な反転印刷用インキ組成物、それを用いた印刷方法および表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術による反転印刷用インキ組成物は、芳香族炭化水素および直鎖炭化水素を含有する溶媒と、低分子材料とを含むものである。
【0009】
ここで、低分子材料とは例えば重量平均分子量5万以下のモノマーまたはオリゴマーである。オリゴマーとはモノマーを2〜10個結合した重合体とする。なお、ここでの定義は、分子量の好ましい範囲を示したものであり、本技術では分子量が上記範囲を超えた低分子材料を必ずしも除外するものではない。
【0010】
本技術による印刷方法は、直鎖炭化水素および芳香族炭化水素を含む溶媒に低分子材料を含有させた反転印刷用インキ組成物をブランケットに塗布して転写層を形成する工程と、転写層に所定パターンの凹部を有する反転印刷用版を押し当てて、ブランケット上にパターン層を形成する工程と、パターン層を被印刷基板に転写する工程とを含むものである。本技術による表示装置の製造方法は、上記の印刷方法を用いたものである。
【0011】
本技術の反転印刷用インキ組成物,印刷方法または表示装置の製造方法では、反転印刷用インキ組成物に直鎖炭化水素が含まれているので、ブランケット上の転写層に塗布ムラが生じにくくなる。また、反転印刷用インキ組成物に低分子材料が含まれているので、ブランケット上で、転写層およびパターン層がフィルム化することが抑制される。
【発明の効果】
【0012】
本技術の反転印刷用インキ組成物,印刷方法および表示装置の製造方法によれば、反転印刷用インキ組成物が直鎖炭化水素および低分子材料を含むようにしたので、被印刷基板に均一な膜厚かつ高精細なパターニングの印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の一実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法の流れを表す図である。
【図2】図1に示した方法で製造した有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
【図3】上部隔壁を有する有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
【図4】反転オフセット印刷の流れを説明するための斜視図である。
【図5】図4に続く工程を表す斜視図である。
【図6】反転印刷用インキ組成物に用いる溶媒の沸点について説明するための図である。
【図7】接触角について説明するための図である。
【図8】溶媒による接触角の違いを説明するための図である。
【図9】直鎖炭化水素を混合した場合の接触角の変化について説明するための図である。
【図10】図1に示した方法で製造した有機EL素子の分光放射輝度を表す図である。
【図11】図1に示した方法で製造した有機EL素子の発光寿命を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明
は以下の順序で行う。
1.実施の形態(反転印刷用インキ組成物に直鎖炭化水素および低分子材料を含む例)
2.実施例
【0015】
<実施の形態>
図1は、本開示の一実施の形態に係る表示装置(表示装置1)の製造方法を表す流れ図であり、図2はこの製造方法により得られる表示装置1の断面構成を表したものである。表示装置1は基板11の上にそれぞれ下部電極12,有機層14および上部電極15を順に有する赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bがマトリクス状に配置されたものである。本実施の形態は、図1に示した工程のうち反転オフセット印刷法による赤色有機EL素子10Rの赤色発光層14CRおよび緑色有機EL素子10Gの緑色発光層14CG形成(ステップS105)の工程に特徴を有するものであるが、以下、図1に示した順に沿って説明する。
【0016】
(下部電極12を形成する工程)
まず、画素駆動回路(図示せず)が形成された基板11の全面に例えばITO(インジウムとスズの酸化物)よりなる透明導電膜を形成し、この透明導電膜をパターニングすることにより、下部電極12を赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに形成する(ステップS101)。このとき、下部電極12は画素駆動回路の駆動トランジスタと接続させる。基板11には、例えば石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどの公知のものを用いることができるが、石英やガラスを用いることが好ましい。下部電極12には、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)等の金属元素の単体または合金、あるいはInZnO(インジウム亜鉛オキシド)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金等の透明導電膜を用いてもよい。
【0017】
(隔壁13を形成する工程)
次いで、下部電極12上および基板11上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法により、SiO2等の無機絶縁膜を成膜し、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、隔壁13を形成する(ステップS102)。隔壁13は、下部電極12と上部電極15との絶縁性を確保すると共に発光領域を所望の形状にするためのものでもあるので、発光領域に対応して開口を設けるようにする。隔壁13を形成した後、基板11の表面(隔壁13および下部電極12が形成された側の面)に酸素プラズマ処理を行い、下部電極12の表面をクリーニングする。
【0018】
(正孔注入層14Aおよび正孔輸送層14Bを形成する工程)
酸素プラズマ処理を行った後、下部電極12上および隔壁13上に有機層14のうち赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bに共通する正孔注入層14Aおよび正孔輸送層14Bをこの順に形成する(ステップS103,S104)。
【0019】
正孔注入層14Aには、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリキノリン、ポリキノキサリンおよびそれらの誘導体、芳香族アミン構造を主鎖または側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)またはカーボン等を用いることができる。正孔注入層14Aに使用される典型的な高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、オリゴアニリンあるいはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などのポリジオキシチオフェンが挙げられる。この他、エイチ・シー・スタルク製の商品名Nafion(商標)および商品名Liquion(商標)、日産化学製の商品名エルソース(商標)および綜研化学製の導電性ポリマーベラゾール等を使用することができる。
【0020】
正孔輸送層14Bには例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン、ポリアニリン、ポリシラン、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体あるいはポリピロール等の高分子材料を使用することができる。
【0021】
(赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを形成する工程)
正孔輸送層14Bを形成した後、赤色有機EL素子10Rの赤色発光層14CRおよび緑色有機EL素子10Gの緑色発光層14CGを反転オフセット印刷法により形成する(ステップS105)。以下、この工程の詳細について説明する。
【0022】
赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGの形成方法としては、他にもインクジェット法やノズルコート法がある。しかしながらこれらの方法では、形成予定領域に予め液体のインキをためておかなければならないため、図3に示したように、本実施の形態の隔壁13に対応する下部隔壁13Aに加えて上部隔壁13Bが必要となる。一方、反転オフセット印刷法により赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを形成する場合には、インキをためておくための上部隔壁13Bは不要となり(図2)、表示装置1の構造を簡略化することができる。また、上部隔壁13Bによって赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGが汚染されることもない。
【0023】
図4および図5は、反転オフセット印刷法による赤色発光層14CR(緑色発光層14CG)の形成工程を順に示した斜視図である。まず、図4(A)に示したようにブランケット21を用意する。ブランケット21は、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)あるいは金属からなる基体上にシリコーンゴムからなる軟質材層が積層されたものである。このブランケット21の軟質材層上に、図4(B)に示したように、反転印刷用インキ組成物22を塗布して、例えばスピンコート法により、図4(C)に示したよう反転印刷用インキ組成物22からなる転写層22aを形成する。なお、大気中で赤色発光層14CR,緑色発光層14CGの形成を行うと、有機EL素子10R,10G,10Bの発光寿命を短縮してしまう虞があるので、窒素雰囲気下で印刷を行うことが好ましい。
【0024】
反転印刷用インキ組成物22は、芳香族炭化水素および直鎖炭化水素を含有する溶媒に、赤色発光層14CRまたは緑色発光層14CGを構成する高分子(発光)材料および低分子材料を混合させたものである。
【0025】
反転印刷用インキ組成物22の芳香族炭化水素は、反転印刷用インキ組成物22の高分子材料および低分子材料を溶解させる役割を主に担う。例えば、キシレン,CHB(シクロヘキシルベンゼン),メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン),テトラリン(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン)またはIPB(4−イソプロピルビフェニル)を用いることができ、2種類以上の芳香族炭化水素を用いてもよい。使用する芳香族炭化水素の沸点が低いと、短時間の間にブランケット21上で反転印刷用インキ組成物22がフィルム化してしまい、精細なパターニングができない虞がある。このため、芳香族炭化水素の沸点は、反転印刷用インキ組成物22に含まれる直鎖炭化水素の沸点より高いことが好ましく、キシレンの沸点(138〜144℃)より高いことがより好ましい。
【0026】
図6は、芳香族炭化水素の沸点を、直鎖炭化水素(オクタン)の沸点と共に示したものである。本実施の形態の反転印刷用インキ組成物22は図6に示した芳香族炭化水素に限定されるわけではないが、例えば、直鎖炭化水素としてオクタンを使用した場合、芳香族炭化水素としてオクタンの沸点より高い沸点のキシレンを用いることが好ましく、更に、キシレンより沸点の高いメシチレン,テトラリン,CHBまたはIPBを用いることがより好ましい。また、溶質(高分子材料および低分子材料)に対して溶解性の高い芳香族炭化水素に、沸点の高い芳香族炭化水素を組み合わせて使用することも好ましく、例えば溶解性の高いキシレンと沸点の高いCHBを組み合わせて使用することができる。
【0027】
反転印刷用インキ組成物22の直鎖炭化水素は、上記の芳香族炭化水素と共に高分子材料および低分子材料を溶解させるものであるが、加えて、ブランケット21上に均一な膜厚で転写層22aを形成する役割を担っている。具体的に、この直鎖炭化水素は、反転印刷用インキ組成物22のブランケット21に対する接触角を小さくして、ブランケット21上に反転印刷用インキ組成物22の塗布ムラが生じにくいようにしている。
