説明

収納ボックスのヒンジ構造

【課題】蓋とグローボックスを回動可能に枢支するヒンジ構造では、金属製のヒンジピンを用いたり、一体的に形成した軸と軸受を特定の角度で嵌合させるといった方法が取られるが、それぞれ個別に部品が必要であったり、組み付け時の蓋とボックスの角度が制限されるなどの課題があった。
【解決手段】ボックス1側と蓋2側とにヒンジ3の軸31、軸受32を持ち、軸1は、両側支持壁4、5間で途中の分断端間に隙間Sを有して設けられ、軸受32は、隙間Sに蓋2の組み付け方向に通過させて軸受孔32aを軸31に軸直角方向から嵌め合わせる通過側周壁32bと、通過側周壁より幅の広い反通過側周壁32cを有し、軸31の各分断端面、軸受32の通過側周壁32bの両側面一方に、通過側周壁32bが隙間Sを押し広げながら通過でき、外れ方向側には係止代Tを有して軸31で係止されるための、テーパ面または曲面とした案内面33を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のインストルメントパネルなどに設けられる収納ボックスのヒンジ構造に関し、詳しくは、ボックス側と蓋側との、一方にヒンジの軸を、他方にヒンジの軸受を、有した収納ボックスのヒンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示すように、ボックスにねじ止めするヒンジカバーaと蓋インナbとを金属製のヒンジピンcで連結するヒンジ構造が知られている。このヒンジピンcは、周壁の周方向1箇所に軸線方向の切り離し部dを有したパイプ構造をなしている。蓋インナbはヒンジカバーaの連結部に嵌合し、蓋インナbの連結部gとヒンジカバーaの連結孔fにヒンジピンcが圧入されることで、蓋インナbはガタツキなく回転させられる程度の嵌め合いで固定される。なお、蓋インナbは、表側から蓋アウタhを嵌め合わせて内装される。
【0003】
また、特許文献1は、グローブボックスのボックス側に設けた軸受に相当する保持部と、インストルメントパネルの側に設けた支軸との軸直角方向からの嵌め合わせによって、グローブボックスを着脱できるように組み付けるヒンジ構造を開示している。この軸直角方向からの嵌め合わせのために、前記保持部にその周方向一部を直径未満の幅で開放する入口部を設け、また前記支軸の断面を、前記入口部に出し入れできる狭幅部と、前記入口部に出し入れできない広幅部とを有した小判型断面形状としている。
【0004】
これにより、グローブボックスの入口部をインストルメントパネル側の支軸の狭幅部に対向させて差し込んだ後、グローブボックスを閉方向に回転させれば、広幅部が入口部に対向して外れない向きとなって組み付けができる。しかし、ボックスを前記軸差し込み時の位置に戻せば取り外せる。
【0005】
また、特許文献2は、インストルメントパネル側に設置した円柱状のピンと、このグローブボックスの蓋側と一体に形成された軸受との軸直角方向からの嵌め合わせによって蓋を着脱できるように組み付けるヒンジ構造を開示している。この軸直角方向からの嵌め合わせのために、前記軸受を筒状のピンの直径と同幅で一方に開放した形状とする。そして、蓋を開閉域外となる所定の向きとしたときには、嵌め合わせ口を通じ、軸受をピンに嵌め合わすことができ、この嵌め合わせ状態で蓋を開閉域に回動させるとピンが嵌め合わせ口から外れない位置関係となり蓋を組み付けられる。しかし、蓋を前記嵌め合わせ時の位置に戻せば取り外せる。
【0006】
さらに、下記の特許文献3は、グローブボックスと、開口の下縁でインストルメントパネルの裏側に位置する下部開口フレームに支持片を介して取り付けられるヒンジピンと、グローブボックスの下縁に形成されヒンジピンに係合されるフック部を有するヒンジブラケットと、フック部の隙間開口より最深部へのヒンジピンの移動を許容した上で最深部からの離脱を阻止するいわゆる返り状などとした爪部材とを具備し、前記ヒンジピンの最深部への移動を許容するためにフック部と爪部材との少なくとも一方が弾性を有するように形成されたものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−95029号公報
