説明

反転型DC/DCコンバータ

【課題】 電源電圧の外乱などの影響によらずに出力電圧を一定に制御する
ことが可能な反転型DC/DCコンバータを提供する。
【解決手段】 コンバータコントローラ10は、参照電圧が反転入力端子に入力され、正電圧化回路1により正電圧化されたフィードバック電圧が非反転入力端子に入力される誤差増幅器3と、誤差増幅器3の出力が反転入力端子に入力され、のこぎり波の発振信号が非反転入力端子に入力されるパルス幅変調比較器4とを有する。正電圧化回路1はカレントミラー構造の第1のNチャネルMOSトランジスタと、第2のNチャネルMOSトランジスタと、第1のPチャネルMOSトランジスタと、第2のPチャネルMOSトランジスタとからなり、第2のNチャネルトランジスタ(NchTr2)のドレイン電圧は、フィードバック電圧が正電圧化された電圧として誤差増幅器に入力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、CCD、デジタルカメラ等に用いられる負電圧を供給するDC/DCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、反転型DC/DCコンバータの出力電圧は、例えば、−15V等の負電圧である。このDC/DCコンバータの出力電圧を一定に保つために、出力のフィードバック電圧(VFB)をコンバータを構成するコンバータコントローラに入力しこれを制御したいが、VFBも例えば、−1V等の負電圧であるため、コンバータを構成するコンパレータは、その負電圧を受けることが出来ない。そのために、従来例では、図7に示すように、一旦フィードバック電圧(VFB)出力を、電源電圧(VDD)等を使って正電圧化(+VFBに変換)してコンバータコントローラに入力していた。
図7及び図8を参照して、従来の反転型DC/DCコンバータの一例を説明する。図7の反転型DC/DCコンバータは、例えば、12Vの入力電圧VDDを−17Vの出力電圧VNに変換する装置である。図8は、このDC/DCコンバータを構成するコンバータコントローラ100である。
【0003】
この反転型DC/DCコンバータではスイッチング素子106としてPチャネルMOSトランジスタを使用している。NチャネルMOSトランジスタを用いることもできるが、この場合は、MOSゲートの駆動電圧として高い電圧が必要になる。そして、その制御端子(ゲート)に論理ローレベルの信号が供給されたとき、スイッチング素子106はオンする。スイッチング素子106は、電源入力端子側に配置され、インダクタ107が接地端子側に配置されている。即ち、電源入力端子とスイッチング素子106のソースとが接続され、スイッチング素子106のドレインとインダクタ107とが接続されている。スイッチング素子106のドレイン及びインダクタ(L)107は、ショットキーバリアダイオード108のカソードに接続され、ショットキーバリアダイオード108のアノードは、負電圧を出力する出力端子(VN)110に接続されている。
【0004】
出力端子(VN)110と正電圧端子111との間には、第1及び第2の抵抗器(R3、R4)112、113が直列に接続され、フィードバック電圧出力端子116が抵抗112、113間に設けられている。即ち、反転型DC/DCコンバータでは、出力電圧VNとして負電圧を出力するので、第1及び第2の抵抗器(R3、R4)112、113と正電圧端子111とを直列に接続し、第1及び第2の抵抗器112、113の接続点であるフィードバック電圧出力端子116の電位を正電圧にして、正のフィードバック電圧VFBを発生させる。即ち、出力電圧VNを検出して、フィードバック電圧VFBを出力する出力電圧検出手段(分圧器)として動作する。
【0005】
反転型DC/DCコンバータには、過電圧防止回路を有するようにすることができる。過電圧防止回路は、例えば、抵抗器と、増幅器と、基準電圧発生回路と、比較器とから構成されている。過電圧防止回路は、反転型DC/DCコンバータの後段の集積回路(IC)へ過電圧が供給されるのを防止する。
昇圧型DC/DCコンバータが、トランジスタをスイッチング素子として用いこれをスイッチングさせ、入力電圧を一旦パルス電圧に変えて、インダクタやトランスなどのインダクタンス素子によって電圧を昇圧した後、整流して出力電圧に変換するのに対して、反転型DC/DCコンバータは、トランジスタをスイッチング素子として用い、これをスイッチングさせ、入力電圧を一旦パルス電圧に変えて、インダクタやトランスなどのインダクタンス素子によって電圧を反転した後、整流して出力電圧に変換する。