【0028】
接触角は、濡れ性を示す指標として用いられ、図7に示したように、液体(反転印刷用インキ組成物22)を固体表面(ブランケット21)に滴下した際に、液体のもつ表面張力により丸くなった液滴の接線と固体表面とのなす角度θのことを表すものである。接触角は、共役系がなく、かつ分子間の相互作用が小さいものほど小さくなる傾向にある。このようなものの中で、実用上、単純な構造でコストを低く抑えることができるため、直鎖炭化水素がブランケット21に対する接触角を小さくするものとして適する。
【0029】
図8および図9に、ブランケット21に対する各溶媒の接触角を測定した結果を示す。ブランケット21にはシリコーンゴムの軟質材層を有するものを使用した。図8より、芳香族炭化水素であるキシレン(30°),CHB(40°),テトラリン(41°)およびIPB(52°)よりも、直鎖炭化水素であるオクタン(20°)の方が小さいことは明らかである。また、オクタンをCHBにCHB:オクタン=1:1(体積比)の割合で添加すると、接触角は、図9に示したように、CHBのみの時に比べて小さくなり(22°)、更にオクタンの割合を増加させるにつれて小さくなった。加えて、単独では非常に接触角の大きいIPBでさえも、オクタンをキシレン:オクタン:IPB=1:2:2(体積比)の割合で添加すると、接触角は26°まで小さくなった。つまり、直鎖炭化水素のブランケット21に対する接触角が芳香族炭化水素の接触角よりも小さければ、反転印刷用インキ組成物22全体の接触角は小さくなる。
【0030】
このように、芳香族炭化水素に直鎖炭化水素を添加すると、接触角が小さくなり、つまり、ブランケット21の表面(軟質材層)に対する濡れ性が向上し、ブランケット21に均一な膜厚で転写層22aを形成することができる。延いては、均一な膜厚の赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを形成することができる。反転印刷用インキ組成物22のブランケット21に対する接触角が30°以下であることが好ましい。
【0031】
反転印刷用インキ組成物22の高分子材料は、赤色発光層14CRまたは緑色発光層14CGを構成するものであり、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生する。この高分子材料として、例えばポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープしたものが挙げられる。ドープ材料としては、例えばルブレン、ペリレン、9,10ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッドまたはクマリン6等を用いることができる。
【0032】
反転印刷用インキ組成物22に含まれる低分子材料は、基板11に高精細なパターニングで赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを形成させるためのものであり、これにより表示装置1の解像度を向上させることが可能となる。
【0033】
詳細には、ブランケット21に転写層22aが形成された際(図4(C))、または後述のブランケット21から基板11(被印刷基板)へのパターン層22bの転写前(図5(A),(B))に、この低分子材料が反転印刷用インキ組成物22(転写層22a,パターン層22b)のブランケット21上でのフィルム化を抑えるため、高精細なパターニングが可能となる。上記の高分子材料の立体配座は、濃度やスピンコートの条件により異なってくるが、反転印刷用インキ組成物22に低分子材料が含まれない場合、これらの高分子材料の分子同士が絡み合い易く、ブランケット21上で容易にフィルム化してしまうと推測される。低分子材料は、この高分子材料のフィルム化を抑制するため、基板11に精細なラインアンドスペース(ライン解像度)で赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを形成することが可能となる。表示装置1において、この低分子材料は上記高分子材料と共に赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを構成する。
【0034】
反転印刷用インキ組成物22に含有される低分子材料が、赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを構成することにより、表示装置1の動作時に青色発光層14CBから、赤色発光層14CR,緑色発光層14CGへの正孔および電子の注入効率を向上させることができる。つまり、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの特性が向上する。
【0035】
赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGが低分子材料を含有していない場合、後述のように共通層として形成される青色発光層14CBのエネルギー準位と、赤色発光層14CR,緑色発光層14CGのエネルギー準位との差が大きくなる。つまり、青色発光層14CBと赤色発光層14CR,緑色発光層14CGとの間の正孔または電子の注入効率が低くなり、所望の特性が得られない虞がある。これに対し、高分子材料と共に低分子材料により赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを構成すると、このエネルギー準位の差が小さくなり、上記の正孔および電子の注入効率を向上させることが可能となる。
【0036】
反転印刷用インキ組成物22の低分子材料は、低分子化合物が同じ反応または類似の反応を連鎖的に繰り返すことにより生じた高分子量の重合体または縮合体の分子からなる化合物以外のものであって、分子量が実質的に単一であるものを指す。また、この低分子材料は加熱による分子間の新たな化学結合は生じず、単分子で存在する。
【0037】
このような低分子材料の重量平均分子量(Mw)は5万以下であることが好ましく、1万5千以下であることがより好ましい。これは、分子量の大きい、例えば5万以上の材料に比べてある程度小さい分子量の材料の方が多様な特性を有するため、溶媒への溶解度等の条件を調整し易いためである。また、さらに、分子量が500以上1万5千以下の低分子材料では、これを単独で(高分子材料を加えずに)成膜した場合にフィルム化せず、非常に高精細なパターニングが可能となる。つまり、分子量が500以上1万5千以下の低分子材料では、反転印刷用インキ組成物22のフィルム化を防止する効果がより高まる。
【0038】
また、高分子材料と低分子材料との比率は、高分子材料:低分子材料(重量比)=10:1以上1:2以下であることが好ましく、2:1以上1:2以下であることがより好ましい。高分子材料:低分子材料(重量比)が10:1未満では、低分子材料による効果が表れにくく、1:2を超える場合には、膜形成が困難になる虞があるためである。
【0039】
このような低分子材料としては、例えば、ベンゼン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、カルバゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキサゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、またはポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマーあるいはオリゴマーを用いることができる。
【0040】
上記の具体的な低分子材料として、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(F4−TCNQ)、テトラシアノ4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N,N,N’,N’,−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’,−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2,2’−チエニルピロール)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
更に好ましくは、下記の式(1)〜式(3)で表される低分子材料を用いることが好ましい。
【0042】
【化1】
(A1〜A3は芳香族炭化水素基、複素環基またはそれらの誘導体である。)
【0043】
【化2】
(但し、式(1)に含まれる化合物を除く。Z1は含窒素炭化水素基あるいはその誘導体である。L1は2価の芳香族環基が1乃至4個結合した基、具体的には、2〜4個の芳香族環が連結した2価の基、またはその誘導体である。A4およびA5は、芳香族炭化水素基、またはその誘導体である。但し、A4およびA5は互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0044】
【化3】
(但し、式(1)および式(2)に含まれる化合物を除く。Z2は含窒素炭化水素基あるいはその誘導体である。L2は2価の芳香族環基が2乃至6個結合した基である。具体的には、2〜6個の芳香族環が連結した2価の基、またはその誘導体である。A6〜A9は、芳香族炭化水素基あるいは複素環基、またはその誘導体が1〜10個結合した基である。)
【0045】
式(1)に示した化合物の具体例としては、以下の式(1−1)〜式(1−48)などの化合物が挙げられる。
【0046】
【化4】
【0047】
【化5】
【0048】
【化6】
【0049】
式(2)に示した化合物の具体例としては、以下の式(2−1)〜式(2−163)などの化合物が挙げられる。
【0050】
【化7】
【0051】
【化8】
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
【化11】
【0055】
【化12】
【0056】
【化13】
【0057】
【化14】
【0058】
【化15】
【0059】
【化16】
【0060】
【化17】
【0061】
【化18】
【0062】
【化19】
【0063】
【化20】
【0064】
【化21】
【0065】
式(3)に示した化合物の具体例としては、以下の式(3−1)〜式(3−45)などの化合物が挙げられる。
【0066】
【化22】
【0067】
【化23】
【0068】
【化24】
【0069】
【化25】
【0070】
このような反転印刷用インキ組成物22からなる転写層22aをブランケット21上に形成した後、図4(D)に示したように、この転写層22aに反転印刷用版23を押し当てる。この反転印刷用版23と転写層22a(ブランケット21)とを接触させる工程は加圧圧縮により行う。指押しやローラーによる加圧も可能であるが、ブランケット21の背面側から圧縮気体を噴出させて押し出し、中央部から端部へと順次密着させる圧縮気体加圧法により接触させることが好ましい。圧力の制御が他の方法に比べて容易となる。接触圧が高すぎると、反転印刷用インキ組成物22がフィルム化し易く、パターニングの精細さが低下するため、接触圧は10kPa以下であることが好ましい。
【0071】
反転印刷用版23は、例えばガラスやシリコンなどの無機材料やステンレス、銅、ニッケルなどの金属で構成されており、一方の面には赤色発光層14CRまたは緑色発光層14CGに対応するパターンの凹部が設けられている。この反転印刷用版23の凹部と転写層22aとが対向するように反転印刷用版23とブランケット21とを接触させることにより、図5(A)に示したように、ブランケット21側に反転印刷用版23の凹部のパターンと同一パターン(赤色発光層14CRまたは緑色発光層14CGに対応するパターン)の反転印刷用インキ組成物22からなるパターン層22bが形成される。反転印刷用版23側には、凹部と逆パターン(凸部と同一パターン)の反転印刷用インキ組成物22からなる非印刷部22cが形成される。反転印刷用版23とブランケット21との接触は、ブランケット21上に転写層22aが形成されてから1分以内に行うことが好ましい。あまり時間が経過してしまうと、反転印刷用インキ組成物22に含有される溶媒が揮発して、転写層22aがフィルム化してしまうからである。
