説明

収納ケース、装置システム

【課題】可搬型放射線撮影装置を訪問先に持ち出して使用する場合に、搬送中に可搬型放射線撮影装置の温度が予め決められた温度から外れることを抑制することができる収納ケース、装置システムを得る。
【解決手段】個人宅又は介護施設へ可搬型放射線撮影装置10及び可搬型X線源70を持ち運ぶ際に、外気温度が高い場合には、搬送中に、収納ケース66に収納された可搬型放射線撮影装置10の温度が高温となり、可搬型放射線撮影装置10の温度が予め決められた温度から外れることが考えられる。しかし、収納ケース66に設けられた制御部が、温度センサ90、94によって検出された可搬型放射線撮影装置10の温度に基づいて冷却部材を稼動させ、温調パイプ102内を流れる液体を冷却する。これにより、搬送中に可搬型放射線撮影装置10の温度が予め決められた温度から外れること(温度ムラが生じること)を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型放射線撮影装置を収納可能な収納部を備える収納ケースと、装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可搬型の電子機器(電子カセッテ)を収納可能に形成された収納部を備える収納装置が記載されている。そして、この収納装置の収納部に可搬型の電子機器を収納させると、可搬型の電子機器を冷却できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−290138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、例えば、個人宅訪問又は介護施設訪問等での撮影により、訪問先に可搬型放射線撮影装置(電子カセッテ)を持ち出して使用する場合には、外気の温度によっては、搬送中に可搬型放射線撮影装置の温度が予め決められた温度から外れることが考えられる。
【0005】
本発明の課題は、可搬型放射線撮影装置を訪問先に持ち出して使用する場合に、搬送中に可搬型放射線撮影装置の温度が予め決められた温度から外れることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る収納ケースは、照射された放射線により現される放射線画像を記録する可搬型放射線撮影装置を収納可能な第1収納部と、前記第1収納部に収納された前記可搬型放射線撮影装置の温度を検出する温度センサと、前記温度センサの検出結果に基づいて前記可搬型放射線撮影装置の温度を制御する温度制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、持ち運び可能な可搬型放射線撮影装置の収納ケースには、可搬型放射線撮影装置を収納可能な第1収納部が設けられている。そして、温度センサが、第1収納部に収納された可搬型放射線撮影装置の温度を検出し、この検出結果に基づいて、温度制御手段が、可搬型放射線撮影装置の温度を制御する。
【0008】
このように、可搬型放射線撮影装置の温度を制御することで、収納ケースに収納されて持ち運ばれる可搬型放射線撮影装置の温度が予め決められた範囲の温度となる。これにより、搬送中に可搬型放射線撮影装置の温度が予め決められた温度から外れること(温度ムラが生じること)を抑制することができる。
【0009】
本発明の請求項2に係る収納ケースは、請求項1に記載において、電力を供給可能な充電池が前記収納ケースに設けられ、前記温度制御手段は、前記充電池から電力を供給されて稼動することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、電力を供給可能な充電池が収納ケースに設けられており、この充電池が温度制御手段に電力を供給し、温度制御手段が稼動する。
【0011】
このように、温度制御手段に電力を供給する充電池を設けることで、簡易な構成での搬送中の温度制御手段を稼動させ、搬送中に可搬型放射線撮影装置の温度が予め決められた温度から外れること(温度ムラが生じること)を抑制することができる。
【0012】
本発明の請求項3に係る収納ケースは、請求項1又は2に記載において、前記温度センサは、複数個設けられ、前記可搬型放射線撮影装置の中央側と、隅側との温度を測定可能に配置されることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、温度センサは、可搬型放射線撮影装置の中央側と、可搬型放射線撮影装置の隅側との温度を測定可能に配置されている。このように温度センサを配置することで、可搬型放射線撮影装置の一部(例えば隅部)のみの温度に基づいて、温度制御手段を稼動させる場合と比して、効果的に可搬型放射線撮影装置に温度ムラが生じるのを防止することができる。