【0006】
この反転型DC/DCコンバータは、コンバータコントローラ100を有する。コンバータコントローラ100は、参照電圧発生回路(図示しない)から生成された参照電圧(例えば、1.2V)が反転入力端子に入力され、出力系から出力されたフィードバック電圧VFBが非反転入力端子に入力される誤差増幅器(エラーアンプ)103と、誤差増幅器103の出力が反転入力端子に入力され、発振器から発振される、例えば、のこぎり波の発振信号が非反転入力端子に入力されるパルス幅変調(PWM)比較器(コンバータコンパレータ)104と、パルス幅変調比較器104の出力を増幅するバッファトランジスタ105とを有する。発振器は、電源入力端子と接地端子との間に接続され、のこぎり波の発振信号に代えて三角波を発振しても良い。
【0007】
誤差増幅器103は、参照電圧と正電圧化されたフィードバック電圧VFBとの電圧差に基づいて、誤差信号を出力する。誤差信号は、PWM比較器104の反転入力端子に供給される。PWM比較器104の非反転入力端子には、発振器からの発振信号が供給される。PWM比較器104は、誤差信号と発振信号とを比較して、パルス幅変調(PWM)信号をスイッチング素子106へ供給し、スイッチング素子106を制御する。
コンバータコントローラ100は、例えば、1チップ化され、シリコン基板に作り込まれている。チップは、スイッチング素子106を駆動し制御する駆動端子101、電源電圧入力端子102、フィードバック電圧入力端子114及び接地端子115を備えている。
【0008】
特許文献1には、DC/DCコンバータの電源投入時に誤動作することなく、確実に出力電圧の過電圧を防止する方法が開示されている。出力電圧として入力電圧を昇圧した電圧を出力する昇圧型もしくは出力電圧として入力電圧を反転した電圧を出力する反転型DC/DCコンバータにおいて、過電圧防止回路は、スイッチング素子に流れる電流を検出して検出電圧を出力する抵抗器と、基準電圧を発生する基準電圧発生回路と、検出電圧と基準電圧とを比較する比較器とを備える。比較器は、検出電圧が基準電圧より高いときに論理ローレベルの比較結果信号を出力する。PWM増幅器の出力端子とスイッチング素子の制御端子との間に挿入されたアンドゲートは、論理ローレベルの比較結果信号に応答してPWM信号を強制的に論理ローレベルにする。ここで用いる反転型DC/DCコンバータは、トランジスタをスイッチング素子として用い、これをスイッチングさせ、入力電圧をいったんパルス電圧に変えて、インダクタやトランスなどのインダクタンス素子によって電圧を反転した後、整流して出力電圧に変換する。
【特許文献1】特開2006−340414号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来回路では、図7に示すように、電源電圧(VDD)が外乱、バッテリー電圧の低下などにより、変動してしまった場合において、電源電圧(VDD)の変動に応じてフィードバック電圧(VFB)も変動してしまうため、正確なフィードバック制御(出力制御)ができなくなってしまう((1)式参照)。
VFB=VDD−(VDD−VN)・R4/(R3+R4)・・・(1)
本発明は、このような事情によりなされたものであり、外乱やバッテリー電圧の低下などの影響を受け易い電源電圧に影響されずに出力電圧を一定に制御することが可能な反転型DC/DCコンバータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の反転型DC/DCコンバータの一態様は、入力電圧をオンオフ制御するスイッチング素子と、前記入力電圧のオンオフ制御に伴って前記入力電圧の極性を反転し負電圧を生成する負電圧生成部と、前記負電圧を分圧する分圧回路と、前記分圧回路の出力をフィードバックして正電圧化する正電圧化回路を有するとともに該正電圧化されたフィードバック電圧により前記スイッチング素子を制御するコンバータコントローラとを具備し、前記フィードバック電圧は、電源電圧の変動に影響されないことを特徴としている。前記正電圧化回路は、前記分圧回路の出力する負電圧を入力して該負電圧に応じた電流に変換すると共に、該電流に応じた電圧を正電圧として出力する電圧極性反転手段を有するようにしても良い。前記正電圧化回路は、前記フィードバック電圧が入力される第1のNチャネルMOSトランジスタと、ソースが接地され、ドレイン及びゲートが前記誤差増幅器の非反転入力端子に接続された第2のNチャネルMOSトランジスタと、ソースが電源に接続され、ドレインがゲート及び前記第1のNチャネルMOSトランジスタのドレインに接続された第1のPチャネルMOSトランジスタと、ソースが前記電源に接続され、ドレインが前記第2のNチャネルMOSトランジスタのドレイン及びゲートに接続され、ゲートが前記第1のPチャネルMOSトランジスタのドレイン及びゲートに接続された第2のPチャネルMOSトランジスタとから構成されているようにしても良い。
