取付管補修方法
【課題】破損が生じた取付管について補修効果が確実且つ十分に得られ、その効果を長期に亘り維持することができる取付管補修方法を提供すること。
【解決手段】下水道本管108に連通結合された取付管106の補修方法において、前記桝104から前記下水道本管108の前記取付管106との接続部までの領域において、前記取付管の破損部110を含む管路内空間を、該管路内空間の両端を閉塞して閉塞空間とする閉塞空間形成工程と、前記閉塞部12−1に外部から挿通された充填材供給管18−1、18−2から、経時硬化性の充填材を前記閉塞空間に所定圧力で加圧充填し、前記破損部110から前記取付管106の外部に充填材を流出させる充填材導入工程と、前記閉塞を解く閉塞解除工程と、前記取付管106の内表面にライニング管を形成するライニング管形成工程と、を含むことを特徴とする取付管補修方法。
【解決手段】下水道本管108に連通結合された取付管106の補修方法において、前記桝104から前記下水道本管108の前記取付管106との接続部までの領域において、前記取付管の破損部110を含む管路内空間を、該管路内空間の両端を閉塞して閉塞空間とする閉塞空間形成工程と、前記閉塞部12−1に外部から挿通された充填材供給管18−1、18−2から、経時硬化性の充填材を前記閉塞空間に所定圧力で加圧充填し、前記破損部110から前記取付管106の外部に充填材を流出させる充填材導入工程と、前記閉塞を解く閉塞解除工程と、前記取付管106の内表面にライニング管を形成するライニング管形成工程と、を含むことを特徴とする取付管補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付管の内表面にライニング管を形成して行う取付管補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の下水道普及率は平均でおよそ70%であり、都市部では、ほぼ100%に近い普及率である。下水道管は長年の使用により劣化するため、老朽管渠の維持管理が重要なものとなっている。下水管渠の総延長は約40万kmであり、そのうち耐用年数50年を越えた管渠は7000km以上となっている。また、今後年間数千kmずつ増加する見込みである。
【0003】
一般に、建物等から流された排水は、図3に示すように、建物等に接続されている排水管102から一時的に桝104に集水された後、その桝104に接続された取付管106を通り、下水道本管108に流入する。取付管106は道路の真下に設置されることが多いためにその道路を走行する自動車やトラック等の荷重を受けやすいこと、また、下水から発生する硫化水素等の酸性物質により腐食されること等から、取付管の変形や強度低下、ズレやクラック等の破損の発生あるいは管厚の減少等、種々の劣化が生じることは不可避である。この様な事情から、取付管は所定の時期に何らの補修が必要となるのが現状である。
【0004】
現在、取付管の補修技術としては、非開削で行う補修方法として、取付管内に軟性のライニング管(例えば、筒状のマットに未硬化状態の樹脂を含浸させて作製した更生材)を圧搾空気によって反転させながら導入したり、あるいは引き込みで導入し取付管内面に押圧して密着させ、その後ライニング管を光や熱で硬化して取付管内壁面に新管を形成する更生工法が知られている。また、地上からの作業により地面を開削し、劣化した取付管を地上から掘り出して新管を設置する補修方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−095729
【特許文献2】特開2009−101596
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、取付管106に破損が生じると、その破損部110から取付管106の周囲の地下水や土砂が取付管106内に流入することにより、地中に空洞112が生じることがある(図3)。空洞は時間の経過と共に拡大し、拡大した空洞を放置すると道路の陥没事故や地盤沈下が発生する恐れがある。実際に、空洞を原因とする道路陥没の事例は数多く報告されている。
【0007】
上述したライニング管を形成して取付管を補修する方法では、ライニング管を取付管の内表面に密着させた後、硬化させる工程でライニング管に若干の収縮が生じることにより、取付管とライニング管との間に僅かな隙間が生じることがあるが、破損が生じた状態の取付管にライニング管を形成した場合には、図13に示すように、破損部110から取付管106とライニング管116との隙間118に地下水や土砂が流入して空洞が拡大する場合があった。また、地下水が破損部110から流入している状況でライニング管116を形成すると硬化不良が生じてひびや割れ目122等が生じる場合があった。
【0008】
一方、開削して新管を新たに設置する方法は確実に空洞を無くすことができるものの、時間と費用を要するだけでなく、道路を通行止めにする必要がある等の難点があり、あまり用いられていないのが現状である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ライニング管による補修効果が確実且つ十分に得られ、その補修効果を長期間に亘り維持することができる取付管補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の取付管補修方法は、下水道本管に連通結合され、桝からの排水を前記下水道本管に流入させる破損の生じた取付管の補修方法において、前記桝から前記下水道本管の前記取付管との接続部までの領域において、前記取付管の破損部を含む管路内空間を、該管路内空間の両端を閉塞して閉塞空間とする閉塞空間形成工程と、少なくとも一方の前記閉塞部に外部から挿通された充填材供給管から、経時硬化性の充填材を前記閉塞空間に所定圧力で加圧充填し、前記破損部から前記取付管の外部に充填材を流出させる充填材導入工程と、前記閉塞を解く閉塞解除工程と、前記取付管の内表面にライニング管を形成するライニング管形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、取付管内の閉塞空間に経時硬化性の充填材を加圧充填し、取付管の破損部から外部に流出させることにより、少なくとも破損部を塞ぎ、更には破損部が原因となって発生した空洞に充填材を充填することができる。そのため、地下水や土砂が破損部から流入することを阻止することができるので、ライニング管の形成の際に、未硬化状態のライニング管と地下水が接触するのを防ぎ、硬化過程で硬化不良が発生することを防止することができる。
【0012】
また、破損部を塞ぐことにより、従来技術のようにライニング管と取付管との間の隙間に地下水や土砂が流入することはなく、空洞の拡大を防止することができる。したがって、本発明の取付管補修方法によれば、ライニング管による補修効果を確実且つ十分に得ることができ、また、その補修効果を長期に亘り維持することができる。更には、空洞を充填材で充填することにより、道路の陥没及び地盤沈下を防止すること可能となる。
【0013】
請求項2に記載の取付管補修方法は、請求項1に記載の取付管補修方法において、前記閉塞除去工程と前記ライニング管形成工程との間に、取付管の内部を洗浄する内部洗浄工程を行うことを特徴とする。
【0014】
ライニング管を形成する前に、取付管の内表面に付着した充填材を洗浄することにより、ライニング管を取付管の内表面に確実に密着させて形成することができる。即ち、取付管の内表面に充填材が付着している場合には、次の工程でライニング管を形成しても、その表面が平坦でなかったり、取付管の内表面との密着性が低下したりすることで、ライニング管の内径が小さくなることがあるが、取付管内表面を洗浄して付着した充填材を除去することによりこれを回避することができる。したがって、取付管の補修を更に確実なものとすることができる。
【0015】
請求項3に記載の取付管補修方法は、請求項1又は2に記載の取付管補修方法において、前記管路内空間には、前記取付管と前記下水道本管との接続部が含まれることを特徴とする。
【0016】
地下水や土砂の管路内への流入は、とりわけ、取付管と下水道本管との接続部の位置ずれやひび等の破損により生じることが多く、この部位の破損部は他の破損部から充填材を注入して塞ぐことが難しいが、この構成によれば、充填材を加圧充填する閉塞空間に取付管と下水道本管の接続部が含まれているので、接続部に生じた破損部を充填材で塞ぐことができ、またその破損部により生じた空洞に充填材を充填することができる。したがって、破損部の発生箇所に制限されることなく、地下水や土砂の流入阻止とライニング管による内面補修を一挙に行うことができ、効率よく補修作業を行うことが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の取付管補修方法は、請求項3に記載の取付管補修方法において、