【0072】
次いで、図5(B)に示したように、正孔輸送層14Bまでが形成された基板11を用意し、ブランケット21のパターン層22bと正孔輸送層14Bとが対向するようにしてアラインメントを行う。続いて、図5(C)に示したように、例えば上述の圧縮気体加圧法によりブランケット21に基板11を押し当てた後、図5(D)に示したように、ブランケット21を基板11から引き離すと、基板11にパターン層22bが印刷される。ブランケット21と基板11との接触は、パターン層22bが形成されてから30分以内に行うことが好ましい。あまり時間が経過してしまうと、反転印刷用インキ組成物22の溶媒が揮発してパターン層22bがブランケット21から転写(剥離)されにくくなるためである。この基板11上のパターン層22bを加熱し、溶媒を完全に除去することで、赤色発光層14CR(緑色発光層14CG)が形成される。
【0073】
(青色発光層14CBを形成する工程)
赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを形成した後、蒸着法により赤色発光層14CR,緑色発光層14CGおよび正孔輸送層14Bの全面に青色発光層14CBを形成する(ステップS106)。
【0074】
青色発光層14CBは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。例えば、ホスト材料としてのアントラセン化合物に、青色もしくは緑色の蛍光性色素のゲスト材料がドーピングされたものであり、青色もしくは緑色の発光光を発生する。
【0075】
(電子輸送層14D,電子注入層14Eおよび上部電極15を形成する工程)
青色発光層14CBを形成した後、この青色発光層14CBの全面に蒸着法により電子輸送層14D,電子注入層14Eおよび上部電極15をこの順に形成する(ステップS107,S108,S109)。
【0076】
電子輸送層14Dは、赤色発光層14CR,緑色発光層14CGおよび青色発光層14CBへの電子輸送効率を高めるものである。電子輸送層14Dの材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、フラーレン、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3)、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、C60、アクリジン、スチルベン、1,10−フェナントロリンまたはそれらの誘導体や金属錯体等である。
【0077】
電子注入層14Eは、電子注入効率を高めるためのものである。電子注入層14Eの材料として、例えば、リチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(Li2O)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(Cs2CO3)、またはこれらの混合物を用いることができる。また、電子注入層14Eの材料として、例えばカルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属またはこれらの金属の酸化物、複合酸化物やフッ化物等を単体で、あるいは混合物や合金として使用してもよい。
【0078】
上部電極15は隔壁13および有機層14により下部電極12とは絶縁された状態で基板11上にベタ膜状に形成され、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bの共通電極として機能する。上部電極15は例えばアルミニウム、マグネシウム、カルシウムまたはナトリウム(Na)等の金属導電膜により形成される。薄膜での導電性が良好であり、かつ、光吸収の小さいマグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)により上部電極15が形成されていることが好ましい。Mg−Ag合金におけるマグネシウムと銀との比率は特に限定されないが、膜厚比でMg:Ag=20:1〜1:1の範囲であることが好ましい。上部電極15の材料にアルミニウムとリチウムとの合金(Al−Li合金)を用いてもよい。
【0079】
上部電極15は、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体またはフタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層により形成してもよい。この場合、更に第3層としてMg−Ag合金のような光透過性の層を形成してもよい。
【0080】
上部電極15を形成した後、例えば蒸着法やCVD法により透水性の低いアモルファス窒化シリコンからなる保護層16を形成する。保護層16を形成した後、最後に、遮光膜およびカラーフィルタ(図示せず)が設けられた封止用基板17を接着層(図示せず)を間にして保護層16の上に張り合わせる。以上により図2に示した表示装置1が完成する。
【0081】
以上のように、本実施の形態では、反転印刷用インキ組成物22に直鎖炭化水素および低分子材料を含むようにしたので、ブランケット21にこの反転印刷用インキ組成物22を塗布した際に、塗布ムラが生じにくく、かつ、ブランケット21上で、この反転印刷用インキ組成物22(転写層22a,パターン層22b)がフィルム化することも抑制することができる。よって、基板11に均一な膜厚かつ高精細なパターニングで赤色発光層14CR,緑色発光層14CGを印刷することができる。
【実施例】
【0082】
更に、本技術の具体的な実施例について説明する。
【0083】
(実施例1)
溶媒に、高分子材料として式(4)に示したTFB(Poly(9,9'-dioctylfluorene-co-N-(4-butylphenyl)diphenylamine)を0.3wt%で溶解させ、反転印刷用インキ組成物22を調製した。この反転印刷用インキ組成物22をスピンコート法によりブランケット21上に塗布して転写層22aを形成した。このときの、転写層22aの塗布ムラを目視により確認した結果を表1に示す。なお、ブランケット21には、STD700(フジクラゴム製)を使用し、スピンコートは、7000rpm 5秒、回転後スロープを2秒で行った。
【0084】
【化26】
【0085】
【表1】
【0086】
表1から明らかであるように、芳香族炭化水素のみの溶媒(実験例1−6,1−7)では、塗布ムラが確認されたのに対し、直鎖炭化水素としてオクタンを含む実験例1−1,1−2,1−3、直鎖炭化水素としてヘキサンを含む実験例1−4、直鎖炭化水素としてテトラデカンを含む実験例1−5では、塗布ムラは確認されなかった。つまり、直鎖炭化水素を含む溶媒を用いた場合には均一な膜厚で転写層22aを形成することができた。
【0087】
(実施例2)
反転印刷用インキ組成物22の低分子材料の種類および量を変化させて、印刷を行った場合のパターン層22bの膜厚ムラおよびライン解像度を測定した結果を表2に示す。膜厚ムラおよびライン解像度の測定は次のようにして行った。
【0088】
まず、STD700(フジクラゴム製)のブランケット21上にキシレンを塗布し、3分間膨潤した後、これを3000rpm 2秒、回転後スロープ 2秒で回転させ、表面のキシレンを除去した。次いで、キシレン:オクタン:CHB=2:3:1(体積比)の割合で混合した溶媒に式(4)に示した高分子材料と表2に示した低分子材料とをそれぞれの比で混合したものを2wt%の濃度で溶解させて反転印刷用インキ組成物22を調製した。この反転印刷用インキ組成物22をブランケット21上にスピンコート法により3000rpm 2秒、回転後スロープ 2秒で回転させて塗布し、転写層22aを形成した。続いて、この転写層22aに反転印刷用版23を押し当てて、ブランケット21上にパターン層22bを形成した。反転印刷用版23には10〜100μmのラインアンドスペース(ライン幅)の凹部が設けられたものを用いた。最後に、ブランケット21上のパターン層22bを、ガラス製の基板11に転写して膜厚ムラを目視により確認した。10〜100μmラインアンドスペースの反転印刷用版23のうち、パターニングが行うことができたものをライン解像度として表2に示した。
【0089】
【表2】
【0090】
表2から明らかであるように、反転印刷用インキ組成物22に低分子材料を含有しない実験例2−12ではライン解像度が100μmであったのに対し、低分子材料として高分子材料と同量の式(8),式(2−6),式(2−24),式(2−39),式(3−5),式(3−10),式(1−29),式(1−34),式(2−38)をそれぞれ含有する実験例2−1〜2−9では、ライン解像度が10μmに向上した。つまり、反転印刷用インキ組成物22が低分子材料を含むことにより、高精細なパターニングを行うことができた。低分子材料の含有量は、高分子材料よりも多くなっていてもよい(高分子材料:低分子材料=1:2、実験例2−10)。低分子材料の割合が低下してくると、ライン解像度も低下する傾向にあるため(実験例2−11)、高分子材料と低分子材料との混合比(重量比)は2:1以上1:2以下であることが好ましい。なお、実験例2−1〜2−12では、直鎖炭化水素としてオクタンを含んでいるので、膜厚ムラは全てにおいて確認されなかった。
【0091】
(実施例3)
表3には、芳香族炭化水素の種類を変えて、上記表2と同様の手順により膜厚ムラおよびライン解像度を測定した結果を示す。なお、実験例3−1〜3−7では式(4)に示した高分子材料と式(2−38)に示した低分子材料とを1:1(重量比)の比で混合したものを2wt%の濃度でそれぞれの溶媒に溶解させた。
【0092】
【表3】
【0093】
実験例3−7から明らかであるように、芳香族炭化水素を含まない溶媒、即ち直鎖炭化水素のみの溶媒では高分子材料および低分子材料が溶解しないため、転写層22a(パターン層22b)を形成することができない。これに対し、実験例3−1〜3−6のように芳香族炭化水素を含有するようにすれば、パターン層22bを形成することができる。また、芳香族炭化水素として沸点がオクタン(沸点125℃)よりも高いCHB(沸点236℃,実験例3−1)を使用すると、10μmのラインアンドスペースでパターニングを行うことができる。溶解性の高いキシレンにオクタンよりも高沸点のCHB(実験例3−2)、メシチレン(沸点165℃,実験例3−3)、テトラリン(沸点206〜208℃,実験例3−4)、IPB(沸点291℃,実験例3−5)を組み合わせて使用しても10μmの高精細なパターニングを行うことができた。芳香族炭化水素としてキシレンのみを使用することも可能であるが(沸点138〜144℃,実験例3−6)ライン解像度が低下するため、芳香族炭化水素にはキシレンよりも沸点の高いものを用いることが好ましい。
【0094】
(実施例4)
本実施の形態の方法により緑色有機EL素子10Gを形成して、その特性を調べた。
【0095】
まず、基板11としてガラス基板(25mm×25mm)を用意し、この基板11に下部電極12として、厚み120nmのAg−Pd−Cu合金よりなる銀合金層と、厚み10nmのITOよりなる透明導電膜との2層構造を形成した(ステップS101)。
【0096】
次に、正孔注入層14Aとして、大気中でスピンコート法により、ND1501(日産化学製ポリアニリン)を15nmの厚みで塗布した後、220℃で30分間、ホットプレート上で熱硬化させた(ステップS103)。
【0097】
続いて、窒素雰囲気下(露点−60℃、酸素濃度10ppm)において、正孔注入層14Aの上に、正孔輸送層14Bとして、式(5)に示したポリマー(ポリビニルカルバゾール)をスピンコート法により20nmの厚みで塗布した。その後、窒素雰囲気下(露点−60℃、酸素濃度10ppm)において、180℃で60分間、ホットプレート上で熱硬化させた(ステップS104)。
【0098】
【化27】
【0099】
正孔輸送層14Bを形成した後、反転印刷用インキ組成物22を調製した。反転印刷用インキ組成物22の溶媒には、芳香族炭化水素としてキシレンおよびCHB、直鎖炭化水素としてオクタンを含有させたものを用いた。キシレン、CHBおよびオクタンの混合比はキシレン:オクタン:CHB=2:3:1(体積比)とした。反転印刷用インキ組成物22の低分子材料には式(2−38)に示したものを用い、高分子材料にはアントラセンをブロックに持つフルオレノン系ポリアリーレン材料を用いた。反転印刷用インキ組成物22における高分子材料と低分子材料との混合比は高分子材料:低分子材料=2:1(重量比)とし、これを2wt%の濃度で上記の溶媒に溶解させた。