【0011】
前記正電圧化回路は、前記フィードバック電圧が入力されるNチャネルMOSトランジスタと、ソースが前記電源に接続され、ドレインがゲート及び前記NチャネルMOSトランジスタのドレインに接続された第1のPチャネルMOSトランジスタと、ソースが前記電源に接続され、ゲートが前記第1のPチャネルMOSトランジスタのドレイン及びゲートに接続された第2のPチャネルMOSトランジスタと、一端が前記第2のPチャネルMOSトランジスタのドレインに接続され、他端が前記誤差増幅器の非反転入力端子に接続された第1の抵抗と、一端が前記第1の抵抗の他端及び前記誤差増幅器の非反転入力端子に接続され、他端が接地された第2の抵抗とから構成されているようにしても良い。
【0012】
前記正電圧化回路を構成する第1のNチャネルMOSトランジスタもしくはNチャネルMOSトランジスタは、P型ウエル領域に形成され、前記フィードバック電圧は前記第1のNチャネルMOSトランジスタもしくはNチャネルMOSトランジスタのソースおよび前記P型フローティングウェル領域に入力されるようにしても良い。前記コンバータコントローラは、参照電圧が反転入力端子に入力され、前記正電圧化回路の出力が非反転入力端子に入力される誤差増幅器と、前記誤差増幅器の出力が反転入力端子に入力され、発振信号が非反転入力端子に入力されるパルス幅変調比較器とを有するようにしても良い。前記コンバータコントローラは、前記パルス幅変調比較器の出力を増幅するバッファトランジスタを更に有するようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上の構成により、電源電圧の外乱やバッテリー電圧の低下などの影響によらずに、出力電圧を一定に制御することが可能な反転型DC/DCコンバータが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、実施例を参照して発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0015】
まず、図1乃至図3、図5を参照して実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係る反転型DC/DCコンバータの概略回路図、図2は、図1の反転型DC/DCコンバータを構成するコンバータコントローラ及びスイッチング素子の概略回路図、図3は、図2のコンバータコントローラが形成された半導体基板の概略断面図、及び図5は、DC/DCコンバータの出力のフィードバック電圧(VFB1で表す)の変化に対する正電圧化回路において正電圧化されたフィードバック電圧(VFB2で表す)の変化の直線性を示す特性図である。図1の反転型DC/DCコンバータは、例えば、12Vの入力電圧VDDを−17Vの出力電圧VNに変換する装置である。
【0016】
この実施例の反転型DC/DCコンバータは、スイッチング素子6としてPチャネルMOSトランジスタを使用している。NチャネルMOSトランジスタを用いることもできるが、この場合は、MOSゲートの駆動電圧として高い電圧が必要になる。PチャネルMOSトランジスタを使用する場合、そのゲートに論理ローレベルの信号が供給されたとき、スイッチング素子6はオンする。スイッチング素子6は、電源入力端子側に配置され、インダクタ7が接地端子側に配置されている。即ち、電源入力端子とスイッチング素子6のソースとが接続され、スイッチング素子6のドレインとインダクタ7とが接続されている。スイッチング素子6のドレイン及びインダクタ7は、ショットキーバリアダイオード8のカソードに接続され、ショットキーバリアダイオード8のアノードは、負電圧を出力する出力端子11に接続されている。また、ショットキーバリアダイオード8と出力端子11との間には一端が接地されたコンデンサ9が設けられている。
【0017】