前記閉塞は、流体を供給することにより膨張する2個の膨張体により行われ、該2個の膨張体のうち一方の膨張体は、前記取付管と下水道本管との接続部近傍の該下水道本管内に配置され、該膨張体の膨張状態において、該膨張体は前記接続部を覆わないことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、閉塞を膨張体により行い、下方の膨張体を、取付管との接続部における下水道本管内配置して膨張させたときに、取付管と下水道本管との接続部の破損部を覆っていないので、その接続部の破損部から充填材を的確に取付管外部に流出させることができる。
【0019】
請求項5に記載の取付管補修方法は、請求項4に記載の取付管補修方法において、前記一方の膨張体の下水道本管内への配置は、前記桝の取付管接続口から導入して行うことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、下水道本管内に配置する膨張体を桝から導入することができる。したがって、下水道本管に接続しているマンホールから導入作業を行う必要はなく、膨張体の導入作業が容易となり、補修作業の短時間化が図られる。
【0021】
請求項6に記載の取付管補修方法は、請求項4に記載の取付管補修方法において、
前記閉塞空間形成工程は、前記2個の膨張体のうち他方の膨張体に外部から挿通され、前記一方の膨張体に連結結合された流体供給管を有する充填材導入器具を、前記桝の取付管接続口から導入し、次いで、前記2個の膨張体に流体を供給することにより該2個の膨張体を膨張させることにより行うことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、2個の膨張体を流体供給管によって連結して一体としているので、2個の膨張体の管路内への導入を短時間で行うことができ、閉塞空間形成工程の作業容易化が図られる。
【0023】
請求項7に記載の取付管補修方法は、請求項6に記載の取付管補修方法において、
前記充填材導入器具は、前記流体供給管を内包する可撓性を有する柱状体を有し、前記充填材の導入は、前記閉塞空間内の前記柱状体の外表面と前記取付管の内表面との間隙に充填材を加圧充填することにより行われることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、閉塞空間に可撓性を有する柱状体を導入しているので、充填材は、柱状体の外表面と取付管の内表面の隙間に充填すればよく、閉塞空間に占める柱状体の体積分だけ使用する充填材を減らすことができる。したがって、補修に掛かる費用を抑えることができ、また、充填作業の短時間化も図られる。更に、取付管内に付着又は残留した充填材はその後下水道本管に流して廃棄することになるが、充填材の使用量を減らすことでその廃棄量を減らすことができるので環境対策も図られる。
【0025】
請求項8に記載の取付管補修方法は、請求項7に記載の取付管補修方法において、
前記柱状体は、中空且つ膨張可能に構成され、前記流体供給管からの流体により前記2個の膨張体と共に膨張し、該膨張状態において、前記取付管の内表面との間隙を保持するための複数のスペーサーが前記柱状体の外表面に突出形成されたことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、可撓性を有する柱状体を取付管内に導入した後に膨張させるが、柱状体の外表面にスペーサーが突出形成されているので、膨張時においても柱状体と内表面との間の空間を保持することができる。したがって、充填材を注入する空間を更に小さくでき、注入する充填材を使用最小限としつつ、取付管の破損部から外部に充填材を流出させることができる。そのため、使用する充填材を更に減らすことが可能となり、費用の削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る取付管補修方法によれば、取付管の破損部を充填材で塞ぎ、更には空洞を充填することができる。これにより、地下水や土砂の流入を阻止しているので、ライニング管の形成過程でライニング管の硬化不良が発生することを防止することができる。したがって、ライニング管による補修効果を確実に得ることができるとともに、その補修効果を長期にわたり維持することができる。更に、空洞の充填により、道路の陥没や地盤沈下を長期に亘り防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の取付管補修方法に使用する充填材導入器具の外観図である。
【図2】筒状体の非膨張状態の断面図(a)及び膨張状態の断面図(b)である。
【図3】補修作業前の状態を示す説明図である。
【図4】充填材導入器具を取付管に配置したときの概略説明図である。
【図5】図4の詳細図である。
【図6】筒状体の膨張前(a)と膨張後(b)の断面図である。
【図7】膨張体及び筒状体を膨張させたときの概略断面図である。
【図8】充填材を加圧充填する工程の説明図である。
【図9】ライニング管を形成し、本発明の取付管補修方法が完了した状態を示す説明図である。
【図10】本発明の取付管補修方法の他の実施の形態を示す概略断面図である。
【図11】本発明に使用する充填材導入器具の他の例を示す外観図(a)及び筒状体の断面図(b)である。
【図12】図11の切り込み部の詳細説明図である。
【図13】従来の課題の説明する破損部周囲の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の取付管補修方法に使用する充填材導入器具の外観図である。
【0030】
図示のように、本発明の取付管補修方法に使用する充填材導入器具10は、膨張体として上方に配置する膨張体12−1及び下方に配置する膨張体12−2を有し、更に、流体供給管16a、16bによって膨張体12−1、12−2と接続された柱状体としての筒状体14を有している。
【0031】
上方(桝側)に配置する膨張体12−1は空気や水等の流体によって膨張可能なゴム等から構成されており、その内部には流体供給管16aが外部から挿通され、筒状体14に連結されている。膨張体12−1の内部では、流体供給管16aが分岐して膨張体12−1を膨張させるための流体流出口16c(図5に図示)が設けられている。また、膨張体12−1には、充填材供給管18−1、18−2が外部から挿通され、膨張体12−1の筒状体14側(後述する閉塞空間側)の面にその流出口18−1a、18−2aが設けられている。充填材供給管の数は、充填材の種類に応じて適宜変更される。
【0032】
また、下方(下水道本管)に配置する膨張体12−2も、流体供給管16bから流体が供給されることにより膨張する構成とされている。ここで特徴的なことは、膨張体12−2の流体供給管16bとの接続部の周辺領域は、布等の非膨張性部材から構成された非膨張性領域13とされており、その他の部分はゴム等の膨張性部材から構成されていることである。
【0033】
非膨張性領域13の大きさは、具体的には、少なくとも取付管106と下水道本管108の接続部の領域(即ち、下水道本管108に取付管106を接続するために下水道本管108に形成されている取付管106接続用の穴の領域)を全て覆い隠すことが可能な領域を有していればよい。このような構成とすることにより、後に詳述するが、取付管106と下水道本管108との接続部に生じた破損部110a(図3参照)を充填材で塞ぐことができ、更には、その破損部110aが原因となって発生した空洞112を充填材で充填することができる。なお、取付管106と下水道本管108との接続部に破損部が生じていないことが確認され、取付管106のみに破損部が生じている場合は、下方に配置する膨張体としては通常の膨張体を用いればよく、配置位置は下水道本管内ではなく取付管内とすればよい。
【0034】
筒状体14は、屈曲した取付管に導入可能なように可撓性を有する部材であり、且つ後述の膨張動作を行えるように膨張可能な部材(例えば、ゴム等の弾性部材)から構成されている。
【0035】
筒状体14には、その断面図である図2(a)にも示すように、その外表面上に突出形成され、軸方向に延在して設けられたスペーサー20が断面視90°間隔で4個設けられている。スペーサー20は断面略矩形の形状とされており、可撓性のある部材、例えば、繊維等で補強されているゴムやプラスチック(PE、PP等)から構成される。スペーサー20の形状は、筒状体14の外表面から突出形成された形状であり、筒状体14の膨張状態において取付管106の内表面と筒状体14との間隙を保持できる形状であれば特に限定されない。スペーサー20の個数は4個としているが、適宜増減することができる。
【0036】