【0014】
本発明の請求項4に係る収納ケースは、請求項1〜3の何れか1項に記載において、前記温度制御手段は、前記可搬型放射線撮影装置を冷却する冷却部材であることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、外気温度が高い場合には、冷却部材を稼動させることで、収納ケースに収納されて持ち運ばれる可搬型放射線撮影装置の温度を予め決められた範囲にすることができる。
【0016】
本発明の請求項5に係る収納ケースは、請求項1〜3の何れか1項に記載において、前記温度制御手段は、前記可搬型放射線撮影装置を加熱する加熱部材であることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、外気温度が低い場合には、加熱部材を稼動させることで、収納ケースに収納されて持ち運ばれる可搬型放射線撮影装置の温度を予め決められた範囲にすることができる。
【0018】
本発明の請求項6に係る収納ケースは、請求項1〜5の何れか1項に記載において、前記可搬型放射線撮影装置に放射線を照射する可搬型X線源を収納可能な第2収納部が設けられ、前記第1収納部と前記第2収納部との間には、熱の伝達を抑制する断熱部材が設けられることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、可搬型X線源を稼動させて可搬型放射線撮影装置に放射線を照射すと、可搬型X線源は発熱する。そして、可搬型X線源が冷めないうちに、可搬型X線源を第2収納部に収納した場合でも、第1収納部と第2収納部との間に設けられている断熱部材が、可搬型X線源が生じた熱を第1収納部に収納された可搬型放射線撮影装置に伝達されるのを抑制する。
【0020】
これにより、可搬型放射線撮影装置に温度ムラが生じるのを防止することができる。
【0021】
本発明の請求項7に係る装置システムは、請求項1〜6の何れか1項に記載された収納ケースと、前記収納ケースの第1収納部に収納される可搬型放射線撮影装置と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、装置システムには、請求項1〜6の何れか1項に記載された収納ケースが設けられている。このため、搬送中に可搬型放射線撮影装置の温度が予め決められた温度から外れること(温度ムラが生じること)を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、可搬型放射線撮影装置を訪問先に持ち出して使用する場合に、搬送中に可搬型放射線撮影装置の温度が予め決められた温度から外れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る収納ケース及び装置システムを示した斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る収納ケースに用いられる温度制御装置を示した斜視図である。
【図3】(A)(B)本発明の実施形態に係る収納ケースを示した斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る装置システムに用いられる可搬型放射線撮影装置及び可搬型X線源の使用状況を示した斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る装置システムに用いられる可搬型X線源を示した斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る可搬型放射線撮影装置を示した回路図である。
【図7】本発明の実施形態に係る可搬型放射線撮影装置を示した平面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る可搬型放射線撮影装置を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態に係る装置システム64、及び収納ケース66の一例について図1〜図8に従って説明する。なお、図中の矢印UPは、鉛直方向上方を示す。
【0026】
(全体構成)
図6に示されるように、装置システム64に設けられた可搬型放射線撮影装置10(所謂電子カセッテ)の筐体18の内部には、放射線撮像素子12が設けられている。この放射線撮像素子12は、上部電極と半導体層と下部電極を備え、放射線撮像素子12には、光を受けて電荷を蓄積するセンサ部14と、センサ部14に蓄積された電荷を読み出すためのTFTスイッチ16と、を含んで構成される画素20が2次元状に多数設けられている。