【0100】
反転印刷用インキ組成物22を調製した後、反転オフセット印刷法により正孔輸送層14Bの上に緑色発光層14CGを80nmの厚みで形成した。緑色発光層14CGの反転オフセット印刷は、以下のようにして行った。まず、STD700(フジクラゴム製)のブランケット21上にキシレンを塗布し、3分間膨潤した後、これを3000rpm 2秒、回転後スロープ 2秒で回転させ、表面のキシレンを除去した。次いで、窒素雰囲気下、先に調製した反転印刷用インキ組成物22をブランケット21上にスピンコート法により3000rpm 2秒、回転後スロープ 2秒で回転させて塗布し、転写層22aを形成した。続いて、この転写層22aに反転印刷用版23を押し当てて、ブランケット21上にパターン層22bを形成した。反転印刷用版23には10μmのラインアンドスペースの凹部が設けられたものを用いた。ブランケット21上にパターン層22bを形成した後、このパターン層22bを正孔輸送層14Bまで形成された上記の基板11に転写し、グローブボックス内で130℃、20分間加熱して緑色発光層14CGを形成した。
【0101】
緑色発光層14CGを形成した後、真空蒸着機により、青色発光層14CB、電子輸送層14Dおよび電子注入層14Eを蒸着した(ステップS106,107,108)。
【0102】
青色発光層14CBには、式(6)に示したADN(9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン)と、式(7)に示した青色ドーパントとを95:5(重量比)の割合で共蒸着したものを用いた。電子輸送層14Dには、15nmの厚みの式(8)に示したAlq3を用い、電子注入層14Eには、厚み0.3nmのLiFを用いた。
【0103】
【化28】
【0104】
【化29】
【0105】
【化30】
【0106】
電子注入層14Eを形成した後、10nmの厚みのMg−Ag合金よりなる上部電極15を形成した(ステップS109)。最後に、CVD法によりSiNよりなる保護層16を形成し、透明樹脂を用いて固体封止を行った。
【0107】
以上の工程により得られた緑色有機EL素子10Gの輝度および発光寿命を測定した結果を図10および図11に実線で示した。比較として、スピンコーティングにより、ベタ膜の(パターニングされていない)緑色発光層14CGを形成した緑色有機EL素子の輝度および発光寿命を点線で示す。これらの結果より、本実施の形態では、スピンコーティングにより形成された緑色有機EL素子と同等の特性が保持されることが確認できた。
【0108】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、反転印刷用インキ組成物22を用いて赤色発光層14CRまたは緑色発光層14CGを形成する例を示したが、赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CG以外の発光層、あるいは正孔注入層14Aや正孔輸送層14B等の他の有機層14をパターニングして形成するようにしてもよい。特に、正孔注入層14Aをパターニングして形成すれば、リーク電流を抑えることができる。
【0109】
また、図2では赤色有機EL素子10R、緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bが配置された表示装置1を例示したが、黄色の有機EL素子(Y)を有するRGBY,白色の有機EL素子(W)を有するRGBWあるいはYB等の配列の表示装置の発光層を印刷する場合においても適用することができる。
【0110】
更に、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0111】
加えて、上記実施の形態では、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【0112】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)芳香族炭化水素および直鎖炭化水素を含有する溶媒と、低分子材料とを含む反転印刷用インキ組成物。
(2)前記低分子材料の分子量が1万5千以下である前記(1)に記載の反転印刷用インキ組成物。
(3)前記低分子材料は、式(1)で表される化合物である前記(1)または(2)に記載の反転印刷用インキ組成物。
(4)前記低分子化合物は、式(2)で表される(但し、式(1)に含まれる化合物を除く)化合物である前記(1)または(2)に記載の反転印刷用インキ組成物。
(5)前記低分子化合物は、式(3)で表される(但し、式(1)および式(2)に含まれる化合物を除く)化合物である前記(1)または(2)に記載の反転印刷用インキ組成物。
(6)前記芳香族炭化水素の沸点は、キシレンの沸点より高い前記(1)乃至(5)のうちいずれか1つに記載の反転印刷用インキ組成物。
(7)前記直鎖炭化水素のブランケットに対する接触角は、前記芳香族炭化水素よりも小さい前記(1)乃至(6)のうちいずれか1つに記載の反転印刷用インキ組成物。
(8)前記直鎖炭化水素は、オクタンである前記(1)乃至(7)のうちいずれか1つに記載の反転印刷用インキ組成物。
(9)前記芳香族炭化水素は、キシレンおよびシクロヘキシルベンゼンである前記(1)乃至(8)のうちいずれか1つに記載の反転印刷用インキ組成物。
(10)直鎖炭化水素および芳香族炭化水素を含む溶媒に低分子材料を含有させた反転印刷用インキ組成物をブランケットに塗布して転写層を形成する工程と、前記転写層に所定パターンの凹部を有する反転印刷用版を押し当てて、前記ブランケット上にパターン層を形成する工程と、前記パターン層を被印刷基板に転写する工程と
を含む印刷方法。
(11)基板上に表示素子を形成する工程を含み、前記表示素子を形成する工程は、直鎖炭化水素および芳香族炭化水素を含む溶媒に低分子材料を含有させた反転印刷用インキ組成物をブランケットに塗布して転写層を形成する工程と、前記転写層に所定パターンの凹部を有する反転印刷用版を押し当てて、前記ブランケット上にパターン層を形成する工程と、前記パターン層を被印刷基板に転写する工程とを含む表示装置の製造方法。
【符号の説明】
【0113】
1…表示装置、10R…赤色有機EL素子、10G…緑色有機EL素子、10B…青色有機EL素子、11…基板、12…下部電極、13…下部隔壁、14…有機膜、14A…正孔注入層、14B…正孔輸送層、14CR…赤色発光層、14CG…緑色発光層、14CB…青色発光層、14D…電子輸送層、14E…電子注入層、15…上部電極、16…保護層、17…封止用基板、21…ブランケット、22…反転印刷用インキ組成物、22a…転写層、22b…パターン層、22c…非印刷部。
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えば有機EL(Electroluminescence)表示装置の有機層の形成に用いる反転印刷用インキ組成物、それを用いた印刷方法および表示装置の製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信産業の発達が加速するのに伴い、高性能な表示素子が要求されている。例えば有機EL(ElectroLuminescence)表示素子は、自発発光型表示素子であり視野角の広さ、コントラスト、応答速度の点において優れている。
【0003】
有機EL素子を構成する発光層等の材料は、低分子材料と高分子材料に大別される。低分子材料は主に真空蒸着法等の乾式法(蒸着法)により成膜され、高分子材料は、主にスピンコーティング、インクジェット、ノズルコート、凸版印刷および反転オフセット印刷等の湿式法により成膜される。材料の実用性やコストの点から、赤色発光層および緑色発光層を湿式法によりパターニングして形成し、その上層に蒸着法により、共通層としての青色発光層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1,2)。赤色発光層および緑色発光層をパターニングして形成する方法としては、低コストであることから反転オフセット印刷法がよく用いられている(例えば、特許文献3,4)
【0004】
反転オフセット印刷は、次の工程により行う。まず、インキ(溶媒に赤色発光層または緑色発光層の構成材料を溶解させたもの)をブランケットの表面全面に塗布して転写層を形成する。次いで、この転写層に発光層に対応するパターンの凹部が形成された反転印刷用版を接触させて、ブランケット側にパターン層を形成する。このパターン層は、版の凹部に対応してパターニングされたものとなる。最後に、このパターン層が形成されたブランケットを被印刷基板に接触させることにより、赤色発光層または緑色発光層の印刷が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4062352号公報
【特許文献2】特許第3899566号公報
【特許文献3】特開2005−310465号公報
【特許文献4】特開2005−126608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ブランケットの表面はシリコーンゴム等の軟質材からなるため、ブランケットの表面にインキを塗布する際に膜厚ムラが生じ易く、均一な膜厚での印刷を行うことが難しかった。また、赤色発光層または緑色発光層の材料である高分子材料を含むインキは、ブランケット上で容易にフィルム化してしまうため、高精細なパターニングを行うことが困難であった。
【0007】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、均一な膜厚、かつ高精細なパターニングでの印刷が可能な反転印刷用インキ組成物、それを用いた印刷方法および表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術による反転印刷用インキ組成物は、芳香族炭化水素および直鎖炭化水素を含有する溶媒と、低分子材料とを含むものである。
【0009】
ここで、低分子材料とは例えば重量平均分子量5万以下のモノマーまたはオリゴマーである。オリゴマーとはモノマーを2〜10個結合した重合体とする。なお、ここでの定義は、分子量の好ましい範囲を示したものであり、本技術では分子量が上記範囲を超えた低分子材料を必ずしも除外するものではない。
【0010】
本技術による印刷方法は、直鎖炭化水素および芳香族炭化水素を含む溶媒に低分子材料を含有させた反転印刷用インキ組成物をブランケットに塗布して転写層を形成する工程と、転写層に所定パターンの凹部を有する反転印刷用版を押し当てて、ブランケット上にパターン層を形成する工程と、パターン層を被印刷基板に転写する工程とを含むものである。本技術による表示装置の製造方法は、上記の印刷方法を用いたものである。
【0011】
本技術の反転印刷用インキ組成物,印刷方法または表示装置の製造方法では、反転印刷用インキ組成物に直鎖炭化水素が含まれているので、ブランケット上の転写層に塗布ムラが生じにくくなる。また、反転印刷用インキ組成物に低分子材料が含まれているので、ブランケット上で、転写層およびパターン層がフィルム化することが抑制される。
【発明の効果】
【0012】
本技術の反転印刷用インキ組成物,印刷方法および表示装置の製造方法によれば、反転印刷用インキ組成物が直鎖炭化水素および低分子材料を含むようにしたので、被印刷基板に均一な膜厚かつ高精細なパターニングの印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の一実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法の流れを表す図である。
【図2】図1に示した方法で製造した有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
【図3】上部隔壁を有する有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