【特許文献2】特開2004−149061号公報
【特許文献3】特開2004−262334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図5に示す従来例のように金属製のヒンジピンを用いるのではそれだけでコストアップになる。また、金属製のヒンジピンを圧入する作業は容易でなく、作業効率上コストアップになる。さらに、金属部品の増加はリサイクル性の低下となる。
【0009】
特許文献1、2が開示するヒンジ構造は、金属製のヒンジピンを用いず、グローブボックスと蓋とに一体に形成した軸と軸受とを嵌め合わせるだけのもので、コストの低減は図れる。しかし、軸と軸受が着脱できるボックスや蓋の角度が特定しているので、組み付け時のボックスや蓋の角度が制限される。また、組み付け後、ボックスや蓋が、偶然着脱できる角度に回転するのを防止するストッパやストッパ機構が必要になるので、構造が複雑化し高価になる。
【0010】
特許文献3が開示するヒンジ構造は、フック部に設けた返りなどによって軸の外れ側への乗り越し荷重を上げて、軸がフック部の最深部から不用意に外れるのを防止しているので、組み付け性向上のために組み付け荷重を下げると、外れ荷重が低下してしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、ボックス側、蓋側の一方にヒンジの軸を、他方にヒンジの軸受を持つだけの簡単かつ安価な構造で、蓋の開き角度によらず簡単に嵌め合わせて組み付けられ、かつ、嵌め合わせを解除する角度や位置を持たない収納ボックスのヒンジ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の収納ボックスのヒンジ構造は、
ボックス側と蓋側との、一方にヒンジの軸を、他方にヒンジの軸受を持った収納ボックスのヒンジ構造において、
軸は、両側支持壁間で途中を分断して分断端間に隙間を形成するように設けられ、
軸受は、前記隙間に蓋の組み付け方向に通過させて軸受孔を前記軸に軸直角方向から嵌め合わせるための通過側周壁と、通過側周壁より幅の広い反通過側周壁を有し、
軸の各分断端面と、軸受の通過側周壁の両側面との少なくとも一方に、
通過側周壁が軸の分断端間の隙間を押し広げながら通過でき、
外れ方向側には係止代を有して軸で係止されるための、前記組み付け方向側に先細りとなるテーパ面または曲面とした案内面を形成したことを特徴とする。
【0013】
本発明のヒンジ構造を有する収納ボックスに蓋を取り付ける際は、上記の構成の軸受けの通過側周壁を軸の分断端間の隙間に、蓋の組付け方向に滑り込ませるようにして通過させる。すると、通過側周壁よりも幅が広い反通過側周壁が軸に受止められる形で、軸と軸受孔とが嵌め合わさり、ボックスに蓋を開閉できるように組み付けられる。この時、軸の各分断端面と、軸受の通過側周壁の両側面との、少なくとも一方に形成したテーパ面または曲面が、蓋の組み付け方向に先細りとした案内面の案内になり、スムーズに軸受を軸の分断端間に挿入することができる。
【0014】
また、同時に、軸と軸受孔との嵌め合わせ状態では、通過側周壁は、軸に対する外れ方向側には軸と所定の係止代を有して係止されるので、蓋に外れ方向側の力が働くだけでは、通過側周壁が軸の分断端間の隙間に入り込んで押し広げて外れてしまうことはない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の収納ボックスのヒンジ構造によれば、両側壁間に途中を分断して設けられた軸と、その分断端間の隙間を通過させて軸受孔を軸に嵌め合わせる幅の狭い通過側周壁を有した軸受との簡単かつ安価な組み合わせで、軸受の通過側周壁を、軸の分断端間の隙間に案内面による相互間の案内を伴い滑り込ませるようにして、隙間を押し広げながら蓋の組み付け方向に通過させるだけで、蓋を特別なヒンジ嵌め合わせ位置にするような必要もなく、それら軸と軸受孔とを嵌め合わせてボックスに蓋を手間なく迅速に組み付け開閉させられる。
