説明

収穫物被覆シートおよび収穫物の保管方法

【課題】 本発明は、遮光性、防水性、通気性に優れ、収穫物被覆資材として、収穫物の商品価値、品質を維持することが可能なシートを提供する。
【解決手段】 保管や運搬中の収穫物を覆うためのシートであって、一方の面が白色を呈し、他面が黒色を呈している微多孔フィルムによって構成している収穫物被覆シート。また、保管中や運搬中の収穫物に対して黒色を呈する面側が収穫物と対向するように、前記の収穫物被覆シートを被覆する収穫物の保管方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫したジャガイモ、サツマイモ、甜菜などの根菜、葉菜、果菜等(収穫物)を野積み、運搬、仮貯蔵する際に、これらの収穫物を覆うための収穫物被覆シートおよび収穫物の保管方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収穫したジャガイモ、サツマイモ、甜菜などの根菜、葉菜、果菜等の収穫物を野積み、運搬、仮貯蔵する際には、遮光のため、収穫物をシートで覆ったり袋に収納したりしている。この際、被覆シートとしては、合成樹脂製のいわゆるビニールシートを用いている。また、収納用としては、麻袋等の布製の袋などが使用されている。しかしながら、ビニールシートは、防水性に優れるため降雨等による水の浸入を防止できるものの、収穫物より生じる水蒸気や二酸化炭素などのガスを放出することができないため、これらがビニールシート内に充満し、収穫物を腐らせる原因となる。また、ビニールシートは、遮光が十分でないためにジャガイモなどの場合、芽が出てきたり、緑色に変色したりして、商品価値が下がるという問題があった。一方、麻袋の場合は、防水性が十分でないために、雨水が浸入して商品価値が低下するという問題があり、また、遮光が十分でないため、ビニールシートと同様で収穫物より芽が出る等の商品価値が下がるという問題がある。
【0003】
また、遮光性を向上させるために、被覆シートを黒色もしくはそれに準ずる暗色にしたものも用いられているが、日光が当たることによりシート内の温度が上昇し、これによって収穫物の商品価値が下がるという問題がある。
【0004】
本出願人は、防水性、通気性に優れ、収穫物の商品価値、品質を維持することが可能な収穫物被覆シートを提供しようと、微多孔性フィルムの両面にスパンボンド不織布を配置させた収穫物被覆シートを提案している。
【特許文献1】特開2006−88368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、遮水性、透湿性を兼ね備えており、かつ被覆下の温度上昇を抑え、保管中や運搬中の収穫物の商品価値、品質を維持しうるシートを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、保管や運搬中の収穫物を覆うためのシートであって、一方の面が白色を呈し、他面が黒色を呈している微多孔フィルムによって構成していることを特徴とする収穫物被覆シートを要旨とするものである。
【0008】
また、保管中や運搬中の収穫物に対して黒色を呈する面側が収穫物と対向するように、前記収穫物被覆シートを被覆することを特徴とする収穫物の保管方法を要旨とするものである。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の収穫物被覆シート(以下、被覆シートもしくは単にシートということもある。)は、一方の面が白色を呈し、他方が黒色を呈している微多孔フィルムによって構成される。白色の面は、太陽光を反射し被覆下における温度上昇を抑える働きがあり、黒色の面は、この面にて覆われることにより暗い状況下をつくり、収穫物の品質低下を防ぐ働きをすると考える。
【0010】
微多孔性フィルムは、気体、水蒸気等は通すが、水は通さない程度の小孔を多数有する微多孔構造を有するものである。例えば、無機充填剤、有機充填剤などを含有するフィルムより該充填剤を溶剤で溶出して製造する微多孔性フィルムや、無機充填剤、有機充填剤を含有する重合体からなるシートを少なくとも1軸方向に延伸して微多孔構造を形成させて得る微多孔性フィルム等が挙げられる。また、微多孔性フィルムの素材としては、汎用性の高いポリエチレン製の微多孔性フィルムを用いることが好ましい。