【0027】
また、放射線撮像素子12には、前述したTFTスイッチ16をON/OFFするための複数の走査配線22と、センサ部14に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線24と、が互いに交差して設けられている。
【0028】
本実施形態に係る放射線撮像素子12は、表面にGOS又はCsI等からなるシンチレータ30(図7、図8参照)が貼り付けられている。シンチレータ30は、発生した光の外部への漏れだしを防止するため、貼り付けられた放射線撮像素子12に対する反対側の面に発生した光を遮光する遮光体30A(図8参照)を有している。
【0029】
放射線撮像素子12では、照射されたX線などの放射線はシンチレータ30で光に変換され、センサ部14に照射される。センサ部14は、シンチレータ30から照射された光を受けて電荷を蓄積するようになっている。
【0030】
そして、各信号配線24には、信号配線24に接続された何れかのTFTスイッチ16がONされることによりセンサ部14に蓄積された電荷量に応じて放射線画像を示す電気信号(画像信号)が流れるようになっている。
【0031】
また、放射線撮像素子12の信号配線方向の一端側には、結線用のコネクタ32が複数個並んで設けられ、走査配線方向の一端側には、コネクタ34が複数個並んで設けられている。そして、各信号配線24はコネクタ32に接続され、各走査配線22はコネクタ34に接続されている。
【0032】
さらに、本実施の形態では、放射線撮像素子12による放射線検出の制御、及び各信号配線24に流れる電気信号に対する信号処理の制御を行う制御部36が設けられ、制御部36は、信号検出回路42と、スキャン信号制御回路40と、を備えている。
【0033】
また、信号検出回路42には、複数個のコネクタ46が設けられており、このコネクタ46には、フレキシブルケーブル44の一端が電気的に接続されている。さらに、このフレキシブルケーブル44の他端は、コネクタ32に接続されており、信号配線24毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路を内蔵している。この構成により、信号検出回路42は、各信号配線24より入力される電気信号を増幅回路により増幅して検出することで、画像を構成する各画素20の情報として、各センサ部14に蓄積された電荷量を検出するようになっている。
【0034】
一方、スキャン信号制御回路40には、コネクタ48が設けられており、このコネクタ48には、フレキシブルケーブル52の一端が電気的に接続されている。さらに、このフレキシブルケーブル52の他端は、コネクタ34に接続されており、スキャン信号制御回路40は各走査配線22にTFTスイッチ16をON/OFFするための制御信号を出力するようになっている。
【0035】
また、図8に示されるように、本実施の形態に係る可搬型放射線撮影装置10は、照射された放射線により現される放射線画像を撮影する撮影部60を有している。この撮影部60は、平板状に形成された支持基板62の一方の面に放射線撮像素子12が配置され(図7参照)、支持基板62の他方の面に放射線撮像素子12に対応する信号検出回路42及びスキャン信号制御回路40が配置されている。
【0036】
これに対し、図5に示されるように、可搬型放射線撮影装置10に放射線を照射する可搬型X線源70には、X線を照射する照射窓72と、コリメータを調整する調整ダイヤル74と、可搬型X線源70を持ち運ぶときに把持する把持部76とが設けられている。
【0037】
また、図1に示されるように、装置システム64には、前述した可搬型放射線撮影装置10及び可搬型X線源70の他に、個人宅訪問や介護施設訪問によって診察をする際に、可搬型放射線撮影装置10及び可搬型X線源70を収納して持ち運ぶことを可能とする収納ケース66が設けられている。なお、収納ケース66については、詳細を後述する。
【0038】
次ぎに、本実施形態に係る可搬型放射線撮影装置10の動作原理について説明する。
【0039】
図4に示されるように、収納ケース66(図1参照)に収納されて個人宅や介護施設に持ち運ばれた可搬型放射線撮影装置10は、放射線画像の撮影時において、放射線を発生させる可搬型X線源70と間隔を空けて配置される。詳細には、可搬型X線源70の把持部76が、個人宅又は介護施設にて簡易に組み立てられたアングル78の引掛け部80に引っ掛けられることで、可搬型放射線撮影装置10と可搬型X線源70とは垂直方向に間隔を空けて配置される。