【0016】
同時に、軸と軸受孔の嵌め合わせ状態では、通過側周壁は外れ方向側には所定の係止代を確保して軸に係止されるので、特別な外れ止めストッパや機構なしに不用意に取り付けた蓋が外れることを確実に防止できる。また、前記係止は、係止代分の引っ掛かり合いによって、組み付けた蓋に外れ方向の力が作用するだけでは外れないが、分断軸端間の隙間を工具などで係止代を無くすまで広げれば係止が解けて取り外せるので、メンテナンスに不便とはならない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る収納ボックスの、ヒンジ構造の1つの具体例を示し、(a)は収納ボックスに蓋をヒンジにより組み付けた状態を示す断面図、(b)は軸と軸受の嵌りあい状態を示す横断平面図、(c)は軸受単独の横断平面図、(d)は軸と軸受の関係を示す斜視図である。
【図2】同ヒンジ構造のヒンジ部を上方から見た横断平面図である。
【図3】同ヒンジ構造のヒンジ部を蔓巻きばね装着部で見た横断平面図である。
【図4】同ヒンジ構造をヒンジの軸を持ったヒンジカバー、ヒンジの軸受を持った蓋インナ、蓋インナを表側から外装する蓋アウタに分解して示す斜視図である。
【図5】従来のヒンジ構造をヒンジの軸を持ったヒンジカバー、ヒンジの軸受を持った蓋インナ、蓋インナを表側から外装する蓋アウタに分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態に係る収納ボックスの、ヒンジ構造の1つの具体例につき、図1〜4を参照して説明し、本発明の理解に供する。従って、以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載事項を限定するものではない。
【0019】
本実施の形態の、収納ボックスのヒンジ構造は、図1(a)に示すように、ボックス1側と蓋2側との、一方にヒンジ3の軸31を、他方にヒンジ3の軸受32を持っている。具体的には、軸31はボックス1側に設け、軸受32は蓋2側に設けているが、逆になっても基本的な作用、効果に変わりはない。
【0020】
図1(b)は、軸と軸受が嵌合した状態を表す横断平面図であり、図1(c)は軸単独の横断平面図である。軸31は、ボックス1に形成された両側支持壁4、5の間に形成された円筒形で、軸受32が挿入されてくる側に直径以下の幅のスリットが、支持壁4、5間に渡って形成されている。また、この円筒形の軸は、両側支持壁4、5の間で分断されており、その分断端間には隙間Sが形成されている。さらに、この隙間Sは、軸受32が挿入される側から貫通する側に幅が狭まるテーパ形状を有している。言い換えると、軸31は樋形状をしている。
【0021】
一方、軸受32は、蓋2側に設けられ、上記の隙間Sを通過する通過側周壁32bと、隙間Sを通過しない反通過側周壁32cを有する。通過側周壁32bと反通過側周壁32cは互いに円筒形状の側面の半分ずつを担当し、それぞれの周壁によって軸31を受け入れる貫通孔である軸受孔32aを形成する。なお、通過側周壁32bは蓋2がボックス1に挿入される方向に形成され、反通過側周壁32cは通過側周壁32bと反対側に、通過側周壁32bを正面視して、通過側周壁32bの両側に位置するように形成される。すなわち、反通過側周壁32cは通過側周壁32bより幅が広い。また、反通過側周壁32cは、その上部に通過側周壁32b側に向かう庇部32eを有する。
【0022】
通過側周壁32bの先端幅B1は軸31の隙間の幅Sより狭く、軸受孔32aの内壁に向かって幅広になる。軸受32が軸31と嵌合した際には、通過側周壁32bは、軸31の軸受32が挿入されたのと反対側の隙間から突出する。ここで、通過側周壁32bの内壁面は軸31の隙間より広く、所定の係止代Tが確保されている。
