説明

収束性生体誘導電場を用いたインピーダンス測定による病理評価

収束性生体誘導電場(convergent bioelectric lead field)を用いて、生物中で病理評価のためにインピーダンスを測定する方法および装置を開示する。それらの方法および装置は、生物の体内に埋込まれた第1と第2の電極間に電流を注入する工程を含み、第1および第2の電極は、第1と第2の電極間に配向される第1の誘導電場を定める。第1と第2の電極間に注入された電流に起因する電位差を、体内に埋込まれた第3と第4の電極間で測定する。第3および第4の電極は、第3と第4の電極間に配向される第2の誘導電場を定める。第1および第2の誘導電場は、体内の評価部位の近くで収束するが、そうでなければ実質的に分離されている。インピーダンス値を電位差および電流注入に基づいて計算し、そのインピーダンス値を用いて評価部位の近くの病理を評価する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、生物中のインピーダンスの監視、および生物の医学的病理を検出し評価するためのインピーダンス測定値の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
心筋虚血は、心筋への、即ち交互に収縮して心臓の心室腔に血液を送り出させ、次に弛緩して心腔に血液を受け取らせる心臓の筋肉への不十分な血液供給により生じる重篤な病状である。虚血は、異常に低い心筋血液潅流;即ち心筋組織への異常に低い血流によって特徴付けられる。虚血事象は、冠動脈中のプラーク破裂が引き金となって起こり得、動脈を閉塞させて心筋組織へ酸素を含む血液が到達するのを妨げる凝血塊を生じる可能性がある事象である。これが生じるとき、患者は胸痛を経験するであろうが、この感覚を変調だと軽視するか、または該痛みを、例えば関節炎などの別の疾病と関係していると考える可能性がある。他の場合には、患者が全く疼痛を感じない可能性もある。虚血事象の数秒以内に、心筋組織が閉塞による血流不足に起因して酸素欠乏となるために、心筋収縮性が損なわれ得る。妨害物を除去しない場合には、事象から15〜20分以内に心臓損傷が生じる可能性があり、そして心筋の酸素欠乏状態が長ければ長いほど、不可逆的筋損傷の危険がより大きくなり、それは数時間の後に生じる可能性がある。したがって虚血事象の迅速な検出が望ましく、そうすれば、閉塞物を取り除き、心筋組織に自由な血流を戻すことを目指した様々な血栓溶解治療または血管形成治療などの時宜を得た治療介入が可能となろう。
【0003】
虚血を検出する公知の方法の一つは、患者の冠動脈の電気的活動の心電図(ECG)を得て、ECGのS-T部分の変異を分析することである。S-T部分は、ECG信号のS波とT波の間の部分であり、虚血事象に続いて変異を示すことが知られている。S-T部分の偏差が検出されれば、それは虚血を示している可能性がある。ECGを、当業者に公知の方式で、患者の皮膚上の様々な位置に外部的に置かれた12のリード線を用いて冠動脈の電気的活動を検知することにより、得ることができる。ECGを得る別の方法は、患者の胸部に埋め込まれたペースメーカーまたは細動除去器などの埋込医療機器に接続された電極を用いて、心臓の電気的活動を感知する。次に、このECGのS-T部分を上述した方法で偏差について分析することができる。
【0004】
同様に、肺浮腫もまた重篤な病状である。肺浮腫は、患者の肺内の体液の過剰蓄積によって特徴付けられ、心不全などの心臓関連疾病の指標になりえる。肺を横切る電気的インピーダンス測定を行なうことにより、肺中の体液を検出することができる。肺の中に存在する体液が多いほど、インピーダンスが低い。そのような電気的インピーダンス測定を行なう公知の方法の一つは、ペースメーカーまたは細動除去器などの埋込医療機器を用いることである。電気的インピーダンス測定を、通常は埋込医療機器へのリード線によって接続された右心室腔電極と、埋込医療機器自体に置かれたもう一つの電極との間で行う。このように、インピーダンス測定は、肺を含む胸部組織をサンプリングする。Andres BelalcazarおよびRobert Patterson(本発明者ら)ならびにRebecca Shultによる、2002年11月25日出願の米国特許出願第10/303,305号(特許文献1)は、埋込型医療機器を用いて、心臓の左心室壁を覆う心外膜に置かれ、埋込型医療機器に接続された電極と、埋込型医療機器自体に置かれた別の電極との間の電気的インピーダンス測定を行なう、肺インピーダンス測定の別の方式を記述している。埋込電極に刺激電流を流し、生じる電圧を他の埋込電極を用いて測定し、次に電圧対電流比を計算することにより、インピーダンスを測定する。皮膚に装着した外部電極のみを用いて電気的インピーダンス測定を行なうことにより、肺中の体液の変化を検出することもまた可能である。
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第10/303,305号
【発明の開示】
【0006】
一般に、本発明は、一つまたは複数の胸部内の器官または組織を横切る電気的インピーダンスを測定することにより、生物内の内科病理を検出し評価するための改良された技術を提供する。
【0007】
一般的局面の一つでは、本発明は、生物中の病理評価のためにインピーダンスを測定する方法を特色とする。該方法は、生物の体内に埋込まれた第1と第2の電極間に電流を注入する工程を含み、第1と第2の電極が体内の第1の誘導電場(electric lead field)を定め、第1の誘導電場は第1と第2の電極間に配向されている。該方法は、体内に埋込まれた第3と第4の電極間の電位差を測定する工程をさらに含み、電位差は、第1と第2の電極間に注入された電流の結果である。第3と第4の電極が体内の第2の誘導電場を定め、第2の誘導電場は3番目と4番目の電極間に配向されている。第1と第2の誘導電場は体内の評価部位の近くで収束するが、それ以外の場所では実質的に分離されている。該方法は、電位差と電流注入に基づき、インピーダンス値を計算する工程、およびインピーダンス値を用いて評価部位の近くの病理を評価する工程をさらに含む。
【0008】
別の一般的局面では、本発明は、生物中で病理評価のためにインピーダンス位相角を測定する方法を特色とする。該方法は、生物の体内に埋込まれた第1と第2の電極間に電流を注入する工程を含み、第1と第2の電極が体内に第1の誘導電場を定め、第1の誘導電場は第1と第2の電極間に配向されている。該方法は、体内に埋込まれた第3と第4の電極間の電位差を測定する工程をさらに含み、電位差は第1と第2の電極間に注入された電流の結果生ずる。第3と第4の電極は、体内の第2の誘導電場を定め、第2の誘導電場は、第3と第4の電極間に配向されている。第1と第2の誘導電場は体内の評価部位の近くで収束するが、それ以外の場所では実質的に分離されている。該方法は、電位差と電流注入に基づき、インピーダンス位相角の値を計算する工程、およびインピーダンス位相角の値を用いて評価部位の近くの病理を評価する工程をさらに含む。
【0009】
別の局面では、本発明は、生物中での病理評価のためにインピーダンスを測定するための埋込型医療機器を特色とする。埋込型医療機器は、生物の体内に埋込まれた第1と第2の電極間に電流を注入するためのパルス発生器を含み、第1と第2の電極が体内の第1の誘導電場を定め、第1の誘導電場は第1と第2の電極間に配向されている。埋込型医療機器はまた、体内に埋込まれた第3と第4の電極間の電位差を測定するための電圧測定回路を含み、電位差は、第1と第2の電極間に注入された電流に起因する。第3と第4の電極は、体内の第2の誘導電場を定め、第2の誘導電場は、第3と第4の電極間に配向されている。第1と第2の誘導電場は体内の評価部位の近くで収束するが、それ以外の場所では実質的に分離されている。埋込型医療機器にはさらに、電位差と電流注入に基づいてインピーダンス値を計算し、インピーダンス値を用いて評価部位の近くの病理を評価するための演算ユニットが含まれる。
【0010】
方法と装置の実施は、下記の一つまたは複数を含んでもよい。評価部位は心腔内でなくてもよい。評価部位は、左肺または心臓の左心室壁でもよく、および病理は、肺浮腫、心筋虚血または左心室肥大でもよい。第2と第4の電極は約15ミリメートル、または約25ミリメートル離されうる。第1と第3の電極は、少なくとも約4センチメートル、または少なくとも約10センチメートル離されうる。第2と第4の電極は心臓の左心室の近くに位置してよい。第1の電極は、胸部内または心臓の右心室中に位置してよく、および第3の電極は、心臓の右心房中、腕頭静脈の近くまたは上大静脈中に位置してよい。警報を病理評価に応じて発生させ、かつ後で参照するためにインピーダンス値を記憶してもよい。インピーダンス値は閾値と比較してもよく、または監視ステーションへ送信してもよい。演算ユニットが病理評価に応じて警報を発生させ、かつトランシーバーが監視ステーションへインピーダンス値を送信してもよい。
【0011】
別の局面では、第2の電流を第1と第2の電極間に注入し、第2の電位差を第3と第4の電極間で測定し、第2のインピーダンス値を第2の電位差および第2の電流注入に基づいて計算して、第1と第2のインピーダンス値を用いて評価部位近くの病理を評価してもよい。第1と第2の電流は異なる周波数の交流でよく、また第2の電位差は、第1と第2の電極間に注入された第2の電流によって生じる。第1の電流は、約1キロヘルツの周波数を有し、また第2の電流は、約500キロヘルツの周波数を有する。病理を、第1と第2のインピーダンス値に基づいて分類し、2つまたはそれ以上の病理の影響を、第1と第2のインピーダンス値に基づいて識別することもできる。電流は、2つまたはそれ以上の周波数を含む混成信号であってもよく、一つの電位信号である電位差から2つまたはそれ以上の周波数に対応する周波数成分を抽出してもよい。同様に、インピーダンス位相角の値を第2の電位差および第2の電流注入に基づいて計算し、第1と第2のインピーダンス位相角の値を用いて評価部位の近くの病理を評価するかまたは分類してもよく、あるいは2つまたはそれ以上の病理の影響を識別してもよい。
【0012】