【0011】
微多孔性フィルムの厚みは、40〜200μmが好ましく、より好ましくは60〜100μmの範囲である。微多孔性フィルムの厚みが40μm未満であると表裏を白黒とする際に添加する顔料の量が少ないと充分な白黒とならず、充分な白黒が得られる量を添加すると製膜の操業性が低下し好ましくない。一方厚みが200μmを超えると質量が大きくなるため扱いづらくなり、また、コスト的にも不利である。また、微多孔フィルムの透湿度は、3000〜8000g/m2・24時間の範囲のものが好ましい。この特性を満足するためには、微多孔フィルムは、平均径が0.1〜50μmの微細孔を有し、空隙率が10〜60%程度であることが望ましい。この微多孔性フィルムのフィルム厚み、透湿度、保管対象の収穫物および保管期間、保管方法等に応じて適宜決定すればよい。
【0012】
本発明の被覆シートは、一方の面が白色を呈し、他方が黒色を呈している。白色を呈する面側を色彩色差計で測定したL値が、80以上が好ましい。また、黒色を呈する面側を色彩色差計で測定したL値が、30以下であることが好ましい。被覆シートのL値については、後述する保護層等を積層させた場合も同様に、積層させた状態にて特定のL値を有することをいう。
【0013】
一方の面が白色を呈し、他方が黒色を呈している微多孔フィルムとしては、例えば、酸化チタン等の白色顔料を含む微多孔性フィルムと、カーボンブラック等の黒色顔料を含む微多孔性フィルムとを、貼り合わせることにより得ることができる。また、複層の環状ダイにより積層共押出し、1軸または2軸に延伸する方法により得ることができる。例えば、2層の環状ダイより白/黒の層構成になるようにそれぞれの顔料を含む樹脂を供給するとよい。また、3層の環状ダイにおいて白/白/黒の層構成になるようにそれぞれの顔料を含む樹脂を供給しするとよい。供給した樹脂は、ダイより積層共押出しされて、1軸または2軸にて延伸し、1枚の微多孔フィルムにおいて、片面が白色、他面が黒色を呈する微多孔フィルムを得ることができる。
【0014】
本発明の被覆シートは、黒色を呈する面側に繊維からなる保護層が設けられていることが好ましい。繊維からなる保護層を設けることにより、微多孔フィルムが直に収穫物と接することを防止し、微多孔フィルムおよび収穫物の両方を保護する働きも担っている。例えば、微多孔フィルムが結露した場合に、収穫物に水滴が付着することを防止することができる。また、微多孔フィルムと収穫物とが接することにより、収穫物の品質が低下することを防ぐことができる。繊維からなる保護層が有する色については、微多孔フィルムと同様に、黒色もしくはそれに準じた暗色に着色されているものが好ましい。繊維からなる保護層としては、粗目の織編物や低目付の不織布が挙げられる。中でも、スパンボンド不織布を好ましく用いることができる。スパンボンド不織布は、繊維がばらばらに堆積したものであるので、目付が小さいものであっても面的に一様に繊維が存在するため、収穫物が微多孔フィルムと接触することを防ぐことができる。また、スパンボンド不織布は柔軟性を有するため、収穫物を保護する役割に優れる。また、コスト的や積層の加工性の点からも好ましいからである。スパンボンド不織布を用いる場合、その目付は、10〜80g/m2程度がよい。繊維層を構成する成分は、特に限定されず、繊維形成性を有する熱可塑性重合体をもちいればよい。例えば、ポリエステル系重合体、ポリオレフィン系重合体、ポリアミド系重合体等である。繊維の形態は、単相形態のものであっても複数の重合体からなる複合形態のものであってもよい。中でも、微多孔フィルムを構成する成分よりも、融点が低い成分が繊維表面に配された繊維を用いることが好ましい。微多孔フィルムと保護層とを積層する際、熱接着によって、微孔質フィルムの透湿性を阻害せずに容易に積層できるためである。なお、繊維を構成する成分には、必要に応じて、艶消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤等の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加することができる。