【0023】
なお、軸31の各分断端面と、軸受32の通過側周壁32bの両側面との少なくとも一方には、通過側周壁32bが軸31の分断端間の隙間Sを押し広げながら通過でき、前記組み付け方向Aと真逆な外れ方向側には、図1(b)に示す所定の係止代Tによって、軸31に係止させられるための組み付け方向Aの側に先細りとなる、テーパ面または曲面とした案内面33が形成されている。本実施の形態では、テーパ面33は、軸受32の通過側周壁32bにも軸31の隙間Sにもどちらにも形成されているが、少なくともいずれか一方にテーパ面若しくは曲面が形成されていればよい。
【0024】
蓋2をボックス1に取り付ける際は、通過側周壁32bは、案内面33に従って、軸31の分断端間の隙間Sに滑り込ませるようにして隙間Sを両側支持壁4、5の撓みを伴い押し広げながら通過させられる。
【0025】
これには、通過側周壁32bの通過側幅B1が軸31の各分断端面の反通過側幅B2よりも小さいことが必要である。前記通過側周壁32bが軸31の分断端間の隙間Sを通過したとき、通過側周壁32bよりも幅が広く、通過側周壁32bと軸受孔32aを分担し合って形成する反通過側周壁32cが、軸31に受止められる。その結果、軸31に軸受孔32aが嵌め合わされ、蓋2がボックス1に開閉できるように組み付けられる。
【0026】
上記のように蓋2とボックス1が組付けられると、軸31と軸受孔32aとの嵌め合わせ状態では、通過側周壁32bは組み付け方向Aとは真逆な外れ方向側には、軸31に所定の係止代Tを有して係止されるので、通過側周壁32bが軸31の分断端間、つまり隙間Sを押し広げて軸受32が軸31から外れることはない。
【0027】
しかし、蓋2が回転し、通過側周壁32bが軸31の幅B2を有する隙間S側に位置すると、蓋2はボックス1から外れることも考えられる。従って、蓋2が通常使用される開閉角度の幅内で、通過側周壁32bと軸31との間の係止代Tが確保されている必要がある。この開閉角度は60°乃至70°程度が望ましい。なお、図1(a)では65°の場合を示した。すなわち、本発明のヒンジ構造では、使用状態の開閉角度内に、ヒンジの取付角度が存在しないので、使用中に偶然であっても蓋2が外れる事がない。
【0028】
以上のような構成によれば、両側壁4、5間に途中を分断して設けられた軸31と、その分断端間の隙間Sを通過させて、軸受孔32aを軸31に嵌め合わせる通過側周壁32bを有した軸受32との簡単かつ安価な組み合わせにて、通過側周壁32bを軸31の分断端間の隙間Sに、相互間の案内面33による案内を伴い滑り込ませて、隙間Sを押し広げながら、蓋2の組み付け方向Aに通過させるだけで、蓋2を特別なヒンジ嵌め合わせ位置にするような必要もなく、それら軸31と軸受32とを嵌め合わせてボックス1に蓋2を手間なく迅速に組み付け開閉させられる。
【0029】
同時に、嵌め合わせ後の通過側周壁32bは外れ方向側には軸31に所定の係止代Tを有して係止されるので、特別な外れ止めストッパや機構なしに不用意に外れるのを確実に防止でき、これによってもコスト低減が図れる。
【0030】
また、前記軸31による軸受32の通過側周壁32bに対する係止は、係止代T分の引っ掛かり合いによるものであるので、組み付けた蓋2に外れ方向の力が作用するだけでは、引っ掛かり合いは外れない。しかし、メンテナンスなどの理由で蓋を外す必要がある場合は、軸31の分断軸端間の隙間Sを工具などで係止代以上の幅まで広げれば係止を解くことができる。そこで、軸31には、前記係止の解除操作が容易なように、分断端の先端に係止代T域に隣接して丸みを持つ丸み形状部31aを形成するのが、より好適である。
【0031】
このような丸み部31aは係止代Tに隣接しているだけで、係止代Tの働きを阻害しない。従って係止代Tを特に大きくしなくても、両側支持壁4、5間での軸受部32の横移動防止機能が確保され、なおかつ、通過側周壁32bが軸31の各分断端先端の丸み形状部31a間に嵌り込むことはないし、外れることもない。また、係止代Tを小さくできるので、少ない押し広げ量で軸31の分断端間を通過側周壁32bが通過することができ、前記丸み部31a間に位置させることができる。