本発明の長所には、下記の一つまたは複数が含まれ得る。本発明の局面を用いると、感度が主として関心対象領域の近くで収束するので、より高いレベルのインピーダンス感度および特異性が可能である。さらに、関心対象外の領域では感度が低下する。測定されたインピーダンス変化は、関心対象領域の外部の器官、組織または体液の固有抵抗の変化ではなく、関心対象領域内の器官、組織または体液の固有抵抗の変化による可能性が高いので、関心対象領域の近くでのこの感度の収束は、関心対象外の領域に対する低下した感度と組合わされて、関心対象領域の近くの病理のよりよい評価および検出を可能にする。このように、病理のより正確な早期発見および評価が可能となり、また関心対象外の領域の固有抵抗変化に起因する、測定インピーダンス変化が引き起こす偽警報を回避することもできる。
【0013】
本発明の一つまたは複数の態様の詳細を、添付の図面および下の記述の中で述べる。本発明の他の特徴、対象、および長所が、その記述および図面から、ならびに特許請求の範囲から、明らかになると考えられる。
【0014】
発明の詳細な説明
図1は、心臓12および患者の胸部に埋込むことができる埋込型医療機器(IMD) 14を含むシステム10を示す。IMD 14は、電流を生成するためのパルス発生器および電位差(即ち電圧)を感知するための電圧感知回路を含む。IMD 14は、ペースメーカー、細動除去器、それらの組合せ、または胸部組織に電流刺激を送達し電圧を測定することができる任意の他の型の埋込型医療機器でよい。IMD 14は、装置14の外表面上に、「缶」電極として従来から公知の電極を含んでもよい。この説明例のシステム10には、3つの追加の電極16、18、20が示されており、これらはIMD 14に接続するリード線(示さず)に接続される。電極16、18、20を、リード線中を通る導体を介して電気的にIMD 14に接続することができ、それは4つの電極、16、18、20または缶電極のうちの、任意の2つの電極間へのパルス発生器からの電流注入を容易にする。同様に、電圧感知回路は、4つの電極、16、18、20または缶電極のうちの、任意の2つの電極間の電圧を感知することができる。次にIMD 14の中のインピーダンス計算モジュールは、オームの法則に従って、測定電圧の注入電流に対する比を取ることによりインピーダンスを計算することができる。4つの電極がそのようなインピーダンス測定中で利用されるので、システム10で示される電極構成を4極配置と呼ぶ。図1に示した4極配置では、電極16および18は心臓12の左心室上に位置し、一方電極20は心臓12の右心房中に位置する。左心室リード線(図1に示さず)上でとる近位と遠位の位置の故に、電極16を近位左心室電極と呼び、電極18を遠位左心室電極と呼ぶ。
【0015】
人体には、多くの胸部器官、組織および体液が含まれるので、胸部インピーダンス測定には、様々な器官、組織および体液のそれぞれからの寄与が含まれる。例えば、心筋、肺、胸筋、胸筋の脂肪、肝臓、腎臓、脾臓、胃、骨格筋、骨、軟骨、血液、ならびに他の組織および体液の固有抵抗が、それぞれ胸部インピーダンスの測定に寄与する。このように、測定される胸部インピーダンスの変化は、これらのおよび他の器官または組織の固有抵抗の変化によって引き起こされ得る。
【0016】
肺浮腫または心筋虚血などの病理を検出しまたは評価するためにインピーダンスを測定する場合には、肺または心筋領域などの関心対象領域それぞれに高度に敏感な電極構成を用いて、インピーダンスを測定することが望ましい。関心対象領域への高い感度は、関心対象の器官または組織の固有抵抗の変化が、対応した大きな影響を測定インピーダンスに及ぼすことになるので、関心対象の器官または組織の固有抵抗変化の高感度の検出を可能にする。したがって、インピーダンス変化が、病理状態の存在を示すことができる。さらに、そのような構成が、関心対象領域中にないすべての器官、組織および体液に比較的低い感度を与えて、これらの器官、組織および体液の固有抵抗変化が対応した小さな影響を測定インピーダンスに及ぼすこともまた望ましい。
【0017】
図1を再び参照して、システムは2つの生体誘導電場22および24を示す。第1の生体誘導電場22は、缶電極から始まり、遠位左心室電極18で終わる。第2の生体誘導電場24(図1に破線で表わす)は右心房電極20から始まり、近位左心室電極16で終わる。図1に見られるように、第1の生体誘導電場22は、遠位左心室電極18および缶電極の近くで、これらの領域の生体電界線(bioelectric field line)のより接近した間隔によって示されるように、最も強い。同様に、第2の生体誘導電場24は、近位左心室電極16および右心房電極20の近くで最も強い。
【0018】
第1および第2の生体誘導電場22および24を、収束性生体誘導電場(convergent bioelectric lead field)と呼ぶが、なぜなら、それらが互いに比較的遠く離れた位置(ここでは、それぞれ左胸部領域および右心房)から出発するが、互いのすぐ近く(ここでは、左心室の近く)で終わるからである。このように、収束性生体誘導電界線(bioelectric lead field line)は、関心対象領域でのみ高密度で合併する。感度がこの関心対象領域、即ちこの例においては外側左心室およびその近くの左肺領域に収束される。合併された生体電界線の、関心対象のインピーダンス測定領域の近くでのこの高密度、および他の領域における高濃度の合併された誘導場(lead field)の欠失が、関心対象領域の固有抵抗変化に高度に敏感で特異的なインピーダンス測定を、以下により完全に述べるように、容易にする。これは従来の2極および3極電極配置、ならびに従来の4極電極配置などのインピーダンス測定配置と対照的である。それらの場合、対応する生体誘導電場が2つの領域で密に合併し、その結果、関心対象領域に対するインピーダンス感度だけでなく関心対象外の領域(他方の密に合併された場の領域に対応する)に対するインピーダンス感度も高くなる。
【0019】
第1の生体誘導電場22(それは、例えば刺激電極に関連する)を、缶電極と遠位左心室電極18の間への単一電流注入に起因する電流密度ベクトル場として定義できる。第2の生体誘導電場24(それは、例えば電圧測定電極に関連している)を、同様に右心房電極20と近位左心室電極16の間の単一電流注入に起因する電流密度ベクトル場として定義してもよい。生体誘導電場理論の概説については、J. Malmivuo & R. Plonsey, Bioelectromagnetism:Principles and Applications of Bioelectric Fields (1995) (http://butler.cc.tut.fi/〜malmivuo/bem/bembook/で利用可能)のそれぞれ202および405ページより始まる11.6.2節および25.2.1節を参照のこと。
【0020】
図1に示された図示的電極配置は、例えば、缶電極と遠位左心室電極18の間への電流を注入するパルス発生器、右心房電極20と近位左心室電極16の間に生じる電圧を測定する電圧感知回路、および注入した電流に対する測定された電圧の比をとることによって、インピーダンスを計算するインピーダンス計算モジュールを有する、インピーダンス測定構成として動作してもよい。図1に示された収束性生体誘導電場システムは、主として関心対象領域の近くへ感度を収束させるので、関心対象外の領域の固有抵抗変化に起因する測定インピーダンス変化が引き起こす偽警報を回避することができる。
【0021】
図2は、肺の固有抵抗の変化に高度に敏感で肺浮腫の検出および評価に用いることができる、収束性生体電場電極配置を示す。肺浮腫は、インピーダンス測定を行い、インピーダンス変化に注目することにより、検出し評価することができる。そのようなインピーダンス変化は、肺内の体液の存在の増加(すなわち肺浮腫またはその発病)を示し、早期発見による時宜を得た治療介入を可能にする。図2を再び参照して、身体30の左胸部に埋込まれたIMD 14を有する身体30が示されている。リード線32および34が、IMD 14のポートに接続され、そこから伸びている。リード線32および34はそれぞれ、IMD 14を身体30の心臓12内に埋込まれた電極20、16、18に電気的に接続する一つまたは複数の導体を収容する。
【0022】
この図示的構成では、リード線32は、右心房リード線であり、末端の近くに心臓12の右心房36中に位置する右心房電極20を有する。右心房リード線32は、IMD 14上のポートから伸びて静脈系に導入され、上大静脈(SVC) 38を下降して右心房36中へ達する。右心房電極20は、リング電極またはチップ電極のいずれかでよいし、あるいはリード線32に沿って、SVC 38または無名静脈中の任意の場所などのどこか他の所に置かれてもよい。リード線34は、左心室リード線で、それぞれ心臓12の左心室40を覆う心外膜に位置する近位左心室電極16および遠位左心室電極18を含む。左心室リード線34は、IMD 14の上のポートから伸びて静脈系に入り、SVC 38を下降して、右心房36中へ、冠状静脈洞中へ、およびさらに左心室40を覆う心外膜へと伸びる冠状静脈中へ導入される。左心室電極16および18は、リング電極またはチップ電極のいずれかでよく、またはリード線34に沿ってどこか他の所に置かれてもよい。左心室リード線34は、図2に2極リード線として示されているが、リード線34は、任意で追加の電極を含んでもよく、またリード線34は、心臓12を通る異なる経路を辿ってもよい。例えば、左心室リード線34は、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の電極を含んでもよく、およびそれらが同一線上に並んでいてもよい。同様に、右心房リード線32は、追加の電極を含んでいてもよく、また心臓12を通り、図2に示される経路と異なる経路を辿ってもよい。一つの態様では、左心室電極16と18は、約15mm離れており、また缶電極と右心房電極20の間の距離は、約10cmである。他の態様では、缶電極と右心房電極20の間の距離は、約8〜15cmであり得る。同様に、他の態様では、左心室の電極間の間隔は、約25mmであってよく、約5mm〜約30mmの範囲であってもよい。
【0023】
IMD 14は、装置14の外表面上に缶電極を有する。IMD 14は、代わりにあるいは追加してボタン電極またはヘッダー電極、あるいは他の型の電極を含んでもよい。図2に示した4極配置では、IMD 14内のパルス発生器は、IMD 14の外表面に置かれた缶電極と遠位左心室電極18の間に電流を注入する。注入された電流は、肺44の少なくとも一部分を通って流れ、右心房電極20および近位左心室電極16によって測定することができる電位差(電圧)を引き起こす。次にIMD 14内のインピーダンス計算モジュールが、注入電流に対する測定電圧の比を計算して、インピーダンスを計算する。後により詳細に述べるように、このインピーダンスを身体30内の肺浮腫を評価するために用いることができる。矢印42、46は、この配置での2つの生体誘導電場の概略の方向を示す。誘導場42は電流注入に対応し、誘導場46は電圧測定に対応する。図2に見られるように、誘導場42、46は左心室壁および左肺の近くで収束するが、他の場所では実質的に分離されている。