【0015】
本発明の被覆シートには、補強層を設けてもよい。補強層は、微多孔フィルムの白色を呈する面側に配してもよく、また、黒色を呈する面側に配してもよい。上記した保護層を設けてなるものであれば、例えば、補強層/微多孔フィルムの白色側/微多孔フィルムの黒色側/保護層の順に配しても、また、微多孔フィルムの白色側/微多孔フィルムの黒色側/補強層/保護層の順に配してもよい。白色を呈する面に配すると、微多孔フィルムの耐候劣化を防ぐことができるため好ましい。なお、白色を呈する面に配する場合は、太陽光の反射を著しく阻害しないために、補強層が有する色は、白もしくは白に準じた明色を有するものか、あるいは透明性の高いものがよい。補強層としては、前述した繊維層に使用するものと同様の繊維からなる粗目の織編物や不織布を用いてもよい。また、フィルムスリットヤーンからなる粗めの織物(いわゆる、ワリフ)を用いてもよい。なお、微多孔フィルムに上記保護層のみを設けた場合、この保護層が補強層としての役割も担う。
【0016】
本発明の被覆シートは、遮光率が95%以上であることが好ましい。遮光率が95%以上とすることにより、長期保管の場合でも、太陽光を充分に遮断することができ、収穫物が発芽したり、変色したりすることにより商品価値を下がることを防ぐことができる。遮光率は97%以上がより好ましく、より好ましくは遮光率99%以上である。
【0017】
本発明の収穫物被覆シートは、保管中や運搬中の収穫物に対して黒色を呈する面側が収穫物と対向するように被覆して収穫物を保管する。白色の面側を外気側に位置させることにより、照射される太陽光等を反射し被覆下における温度上昇を抑えるためである。また、黒色の面側を収穫物が対向するように位置させることにより暗い状況下をつくり、収穫物の品質低下を防ぐためである。これを、逆に位置するように配置(白色側が収穫物に対向するように配置)した場合、黒色の面側が外気側となり、透湿性及び遮光性は得られるものの、黒色であるため太陽光を吸収して、被覆内部の温度が上昇してしまい、収穫物の鮮度低下等により品質が低下する傾向となる。
【0018】
本発明の収穫物被覆シートは、上記使用方法にて使用するものであるが、その際には、布帛の形態で収穫物に被覆してもよく、また、コンテナ等の被覆するものに応じた形状に縫製等して、被覆カバーとして用いてもよい。また、袋状に縫製等して使用してもよい。また、使用の仕方に応じて、より強度を要する場合は、本発明の被覆シートの端部周辺を他の布等により補強をしたり、ハトメ処理等を行ってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の収穫物被覆シートは、一方の面が白色を呈し、他面が黒色を呈している微多孔フィルムによって構成される。そして、使用(保管中や運搬中)においては、収穫物に対して黒色を呈する面側が収穫物と対向するように被覆する。したがって、本発明の収穫物被覆シートを被覆することにより、被覆下における温度上昇を抑え、保管中や運搬中の収穫物の商品価値、品質を維持しうる状態にて市場に出すことが可能となる。
【実施例】
【0020】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また、実施例における各特性値は、以下のようにして求めたものである。
(1)ポリエステルの極限粘度〔η〕:フェノールと四塩化エタンとの等質量混合溶媒100ccに試料0.5gを溶解し、温度20℃の条件で測定した。
(2)融点(℃):パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7型を用い、昇温速度20℃/分で測定した。
(3)ポリエチレンのメルトフローレート(g/10分):JIS K 6922に記載の方法により、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
(4)L値:色彩色差計(MINOLTA社製 CR−310)を用い、データ出力としてMINOLTA社製 データプロセッサー DP−300を用い、白色校正板にて校正した後に測定した。なお、測定箇所を変えて3箇所測定し、得られた値の平均値をL値とした。
(5)透湿度:JIS Z 0208に準じて測定した。