筒状体14の内部は中空とされ、筒状体14に接続された流体供給管16aから空気や水等の流体が供給されると、図2(b)に示されているように、その外周面が径方向外側に膨らむように膨張するように構成されている。筒状体14の中空部は、膨張体12−2に流体を供給する流体供給管としての役割を有している。
【0037】
筒状体14は、膨張体12−1、12−2により閉塞された閉塞空間の体積の一部を占めることで充填材の使用量及び充填作業時間を減らすものであり、補修対象の取付管に応じて適宜使用されるものである。例えば2箇所の閉塞位置間が短い場合等、充填材を多く使用しない場合等は、筒状体は使用せず、2個の膨張体と流体供給管及び充填材供給管を有する充填材導入器具を使用してもよく、取付管の劣化状況に応じて適宜変更することができる。
【0038】
筒状体14の断面の大きさは、非膨張状態でそのスペーサーを含む外径が補修対象の既設管の内径よりも小さいサイズに構成される。筒状体14の長さは、閉塞位置間の長さに合わせて適宜変更することができるが、充填材の使用量を最大限に減らすことができる点で、閉塞空間のほぼ全長に亘る長さを有することが好ましい。
【0039】
次に、本発明の取付管補修方法の実施の形態ついて説明する。
【0040】
図3は、補修作業前の状態を示す説明図である。補修対象の取付管106は上端において桝104と連結され、下端において下水道本管108に連通結合されている。建物から排水管102を介して流された排水や雨水は、一時的に桝104に集められた後、その桝104から取付管106を通り、下水道本管108内に流入する。図示していないが、下水道本管108はこの前方及び後方においてマンホールに接続されている。取付管106は複数の単管が連結されて構成されている。
【0041】
取付管106の破損は、符号110で示しているように取付管106を構成している各単管の接続部の位置ずれや単管自体のひび又は亀裂、あるいは符号110aで示しているように取付管106と下水道本管108との接続部において起こりやすい。そして、この破損部110、110aから地下水や土砂が取付管106や下水道本管108内に流入することにより空洞112が発生する。本発明において、取付管の破損部とは、取付管の劣化等により生じたひび割れ、亀裂、単管同士の接続部の位置ずれ、取付管と下水道本管の接続部の位置ずれ、取付管と桝との位置ずれ等によって、桝104から下水道本管108内の取付管106との接続部までの領域内に地下水や土砂が流入し得る割れ目や通孔全般のことをいう。
【0042】
取付管106の破損状況及び空洞112の発生状況は、レーダー探査装置及びCCDカメラ搭載した空洞調査機を取付管内で移動させることにより調査することができる。また、空洞112は、地上から電磁波や超音波を路面から地下へ向けて放射し、反射波を受信する空洞調査機でも調査することができる。
【0043】
図4は、本発明の充填材導入器具を配置した状態(膨張前)の断面図であり、図5は、図4の桝104と取付管106との接続部付近の詳細図である。
【0044】
本発明の取付管補修方法は、まず必要により、補修対象である取付管106の内表面を高圧洗浄し、内表面に付着した異物を除去する。次に、取付管106の桝104側開口部から、充填材導入器具10を、下方膨張体12−2を先頭として、下方膨張体12−2が下水道本管108に到達するまで導入する。充填材導入器具10の導入作業は人力でも動力を使ってもよく、桝104側から押して行うか、あるいは、膨張体12−2に引き込みロープを接続して下水道本管108に接続されるマンホール(図示せず)側から牽引して位置設定することもできる。なお、図4において、筒状体14は、図6に示すA−A´断面図を示しており、筒状体14の外周上に設けられたスペーサー20は、図示していない。
【0045】
図7は、充填材導入器具10の膨張体12−1、12−2及び筒状体14を膨張させた状態を示す説明図である。
【0046】
充填材導入器具10を上記のように配置した後、地上に配置された流体・充填材供給機114から流体供給管16aを通して空気や水等の流体を供給する。流体を供給すると、図示したように、膨張体12−1、12−2が膨張する。これにより、桝104から下水道本管108内の取付管106との接続部までの領域において、取付管106の破損部110、110aを含む管路内空間を閉塞空間とすることができる。
【0047】
本実施の形態において、膨張体12−2は下水道本管内において膨張するが、上述したように、膨張体12−2の流体供給管16bとの接続部周辺領域は、非膨張性部材で構成されているので、その領域のみ膨張しにくい。そのため、膨張体12−2は、膨張時において取付管106と下水道本管108の接続部を覆わずに管路内を閉塞することができ、後述する充填材の注入により、取付管106と下水道本管108との接続部に生じた破損部110aから充填材を外部に流出させることが可能となる。
【0048】
また、膨張体12−1、12−2が膨張すると同時に筒状体14も膨張し、図6(b)の断面図に示すように、スペーサー20が筒状体14と取付管108との間の間隙Rを保持するように働く。図7において、筒状体14は、図6(b)のB−B´断面図を示しており、スペーサー20は図示していない。以上のようにして、閉塞空間形成工程が完了する。
【0049】
図8は、充填材を注入する様子を示す概略断面図である。
【0050】
閉塞空間形成工程が完了した後、地上に配置された流体・充填材供給機114から充填材を充填材供給管18−1、18−2を介して、上述した閉塞空間に充填材40を所定の圧力で注入し、加圧充填する。充填材40は、上述した筒状体14と取付管108との間の間隙に流入すると、やがて破損部110、110aから取付管の外部へ流出する。充填材40としては、注入時には流動性を有し、注入後に硬化するものであればどのようなものでも使用することができる。例えば、注入後3〜10分で硬化する硬化性材料であればよく、具体的には、セメントミルク、ウレタン樹脂等を用いることができる。この中でも、セメントミルクが好ましく、植物繊維を配合したセメントミルク(例えば、古紙を水に浸してパルプ状にしたものを混ぜたセメントミルク)が特に好ましい。
【0051】
充填材40の加圧充填は、少なくとも破損部110、110aが充填材によって塞がれるように行う。即ち、注入する充填材40の量は、2個の膨張体により形成された閉塞空間のうち筒状体14が占める空間以外の空間よりも大きい体積の量を注入すれば、充填材は破損部110、110aから取付管106の外部へ流出し、破損部110、110aは塞がれる。注入時において流動性を有する充填材40は時間が経過すると硬化し、破損部110は完全に塞がれる。また、充填材40を更に注入すれば、空洞112に充填材を充填することができる。空洞の全てが充填されたことは注入圧の上昇により確認することができる。以上のようにして、充填材導入工程が完了する。
【0052】
充填材導入工程を終了した後、膨張体12−1、12−2及び筒状体14から流体を吸入し、これらを収縮させた後、充填材導入器具10を取付管106から取り出して、閉塞解除工程を行う。
【0053】
その後、取付管106の内表面に充填材が付着している場合には、必要によりこれを高圧水で洗浄して、内部洗浄工程を行う。取付管内表面の洗浄を行うことにより、付着した充填材を除去し、次の工程で形成するライニング管の表面が平坦でなくなったり、取付管の内表面との密着性が低下したり、ライニング管の内径が小さくなることを防止することができる。
【0054】
取付管106の内表面を高圧水で洗浄した後、取付管106の内表面にライニング管を形成する工程を行う。ライニング管形成方法は、従来から公知の方法を用いればよく、特に限定されない。
【0055】
例えば、まず、ガラス繊維やフェルト(不織布)、もしくはその両方の組み合わせで形成された基材に、光硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を含浸させて形成された管状ライニング材を、未硬化状態で取付管内に導入する。未硬化状態の管状ライニング材の導入は、反転方式あるいは引き込み方式が用いられる。反転方式は、取付管の桝側端部から未硬化状態の管状ライニング材を同端部から供給される圧搾空気により順次反転させつつ膨張させて本管の内壁面に押圧し、他端までこの作業を行うものである。一方引き込み方式は、ロープ等によって未硬化状態の管状ライニング材を取付管内に引き込み、導入した後、ライニング材内への圧搾空気の供給により管状ライニング材を取付管内周面に押圧するものである。このようにして、管状ライニング材を導入して取付管内周面に押圧した後、光や熱で硬化させて、ライニング管を形成する。ライニング管形成方法の詳細は、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0056】