出力端子11と接地GNDとの間には、第1及び第2の抵抗器(R1、R2)12、13が直列に接続され、フィードバック電圧出力端子17が抵抗12、13間に設けられている。前述のように、通常、反転型DC/DCコンバータでは、出力電圧VNとして負電圧を出力するので、出力端子と正電圧端子間に第1及び第2の抵抗器を直列に接続し、第1及び第2の抵抗器の接続点であるフィードバック電圧出力端子17の電位を正電圧にして、正のフィードバック電圧VFBを発生させるが、この実施例では、このフィードバック電圧出力端子17からは、負電圧がそのまま出力するように構成されている。即ち、第1及び第2の抵抗12、13は、出力電圧VNを検出して、フィードバック電圧VFBを出力する出力電圧検出手段(分圧器)として動作する。このように、本発明の反転型DC/DCコンバータでは、第1及び第2の抵抗器R1、R2の接続点であるフィードバック電圧出力端子17から負電圧をそのまま出力し、負電圧は、コンバータコントローラ10を構成する正電圧化回路1にて正電圧化される。
【0018】
反転型DC/DCコンバータには、過電圧防止回路を有するようにすることができる。過電圧防止回路は、例えば、抵抗器と、増幅器と、基準電圧発生回路と比較器とから構成されている。過電圧防止回路は、反転型DC/DCコンバータの後段の集積回路(IC)へ過電圧が供給されるのを防止する。
この実施例の反転型DC/DCコンバータは、前述のように、コンバータコントローラ10を有する。コンバータコントローラ10は、参照電圧発生回路(図示しない)から生成された参照電圧Vref (例えば、1.2V)が反転入力端子に入力され、フィードバック電圧VFBを正電圧化回路1で正電圧化した出力が非反転入力端子に入力される誤差増幅器(エラーAMP)3と、誤差増幅器3の出力が反転入力端子に入力され、発振器から発振した、例えば、のこぎり波の発振信号が非反転入力端子に入力されるパルス幅変調(PWM)比較器(コンバータコンパレータ)4と、パルス幅変調比較器4の出力を増幅するバッファトランジスタ5とを有する。発振器は、電源(VDD)入力端子と接地端子との間に接続される。のこぎり波の発振信号に代えて三角波を発振しても良い。
【0019】
誤差増幅器3は、参照電圧Vref と正電圧化されたフィードバック電圧VFBとの電圧差に基づいて、誤差信号を出力する。誤差信号は、PWM比較器4の反転入力端子に供給される。PWM比較器4の非反転入力端子には、発振器から生成された、例えば、のこぎり波形状の発振信号が供給される。PWM比較器4は、誤差信号と発振信号とを比較して、パルス幅変調(PWM)信号をスイッチング素子6へ供給し、スイッチング素子6を制御する。PWM比較器4のPWM出力は、スイッチング素子6のオン状態のパルス幅が広くなると、反転型DC/DCコンバータの負電圧出力が高くなる。このようにパルス幅によってコンバータの出力を調整する。
コンバータコントローラ10は、例えば、1チップ化され、シリコン基板に作り込まれている。チップには、スイッチング素子6を駆動し制御する駆動端子16、電源電圧(VDD)入力端子2、フィードバック電圧入力端子14及び接地(GND)端子15を備えている。
【0020】
コンバータコントローラ10を構成する正電圧化回路1は、ゲートが接地(GND)され、ソースにフィードバック電圧(VFB)が入力される第1のNチャネルMOSトランジスタ(NchTr1)と、ソースが接地(GND)され、ドレイン及びゲートが誤差増幅器3の非反転入力端子に接続された第2のNチャネルMOSトランジスタ(NchTr2)と、ソースが電源(VDD)に接続され、ドレインがゲート及び第1のNチャネルMOSトランジスタのドレインに接続された第1のPチャネルMOSトランジスタ(PchTr1)と、ソースが電源(VDD)に接続され、ドレインが第2のNチャネルMOSトランジスタ(NchTr2)のドレインに接続され、ゲートが第1のPチャネルMOSトランジスタ(PchTr1)のドレイン及びゲートに接続された第2のPチャネルMOSトランジスタ(PchTr2)とから構成されている。即ち、この正電圧化回路1は、カレントミラー構造であり、一方の電流路に対応した電流が他方の電流路に流れる。
【0021】
この実施例において、負電圧であるフィードバック電圧(VFB1)の変化に対する正電圧化されたフィードバック電圧(VFB2)の変化の直線性は、図5に示すように、ほぼ保たれる。また、フィードバック電圧は、コンパレータ出力VNをGNDとの間で抵抗分圧してこれをフィードバックして得られる。従って、フィードバック電圧VFBは、(2)式で表される(図1参照)。その結果、反転DC/DCコンバータの電圧の出力の制御が正確になる。
VFB=VN・R2/(R1+R2) ・・・(2)