(6)耐水圧:JIS L 1092 低水圧法に準じて測定した。
(7)遮光率:JIS L 1906 遮光性に準じて測定した。なお、照度は2000lxとした。
【0021】
実施例1
微多孔フィルムとして、片面が白色を呈し、他面が黒色を呈する透湿性の微多孔フィルム(厚み75μm 大倉工業社製)を用意した。
【0022】
保護層として、芯がポリエチレンテレフタレート(融点260℃)、鞘がポリエチレン(融点104℃)芯鞘型複合繊維からなる黒色原着のスパンボンド不織布(目付50g/m2 ユニチカ製「エルベスII(登録商標) 品番T0503/BEO」)と用意した。
【0023】
補強層としては、ワリフ(積水フィルム社製 粗布HO77)を用意した。
【0024】
微多孔フィルムの黒色の面側に保護層を配置し、微多孔フィルムの白色面側に補強層を配置し、保護層/微多孔フィルム/補強層の順に積層し、一対のカレンダーローラーにS字掛けに通して、両ロールの表面温度を120℃、線圧2kg/cmの条件で熱処理して積層一体化し、本発明の被覆シートを得た。得られた被覆シートは、白色の面側のL値が97.1、黒色の面側のL値が27.9、透湿度4473g/m2・24時間、耐水圧200cm以上、遮光率100%であった。また、柔軟性に優れたシートであった。
【0025】
比較例1
比較例として、市販の表裏共に黒色を呈する積層シート(スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布の積層品であって、目付160g/m2)を用意した。この積層シートは、L値が一方の面が25.4、他方の面が21.5、透湿度7672g/m2・24時間、耐水圧72cm、遮光率100%であった。
【0026】
得られた実施例1のシートと比較例1のシートを用い、下記試験を行い、被覆下(収穫物内)の温度状況を測定した。すなわち、内寸が455mm×344mm×125mmで厚みが20mmの発泡スチロール2個を用意し、それぞれの発泡スチロール内にLサイズの馬鈴薯をそれぞれ15個入れ、15個の馬鈴薯の内2個の馬鈴薯内にボタン型温度計を埋め込み設置した。一方の発泡スチロールを実施例1の被覆シートで覆い、他方の発泡スチロールは比較例1の積層シートで覆い、屋外に設置し(午前10時)、午後2時に温度を測定し、これを収穫物内温度(℃)とした。なお、測定した午後2時の外気温は、22.5℃、気候は晴れであった。その結果、実施例1の収穫物内温度は、20℃と22.5℃を示し、被覆部内の温度は外気温と同等もしくはそれよりも低温に保たれていた。したがって、品質を維持できることが期待できるものであった。一方、比較例の収穫物内部温度は、29℃と27℃を示し、外気温よりもはるかに高い温度であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保管や運搬中の収穫物を覆うためのシートであって、一方の面が白色を呈し、他面が黒色を呈している微多孔フィルムによって構成していることを特徴とする収穫物被覆シート。
【請求項2】
請求項1記載の微多孔フィルムの黒色を呈する面側に繊維からなる保護層が設けられていることを特徴とする収穫物被覆シート。
【請求項3】
保護層がスパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1または2記載の収穫物被覆シート。
【請求項4】
収穫物被覆シートにおいて、白色を呈する面側のL値が80以上、黒色を呈する面側のL値が30以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の収穫物被覆シート。
【請求項5】
保管中や運搬中の収穫物に対して黒色を呈する面側が収穫物と対向するように、請求項1〜4のいずれかに記載の収穫物被覆シートを被覆することを特徴とする収穫物の保管方法。

【公開番号】特開2008−254790(P2008−254790A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100361(P2007−100361)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】