以上のようにして、本発明の取付管補修方法が完了する。図9は、ライニング管30が形成され、補修作業が完了した取付管106を示している。このようにして補修された取付管106は、地下水や土砂の流入を遮断しているのでライニング管30の硬化不良が生じておらず、補修後においても長期間に亘り補修効果を維持することができる。
【0057】
本実施の形態においては、桝104から下水道本管108の取付管106との接続部までの領域のほぼ全域における管路内空間を閉塞空間としているが、閉塞する空間は破損部の位置に応じて適宜変更可能であり、例えば取付管に生じた1箇所の破損部を挟んだ取付管内の2箇所を閉塞して閉塞空間とすることも可能である。但し、本実施の形態のようにほぼ全域を閉塞空間とすれば、閉塞作業においてカメラ等を使っての正確な位置設定は必要とされず、作業の容易化が図られる。
【0058】
以下、本発明の取付管補修方法の他の実施の形態について説明する。
【0059】
図10は、本発明の取付管補修方法の他の実施の形態を示す説明図である。
【0060】
本実施の形態では、充填材導入器具は、膨張体72−1、筒状体74及び膨張体72−2を有している。上方の膨張体72−1と筒状体74は流体供給管16aを介して接続されており、これは桝104の取付管106接続口から導入される。一方、下水道本管108内に配置される下方の膨張体72−2は、膨張体72−1及び筒状体74とは接続されておらず別体であり、下水道本管108に接続されているマンホール(図示せず)から単独で導入される。膨張体72−2の位置設定は、膨張体72−2にカメラ等を取り付けることにより行うことができる。この充填材導入器具を図示した位置に配置した後、膨張体72−1、72−2及び筒状体74を膨張させ、充填材を加圧充填し、充填材を破損部から外部に流出させる。充填材導入工程以降の工程は上述したものと同様である。本実施の形態は、下水道本管108と取付管106との接続部がマンホールに近い場合に有効である。
【0061】
図11(a)は、本発明の取付管補修方法に使用する充填材導入器具の別の例を示す外観図であり、図11(b)はその筒状体の断面図である。
【0062】
この充填材導入器具60は、柱状体としての筒状体64と、膨張体としての2個の膨張体62−1、62−2を有し、筒状体64は2個の膨張体62−1、62−2の内部に嵌合されて接続されている。図11(b)に示すように、筒状体64は、本体部63とその外周面に設けられた弾性部65から構成されている。本体部63の内部は充填材供給管68−1、68−2から充填材が流入する中空部63aが軸方向に形成されており、中空部63aには、下方に配置する膨張体62−2に流体を供給するための流体供給管66が挿通されて、膨張体62−2に連結されている。本体部63とその外周面に設けられた弾性部65は互いに接着しておらず、弾性部65は本体部63を覆うように構成されている。図11(a)に示されているように、弾性部65には、十字状の切れ込み部62aが周方向及び軸方向に一定間隔で設けられている。
【0063】
充填材が中空部63aに流入すると、本体部63に周方向及び軸方向に一定間隔で設けられた充填材流出孔63bに流入する。充填材流出孔63bに流入すると、その流入圧により弾性部65は径方向外側に伸び、充填材は本体部63と弾性部65との間に流入した後、弾性部65の切れ込み部62aから、図12に示すように切れ込み部62aの各断片が外側に向くように変形して、筒状体62の外部へ(矢印方向に)流出する。充填材の注入を停止すると、切れ込み部62aが元の状態に戻り、一度筒状体64の外部に流出した充填材は筒状体64の内部に戻らず、切れ込み部62aは逆止弁として作用する。このような構成の充填材導入器具60を用いることにより、使用する充填材の量を減らすことが可能となる。
【0064】
なお、本発明は上記各実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0065】
本発明において、充填材導入器具は、2個の膨張体、各々の膨張体を膨張させる流体供給管及び少なくとも一方の膨張体に挿通された充填材供給管を少なくとも有していればよく、柱状体としての筒状体は、補修対象の取付管等の状況に応じて適宜設ければよい。また、2個の膨張体は、一体として構成しても、別体としてよく、一体として構成する場合には、2個の膨張体を流体供給管で接続することが、膨張体の膨張を同時に行える点で好適である。
【0066】
また、上述した実施の形態において、柱状体は、充填材導入器具10の筒状体は上記で示した例に限られず、閉塞空間のうち一定の空間を占め、使用する充填材の量を減らすことができるものであれば、角柱状等どのような形状のものを使用することができる。
【0067】
また、地中に生じた空洞が大きい場合であって、その空洞を充填する場合には、取付管内から充填材を注入して空洞の体積の一部を埋め、その充填材が硬化した後に、地上から空洞まで通じる通孔から、地上から充填材を補助的に補充しても良い。通孔は、空洞の位置を上述した空洞調査装置で検知して、穿孔することができる。
【0068】
また、上述した実施の形態では、既に空洞が発生している場合の補修例を示したが、これに限られず、取付管に破損部が生じているものの空洞ができるほどまでには至っていない状態の取付管の補修にも適用することができ、この場合は、破損部を充填材で塞ぐことにより、ライニング管の補修効果及び寿命を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の方法により取付管を補修することにより、ライニング管による補修効果を長期に亘り維持することができ、道路の陥没や地盤沈下を防止することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 充填材導入器具
12−1、12−2 膨張体
14 筒状体
16a、16b 流体供給管
18−1、18−2 充填材供給管
18−1a、18−2a 充填材流出口
20 スペーサー
30 ライニング管
60 充填材導入器具
62−1、62−2 膨張体
63 本体部
64 筒状体
65 弾性部
66 流体供給管
68−1、68−2 充填材供給管
102 排水管
104 桝
106 取付管
108 下水道本管
110 破損部
112 空洞
114 流体・充填材供給機
116 ライニング管
120 地面
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付管の内表面にライニング管を形成して行う取付管補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の下水道普及率は平均でおよそ70%であり、都市部では、ほぼ100%に近い普及率である。下水道管は長年の使用により劣化するため、老朽管渠の維持管理が重要なものとなっている。下水管渠の総延長は約40万kmであり、そのうち耐用年数50年を越えた管渠は7000km以上となっている。また、今後年間数千kmずつ増加する見込みである。
【0003】
一般に、建物等から流された排水は、図3に示すように、建物等に接続されている排水管102から一時的に桝104に集水された後、その桝104に接続された取付管106を通り、下水道本管108に流入する。取付管106は道路の真下に設置されることが多いためにその道路を走行する自動車やトラック等の荷重を受けやすいこと、また、下水から発生する硫化水素等の酸性物質により腐食されること等から、取付管の変形や強度低下、ズレやクラック等の破損の発生あるいは管厚の減少等、種々の劣化が生じることは不可避である。この様な事情から、取付管は所定の時期に何らの補修が必要となるのが現状である。
【0004】
現在、取付管の補修技術としては、非開削で行う補修方法として、取付管内に軟性のライニング管(例えば、筒状のマットに未硬化状態の樹脂を含浸させて作製した更生材)を圧搾空気によって反転させながら導入したり、あるいは引き込みで導入し取付管内面に押圧して密着させ、その後ライニング管を光や熱で硬化して取付管内壁面に新管を形成する更生工法が知られている。また、地上からの作業により地面を開削し、劣化した取付管を地上から掘り出して新管を設置する補修方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−095729
【特許文献2】特開2009−101596
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、取付管106に破損が生じると、その破損部110から取付管106の周囲の地下水や土砂が取付管106内に流入することにより、地中に空洞112が生じることがある(図3)。空洞は時間の経過と共に拡大し、拡大した空洞を放置すると道路の陥没事故や地盤沈下が発生する恐れがある。実際に、空洞を原因とする道路陥没の事例は数多く報告されている。