このように直線性が保たれるためには、次のような条件が必要である。即ち、NchTr1のゲートとNchTr2のソースは共に同電位(接地電位Vss )に接続されていること、トランジスタサイズの比が、Nch1/Pch1=Nch2/Pch2が保たれていることである。
【0022】
また、NchTr1は、ゲートが接地(GND)されているため、NchTr1のソースに負電圧のフィードバック電圧が入力されると、NchTr1のソース電位(VFB)に応じた電流がNchTr1のドレインソース間に流れる。NchTr1のドレインソース間電流は、PchTr1のソースドレイン間にも流れる。そして、PchTr1とPchTr2はゲートが共通接続された電流ミラー回路を構成しているので、PchTr1に流れる電流(I1)と同じ電流(I2)がPchTr2に流れる。そして、NchTr2は、ダイオード接続されたトランジスタなので、NchTr2を経由して流れる電流値に応じた電圧がそのドレインに発生する。その結果、NchTr2のドレイン電圧は、フィードバック電圧が正電圧化された電圧(+VFB)になる。そして、フィードバック電圧(VFB)が負側に大きくなる(例えば、−1V→−3V)ように変動すると正電圧化されたフィードバック電圧(+VFB)は正側に大きくなるように変動する(例えば、+1V→+3V)。
【0023】
図5に、この実施例におけるVFB1の変化に対するVFB2の変化の特性線(実線)をBで表す。この実施例では、Bの特性線の直線性はほぼ保たれるが、VFB1とVFB2とが1対1に対応しているわけではない。
VFB1とVFB2とを1対1に対応させるには次のような補正方法がある。即ち、正電圧化回路の出力電圧と接地間を抵抗分圧して誤差増幅器3の非反転入力端子に入力する、誤差増幅器の反転入力端子に入力する参照電圧を調整する、分圧器として用いられる第1及び第2の抵抗の比(R1/R2)を調整するなどの方法がある。これらの方法により、VFB1=VFB2の特性線(点線)Aが得られる。
この実施例によれば、電源電圧の外乱やバッテリー電圧の低下などの影響によらずに出力電圧を一定に制御することが可能な反転型DC/DCコンバータが得られる。
【0024】
次に、図3を参照して正電圧化回路のトランジスタの配置を説明する。
図3は、図2に示すコンバータコントローラ10を構成する正電圧化回路1の第1のNチャネルMOSトランジスタ(NchTr1)が形成されたP型シリコン半導体基板の断面図である。この実施例では、第1のNチャネルMOSトランジスタ(NchTr1)は、基板領域(P型)とは分離されたPウエル領域(P−well)に形成される。
P型半導体基板を接地した場合、このトランジスタのゲートも接地されているので、第2のNチャネルMOSトランジスタ(NchTr2)とは電気的に分離する必要がある。したがって、第1のNチャネルMOSトランジスタ(NchTr1)は、基板領域(P型)とは分離されていなければならない。
【0025】
半導体基板10は、P型基板領域を有し、P型基板領域にディープNウエル(Deep N−well)18が形成される。このディープNウエル18にP型基板領域とは分離されたP型ウエル領域(以下、Pウエル(P−well)という)19が形成される。Pウエル19にはN型ソース(S)23及びドレイン(D)24とコンタクト領域であるP型高濃度フローティングウェル領域25が形成され、ソース/ドレイン間の半導体基板20上にゲート絶縁膜26を介してゲート(G)22が設けられ、図2に示す第1のNチャネルMOSトランジスタ(NchTr1)が形成される。ドレイン(D)24は、VDD側に接続され、ゲート(G)22は、接地(GND)され、ソース(S)23およびP型高濃度フローティングウェル領域25には、フィードバック電圧(VFB)が入力される。NchTr2は、NchTr1のPウエル19とは分離したPウエルに形成しても良いし、基板領域(P型領域)に形成しても良い。
この実施例では半導体基板としてP型基板を使用したが、N型基板を用いることもできる。
【実施例2】
【0026】
次に、図4及び図6を参照して実施例2を説明する。
図4は、反転型DC/DCコンバータを構成するコンバータコントローラ及びスイッチング素子の概略回路図であり、図6は、フィードバック電圧(VFB1で表す)の変化に対する正電圧化されたフィードバック電圧(VFB2で表す)の変化の直線性を示す特性図である。
この実施例では、コンバータコントローラを構成する正電圧化回路の構成が、実施例1のものと相違した正電圧化回路21を用いることに特徴がある。即ち、実施例1の第2のNチャネルMOSトランジスタの代わりに、抵抗を利用して正電圧化されたフィードバック電圧を生成するところが特徴である。