【0032】
図示例では、案内面33は図1(b)に示すように、軸31の各分断端面と、通過側周壁32bの両側面との双方にほぼ同じ角度の先細り形状にて左右対称に形成してある。これによって、通過側周壁32bは軸31の分断端間に双方の案内面33どうしが面接触して、軸31の分断端間の隙間Sに安定に滑り込み、隙間Sを左右均等に押し広げながら難なく通過するので、蓋2の組み付けがさらにスムーズに失敗なく行える。
【0033】
図1〜図4に示す収容ボックスは、樹脂製のインストルメントパネル41に設けた場合の1つの例である。インストルメントパネル1に一体成形するなどして設けたボックス1と、このボックス1に図1に示すようにねじ42により着脱自在に取り付けられる樹脂製のヒンジカバー43と、このヒンジカバー43に一体成形した軸31に軸受32を既述のように嵌め合わせて開閉できるように組み付けられる樹脂製の蓋2とを備えている。
【0034】
蓋2は軸受32を一体成形した蓋インナ21と、この蓋インナ21に表側から嵌め合わせて外装する樹脂製の蓋アウタ22とで構成している。しかし、材質はこれに限られることはない。
【0035】
蓋インナ21は、その左右両側から上方へ延びるアーム21aが一体成形され、これらアーム21aの先端部に軸受32が一体成形されている。軸受32は、通過側周壁32bが、蓋2の組み付け方向Aに向き、具体的には蓋インナ21がボックス1の開口1aを塞ぐ組み付け位置側、つまり裏側に向く。一方、反通過側周壁32cは、それとは真逆、つまり蓋インナ21の表側に向くようアーム21aに一体成形されている。
【0036】
これによって、通過側周壁32bの内周が形成する軸受孔32aの半周分の内面は、通過側周壁32bより幅の広い反通過側周壁32cに形成する型抜き窓32dを通じ、蓋インナ21およびアーム21a、軸受32の表側の面を形成する金型で成形でき、非通過周壁32cの内周が形成する軸受孔32aの非通過側半周分の内面は、通過側周壁32bの両側を通じて、蓋インナ21およびアーム21a、軸受32の裏側の面を形成する金型で成形できる。
【0037】
ヒンジカバー43は、ボックス1の上部内面に前面側からねじ止めされる取り付け座43aを有し、この取り付け座43aの両側に、蓋インナ21のアーム21aを表側から受け入れて、ヒンジ3の軸31と軸受32との嵌り合部、つまりヒンジ構造を前記開口1a側から視認できないようにカバーするアーム受入れ凹部43bを有している。
【0038】
このアーム受入れ凹部43bの両側支持壁4、5間に、既述のように途中で分断して隙間Sを形成した軸31を一体成形している。軸31は中実体でもよいが、アーム受入れ凹部43bの側アーム21aの受け入れ側に開放した図1(a)(b)(d)に示すような樋状とするのが望ましい。
【0039】
もし、軸31を中実体とすると、両側支持壁4、5に樹脂成形上ヒケを招くおそれがあり、また、樋形状を採用すれば、ヒンジカバー43の表裏からの型成形時に、アーム受入れ凹部43bを通じ内面が型成形できるからである。なお両側支持壁4、5は、軸31の各分断端間の隙間Sが押し広げられるための撓み変形を可能にしているが、樹脂製でなく金属製としてもそのような条件を満足することができる。
【0040】
蓋アウタ22は、蓋インナ21に表側から嵌め合わせると、図1に示すように、蓋アウタ22の裏面周辺数箇所に設けた係合爪22aが、蓋インナ21側の係合片21bに弾性係合することで固定される。
【0041】
また、蓋2は、図1(a)、図3に示すように、アーム受入れ凹部43bの側壁に設けた係止孔45とアーム21aとの間に働かせた蔓巻きばね46によって、実線の閉じ位置と仮想線の開き位置との間に蔓巻きばね46の働きが中立となる中立位置があり、蓋2は中立位置から閉じ側に振れると閉じる側に付勢されて自動で閉じられる。