【0007】
上述したライニング管を形成して取付管を補修する方法では、ライニング管を取付管の内表面に密着させた後、硬化させる工程でライニング管に若干の収縮が生じることにより、取付管とライニング管との間に僅かな隙間が生じることがあるが、破損が生じた状態の取付管にライニング管を形成した場合には、図13に示すように、破損部110から取付管106とライニング管116との隙間118に地下水や土砂が流入して空洞が拡大する場合があった。また、地下水が破損部110から流入している状況でライニング管116を形成すると硬化不良が生じてひびや割れ目122等が生じる場合があった。
【0008】
一方、開削して新管を新たに設置する方法は確実に空洞を無くすことができるものの、時間と費用を要するだけでなく、道路を通行止めにする必要がある等の難点があり、あまり用いられていないのが現状である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ライニング管による補修効果が確実且つ十分に得られ、その補修効果を長期間に亘り維持することができる取付管補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の取付管補修方法は、下水道本管に連通結合され、桝からの排水を前記下水道本管に流入させる破損の生じた取付管の補修方法において、前記桝から前記下水道本管の前記取付管との接続部までの領域において、前記取付管の破損部を含む管路内空間を、該管路内空間の両端を閉塞して閉塞空間とする閉塞空間形成工程と、少なくとも一方の前記閉塞部に外部から挿通された充填材供給管から、経時硬化性の充填材を前記閉塞空間に所定圧力で加圧充填し、前記破損部から前記取付管の外部に充填材を流出させる充填材導入工程と、前記閉塞を解く閉塞解除工程と、前記取付管の内表面にライニング管を形成するライニング管形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、取付管内の閉塞空間に経時硬化性の充填材を加圧充填し、取付管の破損部から外部に流出させることにより、少なくとも破損部を塞ぎ、更には破損部が原因となって発生した空洞に充填材を充填することができる。そのため、地下水や土砂が破損部から流入することを阻止することができるので、ライニング管の形成の際に、未硬化状態のライニング管と地下水が接触するのを防ぎ、硬化過程で硬化不良が発生することを防止することができる。
【0012】
また、破損部を塞ぐことにより、従来技術のようにライニング管と取付管との間の隙間に地下水や土砂が流入することはなく、空洞の拡大を防止することができる。したがって、本発明の取付管補修方法によれば、ライニング管による補修効果を確実且つ十分に得ることができ、また、その補修効果を長期に亘り維持することができる。更には、空洞を充填材で充填することにより、道路の陥没及び地盤沈下を防止すること可能となる。
【0013】
請求項2に記載の取付管補修方法は、請求項1に記載の取付管補修方法において、前記閉塞除去工程と前記ライニング管形成工程との間に、取付管の内部を洗浄する内部洗浄工程を行うことを特徴とする。
【0014】
ライニング管を形成する前に、取付管の内表面に付着した充填材を洗浄することにより、ライニング管を取付管の内表面に確実に密着させて形成することができる。即ち、取付管の内表面に充填材が付着している場合には、次の工程でライニング管を形成しても、その表面が平坦でなかったり、取付管の内表面との密着性が低下したりすることで、ライニング管の内径が小さくなることがあるが、取付管内表面を洗浄して付着した充填材を除去することによりこれを回避することができる。したがって、取付管の補修を更に確実なものとすることができる。
【0015】
請求項3に記載の取付管補修方法は、請求項1又は2に記載の取付管補修方法において、前記管路内空間には、前記取付管と前記下水道本管との接続部が含まれることを特徴とする。
【0016】
地下水や土砂の管路内への流入は、とりわけ、取付管と下水道本管との接続部の位置ずれやひび等の破損により生じることが多く、この部位の破損部は他の破損部から充填材を注入して塞ぐことが難しいが、この構成によれば、充填材を加圧充填する閉塞空間に取付管と下水道本管の接続部が含まれているので、接続部に生じた破損部を充填材で塞ぐことができ、またその破損部により生じた空洞に充填材を充填することができる。したがって、破損部の発生箇所に制限されることなく、地下水や土砂の流入阻止とライニング管による内面補修を一挙に行うことができ、効率よく補修作業を行うことが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の取付管補修方法は、請求項3に記載の取付管補修方法において、
前記閉塞は、流体を供給することにより膨張する2個の膨張体により行われ、該2個の膨張体のうち一方の膨張体は、前記取付管と下水道本管との接続部近傍の該下水道本管内に配置され、該膨張体の膨張状態において、該膨張体は前記接続部を覆わないことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、閉塞を膨張体により行い、下方の膨張体を、取付管との接続部における下水道本管内配置して膨張させたときに、取付管と下水道本管との接続部の破損部を覆っていないので、その接続部の破損部から充填材を的確に取付管外部に流出させることができる。
【0019】
請求項5に記載の取付管補修方法は、請求項4に記載の取付管補修方法において、前記一方の膨張体の下水道本管内への配置は、前記桝の取付管接続口から導入して行うことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、下水道本管内に配置する膨張体を桝から導入することができる。したがって、下水道本管に接続しているマンホールから導入作業を行う必要はなく、膨張体の導入作業が容易となり、補修作業の短時間化が図られる。
【0021】
請求項6に記載の取付管補修方法は、請求項4に記載の取付管補修方法において、
前記閉塞空間形成工程は、前記2個の膨張体のうち他方の膨張体に外部から挿通され、前記一方の膨張体に連結結合された流体供給管を有する充填材導入器具を、前記桝の取付管接続口から導入し、次いで、前記2個の膨張体に流体を供給することにより該2個の膨張体を膨張させることにより行うことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、2個の膨張体を流体供給管によって連結して一体としているので、2個の膨張体の管路内への導入を短時間で行うことができ、閉塞空間形成工程の作業容易化が図られる。
【0023】
請求項7に記載の取付管補修方法は、請求項6に記載の取付管補修方法において、
前記充填材導入器具は、前記流体供給管を内包する可撓性を有する柱状体を有し、前記充填材の導入は、前記閉塞空間内の前記柱状体の外表面と前記取付管の内表面との間隙に充填材を加圧充填することにより行われることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、閉塞空間に可撓性を有する柱状体を導入しているので、充填材は、柱状体の外表面と取付管の内表面の隙間に充填すればよく、閉塞空間に占める柱状体の体積分だけ使用する充填材を減らすことができる。したがって、補修に掛かる費用を抑えることができ、また、充填作業の短時間化も図られる。更に、取付管内に付着又は残留した充填材はその後下水道本管に流して廃棄することになるが、充填材の使用量を減らすことでその廃棄量を減らすことができるので環境対策も図られる。
【0025】
請求項8に記載の取付管補修方法は、請求項7に記載の取付管補修方法において、
前記柱状体は、中空且つ膨張可能に構成され、前記流体供給管からの流体により前記2個の膨張体と共に膨張し、該膨張状態において、前記取付管の内表面との間隙を保持するための複数のスペーサーが前記柱状体の外表面に突出形成されたことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、可撓性を有する柱状体を取付管内に導入した後に膨張させるが、柱状体の外表面にスペーサーが突出形成されているので、膨張時においても柱状体と内表面との間の空間を保持することができる。したがって、充填材を注入する空間を更に小さくでき、注入する充填材を使用最小限としつつ、取付管の破損部から外部に充填材を流出させることができる。そのため、使用する充填材を更に減らすことが可能となり、費用の削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る取付管補修方法によれば、取付管の破損部を充填材で塞ぎ、更には空洞を充填することができる。これにより、地下水や土砂の流入を阻止しているので、ライニング管の形成過程でライニング管の硬化不良が発生することを防止することができる。したがって、ライニング管による補修効果を確実に得ることができるとともに、その補修効果を長期にわたり維持することができる。更に、空洞の充填により、道路の陥没や地盤沈下を長期に亘り防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の取付管補修方法に使用する充填材導入器具の外観図である。