【0027】
正電圧化回路21は、ゲート電圧を一定とし、ソースにフィードバック電圧が入力されるNチャネルMOSトランジスタ(NchTr)と、ソースが電源(VDD)に接続され、ドレインがゲート及びNチャネルMOSトランジスタ(NchTr)のドレインに接続された第1のPチャネルMOSトランジスタ(PchTr1)と、ソースが電源(VDD)に接続され、ゲートが第1のPチャネルMOSトランジスタ(PchTr1)のドレイン及びゲートに接続された第2のPチャネルMOSトランジスタ(PchTr2)と、一端が第2のPチャネルMOSトランジスタ(PchTr2)のドレインに接続され、他端が誤差増幅器3の非反転入力端子に接続された第1の抵抗(R3)と、一端が第1の抵抗(R3)の他端及び誤差増幅器3の非反転入力端子に接続され、他端が接地された第2の抵抗(R4)とから構成されている。
【0028】
図6に、この実施例におけるVFB1の変化に対するVFB2の変化の特性線(実線)をCで表す。この実施例では、Cの特性線の直線性はほぼ保たれるが、VFB1とVFB2とが1対1に対応しているわけではない。
さらに直線性を良くするためには、第1の抵抗(R3)と第2の抵抗(R4)との抵抗比を調整することにより、VFB1=VFB2の特性線(点線)Aが得られる。
【0029】
NchTrのソースに負電圧のフィードバック電圧が入力されると、NchTrのソース電位(VFB)に応じた電流がNchTrのドレインソース間に流れる。NchTrのドレインソース間電流は、PchTr1のソースドレイン間にも流れる。そして、PchTr1とPchTr2はゲートが共通接続された電流ミラー回路を構成しているので、PchTr1に流れる電流(I1)と同じ電流(I2)がPchTr2に流れる。そして、第1及び第2の抵抗にはPchTr2を経由して流れる電流値に応じた電圧が生ずる。その結果、PchTr2のドレイン電圧を第1及び第2の抵抗で抵抗分圧した電圧が、フィードバック電圧を正電圧化した電圧になる。そして、フィードバック電圧が負側に大きくなるように変動させると正電圧化されたフィードバック電圧は正側に大きくなるように変動する。
この実施例によれば、電源電圧の外乱やバッテリー電圧の低下などの影響によらずに出力電圧を一定に制御することが可能な反転型DC/DCコンバータが得られる。
各実施例で説明した反転型DC/DCコントローラは、誤差増幅器あるいはパッファトランジスタを省略することが出来る。誤差増幅器を省略する場合は、正電圧化されたフィードバック電圧は、コンパレータの反転入力端子に入力される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1に係る反転型DC/DCコンバータの概略回路図。
【図2】図1の反転型DC/DCコンバータを構成するコンバータコントローラ及びスイッチング素子の概略回路図。
【図3】図2のコンバータコントローラが形成された半導体基板の概略断面図。
【図4】実施例2に係る反転型DC/DCコンバータを構成するコンバータコントローラ及びスイッチング素子の概略回路図。
【図5】実施例1に係るフィードバック電圧の変化に対する正電圧化されたフィードバック電圧の変化の直線性を示す特性図。
【図6】実施例2に係るフィードバック電圧の変化に対する正電圧化されたフィードバック電圧の変化の直線性を示す特性図。
【図7】従来の反転型DC/DCコンバータの概略回路図。
【図8】図7の反転型DC/DCコンバータを構成するコンバータコントローラ及びスイッチング素子(パワーTr)の概略回路図。
【符号の説明】
【0031】
1、21・・・正電圧化回路
2・・・電源電圧入力端子
3・・・誤差増幅器
4・・・コンパレータ
5・・・バッファトランジスタ
6・・・スイッチング素子
7・・・インダクタ
8・・・ショットキーバリアダイオード
9・・・コンデンサ
10、100・・・コンバータコントローラ
11・・・出力端子
12、13・・・抵抗
14・・・フィードバック電圧入力端子
15・・・接地端子
16・・・駆動端子
17・・・フィードバック電圧出力端子
18・・・ディ−プNウエル
19・・・P型フロ−ティングウエル領域
20・・・半導体基板
22・・・ゲート
23・・・ソース
24・・・ドレイン
25・・・P型高濃度フロ−ティングウエル領域