【図4】反転オフセット印刷の流れを説明するための斜視図である。
【図5】図4に続く工程を表す斜視図である。
【図6】反転印刷用インキ組成物に用いる溶媒の沸点について説明するための図である。
【図7】接触角について説明するための図である。
【図8】溶媒による接触角の違いを説明するための図である。
【図9】直鎖炭化水素を混合した場合の接触角の変化について説明するための図である。
【図10】図1に示した方法で製造した有機EL素子の分光放射輝度を表す図である。
【図11】図1に示した方法で製造した有機EL素子の発光寿命を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明
は以下の順序で行う。
1.実施の形態(反転印刷用インキ組成物に直鎖炭化水素および低分子材料を含む例)
2.実施例
【0015】
<実施の形態>
図1は、本開示の一実施の形態に係る表示装置(表示装置1)の製造方法を表す流れ図であり、図2はこの製造方法により得られる表示装置1の断面構成を表したものである。表示装置1は基板11の上にそれぞれ下部電極12,有機層14および上部電極15を順に有する赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bがマトリクス状に配置されたものである。本実施の形態は、図1に示した工程のうち反転オフセット印刷法による赤色有機EL素子10Rの赤色発光層14CRおよび緑色有機EL素子10Gの緑色発光層14CG形成(ステップS105)の工程に特徴を有するものであるが、以下、図1に示した順に沿って説明する。
【0016】
(下部電極12を形成する工程)
まず、画素駆動回路(図示せず)が形成された基板11の全面に例えばITO(インジウムとスズの酸化物)よりなる透明導電膜を形成し、この透明導電膜をパターニングすることにより、下部電極12を赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bの各々ごとに形成する(ステップS101)。このとき、下部電極12は画素駆動回路の駆動トランジスタと接続させる。基板11には、例えば石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどの公知のものを用いることができるが、石英やガラスを用いることが好ましい。下部電極12には、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)等の金属元素の単体または合金、あるいはInZnO(インジウム亜鉛オキシド)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金等の透明導電膜を用いてもよい。
【0017】
(隔壁13を形成する工程)
次いで、下部電極12上および基板11上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法により、SiO2等の無機絶縁膜を成膜し、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、隔壁13を形成する(ステップS102)。隔壁13は、下部電極12と上部電極15との絶縁性を確保すると共に発光領域を所望の形状にするためのものでもあるので、発光領域に対応して開口を設けるようにする。隔壁13を形成した後、基板11の表面(隔壁13および下部電極12が形成された側の面)に酸素プラズマ処理を行い、下部電極12の表面をクリーニングする。
【0018】
(正孔注入層14Aおよび正孔輸送層14Bを形成する工程)
酸素プラズマ処理を行った後、下部電極12上および隔壁13上に有機層14のうち赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10G,青色有機EL素子10Bに共通する正孔注入層14Aおよび正孔輸送層14Bをこの順に形成する(ステップS103,S104)。
【0019】
正孔注入層14Aには、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリキノリン、ポリキノキサリンおよびそれらの誘導体、芳香族アミン構造を主鎖または側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)またはカーボン等を用いることができる。正孔注入層14Aに使用される典型的な高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、オリゴアニリンあるいはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などのポリジオキシチオフェンが挙げられる。この他、エイチ・シー・スタルク製の商品名Nafion(商標)および商品名Liquion(商標)、日産化学製の商品名エルソース(商標)および綜研化学製の導電性ポリマーベラゾール等を使用することができる。
【0020】
正孔輸送層14Bには例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン、ポリアニリン、ポリシラン、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体あるいはポリピロール等の高分子材料を使用することができる。
【0021】
(赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを形成する工程)
正孔輸送層14Bを形成した後、赤色有機EL素子10Rの赤色発光層14CRおよび緑色有機EL素子10Gの緑色発光層14CGを反転オフセット印刷法により形成する(ステップS105)。以下、この工程の詳細について説明する。
【0022】
赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGの形成方法としては、他にもインクジェット法やノズルコート法がある。しかしながらこれらの方法では、形成予定領域に予め液体のインキをためておかなければならないため、図3に示したように、本実施の形態の隔壁13に対応する下部隔壁13Aに加えて上部隔壁13Bが必要となる。一方、反転オフセット印刷法により赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを形成する場合には、インキをためておくための上部隔壁13Bは不要となり(図2)、表示装置1の構造を簡略化することができる。また、上部隔壁13Bによって赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGが汚染されることもない。
【0023】
図4および図5は、反転オフセット印刷法による赤色発光層14CR(緑色発光層14CG)の形成工程を順に示した斜視図である。まず、図4(A)に示したようにブランケット21を用意する。ブランケット21は、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)あるいは金属からなる基体上にシリコーンゴムからなる軟質材層が積層されたものである。このブランケット21の軟質材層上に、図4(B)に示したように、反転印刷用インキ組成物22を塗布して、例えばスピンコート法により、図4(C)に示したよう反転印刷用インキ組成物22からなる転写層22aを形成する。なお、大気中で赤色発光層14CR,緑色発光層14CGの形成を行うと、有機EL素子10R,10G,10Bの発光寿命を短縮してしまう虞があるので、窒素雰囲気下で印刷を行うことが好ましい。
【0024】
反転印刷用インキ組成物22は、芳香族炭化水素および直鎖炭化水素を含有する溶媒に、赤色発光層14CRまたは緑色発光層14CGを構成する高分子(発光)材料および低分子材料を混合させたものである。
【0025】
反転印刷用インキ組成物22の芳香族炭化水素は、反転印刷用インキ組成物22の高分子材料および低分子材料を溶解させる役割を主に担う。例えば、キシレン,CHB(シクロヘキシルベンゼン),メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン),テトラリン(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン)またはIPB(4−イソプロピルビフェニル)を用いることができ、2種類以上の芳香族炭化水素を用いてもよい。使用する芳香族炭化水素の沸点が低いと、短時間の間にブランケット21上で反転印刷用インキ組成物22がフィルム化してしまい、精細なパターニングができない虞がある。このため、芳香族炭化水素の沸点は、反転印刷用インキ組成物22に含まれる直鎖炭化水素の沸点より高いことが好ましく、キシレンの沸点(138〜144℃)より高いことがより好ましい。
【0026】
図6は、芳香族炭化水素の沸点を、直鎖炭化水素(オクタン)の沸点と共に示したものである。本実施の形態の反転印刷用インキ組成物22は図6に示した芳香族炭化水素に限定されるわけではないが、例えば、直鎖炭化水素としてオクタンを使用した場合、芳香族炭化水素としてオクタンの沸点より高い沸点のキシレンを用いることが好ましく、更に、キシレンより沸点の高いメシチレン,テトラリン,CHBまたはIPBを用いることがより好ましい。また、溶質(高分子材料および低分子材料)に対して溶解性の高い芳香族炭化水素に、沸点の高い芳香族炭化水素を組み合わせて使用することも好ましく、例えば溶解性の高いキシレンと沸点の高いCHBを組み合わせて使用することができる。
【0027】
反転印刷用インキ組成物22の直鎖炭化水素は、上記の芳香族炭化水素と共に高分子材料および低分子材料を溶解させるものであるが、加えて、ブランケット21上に均一な膜厚で転写層22aを形成する役割を担っている。具体的に、この直鎖炭化水素は、反転印刷用インキ組成物22のブランケット21に対する接触角を小さくして、ブランケット21上に反転印刷用インキ組成物22の塗布ムラが生じにくいようにしている。
【0028】
接触角は、濡れ性を示す指標として用いられ、図7に示したように、液体(反転印刷用インキ組成物22)を固体表面(ブランケット21)に滴下した際に、液体のもつ表面張力により丸くなった液滴の接線と固体表面とのなす角度θのことを表すものである。接触角は、共役系がなく、かつ分子間の相互作用が小さいものほど小さくなる傾向にある。このようなものの中で、実用上、単純な構造でコストを低く抑えることができるため、直鎖炭化水素がブランケット21に対する接触角を小さくするものとして適する。
【0029】
図8および図9に、ブランケット21に対する各溶媒の接触角を測定した結果を示す。ブランケット21にはシリコーンゴムの軟質材層を有するものを使用した。図8より、芳香族炭化水素であるキシレン(30°),CHB(40°),テトラリン(41°)およびIPB(52°)よりも、直鎖炭化水素であるオクタン(20°)の方が小さいことは明らかである。また、オクタンをCHBにCHB:オクタン=1:1(体積比)の割合で添加すると、接触角は、図9に示したように、CHBのみの時に比べて小さくなり(22°)、更にオクタンの割合を増加させるにつれて小さくなった。加えて、単独では非常に接触角の大きいIPBでさえも、オクタンをキシレン:オクタン:IPB=1:2:2(体積比)の割合で添加すると、接触角は26°まで小さくなった。つまり、直鎖炭化水素のブランケット21に対する接触角が芳香族炭化水素の接触角よりも小さければ、反転印刷用インキ組成物22全体の接触角は小さくなる。
【0030】
このように、芳香族炭化水素に直鎖炭化水素を添加すると、接触角が小さくなり、つまり、ブランケット21の表面(軟質材層)に対する濡れ性が向上し、ブランケット21に均一な膜厚で転写層22aを形成することができる。延いては、均一な膜厚の赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを形成することができる。反転印刷用インキ組成物22のブランケット21に対する接触角が30°以下であることが好ましい。
【0031】