【図2】筒状体の非膨張状態の断面図(a)及び膨張状態の断面図(b)である。
【図3】補修作業前の状態を示す説明図である。
【図4】充填材導入器具を取付管に配置したときの概略説明図である。
【図5】図4の詳細図である。
【図6】筒状体の膨張前(a)と膨張後(b)の断面図である。
【図7】膨張体及び筒状体を膨張させたときの概略断面図である。
【図8】充填材を加圧充填する工程の説明図である。
【図9】ライニング管を形成し、本発明の取付管補修方法が完了した状態を示す説明図である。
【図10】本発明の取付管補修方法の他の実施の形態を示す概略断面図である。
【図11】本発明に使用する充填材導入器具の他の例を示す外観図(a)及び筒状体の断面図(b)である。
【図12】図11の切り込み部の詳細説明図である。
【図13】従来の課題の説明する破損部周囲の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の取付管補修方法に使用する充填材導入器具の外観図である。
【0030】
図示のように、本発明の取付管補修方法に使用する充填材導入器具10は、膨張体として上方に配置する膨張体12−1及び下方に配置する膨張体12−2を有し、更に、流体供給管16a、16bによって膨張体12−1、12−2と接続された柱状体としての筒状体14を有している。
【0031】
上方(桝側)に配置する膨張体12−1は空気や水等の流体によって膨張可能なゴム等から構成されており、その内部には流体供給管16aが外部から挿通され、筒状体14に連結されている。膨張体12−1の内部では、流体供給管16aが分岐して膨張体12−1を膨張させるための流体流出口16c(図5に図示)が設けられている。また、膨張体12−1には、充填材供給管18−1、18−2が外部から挿通され、膨張体12−1の筒状体14側(後述する閉塞空間側)の面にその流出口18−1a、18−2aが設けられている。充填材供給管の数は、充填材の種類に応じて適宜変更される。
【0032】
また、下方(下水道本管)に配置する膨張体12−2も、流体供給管16bから流体が供給されることにより膨張する構成とされている。ここで特徴的なことは、膨張体12−2の流体供給管16bとの接続部の周辺領域は、布等の非膨張性部材から構成された非膨張性領域13とされており、その他の部分はゴム等の膨張性部材から構成されていることである。
【0033】
非膨張性領域13の大きさは、具体的には、少なくとも取付管106と下水道本管108の接続部の領域(即ち、下水道本管108に取付管106を接続するために下水道本管108に形成されている取付管106接続用の穴の領域)を全て覆い隠すことが可能な領域を有していればよい。このような構成とすることにより、後に詳述するが、取付管106と下水道本管108との接続部に生じた破損部110a(図3参照)を充填材で塞ぐことができ、更には、その破損部110aが原因となって発生した空洞112を充填材で充填することができる。なお、取付管106と下水道本管108との接続部に破損部が生じていないことが確認され、取付管106のみに破損部が生じている場合は、下方に配置する膨張体としては通常の膨張体を用いればよく、配置位置は下水道本管内ではなく取付管内とすればよい。
【0034】
筒状体14は、屈曲した取付管に導入可能なように可撓性を有する部材であり、且つ後述の膨張動作を行えるように膨張可能な部材(例えば、ゴム等の弾性部材)から構成されている。
【0035】
筒状体14には、その断面図である図2(a)にも示すように、その外表面上に突出形成され、軸方向に延在して設けられたスペーサー20が断面視90°間隔で4個設けられている。スペーサー20は断面略矩形の形状とされており、可撓性のある部材、例えば、繊維等で補強されているゴムやプラスチック(PE、PP等)から構成される。スペーサー20の形状は、筒状体14の外表面から突出形成された形状であり、筒状体14の膨張状態において取付管106の内表面と筒状体14との間隙を保持できる形状であれば特に限定されない。スペーサー20の個数は4個としているが、適宜増減することができる。
【0036】
筒状体14の内部は中空とされ、筒状体14に接続された流体供給管16aから空気や水等の流体が供給されると、図2(b)に示されているように、その外周面が径方向外側に膨らむように膨張するように構成されている。筒状体14の中空部は、膨張体12−2に流体を供給する流体供給管としての役割を有している。
【0037】
筒状体14は、膨張体12−1、12−2により閉塞された閉塞空間の体積の一部を占めることで充填材の使用量及び充填作業時間を減らすものであり、補修対象の取付管に応じて適宜使用されるものである。例えば2箇所の閉塞位置間が短い場合等、充填材を多く使用しない場合等は、筒状体は使用せず、2個の膨張体と流体供給管及び充填材供給管を有する充填材導入器具を使用してもよく、取付管の劣化状況に応じて適宜変更することができる。
【0038】
筒状体14の断面の大きさは、非膨張状態でそのスペーサーを含む外径が補修対象の既設管の内径よりも小さいサイズに構成される。筒状体14の長さは、閉塞位置間の長さに合わせて適宜変更することができるが、充填材の使用量を最大限に減らすことができる点で、閉塞空間のほぼ全長に亘る長さを有することが好ましい。
【0039】
次に、本発明の取付管補修方法の実施の形態ついて説明する。
【0040】
図3は、補修作業前の状態を示す説明図である。補修対象の取付管106は上端において桝104と連結され、下端において下水道本管108に連通結合されている。建物から排水管102を介して流された排水や雨水は、一時的に桝104に集められた後、その桝104から取付管106を通り、下水道本管108内に流入する。図示していないが、下水道本管108はこの前方及び後方においてマンホールに接続されている。取付管106は複数の単管が連結されて構成されている。
【0041】
取付管106の破損は、符号110で示しているように取付管106を構成している各単管の接続部の位置ずれや単管自体のひび又は亀裂、あるいは符号110aで示しているように取付管106と下水道本管108との接続部において起こりやすい。そして、この破損部110、110aから地下水や土砂が取付管106や下水道本管108内に流入することにより空洞112が発生する。本発明において、取付管の破損部とは、取付管の劣化等により生じたひび割れ、亀裂、単管同士の接続部の位置ずれ、取付管と下水道本管の接続部の位置ずれ、取付管と桝との位置ずれ等によって、桝104から下水道本管108内の取付管106との接続部までの領域内に地下水や土砂が流入し得る割れ目や通孔全般のことをいう。
【0042】
取付管106の破損状況及び空洞112の発生状況は、レーダー探査装置及びCCDカメラ搭載した空洞調査機を取付管内で移動させることにより調査することができる。また、空洞112は、地上から電磁波や超音波を路面から地下へ向けて放射し、反射波を受信する空洞調査機でも調査することができる。
【0043】
図4は、本発明の充填材導入器具を配置した状態(膨張前)の断面図であり、図5は、図4の桝104と取付管106との接続部付近の詳細図である。
【0044】
本発明の取付管補修方法は、まず必要により、補修対象である取付管106の内表面を高圧洗浄し、内表面に付着した異物を除去する。次に、取付管106の桝104側開口部から、充填材導入器具10を、下方膨張体12−2を先頭として、下方膨張体12−2が下水道本管108に到達するまで導入する。充填材導入器具10の導入作業は人力でも動力を使ってもよく、桝104側から押して行うか、あるいは、膨張体12−2に引き込みロープを接続して下水道本管108に接続されるマンホール(図示せず)側から牽引して位置設定することもできる。なお、図4において、筒状体14は、図6に示すA−A´断面図を示しており、筒状体14の外周上に設けられたスペーサー20は、図示していない。
【0045】
図7は、充填材導入器具10の膨張体12−1、12−2及び筒状体14を膨張させた状態を示す説明図である。
【0046】