26・・・ゲート絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧をオンオフ制御するスイッチング素子と、前記入力電圧のオンオフ制御に伴って前記入力電圧の極性を反転し負電圧を生成する負電圧生成部と、前記負電圧を分圧する分圧回路と、前記分圧回路の出力をフィードバックして正電圧化する正電圧化回路を有するとともに該正電圧化されたフィードバック電圧により前記スイッチング素子を制御するコンバータコントローラとを具備し、前記フィードバック電圧は、電源電圧の変動に影響されないことを特徴とする反転型DC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記正電圧化回路は、前記分圧回路の出力する負電圧を入力して該負電圧に応じた電流に変換すると共に、該電流に応じた電圧を正電圧として出力する電圧極性反転手段を有することを特徴とする請求項1に記載の反転型DC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記正電圧化回路は、前記フィードバック電圧が入力される第1のNチャネルMOSトランジスタと、ソースが接地され、ドレイン及びゲートが前記誤差増幅器の非反転入力端子に接続された第2のNチャネルMOSトランジスタと、ソースが電源に接続され、ドレインがゲート及び前記第1のNチャネルMOSトランジスタのドレインに接続された第1のPチャネルMOSトランジスタと、ソースが前記電源に接続され、ドレインが前記第2のNチャネルMOSトランジスタのドレイン及びゲートに接続され、ゲートが前記第1のPチャネルMOSトランジスタのドレイン及びゲートに接続された第2のPチャネルMOSトランジスタとから構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の反転型DC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記正電圧化回路は、前記フィードバック電圧が入力されるNチャネルMOSトランジスタと、ソースが前記電源に接続され、ドレインがゲート及び前記NチャネルMOSトランジスタのドレインに接続された第1のPチャネルMOSトランジスタと、ソースが前記電源に接続され、ゲートが前記第1のPチャネルMOSトランジスタのドレイン及びゲートに接続された第2のPチャネルMOSトランジスタと、一端が前記第2のPチャネルMOSトランジスタのドレインに接続され、他端が前記誤差増幅器の非反転入力端子に接続された第1の抵抗と、一端が前記第1の抵抗の他端及び前記誤差増幅器の非反転入力端子に接続され、他端が接地された第2の抵抗とから構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の反転型DC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記正電圧化回路を構成する第1のNチャネルMOSトランジスタもしくはNチャネルMOSトランジスタは、P型フロ−ティングウエル領域に形成され、前記フィードバック電圧は前記第1のNチャネルMOSトランジスタもしくはNチャネルMOSトランジスタのソースおよび前記P型フロ−ティングウエル領域表面に入力されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の反転型DC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記コンバータコントローラは、参照電圧が反転入力端子に入力され、前記正電圧化回路の出力が非反転入力端子に入力される誤差増幅器と、前記誤差増幅器の出力が反転入力端子に入力され、発振信号が非反転入力端子に入力されるパルス幅変調比較器とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の反転型DC/DCコンバータ。
【請求項7】
前記コンバータコントローラは、前記パルス幅変調比較器の出力を増幅するバッファトランジスタを更に有することを特徴とする請求項6に記載の反転型DC/DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−303313(P2009−303313A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152483(P2008−152483)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【Fターム(参考)】