【0040】
また、このときの可搬型X線源70と可搬型放射線撮影装置10との間は、被写体82が位置するための撮影位置とされており、放射線画像の撮影が指示されると、可搬型X線源70は予め与えられた撮影条件等に応じた放射線量の放射線を射出する。そして、可搬型X線源70から射出された放射線は、撮影位置に位置している被写体82を透過することで画像情報を担持した後に可搬型放射線撮影装置10に照射される。
【0041】
図8に示されるように、放射線撮像素子12では、照射されたX線などの放射線はシンチレータ30で光に変換され、センサ部14(図6参照)に照射される。センサ部14は、シンチレータ30から照射された光を受けて電荷を蓄積する。
【0042】
図6に示されるように、画像読出時には、スキャン信号制御回路40から放射線撮像素子12のTFTスイッチ16のゲート電極に走査配線22を介して順次ON信号(+10〜20V)が印加される。これにより、放射線撮像素子12のTFTスイッチ16が順次ONされることによりセンサ部14に蓄積された電荷量に応じた電気信号が信号配線24に流れ出す。信号検出回路42は、放射線撮像素子12の信号配線24に流れ出した電気信号に基づいて各センサ部14に蓄積された電荷量を、画像を構成する各画素20の情報として検出する。これにより、放射線撮像素子12に照射された放射線により示される画像を示す画像情報を得る。
【0043】
(要部構成)
次ぎに、可搬型放射線撮影装置10及び可搬型X線源70を収納して持ち運ぶことを可能とする収納ケース66について説明する。
【0044】
図1に示されるように、収納ケース66には、ケース本体66Aと、ケース本体66Aの内部を開放する蓋部66Bと、ケース本体66Aの天板に設けられた把持可能な把持部66Cと、ケース本体66Aの底板に設けられた従動コロ66Dとが設けられている。
【0045】
さらに、ケース本体66Aには、可搬型放射線撮影装置10を収納可能な凹状の第1収納部84が設けられ、この第1収納部84の隣りには、可搬型X線源70を収納可能な凹状の第2収納部86が設けられている。そして、第1収納部84と第2収納部86との間には、第1収納部84と第2収納部86との間で熱が伝達するのを抑制する断熱部材88が設けられている。
【0046】
また、第1収納部84の底面84Aには、第1収納部84に収納された可搬型放射線撮影装置10の一方の面の温度を検出する温度センサ90が、複数個(本実施形態では5個)設けられている。詳細には、この温度センサ90は、収納された可搬型放射線撮影装置10の一方の面の中央側と、隅側との温度を測定可能なように、底面84Aの隅側と中央側に配置されている。
【0047】
さらに、蓋部66Bを閉じた状態で、第1収納部84に収納された可搬型放射線撮影装置10の他方の面と対向する対向面92には、第1収納部84に収納された可搬型放射線撮影装置10の他方の面の温度を検出する温度センサ94が、複数個(本実施形態では5個)設けられている。詳細には、この温度センサ94は、収納された可搬型放射線撮影装置10の他方の面の中央側と、隅側との温度を測定可能なように、対向面92の隅側と中央側に配置されている。
【0048】
さらに、対向面92には、可搬型放射線撮影装置10の温度を制御する温度制御手段としての温度制御装置100を構成する温調パイプ102が設けられている。この温調パイプ102は、可搬型放射線撮影装置10の他方の面の温度を均一にするように、温度センサ94を避けて対向面92全体をカバーするように配置されており、温調パイプ102の内部には、液体が流れるようになっている。
【0049】
図2に示されるように、温調パイプ102の裏面側(蓋部66Bの内部)には、複数個の冷却部材106が設けられており、冷却部材106と温調パイプ102との間には、連結パイプ108が設けられている。これより、冷却部材106を稼動させることで、温調パイプ102の内部を流れる液体が冷却されるようになっている。なお、この冷却部材106としては、例えば、ヒートシンク、ファン、ペルチェ素子、液冷用ラジエータ、冷凍機等を用いることができる。
【0050】
さらに、冷却部材106の稼動を制御する制御部114が設けられており、この制御部114が、温度センサ90及び温度センサ94が検出した可搬型放射線撮影装置10の温度に基づいて冷却部材106を稼動させるようになっている。
【0051】
つまり、前述した温度制御装置100は、制御部114と、冷却部材106と、温調パイプ102と、連結パイプ108とを含んで構成されている。
【0052】