充填材導入器具10を上記のように配置した後、地上に配置された流体・充填材供給機114から流体供給管16aを通して空気や水等の流体を供給する。流体を供給すると、図示したように、膨張体12−1、12−2が膨張する。これにより、桝104から下水道本管108内の取付管106との接続部までの領域において、取付管106の破損部110、110aを含む管路内空間を閉塞空間とすることができる。
【0047】
本実施の形態において、膨張体12−2は下水道本管内において膨張するが、上述したように、膨張体12−2の流体供給管16bとの接続部周辺領域は、非膨張性部材で構成されているので、その領域のみ膨張しにくい。そのため、膨張体12−2は、膨張時において取付管106と下水道本管108の接続部を覆わずに管路内を閉塞することができ、後述する充填材の注入により、取付管106と下水道本管108との接続部に生じた破損部110aから充填材を外部に流出させることが可能となる。
【0048】
また、膨張体12−1、12−2が膨張すると同時に筒状体14も膨張し、図6(b)の断面図に示すように、スペーサー20が筒状体14と取付管108との間の間隙Rを保持するように働く。図7において、筒状体14は、図6(b)のB−B´断面図を示しており、スペーサー20は図示していない。以上のようにして、閉塞空間形成工程が完了する。
【0049】
図8は、充填材を注入する様子を示す概略断面図である。
【0050】
閉塞空間形成工程が完了した後、地上に配置された流体・充填材供給機114から充填材を充填材供給管18−1、18−2を介して、上述した閉塞空間に充填材40を所定の圧力で注入し、加圧充填する。充填材40は、上述した筒状体14と取付管108との間の間隙に流入すると、やがて破損部110、110aから取付管の外部へ流出する。充填材40としては、注入時には流動性を有し、注入後に硬化するものであればどのようなものでも使用することができる。例えば、注入後3〜10分で硬化する硬化性材料であればよく、具体的には、セメントミルク、ウレタン樹脂等を用いることができる。この中でも、セメントミルクが好ましく、植物繊維を配合したセメントミルク(例えば、古紙を水に浸してパルプ状にしたものを混ぜたセメントミルク)が特に好ましい。
【0051】
充填材40の加圧充填は、少なくとも破損部110、110aが充填材によって塞がれるように行う。即ち、注入する充填材40の量は、2個の膨張体により形成された閉塞空間のうち筒状体14が占める空間以外の空間よりも大きい体積の量を注入すれば、充填材は破損部110、110aから取付管106の外部へ流出し、破損部110、110aは塞がれる。注入時において流動性を有する充填材40は時間が経過すると硬化し、破損部110は完全に塞がれる。また、充填材40を更に注入すれば、空洞112に充填材を充填することができる。空洞の全てが充填されたことは注入圧の上昇により確認することができる。以上のようにして、充填材導入工程が完了する。
【0052】
充填材導入工程を終了した後、膨張体12−1、12−2及び筒状体14から流体を吸入し、これらを収縮させた後、充填材導入器具10を取付管106から取り出して、閉塞解除工程を行う。
【0053】
その後、取付管106の内表面に充填材が付着している場合には、必要によりこれを高圧水で洗浄して、内部洗浄工程を行う。取付管内表面の洗浄を行うことにより、付着した充填材を除去し、次の工程で形成するライニング管の表面が平坦でなくなったり、取付管の内表面との密着性が低下したり、ライニング管の内径が小さくなることを防止することができる。
【0054】
取付管106の内表面を高圧水で洗浄した後、取付管106の内表面にライニング管を形成する工程を行う。ライニング管形成方法は、従来から公知の方法を用いればよく、特に限定されない。
【0055】
例えば、まず、ガラス繊維やフェルト(不織布)、もしくはその両方の組み合わせで形成された基材に、光硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を含浸させて形成された管状ライニング材を、未硬化状態で取付管内に導入する。未硬化状態の管状ライニング材の導入は、反転方式あるいは引き込み方式が用いられる。反転方式は、取付管の桝側端部から未硬化状態の管状ライニング材を同端部から供給される圧搾空気により順次反転させつつ膨張させて本管の内壁面に押圧し、他端までこの作業を行うものである。一方引き込み方式は、ロープ等によって未硬化状態の管状ライニング材を取付管内に引き込み、導入した後、ライニング材内への圧搾空気の供給により管状ライニング材を取付管内周面に押圧するものである。このようにして、管状ライニング材を導入して取付管内周面に押圧した後、光や熱で硬化させて、ライニング管を形成する。ライニング管形成方法の詳細は、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0056】
以上のようにして、本発明の取付管補修方法が完了する。図9は、ライニング管30が形成され、補修作業が完了した取付管106を示している。このようにして補修された取付管106は、地下水や土砂の流入を遮断しているのでライニング管30の硬化不良が生じておらず、補修後においても長期間に亘り補修効果を維持することができる。
【0057】
本実施の形態においては、桝104から下水道本管108の取付管106との接続部までの領域のほぼ全域における管路内空間を閉塞空間としているが、閉塞する空間は破損部の位置に応じて適宜変更可能であり、例えば取付管に生じた1箇所の破損部を挟んだ取付管内の2箇所を閉塞して閉塞空間とすることも可能である。但し、本実施の形態のようにほぼ全域を閉塞空間とすれば、閉塞作業においてカメラ等を使っての正確な位置設定は必要とされず、作業の容易化が図られる。
【0058】
以下、本発明の取付管補修方法の他の実施の形態について説明する。
【0059】
図10は、本発明の取付管補修方法の他の実施の形態を示す説明図である。
【0060】
本実施の形態では、充填材導入器具は、膨張体72−1、筒状体74及び膨張体72−2を有している。上方の膨張体72−1と筒状体74は流体供給管16aを介して接続されており、これは桝104の取付管106接続口から導入される。一方、下水道本管108内に配置される下方の膨張体72−2は、膨張体72−1及び筒状体74とは接続されておらず別体であり、下水道本管108に接続されているマンホール(図示せず)から単独で導入される。膨張体72−2の位置設定は、膨張体72−2にカメラ等を取り付けることにより行うことができる。この充填材導入器具を図示した位置に配置した後、膨張体72−1、72−2及び筒状体74を膨張させ、充填材を加圧充填し、充填材を破損部から外部に流出させる。充填材導入工程以降の工程は上述したものと同様である。本実施の形態は、下水道本管108と取付管106との接続部がマンホールに近い場合に有効である。
【0061】
図11(a)は、本発明の取付管補修方法に使用する充填材導入器具の別の例を示す外観図であり、図11(b)はその筒状体の断面図である。
【0062】
この充填材導入器具60は、柱状体としての筒状体64と、膨張体としての2個の膨張体62−1、62−2を有し、筒状体64は2個の膨張体62−1、62−2の内部に嵌合されて接続されている。図11(b)に示すように、筒状体64は、本体部63とその外周面に設けられた弾性部65から構成されている。本体部63の内部は充填材供給管68−1、68−2から充填材が流入する中空部63aが軸方向に形成されており、中空部63aには、下方に配置する膨張体62−2に流体を供給するための流体供給管66が挿通されて、膨張体62−2に連結されている。本体部63とその外周面に設けられた弾性部65は互いに接着しておらず、弾性部65は本体部63を覆うように構成されている。図11(a)に示されているように、弾性部65には、十字状の切れ込み部62aが周方向及び軸方向に一定間隔で設けられている。
【0063】
充填材が中空部63aに流入すると、本体部63に周方向及び軸方向に一定間隔で設けられた充填材流出孔63bに流入する。充填材流出孔63bに流入すると、その流入圧により弾性部65は径方向外側に伸び、充填材は本体部63と弾性部65との間に流入した後、弾性部65の切れ込み部62aから、図12に示すように切れ込み部62aの各断片が外側に向くように変形して、筒状体62の外部へ(矢印方向に)流出する。充填材の注入を停止すると、切れ込み部62aが元の状態に戻り、一度筒状体64の外部に流出した充填材は筒状体64の内部に戻らず、切れ込み部62aは逆止弁として作用する。このような構成の充填材導入器具60を用いることにより、使用する充填材の量を減らすことが可能となる。
【0064】
なお、本発明は上記各実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0065】