【0024】
ここで図3を参照して、肺固有抵抗の変化に非常に敏感な別の収束性生体電場電極配置を示す。左心室リード線50は、IMD 14のポートに接続され、3つの電極16、18、52を含む。左心室リード線50は3極リード線であり、図2に示される左心室リード線34と同様の経路を辿る。左心室40の壁を覆う心外膜にそれぞれ位置する近位および遠位の左心室電極16、18に加えて、リード線50は、腕頭静脈(無名静脈としても知られる)中に置かれた電極52を含む。図3に示した配置は、3極の左心室リード線50を用いるが、他の配置を用いることもできる。例えば、腕頭電極52は、その代わりに、右心房リード線、右心室リード線、あるいは腕頭静脈内またはその近くで終わる専用のリード線の上に含まれてもよい。または腕頭電極52は、腕頭静脈の近くの任意の実際的な場所もしくは位置に置かれてもよい。操作中に、IMD 14内のパルス発生器が、IMD 14の外表面に置かれた缶電極と遠位左心室電極18の間に電流を注入する。注入された電流は左肺44の少なくとも一部を通って流れ、腕頭電極52および近位左心室電極16によって測定することができる電圧を引き起こす。次にIMD 14内のインピーダンス計算モジュールが、肺浮腫を評価するために用いることができるインピーダンスを、注入電流に対する測定電圧の比をとることにより計算する。矢印42、54は、この配置での2つの生体誘導電場の概略の方向を示す。誘導場42は電流注入に対応し、誘導場54は電圧測定に対応する。誘導場42、54は関心対象の解剖学的領域の近くで収束するが、他の場所では実質的に分離されている。一つの態様では、左心室電極16と18は、約15mm離れており、また缶電極と腕頭電極52の間の距離は、約4cmである。他の態様では、缶電極と腕頭電極52の間の距離は、約5〜7cmでもよい。同様に、他の態様では、左心室の電極間の間隔は約25mmであってよく、約5mm〜約30mmの範囲であってもよい。
【0025】
一つまたは複数の追加の左心室電極または右心房電極などの追加の電極を、電流注入および電圧測定を行うために用いることができる。例えば、腕頭電極52が図2に示された右心房リード線32上に含まれ、右心房電極20と近位左心室電極16の間、および腕頭電極52と近位左心室電極16の間の電圧を、電流注入中に連続的に測定し、それぞれのインピーダンスを上述のように計算してもよい。次に、IMD 14内のインピーダンス計算モジュールが、例えば、適切な加重係数を用いてインピーダンス測定値を平均することにより、加重平均インピーダンス測定値を計算してもよい。この測定値は、肺浮腫のより全体的な評価を提供することができる。
【0026】
図4は、肺固有抵抗の変化に極めて敏感で、したがって肺浮腫を評価するためのインピーダンス測定に適する、さらに別の例示的な収束性生体電場電極配置を示す。左心室リード線34は、IMD 14上のポートから伸びて、図2に関連して上述した経路を辿り、左心室40を覆う心外膜にそれぞれ位置する近位および遠位の左心室電極16、18を有する。細動除去器リード線80が、IMD 14のポートに接続されており、身体30の上大静脈38中に位置した細動除去コイル82を含む。または細動除去コイル82は、腕頭静脈、鎖骨下静脈、あるいは別の適切な近くの場所に位置することもできる。簡単にするために、図4では細動除去器リード線80は細動除去コイル電極82で終わるように示されている。実際には、細動除去器リード線80は、右心房および右心室中へ伸び、右心室細動除去コイル(示さず)を含んでもよい。右心房のまたは右心室のチップ電極またはリング電極、またはそれらの任意の組合せも含まれてよい。
【0027】
操作では、IMD 14内のパルス発生器が、IMD 14の外表面に置かれた缶電極と遠位左心室電極18の間に電流を注入する。注入された電流は左肺44の少なくとも一部を通って流れ、細動除去コイル82および近位左心室電極16によって測定することができる電圧を引き起こす。次にIMD 14内のインピーダンス計算モジュールが、肺浮腫を評価するために用いることができるインピーダンスを、注入電流に対する測定電圧の比をとることにより計算することができる。矢印42、84は、この配置での2つの生体誘導電場の概略の方向を示す。誘導場42が電流注入に対応し、誘導場84が電圧測定に対応する。図4は、誘導場42、84の、関心対象の解剖学的領域近くで収束するが、他の場所では実質的に分離されている収束性配置を示す。一つの態様では、左心室電極16、18は、約15mm離れており、また缶電極と細動除去コイル82の間の距離は、約12cmである。 他の態様では、缶電極と細動除去コイル82の間の距離は、約9〜20cmでよい。同様に、他の態様では、左心室の電極間の間隔は約25mmであってよく、約5mm〜約30mmの範囲であってもよい。
【0028】
図4に示した構成では、IMD 14が細動除去器であってもよく、さらにペーシング機能を行なってもよい。リード線34、80は、追加の電極を含むことができる。図2〜4に示す配置からの測定値を組み合せることが可能である。そのようなインピーダンス測定値を、適切な重み付け係数を用いて平均し、肺浮腫のより全体的な評価を確認するために用いることができる、より強固なまたは全体的なインピーダンス値を得ることができる。さらに、電流注入電極および電圧測定電極の役割を交換して、等価な結果を実現することができる。これは当業者に公知の相反定理から導かれる。
【0029】
図5は、コンピューターモデリング技術を用いて得られたコンピューターシミュレーションの結果の表100を示す。核磁気共鳴映像法で得られる三次元コンピューターモデルは、ヒトの胸部を、多くのそれぞれが体組織に対応する小さな体積に分割する。モデルを用いて、正常(ベースライン)の条件および重症の肺浮腫条件下で肺インピーダンスをシミュレーションした。各小組織体積に、刊行された表によって適切な電気固有抵抗(例えば、血液=150Ωcm、正常な肺=1400Ωcm、筋肉=400Ωcm、その他)を割り当てる。次に、電極をモデル中の様々な位置に置き、電流を注入する。次に、コンピューターが電場方程式を用いて、小体積の各々で生じる電位を計算する。その結果を用いて、注入電流で測定電位を割ることによってインピーダンスを計算する。図2〜4に示した収束性生体電場電極配置を使用し、遠位左心室冠状静脈電極と左胸部に埋込まれたIMDの缶電極間に電流を注入して、コンピューターシミュレーションは、2極左心室リード線を用いた。次に、近位左心室冠状静脈電極と、いくつかの配置をシミュレーションするために心臓内または心臓の近くの様々な場所に位置した第4の電極との間で、電圧測定を行った。表100中の行102のそれぞれは、図2〜4に示した配置に対応する種々の収束性生体電場電極配置を表わす。
【0030】
第1行102aは、第4の電極を腕頭静脈中に置き、左心室電極間の間隔が15mmである(即ち、近位および遠位の左心室冠状静脈電極が、15mm離れている)配置のデータを表示する。第2行102bは、同様の配置を表わすが、しかし左心室の電極間の間隔は25mmである。行102aおよび102bは、図3に関して上述した配置についてのシミュレーションデータを提示する。第3行および第4行102c、102dは、図4に描かれた配置をシミュレーションする、上大静脈中に第4の電極を有する配置のデータを提示する。行102cのデータは、SVC内のより高位の第4の電極コイル埋込位置に対応し、行102dのデータは、SVC内のより低位の第4の電極コイル埋込位置に対応していて、これは適切な除細動閾値を得るために医療行為で生じ得る変動である。第5行および第6行102e、102fは、図2に描かれた配置をシミュレーションする、右心房中に第4電極を有する配置のデータを提示する。行102eが左心室電極の15mm間隔の配置をシミュレーションし、一方で行102fが25mm間隔の配置をシミュレーションする。シミュレーションでは、拡張末期で測定を行った。
【0031】
モデルは、肺組織に対応するモデル体積の固有抵抗を、例えば1400Ωcm(健康)から350Ωcm(重症浮腫)まで、徐々に減少させることにより、肺浮腫をシミュレーションする。表100に見られるように、所与の配置については、浮腫の患者に対するインピーダンス測定値は正常な患者に対する対応する測定値より小さい。例えば、正常な患者は、腕頭の15mm配置(行102a)において拡張末期で34.62Ωのインピーダンス測定値を持ち、対する浮腫の患者についての22.61Ωの測定値は、34.69%の変化である。同様に、腕頭の、25mm配置(行102b)ついて40.67%の、SVC配置(それぞれ行102c、102d)について40.67%および45.08%、また、右心房配置(それぞれ行102e、102f)について、34.44%および51.60%、のインピーダンス変化が計算された。
【0032】
図6は、2002年11月25日出願の米国特許出願第10/303,305号、発明者 Andres BelalcazarおよびRobert Patterson (本発明者ら)ならびにRebecca Shultによって記述された、4つの3極非収束配置(RV、RV-コイル、RA、LVCVと印す)のシミュレーションされたインピーダンス変化率を、本明細書に上述した4極収束性生体電場電極配置と比較することにより、本発明の長所を強調する棒グラフ120である。棒グラフ120のバーの垂直寸法が、所与の患者の健康状態と浮腫状態の間の測定インピーダンスのパーセント変化率を示す。棒グラフ120中の右端の6つのカラムが、図5の表100について上述した収束性生体電場電極配置に対応する。図6に見られるように、収束性生体電場電極配置の各々は、非収束配置と比較して、肺の変化に対して著しく増大した感度を提供する。例えば、シミュレーションされた3極配置は、およそ9% (RV)、11% (RV-コイル)、12% (RA)および24% (LVCV)のインピーダンス変化を示したが、一方で収束性生体電場電極配置は、34.69% (腕頭リング、15mm)、40.67% (腕頭リング、25mm)、45.08% (SVC高位、25mm)、48.50% (SVC低位、25mm)、34.44% (RAリング、15mm)および51.60% (RAリング、25mm)のインピーダンス変化を示した。このように、これらの収束性生体電場電極配置を用いて行われたインピーダンス測定は、肺の固有抵抗変化に対する改善された感度を与えることができ、それが改善された肺浮腫評価を可能にし得る。