一方、図1に示されるように、収納ケース66の蓋部66Bの内部には、充電池110が設けられており、この充電池110は蓋部66Bに形成された電池収納部112に着脱可能とされている。そして、前述した温度制御装置100は、この充電池110から電力が供給されて稼動するようになっている。
【0053】
さらに、蓋部66Bには、巻取り可能な電源ケーブル116が設けられており、この電源ケーブル116を電力供給可能なコンセント(例えば壁コンセント)に接続させることで、蓋部66Bに設けられた充電回路118を介して電池収納部112に収納された充電池110が充電されるようになっている。
【0054】
(作用・効果)
次ぎに、収納ケース66及び装置システム64の作用について説明する。
【0055】
図1に示されるように、個人宅訪問又は介護施設訪問等での撮影により、訪問先に持ち出して可搬型放射線撮影装置10及び可搬型X線源70を使用する場合には、可搬型放射線撮影装置10及び可搬型X線源70を収納ケース66の第1収納部84及び第2収納部86に収納する。なお、蓋部66Bの電池収納部112に収納された充電池110は予め電源ケーブル116及び充電回路118を用いて充電されている。
【0056】
図3(A)に示されるように、収納ケース66の蓋部66Bを閉じて、把持部66Cを把持して、従動コロ66Dを転がしながら収納ケース66を搬送し、個人宅又は介護施設へ可搬型放射線撮影装置10及び可搬型X線源70を持ち運ぶ。
【0057】
外気温度が高い場合には、搬送中に、収納ケース66に収納された可搬型放射線撮影装置10の温度が高温となり、可搬型放射線撮影装置10の温度が予め決められた温度から外れることが考えられる。
【0058】
しかし、図1、図2に示されるように、収納ケース66に設けられた制御部114が、温度センサ90、94によって検出された可搬型放射線撮影装置10の温度に基づいて冷却部材106を稼動させ、温調パイプ102内を流れる液体を冷却する。
【0059】
温調パイプ102内を流れる液体を冷却することで、高温となった可搬型放射線撮影装置10が冷やされる。そして、制御部114が温度センサ90、94を介してモニタリングした可搬型放射線撮影装置10の各部の温度が決められた範囲の温度(例えば、摂氏18度〜27度)になると、制御部114が冷却部材106の稼動を停止させる。
【0060】
一方、制御部114が温度センサ90、94を介してモニタリングした可搬型放射線撮影装置10の各部の温度が決められた範囲の温度(例えば、摂氏18度〜27度)から外れると、制御部114が冷却部材106の稼動を再開させる。
【0061】
また、図3(B)に示されるように、個人宅又は介護施設等に到着して、可搬型放射線撮影装置10及び可搬型X線源70を使用している間に、電源ケーブル116をコンセントに差し込むことで、蓋部66Bに収納された充電池110が充電される。
【0062】
以上説明したように、可搬型放射線撮影装置10の温度を制御することで、搬送中に可搬型放射線撮影装置10の温度が予め決められた温度から外れること(温度ムラが生じること)を抑制することができる。
【0063】
また、温度制御装置100に電力を供給する充電池110を蓋部66Bに設けることで、簡易な構成で温度制御装置100を稼動させ、搬送中に可搬型放射線撮影装置10に温度ムラが生じるのを抑制することができる。
【0064】
また、可搬型放射線撮影装置10の温度ムラを抑制するため、可搬型放射線撮影装置10によって撮影される画像の濃度ムラを抑制することができる。
【0065】
また、搬送中に可搬型放射線撮影装置10の温度ムラを抑制するため、個人宅や介護施設等に到着後、可搬型放射線撮影装置10の温度を調整することなく可搬型放射線撮影装置10を使用することができる。
【0066】
また、可搬型放射線撮影装置10に温度制御装置100を設ける必要がないので可搬型放射線撮影装置10を軽量化することができる。
【0067】
また、温度センサ90、94は、可搬型放射線撮影装置10の中央側と隅側との温度を測定可能に配置されている。これにより、可搬型放射線撮影装置10の一部のみの温度に基づいて、温度制御装置100を稼動させる場合と比して、効果的に可搬型放射線撮影装置10に温度ムラが生じるのを防止することができる。
【0068】
また、可搬型X線源70を稼動させて可搬型放射線撮影装置10に放射線を照射すと、可搬型X線源70は発熱する。そして、可搬型X線源70が冷めないうちに、可搬型X線源70を第2収納部86に収納する場合がる。しかし、このような場合でも第1収納部84と第2収納部86との間に設けられている断熱部材88が、可搬型X線源70によって生じた熱を第1収納部84に収納された可搬型放射線撮影装置10に伝達されるのを抑制することができる。