【0042】
また、蓋2は中立位置から開き側に振れると、開き側に付勢されて自動的に開く。図1(a)に示す係止孔45を中心にした実線の蔓巻きばね46は、閉じ方向側に働く位置を示しているのに対し、仮想線の蔓巻きばね46は開き方向側に働く位置を示している。
【0043】
これは、ヒンジカバー43に対して、蓋2はbボックス1の開口1aを閉じる実線位置にも、開口1aを開く仮想線の開き位置にも保持されることを意味する。したがって、開き位置の蓋2は、ボックス1のねじ止め位置に当てがったヒンジカバー43のねじ止め部を、図1(a)に示すように開口1aを通じ外部に大きく開放することになる。
【0044】
そこで、軸31と軸受32とを嵌め合わせてヒンジカバー43に蓋2を、予め組み付けておき、このアッセンブリのボックス1への組み付け時に、蓋2をヒンジカバー43に対し開き位置とすれば、ヒンジカバー43を、蓋2を組み付けている状態のまま、ボックス1の取り付け位置に当てがってねじ止めすることができ、軸31と軸受32との嵌め合わせ作業が一層容易になる。
【0045】
さらに、このアッセンブリ状態でのヒンジカバー43への取り付けをさらに容易にするため、図2に示すように、アッセンブリをボックス1の所定位置に当てがうと、自身の係合爪43cが、ボックス1の奥部壁に形成した係合窓1bに弾性係合することで仮止めできるようにしている。
【0046】
これにより、作業者はねじ止めに際してヒンジカバー43をねじ止め位置に保持する必要がなく作業が簡略化する。軸受32の上面には、軸31側に張り出す庇部32eが一体成形され、蓋2が図1(a)に仮想線で示す開き位置とされたとき、軸受32とヒンジカバー43との間の隙間S1を裏側から塞ぎ、開口1aから隙間S1を通じボックス1外からの視線や不正外力が内部に及ぶのを防止する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、自動車の各種収納ボックスのヒンジ構造に実用して、ヒンジの軸に、その途中分断構造とヒンジの環状な軸受の通過周壁との関係から、軸受を軸直角方向から軸の分断端間の隙間の押し開きを伴い容易に嵌め合せて、外れ方向には所定の係止代を有して係止されて外れることはなく、必要に応じ軸の分断端間の隙間を押し開くことで係止を解除して取り外しメンテナンスもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 ボックス
2 蓋
3 ヒンジ
31 軸
32 軸受
32a 軸受孔
32b 通過側周壁
32c 反通過側周壁
33 案内面
46 蔓巻きばね
A 組み付け方向
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス側と蓋側との、一方にヒンジの軸を、他方にヒンジの軸受を、持った収納ボックスのヒンジ構造において、
軸は、両側支持壁間で途中を分断して分断端間に隙間を形成するように設けられ、
軸受は、前記隙間に蓋の組み付け方向に通過させて軸受孔を前記軸に軸直角方向から嵌め合わせるための通過側周壁と、通過側周壁より幅の広い反通過側周壁を有し、
軸の各分断端面と、軸受の通過側周壁の両側面との少なくとも一方に、
通過側周壁が軸の分断端間の隙間を押し広げながら通過でき、
外れ方向側には係止代を有して軸で係止されるための、前記組み付け方向側に先細りとなるテーパ面または曲面とした案内面を形成したことを特徴とする収納ボックスのヒンジ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−207393(P2011−207393A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78317(P2010−78317)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】