反転印刷用インキ組成物22の高分子材料は、赤色発光層14CRまたは緑色発光層14CGを構成するものであり、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生する。この高分子材料として、例えばポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープしたものが挙げられる。ドープ材料としては、例えばルブレン、ペリレン、9,10ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッドまたはクマリン6等を用いることができる。
【0032】
反転印刷用インキ組成物22に含まれる低分子材料は、基板11に高精細なパターニングで赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを形成させるためのものであり、これにより表示装置1の解像度を向上させることが可能となる。
【0033】
詳細には、ブランケット21に転写層22aが形成された際(図4(C))、または後述のブランケット21から基板11(被印刷基板)へのパターン層22bの転写前(図5(A),(B))に、この低分子材料が反転印刷用インキ組成物22(転写層22a,パターン層22b)のブランケット21上でのフィルム化を抑えるため、高精細なパターニングが可能となる。上記の高分子材料の立体配座は、濃度やスピンコートの条件により異なってくるが、反転印刷用インキ組成物22に低分子材料が含まれない場合、これらの高分子材料の分子同士が絡み合い易く、ブランケット21上で容易にフィルム化してしまうと推測される。低分子材料は、この高分子材料のフィルム化を抑制するため、基板11に精細なラインアンドスペース(ライン解像度)で赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを形成することが可能となる。表示装置1において、この低分子材料は上記高分子材料と共に赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを構成する。
【0034】
反転印刷用インキ組成物22に含有される低分子材料が、赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを構成することにより、表示装置1の動作時に青色発光層14CBから、赤色発光層14CR,緑色発光層14CGへの正孔および電子の注入効率を向上させることができる。つまり、赤色有機EL素子10Rおよび緑色有機EL素子10Gの特性が向上する。
【0035】
赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGが低分子材料を含有していない場合、後述のように共通層として形成される青色発光層14CBのエネルギー準位と、赤色発光層14CR,緑色発光層14CGのエネルギー準位との差が大きくなる。つまり、青色発光層14CBと赤色発光層14CR,緑色発光層14CGとの間の正孔または電子の注入効率が低くなり、所望の特性が得られない虞がある。これに対し、高分子材料と共に低分子材料により赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを構成すると、このエネルギー準位の差が小さくなり、上記の正孔および電子の注入効率を向上させることが可能となる。
【0036】
反転印刷用インキ組成物22の低分子材料は、低分子化合物が同じ反応または類似の反応を連鎖的に繰り返すことにより生じた高分子量の重合体または縮合体の分子からなる化合物以外のものであって、分子量が実質的に単一であるものを指す。また、この低分子材料は加熱による分子間の新たな化学結合は生じず、単分子で存在する。
【0037】
このような低分子材料の重量平均分子量(Mw)は5万以下であることが好ましく、1万5千以下であることがより好ましい。これは、分子量の大きい、例えば5万以上の材料に比べてある程度小さい分子量の材料の方が多様な特性を有するため、溶媒への溶解度等の条件を調整し易いためである。また、さらに、分子量が500以上1万5千以下の低分子材料では、これを単独で(高分子材料を加えずに)成膜した場合にフィルム化せず、非常に高精細なパターニングが可能となる。つまり、分子量が500以上1万5千以下の低分子材料では、反転印刷用インキ組成物22のフィルム化を防止する効果がより高まる。
【0038】
また、高分子材料と低分子材料との比率は、高分子材料:低分子材料(重量比)=10:1以上1:2以下であることが好ましく、2:1以上1:2以下であることがより好ましい。高分子材料:低分子材料(重量比)が10:1未満では、低分子材料による効果が表れにくく、1:2を超える場合には、膜形成が困難になる虞があるためである。
【0039】
このような低分子材料としては、例えば、ベンゼン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、カルバゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキサゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、またはポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマーあるいはオリゴマーを用いることができる。
【0040】
上記の具体的な低分子材料として、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(F4−TCNQ)、テトラシアノ4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N,N,N’,N’,−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’,−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2,2’−チエニルピロール)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
更に好ましくは、下記の式(1)〜式(3)で表される低分子材料を用いることが好ましい。
【0042】
【化1】
(A1〜A3は芳香族炭化水素基、複素環基またはそれらの誘導体である。)
【0043】
【化2】
(但し、式(1)に含まれる化合物を除く。Z1は含窒素炭化水素基あるいはその誘導体である。L1は2価の芳香族環基が1乃至4個結合した基、具体的には、2〜4個の芳香族環が連結した2価の基、またはその誘導体である。A4およびA5は、芳香族炭化水素基、またはその誘導体である。但し、A4およびA5は互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0044】
【化3】
(但し、式(1)および式(2)に含まれる化合物を除く。Z2は含窒素炭化水素基あるいはその誘導体である。L2は2価の芳香族環基が2乃至6個結合した基である。具体的には、2〜6個の芳香族環が連結した2価の基、またはその誘導体である。A6〜A9は、芳香族炭化水素基あるいは複素環基、またはその誘導体が1〜10個結合した基である。)
【0045】
式(1)に示した化合物の具体例としては、以下の式(1−1)〜式(1−48)などの化合物が挙げられる。
【0046】
【化4】
【0047】
【化5】
【0048】
【化6】
【0049】
式(2)に示した化合物の具体例としては、以下の式(2−1)〜式(2−163)などの化合物が挙げられる。
【0050】
【化7】
【0051】
【化8】
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
【化11】
【0055】
【化12】
【0056】
【化13】
【0057】
【化14】
【0058】
【化15】
【0059】
【化16】
【0060】
【化17】
【0061】
【化18】
【0062】
【化19】
【0063】
【化20】
【0064】
【化21】
【0065】
式(3)に示した化合物の具体例としては、以下の式(3−1)〜式(3−45)などの化合物が挙げられる。
【0066】
【化22】
【0067】
【化23】
【0068】
【化24】
【0069】
【化25】
【0070】
このような反転印刷用インキ組成物22からなる転写層22aをブランケット21上に形成した後、図4(D)に示したように、この転写層22aに反転印刷用版23を押し当てる。この反転印刷用版23と転写層22a(ブランケット21)とを接触させる工程は加圧圧縮により行う。指押しやローラーによる加圧も可能であるが、ブランケット21の背面側から圧縮気体を噴出させて押し出し、中央部から端部へと順次密着させる圧縮気体加圧法により接触させることが好ましい。圧力の制御が他の方法に比べて容易となる。接触圧が高すぎると、反転印刷用インキ組成物22がフィルム化し易く、パターニングの精細さが低下するため、接触圧は10kPa以下であることが好ましい。
【0071】
反転印刷用版23は、例えばガラスやシリコンなどの無機材料やステンレス、銅、ニッケルなどの金属で構成されており、一方の面には赤色発光層14CRまたは緑色発光層14CGに対応するパターンの凹部が設けられている。この反転印刷用版23の凹部と転写層22aとが対向するように反転印刷用版23とブランケット21とを接触させることにより、図5(A)に示したように、ブランケット21側に反転印刷用版23の凹部のパターンと同一パターン(赤色発光層14CRまたは緑色発光層14CGに対応するパターン)の反転印刷用インキ組成物22からなるパターン層22bが形成される。反転印刷用版23側には、凹部と逆パターン(凸部と同一パターン)の反転印刷用インキ組成物22からなる非印刷部22cが形成される。反転印刷用版23とブランケット21との接触は、ブランケット21上に転写層22aが形成されてから1分以内に行うことが好ましい。あまり時間が経過してしまうと、反転印刷用インキ組成物22に含有される溶媒が揮発して、転写層22aがフィルム化してしまうからである。
【0072】
次いで、図5(B)に示したように、正孔輸送層14Bまでが形成された基板11を用意し、ブランケット21のパターン層22bと正孔輸送層14Bとが対向するようにしてアラインメントを行う。続いて、図5(C)に示したように、例えば上述の圧縮気体加圧法によりブランケット21に基板11を押し当てた後、図5(D)に示したように、ブランケット21を基板11から引き離すと、基板11にパターン層22bが印刷される。ブランケット21と基板11との接触は、パターン層22bが形成されてから30分以内に行うことが好ましい。あまり時間が経過してしまうと、反転印刷用インキ組成物22の溶媒が揮発してパターン層22bがブランケット21から転写(剥離)されにくくなるためである。この基板11上のパターン層22bを加熱し、溶媒を完全に除去することで、赤色発光層14CR(緑色発光層14CG)が形成される。
【0073】
(青色発光層14CBを形成する工程)
赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CGを形成した後、蒸着法により赤色発光層14CR,緑色発光層14CGおよび正孔輸送層14Bの全面に青色発光層14CBを形成する(ステップS106)。
【0074】
青色発光層14CBは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。例えば、ホスト材料としてのアントラセン化合物に、青色もしくは緑色の蛍光性色素のゲスト材料がドーピングされたものであり、青色もしくは緑色の発光光を発生する。
【0075】
(電子輸送層14D,電子注入層14Eおよび上部電極15を形成する工程)
青色発光層14CBを形成した後、この青色発光層14CBの全面に蒸着法により電子輸送層14D,電子注入層14Eおよび上部電極15をこの順に形成する(ステップS107,S108,S109)。
【0076】
電子輸送層14Dは、赤色発光層14CR,緑色発光層14CGおよび青色発光層14CBへの電子輸送効率を高めるものである。電子輸送層14Dの材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、フラーレン、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3)、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、C60、アクリジン、スチルベン、1,10−フェナントロリンまたはそれらの誘導体や金属錯体等である。