【0033】
図7〜9は、左心室心筋の固有抵抗変化に極めて敏感で心筋虚血の検出および評価に用いることができる、収束性生体電場電極配置を示す。心筋のインピーダンスを測定し、インピーダンス変化に注目することにより、心筋虚血または急性虚血事象(心臓発作)を検出し評価することができる。そのようなインピーダンス変化は、例えば、冠血管内のプラークが破裂して血栓の閉塞を引き起こす場合に生じるかもしれない虚血事象を暗示している可能性がある。心筋の固有抵抗が虚血事象中に増大することが知られており;例えば、心筋の固有抵抗は、急性虚血事象の間にほぼ2倍になり得る。Yolocuauhtli Salazarら、Transmural Versus Nontransmural In Situ Electrical Impedance Spectrum for Healthy, Ischemic, and Healed Myocardium, 51 IEEE Transactions on Biomedical Engineering 1421, August 2004を参照のこと。そのようなインピーダンス変化の時宜を得た検出は、虚血事象によって引き起こされる永久的心筋障害を予防しまたは最小限にし、またその結果起こる心室性細動を予防することができる、血栓溶解または血管形成治療介入を可能にし得る。早期検出はさらに命を救うこともできる。このようにして治療された患者は、より深刻な心臓障害を抱える患者と比較して、健康管理システムに対する経費削減となり得る。さらに、図7〜9に描かれた配置を用いるインピーダンス測定を、虚血事象後の心筋組織を監視して、組織がどれくらいよく回復しつつあるか、および傷の瘢痕化が進行しているかを監視するために用いることができる。これは、瘢痕のある組織は、健康な心筋の固有抵抗のおよそ半分の固有抵抗を有するためである。前記Salazarらを参照のこと。このように、虚血事象の後の異常に低いインピーダンス測定値は、組織の瘢痕化を示す可能性がある。
【0034】
ここで図7を参照すると、身体30の左胸部に埋込まれたIMD 14を有する身体30が示されている。IMD 14は、ペースメーカー、細動除去器、それらの組合せ、または胸部組織に電流刺激を送達して電圧を測定することができる任意の他の型の埋込型医療機器でよい。リード線32、200、34は、IMD 14のポートに接続され、そこから伸びている。リード線32、200、34はそれぞれ、IMD 14を心臓12内に埋込まれた電極20、16、18、202に電気的に接続する一つまたは複数の導体を収容する。
【0035】
この例示的配置では、リード線32が右心房リード線であり、右心房36に位置する右心房電極20を含む。リード線200は細動除去リード線であり、遠心端の近くに心臓12の右心室204中に位置する細動除去コイル202を有する。細動除去リード線200はIMD 14上のポートから伸びて、静脈系に導入され、SVC 38を下降し、右心房36および右心室204内へと伸びる。右心房電極20は、リング電極またはチップ電極のいずれかでよい。または、右心房電極20は、右心室リード線もしくは左心室リード線などの、別のリード線上に含めることもできる。リード線34は、左心室リード線であり、心臓12の左心室40を覆う心外膜にそれぞれ位置する近位左心室電極16および遠位左心室電極18を有する。左心室リード線34は、IMD 14上のポートから伸びて、静脈系に入り、SVC 38を下降して、右心房36中へ、冠状静脈洞中へ、およびさらに左心室40を覆う心外膜を伸びる冠状静脈中へ伸びる。左心室電極16、18は、リング電極またはチップ電極でよく、またはリード線34に沿ったどこか他の場所に置かれてもよい。左心室リード線34は、図7に2極リード線として示されているが、リード線34は、任意で追加のまたはより少ない電極を含んでもよく、またリード線34は、心臓12を通る異なる経路を辿ってもよい。例えば、左心室リード線34は3つ、4つ、5つまたはそれ以上の電極を含んでもよく、およびそれらが同一線上に並んでいてもよい。一つの態様では、左心室電極16、18間の電極間距離が約10〜15mmであり、あるいは心尖から心底までの距離のおよそ6分の1である。これらの距離は、心尖から心底までの長さが約8cmの心臓には適当であり得る。他の電極間の間隔を用いて、様々な大きさの心臓に対しておよそ6分の1の比率を維持して、比例する誘導場が左心室全体を覆うようにすることができる。細動除去リード線200はまた、追加のまたはより少数の電極を含んでよく、また図7に示された経路と異なる心臓12を通る経路を辿ってもよい。
【0036】
図7に示された構成では、IMD 14内のパルス発生器が、右心室204内に置かれた細動除去コイル電極202と遠位左心室電極18との間に電流を注入してよい。注入された電流は、心筋の少なくとも一部分を通って流れ、右心房電極20および近位左心室電極16によって測定され得る電位差を引き起こす。次に、IMD 14内のインピーダンス計算モジュールは、注入電流に対する測定電位差の比を算出して、インピーダンスを計算する。後でより詳細に述べるように、身体30内の心筋虚血を評価するためにこのインピーダンスを用いることができる。矢印206および208は、この配置での2つの生体誘導電場の概略の方向を示す。誘導場206が電流注入に対応し、誘導場208が電圧測定に対応し、それらは関心対象の解剖学的領域の近く、即ち左心室壁の心筋で収束するが、他の場所では実質的に分離されている。一つの態様では、左心室電極16、18が約15mm離れており、また右心房電極20と細動除去コイル202の間の距離は、約10cmである。他の態様では、右心房電極20と細動除去コイル202の間の距離は、約4〜12cmであってよい。同様に、他の態様では、左心室の電極相互間の間隔は約25mmでよく、また約5mm〜約30mmの範囲であってもよい。
【0037】
図8は、SVC 38中に置かれた近位細動除去コイル82および右心室204内に位置する遠位細動除去コイル202の両方を有する、IMD 14のポートへ接続され細動除去リード線220を含む配置を示す。IMD 14内のパルス発生器が、右心室204内に置かれた遠位細動除去コイル電極202と遠位左心室電極18との間に電流を注入する。注入された電流は、心筋の少なくとも一部分を通って流れ、SVC 38中に置かれた近位細動除去コイル電極82および近位左心室電極16によって測定され得る電位差を引き起こす。次に、IMD 14内のインピーダンス計算モジュールは、注入電流に対する測定電位差の比を算出して、インピーダンスを計算する。矢印206、222は、この配置での2つの生体誘導電場の概略の方向を示す。誘導場206が電流注入に対応し、誘導場222が電圧測定に対応する。誘導場206、222は、関心対象の解剖学的領域の近くで収束するが、他の場所では実質的に分離されている。一つの態様では、左心室電極16、18が約15mm離れており、また近位細動除去コイル82と遠位細動除去コイル202の間の距離は、約10cmである。他の態様では、近位細動除去コイル82と遠位細動除去コイル202の間の距離は、約4〜12cmであってよい。同様に、他の態様では、左心室の電極相互間の間隔は約25mmでよく、また約5mm〜約30mmの範囲であってもよい。
【0038】
図9に示された配置は、図8に描かれた配置と同様であるが、しかし図9では、左心室冠状静脈電極16および18がより大きい距離だけ離れて示されている。一つの態様では、近位左心室電極16および遠位左心室電極18が、左心室リード線34上で25mm離れている。この長さは、8cmの心底-心尖長の心臓の長さに対して約3分の1の比率に対応する。他の態様でも、他の大きさの心臓でこの同じ比率を維持して、誘導場が左心室壁を同様に比例して覆うようにすることができる。他の態様では、左心室電極16、18は、5mm、8mm、10mm、15mm、20mm、30mm、または5mm〜30mmの任意の距離などの他の適切な距離だけ、離れていてもよい。IMD 14内のパルス発生器が、右心室204内に置かれた遠位細動除去コイル電極202と遠位左心室電極18との間に電流を注入してよい。注入された電流は、心筋の少なくとも一部分を通って流れ、SVC 38中に置かれた近位細動除去コイル82および近位左心室電極16によって測定されうる電位差を引き起こす。次に、IMD 14内のインピーダンス計算モジュールは、注入電流に対する測定電位差の比を算出して、インピーダンスを計算する。矢印250、252は、この配置での2つの生体誘導電場の概略の方向を示す。誘導場250が電流注入に対応し、誘導場252が電圧測定に対応する。誘導場250、252は、関心対象の解剖学的領域の近くで収束するが、他の場所では実質的に分離されており、それが、関心対象領域内の敏感で特異的な病理検出を可能にし、また関心対象領域の外部の固有抵抗変化に対して改善された透過性を与えることができる。
【0039】
図7〜9に描かれた配置と同様に、図2〜4について上述した収束性4極配置を有利に使用して、虚血の評価に役立つインピーダンス測定をすることができる。図2〜4に示された配置は、左心室の心筋固有抵抗の変化に極めて敏感であり、したがって心筋虚血の検出および評価に用いることができる。IMD 14内のインピーダンス計算モジュールは、注入電流に対する測定電位差の比をとることにより、インピーダンスを計算し、このインピーダンス測定を、心筋虚血を検出し評価するために用いることができる。さらに、図2〜4に描かれた配置を用いたインピーダンス測定を、虚血事象後の心筋組織を監視するために用いて、組織がどれくらいよく回復しているか、および傷の瘢痕化が進行しているかを監視することができる。
【0040】