本発明において、充填材導入器具は、2個の膨張体、各々の膨張体を膨張させる流体供給管及び少なくとも一方の膨張体に挿通された充填材供給管を少なくとも有していればよく、柱状体としての筒状体は、補修対象の取付管等の状況に応じて適宜設ければよい。また、2個の膨張体は、一体として構成しても、別体としてよく、一体として構成する場合には、2個の膨張体を流体供給管で接続することが、膨張体の膨張を同時に行える点で好適である。
【0066】
また、上述した実施の形態において、柱状体は、充填材導入器具10の筒状体は上記で示した例に限られず、閉塞空間のうち一定の空間を占め、使用する充填材の量を減らすことができるものであれば、角柱状等どのような形状のものを使用することができる。
【0067】
また、地中に生じた空洞が大きい場合であって、その空洞を充填する場合には、取付管内から充填材を注入して空洞の体積の一部を埋め、その充填材が硬化した後に、地上から空洞まで通じる通孔から、地上から充填材を補助的に補充しても良い。通孔は、空洞の位置を上述した空洞調査装置で検知して、穿孔することができる。
【0068】
また、上述した実施の形態では、既に空洞が発生している場合の補修例を示したが、これに限られず、取付管に破損部が生じているものの空洞ができるほどまでには至っていない状態の取付管の補修にも適用することができ、この場合は、破損部を充填材で塞ぐことにより、ライニング管の補修効果及び寿命を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の方法により取付管を補修することにより、ライニング管による補修効果を長期に亘り維持することができ、道路の陥没や地盤沈下を防止することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 充填材導入器具
12−1、12−2 膨張体
14 筒状体
16a、16b 流体供給管
18−1、18−2 充填材供給管
18−1a、18−2a 充填材流出口
20 スペーサー
30 ライニング管
60 充填材導入器具
62−1、62−2 膨張体
63 本体部
64 筒状体
65 弾性部
66 流体供給管
68−1、68−2 充填材供給管
102 排水管
104 桝
106 取付管
108 下水道本管
110 破損部
112 空洞
114 流体・充填材供給機
116 ライニング管
120 地面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道本管に連通結合され、桝からの排水を前記下水道本管に流入させる破損の生じた取付管の補修方法において、
前記桝から前記下水道本管の前記取付管との接続部までの領域において、前記取付管の破損部を含む管路内空間を、該管路内空間の両端を閉塞して閉塞空間とする閉塞空間形成工程と、
少なくとも一方の前記閉塞部に外部から挿通された充填材供給管から、経時硬化性の充填材を前記閉塞空間に所定圧力で加圧充填し、前記破損部から前記取付管の外部に充填材を流出させる充填材導入工程と、
前記閉塞を解く閉塞解除工程と、
前記取付管の内表面にライニング管を形成するライニング管形成工程と、
を含むことを特徴とする取付管補修方法。
【請求項2】
前記閉塞除去工程と前記ライニング管形成工程との間に、
取付管の内部を洗浄する内部洗浄工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の取付管補修方法。
【請求項3】
前記管路内空間には、前記取付管と前記下水道本管との接続部が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の取付管補修方法。
【請求項4】
前記閉塞は、流体を供給することにより膨張する2個の膨張体により行われ、
該2個の膨張体のうち一方の膨張体は、前記取付管と下水道本管との接続部近傍の該下水道本管内に配置され、
該膨張体の膨張状態において、該膨張体は前記接続部を覆わないことを特徴とする請求項3に記載の取付管補修方法。
【請求項5】
前記一方の膨張体の前記下水道本管内への配置は、前記桝の取付管接続口から導入して行うことを特徴とする請求項4に記載の取付管補修方法。
【請求項6】
前記閉塞空間形成工程は、
前記2個の膨張体のうち他方の膨張体に外部から挿通され、前記一方の膨張体に連結結合された流体供給管を有する充填材導入器具を、前記桝の取付管接続口から導入し、
次いで、前記2個の膨張体に流体を供給することにより該2個の膨張体を膨張させることにより行うことを特徴とする請求項4に記載の取付管補修方法。
【請求項7】
前記充填材導入器具は、前記流体供給管を内包する可撓性を有する柱状体を有し、
前記充填材の導入は、前記閉塞空間内の前記柱状体の外表面と前記取付管の内表面との間隙に充填材を加圧充填することにより行われることを特徴とする請求項6に記載の取付管補修方法。
【請求項8】
前記柱状体は、中空且つ膨張可能に構成され、前記流体供給管からの流体により前記2個の膨張体と共に膨張し、
該膨張状態において、前記取付管の内表面との間隙を保持するための複数のスペーサーが前記柱状体の外表面に突出形成されたことを特徴とする請求項7に記載の取付管補修方法。
【請求項1】
下水道本管に連通結合され、桝からの排水を前記下水道本管に流入させる破損の生じた取付管の補修方法において、
前記桝から前記下水道本管の前記取付管との接続部までの領域において、前記取付管の破損部を含む管路内空間を、該管路内空間の両端を閉塞して閉塞空間とする閉塞空間形成工程と、
少なくとも一方の前記閉塞部に外部から挿通された充填材供給管から、経時硬化性の充填材を前記閉塞空間に所定圧力で加圧充填し、前記破損部から前記取付管の外部に充填材を流出させる充填材導入工程と、
前記閉塞を解く閉塞解除工程と、
前記取付管の内表面にライニング管を形成するライニング管形成工程と、
を含むことを特徴とする取付管補修方法。
【請求項2】
前記閉塞除去工程と前記ライニング管形成工程との間に、
取付管の内部を洗浄する内部洗浄工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の取付管補修方法。
【請求項3】
前記管路内空間には、前記取付管と前記下水道本管との接続部が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の取付管補修方法。
【請求項4】
前記閉塞は、流体を供給することにより膨張する2個の膨張体により行われ、
該2個の膨張体のうち一方の膨張体は、前記取付管と下水道本管との接続部近傍の該下水道本管内に配置され、
該膨張体の膨張状態において、該膨張体は前記接続部を覆わないことを特徴とする請求項3に記載の取付管補修方法。
【請求項5】
前記一方の膨張体の前記下水道本管内への配置は、前記桝の取付管接続口から導入して行うことを特徴とする請求項4に記載の取付管補修方法。
【請求項6】
前記閉塞空間形成工程は、
前記2個の膨張体のうち他方の膨張体に外部から挿通され、前記一方の膨張体に連結結合された流体供給管を有する充填材導入器具を、前記桝の取付管接続口から導入し、
次いで、前記2個の膨張体に流体を供給することにより該2個の膨張体を膨張させることにより行うことを特徴とする請求項4に記載の取付管補修方法。
【請求項7】
前記充填材導入器具は、前記流体供給管を内包する可撓性を有する柱状体を有し、
前記充填材の導入は、前記閉塞空間内の前記柱状体の外表面と前記取付管の内表面との間隙に充填材を加圧充填することにより行われることを特徴とする請求項6に記載の取付管補修方法。
【請求項8】
前記柱状体は、中空且つ膨張可能に構成され、前記流体供給管からの流体により前記2個の膨張体と共に膨張し、
該膨張状態において、前記取付管の内表面との間隙を保持するための複数のスペーサーが前記柱状体の外表面に突出形成されたことを特徴とする請求項7に記載の取付管補修方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−102766(P2012−102766A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249854(P2010−249854)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【出願人】(000219358)東亜グラウト工業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【出願人】(000219358)東亜グラウト工業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
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