【0077】
電子注入層14Eは、電子注入効率を高めるためのものである。電子注入層14Eの材料として、例えば、リチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(Li2O)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(Cs2CO3)、またはこれらの混合物を用いることができる。また、電子注入層14Eの材料として、例えばカルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属またはこれらの金属の酸化物、複合酸化物やフッ化物等を単体で、あるいは混合物や合金として使用してもよい。
【0078】
上部電極15は隔壁13および有機層14により下部電極12とは絶縁された状態で基板11上にベタ膜状に形成され、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bの共通電極として機能する。上部電極15は例えばアルミニウム、マグネシウム、カルシウムまたはナトリウム(Na)等の金属導電膜により形成される。薄膜での導電性が良好であり、かつ、光吸収の小さいマグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)により上部電極15が形成されていることが好ましい。Mg−Ag合金におけるマグネシウムと銀との比率は特に限定されないが、膜厚比でMg:Ag=20:1〜1:1の範囲であることが好ましい。上部電極15の材料にアルミニウムとリチウムとの合金(Al−Li合金)を用いてもよい。
【0079】
上部電極15は、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体またはフタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層により形成してもよい。この場合、更に第3層としてMg−Ag合金のような光透過性の層を形成してもよい。
【0080】
上部電極15を形成した後、例えば蒸着法やCVD法により透水性の低いアモルファス窒化シリコンからなる保護層16を形成する。保護層16を形成した後、最後に、遮光膜およびカラーフィルタ(図示せず)が設けられた封止用基板17を接着層(図示せず)を間にして保護層16の上に張り合わせる。以上により図2に示した表示装置1が完成する。
【0081】
以上のように、本実施の形態では、反転印刷用インキ組成物22に直鎖炭化水素および低分子材料を含むようにしたので、ブランケット21にこの反転印刷用インキ組成物22を塗布した際に、塗布ムラが生じにくく、かつ、ブランケット21上で、この反転印刷用インキ組成物22(転写層22a,パターン層22b)がフィルム化することも抑制することができる。よって、基板11に均一な膜厚かつ高精細なパターニングで赤色発光層14CR,緑色発光層14CGを印刷することができる。
【実施例】
【0082】
更に、本技術の具体的な実施例について説明する。
【0083】
(実施例1)
溶媒に、高分子材料として式(4)に示したTFB(Poly(9,9'-dioctylfluorene-co-N-(4-butylphenyl)diphenylamine)を0.3wt%で溶解させ、反転印刷用インキ組成物22を調製した。この反転印刷用インキ組成物22をスピンコート法によりブランケット21上に塗布して転写層22aを形成した。このときの、転写層22aの塗布ムラを目視により確認した結果を表1に示す。なお、ブランケット21には、STD700(フジクラゴム製)を使用し、スピンコートは、7000rpm 5秒、回転後スロープを2秒で行った。
【0084】
【化26】
【0085】
【表1】
【0086】
表1から明らかであるように、芳香族炭化水素のみの溶媒(実験例1−6,1−7)では、塗布ムラが確認されたのに対し、直鎖炭化水素としてオクタンを含む実験例1−1,1−2,1−3、直鎖炭化水素としてヘキサンを含む実験例1−4、直鎖炭化水素としてテトラデカンを含む実験例1−5では、塗布ムラは確認されなかった。つまり、直鎖炭化水素を含む溶媒を用いた場合には均一な膜厚で転写層22aを形成することができた。
【0087】
(実施例2)
反転印刷用インキ組成物22の低分子材料の種類および量を変化させて、印刷を行った場合のパターン層22bの膜厚ムラおよびライン解像度を測定した結果を表2に示す。膜厚ムラおよびライン解像度の測定は次のようにして行った。
【0088】
まず、STD700(フジクラゴム製)のブランケット21上にキシレンを塗布し、3分間膨潤した後、これを3000rpm 2秒、回転後スロープ 2秒で回転させ、表面のキシレンを除去した。次いで、キシレン:オクタン:CHB=2:3:1(体積比)の割合で混合した溶媒に式(4)に示した高分子材料と表2に示した低分子材料とをそれぞれの比で混合したものを2wt%の濃度で溶解させて反転印刷用インキ組成物22を調製した。この反転印刷用インキ組成物22をブランケット21上にスピンコート法により3000rpm 2秒、回転後スロープ 2秒で回転させて塗布し、転写層22aを形成した。続いて、この転写層22aに反転印刷用版23を押し当てて、ブランケット21上にパターン層22bを形成した。反転印刷用版23には10〜100μmのラインアンドスペース(ライン幅)の凹部が設けられたものを用いた。最後に、ブランケット21上のパターン層22bを、ガラス製の基板11に転写して膜厚ムラを目視により確認した。10〜100μmラインアンドスペースの反転印刷用版23のうち、パターニングが行うことができたものをライン解像度として表2に示した。
【0089】
【表2】
【0090】
表2から明らかであるように、反転印刷用インキ組成物22に低分子材料を含有しない実験例2−12ではライン解像度が100μmであったのに対し、低分子材料として高分子材料と同量の式(8),式(2−6),式(2−24),式(2−39),式(3−5),式(3−10),式(1−29),式(1−34),式(2−38)をそれぞれ含有する実験例2−1〜2−9では、ライン解像度が10μmに向上した。つまり、反転印刷用インキ組成物22が低分子材料を含むことにより、高精細なパターニングを行うことができた。低分子材料の含有量は、高分子材料よりも多くなっていてもよい(高分子材料:低分子材料=1:2、実験例2−10)。低分子材料の割合が低下してくると、ライン解像度も低下する傾向にあるため(実験例2−11)、高分子材料と低分子材料との混合比(重量比)は2:1以上1:2以下であることが好ましい。なお、実験例2−1〜2−12では、直鎖炭化水素としてオクタンを含んでいるので、膜厚ムラは全てにおいて確認されなかった。
【0091】
(実施例3)
表3には、芳香族炭化水素の種類を変えて、上記表2と同様の手順により膜厚ムラおよびライン解像度を測定した結果を示す。なお、実験例3−1〜3−7では式(4)に示した高分子材料と式(2−38)に示した低分子材料とを1:1(重量比)の比で混合したものを2wt%の濃度でそれぞれの溶媒に溶解させた。
【0092】
【表3】
【0093】
実験例3−7から明らかであるように、芳香族炭化水素を含まない溶媒、即ち直鎖炭化水素のみの溶媒では高分子材料および低分子材料が溶解しないため、転写層22a(パターン層22b)を形成することができない。これに対し、実験例3−1〜3−6のように芳香族炭化水素を含有するようにすれば、パターン層22bを形成することができる。また、芳香族炭化水素として沸点がオクタン(沸点125℃)よりも高いCHB(沸点236℃,実験例3−1)を使用すると、10μmのラインアンドスペースでパターニングを行うことができる。溶解性の高いキシレンにオクタンよりも高沸点のCHB(実験例3−2)、メシチレン(沸点165℃,実験例3−3)、テトラリン(沸点206〜208℃,実験例3−4)、IPB(沸点291℃,実験例3−5)を組み合わせて使用しても10μmの高精細なパターニングを行うことができた。芳香族炭化水素としてキシレンのみを使用することも可能であるが(沸点138〜144℃,実験例3−6)ライン解像度が低下するため、芳香族炭化水素にはキシレンよりも沸点の高いものを用いることが好ましい。
【0094】
(実施例4)
本実施の形態の方法により緑色有機EL素子10Gを形成して、その特性を調べた。
【0095】
まず、基板11としてガラス基板(25mm×25mm)を用意し、この基板11に下部電極12として、厚み120nmのAg−Pd−Cu合金よりなる銀合金層と、厚み10nmのITOよりなる透明導電膜との2層構造を形成した(ステップS101)。
【0096】
次に、正孔注入層14Aとして、大気中でスピンコート法により、ND1501(日産化学製ポリアニリン)を15nmの厚みで塗布した後、220℃で30分間、ホットプレート上で熱硬化させた(ステップS103)。
【0097】
続いて、窒素雰囲気下(露点−60℃、酸素濃度10ppm)において、正孔注入層14Aの上に、正孔輸送層14Bとして、式(5)に示したポリマー(ポリビニルカルバゾール)をスピンコート法により20nmの厚みで塗布した。その後、窒素雰囲気下(露点−60℃、酸素濃度10ppm)において、180℃で60分間、ホットプレート上で熱硬化させた(ステップS104)。
【0098】
【化27】
【0099】
正孔輸送層14Bを形成した後、反転印刷用インキ組成物22を調製した。反転印刷用インキ組成物22の溶媒には、芳香族炭化水素としてキシレンおよびCHB、直鎖炭化水素としてオクタンを含有させたものを用いた。キシレン、CHBおよびオクタンの混合比はキシレン:オクタン:CHB=2:3:1(体積比)とした。反転印刷用インキ組成物22の低分子材料には式(2−38)に示したものを用い、高分子材料にはアントラセンをブロックに持つフルオレノン系ポリアリーレン材料を用いた。反転印刷用インキ組成物22における高分子材料と低分子材料との混合比は高分子材料:低分子材料=2:1(重量比)とし、これを2wt%の濃度で上記の溶媒に溶解させた。
【0100】
反転印刷用インキ組成物22を調製した後、反転オフセット印刷法により正孔輸送層14Bの上に緑色発光層14CGを80nmの厚みで形成した。緑色発光層14CGの反転オフセット印刷は、以下のようにして行った。まず、STD700(フジクラゴム製)のブランケット21上にキシレンを塗布し、3分間膨潤した後、これを3000rpm 2秒、回転後スロープ 2秒で回転させ、表面のキシレンを除去した。次いで、窒素雰囲気下、先に調製した反転印刷用インキ組成物22をブランケット21上にスピンコート法により3000rpm 2秒、回転後スロープ 2秒で回転させて塗布し、転写層22aを形成した。続いて、この転写層22aに反転印刷用版23を押し当てて、ブランケット21上にパターン層22bを形成した。反転印刷用版23には10μmのラインアンドスペースの凹部が設けられたものを用いた。ブランケット21上にパターン層22bを形成した後、このパターン層22bを正孔輸送層14Bまで形成された上記の基板11に転写し、グローブボックス内で130℃、20分間加熱して緑色発光層14CGを形成した。
【0101】
緑色発光層14CGを形成した後、真空蒸着機により、青色発光層14CB、電子輸送層14Dおよび電子注入層14Eを蒸着した(ステップS106,107,108)。
【0102】
青色発光層14CBには、式(6)に示したADN(9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン)と、式(7)に示した青色ドーパントとを95:5(重量比)の割合で共蒸着したものを用いた。電子輸送層14Dには、15nmの厚みの式(8)に示したAlq3を用い、電子注入層14Eには、厚み0.3nmのLiFを用いた。
【0103】
【化28】
【0104】
【化29】
【0105】
【化30】
【0106】