図10は、非収束性2極インピーダンス配置(2極LV-コイルと印されたバー302)のシミュレーションされた左心室壁インピーダンス感度百分率を、図2および図7〜9を参照して上述した4極収束性生体電場電極配置(バー304)と比較することにより、本発明の長所を強調する棒グラフ300である。バー304aは、図2について上述した配置に対応し、バー304bは、図7について上述した配置に対応し、バー304cは、図8について記述された配置に対応し、およびバー304dは、図9について記述された配置に対応する。棒グラフ300のバーの垂直寸法が、左心室壁のインピーダンス感度を示す。図10に見られるように、収束性生体電場電極配置(バー304)の各々が、非収束配置(バー302)と比較して、左心室壁のインピーダンス感度の著しい増大を提供する。例えば、シミュレーションされた2極性配置(バー302)は、左心室壁心筋に対してほぼ6%の感度を有し、一方で収束性生体電場電極配置は、約34% (バー304a)、35% (バー304b)および36% (バー304c)、ならびに-11% (バー304d)の感度を有する。負の感度は、左心室壁の固有抵抗が上昇すると、測定インピーダンスが低下すること、およびその逆も正しいことを示す。このように、これらの収束性生体電場電極配置を用いて行われたインピーダンス測定は、左心室壁の固有抵抗の変化に対する改善された感度を提供することができ、それが改善された虚血評価を可能にし得る。
【0041】
図11は、図1〜4および7〜9に示された埋込型装置14のブロック図回路表現である。図11を、図2に示された配置に関して、次に記述する。しかしその記述はまた、この文書に示され記述される他の配置にも適用可能なことを、当業者は理解すると考えられる。装置14には、インピーダンスを測定し、肺浮腫および心筋虚血を評価するための回路、および外部装置と接続するための通信回路が含まれる。インピーダンス測定回路302は、電流発生器304を含み、それは任意の2つの電極間に電流を注入することができる;例えば、電流発生器304は、IMD 14の外表面に置かれた缶電極と遠位左心室冠状静脈電極18(図2)の間に電流を注入することができる。スイッチ306が、適切なポート308に電流を導くために、公知技術の手続きで作動する。電流は、適切なポートからリード線中の導体を通って適切な電極に伝わる。注入電流は、電極における不適当な分極および電気分解効果を回避するための交流(AC)であってよく、それが心臓刺激を生じないような大きさ、周波数および持続時間であるべきである。実施態様の一つでは、AC電流は、約50KHz〜100KHzの周波数を持ってよい。可能な電流波型の例には、正弦波および2相性パルス(対称のまたはそうでない)が挙げられる。
【0042】
缶電極と電極18の間の(図2参照)注入電流は、患者の体内に電場を作製する。したがって、電位が、右心房電極20と近位左心室冠状静脈電極16の間に現われる。次に、電圧増幅器310が、リード線中の導体を介しおよびポート308とスイッチ306を通じて、電極20と16の間のこの電圧を測定する。電圧増幅器310は、例えば電圧を測定する信号調整ユニットであってよいし、任意で復調器を含んでもよい。または、近位および遠位の左心室冠状静脈電極16、18の役割を、適切な配線の変更により、逆にすることができる。
【0043】
制御ブロック312は、注入電流およびその結果測定された電圧の両方の大きさについての情報を受け取るかまたは含む。制御ブロック312の内部または外部のアナログ/デジタル(A/D)変換器(示さず)を使用して情報を変換することができる。次に、制御ブロック312内のマイクロプロセッサー、マイクロコントローラーまたはデジタル信号プロセッサーのような演算ユニット(示さず)が、電流および電圧情報を用い、電流で電圧を割ることによりインピーダンスを計算することができる。体組織の体液レベルが増大すると、組織インピーダンスが減少する。したがって、インピーダンス比を用いて肺浮腫を評価し、患者のために肺浮腫の重症度を決定することができる。浮腫値の決定について記述するアルゴリズムについては、後に議論する。反対に虚血事象の間は、心筋組織のインピーダンスが増大する。したがって、インピーダンス値を用いて、患者について、心筋虚血を評価し、進行中の虚血事象を検出することができる。虚血の検出について記述するアルゴリズムについては、後に議論する。
【0044】
制御ブロック312は、従来のように、さらに演算ユニットによって実行される命令を記憶する、読み出し専用メモリー(ROM)、ランダムアクセスメモリー(RAM)、フラッシュメモリー、EEPROMメモリーその他、ならびにデジタル/アナログ(D/A)変換器、タイマー、カウンター、フィルター、スイッチ、その他(示さず)を含んでよい。インピーダンス測定値、浮腫値および虚血値もメモリに記憶できる。これらの制御ブロック構成要素は、特定用途向け集積回路(ASIC)などの単一デバイス内に統合されてもよいし、または個別のデバイスであってもよい。適当なバス(示さず)が、制御ブロック312内の構成要素間の通信を可能にする。
【0045】
センサーブロック314からの情報を用いて、測定されたインピーダンスと浮腫または虚血の重症度との関係を調整することができる。姿勢センサー316は、患者の配向情報を制御ブロック312に提供して、浮腫または虚血の評価に姿勢補償を含めることを可能にする。胸部および肺中の器官および超過の体液は、重力により姿勢変化と共に移動するので、患者が種々の姿勢をとるにしたがって、測定インピーダンスが変わる可能性がある。例えば、患者が右側を下にして横たわる場合は、左肺44中の体液および組織が、左心室冠状静脈電極16、18の近くの縦隔の方に重力で下降されて、より低い測定インピーダンスをもたらすことになる可能性がある。したがって、姿勢センサー情報に基づいて、インピーダンス測定値と浮腫または虚血の重症度との関係を調整し、それによって補正を行う。同様に、左側を下にして横たわる患者については、その関係を逆に調整することができる。水銀スイッチ、DC加速度計または他のピエゾ電気デバイスを含む、いくつかの型の姿勢センサーを用いることができる。
【0046】
ペーシング用途での補助のために通常用いられる活動度センサー318も、制御ブロック312に情報を提供することができる。これらの補償方式を用いることによって、患者内の姿勢による体液移動によって引き起こされる、浮腫および虚血の解釈過誤を回避することができる。センサー316、318のいずれかを、任意で埋込型装置14から除外してもよい。
【0047】
テレメトリーブロック320は、アンテナ322を介して無線周波数(RF)送信を用いて無線で、同様に無線装備された外部監視ユニット324と通信することができる。監視ユニット324は、コンピューター(カスタムプログラマー、デスクトップ、ラップトップ、携帯型、その他)、遠隔医療ホームステーション、腕時計などの装着型装置、携帯電話器、装着型中継器、または任意の他の適切な装置でよく、またそれを、埋込型装置14をプログラムするか、またはIMD 14からインピーダンス測定値、浮腫値または虚血値などの情報を検索するために用いてもよい。この通信リンクを用いて、医師または医療サービス提供者に、例えば、速やかに治療介入を開始するように、急性の虚血事象または肺浮腫の検出の警報を出すことができる。または、監視ユニット324は、電話接続を利用して、9-1-1をダイヤルし、緊急事態応答チームを呼び出すことができるし、インターネットなどのネットワークを介して通信することにより同様の反応を引き起こすことができ、あるいは患者に、治療をうけるように音声でまたは文章で通知することもできる。このように、様々な病状の検出のために、患者を1日24時間、1週7日間、連続して監視し、病理を検出した場合は、医師または医療提供者に速やかに警報することができる。
【0048】
感知/ペーシング/細動除去回路330は、ペーシング回路332、細動除去回路334および感知増幅器336を含み、心臓性事象を感知し、および/または刺激し(ペーシングし)、心臓リズムを管理するために用いられる。一般的インピーダンス計算モジュールは、図11に明示的には示されていないが、それは図11のブロックのいくつかまたはそれらの部分を含むと考えられる。バッテリー340は、IMD 14の様々な回路およびブロックへ電源を供給する(単純化のため、図11に接続を示さない)。または、インピーダンス測定回路302は、パルス発生器304からの電流注入の代わりに、感知/ペーシング/細動除去回路330からの正常な心臓刺激パルスを用いて、その結果生じる電圧を測定することができる。次に、インピーダンスを計算することができる。さらなる選択肢の一つは、インピーダンス測定回路302を除外し、感知/ペーシング/細動除去回路330をインピーダンス決定に必要な電流注入および電圧測定機能に用いる。
【0049】
以前に言及したように、インピーダンス測定は、種々の器官および/または体内組織からの固有抵抗により影響され得る。所与の電極測定配置では、ある器官または体内組織が全インピーダンス測定により大きく寄与するが、一方で他の器官/組織はそれほど大きく寄与しないと考えられる。標的器官/組織が、インピーダンス測定に対して大きな貢献をし、他のすべての器官/組織が測定に対して最小の貢献をすることが望ましい。例えば、肺浮腫を評価するためにインピーダンスを測定する場合には、肺に対しては大きな感度が好ましく、他のすべての胸部臓器/組織については最小の感度が好ましいと考えられる。同様に、心筋虚血を評価するためにインピーダンスを測定する場合は、心筋に対しては大きな感度が好ましく、他のすべての胸部臓器/組織に対しては最小の感度が好ましいと考えられる。
【0050】
図12は、様々な電極配置に対して上述のモデルを用いて作成した、インピーダンス検知感度係数シミュレーションの結果の表400を示す。各配置を、表400中の列401、402で表わす。列401aは、2002年11月25日出願の米国特許出願第10/303,305号、発明者Andres BelalcazarおよびRobert Patterson (本発明者ら)ならびにRebecca Shultによって記述された3極配置を表わし、列401bはある既知の配置を表わし、列402a〜402eは、本明細書に記述された収束性生体誘導電場電極配置を表わす。列402aおよび402bは、図3について上述した配置に対応し;列402cは、図4について上述した配置に対応し;また列402dおよび402eは、図2について上述した配置に対応する。各配置401、402について、表400は、いくつかの胸部臓器および組織の、その配置により測定された全インピーダンスに対する貢献を数量化したものを示す。係数が大きければ大きいほど、それがより有意に全インピーダンスに寄与する。例えば肺を監視する場合、肺の係数ができるだけ高く、全ての他の係数が比較的低いことが望ましい。これによって、望みのように、測定されたインピーダンス変化は肺に特異的であり、大部分は肺インピーダンス変化の結果であることが保証される。同様に、左心室壁をモニターする場合、高い左心室壁の係数および低い他の係数が望ましい。
【0051】