【0069】
また、収納ケース66に充電池110を充電可能な充電回路118及び電源ケーブル116を設けることで、個人宅又は介護施設等に到着して、可搬型放射線撮影装置10及び可搬型X線源70を使用している間に、電源ケーブル116をコンセントに差し込むことで、充電池110を充電することができる。
【0070】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、温度制御装置100に冷却部材106を用いて、可搬型放射線撮影装置10の温度を調整したが、外気が低い場合には、加熱部材を用いて可搬型放射線撮影装置の温度を調整してもよい。この場合には、加熱部材としてヒータ、パワートランジスタ、ペルチェ素子等を用いることができる。また、ペルチェ素子等を用いて、可搬型放射線撮影装置10の冷却及び加熱を可能としてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、特に言及しなかったが、可搬型放射線撮影装置10及び可搬型X線源70を用いて被写体82を撮影する際には、可搬型放射線撮影装置10及び可搬型X線源70を制御するノート型等のパーソナルコンピュータを用いてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では特に言及しなかったが、収納ケースに通信部を設けて収納ケースを介して病院との双方向通信を行ってもよい。この場合には、収納ケースを介して病院への画像転送が可能であり、病院から収納ケースを介して撮影予約の転送が可能となる。なお、通信部は、無線であってもよく、電話回線を使用した有線であってもよい。また、通信部は、収納ケースに設けられた充電池から電力を供給されてもよく、電源ケーブルを介して電力を供給されてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では特に言及しなかったが、収納ケースにメモリ部を設けて画像や撮影予約を蓄積してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 可搬型放射線撮影装置
64 装置システム
66 収納ケース
70 可搬型X線源
84 第1収納部
86 第2収納部
88 断熱部材
90 温度センサ
94 温度センサ
100 温度制御装置(温度制御手段)
106 冷却部材
110 充電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線により現される放射線画像を記録する可搬型放射線撮影装置を収納可能な第1収納部と、
前記第1収納部に収納された前記可搬型放射線撮影装置の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出結果に基づいて前記可搬型放射線撮影装置の温度を制御する温度制御手段と、
を備えた持ち運び可能な可搬型放射線撮影装置の収納ケース。
【請求項2】
電力を供給可能な充電池が前記収納ケースに設けられ、
前記温度制御手段は、前記充電池から電力を供給されて稼動する請求項1に記載の収納ケース。
【請求項3】
前記温度センサは、複数個設けられ、前記可搬型放射線撮影装置の中央側と、隅側との温度を測定可能に配置される請求項1又は2に記載の収納ケース。
【請求項4】
前記温度制御手段は、前記可搬型放射線撮影装置を冷却する冷却部材である請求項1〜3の何れか1項に記載の収納ケース。
【請求項5】
前記温度制御手段は、前記可搬型放射線撮影装置を加熱する加熱部材である請求項1〜3の何れか1項に記載の収納ケース。
【請求項6】
前記可搬型放射線撮影装置に放射線を照射する可搬型X線源を収納可能な第2収納部が設けられ、
前記第1収納部と前記第2収納部との間には、熱の伝達を抑制する断熱部材が設けられる請求項1〜5の何れか1項に記載された収納ケース。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載された収納ケースと、
前記収納ケースの第1収納部に収納される可搬型放射線撮影装置と、
を備えた装置システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−229665(P2011−229665A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102452(P2010−102452)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】