電子注入層14Eを形成した後、10nmの厚みのMg−Ag合金よりなる上部電極15を形成した(ステップS109)。最後に、CVD法によりSiNよりなる保護層16を形成し、透明樹脂を用いて固体封止を行った。
【0107】
以上の工程により得られた緑色有機EL素子10Gの輝度および発光寿命を測定した結果を図10および図11に実線で示した。比較として、スピンコーティングにより、ベタ膜の(パターニングされていない)緑色発光層14CGを形成した緑色有機EL素子の輝度および発光寿命を点線で示す。これらの結果より、本実施の形態では、スピンコーティングにより形成された緑色有機EL素子と同等の特性が保持されることが確認できた。
【0108】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、反転印刷用インキ組成物22を用いて赤色発光層14CRまたは緑色発光層14CGを形成する例を示したが、赤色発光層14CRおよび緑色発光層14CG以外の発光層、あるいは正孔注入層14Aや正孔輸送層14B等の他の有機層14をパターニングして形成するようにしてもよい。特に、正孔注入層14Aをパターニングして形成すれば、リーク電流を抑えることができる。
【0109】
また、図2では赤色有機EL素子10R、緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bが配置された表示装置1を例示したが、黄色の有機EL素子(Y)を有するRGBY,白色の有機EL素子(W)を有するRGBWあるいはYB等の配列の表示装置の発光層を印刷する場合においても適用することができる。
【0110】
更に、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0111】
加えて、上記実施の形態では、赤色有機EL素子10R,緑色有機EL素子10Gおよび青色有機EL素子10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【0112】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)芳香族炭化水素および直鎖炭化水素を含有する溶媒と、低分子材料とを含む反転印刷用インキ組成物。
(2)前記低分子材料の分子量が1万5千以下である前記(1)に記載の反転印刷用インキ組成物。
(3)前記低分子材料は、式(1)で表される化合物である前記(1)または(2)に記載の反転印刷用インキ組成物。
(4)前記低分子化合物は、式(2)で表される(但し、式(1)に含まれる化合物を除く)化合物である前記(1)または(2)に記載の反転印刷用インキ組成物。
(5)前記低分子化合物は、式(3)で表される(但し、式(1)および式(2)に含まれる化合物を除く)化合物である前記(1)または(2)に記載の反転印刷用インキ組成物。
(6)前記芳香族炭化水素の沸点は、キシレンの沸点より高い前記(1)乃至(5)のうちいずれか1つに記載の反転印刷用インキ組成物。
(7)前記直鎖炭化水素のブランケットに対する接触角は、前記芳香族炭化水素よりも小さい前記(1)乃至(6)のうちいずれか1つに記載の反転印刷用インキ組成物。
(8)前記直鎖炭化水素は、オクタンである前記(1)乃至(7)のうちいずれか1つに記載の反転印刷用インキ組成物。
(9)前記芳香族炭化水素は、キシレンおよびシクロヘキシルベンゼンである前記(1)乃至(8)のうちいずれか1つに記載の反転印刷用インキ組成物。
(10)直鎖炭化水素および芳香族炭化水素を含む溶媒に低分子材料を含有させた反転印刷用インキ組成物をブランケットに塗布して転写層を形成する工程と、前記転写層に所定パターンの凹部を有する反転印刷用版を押し当てて、前記ブランケット上にパターン層を形成する工程と、前記パターン層を被印刷基板に転写する工程と
を含む印刷方法。
(11)基板上に表示素子を形成する工程を含み、前記表示素子を形成する工程は、直鎖炭化水素および芳香族炭化水素を含む溶媒に低分子材料を含有させた反転印刷用インキ組成物をブランケットに塗布して転写層を形成する工程と、前記転写層に所定パターンの凹部を有する反転印刷用版を押し当てて、前記ブランケット上にパターン層を形成する工程と、前記パターン層を被印刷基板に転写する工程とを含む表示装置の製造方法。
【符号の説明】
【0113】
1…表示装置、10R…赤色有機EL素子、10G…緑色有機EL素子、10B…青色有機EL素子、11…基板、12…下部電極、13…下部隔壁、14…有機膜、14A…正孔注入層、14B…正孔輸送層、14CR…赤色発光層、14CG…緑色発光層、14CB…青色発光層、14D…電子輸送層、14E…電子注入層、15…上部電極、16…保護層、17…封止用基板、21…ブランケット、22…反転印刷用インキ組成物、22a…転写層、22b…パターン層、22c…非印刷部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族炭化水素および直鎖炭化水素を含有する溶媒と、
低分子材料と
を含む反転印刷用インキ組成物。
【請求項2】
前記低分子材料の分子量が1万5千以下である
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【請求項3】
前記低分子材料は、式(1)で表される化合物である
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【化1】
(A1〜A3は芳香族炭化水素基、複素環基またはそれらの誘導体である。)
【請求項4】
前記低分子化合物は、式(2)で表される(但し、式(1)に含まれる化合物を除く)化合物である
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【化2】
(Z1は含窒素炭化水素基あるいはその誘導体である。L1は2価の芳香族環基が1乃至4個結合した基、具体的には、2〜4個の芳香族環が連結した2価の基、またはその誘導体である。A4およびA5は、芳香族炭化水素基、またはその誘導体である。但し、A4およびA5は互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項5】
前記低分子化合物は、式(3)で表される(但し、式(1)および式(2)に含まれる化合物を除く)化合物である
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【化3】
(Z2は含窒素炭化水素基あるいはその誘導体である。L2は2価の芳香族環基が2乃至6個結合した基である。具体的には、2〜6個の芳香族環が連結した2価の基、またはその誘導体である。A6〜A9は、芳香族炭化水素基あるいは複素環基、またはその誘導体が1〜10個結合した基である。)
【請求項6】
前記芳香族炭化水素の沸点は、キシレンの沸点より高い
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【請求項7】
前記直鎖炭化水素のブランケットに対する接触角は、前記芳香族炭化水素よりも小さい
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【請求項8】
前記直鎖炭化水素は、オクタンである
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【請求項9】
前記芳香族炭化水素は、キシレンおよびシクロヘキシルベンゼンである
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【請求項10】
直鎖炭化水素および芳香族炭化水素を含む溶媒に低分子材料を含有させた反転印刷用インキ組成物をブランケットに塗布して転写層を形成する工程と、
前記転写層に所定パターンの凹部を有する反転印刷用版を押し当てて、前記ブランケット上にパターン層を形成する工程と、
前記パターン層を被印刷基板に転写する工程と
を含む
印刷方法。
【請求項11】
基板上に表示素子を形成する工程を含み、
前記表示素子を形成する工程は、
直鎖炭化水素および芳香族炭化水素を含む溶媒に低分子材料を含有させた反転印刷用インキ組成物をブランケットに塗布して転写層を形成する工程と、
前記転写層に所定パターンの凹部を有する反転印刷用版を押し当てて、前記ブランケット上にパターン層を形成する工程と、
前記パターン層を被印刷基板に転写する工程とを含む
表示装置の製造方法。
【請求項1】
芳香族炭化水素および直鎖炭化水素を含有する溶媒と、
低分子材料と
を含む反転印刷用インキ組成物。
【請求項2】
前記低分子材料の分子量が1万5千以下である
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【請求項3】
前記低分子材料は、式(1)で表される化合物である
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【化1】
(A1〜A3は芳香族炭化水素基、複素環基またはそれらの誘導体である。)
【請求項4】
前記低分子化合物は、式(2)で表される(但し、式(1)に含まれる化合物を除く)化合物である
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【化2】
(Z1は含窒素炭化水素基あるいはその誘導体である。L1は2価の芳香族環基が1乃至4個結合した基、具体的には、2〜4個の芳香族環が連結した2価の基、またはその誘導体である。A4およびA5は、芳香族炭化水素基、またはその誘導体である。但し、A4およびA5は互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項5】
前記低分子化合物は、式(3)で表される(但し、式(1)および式(2)に含まれる化合物を除く)化合物である
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【化3】
(Z2は含窒素炭化水素基あるいはその誘導体である。L2は2価の芳香族環基が2乃至6個結合した基である。具体的には、2〜6個の芳香族環が連結した2価の基、またはその誘導体である。A6〜A9は、芳香族炭化水素基あるいは複素環基、またはその誘導体が1〜10個結合した基である。)
【請求項6】
前記芳香族炭化水素の沸点は、キシレンの沸点より高い
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【請求項7】
前記直鎖炭化水素のブランケットに対する接触角は、前記芳香族炭化水素よりも小さい
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【請求項8】
前記直鎖炭化水素は、オクタンである
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【請求項9】
前記芳香族炭化水素は、キシレンおよびシクロヘキシルベンゼンである
請求項1に記載の反転印刷用インキ組成物。
【請求項10】
直鎖炭化水素および芳香族炭化水素を含む溶媒に低分子材料を含有させた反転印刷用インキ組成物をブランケットに塗布して転写層を形成する工程と、
前記転写層に所定パターンの凹部を有する反転印刷用版を押し当てて、前記ブランケット上にパターン層を形成する工程と、
前記パターン層を被印刷基板に転写する工程と
を含む
印刷方法。
【請求項11】
基板上に表示素子を形成する工程を含み、
前記表示素子を形成する工程は、
直鎖炭化水素および芳香族炭化水素を含む溶媒に低分子材料を含有させた反転印刷用インキ組成物をブランケットに塗布して転写層を形成する工程と、
前記転写層に所定パターンの凹部を有する反転印刷用版を押し当てて、前記ブランケット上にパターン層を形成する工程と、
前記パターン層を被印刷基板に転写する工程とを含む
表示装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−212726(P2012−212726A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76515(P2011−76515)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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