表400は、収束性生体電場電極配置(列402a〜402e)を用いると、IMD 14の近くの脂肪(行403)および筋肉(行404)に対する感度がほぼ10分の1に減少することを示す(例えば、三極配置(列401a、401b)での、0.2199および.1888から、収束性4極配置(列402a〜402e)での0.022未満に)。このように、収束性生体電場電極配置は、肩および胸部の姿勢または他の変化に対して、より免疫がある。所望のように、この失われた感度により、他の領域、特に左心室壁および血液(行406)、ならびに左肺(行405)に対するより大きな感度がもたらされる。このように、これらの配置は、IMD 14の近くの胸筋を拡張するか収縮する腕または肩の動きによって引き起こされるインピーダンス変化に、または胸筋中の浮腫に左右されず、左肺および左心室壁によって引き起こされるインピーダンス変化により敏感で、したがって肺浮腫および虚血をよりよく検出し評価することができると考えられる。
【0052】
表400はまた、左心室電極16、18間の電極間隔(15mm対25mm)が重要な因子であることを示す。より離れた間隔で配置された電極は、感知領域のより深い浸透を提供し、それは肺の監視の場合には望ましいが、しかし左心室壁監視の場合には望ましくない。例えば、腕頭配置では、25mmの左心室電極間間隔(列402b)では左肺(行405)の感度係数0.3196を、15mm間隔(402a列)での係数0.2548に対して有し、25mmの方が左肺固有抵抗の変化により敏感である。同様に、25mmの右心房配置(列402e)は、左肺(行405)の感度係数0.4175を、15mm間隔(列402d)での係数0.2493に対して有する。しかしながら、15mmの腕頭配置(列402a)は、0.2514の左心室外側壁(行406)感度係数を、25mm間隔(列402b)での-0.0806の係数に対して有し、また15mmの右心房配置(列402d)は0.3394の係数を、25mm間隔(列402e)での-0.1950の係数に対して有し、これは、15mmが左心室壁の固有抵抗の変化に対するよりよい感度を示している。上述したように、15mmおよび25mmの長さは、8cmの心尖から心底までの長さを有する典型的な心臓には適切であり得る。他の大きさの心臓に対して、電極間間隔を大きさに比例して変更することによって、関心対象の組織を誘導場が一貫して覆うことが保証され、それにより、様々な大きさの組織全般の評価および検出が可能になる。
【0053】
表400を、上述した胸部のコンピューターモデルを用いて計算し、配置の誘導場をシミュレーションした。器官または組織を構成する個々の微分体積の貢献を、下に示す方程式1のSchmitt-Geselowitz方程式の体積積分を用いて、計算した。
(1) Z = ∫ρJLE・JLI dv
【0054】
方程式1中で、Zは、励起電極に注入された電流に対するピックアップ電極で測定された電圧の比をとることにより測定装置によって測定されたインピーダンス(Ω)であり、ρは各位置での局所的組織固有抵抗(Ωcm)であり;JLEは、電圧測定電極対の誘導場ベクトル(1/cm^2)であり;JLIは、電流注入電極対の誘導場ベクトル(1/cm^2);および、dvは体積積分の微小体積(cm^3)である。方程式1は、各位置の組織固有抵抗で加重した誘導場の内積の、各器官の体積全体に亘る積分が、全測定インピーダンスに対するその器官の貢献に対応するΩ値を与えることを述べる。Ωで与えられたある器官の貢献をシステムによって測定された全インピーダンスで割ることにより、表400に示された感度係数が得られる。上記の方程式中の用語の意味のさらなる詳細については、J. Malmivuo & R. Plonsey, Bioelectromagnetism:Principles and Applications of Bioelectric Fields (1995)を参照のこと。
【0055】
図13のフローチャートは、浮腫の評価をするために、アルゴリズムが図11の制御ブロック312でどのように実行されるかを示す例である。命令を実行する制御ブロック演算ユニットによって行なわれるプロセスは、工程500で、浮腫タイマー(例えば演算ユニット中の制御ブロック312内に置かれている)が待機期間を実行することから始まる。この期間は医師によって決定され、約2時間〜約3日であってよい。その値は、テレメトリーブロック320(図11)への無線周波数接続によってプログラム可能であり得る。
【0056】
待機期間が経過した後に、制御ブロック312は、工程510で次の心室性事象を待つ。心室性事象を、制御ブロック312に内在するか、または感知/ペーシング/細動除去回路330(図11)中の感知増幅器336からの、ペースタイミング制御情報を用いて決定することができる。心室性事象の出現は、心臓が収縮を開始したことを示し、工程520で、約150msの待機期間をとって心臓の収縮を開始させる。次に、工程530で、25Hzの率でインピーダンスを10回サンプリングし、メモリバッファーCe(心臓/浮腫用)にそのインピーダンス試料を記憶する。これによって、インピーダンス波形(即ち波形の構成点としてのインピーダンス測定値により定められた波形)のピークの前と後にインピーダンスをサンプリングして、本明細書でZes_e(浮腫検出のための収縮末期のZ)と呼ぶ、その収縮末期のピーク値を見つけ、測定することが可能になる。Zes_eを、バッファーCe中の10のインピーダンス試料中の最大のものと等しいと置いて、メモリバッファーRe(呼吸/浮腫用)に記憶し、工程540でバッファーCeを消去する。
【0057】
工程550では、カウンターが、48個のZes_eが既に記憶されたかどうかを判断する。記憶されていなければ、工程510〜540を繰り返す。このようにして、工程510〜540を47回繰り返し、それによって、バッファーReに、少なくとも約3回の呼吸サイクルをカバーするのに十分な48の収縮末期インピーダンス測定値Zes_eを記憶する。次に、工程560では、肺浮腫値に、バッファーRe中の3つの最小のインピーダンス値(すなわち呼気末期に対応する値)の中央値が割り当てられる。肺浮腫値をメモリに記憶し、バッファーReを消去し、適当なタイマーおよびカウンターをリセットして(570)、プロセスを終了する。プロセスは、その後、工程500で再び開始し、次の浮腫サンプリング時まで待つことができる。安定した測定結果および再現性のために、心臓および呼吸サイクル中の同じ時期に測定を行うとよい;例えば、収縮末期および呼気末期に(図13のフローチャートについて上述したように)、または拡張末期および呼気末期に、または心臓周期の任意の他の時点で測定を行ってもよい。
【0058】
浮腫値を、記憶されている浮腫閾値と比較し(これは恐らくテレメトリー接続を通じてプログラム可能である)、浮腫値が閾値を超える場合には、警報フラグを設定するか、警報を発することができる。記憶された浮腫値またはインピーダンス値を、次にテレメトリーブロック320が監視ステーション324(図11)へ、例えば、監視ステーション324が装置14に問い合わせたときに、送信することができる。医師が、続いて浮腫値の傾向について、データを解析することもできる。
【0059】
図14のフローチャートは、虚血の評価をするために、図11の制御ブロック312で、どのようにアルゴリズムが実行されるかの例を示す。命令を実行する制御ブロック演算ユニットによって行なわれるプロセスは、工程600で、待機期間を実施する虚血タイマー(例えば演算ユニット中の制御ブロック312内に置かれている)から始まる。この期間は、医師によって決定され、約15秒〜約5分であってよい。ある態様では、待機期間は約1分であってよい。その値は、テレメトリーブロック320(図11)への無線周波数接続によってプログラム可能であり得る。
【0060】
図14を再び参照して、待機期間が経過した後に、制御ブロック312が工程610で次の心室性事象を待つ。心室性事象を、制御ブロック312に内在するか、または感知/ペーシング/細動除去回路330(図11)中の感知増幅器336からの、ペースタイミング制御情報を用いて決定することもできる。心室性事象の出現は、心臓が収縮を開始したこと示し、工程620で約150msの待機期間をとって心臓の収縮を開始させる。次に工程630で、25Hzの採取率でインピーダンスを10回サンプリングし、そのインピーダンス試料をメモリバッファーCi(心臓/虚血用)に記憶する。これによって、インピーダンス波形(即ち波形の構成点としてインピーダンス測定値を含む波形)のピークの前と後にインピーダンスをサンプリングし、本明細書でZes_i (虚血検出のための収縮末期のZ)と呼ぶ、その収縮末期のピーク値を見つけ、決定することが可能になる。Zes_iを、バッファーCi中の10のインピーダンス試料の最大のものと等しいと置いて、メモリバッファーRi (呼吸/虚血用)に記憶し、工程640でバッファーCiを消去する。
【0061】
工程650では、48個のZes_iが既に記憶されたかどうかを、カウンターが判断する。記憶されていなければ、工程610〜640を繰り返す。このようにして、工程610〜640を47回繰り返し、それによって、バッファーRi中に、少なくとも約3回の呼吸サイクルをカバーするのに十分な48の収縮末期インピーダンス測定値Zes_iを記憶する。次に、工程660で、虚血値に、バッファーRi中の3つの最小のインピーダンス値(すなわち呼気末期に対応する値)の中央値が割り当てられる。虚血値をメモリに記憶し、バッファーRiを消去し、適当なタイマーおよびカウンターをリセットして(670)、プロセスを終了する。プロセスは、その後工程600で再び開始することができ、次の虚血サンプリング時まで待つ。安定した測定結果および再現性のために、心臓および呼吸サイクル中の同じ時期に測定を行うとよい;例えば、収縮末期および呼気末期に(図14のフローチャートについて上述したように)、または拡張末期および呼気末期に、または心臓周期の任意の他の時点で測定を行ってもよい。
【0062】
虚血値を、記憶されている虚血閾値と比較し(これは恐らくテレメトリー接続を通じてプログラム可能である)、虚血値が閾値を超える場合には、警報フラグを設定するか、警報を発することができる。次に、例えば監視ステーション324が装置14に問い合わせる場合には、記憶された虚血値またはインピーダンス値がテレメトリーブロック320によって監視ステーション324(図11)へ送信される。医師が、続いて虚血値の傾向について、データを解析することもできる。
【0063】
ある実施態様では、浮腫または虚血を、およそ同じ心拍数および姿勢で評価する。これを達成できる方法の一つは、図13または図14に示すフローチャートの工程を、心拍数および姿勢があらかじめプログラムされた範囲内にある時にのみ実行する(即ち、一方または両方のフローチャートの工程を、心拍数および姿勢が最後の浮腫または虚血評価が行われた時とほぼ同じである場合に限り、実行する)ことである。または、図13または図14のプロセスを用いて、浮腫および/または虚血の評価を、対応する心拍数および姿勢情報と共に、メモリに記憶することができる。そして後で、浮腫および/または虚血の測定値を、心拍数または姿勢のカテゴリーによって区分に分類し、それを医師に、その医師が選択するカテゴリー毎に送信するかまたは提示することができる。
【0064】
アルゴリズムには多くの代案が可能である。例えば、異なる数の試料を得てもよいし、試料のサンプリング回数が変わってもよく、中央値の代わりに平均値を用いてもよく、交互の待機期間を選択してもよく、および代わりの比較方式を実行してもよい。例えば、バッファーの代わりに単一のレジスターを用いて、サンプリングと同時に、新しくサンプリングされた測定値をレジスターに記憶された現行の最大値/最小値と比較してもよい。待機期間の代わりとして、患者が、例えば磁石によって一連の測定を開始してもよい。インピーダンス値およびセンサー情報を用いて、測定されたインピーダンスと異なる値を浮腫値または虚血値を割当ててもよい。もちろん、タイムスタンプを、浮腫値または虚血値、並びに例えば姿勢情報、心拍数、または活動レベルなどの他の関連情報と共に記憶させることができる。遠隔医療ホームステーションが測定を開始し、次に医療センターへ結果を送ることもまた可能である。インピーダンス測定を、正常な心臓刺激事象との時分割により行うこともできる。または、専用のインピーダンス測定電流注入の代わりに、正常な心臓刺激パルスを用いてもよい。
【0065】
図15のフローチャートは、図11の制御ブロック312で、どのようにアルゴリズムが実行されて、様々な周波数でインピーダンス測定を行い、単一周波数での測定では混同される可能性がある浮腫および虚血などの様々な病理の影響を区別するかの例を示す。虚血状態の心筋は、1KHz〜500KHzの間などの種々の周波数で、相当異なるインピーダンス応答を示し、また一方肺組織および浮腫体液は、1MHz未満の周波数ではあまり変化を示さないことは公知である。上記Salazarらを参照のこと。心筋虚血度は、500KHzではインピーダンス測定値に対してほとんど影響を有しないが、しかし1KHzでは、虚血度がインピーダンスに有意な影響を有する。上記。このように、多周波数の測定を行うことができ、その結果を用いて、インピーダンス変化が、例えば肺浮腫に起因するかまたは心筋虚血に起因するかのどちらかに分類することができる。
【0066】
図15を再び参照して、命令を実行する制御ブロック演算ユニットによって行なわれるプロセスは工程700で始まり、1KHzの注入電流周波数で第1のインピーダンス測定を行い、500KHzの注入電流周波数で第2のインピーダンス測定を行う。注入電流は、それぞれ1KHzおよび500KHzの正弦波でもよいし、または例えば単相性または2相性の矩形指数関数減衰パルスなどの、前記正弦波励起に周波数含量成分が似た応答を引き起こす任意の波形でもよい。次に、工程710では、第1インピーダンス測定値と第1参照値との差の絶対値をとることにより、Δ_Z_1Kを計算し、第2インピーダンス測定値と第2参照値との差の絶対値をとることにより、Δ_Z_500kを計算する。参照値は医師が装置14を埋め込む際にプログラムしてもよいし、または例えば、医師が後で追跡訪問の際に更新してもよい。または、参照値を制御装置312(図11)が更新してもよい。例えば、参照値を、インピーダンス測定値の移動平均を決定する計算あるいは他の何らかの適応技術などに従って制御装置312によって行なわれる計算に応じて更新してもよい。
【0067】
Δ_Z_1kが第1閾値(閾値_1k)未満で、同時に、Δ_Z_500kが第2閾値(閾値_500k)未満である場合(720)は、緊急の症状は存在せず、プロセスは恐らく適切な待機期間後に再開する。そうではなく、Δ値の少なくとも一つがその対応する閾値を越えた場合は、浮腫または虚血が存在する可能性がある。工程730では、プロセスは、病理のどちらか一方または両方が存在するかどうかの判断を継続する。Δ_Z_1kが閾値_1kより大きく、またΔ_Z_500kも閾値_500kより大きい場合は、工程740で肺浮腫フラグまたは警報をセットし、プロセスは終了する。しかし、工程730の条件が当てはまらない場合は、2つのΔのうちの一つだけが有意な変化を有する。もし低周波測定値のみが有意に変化するならば、以前に指摘したように、高周波測定値は虚血に感受性が無いので、変化は虚血事象のみによるものであり得る。これは工程750で実行される:Δ_Z_1kが閾値_1kより大きく、Δ_Z_500kが閾値_500kより小さい場合は、工程760で急性虚血事象フラグまたは警報をセットし、プロセスは終了する。反対に、高周波測定値のみが変化する場合(例えば500KHzでのインピーダンスの低下)は、変化は、浮腫事象によるものであり得る(虚血は500KHzでのインピーダンス測定値にほとんど影響しないので)、そして同時に行う低周波測定が時間とともに有意に変化しないのは、同時に虚血事象が起きていることによって説明される可能性がある。この筋書きの下では、虚血は1KHzのような低周波でインピーダンスの増加を引き起こし、一方で浮腫は減少を引き起こす。もし両方の事象が同時に生じる場合には、効果の打ち消しという結果となり、低周波監視には有意な変化が存在しない、という可能性がある。工程770で、この意思決定の工程が行われ、Δ_Z_1kが閾値_1kより小さく、またΔ_Z_500Kが閾値_500kより大きい場合は、工程780で肺浮腫フラグまたは警報、および急性虚血事象フラグまたは警報をセットし、プロセスを終了する。図15のフローチャートは、浮腫または虚血事象の開始の検出のためのプロセスについて記述する。浮腫の除去または虚血の消失、あるいはそれらの組合せを、同様の原理を用いて同様のプロセスにより検出することができる。このようにして、本発明は、肺浮腫および心筋虚血の両方の監視、検出、判別および分類を可能にする。
【0068】
アルゴリズムの多くの変形が可能である。例えば、周波数を変えて2つよりも多いインピーダンス測定を行うことができるし、または50Hz、500Hz、5KHz、10KHz、50KHz、100KHz、400KHz、600KHz、1MHzその他の代わりの周波数を用いることができる。異なる周波数の2つの電流を注入するのではなく、両方の周波数を含む混成信号電流を注入することができるし、周波数成分を分離するために装置14の電圧測定回路中に追加のフィルター回路を用いることができる。図13〜14に示されたフローチャートによって記述されたアルゴリズムを用いて得られたインピーダンス値を用いることができる。テレメトリーモジュール320(図11)は、監視ステーション324(図11)あるいは医師または医療提供者へフラグまたは警報を伝えることができる。アルゴリズムを、15秒毎、30秒毎、毎分、2分毎、5分毎、7分毎、10分毎、毎時などの様々な適当な時間間隔で実行してもよい。測定値および計算結果は、医師が参照するために、メモリに記憶するか、または監視ステーションへダウンロードすることができる。
【0069】
本発明の多数の態様について記述した。しかし、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な修飾ができることを理解するべきである。例えば、虚血検出のための上述の原理を用いて左心室壁をモニターして、しばしば高血圧症(高血圧)または大動脈弁狭窄により生じる肥大(壁肥厚)を検出することができる。肥大は、心臓に過負荷が掛かっており、望ましくない症状であることの兆候であり得る。虚血事象と肥大事象を区別するために開始時間の差を用いることができる。虚血事象は開始が相当速いが、しかし肥大は一般に数日の間に生じ/消滅する。さらに、上述の多周波数技術を、虚血を除外するために用いることができる。電流注入と電圧測定の極性を逆にしてもよい。さらに、電流注入電極および電圧測定電極の役割を交換してもよい。
【0070】
当業者に周知のように、インピーダンスは、周波数領域中で定義された複雑な量であり、大きさおよび位相角から成る。インピーダンスの大きさは、注入電流の大きさに対する測定電圧の大きさの比である。インピーダンス位相角は、注入電流と測定電圧の間の位相のずれの程度を示す。インピーダンス位相のずれを測定する一つの方法は、注入された電流信号のピークとその結果生ずる測定された電圧信号のピークの間の時間長を計算することである。図2〜4または7〜9に示した任意の配置が、病理の評価および検出のために、インピーダンスの大きさまたはインピーダンス位相角、あるいは両方を測定することができる。従って、他の態様も、添付した特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】収束性生体誘導電場システムの透視図である。
【図2】肺インピーダンスおよび心筋インピーダンスの測定のための、収束性生体誘導電場の電極配置を含むシステムの透視図である。
【図3】肺インピーダンスおよび心筋インピーダンスの測定のための、収束性生体誘導電場の電極配置を含むシステムの透視図である。
【図4】肺インピーダンスおよび心筋インピーダンスの測定のための、収束性生体誘導電場の電極配置を含むシステムの透視図である。
【図5】シミュレーションの結果の表である。
【図6】図5から得られた結果のグラフである。
【図7】心筋インピーダンスの測定のための、収束性生体誘導電場の電極配置を含むシステムの透視図である。
【図8】心筋インピーダンスの測定のための、収束性生体誘導電場の電極配置を含むシステムの透視図である。
【図9】心筋インピーダンスの測定のための、収束性生体誘導電場の電極配置を含むシステムの透視図である。
【図10】シミュレーションの結果のグラフである。
【図11】図1〜4および7〜9の任意のシステムで使用するための埋込型医療機器の概要のブロック図である。
【図12】シミュレーションの結果の表である。
【図13】図11の機器がどのように浮腫の評価をするかを図示するフローチャートである。
【図14】図11の機器がどのように虚血の評価をするかを図示するフローチャートである。
【図15】図11の機器が、病理の検出、分類、および識別のために、どのように多周波数インピーダンス測定を行うかを図示するフローチャートである。
【0072】
様々な図面の中の同じ参照記号は、同じ構成要素を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の電極が体内の第1の誘導電場(electric lead field)を定め、第1の誘導電場が第1と第2の電極間に配向されている、生物の体内に埋込まれた第1と第2の電極間へ電流を注入する工程と;
電位差が第1と第2の電極間に注入された電流に起因し、第3および第4の電極が体内の第2の誘導電場を定め、第2の誘導電場が第3と第4の電極間に配向されており、第1と第2の誘導電場は体内の評価部位の近くで収束するがそうでなければ実質的に分離されている、体内に埋込まれた第3と第4の電極間の電位差を測定する工程と;
電位差および電流注入に基づいてインピーダンス値を計算し、そのインピーダンス値を用いて評価部位の近くの病理を評価する工程とを含む、
生物中の病理評価のためにインピーダンスを測定する方法。
【請求項2】
評価部位が心腔内ではない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
評価部位が左肺であり、かつ病理が肺浮腫である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
評価部位が心臓の左心室壁であり、かつ病理が心筋虚血である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
評価部位が心臓の左心室壁であり、かつ病理が左心室肥大である、請求項2記載の方法。
【請求項6】
第2および第4の電極が心臓の左心室の近くに位置し、第1の電極が胸部内に位置し、かつ第3の電極が心臓の右心房中に位置する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
第2および第4の電極が心臓の左心室の近くに位置し、第1の電極が胸部内に位置し、かつ第3の電極が腕頭静脈の近くに位置する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
第2および第4の電極が心臓の左心室の近くに位置し、第1の電極が胸部内に位置し、かつ第3の電極が上大静脈中に位置する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第2および第4の電極が心臓の左心室の近くに位置し、第1の電極が心臓の右心室中に位置し、かつ第3の電極が心臓の右心房中に位置する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
第2および第4の電極が心臓の左心室の近くに位置し、第1の電極が心臓の右心室中に位置し、かつ第3の電極が上大静脈中に位置する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
第2および第4の電極が約15ミリメートル離れている、請求項1記載の方法。
【請求項12】
第2と第4の電極が約25ミリメートル離れている、請求項1記載の方法。
【請求項13】
第1と第3の電極が少なくとも約4センチメートル離れている、請求項1記載の方法。
【請求項14】
第1と第3の電極が少なくとも約10センチメートル離れている、請求項1記載の方法。
【請求項15】
病理評価に応じて警報を発する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
後で参照するためにインピーダンス値を記憶する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
監視ステーションにインピーダンス値を送信する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
第1と第2の電極間に第2の電流を注入する工程と、第3と第4の電極間の第2の電位差を測定する工程と、第2の電位差および第2の電流注入に基づいて第2のインピーダンス値を計算する工程と、第1および第2のインピーダンス値を用いて評価部位の近くの病理を評価する工程とをさらに含む、第1と第2の電流は異なる周波数の交流であり、第2の電位差は第1と第2の電極間に注入された第2の電流に起因する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
第1の電流が約1キロヘルツの周波数を有し、第2の電流が約500キロヘルツの周波数を有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
第1および第2のインピーダンス値に基づいて病理を分類する工程をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
2つまたはそれ以上の病理のインピーダンスへの影響が、第1および第2のインピーダンス値に基づいて識別される、請求項18記載の方法。
【請求項22】
電流が2つまたはそれ以上の周波数を含む混成信号である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
2つまたはそれ以上の周波数に対応する周波数成分を電位差から抽出する工程をさらに含む、電位差が電圧信号である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
インピーダンス値を閾値と比較する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
第1および第2の電極が体内の第1の誘導電場を定め、第1の誘導電場が第1と第2の電極間に配向されている、生物の体内に埋込まれた第1と第2電極間へ電流を注入するためのパルス発生器と;
電位差が第1と第2の電極間に注入された電流に起因し、第3と第4の電極が体内の第2の誘導電場を定め、第2の誘導電場が第3と第4の電極間に配向されており、第1および第2の誘導電場は体内の評価部位の近くで収束するがそうでなければ実質的に分離されている、体内に埋込まれた第3と第4の電極間の電位差を測定するための電圧測定回路と;
電位差と電流注入に基づいてインピーダンス値を計算し、そのインピーダンス値を用いて評価部位の近くの病理を評価するための演算ユニットとを含む、
生物中の病理評価のためにインピーダンスを測定するための埋込型医療機器。
【請求項26】
評価部位が心腔内でない、請求項25記載の埋込型医療機器。
【請求項27】
評価部位が左肺であり、かつ病理が肺浮腫である、請求項26記載の埋込型医療機器。
【請求項28】
評価部位が心臓の左心室壁であり、かつ病理が心筋虚血である、請求項26記載の埋込型医療機器。
【請求項29】
第2と第4の電極が約15ミリメートル離れている、請求項25記載の埋込型医療機器。
【請求項30】
第2と第4の電極が約25ミリメートル離れている、請求項25記載の埋込型医療機器。
【請求項31】
第1と第3の電極が少なくとも約4センチメートル離れている、請求項25記載の埋込型医療機器。
【請求項32】
第1と第3の電極が少なくとも約10センチメートル離れている、請求項25記載の埋込型医療機器。
【請求項33】
演算ユニットが病理評価に応じて警報を発する、請求項25記載の埋込型医療機器。
【請求項34】
監視ステーションにインピーダンス値を送信するためのトランシーバーをさらに含む、請求項25記載の埋込型医療機器。
【請求項35】
パルス発生器が第1と第2の電極間に第2の電流を注入することと、第3と第4の電極間の第2の電位差を測定することと、第2の電位差および第2の電流注入に基づいて第2のインピーダンス値を計算することと、第1および第2のインピーダンス値を用いて評価部位の近くの病理を評価することを含む、第1および第2の電流は異なる周波数の交流であり、第2の電位差は第1と第2の電極間に注入された第2の電流に起因する、請求項25記載の埋込型医療機器。
【請求項36】
第1と第2の電極が体内の第1の誘導電場を定め、第1の誘導電場が第1と第2の電極間に配向されている、生物の体内に埋込まれた第1と第2の電極間へ電流を注入する工程と;
電位差が第1と第2の電極間に注入された電流に起因し、第3と第4の電極が体内の第2の誘導電場を定め、第2の誘導電場が第3と第4の電極間に配向されており、第1と第2の誘導電場は体内の評価部位の近くで収束するがそうでなければ実質的に分離されている、体内に埋込まれた第3と第4の電極間の電位差を測定する工程と;
電位差および電流注入に基づいてインピーダンス位相角の値を計算し、そのインピーダンス位相角の値を用いて評価部位の近くの病理を評価する工程とを含む、
生物中の病理評価のためにインピーダンス位相角を測定する方法。
【請求項37】
第1と第2の電極間に第2の電流を注入する工程と、第3と第4の電極間の第2の電位差を測定する工程と、第2の電位差および第2の電流注入に基づいて第2のインピーダンス位相角の値を計算する工程と、第1および第2のインピーダンス位相角の値を用いて評価部位の近くの病理を評価する工程とをさらに含む、第1と第2の電流は異なる周波数の交流であり、かつ第2の電位差は第1と第2の電極間に注入された第2の電流に起因する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
第1および第2のインピーダンス位相角の値に基づいて病理を分類する工程をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
第1および第2のインピーダンス位相角の値に基づいて2つまたはそれ以上の病理のインピーダンスへの影響を識別する、請求項37記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−529678(P2008−529678A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555322(P2007−555322)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/005060
【国際公開番号】WO2006/088805
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507274825)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (1)
【Fターム(参考)】